2019-600040
手動掃除機
- 審判番号
- 2019-600040
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 判定
- 出願番号
- 意願2008-018252外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年12月20日
- 審決日
- 2020年11月04日
- 公報発行日
- 2021年03月26日
- 結論
- 判定(属する)
- 当事者
- 【請求人】日本シール 株式会社
- 【請求人代理人】福島 三雄
- 【請求人代理人】塩田 哲也
- 【請求人代理人】福島 正憲
- 【被請求人】リチェン
- 分類
- D12 .113-YA (C3-3)
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 判定請求人の請求の理由
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1 請求の趣旨
本件判定請求人は,令和1年12月20日に,イ号意匠ならびにその説明書に示す意匠は,登録1364341号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求め,その理由を後記2のとおり主張し,証拠として,後記3の甲第1号証から甲第4号証を提出した。
2 請求の理由
(1)判定請求の必要性
ア 本件判定請求人(日本シール株式会社)は,本件判定請求に係る登録意匠「手動掃除機」(甲第1号証(別紙第4)及び甲第2号証(別紙第5)参照,以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。
イ号意匠ならびに説明書に示す意匠(以下「イ号意匠」という。)の手動掃除機(以下「イ号物件」という。)は,本件登録意匠の意匠権を侵害するものであると判断するため,本件判定請求人は,特許庁による判定を求める。
イ 本件判定請求人は,日本法人 アマゾンジャパン合同会社が運営する「amazon」のサイトにてイ号物件を確認し,イ号物件をネット注文したものである。ネット注文したイ号物件は,中国の代理店から直接,本件判定請求人の元に空輸されたものであり,本件判定請求人が中国の代理店に問い合わせてもイ号物件を製造する被請求人の特定に至らなかった。
(2)本件登録意匠の手続の経緯
出願 平成20年 7月15日(意願2008-18252号)
登録 平成21年 6月 5日(意匠登録第1364341号)
(3)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は,意匠に係る物品を「手動掃除機」とし,その形態の要旨を,次のとおりとする(甲第1号証(別紙第4)参照)。
ア 基本的な構成態様
基本的な構成態様は,全体がケース体と掃除具とからなり,
(ア)ケース体は,平面視において左右方向及び前後方向の後方(平面図の上下方向及び左右方向の右方)にT字形状の外観に形成され,且つ正面視において上下方向の上方(正面図の上下方向の上方)に突出する略半円形状の外観に形成され,外ケースと蓋と柄を有し,
a)外ケースは,上方及び下方に開口する略半円筒形状に形成され,外ケースの上方開口及び下方開口の間の後側に後側外周面が形成され,外ケースの左右端に略半円形状のケース端板が設けられ,各ケース端板に円盤車輪が回動自在に設けられ,
b)蓋は,略4分の1の円筒形状に形成され,外ケースの前端突起部に回動自在に保持されて外ケースの上方開口に設けられ,外ケースの後側外周面に前側外周面が連続して形成されて,外ケースの後側外周面とで略半円形状の外観をなし,蓋の左右端に各円盤車輪の一部を外側から覆うように扇形状の蓋端板が設けられ,
c)柄は,下方に開口する中空形状に形成され,外ケースのケース中心線の中央の後側外周面にケース中心線と直角になるように設けられ,外ケースの後端外周面から後方に弓なり状に延びて,外ケースとでT字形状の外観をなし,柄の前側にボタン部を配する収納穴が形成され,柄の後側に吊り用穴が形成され,柄の下方に裏握り部が設けられ,
(イ)掃除具は,掃除ドラムと前後一対の羽根を有し,
