商標取消審判
2019-670009
ファビュラス
- 審判番号
- 2019-670009
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- —
- 請求日
- 2019年04月02日
- 審決日
- 2022年03月31日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】株式会社ソウワプロスパ
- 【請求人代理人】新井 信昭
- 【被請求人】Genovis AB
- 【被請求人代理人】蔵田 昌俊
- 【被請求人代理人】小出 俊實
- 【被請求人代理人】幡 茂良
- 【被請求人代理人】橋本 良樹
- 審判長/審判官
- 審判長 榎本 政実
- 審判官 豊田 純一
- 審判官 小俣 克巳
- 分類
- T132 .1 -Z (W05)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条、商標法第50条第1項、商標法第70条、商標法第50条第2項、商標法第2条第3項第1号、商標法第2条第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の国際登録第1163557号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
国際登録第1163557号商標の指定商品中、第5類「全指定商品」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
第1 本件商標
本件国際登録第1163557号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、2013年2月13日にEUIPOにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年5月2日に国際商標登録出願、第5類「Diagnostic chemical reagents for medical or veterinary purposes, namely ,biochemical and biological reagents to be used for the generation of antibody and/or IgG fragments.」及び第1類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、平成26年5月16日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成31年4月12日にされたものであり、この登録前3年以内の期間を、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書、令和元年7月23日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年8月22日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)を提出し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、本件商標の指定商品中の第5類「全指定商品」(以下「本件審判請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが、使用した事実が認められないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
2 弁駁書の要旨
(1)商標の同一性について
ア 乙第1号証の使用商標について
被請求人は、使用商標は、本件商標と同一の「FabULOUS」の欧文字にほぼ同一の色彩を付したものや、同一の「FabULOUS」の欧文字に色彩を付していないだけのものであることから、本件商標の使用又は社会通念上同一の商標の使用に該当すると主張する。
乙第1号証に表された商標は、「Fab」を紫(青紫)に、「ULOUS」を黄色(橙色)に着色してなるもの(以下「使用商標1」という。)であるから本件商標と社会通念上同一といえる。
イ 乙第2号証の使用商標について
乙第2号証に記載された「FabULOUS」の文字(以下「使用商標2」という。)は事情が異なる。
自他商品の識別標識であるべき商標の使用は、識別力を発揮する状態でなければならないところ、使用商標2はこの要件を満たしていない。
そもそも「FabULOUS」の語は、英和辞典を参照するまでもなく、「すばらしい、すてきな」という識別力のないことの明らかな語でありながら本件商標が登録されている理由を推測すれば、「Fab」を紫(青紫)に、大文字記載の「ULOUS」を黄色(橙色)という互いに目立ちやすい補色ないし反対色の関係に塗り分けれられているからである。
