特許異議申立
2019-700857
鉄道車両の台車枠荷重負荷装置
- 審判番号
- 2019-700857
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-086126外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年10月28日
- 審決日
- 2020年07月16日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本車輌製造株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
- 【異議申立人】山崎 英男
- 分類
- P1651.113-YAA(B61F) / P1651.121-YAA(B61F) / P1651.537-YAA(B61F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6509620号発明「鉄道車両の台車枠荷重負荷装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6509620号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第6509620号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6509620号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成27年4月20日に出願され、平成31年4月12日にその特許権の設定登録がされ、令和1年5月8日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和1年10月28日 :特許異議申立人 山崎英男(以下「申立人」と
いう。)より請求項1~4に係る特許に対する
特許異議の申立て
令和2年 1月20日付け:取消理由通知書
同年 3月13日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 3月26日付け:訂正請求があった旨の通知書(特許法第120
条の5第5項)
同年 4月23日 :特許異議申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和2年3月13日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、それぞれ「本件明細書」、「本件特許請求の範囲」といい、図面を含めて「本件明細書等」という。)を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項1に、
「軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記荷重負荷部が、前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能な回転機構を有していること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
と記載されているのを、
「軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること、
前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、
前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられていること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
本件特許請求の範囲の訂正前の請求項3に、
「請求項1または請求項2に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記回転機構は、前記支柱に設けられ、前記軸線の方向に対し、前記台車載置部より前記荷重負荷部に近い前記支柱の上端部側寄りに配置されていること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
と記載されているのを、
「請求項1に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記回転機構は、前記軸線の方向に対し、前記台車載置部より前記荷重負荷部に近い前記支柱の上端部側寄りに配置されていること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
に訂正し、請求項2とする。
(3)訂正事項3
本件特許請求の範囲の訂正前の請求項4に、
「請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持部と、からなり、
前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持部と相対的に回動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
と記載されているのを、
「請求項1または請求項2に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持固定柱と相対的に回動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
に訂正し、請求項3とする。
(4)訂正事項4
本件特許請求の範囲の訂正前の請求項2に、
「請求項1に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記一対の支柱は、前記左右方向にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
と記載されているのを、
「請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記一対の支柱は、前記左右方向にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
に訂正し、請求項4とする。
(5)訂正事項5
