特許拒絶査定不服審判
2019-007444
観覧車、画像出力装置、及び画像出力方法
- 審判番号
- 2019-007444
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-043338
- 請求日
- 2019年06月05日
- 審決日
- 2020年10月20日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】トライト株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 天城国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 吉村 尚
- 審判官 河内 悠
- 審判官 尾崎 淳史
- 分類
- P18 .121-WY (A63G) / P18 .537-WY (A63G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016- 43338「観覧車、画像出力装置、及び画像出力方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月14日出願公開、特開2017-158617、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月7日の出願であって、平成30年11月28日付けで拒絶の理由が通知され、平成31年1月31日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年2月25日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和1年6月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、令和2年6月1日付けで当審により拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和2年6月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
外周に複数のゴンドラが配置され、予め設定された速度で回転する回転輪と、
前記回転輪の少なくとも一方の面に平面の広がりをもって配置された複数の発光体と、
前記回転輪の回転位置を判別する回転位置判別手段と、
静止画像或いは動画像の少なくとも一方の平面の広がりをもつ画像が記録された画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記平面の広がりをもつ画像を構成する画素の位置情報を、前記回転輪の複数の異なる回転位置毎に、前記平面の広がりをもって配置された複数の発光体それぞれに割り当てたマッピング情報を、各マッピング情報が対応する回転位置に関連付けて複数記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶する複数のマッピング情報のうち前記回転位置判別手段が判別した回転位置に関連付けられたマッピング情報と前記画像データとに基づいて前記複数の発光体を発光制御することにより、前記回転輪の前記複数の発光体が配置された面に前記平面の広がりをもつ画像を表示する発光制御手段と、
を備え、
前記記憶手段には、一定の回転角度毎の、少なくとも前記回転輪1回転分のマッピング情報が記憶されており、
前記発光制御手段は、前記回転位置判別手段が判別した前記回転位置に基づいて、前記回転輪が一定角度回転する毎に、前記発光制御に使用するマッピング情報を現在の回転位置に関連付けられたマッピング情報に切り換えることで、前記回転輪の前記複数の発光体が配置された面に現在の回転位置に対応して前記平面の広がりをもつ画像を表示する、
観覧車。
【請求項2】
前記回転位置判別手段は、0.1°単位で前記回転輪の前記回転位置を判別可能であり、
前記記憶手段には、0.1°毎の、前記回転輪1回転分のマッピング情報が記憶されており、
前記発光制御手段は、前記回転位置判別手段が判別した前記回転位置に基づいて、前記回転輪が0.1°回転する毎に、前記発光制御に使用するマッピング情報を現在の回転位置に対応するマッピング情報に切り換える、
請求項1に記載の観覧車。
【請求項3】
前記回転輪の少なくとも一方の面に配置された複数の灯具を備え、
前記発光体は前記灯具に配置されており、
前記複数の灯具は、それぞれ、前記発光体を落雷から保護する雷サージ回路を備える、
請求項1又は2に記載の観覧車。
【請求項4】
外周に複数のゴンドラが配置され、予め設定された速度で回転する回転輪と、前記回転輪の少なくとも一方の面に平面の広がりをもって配置された複数の発光体と、を備える観覧車に画像を出力する画像出力装置であって、
前記回転輪が一定角度回転する毎に回転位置を判別する回転位置判別手段と、