被請求人が主張するように乙第2号証の使用商標2と本件商標が社会通念上同一の商標であるとするなら、色なしであったら審査段階では登録は認められない識別力を登録後に生じさせることに等しい。
これが認められることは、自他商品識別という商標法の目的に照らし不合理である。
したがって、使用商標2の後ろに「R」(「R」は丸付き文字である。)があるが、この主観的行為によって単なる品質表示にすぎない標章に客観的な識別力が宿るはずはない。
識別力を有しない語と社会通念上同一であるという主張は、本件商標に無効理由が存することを被請求人自ら宣言するに等しい。
以上から明らかなように、使用商標2は、本件商標と社会通念上同一ではないから、使用商標2の使用は、商標法第2条第3項に規定された本件商標の使用に該当しない。
(2)乙第1号証の証拠力
ア 乙第1号証の公開日
被請求人の主張によれば、乙第1号証は、富士フィルム和光純薬株式会社(以下「富士フィルム和光純薬社」という。)のホームページの写しとのことである。
乙第1号証各ページには、その最下端に「2019/07/19」との出力日と思われる記載がある。
本件審判の請求の登録は2019年4月8日(審決注:「2019年4月12日」の誤記と認める。)であるところ、当該出力日は、本件審判請求日後であるから、当該出力日の表示は要証期間に本件商標が使用されたことを証明することにはならない。
その他の要証期間の使用を示す記載もない。
よって、乙第1号証は、本件商標の使用証拠として不十分である。
イ 小括
以上のとおり、乙第1号証は、要証期間に使用を証明する証拠力に欠けるから、使用商標1の使用を証明するものではない。
(3)乙第2号証の証拠力
被請求人の主張によれば乙第2号証は、本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)の商品が掲載された富士フィルム和光純薬社の商品カタログであるとのことであり、乙第2号証の最終頁には「掲載内容は、2019年1月時点での情報です。」との記載がある。
しかしながら、以下アないしウのとおり、この記載については疑義を抱かざるを得ない。
ア 富士フィルム和光純薬社の商品カタログ一覧に記載がない(理由1)
乙第2号証に記載されているURLは、同社のホームページにリンクされている。同ホームページの「製品カタログ請求」のリンクボタンから、同社の商品カタログ一覧にアクセスすると、甲第1号証に示す製品カタログ一覧を閲覧することができる。
甲第1号証の出力日付が示すように、同証が出力されたのは本件審判請求登録後(2019年8月16日)である。
しかし、甲第1号証が示す商品カタログの中に、乙第2号証に対応する商品カタログは含まれていない。
これでは取引者及び需要者が乙第2号証に対応する商品カタログにアクセスすることは事実上不可能である。
取引者及び需要者に商品カタログの存在、ひいては商品の存在を周知させるためのカタログ一覧であり、その中に乙第2号証対応の商品カタログが不掲載である。
このことは、乙第2号証のカタログはそもそも製品の周知のためのものではない。すなわち、商標法第2条第3項第8号に該当する展示・頒布・提供の対象となるものではないと考えるのが自然である。
したがって乙第2号証に、要証期間における本件商標の使用を証明する証拠力はない。
イ 同一分野の他のカタログの日付不記載(理由2)
甲第1号証が示す一連の製品カタログのうち、甲乙第2号証が扱う試薬分野と同一分野のカタログはすべてダウンロード可能である。富士フィルム和光純薬社の商品カタログの抜粋(甲2~甲5)によると、本件審判の請求登録後の2019年7月に追加された「糖尿病・代謝/研究用試薬」の商品カタログも含まれるため(甲1)、乙第2号証の商品カタログも時期的にも対象となるべきものである。
同じ分野の商品カタログは、需要者・取引者にとって見やすいように、書誌的事項について同一分野の他の商品カタログと統一デザインで作成されるのが一般的である。
このため甲第2号証ないし甲第5号証の最終頁の書誌欄は、乙第2号証の最終頁と同一形式で記述されている。
しかし、甲第2号証ないし甲第5号証のいずれにも、乙第2号証が有するような日付の記載がない。
そうすると、富士フィルム和光純薬社は、少なくとも試薬分野において本件審判請求の登録後に追加された一連の同分野の最新商品カタログ群にはない日付の記載を、乙第1号証に限って備えていることになる。
これは極めて不自然であるが、このことについて納得できる被請求人の説明がない。
これが、乙第2号証に疑義を抱く第2の理由である。
ウ 契約効力発生前の商品カタログ作成は不自然(理由3)
乙第3号証によれば、両当事者の最終署名日が2019年5月16日である本件商標権者と富士フィルム和光純薬社との製品供給契約の効力発生日は、遡ること同年4月1日からとされている。