a)掃除ドラムは,上方に開口する略半円筒形状に形成され,掃除ドラムの外周面の一部を外ケースの下方開口から突出して,外ケース内に回動自在に設けられ,掃除ドラムの周方向の中央の外周面に左右の掃除突起板が設けられ,各掃除突起板を境とする掃除ドラムの両側外周面に傾斜パイルが設けられ,
b)各羽根は,外ケースの両側内周下端,及び掃除ドラムの各傾斜パイルの間に設けられ,掃除ドラムの傾斜パイルに押圧されて外ケースに回動自在に設けられ,掃除ドラムの傾斜パイルに接する面に傾斜パイルが設けられている。
イ 具体的な構成態様
(ア)柄は,後側の吊り用穴を円形状とし,
(イ)ボタン部は,下方の凹む略U字形状の連結板を介して蓋の後端中央に連結されて,柄の収納穴内に配され,
(ウ)裏握り部は,柄の収納穴及び吊下げ用穴の間に設けられ,略楕円形状の外側握り板と,外側握り板内に設けられる内側握り板を有し,
a)外側握り板は,柄の前後方向に長い略楕円形状とし,柄に連結され,柄の下方開口に向けて立設されて,柄の下方開口から突出し,
b)内側握り板は,外側握り板及び柄に連結され,柄の下方開口に向けて立設されて,柄の下方開口から外側握り板より下方に突出する。
(4)イ号意匠の説明
イ号意匠は,意匠に係る物品を「手動掃除機」とし,その形態の要旨を,次のとおりとする(イ号意匠ならびに説明書(別紙第2)参照)。
ア 基本的な構成態様
基本的な構成態様は,全体がケース体と掃除具とからなり,
(ア)ケース体は,平面視において左右方向及び前後方向の後方(平面図の上下方向及び左右方向の右方)にT字形状の外観に形成され,且つ正面視において上下方向の上方(正面図の上下方向の上方)に突出する略半円形状の外観に形成され,外ケースと蓋と柄を有し,
a)外ケースは,上方及び下方に開口する略半円筒形状に形成され,外ケースの上方開口及び下方開口の間の後側に後側外周面が形成され,外ケースの左右端に略半円形状のケース端板が設けられ,各ケース端板に円盤車輪が回動自在に設けられ,
b)蓋は,略4分の1の円筒形状に形成され,外ケースの前端突起部に回動自在に保持されて外ケースの上方開口に設けられ,外ケースの後側外周面に前側外周面が連続して形成されて,外ケースの後側外周面とで略半円形状の外観をなし,蓋の左右端に各円盤車輪の一部を外側から覆うように扇形状の蓋端板が設けられ,
c)柄は,下方に開口する中空形状に形成され,外ケースのケース中心線の中央の後側外周面にケース中心線と直角になるように設けられ,外ケースの後側外周面から後方に弓なり状に延びて,外ケースとでT字形状の外観をなし,柄の前側にボタン部を配する収納穴が形成され,柄の後側に吊り用穴が形成され,柄の下方に裏握り部が設けられ,
(イ)掃除具は,掃除ドラムと前後一対の羽根を有し,
a)掃除ドラムは,上方に開口する略半円筒形状に形成され,掃除ドラムの外周面の一部を外ケースの下方開口から突出して,外ケース内に回動自在に設けられ,掃除ドラムの周方向の中央の外周面に左右の掃除突起板が設けられ,各掃除突起板を境とする掃除ドラムの両側外周面に傾斜パイルが設けられ,
b)各羽根は,外ケースの両側内周下端,及び掃除ドラムの各傾斜パイルの間に設けられ,掃除ドラムの傾斜パイルに押圧されて外ケース内に回転自在に設けられ,掃除ドラムの傾斜パイルに接する面に傾斜パイルが設けられている。
イ 具体的な構成態様
(ア)柄は,後端の吊り用穴を楕円形状とし,
(イ)ボタン部は,柄に回動自在に連結されて,柄の収納穴内に配され,
(ウ)裏握り部は,柄の収納穴及び吊り用穴の間に設けられ,柄の前後方向に延びる厚手の握り板部で形成され,
a)握り板部は,柄の下方開口から突出して配され,4つの支持部で柄に固定されて,握り板部の裏面に柄の前後方向に湾曲状に延びる略小判形状の裏握り面が形成されている。
(5)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
ア 両意匠の共通点
(ア)両意匠は,意匠に係る物品が「手動掃除機」で一致している。
(イ)基本的な構成態様において,