本件明細書の段落【0008】に、
「本発明に係る鉄道車両の台車枠荷重負荷装置は、上記目的を達成するため、以下の構成を有する。
(1)軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記荷重負荷部が、前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能な回転機構を有していること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記一対の支柱は、前記左右方向にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記回転機構は、前記支柱に設けられ、前記軸線の方向に対し、前記台車載置部より前記荷重負荷部に近い前記支柱の上端部側寄りに配置されていること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持部と、からなり、前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持部と相対的に回動すること、を特徴とする。」
と記載されているのを、
「(1)軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること、前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられていること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記回転機構は、前記軸線の方向に対し、前記台車載置部より前記荷重負荷部に近い前記支柱の上端部側寄りに配置されていること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持固定柱と相対的に回動すること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、前記一対の支柱は、前記左右方向にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、を特徴とする。」
に訂正する。
本件訂正請求は、一群の請求項〔1~4〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~4〕について請求されたものである。
2 訂正の適否
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1のうち訂正前に「前記荷重負荷部が、前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能な回転機構を有していること」を訂正後に「前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること」に訂正する訂正事項は、令和2年1月20日付け取消理由通知書で通知した記載不備の理由を解消するための訂正であって、本件明細書の段落【0022】の「支柱20は、2つともそれぞれ、回転支持部20Aと被回転支持部20Bとからなる。回転支持部20Aは、図4に示すように、被回転支持部20Bの上で鉛直方向VT上向きから、水平方向である左右方向RLに90度屈曲した略逆L字型形状に形成されている。この回転支持部20Aは、その略逆L字型形状のうちの水平方向の部分である上端部21を有している。この上端部21には、荷重負荷部30が取付けられている。被回転支持部20Bは、回転支持部20Aを、その下方で支え、回転支持部20Aと被回転支持部20Bとは、回転機構40を介して連接されている。」との記載、段落【0023】の「回転機構40は、支柱20の鉛直方向VTに沿う軸線Mに対し、台車載置部10より荷重負荷部30に近い上端部21側寄りに配置されており、荷重負荷部30を、軸線Mを中心に、本実施形態では、90度旋回可能とする機構である。」との記載、及び【図4】等の図示内容に基づいて訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項1のうち訂正後に「前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられていること」を追加する訂正事項は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「一対の支柱」に関し、訂正前の請求項4の「前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持部と、からなり」との記載及び【図4】等の図示内容に基づいて「前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること」を限定し、さらに「回転機構」に関し、訂正前の請求項4の「前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持部と相対的に回動すること」との記載、本件明細書の段落【0022】の「被回転支持部20Bは、回転支持部20Aを、その下方で支え、回転支持部20Aと被回転支持部20Bとは、回転機構40を介して連接されている。」との記載、及び段落【0023】の「回転機構40では、軸受43とリングギア44が、回転支持部20Aの下端に取り付けられた回転側接続板41と、被回転支持部20Bの上端に取り付けられた被回転側接続板42との間に、配設されている。」との記載、並びに【図6】等の図示内容に基づいて「前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられていること」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項2は、訂正前の請求項3について、訂正後の請求項1に回転機構が支柱に設けられる事項が実質的に含まれるようになったところ、かかる事項の重複の記載を避けるため「前記支柱に設けられ、」との事項を削除した上で、請求項2に繰り上げるとともに引用関係を整合させたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項3は、上記アで説示したように、訂正後の請求項1において「前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられている」との事項を追加したところ、訂正前の請求項4について、かかる事項の重複を避けるために「前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持部と、からなり」との事項を削除し、さらに、「被回転支持部」を「被回転支持固定柱」と訂正し訂正後の請求項1の用語と整合を図った上で、請求項3に繰り上げるとともに請求項の引用関係を整合させたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項4は、訂正前の請求項2を、請求項4に繰り下げるものであり、これに合わせて引用関係を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
