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特許拒絶査定不服審判

2019-016291

濡れたスポーツウェアの脱衣支援手段

審判番号
2019-016291
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-521589外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年12月03日
審決日
2020年06月26日
公報発行日
2020年08月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (A41D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2017-521589「濡れたスポーツウェアの脱衣支援手段」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月19日国際公開、WO2016/075500、平成29年12月14日国内公表、特表2017-537236、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1.手続の経緯 この出願(以下「本願」という。)は、2014年11月11日を国際出願日とする出願であって、その主な手続は以下のとおりである。 平成30年8月29日付け 拒絶理由通知 平成31年3月1日 意見書及び手続補正書の提出 令和元年7月31日付け 拒絶査定(以下「原査定」という。) 同年12月3日 拒絶査定不服審判の請求及び同時に手続補正書の提出 第2.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1~12に係る発明は、令和元年12月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された以下の事項により特定されるものである。 なお、請求項1~12に係る発明を、以下それぞれ「本願発明1」等という。 「【請求項1】 着用者の皮膚(90)に密着して着用され、運動による汗、環境条件又はこれら両方により濡れている上半身用スポーツウェア(10)のための、濡れたスポーツウェアの脱衣支援手段において、前記支援手段は、前記スポーツウェア(10)の背部に作製され、 -条片案内部(20)、メッシュ案内部(40)又は折込み案内部(60)から選択される、1つ又は複数の案内部から構成され、 -前記1つ又は複数の案内部は、前記選択した案内部のための対応する引張り手段を備え、前記引張り手段は、条片(30)、メッシュ(50)又は摺動背部(70)から選択され、全ての前記引張り手段の始端部は、接合領域(12)内で前記スポーツウェア(10)の裾部(11)に取り付けられ、前記引張り手段のもう一方の側は、把持手段又は中間接続領域(31)内で終端し; -前記把持手段は、前記着用者の首領域内で前記スポーツウェア(10)の頂部近くであって、前記スポーツウェア(10)の前記背部に位置し、手で把持、引っ張り、前記スポーツウェアの背部を引き上げられるようにし; -前記脱衣支援手段は、前記スポーツウェア(10)の内側又は外側表面上に位置することを特徴とする、濡れたスポーツウェアの脱衣支援手段。 【請求項2】 前記1つ又は複数の案内部は、前記条片案内部(20)であるように選択し、前記条片案内部(20)は、前記スポーツウェア(10)の面の一方に継ぎ目(24)を介して縫い付けた材料から形成され、前記スポーツウェア(10)と共に、前記条片(30)が中で移動するのを可能にするスリーブを形成し、前記各条片案内部(20)は、前記裾部( 11)の近くに位置する条片案内部始端部(21)から始端することを特徴とする、請求項1に記載の濡れたスポーツウェア(10)の脱衣支援手段。 【請求項3】 前記各条片案内部(20)は、前記スポーツウェア(10)の首部に近い条片案内部終端部(22)で終端し、前記各条片(30)は、握り部(80)であるように選択した前記把持手段に個別に接続されていることを特徴とする、請求項2に記載の濡れたスポーツウェア(10)の脱衣支援手段。 【請求項4】 前記条片案内部(20)は、前記条片案内部(20)の一部又は全てが重複領域(23)内で重複し、前記対応する条片(30)が重なり合って前記重複領域(23)を個別に通過するように重複していることを特徴とする、請求項3に記載の濡れたスポーツウェア(10)の脱衣支援手段。 【請求項5】 前記条片案内部(20)の一部は、前記重複領域(23)内で終端し、前記対応する条片(30)は、前記案内部(20)内に位置する前記条片(30)上に形成した前記接続領域(31)内で互いに接続され、前記条片(30)は、前記スポーツウェア(10)の前記首部に近い前記重複領域(23)にわたって通過する前記案内部(20)内に位置することを特徴とする、請求項4に記載の濡れたスポーツウェア(10)の脱衣支援手段。 