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特許拒絶査定不服審判

2019-015145

ヘアーアイロン

審判番号
2019-015145
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-075553
請求日
2019年11月11日
審決日
2020年02月03日
公報発行日
2020年05月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社大木工藝
  • 【請求人代理人】協明国際特許業務法人
審判長/審判官
  • 審判長 久保 竜一
  • 審判官 柿崎 拓
  • 審判官 窪田 治彦
分類
P18 .121-Z (A45D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2017- 75553「ヘアーアイロン」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 1日出願公開、特開2018- 15538〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 この出願は、平成29年4月5日(優先権主張 平成28年7月13日)の出願であって、平成31年2月28日付けの拒絶理由の通知に対し、令和元年5月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和元年8月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和元年11月11日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 本願発明 この出願の各請求項に係る発明は、令和元年5月13日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「長尺の第1アームと、長尺であり、長手方向の一端部が前記第1アームの長手方向の一端部に枢着され、他端部が前記第1アームの他端部に対して近づく方向または遠ざかる方向へ移動自在である第2アームと、を有し、前記第1アームと前記第2アームとで毛髪を挟持して施術するヘアーアイロンであって、 前記第1アームにおける前記第2アームに対向する部位に設けられ、施術時に毛髪に接触する第1接触部と、 前記第2アームにおける前記第1アームに対向する部位に設けられ、施術時に毛髪に接触する第2接触部と、 前記第1接触部と前記第2接触部との少なくとも一方を加熱する加熱部と、を備え、 前記第1接触部と前記第2接触部との少なくとも一方は、等方性高密度黒鉛から形成された部位を有する、 ヘアーアイロン。」 第3 原査定(令和元年8月5日付け拒絶査定)の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、請求項1に係る発明についての拒絶の理由は、次のとおりである。 この出願の請求項1に係る発明は、この出願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、並びに引用文献4、引用文献6及び引用文献7に記載されたような周知の技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 この出願の請求項1に係る発明は、この出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献2に記載された発明、並びに引用文献4、引用文献6及び引用文献7に記載されたような周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2010-233830号公報 引用文献2:実願昭60-198692号(実開昭62-104701号)のマイクロフィルム(本審決における「引用文献2」。) 引用文献4:特開2009-279388号公報(本審決における「引用文献4」。) 引用文献6:特開2016-042051号公報(本審決における「引用文献6」。) 引用文献7:特開2008-162866号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1.引用文献2の記載及び引用発明 (1)引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、引用文献2には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付与した。以下、同様。)。 ア.