商標無効審判
2019-890056
スクラム
- 審判番号
- 2019-890056
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2017-080866
- 登録番号
- 6033702
- 請求日
- 2019年09月27日
- 審決日
- 2021年07月21日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】KDDI 株式会社
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】スクラム インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】株式会社 永和システムマネジメント
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】Scrum Inc. Japan 株式会社
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】株式会社 翔泳社
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】株式会社 アトラクタ
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】アギレルゴコンサルティング 株式会社
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】株式会社 オージス総研
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】グロース・アーキテクチャ&チームス 株式会社
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】株式会社 アットウェア
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】株式会社 EXIN JAPAN
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】クリエーションライン 株式会社
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】株式会社 ITプレナーズジャパン・アジアパシフィック
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】ギルドワークス 株式会社
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【請求人】一般社団法人 スクラムギャザリング東京実行委員会
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】松尾 和子
- 【請求人代理人】井滝 裕敬
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】飯田 圭
- 【請求人代理人】苫米地 正啓
- 【被請求人】株式会社 アーク
- 審判長/審判官
- 審判長 岩崎 安子
- 審判官 小田 昌子
- 審判官 綾 郁奈子
- 分類
- T111 .13 -ZC (W3541) / T111 .16 -ZC (W3541) / T111 .272-ZC (W3541) / T111 .18 -ZC (W3541) / T111 .22 -ZC (W3541)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法3条1項6号商標法4条1項7号商標法4条1項16号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第1項、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第16号、商標法第3条第1項第6号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6033702号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6033702号の指定役務中、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,情報管理システムに関する教育訓練研修,情報技術の使用に関する教育訓練研修,それらのコンピュータ・電気通信を利用して行う教育訓練,組織の経営管理及び事業の変革管理・業務改善・後方支援への取り組みに関する教育訓練研修,マネジメント・コミュニケーション・営業・リーダーシップ・人材育成の能力向上の教育訓練研修,マネジメント・コミュニケーション・営業・リーダーシップ・人材育成の能力向上の教育・研修に関するコンサルティング・助言・指導及び情報の提供,プログラム・プロジェクト・ポートフォリオの管理及び作成のための教育訓練研修,コーチング(教育及び訓練),資格の認定及び付与の企画・運営並びにこれに関する情報の提供,資格検定試験並びに資格認定試験の企画・運営又は実施並びにこれに関する情報の提供,試験問題の作成,教育情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催,ビジネス・事業戦略・科学・技術のセミナー・シンポジウム・会議・講演会・研修会・討論会・講習会の企画・運営・開催に関する助言・指導及び情報の提供,その他のセミナー・シンポジウム・会議・講演会・研修会・討論会・講習会の企画・運営・開催に関する助言・指導及び情報の提供,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,インターネット又はコンピュータネットワークを通じた通信端末を用いた書籍・雑誌の供覧,電気通信回線を通じて行う教育及び研修用電子出版物の提供に関する情報の提供」についての登録を無効とする。
その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6033702号商標(以下「本件商標」という。)は、「Scrum」の文字を標準文字で表してなり、平成29年6月19日に登録出願、同30年3月19日に登録査定、第35類及び第41類に属する別掲のとおりの役務を指定役務として、同年4月6日に設定登録されたものである。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、請求書及び弁駁書において、その理由及び答弁に対する弁駁等を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第359号証を提出した。