記載はないが被請求人が主張するのは、本件審判請求の登録日である2019年4月8日(審決注:「2019年4月12日」の誤記と認める。)のわずか1週間ほど前の同月1日に、すでに富士フィルム和光純薬社が本件商標権者から本件商標の通常使用権を追認許諾されていたという主張と推測できる。
仮に、そうであるとしても、乙第2号証の真正な存在は、信用することができない。
(ア)乙第3号証は、そのタイトル及び訳文が示すように「販売店契約書」である。乙第3号証の第6条の抄訳から明らかなように、富士フィルム和光純薬社は、契約の効力発生日である2019年4月1日以降に、広告・販売促進材の準備を行い、本件商標権者は、効力発生日以降に、商品カタログ・パンフレット・電子情報を富士フィルム和光純薬社に提供することになっている。
これは、契約の効力発生日で以前に、富士フィルム和光純薬社が、広告・販売促進材を準備し、本件商標権者が商品カタログ等を富士フィルム和光純薬社に提供することは不可能であることを販売店契約書(乙3)は示している。
(イ)乙第2号証の「1月」は具体的にいつであるかの記載はないが、2019年1月に発行するものであれば、遅くともその前月である2018年11月下旬か12月上旬には作成されていなければならない。
さらに乙第2号証のようなカタログは、供給元から供給された電子情報などを使って作成されたのち、供給元の監修を受けるのが通常である。
供給元の意に反していることや、表示内容の誤りを防ぐためである。
この監修期間を考慮すれば、富士フィルム和光純薬社が電子情報等を受け取ったのは、遅くとも2018年10月以前ということになる。
契約の効力が2019年4月1日まで遡るとしても、契約自体が発効する前に、それまでは通常使用権さえ許諾されておらず、本件商標の使用権原を有さない富士フィルム和光純薬社に本件商標権者から電子情報等が提供されることはあまりにも常識に反するものであり、実際に提供されるのは当事者の最終署名日2019年5月16日より後であることが常識である。
このことに照らせば、2019年1月という日付付きの乙第2号証の存在はあまりにも不自然である。
(ウ)小括
以上のとおり、契約効力発生前の富士フィルム和光純薬社による商品カタログの作成は不自然であるから、乙第2号証は本件商標の使用を証明するものではない。
(4)まとめ
以上のとおり、被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第3号証は、いずれも要証期間における本件商標の使用を証明するものではない。
よって、本件商標は速やかに取り消されるべきである。
第3 被請求人の主張の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書、令和3年3月31日付け審尋(以下「審尋」という。)に対する同年4月30日付け回答書(以下「回答書」という。)にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第13号証を提出した。
1 答弁書による主張の要旨
本件商標は、「FabULOUS」の欧文字を同一の書体で表したもので、「Fab」を紫色に、「ULOUS」を橙色に着色してなるものである。本件審判は、本件商標の第5類の指定商品「Diagnostic chemical reagents for medical or veterinary purposes, namely, biochemical and biological reagents to be used for the generation of antibody and/or IgG fragments.」について、不使用による商標登録の取消を求めるものである。
しかし、本件商標は、通常使用権者である富士フィルム和光純薬社により、本件審判請求に係る第5類の指定商品について、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において使用されているものである。
(1)本件商標の指定商品についての使用について
本件商標の商標権についての我が国における通常使用権者である、大阪市中央区道修町三丁目1番2号(本社)に所在する富士フィルム和光純薬社の現在のホームページ(乙1)における製品情報のページにおいて、「FabULOUS(R)」(「(R)」は丸付き文字である。以下同じ。)の表示がその製品について使用されている。
また、富士フィルム和光純薬社が、2019年1月の時点での情報を掲載した商品カタログ(乙2)においても、「FabULOUS(R)」の表示がその製品について使用されている。
上記の表示において、「FabULOUS」の後に「(R)」の表示がされていることから、「FabULOUS」が登録商標であることが明確に表示されているものである。