「産業上の利用分野 本考案は、使用時に遠赤外線を輻射するヘアカーラーに関する。」(明細書第1ページ第13行~第15行) イ.「第1図に示す梳髪部材(2)を兼備したヘアカーラーの加熱部(1)の加熱は、該加熱部内に内蔵されたニクロム線等によって電気的におこなわれる。 遠赤外線輻射層を有する加熱部(1)はそれ自体が遠赤外線輻射性物質から構成されていてもよく、あるいは適当な金属製加熱部の表面上に遠赤外線幅射層を被覆させてもよい。後者の場合、通常は加熱によつて遠赤外線を輻射する物質を該金属表面に熔着もしくは蒸着させるか、あるいは遠赤外線輻射性物質の粉末を適当なバインダーもしくはビヒクル中に分散させた組成物を該金属表面上に塗布後、焼付けすることによつて遠赤外線輻射層を形成させる。」(明細書第2ページ第15行~第3ページ第7行) ウ.「遠赤外線輻射性物質としては、従来から医療器機や工作機械をはじめとして、各種の工業、農業等の分野において加熱、乾燥、保温、焼付、暖房、加硫、硬化等の目的に利用されている遠赤外線輻射性物質はいずれも本考案に使用可能であるが、例えはアルミナ、チタニア、ジルコニヤ等の金属酸化物等を主成分とするセラミツクス、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、銅鉱石スラグ(主成分:ZnO、NiO、CaO、MgO、TiO2)等が挙げられる。 特に約1~25μmの長波長遠赤外線を多量に放射するセラミツクスは毛髪の芯部まで効果的に輻射熱を通すので好適なものである。」(明細書第3ページ第8行~第19行) エ.「考案の効果 本考案による遠赤外線ヘアカーラーは伝導熱と共に、毛髪の芯部まで効果的に加温加熱する輻射熱を利用するために、毛髪と接触する加熱部の表面温度を従来よりも低くしても整髪の時間は短縮され、毛髪の傷みや接触事故による火傷は軽度ですむ。 また、養毛剤、整髪液、トリートメント液、および染髪液の実用に際して本考案による遠赤外線ヘアカーラーを利用すれば、遠赤外線による輻射熱によつて有効成分の毛髪への付着浸透が効果的におこなわれ、毛髪芯部の細胞の新陳代謝も旺盛となる。」(明細書第4ページ第3行~第15行) オ.記載事項イ.エ.によると、遠赤外線ヘアカーラーは、加熱部(1)と、梳髪部材(2)とを有し、加熱部(1)が毛髪と接触して整髪をするものといえる。 カ.記載事項イ.によると、ニクロム線が、加熱部(1)を電気的に加熱するといえ、また、加熱部(1)はそれ自体が遠赤外線輻射性物質から構成されているといえる。 (2)引用発明 前記引用文献2の記載事項ア.~カ.及び図面の図示内容を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「加熱部(1)と、梳髪部材(2)とを有し、前記加熱部(1)が毛髪と接触して整髪をする遠赤外線ヘアカーラーであって、 前記加熱部(1)を電気的に加熱するニクロム線を備え、 前記加熱部(1)はそれ自体が遠赤外線輻射性物質から構成されている遠赤外線ヘアカーラー。」 2.引用文献4の記載 原査定の拒絶の理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、引用文献4には、図面とともに、次の記載がある。 (1)「【0001】 本発明は、血流の促進のために人体の所定の部位に貼着して使用される貼着型健康増進用具に関する。」 (2)「【0015】 この炭素成型品10は、焼成により高密度で整った結晶構造となっており、全体が一体的に形成されるもので、以下のように製造することができる。すなわち、黒鉛、又は竹炭などの炭化物の炭素粉にフェノール系接着剤、ピッチ又はタールなどのバインダを5重量%程度加えて固め、所定の塊(例えば方形もの)に加圧成形する。そして、酸素が欠乏した状態で加熱し、2000~3000℃程度で焼成する。この状態で、原料の炭素粉同士は結合し結晶化(黒鉛化、定形炭素化)する。なお、フェノール成分、ピッチ又はタールは昇温途中の約1200℃程度で揮発している。その後、加熱を止め、温度を下げ、炭素成型品10の形状に加工する。この炭素成型品10は、バインダが揮発しているので、ほぼ100%(99%以上)が炭素材となっている。また、かさ密度(かさ比重)は、1.77Mg/m3以上である。」 (3)「【0020】 貼着型健康増進用具1の人体当接部10bの先端は、それを貼着した部位を局所的に刺激する。また、炭素成型品10は、ほぼ100%が炭素材であり、外部の熱や光などの形で吸収したエネルギーを遠赤外線の形で多く放射し、遠赤外線は貼着型健康増進用具1を貼着した部位の皮下組織、血管などに作用する。このようにして血流を促進し、もって健康増進に寄与する。」 (4)「【0023】 次に、貼着型健康増進用具1の重要なバリエーションである、発熱するシール材12を用いたものを説明する。