1 請求の理由
(1)被請求人について
被請求人は、その公式ウェブサイトにおいて、「弊社は、コンサルタント約50名を擁し、情報セキュリティマネジメントシステム分野に関しては、日本では大手のコンサルティングファームである」旨述べ、情報システム、情報セキュリティ、システム開発等の情報技術(IT)に関するセミナー等を提供している企業である(甲3)。
被請求人は、「Scrum」、「Agile」等のソフトウェアやコンピュータシステムの分野の需要者・取引者であれば誰もが知るアジャイルソフトウェア開発方法やオープンソース技術に係る一般名称を多数出願しており、被請求人は、それら一般名称について登録を受けては、当該一般名称を使用している善意の事業者に対して警告状を送付し(甲4)、ソフトウェアその他情報技術(IT)分野における経済活動を不当に混乱させ、当該分野に看過し難い悪影響を及ぼしている。
本件商標も、世界的に著名なアジャイルソフトウェア開発方法「Scrum」に関わる一般用語であり、不当・不正な目的により出願され、商標登録されてしまったが、直近の商標登録出願の審査状況をみると、現在、これらの出願は、軒並み商標法第3条第1項各号等の拒絶理由通知書・拒絶査定を受けている。
被請求人は、同分野の関係者をはじめ一般公衆から非常に問題視され、強く非難を受けており(甲5~甲11)、被請求人による一連の出願行為についてのコメントや現状などをまとめた「まとめサイト」のようなものまで立ち上がっており(甲12)、一般公衆から高い関心と注意を集めている。
また、日本経済新聞社は、被請求人による一連の不当な出願行為について取材・報道を開始している(甲13)。
(2)利害関係について
本件商標の登録は、「Scrum」に関わる業界全体に対して影響と懸念・不安を与え、経済活動に不当な悪影響を及ぼしており、「Scrum」に関わる各種役務を提供している本件審判の請求人に名を連ねる事業者全員に、本件審判を請求する利害関係がある(甲14~甲25)。
(3)「Scrum」について
ア 「アジャイルソフトウェア開発」について
ソフトウェアやコンピュータシステムの開発に関する分野において、「アジャイルソフトウェア開発」という、日本国内はもとより世界的に広く知られた開発方法概念が存在する。「アジャイルソフトウェア開発」とは、「ソフトウェア工学において迅速かつ適応的にソフトウェア開発を行う軽量な開発手法群の総称であり、近年、アジャイルソフトウェア開発手法が数多く考案されている」(甲26)、「ソフトウェア要求仕様の変更などの変化に対して機敏な対応ができ、顧客に価値あるソフトウェアを迅速に提供することを目的とするソフトウェア開発方法論の総称。」(甲27)であり、他の様々な文献においても、同様の説明がなされている(甲28~甲30)。
イ 「Scrum」の定義・概要
「アジャイルソフトウェア開発」には、開発方法が様々あり、「Scrum」は開発方法の一つである。現在、世界中で広く普及し、アジャイルソフトウェア開発方法のスタンダードともなっている「Scrum」は、1986年に、現大学名誉教授であるN氏とT氏が、「新製品開発のプロセス」について日本とアメリカとの比較を行った研究に関して発表した論文における理論が元となっている(甲31)。
「Scrum」の名称は、当該論文の中で、柔軟で自由度の高い日本発の製品開発手法がラグビーのスクラムに喩えて「Scrum(スクラム)」として紹介されたことに由来している。
その後、当該論文に着想を得たJ.S氏、K.S氏らが、現在の「スクラム」ソフトウェア開発方法をまとめ、プログラミングに関する国際会議「OOPSLA‘95」において発表し、当該方法は現在の発展につながっている。
つまり、「Scrum」は、本件商標の登録出願より約25年も前の1995年に提唱されたものであって、「アジャイルソフトウェア開発」に係る方法のなかで、代表的かつ最も利活用されているものの一般・普通名称であり、本件商標の登録出願前に発行されている文献においても一様に、「Scrum」はアジャイルソフトウェア開発方法の一般・普通名称として定義されている(甲32~甲38)。
このことは、「Scrum」の提唱者であるJ.S氏らが、「Scrum」を正しく普及・周知するために作成・公表した「ScrumGuide(スクラムガイド)」において詳しく定義・説明されおり(甲39~甲42)、各号証においても一様に同じ説明がなされている。
ウ 「Scrum」の一般名称性に関する被請求人自身の自認
被請求人自身の公式ウェブサイトにおける説明(甲3)は、アジャイルソフトウェア開発手法の一つとして広く知られる「Scrum」の説明そのものであって、被請求人自身が「Scrum」が定義どおりの一般名称であることを自認している。
エ 「Scrum」に関する歴史と日本国内での普及状況
「Scrum」が情報技術(IT)分野において、請求人が提出した「Scrum」の誕生から現在に至るまでの「Scrum」に関わる情報技術(IT)業界における出来事を年表化したもの(甲43~甲104)を概観するだけでも、「アジャイルソフトウェア開発」の代表的な方法である「Scrum」が、いかに広く一般に普及・認識・使用されているかは明白である。
オ 「Scrum」に関する雑誌記事・新聞記事・インターネット記事
「Scrum」を紹介・説明した雑誌記事・新聞記事・インターネット記事及びその抜粋等(甲105~甲281、別紙2)によれば、「Scrum」というアジャイルソフトウェア開発方法がいかに我が国において一般的かつ有名であるかは明らかである。
カ 「Scrum」を題号・題材とした書籍並びに論文等
本件商標の登録出願より前からアジャイルソフトウェア開発手法「Scrum」を題号、主たる題材・内容としている書籍、論文等がある(甲282~甲309、別紙3)。
(4)「Scrum」を内容とする又はそれらに関連する各種商品及び役務について
「Scrum」は、アジャイルソフトウェア開発の代表的かつ最も利活用されている方法であることから、「Scrum」の概要やノウハウを教授・啓発するためのソフトウェア開発方法「Scrum」を内容・題材とする書籍その他出版物がすでに存在し、請求人を含む多くの企業が、「Scrum」に関する講座・セミナー・コンサルティング・イベントを提供・開催し、資格認定・研修・検定試験等のサービスを提供している(甲14~甲25、甲310~甲322)。