A ケース体は,平面視において左右方向及び前後方向の後方(平面図の上下方向及び左右方向の右方)にT字形状の外観に形成され,且つ正面視において上下方向の上方(正面図の上下方向の上方)に突出する略半円形状の外観に形成され,外ケースと蓋と柄を有し,
a)外ケースは,上方及び下方に開口する略半円筒形状に形成され,外ケースの上方開口及び下方開口の間の後側に後側外周面が形成され,外ケースの左右端に略半円形状のケース端板が設けられ,各ケース端板に円盤車輪が回動自在に設けられ,
b)蓋は,略4分の1の円筒形状に形成され,外ケースの前端突起部に回動自在に保持されて外ケースの上方開口に設けられ,外ケースの後側外周面に前側外周面が連続して形成されて,外ケースの後側外周面とで略半円形状の外観をなし,蓋の左右端に各円盤車輪の一部を外側から覆うように扇形状の蓋端板が設けられ,
c)柄は,下方に開口する中空形状に形成され,外ケースのケース中心線の中央の後側外周面にケース中心線と直角になるように設けられ,外ケースの後端外周面から後方に弓なり状に延びて,外ケースとでT字形状の外観をなし,柄の前側にボタン部を配する収納穴が形成され,柄の後側に吊り用穴が形成され,柄の下方に裏握り部が設けられ,
B 掃除具は,掃除ドラムと前後一対の羽根を有し,
a)掃除ドラムは,上方に開口する略半円筒形状に形成され,掃除ドラムの外周面の一部を外ケースの下方開口から突出して,外ケース内に回動自在に設けられ,掃除ドラムの周方向の中央の外周面に左右の掃除突起板が設けられ,各掃除突起板を境とする掃除ドラムの両側外周面に傾斜パイルが設けられ,
b)各羽根は,外ケースの両側内周下端,及び掃除ドラムの各傾斜パイルの間に設けられ,掃除ドラムの傾斜パイルに押圧されて外ケースに回動自在に設けられ,掃除ドラムの傾斜パイルに接する面に傾斜パイルが設けられている。
イ 両意匠の差異点
(ア)柄の吊り用穴が,本件登録意匠は,円形状であるに対して,イ号意匠は,楕円形状である。
(イ)ボタン部が,本件登録意匠は,U字形状の連結板を介して蓋に連結するに対して,イ号意匠は,柄に回動自在に連結する。
(ウ)裏握り部が,本件登録意匠は,外側握り板及び内側握り板であるのに対して,イ号意匠は,略小判形状の裏握り面が形成された握り板部である。
(6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
ア 本件登録意匠に関する先行周辺意匠
甲第3号証 意匠登録第1205920号公報(別紙第6参照)
甲第4号証 実開昭62-143461号公報(別紙第7参照)
イ 本件登録意匠の要部
上記先行周辺意匠をもとに,本件登録意匠の創作の要点について述べれば,この種の物品における意匠上の創作の主たる対象は,ケース体の外観形状の構成態様にあることは明らかで,本件登録意匠については,他に全く見られないケース体のT字形状の外観及び略半円形状の外観の全体形状において,本件登録意匠全体の基調を表出している。
ウ 本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
そこで,本件登録意匠とイ号意匠との共通点及び差異点を比較検討するに,
(ア)両意匠の共通点は,基本的な構成態様に係るものであり,特に,本件登録意匠の要部であるケース体のT字形状の外観及び略半円形状の外観の全体形状が共通しており,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。
(イ)両意匠の差異点の
a)柄の吊り用穴の形状[(5)イ(ア)参照]
b)ボタン部の連結構成[(5)イ(イ)参照]
c)裏握り部の構成[(5)イ(ウ)参照]
は,本件登録意匠の要部ではないことから,特段顕著な相違といえず,類否判断に与える影響は微弱である。
(ウ)以上の認定,判断を前提として両意匠を全体的に考察すると,両意匠の差異点は,類否の判断に与える影響はいずれも微弱なものであって,共通点を凌駕しているものとはいえず,それらが纏まっても両意匠の類否判断に及ぼす影響は,その結論を左右するまでに至らないものである。
(7)むすび
したがって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので,請求の趣旨どおりの判定を求める。
3 証拠方法
