特許拒絶査定不服審判
2019-010637
発泡樹脂成形体
- 審判番号
- 2019-010637
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-133953外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年08月09日
- 審決日
- 2020年06月01日
- 公報発行日
- 2020年07月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】東北資材工業株式会社
- 【請求人代理人】西澤 利夫
- 【請求人】株式会社ジェイエスピー
- 【請求人代理人】西澤 利夫
- 分類
- P18 .121-WY (B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-133953「発泡樹脂成形体」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月19日出願公開、特開2017- 13414、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成27年 7月 2日の出願であって,平成30年11月16日付けで拒絶理由通知がされ,平成31年 1月15日付けで手続補正がされ,令和 1年 5月 8日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和 1年 8月 9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和 1年5月 8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-4に係る発明は,本願の出願前に日本国内において,頒布された以下の引用文献1-3に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開昭54-68874号公報
2.特開2006-240285号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平2-41234号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は,令和 1年 8月 9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
発泡基部の一部に,通気性または通水性を有する連通発泡部を備えた発泡樹脂成形体であって,
前記連通発泡部は,空隙率が10~30体積%の連通した空隙を有する発泡樹脂小片融着体からなり,該連通発泡部が,流動パラフィンで被覆された発泡樹脂小片を相互に,加熱融着させることにより形成されており,前記連通発泡部を構成する発泡樹脂小片の表面に流動パラフィンを含む表面溶融層を備え,前記発泡樹脂成形体の厚み方向断面において,前記発泡基部には膨出部が形成されており,前記連通発泡部には前記膨出部に対応する括れ部が形成されており,連通発泡部の外径形状が円形であり,連通発泡部の外径が36~50mmであり,発泡樹脂成形体の厚み方向断面における前記括れ部の膨出の程度を示す内径/外径比が0.5~0.9であることを特徴とする発泡樹脂成形体。
【請求項2】
前記流動パラフィンの添加量が,発泡樹脂小片に対して2質量部以上10質量部以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形体。
【請求項3】
前記発泡樹脂小片が,ポリスチレン系樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡樹脂成形体。」
第4 引用文献1,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。
「1. 成形型の型窩内へ発泡性熱可塑性樹脂粒子による原料を充填し,該原料を蒸気等の加熱媒体により加熱膨張させて発泡成形品を得る方法において,型窩のうち異種原料にて成形しようとする所定域の部分を仕切つておき,この仕切られた所定域以外の型窩内に原料を充填し,該原料を加熱膨張させ融着が完了する迄の間に上記所定域の仕切りを除去してそこにできる型窩に上記原料とは異種になる原料を充填して加熱膨張させ,全体を一体に融着成形することを特徴とする異種原料による同時成形方法。」(特許請求の範囲1.)
「次いで,エアーシリンダー(42)により成形型(4)を後退せしめ,そこにできた空洞部としての型窩(31)に上記原料とは異種の発泡性熱可塑性樹脂粒子からなる原料を充填器(6)を使用して上記充填器(5)の操作と同じ方法で充填させる。そして原料の充填完了後,上記供給孔(16)(26)からさらに蒸気を供給し,発泡性熱可塑性樹脂粒子からなる原料を加熱膨張して粒子同士を互に融着させると共に,先の原料との境界部分では異種原料同士を互に一体に融着させる。」(第3頁左上欄第9行目乃至18行目)
2.引用発明