このように、ソフトウェアその他の情報技術(IT)分野においては、「Scrum」を内容とする書籍等のコンテンツ商品、コンサルティング・人材支援等のビジネス支援サービス、講座・セミナー等の教育関連サービスが、広く提供されている実情がある。
(5)商標法第3条第1項第3号及び同項第6号該当性について
ア 「Scrum」は、アジャイルソフトウェア開発に関する代表的で著名な方法として、ソフトウェアその他情報技術(IT)分野において、広く知られている一般名称であるところ、「Scrum」の概要やノウハウを教授・啓発する内容の書籍等のコンテンツ商品が広く販売されているから、本件商標が、その指定役務のうち、コンテンツ関連役務に当たる第41類「電子出版物の提供」等の役務について使用された場合には、単に前記内容の役務の質を表示するにとどまる。
イ 我が国において、「Scrum」の導入を希望する企業へのコンサルティング、「Scrum」を利活用したビジネス支援、「Scrum」に関するビジネス支援サービスが、広く提供されている実情が存在するから、本件商標が、その指定役務のうち、ビジネス支援サービスに当たる第35類について使用された場合には、単に「Scrum」に関連する役務であること、つまりは役務の質等を表示するにとどまる。
ウ 人材募集の分野において、「Scrum開発経験者」等を募集する求人広告や、「Scrum Master経験者」又は「Scrum Master」としての採用を募集する求人広告等が存在する(甲323~甲327)から、本件商標が、第35類「職業のあっせん,人材募集,人材の紹介,求人情報の提供」について使用されたとしても、募集人材の内容を表示するにとどまる。
また同様に、第三者のために「Scrum」に関する広告物等を制作する場合には、「Scrum」は、広告の内容表示となるものであるから、第35類「広告業,広報活動の企画,広告用具の貸与」についても、本件商標は、単に役務の内容表示にとどまる。
エ 我が国において「Scrum」に関する事項を内容とする認定・研修・検定試験サービスなどの教育関連サービスが広く提供されている実情が存在するから、本件商標が、その指定役務のうち、教育関連サービスである第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」等の役務について使用された場合には、単に前記内容の教育関連サービスであること、つまりは役務の質等を表示するにとどまる。
オ 被請求人の出願商標「ScrumProductOwner」について拒絶査定となっているところ、アジャイルソフトウェア開発方法「Scrum」は、「プロダクトオーナー」「スクラムマスター」「(開発)チーム」という3つの役割により構成されるところ、当該出願商標は、前記「プロダクトオーナー」を指すものであるから、上記に鑑みれば、本件商標も同様に、商標法第3条第1項各号に該当すべきものである。
カ 小括
以上のとおり、本件商標は、少なくとも前記の具体的な指定役務との関係で使用される場合には、「アジャイルソフトウェア開発方法の『Scrum』」を内容とする又はそれに関連する役務であると認識させるにとどまり、役務の質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であることが明らかであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
もしくは、本件商標が、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標であることは明白であり、同法第3条第1項各号の総括条項にあたる同項第6号にも該当する。
(6)商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、「Scrum」を内容とする又はそれらに関連する役務との関係で、単に特性をいい表すものとして一般に認識され、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
したがって、本件商標が、それら役務のうち、「Scrum」を特性としない役務について使用された場合には、役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるので、本件商標は同法第4条第1項第16号に該当する。
(7)商標法第3条第1項柱書違反について
被請求人の事業との関係で、本件商標が自他商品及び役務識別機能を発揮することはなく、被請求人は、一般名称に係る商標を商標登録し、その一般名称を善意で使用している第三者に対して、不当に警告状を送付することなどを目的として、本件商標の出願に及んだことは明らかであり、本件商標を自他商品及び役務識別のための「商標」として使用する意思は、全くないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、その指定役務の全てについて、被請求人が使用することについて合理的な疑義があり、商標法第3条第1項柱書に違反するが、とりわけ、被請求人の事業内容とは全く関係の無い役務、例えば、第35類「トレーディングスタンプの発行,インターネット上でのオークションの運営,競売の運営」、第41類「書画の貸与,おもちゃの貸与,通訳,翻訳」などとの関係においては、本件商標は、使用の意思に関して強い疑義があり、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。
(8)商標法第4条第1項第7号該当性について
被請求人は、本件商標を含め、一連の不当な出願行為により、悪意により情報技術(IT)分野の経済活動に対して看過し難い悪影響を与えている状況であり、同分野の関係者から強い非難と懸念が表明されているだけでなく、主要な報道機関もその状況を報じている。