シール材12は、発赤やかぶれ等が起こらないように所定温度(42~43℃程度)以下に保持できるものとする。例えば、特開2000-139990号などで開示されているような技術を適用する。そうすると、シール材12からの熱は、適当な温度で、熱伝導率の高い炭素成型品10の人体当接部10bの先端まで届き、貼着した部位の局所的な刺激が高まり、また、遠赤外線の量も多くなる。こうして、更に血流を促進できる。なお、発熱のためには、一般に、空気中の酸素との酸化反応により発熱する物質がシール材12に含まれるので、シール材12単体又はシール材12を含む貼着型健康増進用具1を剥離紙2付きで1個又は複数個ずつ、非通気性(例えば、ポリプロピレン製)の扁平袋やプレススルーパッケージなどに封入して、空気を遮断して保管する。」 3.引用文献6の記載 原査定の拒絶の理由で引用され、この出願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献6には、図面とともに、次の記載がある。 (1)「【0011】 口腔内マッサージ具1は、口腔内接触部2を備えている。口腔内接触部2は、口腔内マッサージとして歯茎又は頬などの口腔内の粘膜に押し当てられ運動させられる部分である。口腔内接触部2は、主要部材として、炭素成形体21を有している。」 (2)「【0012】 この炭素成形体21は、焼成により高密度で整った炭素の結晶構造が形成されており、全体が一体的に形成されるものである。結晶構造は、全体的に方向が偏らずにほぼ等方になるようにすることができる。炭素成形体21は、以下のようにして製造することができる。すなわち、黒鉛、又は炭化物(竹炭など)の炭素粉にバインダを5重量%程度加えて固め、水圧などで等方に加圧して所定の塊(例えば方形もの)に成形する。そして、酸素が欠乏した状態で加熱し、2500~3500℃程度で長時間かけて焼成する。この状態で、原料の炭素粉同士は結合し炭素が結晶化(黒鉛化、定形炭素化)する。なお、バインダは昇温途中の1000~1200℃程度で揮発させる。その後、加熱を止め、温度を下げ、所望の形状に加工する。このようにして出来あがった炭素成形体21は、バインダが揮発しているので、ほぼ100%(99%以上)が炭素材となっている。また、かさ密度(かさ比重)は、1.77Mg/m3以上である。」 (3)「【0013】 炭素成形体21は、全体が結晶構造により結合しているために、物理的強度が高く、また熱伝導率も高い(100~140W/(m・K)程度)。また、放射する遠赤外線の量が多く、温度が高いほど多い。」 (4)「【0021】 選択スイッチ31の操作により発熱部4が熱せられると、発熱部4の熱は口腔内接触部2の炭素成形体21に伝導し、その温度は高くなる。炭素成形体21は、口腔内の粘膜に、熱伝導により直に熱を伝えるとともに、温度が高くなるに従って量が多くなった遠赤外線を放射する。この遠赤外線は、口腔内の粘膜の深部を加温する。これら伝導熱と遠赤外線の輻射熱により口腔内の粘膜の温度は効率的に高められるので、口腔内接触部2による圧力との相乗効果により、口腔内の粘膜の血行をより促進することができるのである。」 4.引用文献8の記載 新たに引用する、この出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2012-100777号公報(「引用文献8」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 (1)「【0001】 本発明は、顔部又は頭部のマッサージのためのマッサージ具に関する。」 (2)「【0017】 皮膚接触部4は、使用者がマッサージ具1を皮膚に押し当てて往復運動をさせると、それに追従して回動するものである。皮膚接触部4は、固定軸部3の熱を受けて皮膚に接触させる表面まで伝達する炭素成形体41から主に成る。」 (3)「【0018】 この炭素成形体41は、焼成により高密度で整った炭素の結晶構造が等方(方向によらず)に形成されており、全体が一体的に形成されるもので、以下のように製造することができる。すなわち、黒鉛、又は炭化物(竹炭など)の炭素粉にバインダを5重量%程度加えて固め、水圧などで等方に加圧して所定の塊(例えば方形もの)に成形する。そして、酸素が欠乏した状態で加熱し、2500~3500℃程度で長時間かけて焼成する。この状態で、原料の炭素粉同士は結合し炭素が結晶化(黒鉛化、定形炭素化)する。なお、バインダは昇温途中の1000~1200℃程度で揮発させる。その後、加熱を止め、温度を下げ、所望の形状に加工する。このようにして出来あがった炭素成形体41は、バインダが揮発しているので、ほぼ100%(99%以上)が炭素材となっている。