ここで、本件商標は、「FabULOUS」の欧文字を同一の書体で表したもので、「Fab」を紫色に、「ULOUS」を橙色に着色してなるものであるのに対して、使用商標は、同一の「FabULOUS」の欧文字にほぼ同一の色彩を付したものや、同一の「FabULOUS」の欧文字に色彩を付していないだけのものであることから、本件商標の使用又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用に該当するものである。
また、上記の使用商標を使用している製品は、上記の商品カタログ(乙2)における「バイオ医薬研究用酵素・試薬キット」の見出しや、富士フィルム和光純薬社のホームページ(乙1)及び商品カタログ(乙2)における「バイオ医薬品の研究開発に使用できるユニークな酵素(プロテアーゼ、グリコシラーゼ)、試薬キットをラインアップしています。」の記載のもとで、ラインアップされている製品であるところ、本件審判請求に係る第5類の指定商品「Diagnostic chemical reagents for medical or veterinary purposes」に該当する商品である。
したがって、本件商標は、本件商標の商標権についての我が国における通常使用権者である、富士フィルム和光純薬社により、本件審判請求に係る第5類の指定商品について、要証期間である2019年に我が国で使用(商標法第2条第3項第8号)されている事実が認められるものである。
(2)本件商標権者と富士フィルム和光純薬社の関係について
富士フィルム和光純薬社のホームページ(乙1)及び商品カタログ(乙2)においても、富士フィルム和光純薬社が、本件商標標権者の製品を扱っていることが示されていることから、富士フィルム和光純薬社が、我が国において本件商標に係る製品を販売することを許諾されていることが理解できるものである。
また、実際に本件商標権者は、本件商標の商標権についての通常使用権を、富士フィルム和光純薬社に許諾しているものである(乙3)。
本件商標権者と富士フィルム和光純薬社の間で締結された販売店契約書(乙3)の第7条第1項によれば、本件商標権者は、富士フィルム和光純薬社に対して、本件商標に係る製品を我が国で販売等することに関する通常使用権を許諾することを定めている。
ここで、販売店契約書中に「FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation」とあるのは、富士フィルム和光純薬社の英語表記である(乙4)。
以上のことから、富士フィルム和光純薬社は、本件商標の商標権についての我が国における通常使用権者であることが明確である。
(3)まとめ
以上のことから、本件商標は、本件商標の商標権についての通常使用権者である、富士フィルム和光純薬社により、本件審判請求に係る第5類の指定商品について、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において使用されているものである。従って、答弁の趣旨のとおり、本件審判の請求は成り立たない、との審決を求めるものである。
2 回答書による主張の要旨
(1)当審における審尋
審判長は、被請求人に対し、令和3年3月31日付けで、合議体の暫定的見解を示し、被請求人が答弁書で提出した乙各号証によっては、要証期間に、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件審判請求に係る指定商品について本件商標を使用していることを証明しているものとはいえない旨の審尋を送付し、期間を指定して、これに対する意見を求めた。
(2)回答書による主張の要旨
ア 被請求人は、答弁書において、本件商標を使用した製品を通常使用権者である富士フィルム和光純薬社を通じて、我が国で販売してきたことを主張し、商品カタログ(2019年1月発行:乙2)を提出したが、この商品カタログの初版は、2017年7月に発行されたものである(乙5)。
乙第5号証は、乙第2号証と同様の体裁で作成されているものであるところ、乙第2号証と同様に、本件商標と社会通念上同一の商標の使用と認められる「FabULOUS(R)」の表示が、本件審判請求に係る第5類の指定商品「Diagnostic chemical reagents for medical or veterinary purposes」に該当する製品について使用されているものである。
なお、乙第5号証に記載されている、和光純薬工業株式会社(以下「和光純薬工業社」という。)の名称は、2018年に、現在の「富士フィルム和光純薬株式会社」に名称変更しているものである(乙6)。
この乙第5号証の商品カタログの「発行年月」及び「発行部数」は、当該商品カタログの最終頁の右下に記載されている「印行」(17701開01J) の表示に示されているものである。