被請求人の代表者であるA氏は、請求人の一人であるKDDI株式会社が2018年に行った「Scrum Inc.認定資格Scrum@Hardware&AI研修」「ScrumInc.認定資格スクラムマスター研修」「ScrumInc.認定資格スクラムプロダクトオーナー」に参加をしている(甲328~甲330)。同氏は、当該講習などを介しても、「Scrum」の語が、本件商標の指定役務の関係で一般・普通名称にすぎないことを充分認識しながら、「Scrum」が商標登録されていないことを奇貨として、これらの語について登録を受け、KDDI株式会社らの合弁により設立された「ScrumInc.Japan株式会社」に対して、警告状を送付してきた。このような状況及び経緯は、商標審査基準において該当事例として説明されているものに該当するものであることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(9)「Scrum」の考案・発展・普及に深く携わった関係者による陳述
世界的な普及・発展を遂げ、本来、広くその使用が解放されていなければならない「Scrum」の名称が、それと密接な関係を有する役務について、不当に出願され商標登録されてしまったという事態を受け、N氏、T氏、J.S氏3名が本件商標の登録に対して強い異議を表明していることから、同3名の陳述書を提出する(甲334~甲336)。
(10)結語
本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号、同法第4条第1項第16号及び同項第7号の規定に該当し、かつ、同法第3条第1項柱書にも違反するから、その登録は、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)利害関係について
被請求人が、自認するとおり、請求人の一部はすでに被請求人から一般名称の自由使用を阻害されており、他の請求人も、被請求人から一般名称の自由使用を阻害される懸念・不安を抱えながら業務を行っている。
(2)商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号該当性について
ア 「Scrum」は、本件商標の登録査定日前から、「アジャイルソフトウェア開発方法」の代表的なものの一般名称として、ソフトウェアその他IT (情報技術)に関わる需要者の間で、広く認識されていた。
イ 第35類及び第41類の役務のコンテンツ(内容物)のテーマ又はジャンルを示す一般名称のみからなる商標が、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして拒絶された審決があり(甲338~甲347)、「Scrum」を内容とする印刷物、ビジネスコンサルティング・人材サービスその他ビジネス支援、教育、セミナーなどが現実に提供されているから、本件商標は、第35類及び第41類の役務との関係でも、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
また、本件商標の指定商品及び指定役務とほぼ同一の商品及び役務が指定された出願について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして、いずれも拒絶査定を受けている(甲348~甲352)。
ウ 被請求人は、「請求人が『Scrum』の語を単独で使用している事実はない」旨主張していると思われるが、「表1」記載の4社は、「Scrum」の語を用い、「Scrum」に関連する業務を行っており(甲353~甲358)、請求人は、ソフトウェア開発の方法に関する一般名称「Scrum」を、自己のサービス名称の一部に取り入れて使用しているから、「Scrum」単体での使用でないからと言って、「Scrum」の一般名称性が否定されるものではない。
請求人の多くは、本件商標の登録査定日前から、「Scrum」に関する業務を行っており、現に、KDDI株式会社と永和システムマネジメントが、「Scrum」の手法に準拠したアジャイル開発教育プログラムの提供を発表したのは平成29年(2017年)年1月であり(甲80)、本件商標の登録査定日前から「Scrum」に関連する研修等は各事業者によって行われている(別紙1)。
よって、本件商標の登録査定日前より、「Scrum」が、ソフトウェア開発の方法に関する一般名称として定着していた事実のみをもってしても、本件商標は少なくとも以下の指定役務との関係においては商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
本件商標は、その指定役務中、コンテンツ関連役務に当たる第41類の指定役務に使用された場合には、単に役務の質を表示するにとどまる。
エ 我が国において、「Scrum」の導入を希望する企業へのコンサルティング、「Scrum」を活用したビジネス支援、「Scrum」に関するビジネス支援サービスが、広く提供されている実情が存在するから、本件商標が、その指定役務中、ビジネス支援サービスに当たる第35類の指定役務に使用された場合には、単に「Scrum」に関連する役務であること、役務の質等を表示するにとどまる。
オ 人材募集の分野において、「Scrum開発経験者」又は「Scrum開発に携わりたい人」を募集する求人広告、「ScrumMaster経験者」又は「ScrumMaster」としての採用を募集する求人広告が存在する(甲323~甲327) から、本件商標が、第35類「職業のあっせん,人材募集,人材の紹介,求人情報の提供」について使用されても、募集人材の内容を表示するにとどまる。
カ 第三者のために「Scrum」に関する広告物等を制作する場合、「Scrum」は、広告の内容表示となるから、第35類「広告業,広報活動の企画,広告用具の貸与」についても、本件商標は、単に役務の内容表示にとどまる。
キ 我が国において「Scrum」に関する事項を内容とする認定・研修・検定試験サービスなどの教育関連サービスが広く提供されている実情が存在するから、本件商標が、その指定役務中、第41類の教育関連サービス等の指定役務について使用された場合には、単に前記内容の教育関連サービスであること、役務の質等を表示するにとどまる。
(3)商標法第3条第1項柱書違反について
本件商標は、第35類「職業のあっせん、人材募集、人材の紹介、求人情報の提供」との関係では、職種等の内容を表示するものであって商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するので、反論は不要である。
次に、被請求人は、「通訳、翻訳」について、事業化の準備を進めている(乙13)が、記載内容が不明であるから、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。
(4)商標法第4条第1項第7号について