また、かさ密度(かさ比重)は、1.77Mg/m3以上である。」 (4)「【0019】 炭素成形体41は、一体の結晶構造であるために、物理的強度が高く、また熱伝導率も高い(100~140W/(m・K)程度)。また、放射する遠赤外線の量が多く(図3参照)、温度が高いほど多い。なお、図3は、炭素成形体41の製造方法と同様にして製造した25×25×2(mm)の炭素成形体の遠赤外線放射特性である。実線が炭素成形体、破線が黒体の放射輝度である。分析装置は日本電子製フーリエ変換赤外分光光度計JIR-5500型/赤外放射ユニットIR―IRR200を用い、測定温度は50℃とした。」 (5)「【0025】 選択スイッチ21の操作により固定軸部3が熱せられると、固定軸部3の熱は皮膚接触部4の炭素成形体41に伝導し、その温度は高くなる。炭素成形体41は、皮膚に、熱伝導により直に熱を伝えるとともに、温度が高くなるに従って量が多くなった遠赤外線を放射する。この遠赤外線は、皮膚近傍の深部を加温する。これら伝導熱と遠赤外線の輻射熱により皮膚近傍の温度は効率的に高められるので、皮膚接触部4による圧力との相乗効果により、皮膚近傍の血行をより促進することができるのである。」 5.引用文献9の記載 新たに引用する、この出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平6-304076号公報(「引用文献9」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 (1)「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、例えばレストラン等でステーキを焼くのに使用される電磁調理テーブルに関する。」 (2)「【0006】このような構成を有する電磁調理テーブルでは、加熱調理板としてカーボンプレートを使用した点に特徴がある。このカーボンプレートは、主原料である黒鉛と少量の熱可塑性樹脂(四フッ化エチレン樹脂)を原料として成形された平板状の炭素板(等方性高密度黒鉛板)である。このカーボンプレートは、軽量であり、且つ安価である。また、導電体であり発熱体としての良好な性質を有する。加熱コイルに電流を流す時、コイルから発生する磁力線は、非磁性体であるカーボンプレートを直交状に透過する。この時、導電体であるカーボンプレートの表面及び内部において、垂直状磁力線に対し直角方向、つまり磁力線の周囲に水平面状の渦電流(カーボンプレート表面と平行する渦電流)が発生する。カーボンプレートは、適当な電気抵抗を有しており、渦電流によってジュール発熱する。更に、カーボンプレートは、熱伝導性及び熱拡散性に優れているため、温度ムラがなく迅速に熱伝導し、食品を短時間で加熱調理し得る。また、カーボンプレートは、不錆性であり耐磨耗性に優れ、表面滑性であるため、食品調理加熱後の表面清掃が極めて簡単であり衛生的である。」 (3)「【0011】前記カーボンプレート2は、主原料の黒鉛に四フッ化エチレン樹脂(テフロン樹脂)を加えて成形した平板である。実施例では、石油コークス50乃至55%及びピッチコークス30乃至35%から成る人造黒鉛85乃至90%と、四フッ化エチレン樹脂10乃至13%とを原料として成形したものである。四フッ化エチレン樹脂は、融点が327℃(250℃まで安定)で、電気的特性が良く、且つ耐摩耗性抜群の熱可塑性樹脂であり、多孔性である黒鉛の細孔を塞ぎ、不浸透炭素材料とする機能を発揮する。このカーボンプレートの成形方法は、公知の黒鉛板製造方法と同様で、上記原料の粉砕工程、混ねつ工程、粉砕ふるいわけ工程を経て成形(均衡プレス成形)し、焼成工程を終了した後、黒鉛化される。つまり、実施例のカーボンプレート2は、当方性(当審注:「等方性」の誤記と認められる。)高密度黒鉛材(東洋酸素株式会社製の商品規格番号・ISEMー2)を、調理加熱用発熱体として利用するものである。このカーボンプレート2は、実施例では約20mm厚みの平板に設定される。図3で示すように、実施例ではカーボンプレート2は平板状で、底面の適所には下向きの脚部21を複数突設している。更に、面内には例えば肉を焼く際に、網焼き状の焦げ目が表面に現れるように、平行の突条22を複数突設している。また、図4で示すカーボンプレート2は、円板状に設定した例を示しており、面内の外周部には食品の加熱油、或いは調理用油等を流し込む溝部23を一周形成している。」 (4)「【0012】このような構成を有する電磁調理テーブルでは、加熱コイル34に電流を流すと、コイル34から磁力線が発生する。この磁力線は、カーボンプレート2を下面から上面方向へ直交状に透過(貫通)し、更に上方から上面及び下面を直交状に透過して戻る。