商標拒絶査定不服審判
2019-013864
- 審判番号
- 2019-013864
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2015-029864
- 請求日
- 2019年10月17日
- 審決日
- 2022年04月13日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱鉛筆株式会社
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】田島 壽
- 審判長/審判官
- 審判長 矢澤 一幸
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 阿曾 裕樹
- 分類
- T18 .13 -Z (W16) / T18 .17 -Z (W16)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、商標法第5条第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2015-29864拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、別掲1(1)のとおりの構成からなり、商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を別掲1(2)のとおりに記載して、第16類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年4月1日に色彩のみからなる商標として登録出願されたものである。
原審では、平成27年12月22日付けで拒絶理由の通知、同28年2月9日付け、同年5月26日付け、同29年4月17日付け及び同年5月8日付けで意見書の提出、同年12月27日付けで通知書の通知、同30年2月16日付け及び同年6月18日付けで上申書の提出、同年11月28日付けで手続補正書及び上申書の提出、同31年1月29日付けで上申書の提出、令和元年7月12日付けで拒絶査定されたもので、これに対して同年10月17日付けで本件拒絶査定不服審判が請求されている。
本願商標の指定商品は、原審における上記手続補正書により、第16類「鉛筆(色鉛筆を除く。)」と補正された。
2 原査定の拒絶の理由(要旨)
(1)商標法第3条第1項第3号
本願商標は、色彩のみからなる商標であり、その詳細な説明の記載によれば、「DICカラーガイドPART2(第4版)2251」のみからなるところ、商品に使用される色彩は、商品の魅力向上等のために選択されるものであり、実際、本願商標の指定商品を取り扱う業界において、本願商標の色彩と同系色の色彩が使用されている実情がある。
そうすると、本願商標をその指定商品「鉛筆(色鉛筆を除く。)」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまるから、本願商標は、単に商品の特徴を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項
提出証拠によれば、本願商標は、出願人独自の色彩であって、「uni(ユニ)」ブランドの商品は、需要者の間で相当知られていることがうかがえる。
しかしながら、当該商品には、本願商標の色彩が約92%を占めているとしても、必ず他の色彩(黒色)と組み合わされているから、色彩の組合せとして需要者に認識されているというのが自然である。また、当該色彩が一般的に「ユニ色」と称されているとはいえない。さらに、本願商標の色彩のみが使用されている商品の、個別の販売数量等は明らかではない。加えて、本願商標に関するアンケート結果によれば、本願商標から請求人との関連を想起するのは、回答者の43.3%にとどまる。
そうすると、本願商標は、その色彩のみが独立して自他商品の識別標識として認識されているとはいえず、需要者が特定の出所を認識するに至っているとはいえない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
3 当審における審尋(令和2年10月28日付け審尋)
本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか、また、同条第2項の要件を具備するかについて、当審の暫定的見解及び職権に基づく証拠調べの結果(別掲2の事例)を請求人に通知し、意見を求めた。
4 審尋に対する請求人の回答(要旨)
(1)本願商標の色彩は、赤茶色ではなく、請求人が独自に作り出した、えび茶色とワインレッドをかけあわせたものであり、実際の取引において、需要者に「ユニ色」と呼ばれてきており、誰が見ても、本願商標「ユニ色」が「赤茶色」とは全く別のものであるとわかる。
(2)本願商標の指定商品は「鉛筆(色鉛筆を除く。)」であって、「筆記用具」ではないところ、商標の自他商品識別性はあくまで使用される商品との関係で判断されるべきであるから、その指定商品以外の筆記用具の使用例を挙げて本願商標が自他商品識別力を欠くとすることは、商標法第3条第1項第3号の解釈を誤っている。
(3)別掲2の事例には、本願商標とは相違する色彩(朱色、朱塗色、ボルドーカラー、ワインレッド、ディープレッドなど)のものや、本願商標の指定商品とは異なる商品(ボールペン、万年筆等)のもの、市場で取引されていないものがある。
(4)本願商標は請求人が使用してきた商標とは同一性があるもので、その商品の販売本数、広告宣伝の方法、回数及び内容、アンケート結果等を鑑みれば、商標法第3条第2項の要件を具備する。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