請求人は、被請求人が「Scrum」の語が、本件商標の指定役務との関係で一般・普通名称にすぎないことを充分認識しながら、「Scrum」が商標登録されていないことを奇貨として、これらの語について登録を受け、「Scrum」を一般名称として使用している者に対して、権利を濫用し、使用の中止を求めていることが、公序良俗に反することを問題にしている。
被請求人は、「Scrum」がソフトウェア開発分野における一般名称であることを認識していた(甲3)にもかかわらず、ソフトウェア開発に関連する一般名称を多数出願し、ソフトウェア開発分野において、それら一般名称を使用する必要がある者に対して、強い懸念・不安を与えるばかりでなく、実際に、請求人に対して警告状を送付し、情報技術(IT) 分野の経済活動に対して看過し難い悪影響を与えている。
以上に鑑みると、被請求人による一連の出願行為は、極めて利己的かつ社会公共に反する行いといわざるを得ず、本件商標は、商標法第4条第1項第7号にも該当する。
第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、答弁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第19号証を提出した。
1 被請求人について
被請求人の事業内容(甲3)について異議はない。
被請求人の商標登録出願の申請累計件数は25件ほどであり、「・・・警告状を送付し」については、商標権の侵害のあるところにしか送付しておらず、権利行使をいきなり行わず、警告状を送付した。請求人は、被請求人の商標登録出願の半分近くが登録に至っている事実を無視している。
被請求人による一連の不当な出願行為をめぐる報道は、本件審判の対象である「Scrum」とは異なる「Python」に関する主張である。
「情報技術(IT)分野の経済活動に対して看過し難い悪影響を与えている」としているが、証拠を全く挙げておらず、Scrum Inc.Japan株式会社は、本件商標を含む資格セミナーをこれまでと変わらず開催し(乙1)、将来についても毎月開催している(乙2)。
2 利害関係について
利害関係については、Scrum Inc.Japan株式会社に警告状を送付したことは事実であり、利害関係者が1社でも審判請求は成り立つと思われる。
3 「Scrum」について
(1)「アジャイルソフトウェア開発」について
本件審判請求は第35類及び第41類に対してであり、ソフトウェア開発の区分第42類とは異なる。
(2)「Scrum」の定義・概要
いくつかの辞典に、「Scrum」が紹介されているが、被請求人の知らない用語も含めほぼ同格の記述がされているから「一般・普通名称」とする証拠にはなり得ず(甲32)、甲第37号証の公開日は、登録査定日よりも後の日付である。
(3)「Scrum」の一般名称性に関する被請求人自身の自認
ホームページ(甲3)はPRのためのページであり、当該ホームページ中には「まだまだ国内では導入事例が少ない」とし、「一般名称であることを自認している」わけではない。
(4)「Scrum」に関する歴史と日本国内での普及状況
請求人が主張するものは、本件商標とは、商標の構成自体が異なり、請求人の主張に係るソフトウェア開発の役務と本件商標に係る指定役務とは区分が異なる。
(5)「Scrum」に関する雑誌記事・新聞記事・インターネット記事
「スクラム(Scrum)などのアジャイルプロセスを導入する企業は日本でも増えてきている」(甲203)、「スクラム(Scrum)開発を取り入れるSIベンダーも増えている」(甲207)とあるが、いずれの記事も本件商標が登録された日より後の日付であるから、本件商標が登録された以前には、紹介記事はあるものの、増えているとか、一般化しているとする記事は一切ない。
(6)「Scrum」を題号・題材とした書籍並びに論文等
論文及び講演で、本件商標が登録された2017年においても提案や試行報告がなされている程度であり、「スクラムというソフトウェア開発方法が我が国において一般的かつ有名であるかは明らかである」とはいえない(甲308、甲309)。
4 「Scrum」を内容とする又はそれらに関連する各種商品及び役務について
請求人の中に、商標「Scrum」を使用した「Scrum」に関する講座・セミナー・コンサルティング・イベントや、資格認定・研修・検定試験などのサービスを提供している企業は1社もない(乙4~乙10、表1)。
5 本件商標の商標法第3条第1項第3号及び同項第6号該当性について
「Scrum」を商標として使用した研修、セミナー及び「Scrum」を商標として使用したコンサルティングなどが広く行われているという事実や「Scrum」に関する事項を内容とする認定・研修・検定試験サービスなどの教育関連サービスが広く提供されている事実はない。
また、被請求人の出願商標「ScrumProductOwner」に関して拒絶査定となったことは事実だが、事業を開始する前に、特許庁の判断を仰ぐという目的の一環なので、何ら問題はない。
請求人は、「Scrum」を請求人の世界にのみ矮小化、極小化して諭じており、Weblio(乙18)やgoo辞書(乙19)で「Scrum」や「スクラム」を検索すると、ほとんど全部がラグビーに関するものであり、スクラムを組むというものであるから、「Scrum」から、明らかに認識されるものは「スクラムを組む」あるいは「団結」であり、請求人の主張する一般名称性は極めて低い。
アジャイルソフトウェア開発方法は、「Scrum」だけに限らず、様々な方法や技法・概念などが提案されており、「Scrum」は、それらのうちのひとつにすぎない。
6 商標法第4条第1項第16号該当性について
「商標法第3条第1項第3号」に該当するという主張が否定されるので、本項の主張も当然に否定される。
7 商標法第3条第1項柱書違反について
被請求人は本件商標を使用する事業の準備を進めており、第35類では、「職業のあっせん、人材募集、人材の紹介、求人情報の提供」は、すでに厚生労働大臣より職業紹介事業の許可を新たに受け準備を進めている(乙11)。
人材募集は、特定の技能をもった人のみについて行われる訳ではなく、あらゆる職種・技能について、人材募集が行われているところ、請求人は、あたかも「Scrum」に限って、人材募集が行われているように主張している。
第41類の「技芸・スポーツ又は知識の教授」について、一般社団法人日本アジャイル・スクラム協会を設立し(乙12)、研修内容を充実させるため情報収集にも努めており、その中には、他社情報の収集も含まれる(甲328~甲330)。また、「通訳,翻訳」についても、人力ではないAIを利用した新しい事業化の準備を進めている(乙13)。