静止画像或いは動画像の少なくとも一方の平面の広がりをもつ画像が記録された画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記平面の広がりをもつ画像を構成する画素の位置情報を、前記回転輪の複数の異なる回転位置毎に、前記平面の広がりをもって配置された複数の発光体それぞれに割り当てたマッピング情報を、各マッピング情報が対応する回転位置に関連付けて複数記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶する複数のマッピング情報のうち前記回転位置判別手段が判別した回転位置に関連付けられたマッピング情報と前記画像データとに基づいて前記複数の発光体を発光制御することにより、前記回転輪の前記複数の発光体が配置された面に前記平面の広がりをもつ画像を表示する発光制御手段と、
を備え、
前記記憶手段には、一定の回転角度毎の、少なくとも前記回転輪1回転分のマッピング情報が記憶されており、
前記発光制御手段は、前記回転位置判別手段が判別した前記回転位置に基づいて、前記回転輪が一定角度回転する毎に、前記発光制御に使用するマッピング情報を現在の回転位置に関連付けられたマッピング情報に切り換えることで、前記回転輪の前記複数の発光体が配置された面に現在の回転位置に対応して前記平面の広がりをもつ画像を表示する、
画像出力装置。
【請求項5】
外周に複数のゴンドラが配置され、予め設定された速度で回転する回転輪と、前記回転輪の少なくとも一方の面に平面の広がりをもって配置された複数の発光体と、を備える観覧車に画像を出力する方法であって、
前記回転輪の回転位置を判別する回転位置判別ステップと、
静止画像或いは動画像の少なくとも一方の平面の広がりをもつ画像が記録された画像データを取得する画像データ取得ステップと、
前記平面の広がりをもつ画像を構成する画素の位置情報を、前記回転輪の複数の異なる回転位置毎に、前記平面の広がりをもって配置された複数の発光体それぞれに割り当てたマッピング情報を、各マッピング情報が対応する回転位置に関連付けて複数記憶する記憶手段であって、一定の回転角度毎の少なくとも前記回転輪1回転分のマッピング情報を記憶する前記記憶手段から、前記回転位置判別手段が判別した回転位置に関連付けられたマッピング情報を取得するマッピング情報取得ステップと、
前記マッピング情報取得ステップで取得したマッピング情報と前記画像データとに基づいて前記複数の発光体を発光制御することにより、前記回転輪の前記複数の発光体が配置された面に前記平面の広がりをもつ画像を表示する発光制御ステップと、
前記回転位置判別ステップで判別した前記回転位置に基づいて、前記回転輪が一定角度回転する毎に、前記発光制御に使用するマッピング情報を現在の回転位置に関連付けられたマッピング情報に切り換えるマッピング情報切換ステップと、を有し、
前記発光制御ステップでは、前記マッピング情報切換ステップにおいてマッピング情報を切り換えることで、前記回転輪の前記複数の発光体が配置された面に現在の回転位置に対応して前記平面の広がりをもつ画像を表示する、
画像出力方法。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された次の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2013-37086号公報
引用文献2:特表2011-529204号公報
引用文献3:特開2006-284754号公報
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1には、次の事項が記載されている(なお、下線は当審が付したものである。また、改行を省略した箇所がある。以下同じである)。
ア 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】前記特許文献1のものは、これを見た人は花火模様は理解できるが、天気予報の表示は、カラー投光機による光の色彩の変化で表示され、また、気温は発光管の点灯長さ寸法を増減させて表示されているため、これらの決りごとを理解していない人には、単なる光又は光の模様にしか見えず、極めて表現力の乏しいものであった。その上、当該表示は観覧車の回転輪の回転に伴い回転するものであるため、複雑な表現ができないものであった。
【0009】また、前記引用文献2のものは、カウントダウン表示と、イベント表示と花火模様の表示をするが、イベント表示と花火模様表示は、観覧車の回転に伴い回転するもので、特に、イベント表示は、傾斜していたり、逆さまに表示されると見にくくなる。また、カウントダウン表示は、略定位置に表示されると記載されているが、具体的にどのようにして定位置に表示されるのかの記載がない。