上記記載事項を整理すると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「所定域以外の型窩内に発泡性熱可塑性樹脂粒子による原料を充填し,該原料を加熱膨張させ融着が完了する迄の間に上記所定域の仕切りを除去し,次いで,所定域の型窩に上記原料とは異種の発泡性熱可塑性樹脂粒子からなる原料を充填して該原料を加熱膨張して発泡性熱可塑性樹脂粒子同士を互に融着させると共に,先の原料との境界部分では異種原料同士を互いに一体に融着することで,全体を一体に融着成形する方法、によって得られた発泡成形品。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明における「発泡成形品」,「発泡性熱可塑性樹脂粒子」は,本願発明1における「発泡樹脂成形品」,「発泡樹脂小片」に相当し,引用発明における「発泡性熱可塑性樹脂粒子」同士が互に融着させられたものは,本願発明1における「発泡樹脂小片融着体」に相当する。
イ 引用発明の発泡成形品において,「所定域以外の型窩内」,「所定域の型窩」にはそれぞれ発泡性熱可塑性樹脂粒子からなる原料が充填されて加熱膨張させられることから,これらの「型窩」で成形される部分はいずれも発泡されているものと認める。そして,「所定域以外の型窩内」で成形される部分は本願発明1における「発泡基部」に相当し,「所定域の型窩」で成形される部分は本願発明1における「連通発泡部」と,「発泡部」という限りにおいて一致する。
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「発泡基部の一部に,発泡部を備えた発泡樹脂成型体であって,前記発泡部は発泡樹脂小片融着体からなり,発泡部が発泡樹脂小片を相互に加熱融着させることにより形成されている,発泡樹脂成形体。」
(相違点1)
「発泡部」に関して,本願発明1は「通気性または通水性を有する連通発泡部」であり,「前記連通発泡部は,空隙率が10~30体積%の連通した空隙を有する発泡樹脂小片融着体からな」ると特定するのに対し,引用発明はこのような特定がない点。
(相違点2)
発泡部を構成する発泡樹脂小片について,本願発明1は「流動パラフィンで被覆」され,「表面に流動パラフィンを含む表面溶融層が形成され」と特定されるのに対し,引用発明は「流動パラフィン」による被覆や表面溶融層については特定されない点。
(相違点3)
本願発明は「前記発泡樹脂成形体の厚み方向断面において,前記発泡基部には膨出部が形成されており,前記連通発泡部には前記膨出部に対応する括れ部が形成されており」かつ「発泡樹脂成形体との方向断面における前記括れ部の膨出の程度を示す内径/外径比が0.5~0.9である」と特定されるのに対し,引用発明はこのような特定を有しない点。
(相違点4)
発泡部の形状について,本願発明は「連通発泡部の外径形状が円形であり,連通発泡部の外径が36~50mmであり」と特定されるのに対し,引用発明はこのような特定を有しない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み,上記相違点3について先に検討する。
「該原料を加熱膨張させ融着が完了する迄の間に上記所定域の仕切りを除去して,次いで,所定域の型窩に上記原料とは異種の発泡性熱可塑性樹脂粒子からなる原料を充填して加熱膨張させ」ることにより得られる最終成形品である引用発明において,原料の種類,原料の量及び加熱膨張の条件等によって,「所定域以外の型窩内」で発泡された部分と「所定域の型窩」で発泡された部分との境界が所定域以外側から所定域側に膨出するか,所定域側から所定域以外側に膨出するか,あるいはどちら側にも膨出しないか等は,どの場合も起こりうる可能性があるといえる。そうすると,ただちに引用発明が「前記発泡樹脂成形体の厚み方向断面において,前記発泡基部には膨出部が形成されており,前記連通発泡部には前記膨出部に対応する括れ部が形成されており」となるものとは解されない。
また仮に,引用発明が「前記発泡樹脂成形体の厚み方向断面において,前記発泡基部には膨出部が形成されており,前記連通発泡部には前記膨出部に対応する括れ部が形成されており」となるものであったとしても,その括れ部の膨出の程度を示す内径/外径比の値が0.5~0.9の範囲に含まれるとはいえないし,引用文献1の記載からみて,引用発明においてこれらの範囲に定めることを当業者が容易に想到し得たものともいえない。
また,上記引用文献2―3にも,相違点3に係る本願発明1の「前記発泡樹脂成形体の厚み方向断面において,前記発泡基部には膨出部が形成されており,前記連通発泡部には前記膨出部に対応する括れ部が形成されており」かつ「発泡樹脂成形体との方向断面における前記括れ部の膨出の程度を示す内径/外径比が0.5~0.9である」という構成を有するようにすることは記載も示唆もされていないし,上記構成を有するようにすることが,本願出願前において周知技術であったともいえない。
そして,本願発明1は,上記相違点3の構成を有することで,本願明細書の【0037】に記載されているような「括れ部4の内径/外径比を上記範囲とすることにより,確実に連通発泡部3の抜け落ちを防止することができる。」なるといった,引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項からは当業者が予測することができない効果を奏するものである。
したがって,相違点1-2,4について検討するまでもなく,本願発明1は,引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2.本願発明2-3について
本願発明2-3も,本願発明1における上記相違点3と同じ構成を備えるものであるから,本願発明1について検討したことと同様の理由により,引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する
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