オ 訂正事項5は、上記訂正事項1~4の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕についての訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること、
前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、
前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられていること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記回転機構は、前記軸線の方向に対し、前記台車載置部より前記荷重負荷部に近い前記支柱の上端部側寄りに配置されていること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記回転機構では、前記回転支持部が、電動モータの回転力に基づいて、前記被回転支持固定柱と相対的に回動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記一対の支柱は、前記左右方向にスライド可能な構造で立設され、互いに離間する向き、または近接する向きに移動すること、
を特徴とする鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~4に係る特許に対して令和2年1月20日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
[取消理由1]
請求項1~4に係る発明は、特許請求の範囲の記載が不備なため、特許法第36条第6項第1号及び同条同項第2号の規定に適合するものではない。
よって、請求項1~4に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[取消理由2]
請求項1に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された下記引用文献1に記載された発明に基いて、請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された引用文献2に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
記
[引用文献等一覧]
・引用文献1:小笠原誠、「業務研究 台車組立装置活用による軸継ぎ手偏い測定方法の改善」、日本鉄道車両機械技術協会誌「R&m」Vol.19、2011年12月発行、60~63ページ
・引用文献2:特開2012-86832号公報
なお、引用文献1及び2は、申立人が証拠として提出した甲第2及び1号証である。
第5 当審の判断
1 各刊行物の記載事項等
(1)引用文献1
(1-1)記載事項 (下線は当審で付した。以下同様。)
ア 60ページ左欄7~9行
「保有車両数は2011年9月現在、特急車170両、通勤車908両、検測車1両の1079両で、大野総合車両所においては重要部および全般検査を主な業務としています。」
イ 60ページ左欄下から10行~下から7行
「大野総合車両所における台車の分解組立作業は、台車枠、輪軸、軸ばね、基礎制動装置など細部まで分解、点検、整備を行い、摩耗・摺動部位の測定や台車枠・ボルト類に関しては探傷検査を行っています。」
ウ 60ページ右欄5~9行
「台車組立装置は、2機(1号機・2号機)導入されました。主な機能は以下の内容となります(写真-2)。
・軸箱支持や駆動装置が自動でセット
・台車組立時、台車への垂直方向の荷重を掛けて組立が可能」
エ 60ページ右欄下から7行~末行
「これらの機能が装備されており、台車組立装置導入により台車へ垂直方向の荷重を掛けることが可能となった。その結果軸ばねを圧縮することにより各種部品の取り付けが容易になったほか、昇降機能や、重量部品の固定化や安定化により、作業の安全性や作業性が大幅に改善され、車形によりますが、約10%~18%の作業時間の軽減が図られました(写真-3、写真-4)。」
オ 62ページ左欄下から16行~下から14行
「現状、台車組立装置で台車組立時に掛ける荷重は、軸ばねを圧縮することで、軸ばね取り付けボルトの締付けや軸箱安全吊などの取り付けを容易にするためでした。」
カ 以下の「写真-2」及び「写真-4」が掲載されている。(符号は当審が付加。)
【写真-2】
【写真-4】
(1-2)認定事項
引用文献1には、大野総合車両所における鉄道車両の台車組立装置が記載されているところ、上記(1-1)の各記載事項から、次のことが認定できる。
ア 台車は、記載事項イから、台車枠、輪軸及び軸ばねを備え、記載事項ウから軸箱を備えること。また、記載事項カの【写真-2】において、3は台車枠、6は輪軸、4は軸箱であり、5には台車を載置する台車載置部が示されている。そして、鉄道車両の台車において、軸箱と台車枠との間に軸ばねを備えることは技術常識であるから、台車組立装置が、軸箱4と台車枠3との間に軸ばねを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部5を備えること。