【0010】また、前記特許文献3のものは、多数の発光ダイオードからなる面発光体は、回転輪に取着される場合と、回転輪の支持脚に取着される場合があるが、回転輪の場合は、回転輪の回転と共に、面発光体が回転し、これも見る人にとっては、見にくく、複雑な表示はできないものであった。
【0011】そこで、この発明はこれらの従来技術を改善すべく、回転輪の一面を構成する枠体に沿って多数のLED素子を配設し、これらの回転輪の一面に配設した多数のLED素子の調光制御することによって静止画像又は動画像を表示し、かつ、これらの表示が回転輪が回転しても、一定の姿勢を維持することにより、複雑な表示でも見易い、理解し易い鮮明な画像表示を提供可能な観覧車の電飾装置を提供するものである。」
イ 「【0027】図1に示すように、観覧車Aは支持脚1の上部で回転輪2を支持する。具体的には回転輪2の中心に一体に設けた回転軸3を前記支持脚1で回転自在に支持している。また、前記回転輪2の外周縁には間隔をあけて、乗客の乗る多数のゴンドラ4が吊り下げられている。そして、この回転輪2は適宜の駆動源によって回転する。
【0028】また、回転輪2は前記回転軸3から、細長い略菱形形状の放射状枠体5が多数並べ設けられている。これらの各放射状枠体5に支持され、回転軸3を中心に径の異なる環状枠体6が複数段にわたって設けられている。また、これらの前記放射状枠体5及び環状枠体6は、図2及び図3に示すように、前記回転輪2の両側面に設けられ、両側面の放射状枠体5及び環状枠体6の間にスペーサ枠体7が設けられている。
【0029】そして、前記細長い菱形形状の放射状枠体5の外面に、図3に示すように複数のLED灯具8が設けられている。これらのLED灯具8は、前記回転輪2の回転軸3付近の放射状枠体5及びスペーサ枠体7、さらに補助枠体9等に固定されたLED盤10に接続されている。このLED盤10は、図1の文字表示で示すように、回転輪2の回転軸3の周りの、放射状枠体5、環状枠体6及びスペーサ枠体9に囲まれた空間に間隔をあけて複数設けられている。また、これらのLED盤10と同様にPC盤11が回転輪2に設けられている。
【0030】前記LED灯具8を図4に示す。(a)図はその平面図、(b)図は側面図、(c)図は縦断面図である。このLED灯具8は、細長いケース8a内に多数のLED素子8bが並べ設けられ、これらのLED素子8bは、赤色、緑色、青色の3種類があり、これらのLED素子8bを後述のように調光制御することによって多数種の色彩が表示されるものである。
【0031】また、このLED灯具8は、上半分に半透明なPCカバー8cが設けられ、前記多数のLED素子8bを被っている。この様にLED素子8bをPCカバー8cで被うことにより、LED素子8bの光を均一化している。また,LED灯具8端部から光が拡散して,表示する絵,文字,記号,模様等が不鮮明にならないように、LED灯具8の各端部は端カバー8eで夫々被われている。また、このLED灯具8と前記LED盤10とを接続するリード線8dがケース8aの一端から導出している。」
ウ 「【0032】次に、前記放射状枠体5の両側面に設けた多数のLED灯具8への静止画像又は動画像の伝送構成について図5及び図6に基づいて説明する。図5は画像情報送出用装置の概略構成図、図6は画像情報受信及び処理装置の概略構成図である。
【0033】図5に示すように、観覧車Aの外部に設けた、情報処理装置15には、映像コンテンツ等の映像情報と、これらの各映像情報を識別する識別情報が関連付けられて記憶されている。そして情報処理装置15は、ユーザによる映像情報の選択操作及び当該映像情報を表示させる時刻を示す時間情報の入力操作等を契機として、当該時間情報及び選択された映像情報を識別する識別情報を送出する構成となっている。
【0034】この情報処理装置15に接続された無線LAN中継盤16は、有線(LANケーブル)を介して前記時間情報及び識別情報を受信すると、当該時間情報及び識別情報を、無線LAN用アンテナ17を介して、観覧車Aの回転輪2に設けられた前記PC盤11に送出する構成となっている。
【0035】また、前記観覧車Aの回転輪2に設けられた前記PC盤11内には、図6に示すように、前記情報処理装置15に記憶されている映像情報と同じ映像情報が記憶されているスケジューラー用情報処理装置19が設けられ、時間情報及び識別情報を、無線LAN用アンテナ18を介して受信すると、時間情報に基づいて受信した識別情報に係る映像情報を呼び出して、DVI信号の形式で映像変換用情報処理装置20に出力する構成となっている。
【0036】この映像変換用情報処理装置20には、回転センサ等の回転検出器21が接続されている。この回転検出器21は、回転輪2が基準点からどのくらい回転したか、つまり回転輪2と基準点との回転の差分(角度)を検出するものである。そして回転検出器21は所定の角度、例えば、0.5度を検出する毎に映像変換用情報処理装置20に検出信号を出力する。