甲第1号証 意匠登録第1364341号公報の写し(別紙第4参照)
甲第2号証 意匠登録第1364341号原簿謄本の写し(別紙第5参照)
甲第3号証 意匠登録第1205920号公報の写し(別紙第6参照)
甲第4号証 実開昭62-143461号公報の写し(別紙第7参照)
第2 当審による審尋
本判定事件の合議体より請求人に対し,令和2年1月24日付け審尋を送付し,本判定事件の被請求人が存在しないとする合理的な理由を明らかにする旨審尋したところ,請求人は,令和2年2月10日に審尋に対し,被請求人が特定できた旨の回答書を提出するとともに,同日付けで手続補正書を提出し,審判請求書に被請求人の住所及び氏名を追加する補正を行った。
第3 判定被請求人の答弁
特許庁より,被請求人に判定請求書を送付し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,被請求人からの応答はなかった。
第4 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は,平成20年(2008年)7月15日に意匠登録出願(意願2008-18252号)され,平成21年(2009年)6月5日に登録の設定(意匠登録第1364341号)がなされ,同年7月6日に意匠公報が発行されたものであって,願書及び願書に添付された図面の記載によれば,意匠に係る物品を「手動掃除機」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。
そして,本件登録意匠の認定は,以下のとおりである。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,願書の意匠に係る物品の説明によれば,絨毯,畳,フローリング,ソファ,自動車の車内シート等の表面から繊維質の塵埃を取り除くために用いられる「手動掃除機」である。
(2)本件登録意匠の形態
本件登録意匠の各部の名称については,別紙第3の「本件登録意匠における各部名称の説明」に基づいて記載することとする。
また,手動掃除機の左側面側を「前方」とし,手動掃除機の右側面側を「後方」として以下記載する。
ア 全体は,両端部が閉じた略半円筒形状の外ケース,この外ケースのケース端板の外側に取り付けた円盤車輪,外ケースと円盤車輪の一部分を覆う蓋,及び外ケースの後側外周面の長手方向中央部分から後方斜め上方に向かって形成した柄からなるケース本体と,外ケースの内部に配設した掃除ドラム,及び掃除ドラムと外ケースの前後の隙間に設けた羽根からなる掃除具で構成されるものであって,その形態を平面視略倒T字状としたものである。
イ ケース本体の形態について
外ケースは,両端部が閉じた略円筒形の底面側を底面視略横長長方形状の開口部分が表れるように切り欠いた略半円筒形状としたものであって,蓋部で覆われた上面部分に平面視略隅丸長方形状の切り欠き部を左右に縁部を残して形成し,外ケースの左右端部に略半円形状のケース端板を設け,外ケースの前側外周面下端部の長手方向左右端部付近に平面視略縦長長方形状の前端突起部を形成し,外ケースの後側外周面の中央部分から柄の下方部分にかけて蓋の固定部を収納する平面視略倒U字状の穴(以下「収納穴」という。)を形成したものである。
円盤車輪は,外ケース端板に回転可能に配設した薄い略円板状のものである。
蓋は,両端部が閉じた略円筒形の略4分の1の形状としたものであって,蓋の左右端部に略四分円形状の蓋側板を設け,蓋の前側外周面下端部に外ケースの前端突起部を挟むようにして前端突起部を含めた全体が平面視略〔(亀甲括弧)状となる突起部分(以下「蓋突起部」という。)を形成し,蓋の後端部長手方向中央部分に後方に延びる蓋を固定する蓋固定部分(以下「蓋固定部」という。)を蓋との接合部分を略ラッパ状になるようにして形成したものであって,蓋突起部は前端突起部に回転自在で保持され,蓋固定部は収納穴に着脱可能に嵌着したものである。
蓋固定部は,蓋から後方に延びる断面視略倒ハット状に形成した連結板の後端部分に,平面視D字状のボタン部を後方に隙間をあけて配設した構成としたものであり,連結板前方部分及びボタン部の上面部分は,柄の上面部分より僅かに突出して形成したものである。