イ 記載事項ウの「台車組立時、台車への垂直方向の荷重を掛けて組立が可能」との記載、記載事項エの「台車組立装置導入により台車へ垂直方向の荷重を掛けることが可能となった。その結果軸ばねを圧縮することにより各種部品の取り付けが容易になった。」との記載、及び記載事項オの「台車組立装置で台車組立時に掛ける荷重は、軸ばねを圧縮することで、軸ばね取り付けボルトの締付けや軸箱安全吊などの取り付けを容易にする」との記載から、台車組立装置は、軸ばねを圧縮する、台車への垂直方向の荷重を掛ける手段を備えること。
また、前記台車への垂直方向の荷重を掛ける手段は、記載事項カの【写真-2】において1として示されており、台車の輪軸6の方向に沿う左右方向に対し、台車載置部5の両側に立設した一対の2で示された支柱の各上端部に備えること。
そして、前記台車への垂直方向の荷重を掛ける手段1は、台車枠3との位置関係及び軸ばねを圧縮するという機能からみて、台車載置部5に置かれた台車の台車枠3に、荷重を掛けて軸ばねを圧縮させるものであること。
ウ 【写真-2】の支柱2の状態Aと【写真-4】の支柱2の状態Bの変化から、台車への垂直方向の荷重を掛ける手段1を前記支柱2に沿う軸線を中心に旋回可能にすること。
(1-3)引用文献1に記載された発明
上記(1-1)及び(1-2)に基づいて、本件発明1の発明特定事項に倣って整理すると、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
<引用発明>
「軸箱と台車枠との間に軸ばねを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の輪軸の方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、台車への垂直方向の荷重を掛ける手段と、を備え、台車への垂直方向の荷重を掛ける手段により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸ばねを圧縮させる鉄道車両の台車組立装置において、
前記台車への垂直方向の荷重を掛ける手段を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする、
鉄道車両の台車組立装置。」
(2)引用文献2
(2-1)記載事項
「【0001】
本発明は、鉄道車両用台車を構成する輪軸とその上に搭載される台車枠とを、簡易且つ正確に位置決めして組み立てるための鉄道車両用台車の組立方法に関する。」
「【0011】
次に、本発明に係る鉄道車両用台車の組立方法について、その一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、台車組立装置の一実施形態を示した平面図であり、図2は、図1のA部分について示した部分拡大図である。鉄道車両用台車は、こうした台車組立装置1に輪軸と台車枠とが搬入されて組立が行われる。台車組立装置1は、その中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有している。」
「【0015】
続いて、鉄道車両用台車枠を構成する台車枠は、台車組立状態で軸バネの加圧を行う荷重負荷機10によって位置決めが行われるよう構成されている。台車組立時には、台車枠側に固定されたモータと輪軸側に設けられたギヤとの連結が定員荷重状態で行われる。荷重負荷機10は、運行時の定員荷重(例えば6トン)をかけた状態にまで軸バネを圧縮させるためのものである。そして、本実施形態では、その荷重負荷機10が台車枠を位置決めするための構成を有している。
【0016】
図1に示すように4基の荷重負荷機10は、それぞれが定盤部3に対して左右方向に移動可能な構成がとられている。図4は、そうした荷重負荷機10を示した側面図である。荷重負荷機10は、ベース12上に設けられたLMガイド13と、移動用アクチュエータであるロッドレスシリンダ14によって移動可能な構成がとられている。そのため、ロッドレスシリンダ14の作動によってLMガイド13に案内された直線移動を可能とする荷重負荷機10は、実線で示す定盤部3に接近した作業位置と、二点鎖線で示す定盤部3から離れた待機位置とで停止する。台車枠は、作業位置に配置された4基の荷重負荷機10よって、その中心位置を合わせた芯出し状態で支持される。
【0017】
荷重負荷機10は、軸箱支持装置の軸バネに定員荷重をかけるための圧縮機構15と、その圧縮機構15を昇降させるための昇降機構16を備えている。特に、圧縮機構15は、軸箱支持装置の構造を利用して荷重をかけるようにしたものであるため、ここで簡単に軸箱支持装置について説明する。図7は、軸箱支持装置の一例を示した側面図である。この軸箱支持装置300は、輪軸301の両端部を軸受によって回動可能に保持する軸箱302が設けられてる。軸箱302のレール方向の前後には、台車枠303との間に軸バネ307が介装されている。
【0018】
また、軸箱支持装置300には、鉄道車両における上下方向の振動減衰手段として軸ダンパ310が設けられている。軸箱302側と台車枠303側には、上下の位置に受座311,312が形成され、軸ダンパ310はこの受座311,312に両端が連結され、上下方向に配置される。本実施形態の荷重負荷機10は、この受座311と軸箱302を利用して圧縮機構15による荷重を上下から加えるようにしたものである。荷重負荷機10は、先ず受座311を介して台車枠303を支持した後、昇降機構16によって台車枠303を輪軸301へ下降させ、次いで受座311と軸箱302の底面302aを介して圧縮機構15による軸バネ307の圧縮を行う。そこで、先ず簡単に軸バネ307の圧縮について説明する。」
「【0020】
昇降機構16は、垂直に配置されたネジ軸23に昇降ナット24が嵌め合わされたボールネジによって構成され、非回転の昇降ナット24に対して圧縮機構15が設けられている。圧縮機構15は、軸箱支持装置300の受座311と軸箱302の底面302a(図7参照)をそれぞれ上下から挟み込む上旋回アーム25と下旋回アーム26が設けられている。上旋回アーム25と下旋回アーム26は、圧縮用アクチュエータである油圧シリンダ27の作動によってコイルバネ18を圧縮して上下の間隔を狭め、作動油を解放することによりコイルバネ18の付勢力で上下の間隔を広げるよう構成されている。」
また、以下の【図1】及び【図4】が示されている。
【図1】
【図4】
(2-2)認定事項