【0037】映像情報をDVI信号の形式で受信した映像変換用情報処理装置20は、当該DVI信号をARTNET信号に変換し、各LED盤10に分配して出力する。そして、映像変換用情報処理装置20は、前記検出信号を受信した場合には、所定の角度分映像を、前記回転輪2の回転軸3を中心に逆方向に回転させて表示するように、映像情報を書き換えた上で、DVI信号の形式からARTNET信号の形式に変換して調光制御し、各LED盤10に分配して出力する。
【0038】前記ARTNET信号の形式で受信したLED盤10は当該ARTNET信号をDMX信号に変換し、各LED灯具8に出力する。各LED灯具8は、受信したDMX信号に応じて点灯し、回転輪2の一面全体に配設されたLED灯具8で映像を表示する構成となっている。」
エ 【0035】、【0036】の記載を踏まえて図6を参照すると、図6からは、PC盤11内に、スケジューラー用情報処理装置19と、映像変換用情報処理装置20と、回転検出器21とが設けられることが看て取れる。
(2)上記(1)に記載した事項より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「外周縁に間隔をあけて乗客の乗る多数のゴンドラ4が吊り下げられており、駆動源によって回転し、中心に一体に設けた回転軸3から細長い略菱形形状の放射状枠体5が多数並べ設けられている、回転輪2と、
前記回転輪2の細長い菱形形状の放射状枠体5の外面に設けられるLED盤10に接続される複数のLED灯具8であって、
細長いケース8a内に多数のLED素子8bが並べ設けられ、これらのLED素子8bは、赤色、緑色、青色の3種類があり、これらのLED素子8bを調光制御することによって多数種の色彩が表示される複数のLED灯具8と、、
回転輪2に設けられているPC盤11であって、映像情報が記憶されており、時間情報に基づいて,受信した識別情報に係る映像情報を呼び出して、DVI信号の形式で映像変換用情報処理装置20に出力するスケジューラー用情報処理装置19と、当該DVI信号をARTNET信号に変換し、各LED盤10に分配して出力する映像変換用情報処理装置20と、映像変換用情報処理装置20に接続され、回転輪2と基準点との回転の差分(角度)を検出し、所定の角度である0.5度を検出する毎に映像変換用情報処理装置20に検出信号を出力する、回転検出器21と、が設けられるPC盤11と、
を備え、
前記ARTNET信号を受信したLED盤10は当該ARTNET信号をDMX信号に変換して各LED灯具8に出力し、各LED灯具8は、受信したDMX信号に応じて点灯することにより,回転輪2の一面全体に配設されたLED灯具8で静止画像又は動画像からなる映像を表示する、
観覧車Aであって、
映像変換用情報処理装置20は、前記検出信号を受信した場合には、所定の角度分映像を、前記回転輪2の回転軸3を中心に逆方向に回転させて表示するように、映像情報を書き換えた上で、DVI信号の形式からARTNET信号の形式に変換して調光制御し、各LED盤10に分配して出力する、
観覧車。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア 「【背景技術】【0002】デジタル表示装置は、広告または他の情報が提示される画像または映像を表示するために使用される。例えば、デジタル表示装置は、大型屋外看板、掲示、ポスター、高速道路標識、およびスタジアム表示装置として使用することができる。液晶表示装置(LCD)またはプラズマの技術を使用するデジタル表示装置は、これらの技術に関連するガラスパネルの寸法限界のために、大きさが限定される。より大型の表示装置は通常、プリント回路基板(PCB)タイルからなる格子を備え、各タイルにはパッケージされた発光ダイオード(LED)が実装されている。LEDには空間が必要であるために、これらのディスプレイ装置の解像度は比較的粗い。また、各LEDが画像中の1画素に相当するため、大型の表示装置では高価にもなりうる。さらに、高温で破損するおそれのあるLEDが発生する熱を低下させるために、複雑な冷却システムが一般に使用される。そのようなことから、デジタル表示装置技術の改善が必要とされている。」
イ 「【0007】図1は、単一のパドルを有する複合表示装置100の一実施形態を示す。図示の例では、パドル102は、一方の端部で回転軸104の周りを60Hzなどの所与の周波数で回転するように構成される。パドル102は、1回転または1パドル周期の間に領域108を掃引する。LEDなど複数の画素素子がパドル102の上に取り付けられる。本明細書では、画素素子とは、画像情報の少なくとも一部分を表示するために使用できる任意の素子を指す。本明細書では、画像または画像情報には、画像、映像、アニメーション、スライドショー、または表示が可能な他の任意の視覚情報が含まれうる。他の画素素子の例には、レーザダイオード、蛍光体、陰極線管、液晶、任意の透過性または放射性の光変調器が含まれる。本明細書の例ではLEDが説明されることがあるが、任意の適切な画素素子を使用することができる。以下でより完全に説明するように、様々な実施形態において、LEDはパドル102の上に様々な方法で配置することができる。