仮に、加熱調理板が従来のように鉄板等の磁性体の場合には、磁力線は磁性体である鉄板に引きつけられ、鉄板の厚み内を平行に進行し、水平状の磁力線の周囲に、垂直面状の渦電流(鉄板の表面に対し直角方向の渦電流)が生じる。しかし、非磁性体であるカーボンプレート2の場合には、磁力線が垂直状に透過する。そして、カーボンプレート2の表面及び内部において、垂直状磁力線の周囲に、水平面状の渦電流(カーボンプレートの表面に対し平行する渦電流)が発生する。カーボンプレート2は、この渦電流により、カーボンプレート2の電気抵抗でジュール発熱する。カーボンプレート2は、迅速に加熱され、カーボンプレート2上の食品(例えば肉)が速やかに焼かれる。また、カーボンプレート2上に乗せ置かれた食品に対し、加熱されたカーボンプレート2から遠赤外線が放射し、食品の加熱が一層迅速となる。カーボンプレート2は、極めて軽量で(密度5g/cm3)、耐熱性があり(融点3500℃)、しかも高温度下での強度に優れる(500℃下での曲げ強さ450Kgf/cm2)と共に、熱膨張係数が非常に小さい(500℃下での熱膨張率0.2%)。また、カーボンプレート2は他の物質に比較して熱伝導率が非常に高く(100℃での熱伝導率は約100Kcal/h・m・℃)、更に熱拡散率が非常に大きい(100℃での熱拡散率は約0.3m2/h)。従って、電磁調理テーブルの加熱調理板として優れた特性を有している。」 第5 対比 以下、本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「加熱部(1)」は、ヘアカーラーの一般的な形状を考慮の上、引用文献2の第1図の図示内容をみると、長尺状に形成されているといえ、本願発明の「長尺の第1アーム」に相当する。 引用発明の「梳髪部材(2)」は、ヘアカーラーの一般的な形状を考慮の上、引用文献2の第1図の図示内容をみると、長尺状に形成されているといえ、さらに、ヘアカーラーの一般的な作用、機能も考慮すると、「加熱部(1)」との間で、毛髪を挟持する状態と、挟持しない状態をとるように移動するものと解されるから、その一端部が加熱部(1)に枢着され、その他端部が加熱部(1)に対して近づく方向、又は遠ざかる方向に移動自在であるといえる。すると、引用発明の「梳髪部材(2)」は、本願発明の「長尺であり、長手方向の一端部が前記第1アームの長手方向の一端部に枢着され、他端部が前記第1アームの他端部に対して近づく方向または遠ざかる方向へ移動自在である第2アーム」に相当する。 引用発明の「前記加熱部(1)が毛髪と接触して整髪をする」という事項における「加熱部(1)が毛髪と接触」する状態とは、ヘアカーラーの作用、機能も考慮すると、加熱部(1)と梳髪部材(2)とで毛髪を挟持した状態であると解されるから、引用発明の「前記加熱部(1)が毛髪と接触して整髪をする」という事項は、本願発明の「前記第1アームと前記第2アームとで毛髪を挟持して施術する」という事項に相当する。 引用発明の「遠赤外線ヘアカーラー」は、本願発明の「ヘアーアイロン」に相当する。 また、前記したように、引用発明の「前記加熱部(1)が毛髪と接触して整髪をする」という事項における「加熱部(1)が毛髪と接触」する状態とは、加熱部(1)と梳髪部材(2)とで毛髪を挟持した状態であると解されるから、引用発明の「加熱部(1)」及び「梳髪部材(2)」は、互いに対向し、整髪時に毛髪と接触する部分をそれぞれ備えているといえる。すると、引用発明の「加熱部(1)」の毛髪と接触する部分は、本願発明の「前記第1アームにおける前記第2アームに対向する部位に設けられ、施術時に毛髪に接触する第1接触部」に相当し、引用発明の「梳髪部材(2)」の毛髪と接触する部分は、本願発明の「前記第2アームにおける前記第1アームに対向する部位に設けられ、施術時に毛髪に接触する第2接触部」に相当する。 引用発明の「ニクロム線」は、本願発明の「加熱部」に相当する。また、引用発明において、ニクロム線により加熱部(1)が加熱される際、加熱部(1)の毛髪と接触する部分も加熱されるといえるから、引用発明の「前記加熱部(1)を電気的に加熱するニクロム線」は、本願発明の「前記第1接触部と前記第2接触部との少なくとも一方を加熱する加熱部」に相当する。 引用発明の「前記加熱部(1)はそれ自体が遠赤外線輻射性物質から構成されている」という事項において、加熱部(1)の毛髪と接触する部分も遠赤外線輻射性物質から構成されているといえるから、引用発明の「前記加熱部(1)はそれ自体が遠赤外線輻射性物質から構成されている」という事項と、本願発明の「前記第1接触部と前記第2接触部との少なくとも一方は、等方性高密度黒鉛から形成された部位を有する」という事項とは、「前記第1接触部と前記第2接触部との少なくとも一方は、遠赤外線輻射性物質から形成された部位を有する」点において共通する。