上記(2-1)の記載事項から以下の事項が認定できる。
ア 段落【0011】の「鉄道車両用台車は、こうした台車組立装置1に輪軸と台車枠とが搬入されて組立が行われる。台車組立装置1は、その中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有している。」との記載から、中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有する鉄道車両用台車の台車組立装置1であること。
イ 段落【0015】の「鉄道車両用台車枠を構成する台車枠は、台車組立状態で軸バネの加圧を行う荷重負荷機10によって位置決めが行われるよう構成されている。」との記載、段落【0017】の「軸箱302のレール方向の前後には、台車枠303との間に軸バネ307が介装されている。」との記載及び【図7】から、鉄道車両用台車は、軸箱302と台車枠303との間に軸バネ307を備えること。さらに段落【0017】の「荷重負荷機10は、軸箱支持装置の軸バネに定員荷重をかけるための圧縮機構15と、その圧縮機構15を昇降させるための昇降機構16を備えている。」との記載を加味すると、荷重負荷機10は、軸箱302のレール方向の前後には、台車枠303との間に介装されている軸箱支持装置300の軸バネ307に定員荷重をかけるための圧縮機構15と、その圧縮機構15を昇降させるための昇降機構16を備えていること。
ウ 上記イを踏まえると、段落【0020】の「昇降機構16は、垂直に配置されたネジ軸23に昇降ナット24が嵌め合わされたボールネジによって構成され、非回転の昇降ナット24に対して圧縮機構15が設けられている。」との記載、及び【図1】、【図4】から、荷重負荷機10は、昇降機構16を収容する上下方向に延びる支柱を備え、該支柱の各上端部に定員荷重をかけるための圧縮機構15を備えること。
(2-3)引用文献2に記載された事項
上記(2-1)の記載事項及び(2-2)の認定事項から、引用文献2には、以下の事項が記載されていると認められる。
「中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有する鉄道車両用台車の台車組立装置1であって、鉄道車両用台車は、軸箱302と台車枠303との間に軸バネ307を備え、前記荷重負荷機10は、前記軸箱302のレール方向の前後には、前記台車枠303との間に介装されている軸箱支持装置300の軸前記バネ307に定員荷重をかけるための圧縮機構15と、その圧縮機構15を昇降させるための昇降機構16を備えるとともに、該昇降機構16を収容する上下方向に延びる支柱を備え、該支柱の各上端部に定員荷重をかけるための圧縮機構15を備え、前記圧縮機構15は、前記軸箱支持装置300の受座311と前記軸箱302の底面302aをそれぞれ上下から挟み込む上旋回アーム25と下旋回アーム26が設けられている鉄道車両用台車の台車組立装置1において、
4基の荷重負荷機10の支柱は、それぞれが定盤部3に対して左右方向に移動可能に立設されていること。」
2 対比・判断
2-1 取消理由1について
(1)取消理由1の内容
当審で通知した取消理由通知における取消理由1は以下のとおりのものである。
(1-1)請求項1について
請求項1に「前記荷重負荷部が、前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能な回転機構を有している」と記載されているが、「前記荷重負荷部が、・・・回転機構を有している」は、その具体的な構成が不明確である。
また、願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0022】の「支柱20は、2つともそれぞれ、回転支持部20Aと被回転支持部20Bとからなる。回転支持部20Aは、図4に示すように、被回転支持部20Bの上で鉛直方向VT上向きから、水平方向である左右方向RLに90度屈曲した略逆L字型形状に形成されている。この回転支持部20Aは、その略逆L字型形状のうちの水平方向の部分である上端部21を有している。この上端部21には、荷重負荷部30が取付けられている。被回転支持部20Bは、回転支持部20Aを、その下方で支え、回転支持部20Aと被回転支持部20Bとは、回転機構40を介して連接されている。」との記載及び【図4】、【図6】によれば、「回転機構」(回転機構40)は、「支柱」に有しているものと理解できるから、本件明細書の記載内容とも整合していない。
(1-2)請求項2について
請求項1を引用する請求項2の記載も、請求項1と同様に不明確であり、本件明細書の記載内容とも整合していない。
(1-3)請求項3について
請求項3は請求項1または請求項2を引用するところ、請求項3には「前記回転機構は、前記支柱に設けられ」と記載されており、請求項1に記載されている「前記荷重負荷部が、・・・回転機構を有している」との構成を前提としつつ、「前記回転機構は、前記支柱に設けられ」との構成を有することは不明確である。」
(2)判断
本件訂正により、訂正前に「前記荷重負荷部が、前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能な回転機構を有していること」とあったのを、訂正後に「前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること」に訂正されたので、「回転機構」の機能が明確になったとともに、本件明細書の段落【0022】の記載内容とも整合したので、取消理由1は解消した。
また、請求項1を引用する請求項2~4の記載も、同様に取消理由1は解消した。
2-2 取消理由2について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、
後者の「軸ばね」は、前者の「軸バネ」に相当するから、後者の「軸箱と台車枠との間に軸ばねを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部」は、前者の「軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部」に相当する。
