特許拒絶査定不服審判
2019-012690
クランプ
- 審判番号
- 2019-012690
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-563073
- 請求日
- 2019年09月25日
- 審決日
- 2020年06月15日
- 公報発行日
- 2020年07月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ノルマ ジャーマニー ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】上田 邦生
- 審判長/審判官
- 審判長 田村 嘉章
- 審判官 内田 博之
- 審判官 井上 信
- 分類
- P18 .121-WY (F16B) / P18 .113-WY (F16B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-563073「クランプ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月15日国際公開、WO2016/198214、平成30年 9月13日国内公表、特表2018-526585、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2016年5月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年6月10日 (DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成30年10月12日付けで拒絶の理由が通知され、平成31年3月13日に手続補正がされたが、令和1年5月20日(発送日:同年5月28日)に拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がされ、この請求と同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和1年5月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由1 本願請求項1、5-9、11-13に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2 本願請求項1-15に係る発明は、以下の引用文献1-3に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2005-533226号公報
引用文献2:特開2007-170581号公報
引用文献3:特開2002-323023号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1に「前記補強ビード(18)が、前記クランプ要素(6)と前記クランプバンド(2)の対称軸とに垂直に延びる前記クランプジョー(4,5)の中心線に沿って広がる」という事項を追加する補正は、補正前の請求項1の「クランプジョー(4,5)に設けられ」た「少なくとも1つの補強ビード(18)」に、「前記クランプ要素(6)と前記クランプバンド(2)の対称軸とに垂直に延びる前記クランプジョー(4,5)の中心線に沿って広がる」という事項を追加する補正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、明細書の段落【0006】に「補強ビードが、クランプ要素とクランプバンドの対称軸とに垂直に延びるクランプジョーの中心線に沿って広がる」という事項を追加する補正は、請求項1の補正に伴い、明細書の段落【0006】の記載を、補正後の請求項1の記載に整合させるための補正であり、不明瞭な記載の釈明を目的とするものである。
さらにまた、「補強ビードは、特に、クランプ要素およびクランプバンドの対称軸に垂直に延びるクランプジョーの中心線に沿って広がる。」という事項は、当初明細書の段落【0008】に記載されているから、請求項1の補正及び段落【0006】の補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-15に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、令和1年9月25日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりである。
[本願発明1]
「クランプ(1)であって、
クランプバンド(2)を備え、該クランプバンド(2)は2個のクランプジョー(4,5)を有するクランプヘッド(3)を備え、
前記クランプジョーのそれぞれに、前記クランプ(1)に張力をかけるクランプ要素(6)が内部に挿通される貫通開口部(17)が設けられ、
前記クランプ要素(6)の支持面が少なくとも部分的にのる接触面が、前記複数の貫通開口部(17)のそれぞれの端(19)に少なくとも1つ設けられ、
前記クランプジョー(4,5)は互いに角度をつけて配置され、少なくとも1つの補強ビード(18)が前記クランプジョー(4,5)に設けられ、前記クランプジョー(4,5)の一方が前記クランプ要素(6)の回転防止装置を備え、
前記補強ビード(18)が、前記クランプ要素(6)と前記クランプバンド(2)の対称軸とに垂直に延びる前記クランプジョー(4,5)の中心線に沿って広がることを特徴とする、クランプ。」
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
(下線は当審で付した。以下同様。)
(1)「【0001】
本発明は、内腔が形成されたベアリングタブが各端部に設けられた開リングと、締め付けボルト、ナットおよびスペーサを含む締め付け手段と、を含み、前記ボルトが、前記ベアリングタブの内腔を貫通する柱身と、前記ベアリングタブの一方に近接する位置にある頭部とを有し、前記ナットが、前記ベアリングタブの他方に近接する位置にあって前記ボルトの前記柱身と協働し、前記ボルトの前記頭部と前記ナットとによって構成された2つの要素のうちの、少なくとも第1の要素が、前記ボルトを締め付けるための回転駆動に適しており、前記スペーサが、前記第1の要素と、前記第1の要素に近接するベアリングタブとの間に配置されているクランプカラーに関する。」