8 商標法第4条第1項第7号該当性について
被請求人の代表者が研修に参加したことを述べ、研修参加が先で、申請が後と記述し、当該研修で「Scrum」が商標登録されていないことを知り、それを奇貨として商標登録を申請したと述べているが、商標登録の申請が先で、当該研修は後である(甲328~甲330)。
そして、「Scrum」はラグビーの「スクラムを組む」、「団結」と認識するのが常識である。
9 結論
以上により、本件商標は、請求人の主張するいずれにも該当しない。
第4 当審の判断
1 利害関係について
請求人は、「Scrum」に関わる各種役務を提供している事業者であり、被請求人から請求人の一部に対して警告状が送付されている(甲4)旨主張し、被請求人は、請求人の一部に対して警告状を送付したことは事実である旨主張している。
そうすると、請求人は、本件審判を請求することについて利害関係を有するものであって、本件審判の請求人適格を有するというべきである。
2 請求人及び被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)「Scrum」の文字について
ア 「Scrum」は、アジャイルソフトウェア開発方法の一つであり、1986年に、大学教授であるN氏とT氏が、日本とアメリカとの「新製品開発のプロセス」について組織比較を行った研究に関して発表した論文における理論が元となっており(甲31)、「Scrum」の名称は、当該論文の中で、日本発の製品開発手法をラグビーのスクラムに喩えて「Scrum(スクラム)」として紹介されたことに由来している。
その後、当該論文に着想を得たJ.S氏、K.S氏らが、現在の「スクラム」ソフトウェア開発方法をまとめ、1995年に開催されたプログラミングに関する国際会議において発表されたものである。
イ 「Scrum」の語は、「Weblio英和・和英辞書」、「goo辞書」等の辞書において、ラグビーの「スクラム」としての記載がある(乙18、乙19)ほか、「最新パソコン・IT用語事典」(2009年1月10日発行)、「最新 パソコン・IT用語事典」(2010年4月1日及び2011年4月25日発行)、「ソフトウェアテスト標準用語集」(2014年3月28日発行)、「IT用語辞典」(2015年2月7日作成)、「アジャイル用語集」(2018年3月11日作成)等、本件商標の登録査定前の2009年から2018年にかけて発行されたコンピュータやIT関連の用語事典等において、「アジャイルソフトウェア開発手法の一つ」として定義付けられている(甲32~甲36、甲38)。
ウ 本件商標の登録査定前の2011年から2017年にかけて発行された「Scrum」の提唱者であるJ.S氏、K.S氏作成の「Scrum Guide(スクラムガイド)」(2011年10月、2013年7月、2016年7月、2017年11月発行)において、「Scrum」の定義や理論等が記載されている(甲39~甲42)。
エ 本件商標の登録査定前の2002年から2018年にかけて発行された「日経コンピュータ」、「日経ITプロフェッショナル」、「日経SYSTEMS」、「日経ソフトウェア」等のコンピュータやIT関連の雑誌のほか、「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」、「一橋ビジネスレビュー」、「日経コミュニケーション」等のビジネス関連の雑誌(甲43~甲44、甲47~甲50、甲52、甲54、甲61、甲63、甲65、甲68~甲70、甲74、甲77、甲87、甲105~甲132、甲134~甲147、甲151、甲153、甲155~甲156、甲158~甲162、甲164、甲166~甲182、甲184~甲189、甲191、甲193~甲195、甲198~甲204、甲206~甲207、甲209~甲213)、本件商標の登録査定前の2010年、2011年、2012年、2017年、2018年に発行された「日本経済新聞」、「日刊工業新聞」等の新聞(甲60、甲66~甲67、甲83~甲84、甲89、甲238~甲240)及び本件商標の登録査定前の2004年から2018年に作成されたウェブサイトやブログ等(甲45~甲46、甲51、甲53、甲55~甲59、甲72、甲80~甲82、甲88、甲242~甲271)において、「Scrum(スクラム)」の定義や内容についての記載がある。
オ 本件商標の登録査定前の2003年から2017年にかけて「アジャイルソフトウェア開発スクラム」(2003年9月20日発行)、「スクラム入門-アジャイルプロジェクトマネジメント」(2004年9月13日発行)、「スクラムを活用したアジャイルなプロダクト管理」(2012年11月30日発行)、「アジャイル開発とスクラム」(2011年1月17日発行)、「SCRUM BOOT CAMP THE BOOK」(2013年2月12日発行)、「エッセンシャルスクラム」(2014年7月7日発行)、「スクラム-仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術」(2015年6月25日発行)、「スクラム現場ガイド」(2016年2月29日発行)等の「Scrum(スクラム)」を題号、主たる題材・内容としている書籍(甲282~甲296)や「システム価値向上を目的としたScrumの試行・評価」(2013年9月発行)、「研究開発プログラムマネジメントのためのスクラム・フレームワーク」(2016年発行)、「社内業務システムの統合におけるSCRUM開発手法の適用事例」等の「Scrum(スクラム)」を題号、主たる題材・内容としている論文(甲299~甲308)が発行又は掲載されている。
カ 本件商標の登録査定前の2011年から2018年にかけて、請求人を含む複数の企業により、「Scrum(スクラム)」を内容とする教育プログラム等の研修やセミナー等が開催されている(甲53、甲58、甲71~甲73、甲75、甲78~甲80、甲86、甲88~甲89、甲244、甲259、甲328~甲330)。