後者の「台車の輪軸の方向」は、前者の「台車の車軸方向」に相当し、後者の「台車への垂直方向の荷重を掛ける手段」は、前者の「押圧力を発生させる荷重負荷部」に相当するから、後者の「台車の輪軸の方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、台車への垂直方向の荷重を掛ける手段、を備え」との構成は、前者の「台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部、を備え」との構成に相当する。また、後者の「台車への垂直方向の荷重を掛ける手段により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸ばねを圧縮させる鉄道車両の台車組立装置」は、前者の「荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置」に相当する。
後者の「前記台車への垂直方向の荷重を掛ける手段を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする」との構成と、前者の「前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有している」との構成とは、「前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする」との構成で共通する。
後者の「鉄道車両の台車組立装置」は、前者の「鉄道車両の台車枠荷重負荷装置」に相当する。
以上によれば、本件発明1と引用発明とは、
「軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、
前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする、
鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」で一致し、
以下の点で相違するといえる。
<相違点1>
本件発明1は、「前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からな」るものであって、「前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする」との構成として、「回転機構を有して」おり、「前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられている」のに対して、
引用発明は、「前記台車への垂直方向の荷重を掛ける手段を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする」構成を有するが、かかる「支柱」の構成及び「回転機構」が特定されていない点。
イ.判断
引用発明の「支柱」は、摘示カの【写真-2】と【写真-4】を見比べてみると、2で示された支柱の上端部に描かれたゼブラ模様、及び該ゼブラ模様に至るまでの支柱本体の側面の形状に注視すれば、支柱の旋回は、支柱の根元から旋回するものと理解できるから、引用発明は「荷重を掛ける手段」を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱とから構成されている、ということはできない。そして、引用発明において、「前記台車への垂直方向の荷重を掛ける手段を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とする」構成として、回転機構を支柱の根元に配置することを想起できたとしても、支柱を被回転支持固定柱と回転支持部に分けた上で、その間に回転機構を設ける構成にすべき根拠もないことから、回転機構を被回転支持固定柱と回転支持部の間に設けることまでは、容易想到ということはできない。
また、申立人が令和2年4月23日に提出された意見書において提示された参考文献1及び2においても、鉄道車両の台車枠荷重負荷装置において、回転機構を被回転支持固定柱と回転支持部の間に設ける構成が明記されているとはいえないから、かかる構成が周知・慣用ということもできない。
したがって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は容易想到といえるものでないから、本件発明1は引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明4について
上記取消理由2の対象となった請求項2に係る発明は、訂正後の本件発明1の構成を含む本件発明4に対応するものであるところ、かかる本件発明4は本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものである。そして、引用文献2に記載された事項は、上記1(2)(2-3)で述べたように「・・・鉄道車両用台車の台車組立装置1において、4基の荷重負荷機10の支柱は、それぞれが定盤部3に対して左右方向に移動可能に立設されていること。」であって、回転機構を被回転支持固定柱と回転支持部の間に設ける構成は存在しない。
したがって、上記(1)で述べた理由と同様の理由により、本件発明4は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立人が主張する特許異議申立理由の概要
[申立理由1]特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)
請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明に対して新規性を有しないものである。また、請求項2、3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に対して新規性を有しないものである。
[申立理由2]特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
請求項4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)当審の判断
[申立理由1]について
ア 各号証の記載事項等
ア-1 甲第1号証
(ア)記載事項及び認定事項
甲第1号証は、上記引用文献2であるから、甲第1号証の記載事項及び認定事項は、上記「第5 1(2)」の(2-1)及び(2-2)で述べたとおりである。