柄は,平面視を中央部分が膨出した横長の略倒U字状とし,正面視を上方が突出する略弓形状とし,断面視を略倒U字状とした底面側が開口している略棒状体としたものであって,外ケースの根元部の上面部分に,その平面視を略倒U字状とし,その正面視を僅かに略円弧状に切り欠いた形状とした収納穴を形成し,底面側の中空部分の略中央部分に裏握り部を下方に向けて垂直に立設し,柄の後端部付近に平面視略円形状の吊り用穴を1つ形成したものである。
裏握り部は,柄の根元部分から2枚の長方形板体で連結された底面視が略長円形状の円筒形状の外側握り板と,その内側の長手方向に形成した略長方形板状の内側握り部からなるものであり,外側握り部の下端部は柄の下端部より僅かに突出し,内側握り部の下端部は外側下端部より僅かに突出して形成したものである。
ウ 掃除具の形態について
掃除ドラムは,両端部が閉じた略半円筒形の上方部分に開口部を形成し,その外周面の短手方向の中央部分に,先端部分を断面視略楔形状に形成した略薄板状の掃除突起板を,長手方向に僅かに間をあけて2つ並設し,掃除突起板の前後の外周面に傾斜パイルを配設したものであって,掃除ドラムの両端部と円盤車輪は軸着され,円盤車輪の回転とともに回転可能な構成としたものである。
羽根は,外ケースと掃除ドラムの隙間部分に,底面部分に縦長長方形状の模様を長手方向に僅かに間をあけて2つ施した断面視略下向き矢印形状のやや肉厚な板状体を,かえしのない側同士を対向させて1対設けたものである。
2 イ号意匠
本件判定請求の対象であるイ号意匠は,判定請求書に添付された「イ号意匠ならびに説明書」により示されたものであって,意匠に係る物品は「手動掃除機」であると認められ,その形態を,イ号物品を撮影した写真により現されたとおりとしたものである。(別紙第2参照)
そして,イ号意匠の認定は,以下のとおりである。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,イ号意匠ならびに説明書の記載によれば,「手動掃除機」であると認められる。
(2)イ号意匠の形態
イ号意匠の各部の名称については,別紙第3の「本件登録意匠における各部名称の説明」に準じて記載することとする。
また,手動掃除機の左側面側を「前方」とし,手動掃除機の右側面側を「後方」として以下記載する。
ア 全体は,両端部が閉じた略半円筒形状の外ケース,この外ケースのケース端板の外側に取り付けた円盤車輪,外ケースと円盤車輪の一部分を覆う蓋,及び外ケースの後側外周面の長手方向中央部分から後方斜め上方に向かって形成した柄からなるケース本体と,外ケースの内部に配設した掃除ドラム,及び掃除ドラムと外ケースの前後の隙間に設けた羽根からなる掃除具で構成されるものであって,その形態を平面視略倒T字状としたものである。
イ ケース本体の形態について
外ケースは,両端部が閉じた略円筒形の底面側を底面視略横長長方形状の開口部分が表れるように切り欠いた略半円筒形状としたものであって,蓋部で覆われた上面部分に平面視略隅丸長方形状の切り欠き部を左右に縁部を残して形成し,外ケースの左右端部に略半円形状のケース端板を設け,外ケースの前側外周面下端部の長手方向左右端部付近に平面視略縦長長方形状の前端突起部を形成し,外ケースの後側外周面の中央部分から柄の下方部分にかけて蓋の固定部を収納する平面視略倒U字状の収納穴を形成したものである。
円盤車輪は,外ケース端板に回転可能に配設した薄い略円板状のものである。
蓋は,両端部が閉じた略円筒形の略4分の1の形状としたものであって,蓋の左右端部に略四分円形状の蓋側板を設け,蓋の前側外周面下端部に外ケースの前端突起部を挟むようにして前端突起部を含めた全体が平面視略〔(亀甲括弧)状となる蓋突起部を形成し,蓋の後端部長手方向中央部分に後方に延びる蓋固定部を,蓋との接合部分が略ラッパ状になるようにして形成したものであって,蓋突起部は前端突起部に回転自在で保持され,蓋固定部は収納穴に着脱可能に嵌着したものである。
蓋固定部は,蓋から後方に延びる長方形板状の突起部を平面視略横長D字状のボタン部によって固定する構成としたものであり,ボタン部の上面部分は,柄の上面部分の形状にあわせた湾曲面とし,柄の上面部分より僅かに突出して形成したものである。