(2)上記(1)で認定した事実によれば、「Scrum」の文字は、1986年に発表された論文を元に、1995年に開催されたプログラミングに関する国際会議において発表されたものであること、本件商標の登録査定前の2009年から2018年にかけて発行されたコンピュータ、IT関連の事典等において「アジャイルソフトウェア開発手法の一つ」として定義付けられていること、2011年から2017年にかけて発行された「Scrum」の提唱者であるJ.S氏、K.S氏作成の「Scrum Guide(スクラムガイド)」において「Scrum」の定義や理論等が記載されていること、本件商標の登録査定前の2002年から2018年にかけて発行された複数のコンピュータやIT関連の雑誌、ビジネス関連の雑誌、新聞、ウェブサイトやブログにおいて「Scrum(スクラム)」の定義や内容についての記載があること、本件商標の登録査定前の2003年から2017年にかけて、「Scrum(スクラム)」を題号、主たる題材・内容としている書籍、論文が発行又は掲載されていること、本件商標の登録査定前の2011年から2018年にかけて、「Scrum(スクラム)」を内容とする教育プログラム等の研修やセミナー等が開催されていることが認められる。
以上の事実を総合勘案すると、本件商標の登録査定時に、「Scrum」の文字は、コンピュータ、IT関連の分野において、「アジャイルソフトウェア開発手法の一つ」を表すものとして理解、認識されていたということができる。
3 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、「Scrum」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、上記2のとおり、本件商標の登録査定時に、コンピュータ、IT関連の分野において「アジャイルソフトウェア開発手法の一つ」を表すものとして理解、認識されていたということができる。
そして、インターネット利用者が急激に増えた昨今の高度情報通信ネットワーク社会においては、当該ソフトウェア開発手法の知識を得ようとする需要者層の範囲も広がっており、当該開発手法の知識を得ようとする需要者は、通常、書籍、研修会及びセミナー等の手段の活用を試みるところ、上記2(2)のとおり、本件商標の登録査定前の2003年から2017年にかけて、「Scrum(スクラム)」を題号、主たる題材・内容としている書籍、論文が発行等されていること、本件商標の登録査定前の2011年から2018年にかけて、「Scrum(スクラム)」を内容とする教育プログラム等の研修やセミナー等が開催されていることが認められる。
また、本件指定役務中には、上記と関連する書籍の提供に関する役務や教育訓練、研修会、セミナー等に関する役務が含まれているものである。
そうすると、本件商標は、その指定役務中、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,情報管理システムに関する教育訓練研修,情報技術の使用に関する教育訓練研修,それらのコンピュータ・電気通信を利用して行う教育訓練,組織の経営管理及び事業の変革管理・業務改善・後方支援への取り組みに関する教育訓練研修,マネジメント・コミュニケーション・営業・リーダーシップ・人材育成の能力向上の教育訓練研修,マネジメント・コミュニケーション・営業・リーダーシップ・人材育成の能力向上の教育・研修に関するコンサルティング・助言・指導及び情報の提供,プログラム・プロジェクト・ポートフォリオの管理及び作成のための教育訓練研修,コーチング(教育及び訓練),資格の認定及び付与の企画・運営並びにこれに関する情報の提供,資格検定試験並びに資格認定試験の企画・運営又は実施並びにこれに関する情報の提供,試験問題の作成,教育情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催,ビジネス・事業戦略・科学・技術のセミナー・シンポジウム・会議・講演会・研修会・討論会・講習会の企画・運営・開催に関する助言・指導及び情報の提供,その他のセミナー・シンポジウム・会議・講演会・研修会・討論会・講習会の企画・運営・開催に関する助言・指導及び情報の提供,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,インターネット又はコンピュータネットワークを通じた通信端末を用いた書籍・雑誌の供覧,電気通信回線を通じて行う教育及び研修用電子出版物の提供に関する情報の提供」(以下「結論掲記の指定役務」という。)との関係において、アジャイルソフトウェア開発手法の一つである「Scrum」を内容とする役務について使用するときは、本件商標は、単にその役務の質(内容)を表示するにすぎず、自他役務の識別標識としての機能を果たさないものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記ソフトウェア開発手法以外を内容とする役務について使用するときは、役務の質(内容)について誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
4 結論掲記の指定役務以外の役務についての商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号該当性について
(1)請求人の提出に係る証拠からは、結論掲記の指定役務以外の役務について、本件商標である「Scrum」の文字が、役務の質等を直接的に表すものとして一般に使用されているとまではいえず、また、本件商標に接する取引者、需要者が、本件商標を役務の質等として認識するとみるべき特段の事情は見いだせない。
そうすると、本件商標は、その指定役務中、結論掲記の指定役務以外の指定役務に使用をしても、役務の質を表示するものとはいえず、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。
したがって、本件商標は、結論掲記の指定役務以外の役務については、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
(2)請求人の提出に係る証拠からは、結論掲記の指定役務以外の役務について、本件商標である「Scrum」の文字が、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないとまではいえず、また、本件商標に接する取引者、需要者が本件商標を自他役務の識別標識として認識することができないとみるべき特段の事情は見いだせない。
そうすると、本件商標は、これを結論掲記の指定役務以外の役務に使用をしても、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものとはいえず、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。