【請求項6】 前記条片案内部(20)は、前記着用者の皮膚(90)の方を向く前記スポーツウェア(10)の内側表面上に形成されることを特徴とする、請求項2~5のうちいずれか一項に記載の濡れたスポーツウェア(10)の脱衣支援手段。 【請求項7】 前記案内部は、前記メッシュ案内部(40)であるように選択し、前記メッシュ案内部(40)は、前記スポーツウェア(10)に継ぎ目(44)を介して縫い付けた材料から形成され、前記スポーツウェア(10)と共に、前記メッシュ(50)が中で移動するのを可能にするスリーブを形成し、前記メッシュ案内部(40)は、前記裾部(11)の近くに位置するメッシュ案内部始端部(41)から始端することを特徴とする、請求項1に記載の濡れたスポーツウェア(10)の脱衣支援手段。 【請求項8】 長方形形態の前記メッシュ(50)は、前記対応するメッシュ案内部(40)に挿入され、前記メッシュ(50)は、一端で、前記背部の前記裾部(11)の全てにわたり延在する前記接合領域(12)に取り付けられ、もう一方の側で、握り部(90)であるように選択した前記把持手段に取り付けられていることを特徴とする、請求項7に記載の濡れたスポーツウェア(10)の脱衣支援手段。 【請求項9】 台形形態の前記メッシュ(50)は、前記対応するメッシュ案内部(40)に挿入し、前記メッシュ(50)は、一端で、前記背部の前記裾部(11)の全てにわたり延在する前記接合領域(12)に取り付けられ、反対側で、前記メッシュ案内部終端部(42)から外に出ているメッシュくびれ部(81)に取り付けられ、前記メッシュくびれ部(81)は、把持手段として働き、前記メッシュくびれ部(81)を締結手段(14)に取り付けるための締結手段(51)を備えることを特徴とする、請求項7に記載の濡れたスポーツウェア(10)の脱衣支援手段。 【請求項10】 前記メッシュ案内部(40)は、前記着用者の皮膚(90)の方を向く前記スポーツウェア(10)の内側表面上に形成されることを特徴とする、請求項7~9のうちいずれか一項に記載の濡れたスポーツウェア(10)の脱衣支援手段。 【請求項11】 前記案内部は、前記スポーツウェアに縫い付けた材料を有する、前記スポーツウェア(10)の前記首部に形成した前記折込み案内部(60)であるように選択し、短いスリーブを形成し、前記短いスリーブは、前記摺動背部(70)のくびれ部(82)によって、前記摺動背部(70)が前記折込み案内部(60)を通ることを可能にし、前記くびれ部(82)は、前記スポーツウェア(10)の頂部から延在し、把持手段として使用し、前記摺動背部(70)は、前記着用者の皮膚(90)と直接接触し、前記裾部(11)の背部にわたり延在する前記接合領域(12)内で前記摺動背部(70)の下側部のみを介して固定され、前記摺動背部(70)は、前記接合領域(12)を除いて前記摺動背部(70)から分離している前記スポーツウェア(10)の前記背部を形成し、縁部(72)は、前記裾部(11)から前記折込み案内部(60)に延在する縁部(17)で縁を付けた前記スポーツウェアの前記背部の下に位置することを特徴とする、請求項1に記載の濡れたスポーツウェア(10)の脱衣支援手段。 【請求項12】 前記摺動背部(70)は、台形形態を有し、前記台形形態の基部は、前記裾部(11)により取り付けられ、前記台形形態のくびれ部(82)は、一端で、締結手段(71)を有する把持手段として使用され、前記締結手段(71)は、前記折込み案内部(60)の近くに位置する締結手段(14)に対応することを特徴とする、請求項11に記載の濡れたスポーツウェア(10)の脱衣支援手段。」 第3.原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由、すなわち平成30年8月29日付けで通知した拒絶の理由の概要は次のとおりである。 本願発明1~12は、以下の引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2000-199118号公報 2.米国特許出願公開第2014/0237699号明細書 第4.当審の判断 1.引用文献の記載事項 (1)引用文献1 本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2000-199118号公報)には、以下の記載がある。 ア.「【請求項1】 上半身用衣類の裾部を着脱自在に固定する1以上の固定部と、前記固定部に連設された引き紐部と、を備えたことを特徴とする衣類着脱用補助具。 ・・・ 【請求項3】 二又に形成され先端部に前記固定部を備えた前記引き紐部と、前記引き紐部の二又部に縫着等で形成された分岐部又は三口の紐通し部を備え前記引き紐部に摺動自在に配設された金属や皮革,合成樹脂等からなる分岐部と、前記分岐部に連設された把持部と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の衣類着脱用補助具。」 イ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、上半身に着用する衣類の着脱を容易にする衣類着脱用補助具に関する。更に詳しくは、頭から被って着用するプルオーバー型の肌着,セーター,トレーナー等の裾部の引き上げ,引き下ろしを補助することにより、極めて簡単でかつ短時間に着衣や脱衣を行うことのできる衣類着脱用補助具に関する。 【0002】 【従来の技術】高齢化社会を迎え増加する高齢者や障害者等、介助を必要とする要介助者は年々増加する傾向にある。介助者が要介助者に衣類を着脱させる場合、身体にフィットするデザインの衣類は着衣や脱衣に手間がかかるため、ゆったりとしたシルエットの衣類が好まれ、・・・ 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、・・・ 3)着用時に頭から被る、いわゆる「プルオーバー」型の肌着,Tシャツ,セーター,トレーナー等の衣類は世間一般に広く愛好されているが、上記の理由等により介助が必要な者は着用が困難である問題点を有していた。 4)また、プルオーバー型の衣類は、着用者の肩から背中にかけて裾部が引っかかる場合がよくあり、健常者でも着脱が困難になることは多い。例えば、入浴直後で皮膚表面に湿気が残っているときの肌着の着用や、肩凝りや筋肉痛で手が十分に上がらない場合、スポーツや暑い季節に汗をかいた場合の衣類の着脱は困難であるという問題点を有していた。・・・ 本発明は上記従来の課題を解決するもので、頭から被って着用するプルオーバー型の衣類を高齢者や障害者、健常者のいずれでも一人で容易に着脱することのできる衣類着脱用補助具を提供することを目的とする。」 ウ.「【0005】 【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の衣類着脱用補助具は、上半身用衣類の裾部を着脱自在に固定する1以上の固定部と、前記固定部に連設された引き紐部と、を備えた構成を有している。この構成により、・・・脱衣時には、肩口から裾部を固定部で固定した引き紐部を引き上げることにより、高齢者や障害者でも一人で容易に脱衣することができるという作用を有する。」 エ.「【0011】以下に本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。 (実施の形態1)図1は本発明の実施の形態1における衣類着脱用補助具の斜視図である。図1において、1は実施の形態1における衣類着脱用補助具、2は中央で同じ長さに折り返された布帛等でベルト状に形成された引き紐部、3は引き紐部2の所定部で所定角度で交差させその表裏面に布帛や皮革で被覆し縫着した分岐部、、4は引き紐部2の分岐部3の上方に設けられた把持部、5は把持部4に嵌着したリング状の重錘部、6は引き紐部2の両端部に配設された調節金具からなる長さ調節部、7はクリップ状の固定部である。 【0012】以上のように構成された本実施の形態1における衣類着脱用補助具の使用方法について、以下図面を用いて説明する。・・・脱衣時には、図3に示したように、把持部4を手前側、引き紐部2を両肩口から背後に垂らし、固定部7を背中側の裾部11の2か所に固定する。ゆっくりと把持部4又は重錘部5を前方(下方)に引くと、固定部7で固定された背中側の裾部11がスムーズに擦り上がる。裾部11から頭を引き抜き、最後に腕を衣類10の腕挿入部や裾部11から引き抜くと極めて簡単に脱衣できる。」 オ.「【図1】 」 カ.「【図3】 」 上記ア.~カ.によれば、引用文献1には、以下の発明(「引用発明1」という)が記載されている。 「上半身用衣類の裾部を着脱自在に固定する1以上の固定部と、前記固定部に連設された引き紐部であって二又に形成され先端部に前記固定部を備えた前記引き紐部と、前記引き紐部の二又部に縫着等で形成された分岐部又は三口の紐通し部を備え前記引き紐部に摺動自在に配設された金属や皮革,合成樹脂等からなる分岐部と、前記分岐部に連設された把持部と、を備えた衣類着脱用補助具。」 (2)引用文献2 本願出願前に頒布された刊行物である引用文献2(米国特許出願公開第2014/0237699号明細書)には、以下の記載がある。 なお、[]内は当審で付した仮訳である。 ア.「[0003] Thisinvention is in the field of garments. More specifically, embodiments of thisinvention are directed to full-length garments, such as robes, gowns, and thelike.」 [本発明は、衣類の分野に属する。より具体的には、本発明の実施形態は、ローブ、ガウンなどの長い丈の衣類を対象とする。] イ.「[0005] Regardlessof the reason for wearing the garment, while the length of the garment isconvenient and desirable for much of the time, that length can sometimes causediscomfort or difficulty, for example as the wearer uses the toilet orotherwise sits, undergoes a medical examination, or engages in variousactivities such as riding astride a motorcycle or horse. Depending on thesituation, these longer-length garment may more easily become soiled,particularly in rearranging the longer portion to accommodate the change inposition or usage. For these situations, the wearer is faced with the choicebetween not wearing a longer length garment at all, or suffering the discomfortor trouble of rearranging the garment.」 [衣服を着用する理由に関係なく、衣服の長さは多くの場合便利で望ましいものですが、その長さは、たとえば着用者がトイレを使用する、またはオートバイや馬にまたがって乗馬するなどの理由で不快感や困難を引き起こす可能性があります。状況によっては、これらの長い丈の衣類は、特に長い部分を位置や使用方法の変更に対応するように再配置すると、汚れやすくなります。これらの状況では、着用者は長めの衣服をまったく着用しないか、衣服を並べ替える不快感やトラブルに悩まされるかの選択に直面します。] ウ.「[0006] Embodiments of this invention provide a longerlength garment that provides improved comfort, range of motion, and reducedrisk of soiling.」 [本発明の実施形態は、改善された快適性、可動域、および汚れのリスクの低減を提供する、より長い衣類を提供する。] エ.「[0010] Thisinvention may be implemented into a garment of a length extending to a lengthbeyond the seat area of the wearer, and which has a liftable rear panelattached to the rear of the garment, at a location ranging from the neckline tothe mid- to upper back, depending primarily on the material and how it buncheswhen raised. When not raised, the rear panel extends over and covers an openingin the back of the garment. A lifting member such as one or more drawstrings isattached to the rear panel at or near its bottom edge, and is attached withinthe garment to extend over the shoulder of the wearer. By pulling the liftingmember (either manually or by way of a motor) the wearer can raise the rearpanel, for example above the seat area. Enhanced access to the exposed rear ofthe wearer is then provided, facilitating toilet use and other temporaryactivities of the wearer.」 [本発明は、着用者の臀部領域を超える長さまで延びる長さの衣服の背部に取り付けられ、ネックラインの位置の中間部ないし上部に昇降可能な背面パネルを有する。背面パネルを持ち上げた場合にどのようなひだとなるかは素材によって異なります。持ち上げない場合、背面パネルは衣服の後ろの開口部を覆って広がります。1つまたは複数の引き紐などの吊り上げ部材が、背面パネルの底縁またはその近くに取り付けられ、着用者の肩の上に延びるように衣服内に取り付けられる。吊り上げ部材を引っ張る(手動又は電動のいずれか)ことにより、着用者は、背面パネルを臀部領域の上に持ち上げることができる。 これによって、着用者の露出した後部へのアクセスが強化され、トイレの使用および着用者の他の一時的な活動が容易になる。] オ.「[0027] FIG. 3illustrates, in additional detail, the implementation of drawstring D accordingto an embodiment of the invention. In this implementation, drawstring D passesbetween the surface or lining of garment 10 and fabric sleeve 15; fabric sleeve15 thus retains drawstring D in an over-the-shoulder position. Fabric sleeve 15may either be sewn on the exterior of shoulder portion SP, or alternatively onits inner lining or surface. If sewn on its inner lining, drawstring end A maypass through a slit through the front panel of garment 10 so as to be easilypulled or otherwise actuated; alternatively, drawstring end A may be retainedwithin garment 10, requiring the wearer to reach under garment 10, for examplewith his off-side hand, to actuate rear panel G.」 [図3は、本発明の実施形態に係る引き紐Dの更なる詳細図である。この実施例では、引き紐Dは、衣服10の表面又は裏地と布スリーブ15との間を通過する。したがって、布スリーブ15は、肩越しの位置で引き紐Dを保持する。布スリーブ15は、肩部分SPの外側に、あるいはその内側の裏地または表面に縫い付けられてもよい。内側の裏地に縫い付けられている場合、引き紐Dの端部Aは、衣類10の前面パネルを通るスリットを通過して、簡単に引っ張られるか、その他の方法で作動されます。代替として、引き紐端部Aは、衣服10内に保持されてもよく、その場合、着用者が、例えば、反対側の手で衣服10の下に到達して、背面パネルGを作動させる必要がある。] カ.「 」 キ.「 」 2.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1を対比する。 ア.引用発明1の「上半身用衣類」は、上記1.(1)イ.によれば、「身体にフィットするデザインの衣類は着衣や脱衣に手間がかかる」ことを従来技術の背景としつつ、「着用時に頭から被る、いわゆる「プルオーバー」型の肌着,Tシャツ,セーター,トレーナー等の衣類」は「介助が必要な者は着用が困難である問題点を有して」おり、さらに「プルオーバー型の衣類は、着用者の肩から背中にかけて裾部が引っかかる場合がよくあり、健常者でも着脱が困難になること」が多く、特に「入浴直後で皮膚表面に湿気が残っているときの肌着の着用や、肩凝りや筋肉痛で手が十分に上がらない場合、スポーツや暑い季節に汗をかいた場合の衣類の着脱は困難であるという問題点を有していた」ことを解決すべき課題としている。 そうすると、引用発明1の「上半身用衣類」は、身体にフィットするデザインのプルオーバー型で、スポーツの際に着用されることもある上半身用衣類を含むものであって、「衣類着脱用補助具」は、スポーツや暑い季節に汗をかいた場合の衣類の着脱を補助することを含むものである。 よって、引用発明1の「上半身用衣類」は、本願発明1の「着用者の皮膚(90)に密着して着用され、運動による汗、環境条件又はこれら両方により濡れている上半身用スポーツウェア(10)」に相当する。 