柄は,平面視を中央部分が膨出した横長の略倒U字状とし,正面視を上方が突出する略弓形状とし,断面視を略倒U字状とした底面側が開口している略棒状体としたものであって,外ケースの根元部の上面部分に,その平面視を略倒U字状とし,その正面視を僅かに略円弧状に切り欠いた形状とした収納穴を形成し,底面側の中空部分の略中央部分に裏握り部を下方に向けて垂直に立設し,柄の後端部付近に平面視略楕円形状の吊り用穴を1つ形成したものである。
裏握り部は,柄の左右側面部分から前後2カ所で連結された底面視が略長円形状の有底円筒形状とし,その底面部分を柄の湾曲した形状に合わせて正面視略凹弧状の湾曲面となるように形成したものであり,裏握り部の底面部を柄の下端部より僅かに突出して形成したものである。
ウ 掃除具の形態について
掃除ドラムは,両端部が閉じた略半円筒形の上方部分に開口部を形成し,その外周面の短手方向の中央部分に,先端部分を断面視略楔形状に形成した略薄板状の掃除突起板を,長手方向に僅かに間をあけて2つ並設し,掃除突起板の前後の外周面に傾斜パイルを配設したものであって,掃除ドラムの両端部と円盤車輪は軸着され,円盤車輪の回転とともに回転可能な構成としたものである。
羽根は,外ケースと掃除ドラムの隙間部分に,底面部分に縦長長方形状の模様を長手方向に僅かに間をあけて2つ施した断面視略下向き矢印形状のやや肉厚な板状体を,かえしのない側同士を対向させて1対設けたものである。
3 本件登録意匠とイ号意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本件登録意匠とイ号意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「手動掃除機」と認められるものであり,一致する。
(2)形態の対比
両意匠の形態を対比すると,主として以下の共通点及び相違点が認められる。
ア 形態の共通点
(共通点1)両意匠は,全体の形態が,両端部が閉じた略半円筒形状の外ケース,この外ケースのケース端板の外側に取り付けた円盤車輪,外ケースと円盤車輪の一部分を覆う蓋,及び外ケースの後側外周面の長手方向中央部分から後方斜め上方に向かって形成した柄からなるケース本体と,外ケースの内部に配設した掃除ドラム,及び掃除ドラムと外ケースの前後の隙間に設けた羽根からなる掃除具で構成されるものであって,その形態が平面視略倒T字状としたものである点で共通する。
(共通点2)両意匠は,外ケースの形態が,両端部が閉じた略円筒形の底面側を底面視略横長長方形状の開口部分が表れるように切り欠いた略半円筒形状としたものであって,蓋部で覆われた上面部分に平面視略隅丸長方形状の切り欠き部を左右に縁部を残して形成し,外ケースの左右端部に略半円形状のケース端板を設け,外ケースの前側外周面下端部の長手方向左右端部付近に平面視略縦長長方形状の前端突起部を形成し,外ケースの後側外周面の中央部分から柄の下方部分にかけて蓋の固定部を収納する平面視略倒U字状の収納穴を形成したものである点で共通する。
(共通点3)両意匠は,円盤車輪の形態が,外ケース端板に回転可能に配設した薄い略円板状のものである点で共通する。
(共通点4)両意匠は,蓋の形態が,両端部が閉じた略円筒形の略4分の1の形状としたものであって,蓋の左右端部に略四分円形状の蓋側板を設け,蓋の前側外周面下端部に外ケースの前端突起部を挟むようにして前端突起部を含めた全体が平面視略〔(亀甲括弧)状となる蓋突起部を形成し,蓋の後端部長手方向中央部分に後方に延びる蓋固定部を,蓋との接合部分が略ラッパ状になるようにして形成したものであって,蓋突起部は前端突起部に回転自在で保持され,蓋固定部は収納穴に着脱可能に嵌着したものである点で共通する。
(共通点5)両意匠は,柄の形態が,平面視を中央部分が膨出した横長の略倒U字状とし,正面視を上方が突出する略弓形状とし,断面視を略倒U字状とした底面側が開口している略棒状体としたものであって,外ケースの根元部の上面部分に,その平面視を略倒U字状とし,その正面視を僅かに略円弧状に切り欠いた形状とした収納穴を形成し,底面側の中空部分の略中央部分に裏握り部を下方に向けて垂直に立設し,柄の後端部付近に吊り用穴を1つ形成したものである点で共通する。