したがって、本件商標は、結論掲記の指定役務以外の役務については、商標法第3条第1項第6号に該当しない。
(3)本件商標は、結論掲記の指定役務以外の役務については、上記(1)のとおり、役務の質を直接的に表示するものではないから、これをその当該役務に使用しても役務の質の誤認を生ずるおそれのないものである。
したがって、本件商標は、結論掲記の指定役務以外の役務については、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、「Scrum」の文字を標準文字で表してなるところ、その商標の構成自体において公序良俗を害するおそれがあるものでないことは明らかであり、請求人が主張する被請求人の本件商標の出願の経緯や警告状の送付等の経緯を踏まえても、被請求人が本件商標を登録出願したことをもって本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあるとまではいえない。
また、本件商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではなく、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる証拠もない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 商標法第3条第1項柱書について
商標法第3条第1項柱書における「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用している商標、あるいは、将来、自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(知的財産高等裁判所平成24年(行ケ)第10019号、平成24年5月31日判決言渡)。
そうすると、本件商標権者が、本件商標の登録査定時において、本件商標を自己の業務に係る指定役務について現に使用していなくとも、将来においてその使用をする意思があれば、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するといえるところ、本件商標権者が情報システム、情報セキュリティ、システム開発等の情報技術(IT)に関するセミナー等を提供している企業であること(甲3)、本件商標権者は、第35類「職業のあっせん,人材募集、人材の紹介,求人情報の提供」(乙11)、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」(乙12)、「通訳,翻訳」について(乙13)について、本件商標を使用する事業の準備を進めている等、本件商標について使用する意思がある旨主張していることからすれば、本件商標権者は、本件請求に係る指定役務中、少なくとも上記の指定役務について本件商標を使用する意思があり、かつ、近い将来において使用する予定のある商標ということができる。
また、その他の指定役務についても、請求人が提出する全証拠から、本件商標権者が、本件商標の登録査定時において、将来、自己の業務に係る指定役務に本件商標を使用する意思を有していたことを否定するに足りる事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備していないということはできない。
7 被請求人の主張について
(1)被請求人は、本件商標の登録査定時において、「Scrum」というソフトウェア開発手法が一般的であったとはいえず、「ソフトウェア開発」は、第42類に属する役務であるのに対し、本件審判請求に係る指定役務は、第35類及び第41類である旨主張している。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号の判断時期は登録査定時であるところ、上記2及び3のとおり、本件商標の登録査定時において、「Scrum」の文字は、コンピュータ、IT関連の分野において複数のコンピュータ、IT関連の事典、雑誌、新聞、ウェブサイト、書籍、論文等を通じて「アジャイルソフトウェア開発手法の一つ」を表すものとして、理解、認識されていたということができ、また、本件商標の登録査定時において、複数の事業者によって「Scrum」を内容とする教育プログラム等の研修やセミナー等が開催されている事実があることから、本件商標は、第41類の結論掲記の指定役務である書籍の提供関連、教育訓練、研修やセミナーの開催等の役務との関係において、アジャイルソフトウェア開発手法一つである「Scrum」を内容とする役務について使用するときは、単にその役務の質(内容)を表示するにすぎないものというのが相当であるから、ソフトウェア開発の役務が第42類であるとしても、それが、上記判断を左右するものではない。
(2)被請求人は、「Scrum」の文字について、辞書(乙18、乙19)に掲載されている意味は、ほとんどがラグビーに関するものであるから、「Scrum」から、明らかに認識されるものは「スクラムを組む」等である旨主張する。
しかしながら、「Scrum」の文字がラグビーとしての「スクラム」の意味を有するものであるとしても、他方で、当該文字が、コンピュータ、IT関連の分野においては、アジャイルソフトウェア開発手法一つである「Scrum」を理解、認識させることを否定できるものではない上、ソフトウェア開発手法のような知識を得ようとする者は、当該知識が体系的にまとめられた書籍、教育訓練や研修会等の手段を通じてアプローチするのが一般的であるから、結論掲記の指定役務の分野における需要者にアジャイルソフトウェア開発手法一つとしての「Scrum」を理解、認識させる場合も少なくないものというべきである。
(3)よって、被請求人の上記主張はいずれも採用することはできない。
8 むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定役務中、結論掲記の指定役務については、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
しかしながら、本件商標の指定役務中、結論掲記以外の指定役務については、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号及び同項第7号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-890056