ア 本願商標は、別掲1(1)及び(2)のとおり、色彩(DICカラーガイドPART2(第4版)2251)のみからなる商標であるところ、文字や図形、他の色彩と組み合わせたものではなく、商標を使用する際の形態や使用態様も特定されておらず、輪郭のない単一の色彩のみからなるものである。
そして、本願商標に係る色彩は、JIS系統色名の区分では「ごく暗い赤」に該当し、基本色彩語としては「赤」「紫」「茶」の境界領域に存在する(甲126)とされる。
イ また、商取引においては、商品やその包装の色彩は、商品のイメージや美感を高めるために多様な色彩が選択されているから、本来的には商品の出所を表示する機能を有するものではないところ、筆記用具を取り扱う業界においても、別掲2のとおり、赤系や茶系の多様な色彩(朱塗色、ボルドーカラー、バーガンディレッド、ワインレッドなど)が、商品の色彩(外装色)として採択されている実情がある。
ウ そうすると、本願商標は、その指定商品に使用されるときは、その需要者及び取引者は、単に商品やその包装の美感を向上させる目的の色彩であると認識、理解するにとどまるというべきで、単に商品の特徴(商品の色彩)を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項について
ア 商品の色彩は、古来存在し、通常は商品のイメージや美観を高めるために適宜選択されるものであり、また、商品の色彩には自然発生的な色彩や商品の機能を確保するために必要とされるものもあることからすると、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、原則として何人も自由に選択して使用できるものとすべきで、特に、単一の色彩のみからなる商標については上記趣旨が妥当するものと解される。
そして、商標法第3条第1項第3号に該当する単一の色彩のみからなる商標が同条第2項に当たるというためには、当該商標が使用をされた結果、特定の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至り、その使用により自他商品識別力又は自他役務識別力を獲得していることが必要であり、さらに、同条第1項第3号の前記趣旨に鑑みると、特定人による当該商標の独占使用を認めることが公益上の見地からみても許容される事情があることを要すると解するのが相当である(参照:令和元年(行ケ)第10146号、令和2年8月19日知財高裁判決)。
イ 請求人は証拠を提出し、本願商標が、請求人による継続した使用により、自他商品の出所識別標識としての機能を獲得している旨を主張しているため、以下検討する。
(ア)証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
a 請求人は、1887年創業の筆記具大手であって、ボールペン、サインペン、鉛筆、学用品などを取り扱っている(甲1、甲2)。
請求人の取扱商品には、「ユニ」(uni)と称する「鉛筆」(以下「請求人商品」という。)があり、ユニシリーズには、「ユニ」(1958年発売)、「ハイユニ」(1966年発売)、「ユニスター」がある(甲1)。
b 請求人商品は、商品本体の側面の色彩を、本願商標に相当する色彩を基調色としつつ、片方の端部に帯状に黒色(「ハイユニ」には帯状の金色も配している。)を配しているもので、いずれも側面には「MITSU-BISHI」、「Hi-uni」、「uni」等の文字(金色に彩色したものがある。)が表示されている(甲47、甲48)。
c 請求人商品の販売実績は、「ユニ」の出荷本数が年間約1,200万本から約1,500万本の間(2001年~2015年)で、「ハイユニ」の販売数量が年間約200万本から約270万本の間(2001年から2015年)とされる(甲93、甲94)。
d 新聞や雑誌、インターネット記事、テレビ番組等において、請求人商品を商品紹介、言及、広告又はそれと関連する記事情報(本願商標に係る色彩を表示しないものを含む。)が掲載されている(甲2、甲4~甲29、甲39~甲43、甲46、甲120、甲121、甲133)。
上記記事情報には、請求人商品やその色彩について、「日本の『あづき』と西洋の『ワインレッド』の高級感を合わせた『ユニ色』に金色のロゴがトレードマークで・・・」(甲28、9葉目)、「茶色ともエンジ色ともつかない不思議な塗り色。円錐形の先端と、ゴールドの刻印文字。」(甲42)、「・・・日本の伝統色であるえび茶色とワインレッドを掛けあわせた通称『uni色』を開発。」(甲46)、「製法は当時から変わらず、ユニ色(えび茶とワインレッドの混合色)と黒色を組み合わせたデザインも、そのまま。」(甲121)等の紹介をするものがある。
e 請求人が株式会社コイックスに依頼して2018年10月にオンラインで実施したアンケート調査(甲107。以下「本件アンケート調査」という。)は、以下のとおりである。
(a)対象者は、鉛筆を使用する子を持つ親及び鉛筆を自身が使用している者(1,200名。20代、30代、40代、50代、60代のそれぞれ男女100名及び母親200名。)である。
(b)調査方法は、本願の願書記載の商標(別掲1(1)に相当する。)を「あずき色の色彩画像」として回答者に見せて、当該画像が鉛筆のブランドに使用している色彩とした上で、思い浮かべるブランドを自由回答形式で尋ねたものとされる。
(c)調査結果は、請求人に係る商品(「uni」、「三菱鉛筆」、「三菱」等)との関連を想起、回答できた割合は、43.4%であったとされる。
(イ)a 上記認定事実によれば、請求人商品は、1958年の発売以降、60年以上の継続した販売実績があり、新聞や雑誌、インターネット記事等による商品紹介記事も継続して掲載されているから、当該商品は、我が国の需要者の間において、一定程度の認知度を獲得している商品である実情はうかがえる。