(共通点6)両意匠は,掃除ドラムの形態が,両端部が閉じた略半円筒形の上方部分に開口部を形成し,その外周面の短手方向の中央部分に,先端部分を断面視略楔形状に形成した略薄板状の掃除突起板を,長手方向に僅かに間をあけて2つ並設し,掃除突起板の前後の外周面に傾斜パイルを配設したものであって,掃除ドラムの両端部と円盤車輪は軸着され,円盤車輪の回転とともに回転可能な構成としたものである点で共通する。
(共通点7)両意匠は,羽根の形態が,外ケースと掃除ドラムの隙間部分に,底面部分に縦長長方形状の模様を長手方向に僅かに間をあけて2つ施した断面視略下向き矢印形状のやや肉厚な板状体を,かえしのない側同士を対向させて1対設けたものである点で共通する。
イ 形態の相違点
(相違点1)本願意匠の蓋固定部の形態が,蓋から後方に延びる断面視略倒ハット状に形成した連結板の後端部分に,平面視D字状のボタン部を後方に隙間をあけて配設した構成であって,連結板前方部分及びボタン部の上面部分は,柄の上面部分より僅かに突出して形成したものであるのに対し,引用意匠の蓋固定部の形態が,蓋から後方に延びる長方形板状の突起部を平面視略横長D字状のボタン部によって固定する構成であって,ボタン部の上面部分は,柄の上面部分の形状にあわせた湾曲面とし,柄の上面部分より僅かに突出して形成したものである点で,両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠の吊り用穴の形態が,平面視略円形状の貫通穴であるのに対し,引用意匠の吊り用穴の形態が,平面視略惰円形状の貫通穴である点で,両意匠は相違する。
(相違点3)本願意匠の裏握り部の形態が,柄の根元部分から2枚の長方形板体で連結された底面視が略長円形状の円筒形状の外側握り板と,その内側の長手方向に形成した略長方形板状の内側握り部からなり,外側握り部の下端部は柄の下端部より僅かに突出し,内側握り部の下端部は外側下端部より僅かに突出して形成したものであるのに対し,引用意匠の裏握り部の形態が,柄の左右側面部分から前後2カ所で連結された底面視が略長円形状の有底円筒形状とし,その底面部分を柄の正面視からみた湾曲に合わせて正面視略凹弧状の湾曲面となるように形成し,裏握り部の底面部を柄の下端部より僅かに突出して形成したものである点で,両意匠は相違する。
4 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は,一致するから同一である。
(2)両意匠の形態の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は,絨毯,畳,フローリング,ソファ,自動車の車内シート等の表面から繊維質の塵埃を取り除くために使用される手動掃除機であって,掃除ドラム外周面に掃除突起板を挟んで配設された前後の傾斜パイルのいずれか一方を外ケースの底面側開口部と対応させた状態で,外ケース両端部にある円盤車輪を複数回反転させて,これと連結している掃除ドラムを回動させることで,傾斜パイルで取り除かれた塵埃を自動的に掃除ドラム内に収納できる機能を有し,その使用方法は,本物品の柄の部分を手で持って被掃除面上で何度も一方向に移動させることで簡単に塵埃を取り除くことができ,外ケースの上部開口に設けられた蓋を開けて簡単に溜まった塵埃を捨てることができるものである。
そうすると,この種物品分野における需要者は,手に持って使用する際や塵埃を捨てる際の使いやすさという観点から,主として全体の構成態様や柄及び蓋の具体的な形態について強い関心を持って両意匠に係る物品を観察するものということができる。
したがって,両意匠の類否判断に際しては,上記の前提に基づいて,両意匠の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について,以下評価することとする。
ア 共通点の評価
(共通点1)における平面視略倒T字状とした両意匠の形態は,この種の手動式掃除機の形態としては従来にはみられない両意匠のみが持つ特徴なものであって,需要者に共通の強い印象を与えるものであるから,この(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。