「印行」は、印刷物の目立たないところに小さく記載する印刷に関する情報のことであり、印刷物がいつ、何部、どこの印刷会社で印刷されたか等を表示するものである(乙7)。
富士フィルム和光純薬社の「印行」の取り決め(乙8)によれば、乙第5号証の「印行」の表示は、「2017年7月に、1000部発行、開発部が新規で作成、印刷会社はJBF」を意味するものであり、当該商品カタログは、2017年7月に1000部発行され、頒布されたことが理解できるものである。
イ 乙第5号証に続き、和光純薬工業社(2018年)年に、現在の「富士フィルム和光純薬株式会社」に名称変更している(乙6)が、2017年9月に発行した情報誌である「BIO WINDOW」(乙9)においても、乙第5号証と同様に、本件商標と社会通念上同一の商標の使用と認められる「FabULOUS」の表示が、本件審判請求に係る第5類の指定商品「Diagnostic chemical reagents for medical or veterinary purposes」に該当する製品について使用されているものである。
また、「BIO WINDOW」(乙9)において、「Genovis社製品取り扱いを記念して2017年10月31日まで全品30%OFFキャンペーン」と記載されているように、2017年には、和光純薬工業社が、本件商標権者の本件商標を使用した製品を我が国で販売開始していたことが示されている。
この「BIO WINDOW」(乙9)の最終頁の右下に記載されている「印行」(17919.4 サ 01 DN)の表示は、「2017年9月に、19,400部発行、サポート業務課が新規で作成、印刷会社は大日本印刷」を意味するものであり、当該情報誌は、2017年9月に19,400部発行され、頒布されたことが理解できるものである。
なお、この情報誌である「BIO WINDOW」は、定期的に発行されるもので、ウェブサイトから何人も定期購読が申し込めるものであり、この乙第9号証は、バックナンバーとして、現在もそのウェブサイトからアクセスして閲覧できる(乙9)。
ウ 被請求人は、さらに、乙第10号証及び乙第11号証を提出する。これらは、本件商標権者が、実際に、和光純薬工業社に、本件商標を使用した製品を納品したことを示す注文確認書(Order Confirmation)の写しであり、乙第10号証は、2018年2月14日付のものであり、乙第11号証は、2018年2月23日付のものである。
乙第10号証及び乙第11号証のいずれも、製品(Product)の欄に、本件商標である「FabLOUS」の表示が記載されている。
また、乙第10号証及び乙第11号証はいずれも、本件商標権者が発行者になっており、その送り先(Ship To)として、和光純薬工業社(英文名称は、Wako Pure Chemicals Inc.,Ltd(乙6)の「大阪工場」(兵庫県尼崎市高田町6-1大阪工場:乙12)が記載されているものである。
したがって、2018年2月において、確かに、本件商標権者は、本件商標を使用した製品を和光純薬工業社に納品していたことが確認できる。
エ 答弁書において提出した商品カタログ(乙2)は、その最終頁の右下に記載されている「印行」の表示によれば、「2019年1月に、1500部発行、開発部が新規で作成、印刷会社はJBF」であり、当該商品カタログは、2019年1月に1500部発行され、頒布されたことが理解できるものである。また、被請求人は、富士フィルム和光純薬株式会社によるその商品カタログ(乙2)の在庫履歴を記録した書類の一部の写し(乙13)を提出する。
乙第13号証における「アイテム名」の「SmartEnzymesGenovais AB」の表示は、乙第2号証の表紙のタイトル名であり、乙第2号証の商品カタログの在庫履歴であることを示している。「アイテム名」の右側の「日時」、「区分」によれば、「2019年2月19日」に「入庫」とあるが、これは商品カタログ(乙2)が「2019年2月19日」に保管する倉庫に「入庫」されたことを意味するものである。
そして、「2019年2月21日」以降、「出庫」の記録が続いているが、これらは、それらの日付に倉庫から出庫され、各々のお届け先に頒布されたことを示すものである。「お届け先名」の欄に示されているように、商品カタログ(乙2)は、富士フィルム和光純薬社の各営業所のほかに、顧客企業、例えば、大槻理化学株式会社、伊勢久株式会社、家田化学薬品株式会社、中山商事株式会社、不二化学薬品株式会社、理科研株式会社、相生ケミサイエンス株式会社、化研テクノ株式会社、株式会社宮田薬品等へ直接頒布されているものである。各頒布の部数は、「数量」の欄に各々記載されているものである。
また、商品カタログ(乙2)は、乙第1号証のウェブサイトの中央部に表示されている「商品パンフレット」の部分をクリックしても表示されるものである。