また引用発明1の「衣類着脱用補助具」は、着衣時、脱衣時いずれにも使用する補助具であるから、本願発明1の「濡れたスポーツウェアの脱衣支援手段」に相当する。 イ.引用発明1の「固定部」、「引き紐部」、「分岐部」、「把持部」は、合わせて本願発明1の「引張り手段」に相当する。 引用発明1の「固定部」が「上半身用衣類の裾部を着脱自在に固定する」ことは、「全ての引張り手段の始端部は、取り付け領域内で前記スポーツウェアの裾部に取り付けられ」ることの限りにおいて、本願発明1の「全ての前記引張り手段の始端部は、接合領域(12)内で前記スポーツウェア(10)の裾部(11)に取り付けられ」ることと一致する。 引用発明1の「引き紐部」は、上記1.(1)エ.によるとベルト状であるから、本願発明1の「条片(30)」に相当する。 引用発明1の「把持部」は、本願発明1の「把持手段」に相当する。 引用発明1において「固定部」、「引き紐部」、「分岐部」、「把持部」の順に構成されており、「固定部」が本願発明1の「始端部」に対応していることから、引用発明1において「固定部」の反対側に「把持部」が位置することは、本願発明1の「前記引っ張り手段のもう一方の側は、把持手段で終端し」ていることに相当する。 ウ.引用発明1の「衣類着脱用補助具」は、上記1.(1)エ.及びカ.の図示によれば、上半身用衣類の背部に位置するものであるから、「支援手段は、スポーツウェアの背部に取り付けられ」ることの限りにおいて、本願発明1の「前記支援手段は、前記スポーツウェア(10)の背部に作製され」ることと一致する。 エ.引用発明1の「衣類着脱用補助具」は、上記1.(1)エ.によると、脱衣時には、把持部4を前方(下方)に引くと、固定部7で固定された背中側の裾部11がスムーズに擦り上がるものである。 そうすると、引用発明1の「把持部」を前方(下方)に引くことで背中側の裾部が擦り上がることは、「把持手段は、手で把持、引っ張り、スポーツウェアの背部を引き上げられるようにし」ていることの限りにおいて、本願発明1の「前記把持手段は、前記着用者の首領域内で前記スポーツウェア(10)の頂部近くであって、前記スポーツウェア(10)の前記背部に位置し、手で把持、引っ張り、前記スポーツウェアの背部を引き上げられるようにし」ていることと一致する。 オ.引用発明1の「衣類着脱用補助具」は、上記1.(1)エ.及びカ.の図示によれば、上半身用衣類の外側表面上に位置させることを可能とするものであるから、本願発明1の「前記脱衣支援手段は、前記スポーツウェア(10)の外側表面上に位置すること」に相当する。 カ.よって、本願発明1と引用発明1は、以下の点で一致する。 <一致点> 「着用者の皮膚に密着して着用され、運動による汗、環境条件又はこれら両方により濡れている上半身用スポーツウェアのための、濡れたスポーツウェアの脱衣支援手段において、支援手段は、スポーツウェアの背部に取り付けられ、 引張り手段を備え、前記引張り手段は、条片であり、全ての引張り手段の始端部は、取り付け領域内で前記スポーツウェアの裾部に取り付けられ、前記引っ張り手段のもう一方の側は、把持手段で終端し、 把持手段は、手で把持、引っ張り、スポーツウェアの背部を引き上げられるようにし、 前記脱衣支援手段は、前記スポーツウェアの外側表面上に位置する、 濡れたスポーツウェアの脱衣支援手段。」 キ.そして、本願発明1と引用発明1は、以下の点で相違する。 <相違点1> 本願発明1の「脱衣支援手段」は、「前記スポーツウェア(10)の背部に作製され」るのに対して、引用発明1の衣類着脱用補助具は、上半身用衣類の背部に位置させることが可能ではあるものの、背部に作製されるものではない点。 <相違点2> 本願発明1の「脱衣支援手段」は、「条片案内部(20)、メッシュ案内部(40)又は折込み案内部(60)から選択される、1つ又は複数の案内部から構成され」、「前記1つ又は複数の案内部は、前記選択した案内部のための対応する引張り手段を備え」るものであるのに対して、引用発明1は、案内部を備えていない点。 <相違点3> 本願発明1は、「全ての前記引張り手段の始端部は、接合領域(12)内で前記スポーツウェア(10)の裾部(11)に取り付けられ」るのに対して、引用発明1の固定部は、裾部を着脱自在に固定する点。 <相違点4> 本願発明1の「把持手段」は、「前記着用者の首領域内で前記スポーツウェア(10)の頂部近くであって、前記スポーツウェア(10)の前記背部に位置し」ているのに対して、引用発明1の「把持部」は、そのように位置していない点。 (2)相違点についての検討 <相違点1>~<相違点3>は、本願発明1の脱衣支援手段が衣服と一体となったものであるのに対して、引用発明1の衣類着脱用補助具が衣服と別体のものであることに起因する相違点であり、密接に関連する相違点であるから、これら3つの相違点をあわせて検討する。 ア.