(イ)甲第1号証に記載された発明
上記(ア)の記載事項及び認定事項から、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。
<甲1発明>
「中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有する鉄道車両用台車の台車組立装置1であって、鉄道車両用台車は、軸箱302と台車枠303との間に軸バネ307を備え、前記荷重負荷機10は、前記軸箱302のレール方向の前後には、前記台車枠303との間に介装されている軸箱支持装置300の前記軸バネ307に定員荷重をかけるための圧縮機構15と、その圧縮機構15を昇降させるための昇降機構16を備えるとともに、該昇降機構16を収容する上下方向に延びる支柱を備え、該支柱の各上端部に定員荷重をかけるための圧縮機構15を備え、前記圧縮機構15は、前記軸箱支持装置300の受座311と前記軸箱302の底面302aをそれぞれ上下から挟み込む上旋回アーム25と下旋回アーム26が設けられている鉄道車両用台車の台車組立装置1。」
ア-2 甲第2号証
甲第2号証は、上記引用文献1であるから、甲第2号証の記載事項、認定事項及び甲第2号証に記載された発明(以下「甲2発明」という。)は、上記「第5 1(1)」の(1-1)、(1-2)及び(1-3)」で述べたとおりである。
イ 対比・判断
イ-1 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、
a 後者の「軸箱302と台車枠303との間に軸バネ307を備え」る「鉄道車両用台車」は、前者の「軸箱と台車枠との間に軸ばねを備えた鉄道車両の台車」に相当する。また、後者の「定盤部3」は「鉄道車両用台車」を載置することは明らかであるから、前者の「鉄道車両の台車を載置する台車載置部」に相当する。
b 後者の「荷重負荷機10」は「定盤部3を囲むように4箇所に配置され」ているところ、後者の「荷重負荷機10」が備える「昇降機構16を収容する上下方向に延びる支柱」は、【図1】を参照すると、鉄道車両用台車の輪軸の方向に沿う左右方向に対し、定盤部3の両側に立設した一対の支柱といえるから、前者の「台車の輪軸の方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱」に相当する。また、後者の「該昇降機構16を収容する上下方向に延びる支柱を備え、該支柱の各上端部に定員荷重をかけるための圧縮機構15を備え」との構成は、前者の「台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部、を備え」との構成に相当する。
c 後者の「中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有する鉄道車両用台車の台車組立装置1」における「荷重負荷機10」は、「前記軸箱302のレール方向の前後には、前記台車枠303との間に介装されている軸箱支持装置300の前記軸バネ307に定員荷重をかけるための圧縮機構15」を備えるものであるから、「圧縮機構15」により、「定盤部3」に置かれた「鉄道車両用台車」の「台車枠303」に、荷重を掛けて「軸バネ307」を圧縮させるものといえる。
そうすると、後者の「中央に基準面となる定盤部3と左右2本のレール5、更に定盤部3を囲むように4箇所に配置された荷重負荷機10を有する鉄道車両用台車の台車組立装置1」は、前者の「荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置」に相当する。
以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「軸箱と台車枠との間に軸バネを備えた鉄道車両の台車を載置する台車載置部と、台車の車軸方向に沿う左右方向に対し、台車載置部の両側に立設した一対の支柱の各上端部に、押圧力を発生させる荷重負荷部と、を備え、荷重負荷部により、台車載置部に置かれた台車の台車枠に、荷重を掛けて軸バネを圧縮させる鉄道車両の台車枠荷重負荷装置。」で一致し、
以下の点で相違するといえる。
<相違点A>
本件発明1は、「前記荷重負荷部を前記支柱に沿う軸線を中心に旋回可能とするための回転機構を有していること、前記一対の支柱はそれぞれ、前記荷重負荷部を保持する回転支持部と、その下方で前記回転支持部を支える被回転支持固定柱と、からなること、前記回転機構は、前記被回転支持固定柱と前記回転支持部の間に設けられている」のに対して、
甲1発明は、かかる「回転機構」及び「一対の支柱」に関する構成が特定されていない点。
(イ)判断
本件発明1と甲1発明とを対比すると、相違点Aが存在するから、本件発明1は、甲1発明に対して新規性を有しないものとはいえない。また、本件発明1と甲2発明とを対比すると、上記「2 2-2 (1)ア」で述べたとおり相違点1が存在するから、本件発明1は、甲2発明に対して新規性を有しないものとはいえない。
イ-2 本件発明4、本件発明2について
訂正前の請求項2及び請求項3に係る発明は、本件発明4及び本件発明2にそれぞれ対応するものである。
そして、本件発明4及び本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、甲1発明との対比において、本件発明1と同様に、少なくとも上記相違点Aが存在するから、本件発明4及び本件発明2は、甲1発明に対して新規性を有しないものとはいえない。
[申立理由2]について
訂正前の請求項4に係る発明は、本件発明3に対応するものである。
そして、本件発明3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本件発明3と甲2発明とを対比すると、上記「2 2-2 (1)ア」で述べたとおり上記相違点1が存在し、上記「2 2-2 (1)イ」で述べた理由と同様の理由により、本件発明3は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立人の主張する[申立理由1]及び[申立理由2]により本件請求項1~4に係る特許を取り消すことができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700857