(2)「【0026】
図1および2で示すように、本発明のカラーは、端部にそれぞれベアリングタブ10Aおよび10Bが設けられた、開いたリング10を含んでいる。
【0027】
それぞれのベアリングタブには、それぞれ内腔12Aおよび12Bが形成されている。
【0028】
カラーを締め付けるための締め付け手段は、その頭部14Aがベアリングタブ12Aにもたれかかっているとともに、その柱身14Bが内腔12Aおよび12Bを貫通する、締め付けボルト14を含んでいる。この頭部と反対側の端部、およびベアリングタブ10Aが設けられた側と反対側に位置するベアリングタブ10Bの端部では、柱身14Bがナット16と協働する。ナット16とベアリングタブ10Bとの間にはスペーサ18が配置されている。」
(3)「【0031】
それぞれのベアリングタブ10Aおよび10Bは、折り返しにより形成された唇部24Aまたは24Bをそれぞれ有している。
【0032】
ベアリングタブを形成するには、カラーのリングの端部となる帯状体の端部を実質的に放射状に折り曲げるとともに、それぞれのタブの端部を、もう一方のベアリングタブから遠ざかる方向へと移動させる。
【0033】
これにより、ボルトの頭部14Aを唇部24Aの内側に嵌合させることができる。例えば、この頭部を、6つの平面で形成し、唇部を当該6つの平面のそれぞれに部分的に調和する形状とすることにより、唇部をボルトの回転を防止する手段とすることができる。
【0034】
スペーサは、ベアリングタブ10Bの唇部24Bの内側で嵌合される。」
(4)「【0044】
締め付けに伴うカラーの径の大幅な収縮により、それでも、ボルトの軸方向Dに対するベアリングタブの傾きは変化する。図3に示したように、カラーが締め付け状態にあると、ベアリングタブ10Aおよび10Bは、上記方向Dの垂線Pに対して相対的にそれぞれ相対角αAおよびαBで傾いている。好ましくは、当該2つの角度は等しく、対角をなす。スペーサの終端部18Bのその長手方向に対する傾きは、実質的に相対角αBに等しい。それゆえ、締め付けの終期に、ナット16によってスペーサに加わる圧力が最大になると、ベアリングタブ10Bの外表面10’Bとスペーサとが適切に嵌合する。当該外表面は、ベアリングタブ10Aから遠い方の面である。これにより、当該圧力を、ベアリングタブ10Bの全体に渡って偏りなく分散させることができるとともに、ボルトの柱身に、カラーのリングの径D1と平行な、自然な状態を維持させることができる。」
(5)【図1】及び【図3】からは、ベアリングタブ10A及び10Bの内腔12Aおよび12Bのそれぞれの外側の端に、締め付けボルト14の頭部14Aの底面及び前記締め付け手段のスペーサ18の終端部18Bの面が接触する接触面が設けられていることが見て取れる。
したがって、上記記載事項及び図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「クランプカラーであって、
リング10を備え、該リング10は2個のベアリングタブ10Aおよび10Bを備え、
前記ベアリングタブ10A及び10Bのそれぞれに、前記クランプカラーを締め付け状態にする締め付け手段の締め付けボルト14の柱身14Bが貫通する内腔12Aおよび12Bが設けられ、
前記締め付け手段の締め付けボルト14の頭部14Aの底面及び前記締め付け手段のスペーサ18の終端部18Bの面が接触する接触面が、前記内腔12Aおよび12Bのそれぞれの外側の端に設けられ、
前記ベアリングタブ10Aおよび10Bは、カラーが締め付け状態にあると、垂線Pに対して相対的にそれぞれ相対角αAおよびαBで傾いており、唇部24Aおよび24Bが設けられ、前記唇部24Aを前記締め付けボルト14の回転を防止する手段としており、
前記唇部24Aおよび24Bは、それぞれのベアリングタブ10Aおよび10Bの端部を、もう一方のベアリングタブから遠ざかる方向へ折り返して形成されたものである、クランプカラー。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0002】
更に詳しくは、本発明は、ネジ、ナット、ボルトを含むネジ部材において、少なくともその摺動面にカーボンナノ材料を含有する低摩擦で、摺動特性に優れる被覆層を形成したことを特徴とするネジ部材に関する。」
3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0016】また、締付けトルクを許容範囲でみた場合、締付けトルクの上限値は限界締付けトルクであり、下限値はボルトの締付けの際に最低限必要な軸力を満たす時のトルクである。よってこの時、最低限必要な軸力を3kNとすると、比較例のボルトの締付けトルク範囲は11~23N・mで上下限値の差は12 N/mm2であるが、実施例のボルトにおける締付けトルク範囲は8~30N・mであって上下限値の差は22 N/mm2と約2倍に大幅に増すため、締付け精度が従来よりも劣る工具を用いても速やかにボルト締結することができる。なお、本発明の効果は、上記の使用法の他に、ボルトのねじ面に摩擦係数安定剤を塗布するなどしてねじ面摩擦係数を小さくしたボルトを使用しナット締めを行う場合、また、ナットのねじ面に摩擦係数安定剤を塗布するなどしてねじ面摩擦係数を小さくしたナットを使用し、ボルト締め、若しくは、ナット締めを行う場合にも有効に発揮させることができる。即ち、どんな場合においてもボルトのねじ面摩擦係数を低下させることで、限界軸力を上げることができる。また、ボルト締めの場合はボルト、ナット締めの場合はナットの座面摩擦係数がそのままなので限界締付けトルクを上げることができる。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「クランプカラー」は、本願発明1の「クランプ(1)」に相当し、以下同様に、