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「長尺の第1アームと、長尺であり、長手方向の一端部が前記第1アームの長手方向の一端部に枢着され、他端部が前記第1アームの他端部に対して近づく方向または遠ざかる方向へ移動自在である第2アームと、を有し、前記第1アームと前記第2アームとで毛髪を挟持して施術するヘアーアイロンであって、 前記第1アームにおける前記第2アームに対向する部位に設けられ、施術時に毛髪に接触する第1接触部と、 前記第2アームにおける前記第1アームに対向する部位に設けられ、施術時に毛髪に接触する第2接触部と、 前記第1接触部と前記第2接触部との少なくとも一方を加熱する加熱部と、を備え、 前記第1接触部と前記第2接触部との少なくとも一方は、遠赤外線輻射性物質から形成された部位を有する、 ヘアーアイロン。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 遠赤外線輻射性物質について、本願発明は、「等方性高密度黒鉛」であるのに対し、引用発明はこのような物質であるとはいえない点。 第6 判断 (1)相違点について 以下、前記[相違点]について検討する。 引用文献8は、この出願の明細書の段落【0015】において、本願発明の「等方性高密度黒鉛」を製作するための製造方法が記載された文献として引用されたものであって、引用文献8には、その段落【0018】、【0019】、【0025】等の記載を考慮すると、等方性高密度黒鉛からなる炭素成形体41は、放射する遠赤外線の量が多く、温度が高いほど放射する遠赤外線の量が多い点が記載され、また、熱せられる固定軸部3とともに用いられて多くの遠赤外線を放射する点が記載されている。 引用文献6には、その段落【0012】、【0013】、【0021】等の記載を考慮すると、高密度、かつ炭素の結晶構造がほぼ等方で黒鉛化した炭素成形体21は、放射する遠赤外線の量が多く、温度が高いほど放射する遠赤外線の量が多い点が記載され、また、発熱部4とともに用いられて多くの遠赤外線を放射する点が記載されている。ここで、この炭素成形体21は、その製造方法及びかさ密度(段落【0012】)が、引用文献8の段落【0018】に記載された製造方法及びかさ密度と同様であるから、等方性高密度黒鉛からなるといえる。 引用文献4には、その段落【0015】、【0020】、【0023】等の記載を考慮すると、高密度、かつ炭素の結晶構造が整い、黒鉛化した炭素成型品10は、多くの遠赤外線を放射する点が記載され、また、発熱するシール材12とともに用いられて放射する遠赤外線の量が多くなる点が記載されている。ここで、この炭素成型品10は、その結晶構造が整っているものの、等方であるかは明確でないが、その製造方法及びかさ密度(段落【0015】)が、引用文献8の段落【0018】に記載された製造方法及びかさ密度と同様であるから、等方性高密度黒鉛からなるものと推認できる。 引用文献9には、その段落【0006】、【0011】、【0012】等の記載を考慮すると、等方性高密度黒鉛材からなるカーボンプレート2が加熱され遠赤外線を放射する点が記載されている。 そして、これら引用文献4、引用文献6、引用文献8及び引用文献9に記載された事項を考慮すると、遠赤外線を放射する物質として、等方性高密度黒鉛を用いることは、この出願の優先日前から周知の事項であるといえ、また、この等方性高密度黒鉛について、放射される遠赤外線の量が多く、さらに加熱手段とともに用いられることで、より多くの遠赤外線を放射するという性質も、同様に周知の事項であるといえる。 そして、引用発明の「遠赤外線輻射性物質」と、前記周知の事項の「等方性高密度黒鉛」とは、遠赤外線を放射するものであり、かつ加熱手段とともに用いられるものであって、作用、機能が共通している。また、引用発明の「遠赤外線輻射性物質」について、引用文献2には、前記第4 1.(1)の記載事項ウ.によると、各種の分野において種々の目的で利用されている遠赤外線輻射性物質を使用可能であることが示唆されている。 ここで、前記周知の事項の「等方性高密度黒鉛」は、前記したように放射される遠赤外線の量が多く、さらに加熱手段とともに用いられることで、より多くの遠赤外線を放射するという性質も知られているから、引用発明のニクロム線で加熱される「遠赤外線輻射性物質」を、前記周知の事項の「等方性高密度黒鉛」とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 (2)請求人の主張について ア.