したがって、商品カタログ(乙2)は、直接、顧客企業に頒布されてきただけでなく、当該ウェブサイトを訪れた何人もアクセスでき印刷できる状態になっているものであり、当該ウェブサイトを訪れた者にも頒布されていたものである。
ここで、乙第1号証のウェブサイトと商品カタログ(乙2)は連動しているものであることから、乙第1号証のウェブサイトは、商品カタログ(乙2)の発行年月である、2019年1月には掲載されていたことが理解できる。
オ 以上のことを総合すると、要証期間である、2017年(乙5、乙9)、2018年(乙10、乙11)、2019年及び現在に至るまで(乙1、乙2)、被請求人は、和光純薬工業社、現在の富士フィルム和光純薬社を、本件商標を使用した製品の、我が国にける販売代理店として許諾してきたことが理解できるものである。
通常使用権の許諾契約は、契約である以上、書面によらなければならないものではなく、本件商標権者から口頭による許諾又は黙示的な許諾により、通常使用権の許諾がされる場合もあるものである。
本件においては、要証期間である、2017年、2018年、2019年及び現在に至るまで、本件商標権者は、和光純薬工業社、富士フィルム和光純薬社に対して、本件商標を使用した製品の、我が国における販売代理を許諾してきたことから、本件商標を我が国で使用することについて、黙示的に許諾してきたと認められるものである。
さらに、2019年4月1日発効の販売代理店契約書(乙3)は、2018年に現在の富士フィルム和光純薬社に名称変更した(乙6)ことを機に、これまでの我が国における販売代理の関係を改めて明確にし、本件商標権者が、和光純薬工業社にこれまで通常使用権を許諾してきたことに関して明確に明文化したにすぎないものである。
また、契約の発効日である2019年4月1日は、要証期間である。
カ 請求人は、弁駁書において、本件商標「FabULOUS」は、「すばらしい、すてきな」という識別力のないことの明らかな語であり、「Fab」と「ULOUS」を色分けしたからこそ識別力が認められるものである旨を主張した上で、本件商標を色分けなしで使用する場合は、本件商標と社会通念上同一とは認められない旨を述べている。
しかし、「FABULOUS」という英単語は、我が国では馴染みがなく、その意味は平均的な需要者には認識されないと考えられること、また、本件商標は、「FabULOUS」というように「ab」のみを小文字にしている特徴を持つことから、本件商標は色分けしなくとも、もともと十分に識別力が認められるものである。
本件においては、使用商標が色彩を付していないものの場合であっても、本件商標と類似する商標であって、色彩を本件商標と同一にすれば、本件商標と同一の商標であると認められる商標(商標法第70条)の使用といえるものである。
第4 当審の判断
1 被請求人の立証責任
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、ア 要証期間に、イ 日本国内において、ウ 本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、エ 本件審判請求に係る指定商品のいずれかについての、オ 本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要がある。
2 被請求人が提出した乙各号証によれば、以下のとおりである。
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、富士フィルム和光純薬社のウェブサイトにおける製品情報の写しであり、本号証の1頁に「富士フィルム和光純薬株式会社」の記載、「製品情報」の記載「Genovis社 IgGプロテアーゼ「FabULOUS(R)(SpeB)」(「FabULOUS(R)」における「(R)」は丸付き文字であり、「S」の欧文字の右上に小さく表示されている。以下同じ。)の記載があり、本号証の3頁の「IgGプロテアーゼ製品の比較一覧」の項目に、「Fab」を青で、「ULOUS」をオレンジに着色した文字が記載されている。
なお、乙第1号証の各頁の右下に記載された「2019/07/19」は、本号証の打ち出した日付と思われるが、2019年7月19日は要証期間外である。
また、当該ウェブサイトの閲覧数等は明らかではない。
(2)乙第2号証、乙7号証、乙第8号証及び乙第13号証について