「リング10」は「クランプバンド(2)」に、
「ベアリングタブ10A」、「ベアリングタブ10B」の各々は「クランプジョー(4,5)」に、
「ベアリングタブ10A」と「ベアリングタブ10B」を合わせたものは「クランプヘッド(3)」に、
「クランプカラーを締め付け状態にする」ことは「クランプ(1)に張力をかける」ことに、
「締め付け手段」は「クランプ要素(6)」に、
「締め付け手段の締め付けボルト14の柱身14Bが貫通する」ことは「クランプ要素(6)が内部に挿通される」ことに、
「内腔12Aおよび12B」は「貫通開口部(17)」に、
「前記締め付け手段の締め付けボルト14の頭部14Aの底面及び前記締め付け手段のスペーサ18の終端部18Bの面が接触する」ことは「クランプ要素(6)の支持面が少なくとも部分的にのる」ことに、
「内腔12Aおよび12Bのそれぞれの外側の端」は「複数の貫通開口部(17)のそれぞれの端(19)」に、
「カラーが締め付け状態にあると、垂線Pに対して相対的にそれぞれ相対角αAおよびαBで傾いて」いることは、「互いに角度をつけて配置され」ることに、
「締め付けボルト14の回転を防止する手段」は「クランプ要素(6)の回転防止装置」に、それぞれ相当する。
また、本願発明1の「補強ビード(18)」と、引用発明の「唇部24Aおよび24B」とは、「平たんでない部分」という限りで共通する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、
「クランプであって、
クランプバンドを備え、該クランプバンドは2個のクランプジョーを有するクランプヘッドを備え、
前記クランプジョーのそれぞれに、前記クランプに張力をかけるクランプ要素が内部に挿通される貫通開口部が設けられ、
前記クランプ要素の支持面が少なくとも部分的にのる接触面が、前記複数の貫通開口部のそれぞれの端に少なくとも1つ設けられ、
前記クランプジョーは互いに角度をつけて配置され、少なくとも1つの平たんでない部分が前記クランプジョーに設けられ、前記クランプジョーの一方が前記クランプ要素の回転防止装置を備える、クランプ。」
の点で一致し、以下の相違点で相違する。
[相違点]
本願発明1は、平たんでない部分が「補強ビード」であり、「前記補強ビード(18)が、前記クランプ要素(6)と前記クランプバンド(2)の対称軸とに垂直に延びる前記クランプジョー(4,5)の中心線に沿って広がる」のに対し、引用発明は、平たんでない部分が「唇部24Aおよび24B」であり、「唇部24Aおよび24Bは、それぞれのベアリングタブ10Aおよび10Bの端部を、もう一方のベアリングタブから遠ざかる方向へ折り返して形成されたもの」である点。
(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
「クランプジョー(4,5)の中心線」を「クランプ要素(6)」と「クランプバンド(2)の対称軸」とに垂直に延びる線とし、「補強ビード」を、その中心線に「沿って広がる」ものとする構成は、引用文献1~3のいずれにも記載されておらず、また、そのような構成とすることが周知技術であるとも認められない。
そして、相違点に係る本願発明1の構成を含む、「クランプジョーを全体的に硬化させるための補強ビード、クランプジョーの角度をつけた配置、そして一体的に設けられたクランプ要素の回転防止装置」により、本願発明1は「クランプの変形領域が決定され」、「クランプの残りの部分の内部応力は小さいままとなる」から、「温度変化および/または高温時においても、不規則な変形につながるような」「内部応力が排除されるため、クランプがより信頼性の高いものとなる。」(本願明細書の段落【0007】参照。)という作用・効果を奏すると認められる。
そうすると、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献1~3に記載された技術的事項及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2~15について
本願発明2~15は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、本願発明1と同様の理由で、当業者であっても引用発明、引用文献1~3に記載された技術的事項及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
第7 原査定について
1 理由1(特許法第29条第1項第3号)について
審判請求時の補正により、本願発明1、5-9、11-13は、引用文献1に記載されておらず、また、引用文献1の記載から自明でもない「前記補強ビード(18)が、前記クランプ要素(6)と前記クランプバンド(2)の対称軸とに垂直に延びる前記クランプジョー(4,5)の中心線に沿って広がる」という事項を有するものとなっており、上記第6 1(1)に述べたように、引用文献1に記載された発明であるとはいえないから、原査定の理由1を維持することはできない。
2 理由2(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1-15は「前記補強ビード(18)が、前記クランプ要素(6)と前記クランプバンド(2)の対称軸とに垂直に延びる前記クランプジョー(4,5)の中心線に沿って広がる」という事項を有するものとなっており、上記第6 1(2)に述べたように、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-3に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえないから、原査定の理由2を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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