請求人は、審判請求書において、「遠赤外線放射材料として黒鉛が用いられることについて、周知文献として引用文献4、6、7が引かれており、特に引用文献6では遠赤外線放射と発熱部による加熱との関係も記載されているが、これら文献の発明はいずれも、貼着型健康増進用具、口腔内マッサージ具、調理器具用部材等に、炭素材料を遠赤外線放射が可能な材料として採用しただけにすぎない。」旨、主張しているが、前記(1)で検討したように、遠赤外線を放射する物質として、等方性高密度黒鉛を用いることは、貼着型健康増進用具、口腔内マッサージ具等といった分野を問わず、その性質とともに、この出願の優先日前から周知の事項といえ、貼着型健康増進用具についての引用文献4、口腔内マッサージ具についての引用文献6は、等方性高密度黒鉛が各種の分野で用いられていることを示すために例示されたものである。 そして、引用文献2には、前記第4 1.(1)の記載事項ウ.によると、引用発明の遠赤外線ヘアカーラーにおける「遠赤外線輻射性物質」について、各種の分野において種々の目的で利用されている遠赤外線輻射性物質を使用可能であると示唆されているのであるから、引用発明の遠赤外線ヘアカーラーにおける「遠赤外線輻射性物質」として、前記したように分野を問わずに周知の事項といえる「等方性高密度黒鉛」の採用を試みる動機付けは存在するといえる。 イ.請求人は、審判請求書において、「いずれの周知文献にも等方性高密度黒鉛を用いることの記載はない。」旨、主張しているが、原査定の拒絶の理由で引用した引用文献4に記載された炭素成型品10は、高密度、かつ炭素の結晶構造が整い、黒鉛化したものであって、その製造方法が、黒鉛の炭素粉にバインダを加えて固め、所定の塊に加圧成形し、酸素が欠乏した状態で加熱し、焼成するものであり、そのかさ密度が、1.77Mg/m3以上である(段落【0015】)ことを考慮すると、本願発明の「等方性高密度黒鉛」を製作するための製造方法が記載された文献として、この出願の明細書で引用された引用文献8の段落【0018】に記載された製造方法及びかさ密度と同様といえるから、「等方性高密度黒鉛」からなるものと推認できる。 さらに、原査定の拒絶の理由で引用した引用文献6に記載された炭素成形体21は、高密度、かつ炭素の結晶構造がほぼ等方で黒鉛化したものであって、その製造方法が、黒鉛の炭素粉にバインダを加えて固め、水圧などで等方に加圧して所定の塊に成形し、酸素が欠乏した状態で加熱し、焼成するものであり、そのかさ密度が、1.77Mg/m3以上である(段落【0012】)ことを考慮すると、本願発明の「等方性高密度黒鉛」を製作するための製造方法が記載された文献として、この出願の明細書で引用された引用文献8の段落【0018】に記載された製造方法及びかさ密度と同様といえるから、「等方性高密度黒鉛」からなるものといえる。 すると、原査定の拒絶の理由で引用した引用文献4及び引用文献6には、「等方性高密度黒鉛」を用いることが記載されているといえる。そして、これら引用文献4及び引用文献6の他、引用文献8及び引用文献9に記載された事項も考慮すると、遠赤外線を放射する物質として、「等方性高密度黒鉛」を用いることが、この出願の優先日前から周知の事項であるという認定に誤りはない。 ウ.請求人は、審判請求書において、「また原査定では、黒鉛の遠赤外線放射性のみに着目して本願発明の進歩性を否定しているが、本願発明の目的としてはヘアーアイロンの軽量化にもあり、本願発明は、その点も踏まえて発明したのである。」旨、主張しているが、ヘアーアイロンは、使用者の年齢や性別を問わず、使用者が手で持って使用するものであるから、その軽量化は、当業者が当然、考慮するものである。そして、「等方性高密度黒鉛」のかさ密度が、1.77Mg/m3程度であることも、引用文献4、引用文献6及び引用文献8に記載されているように、この出願の優先日前から周知の事項であるから、請求人が主張するヘアーアイロンの軽量化が図れるという効果は、引用発明の遠赤外線ヘアカーラーにおける「遠赤外線輻射性物質」として、前記周知の事項の「等方性高密度黒鉛」を採用することにより、当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (3)本願発明の作用効果について 本願発明の作用効果については、引用発明及び前記周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。 第7 むすび したがって、本願発明は、引用発明及び前記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含するこの出願は、この出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-015145

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