乙第2号証は、被請求人が、2019年1月の時点で富士フィルム和光純薬社が情報を掲載した商品カタログと主張するものであり、本号証の1頁に「バイオ意訳研究用 酵素・試薬キット SmartEnzymes(TM) Genovis AB」(「TM」は、「SmartEnzymes」の最後の「s」の右上に小さく表示されている。以下同じ。)のタイトルの下、「Genovis社は、抗体医薬研究用のバイオ医薬プロセス酵素SmartEnzymes(TM)を開発・製造しているスウェーデン(ルンド)のメーカーです。」の記載、本号証の2頁の「Line up & Index」の欄に「FabULOUS(R)(SpeB:)多種IgGのヒンジ領域上部を認識するプロテアーゼ。」の記載、本号証の3頁(商品カタログの5頁)に「FabLOUS(R) 多種IgGのヒンジ領域上部を認識するプロテアーゼ。」の記載、本号証の4頁に「掲載内容は、2019年1月時点での情報です。」の記載及び「富士フィルム和光製薬株式会社」の記載がある。
乙第7号証は、「印行」に関するインターネット記事写しであり、乙第8号証は「印行」に関する書類の写しである。
乙第13号証は、被請求人が、商品カタログ(2019年1月発行)の在庫履歴に関する書類の一部写しと主張するものであり、表の1行目の品番の欄に「LCG190201」の記載、アイテム名の欄に「SmartEnzymes? Genova AB」の記載、日時の欄に「2020/1/24 17:25」の記載、お届け先の欄に「和研薬株式会社大阪営業部」の記載がある。
なお、被請求人は、「印行」(乙7、乙8)の記載により本号証の商品カタログの発行部数等が明らかである旨主張するが、印行は、富士フィルム和光純薬社が自ら記載したもので客観性がない。
また、被請求人は、商品カタログ(2019年1月発行)の在庫履歴に関する書類の一部写し(乙13)の記載から、頒布先等が明らかである旨主張しているが、乙第13号証の品番の欄に記載された「CG190201」が、富士フィルム和光純薬社が2019年1月に作成した商品カタログであることは確認することができず、また、乙第13号証は、作成日及び作成者が明らかではない。
(3)乙第3号証について
乙第3号証は、本件商標権者の代表者と富士フィルム和光純薬社の代表者との間で締結した「販売店契約書(訳文を含む。)」であり、乙第3号証の訳文の1頁目に「本販売店契約(以下、「本契約」という。)は、2019年4月1日(効力発生日)に(中略)ゲノビス エー・ビー(以下「ゲノビス」という、)及び(中略)富士フィルム和光純薬株式会社(以下「和光」という。)との間で締結された。」の記載、訳文の2頁目に「ゲノビス エー・-ビー 代表者(署名) 2019年5月16日」の記載及び「富士フィルム和光純薬株式会社 代表者(署名) 2019年4月25日」の記載がある。
なお、当該契約書は、販売店契約であって、本件商標の使用許諾契約ではなく、当該契約書の効力発生日とする2019年4月1日は、要証期間であるものの、本件商標権者の代表者の署名日の同年5月16日、富士フィルム和光純薬社の代表者の署名日は、同年4月25日であり、いずれも要証期間外である。
(4)乙第4号証、乙第6号証及び乙第12号証について
乙第4号証は、富士フィルム和光純薬社の企業情報であり、乙第6号証は、同社の沿革・歴史を記載したものであり、乙第12号証は、同社の事業所一覧を記載したものである。
(5)乙第5号証及び乙第9号証について
乙第5号証は、被請求人が、富士フィルム和光純薬社の前身である和光純薬工業社が2019年7月に発行したとする商品カタログであり、乙第2号証とほぼ同内容の記載ある。
乙第9号証は、被請求人が、富士フィルム和光純薬社の前身である「和光純薬工業株式会社」が、2017年9月に発行した「BIO WINDOW」のタイトルの情報誌であり、本号証の3頁に「Genovis社製品取り扱いを記念して2017年10月まで全品30%OFFキャンペーンを実施しております。」の記載がある。
なお、商品カタログ(乙5)の頒布先等は、明らかではない。
また、情報誌(乙9)の頒布先やウェブサイトの閲覧数は、明らかではない。
加えて、2017年7月及び同年9月において、本件商標権者が、富士フィルム和光純薬社の前身である「和光純薬工業株式会社」に対し、本件商標の商標権の使用の許諾を行っていたことは確認することはできない。
(6)乙第10号証及び乙第11号証について
乙第10号証及び乙第11号証は、被請求人が本件商標を使用した製品を納品したことを示す注文確認書(Order Confimation Confirmation) の写しであり、乙第10号証は、2018年2月14日付のものであり、乙第11号証は、2018年2月23日付のものである旨主張するが、当該注文確認書には、「Bill to」及び「Ship to」の欄に「Wako Chemical Gmbh」の記載はあるものの、宛て先が明確に表示されていない。
また、当該注文確認書を受けて、商品を我が国に輸出したことを証明する書類は提出されていない。
さらに、上記(3)のとおり、2017年7月時点において、本件商標権者の代表者と富士フィルム和光純薬社の代表者との間で、販売店契約は締結されていない。
3 判断
(1)使用者について