b しかしながら、請求人商品の外装は、本願商標に係る色彩を基調色としつつも、他の色彩(黒色、金色)や文字(「MITSU-BISHI」、「Hi-uni」、「uni」等)を表示してなるから、本願商標に係る単一の色彩のみで商品の出所を表示してなるものではない。
また、本願商標に係る色彩は、「ユニ色」なる色彩として紹介される場合があるとしても、請求人商品について当該色彩と他の色彩の組み合わせ(「ユニ色」と「金」や「黒」)が特徴である旨を言及する記事情報もあるなど、本願商標に係る単一の色彩が、請求人商品に係る出所識別標識として認識、記憶されているかは必ずしも明らかではない。
c さらに、本件アンケート調査によっても、比較的鉛筆に親しんでいる需要者の間においても、本願商標(別掲1(1))から、請求人との関連を想起できる者は50%にも満たず、半数以上の需要者は請求人との関連を想起できていないから、本願商標の指定商品に係る一般の消費者(鉛筆の使用頻度が低い者を含む。)に間における認知度は、それより低いものと考えられる。
d そうすると、本願商標に係る色彩は、その指定商品に係る需要者の間において、請求人に係る出所識別標識として広く認識されるに至っているとまでは認められない。
e 加えて、本願商標とも共通した印象を与え得る赤系や茶系の色彩を商品の外装色として彩色した商品(文房具)が、別掲2のとおり、多数の事業者により製造、販売されている取引の実情があることを踏まえると、本願商標に係る単一の色彩のみで、文字等に依拠せずに商品の出所を識別することまでは事実上困難というべきで、また、本願商標に係る色彩について特定人に排他独占的な使用を認めることは、商品やその包装、広告の美感を向上させるために自由に使用が認められていた色彩について、第三者による使用を不当に制限する結果にもなるから、公益上(独占適応性)の観点から支障がある。
その他に、本願商標について、請求人による独占使用を認めることが公益上の見地からみて許容されるというべき事情は見いだせない。
f 以上のとおり、本願商標は、その指定商品に係る需要者の間において、特定人(請求人)の業務に係る商品であることを表示するものとして広く認識されるに至っているものではなく、特定人(請求人)に排他独占的な使用を認めることは公益上(独占適応性)の見地からみて許容されるともいえない。
したがって、本願商標は、その指定商品との関係において、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるに至ったものと認めることはできず、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標の色彩は、請求人が独自に作り出した、えび茶色とワインレッドをかけあわせたものであり、実際の取引において、需要者に「ユニ色」と呼ばれてきたもので、特別顕著なものである旨を主張する。
しかしながら、本願商標に係る色彩は、上記(1)アのとおり、「DICカラーガイドPART2(第4版)2251」で特定される色彩の一種(「ごく暗い赤」、「赤」「紫」「茶」の境界領域の色彩)にすぎないから、当該色彩が与える外観上の印象だけをもって、自他商品の出所識別標識として機能するものとはいえない。
なお、人が視覚によって見分け、記憶できる色彩には限界があるところ、請求人提出の証拠によっては、本願商標の指定商品に係る一般消費者が、本願商標に係る色彩について、請求人固有の色彩(例えば「ユニ色」)と直ちに認識できるかは、客観的な証拠によって示されていない。
イ 請求人は、別掲2の事例には、本願商標とは相違する色彩(朱色、朱塗色、ボルドー、ワインレッド、ディープレッド等)や、本願商標の指定商品とは異なる商品(ボールペン、万年筆等)、市場で取引されていないものがあるから、これら事例を本願商標の自他商品識別力の有無の検討にあたって考慮すべきではない旨を主張する。
しかしながら、別掲2の事例は、本願商標とは必ずしも同一の色彩や商品に係るものではないとしても、人が視覚によって見分け、記憶できる色彩には限界があるところ、別掲2のとおり、その指定商品と同種商品(筆記具)を取り扱う業界において、赤系や茶系の多様な色彩(色相、明度及び彩度は幅広い)が、商品の色彩(外装色)として採択されている実情があるのであれば、その需要者をして、本願商標に係る色彩(「ごく暗い赤」、「赤」「紫」「茶」の境界領域の色彩)のみで、商品の出所を識別することは事実上困難であるというべきである。
ウ 請求人は、本願商標は使用されてきた商標とは同一性があるもので、その販売本数、広告宣伝の方法、回数及び内容、アンケート結果等を鑑みれば、商標法第3条第2項の要件を具備する旨を主張する。
しかしながら、上記(2)のとおり、請求人商品の外装は、本願商標に相当する色彩を基調色としつつも、他の色彩や文字を表示しているから、本願商標の色彩のみで商品の出所を表示してなるものではないこと、雑誌等の記事を参照しても、本願商標に係る単一の色彩が、請求人に係る出所識別標識たる特徴として認識、記憶されているかは明らかではないこと、本件アンケート調査によっても、その色彩から請求人との関連を想起できない者は半数を超えること、その色彩について請求人による排他独占的な使用を認めることは公益上の見地からみて許容されるともいえないことを踏まえると、本願商標は商標法第3条第2項の要件を具備しないというべきである。
(4)まとめ
以上を踏まえると、本願商標は、同法第3条第1項第3号に該当し、請求人による使用実績によっては、我が国の需要者の間において、何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものとはいえないから、同条第2項の要件を具備しない。
よって、結論のとおり審決する。
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