(共通点2)ないし(共通点4)の各部位の具体的な形態については,(共通点1)の全体の形態と相俟って両意匠の基調を形成し,需要者に共通の強い印象を与えるものであり,とりわけ,外ケースの外側に円盤車輪取り付け,蓋を開閉可能に取り付けた形態,蓋の前側外周面下端部に外ケースの前端突起部を含めた全体が平面視略〔(亀甲括弧)状となるように蓋突起部を形成した形態,及び蓋の後端部中央部分から後方に延びるようにして蓋固定部を形成し,これを柄の下方部分に形成した収納部に嵌着させて蓋を固定したこれら他の手動掃除機に見られない形態は,先行意匠に照らして特徴的なものであるといえるから,これらの(共通点2)ないし(共通点4)が意匠全体の美感に与える影響も大きい。
(共通点5)の柄の形態については,手に持って使用する際の使いやすさという観点から需要者の注意を強く惹く部分であるが,この種物品分野において,柄自体の形態としては先行意匠に照らして特徴的なものであるとまではいうことができず,この(共通点3)が意匠全体の美感に与える影響は小さいといえる。
(共通点6)の掃除ドラムの形態,及び(共通点7)の羽根の形態については,本物品の機能に関する部位であって需要者の注意を強く惹く部分であるものの,塵埃を取り除くために使用される手動掃除機における塵埃収集機構の形態として既に見られるもの(甲第3号証(別紙第6)及び甲第4号証(別紙第7)参照)であることから,これら(共通点6)及び(共通点7)が意匠全体の美感に与える影響は小さいといえる。
イ 相違点の評価
(相違点1)における蓋固定部の形態の相違については,蓋等の固定方法に係る従来からある様々な形態のバリエーションの内における相違にすぎず,意匠全体の共通性に埋没する程度の微細なものであって別異の美感を起こさせるまでのものとはいえないから,この(相違点1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
(相違点2)における吊り用穴の形態については,円形穴のバリエーションの一つであって,両意匠の該部位のいずれの形態も吊り穴の形態としてありふれたものにすぎないから,この(相違点2)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(相違点3)における裏握り部の形態については,通常の使用状態では手で握られて観察できない部位であり,需要者が特に関心を持って観察する部分ではないから,この(相違点3)が意匠全体の美感に与える影響は小さいといえる。
ウ 形態の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき,意匠全体として総合的に観察した場合,両意匠の外ケースの外側に円盤車輪を取り付け,外ケースと円盤車輪の一部分を覆うように開閉可能な蓋を設け,後方斜め上方に向かって柄を形成して平面視略倒T字状に構成した全体の形態の共通性や外ケース,円盤車輪及び蓋といった各部の具体的な形態の共通性は,この種物品の先行意匠に照らして特徴的なものであって,意匠全体の美感に及ぼす影響が大きいのに対し,両意匠の(相違点1)ないし(相違点3)が意匠全体の美感に及ぼす影響はいずれも小さく,これらの相違点が相まって生じる視覚的効果を考慮しても,両意匠の相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点が与える共通の印象を覆すには至らないものであるから,両意匠の形態は類似するものである。
(3)小括
上記(1)及び(2)のとおり,両意匠は,意匠に係る物品について同一であり,その形態においても類似するものであるから,本件登録意匠とイ号意匠は類似するものである。
第5 むすび
以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものである。
よって,結論のとおり判定する。
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2019-600040