富士フィルム和光純薬社及び同社の前身である和光純薬工業社は、本件商標権者が製造する商品「酵素・試薬キット」に関する商品カタログや情報誌を作成し、当該商品カタログや情報誌には、「FabULOUS」の文字が記載されていることは確認できる。
しかしながら、本件商標者の代表者と富士フィルム和光純薬社の代表者との間で締結された「販売店契約書」は、両代表者の署名日が、いずれも要証期間外であり、当該契約も、販売店契約にすぎない。
また、本件商標権者が、富士フィルム和光純薬社の前身である和光純薬工業株式会社に対し、本件商標の商標権の使用の許諾を行っていたことは確認することはできない。
さらに、本件商標権者と、富士フィルム和光純薬社及びその前身である和光純薬工業社とが、親会社と子会社に関係にある等、本件商標権者と富士フィルム和光純薬社及び和光純薬工業社とが、組織的に何らかのつながりがあることが、被請求人提出の証拠からは認められない。
そうすると、富士フィルム和光純薬社及び和光純薬工業社が、本件商標権者の製造に係る商品に関する商品カタログや情報誌を作成していたとしても、要証期間に、本件商標権者から、本件商標の使用の許諾を受けた者であるとは認められない。
加えて、本件商標権者が、日本国内において、本件商標及び本件商標と社会通念上同一の商標を本件審判請求に係る指定商品に使用した事実は、確認することができない。
したがって、本件商標は、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用したことが認められない。
(2)使用商標について
和光純薬工業社が2017年7月に作成した商品「酵素・試薬キット」に関する商品カタログ及び情報誌並びに富士フィルム和光純薬社が2019年1月に作成した商品「酵素・試薬キット」に関する商品カタログにおいて、「FabULOUS」の文字が使用され、本件商標と使用商標とは、文字のつづりを共通にすることから、本件商標と使用商標は、社会通念上同一のものと認められる。
(3)使用商品について
富士フィルム和光純薬社が作成した商品カタログ、和光純薬工業社に掲載された商品「酵素・試薬キット」は、本件審判請求に係る商品に該当する商品と認められる。
(4)使用時期について
和光純薬工業社が商品「酵素・試薬キット」に関する商品カタログ及び情報誌を作成した2017年7月並びに富士フィルム和光純薬社が商品「酵素・試薬キット」に関する商品カタログを作成した2019年1月は、いずれも要証期間である。
また、本件商標権者が作成したとおぼしき注文確認書が作成された2018年2月14日及び同月23日は、いずれも要証期間である。
(5)使用行為について
和光純薬工業社が作成した商品「酵素・試薬キット」に関する商品カタログ及び情報誌並びに富士フィルム和光純薬社が商品「酵素・試薬キット」に関する商品カタログは、頒布先等が明らかではなく、当該商品カタログ及び情報誌が頒布されたことにより、実際に、日本国内において、商品「酵素・試薬キット」の譲渡等が行われたことは確認することができない。
また、本件商標権者が作成したとおぼしき注文確認書に記載された商品が、実際に我が国に輸出された事実は確認することができない。
その他、被請求人は、本件商標を本件審判請求に係る指定商品について、商標法第2条第3項第1号、同項第2号及び同項第8号に規定する使用行為を行ったことを証明していない。
(6)小括
以上からすると、被請求人が提出した全証拠を総合してみても、本件商標権者又は本件商標権者から本件商標の使用を許諾された者が、要証期間に、日本国内で、本件審判請求に係る指定商品について、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることを証明したとはいえない。
4 被請求人の主張について
被請求人は、通常使用権者である富士フィルム和光純薬社及びその前身である和光純薬工業社が、要証期間に、本件商標を本件審判請求に係る指定商品について使用している旨を主張する。
しかしながら、上記3(6)のとおり、被請求人が提出した全証拠を総合してみても、本件商標権者又は本件商標権者から本件商標の使用を許諾された者が、要証期間に、日本国内で、本件審判請求に係る指定商品について、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることを証明したとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
5 結論
以上のとおり、被請求人が提出した全証拠によっては、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、本件審判請求に係る指定商品のいずれかについて、商標法第2条第3号各号に規定する使用行為を行ったことを証明していない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-670009