引用文献1の記載によれば、引用発明1の衣類着脱用補助具は、「頭から被って着用するプルオーバー型の肌着,セーター,トレーナー等の裾部の引き上げ,引き下ろしを補助することにより、極めて簡単でかつ短時間に着衣や脱衣を行うことのできる」(段落【0001】)ようにするものであり、そのため、「固定部としては、衣類の裾部を着脱自在に挟持し固定できるものが好ましく、金属製やプラスチック製等のクリップ状や、洗濯バサミ状等のものが使用され、摘み部を大型に形成しておくと指先が不自由な場合も固定しやすいので好ましい」(段落【0006】)とされるものである。 これらの記載からすると、引用発明1の衣類着脱用補助具は、肌着,セーター,トレーナー等のプルオーバー型の衣類に、裾部の引き上げ,引き下ろしを補助するために、衣類に対して後付けで設けられるものと理解できる。そうすると、肌着,セーター,トレーナー等の衣類に、裾部の引き上げや引き下ろしの際に着脱可能に設けることを前提とする引用発明1の衣類着脱用補助具において、着脱可能とするのではなく、「スポーツウェア(10)の背部に作製され」るものとし、「条片案内部(20)、メッシュ案内部(40)又は折込み案内部(60)から選択される、1つ又は複数の案内部」を設け、さらに、引用発明1の固定部を、裾部を着脱自在に固定するのではなく、「全ての前記引張り手段の始端部は、接合領域(12)内で前記スポーツウェア(10)の裾部(11)に取り付けられ」るように換えようとする動機付けがない。 イ.引用文献2には、上記1.(2)によれば、以下の事項(「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。 (ア)ローブ、ガウンなどの長い丈の衣類を対象とするものである。 (イ)長い丈の衣類は、トイレの使用時、オートバイや乗馬時に、その長さが不快感や困難を引き起こすものであり、長い部分を、位置や使用方法の変更に対応するように再配置すると、汚れやすくなるという問題点がある。 (ウ)そのため、改善された快適性、可動域、および汚れのリスクの低減した、より長い衣類を提供することを目的とする。 (エ)長い丈の衣類は、着用者の臀部領域を超える長さまで延びる長さの衣服である。その背部に、ネックラインの位置の中間部ないし上部に昇降可能な背面パネルを有する。背面パネルは、持ち上げた場合にひだとなり、持ち上げない場合に衣服の後ろの開口部を覆って広がる。 (オ)1つまたは複数の引き紐などの吊り上げ部材が、後部パネルの底縁またはその近くに取り付けられ、着用者の肩の上に延びるように衣服内に取り付けられる。吊り上げ部材を引っ張ることにより、背面パネルを臀部領域の上に持ち上げることができる。 (カ)これにより、着用者の後部へのアクセスが強化され、トイレの使用時、オートバイや乗馬時などの一時的な活動が容易になる。 (キ)引き紐は、衣服の表面又は裏地と布スリーブとの間を通過する。布スリーブは、肩越しの位置で引き紐を保持する。布スリーブは、肩部分の外側に、あるいはその内側の裏地または表面に縫い付けられてもよい。 このように、引用文献2記載事項は、長い丈の衣類はトイレの使用時、オートバイや乗馬時に、その長さが不快感や困難を引き起こすものであり、長い部分を、位置や使用方法の変更に対応するように再配置すると、汚れやすくなることを課題とし、長い丈の衣類の背面パネルを昇降可能とする特殊な構造とした上で、引き紐を衣服内に取り付けることで背面パネルを臀部領域の上に持ち上げることができるようにしたものであり、衣服の脱衣を支援するものではない。 つまり、引用文献2にも、引用発明1のものを、上記相違点1~3に係る本願発明1のものに換える動機付けについて、記載も示唆もされていない。 ウ.したがって、<相違点4>について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1、及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 3.本願発明2~12について 本願発明2~12は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定するものであるから、本願発明2~12についても同様の理由により、引用発明1、及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 4.小括 以上のとおり、本願発明1~12は、原査定の理由により、引用発明1、及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第5.むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-016291

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