【0008】パドル102が領域108を掃引するとき、パドルの1つまたは複数のLEDが適切な時間に駆動され、その結果、掃引される領域108を見ているビューアが画像またはその一部分を知覚するようになる。画像は、それぞれが空間位置を有する画素からなる。ある特定のLEDが所与の任意の時にどの空間位置にあるかを決定することができる。パドル102が回転するとき、各LEDは、その位置が画像中の画素の空間位置と一致するときに適切に駆動することができる。パドル102が十分に速く回転している場合、眼は連続的な画像を知覚する。これは、輝度および色の情報に対する眼の周波数応答性が低いことによる。眼は、それが見る色をある特定の時間窓内に取り込む。いくつかの画像を速くひと続きにさっと見せられた場合、眼はそれを単一の連続的な画像に統合する。この低い眼の時間的感度は残像と呼ばれる。
【0009】そのようなことから、パドル102上の各LEDを使用して、画像中の複数の画素を表示することができる。画像中の単一の画素が、複合表示装置100の表示領域内の少なくとも1つの「時間画素」にマップされる。以下でより完全に説明するように、時間画素は、パドル102上の画素素子および時間(またはパドルの角度位置)によって定義することができる。
【0010】画像または映像を見せるための表示領域は、任意の形状にすることができる。例えば、最大表示領域は円形で、掃引領域108と同じである。掃引領域108内で、長方形の画像または映像を図示の長方形表示領域110として表示することができる。」
ウ 「【0026】図4Cは、マスクを使用する複合表示装置430の一実施形態を示す図である。この例では、マスクとしても画素素子の構造物としても機能する回転ディスクに画素素子が取り付けられる。ディスク432は、円形のパドルと見ることができる。図示の例では、ディスク432(実線)は、一方の端部で回転軸434の周りを60Hzなどの所与の周波数で回転するように構成される。LEDなど複数の画素素子がディスク432の上に取り付けられる。ディスク432は、1回転または1ディスク周期の間に領域436(太い破線)を掃引する。ディスク438(実線)は、一方の端部で回転軸440の周りを60Hzなどの所与の周波数で回転するように構成される。ディスク438は、1回転または1ディスク周期の間に領域442(太い破線)を掃引する。LEDなど複数の画素素子がパドル438の上に取り付けられる。
【0027】この例では、画素素子は、ディスク432および438の上のどこにでも取り付けることができる。いくつかの実施形態で、画素素子は、ディスク432および438の上に同じパターンで取り付けられる。別の実施形態では、別々のパターンが各ディスク上で用いられる。いくつかの実施形態で、画素素子の密度は各ディスクの中心に向かって低くなっており、したがって、時間画素の密度は、画素素子の密度がディスク全体にわたって同じ場合よりも均等になる。いくつかの実施形態では、画素素子が、時間画素に冗長性を与えるように配置される(すなわち、同じ半径に複数の画素が配置される)。1画素当たりにより多くの画素素子があるということは、回転速度を低減できることを意味する。いくつかの実施形態では、画素素子は、時間画素の解像度がより高くなるように配置される。
【0028】ディスク432は、ディスク438上の画素素子からの光をマスキングして掃引領域436の中に漏れないようにする。様々な実施形態で、ディスク432および/または438は、様々な材料から作製され、様々な色を有することができる。例えば、ディスク432および438は、LEDが上に取り付けられる黒色のプリント基板とすることができる。
【0029】画像または映像を見せるための表示領域は、任意の形状にすることができる。掃引される領域436と442が合体すると最大表示領域になる。長方形の画像または映像は、図示の長方形表示領域444内に表示することができる。
【0030】領域436と442は、重なり部分439で重なる。この例では、ディスク432は、重なり部分439または遮断領域439で掃引領域442を遮断する。
【0031】いくつかの実施形態で、画素素子は、それが遮断されているときには駆動されないように構成される。例えば、ディスク438上に取り付けられた画素素子は、それが遮断されている(例えば、遮断領域439と重なり合う)とき、駆動されないように構成される。いくつかの実施形態では、画素素子は、遮断領域の部分で駆動されないように構成される。例えば、遮断領域439の縁からある特定の距離内の領域は、駆動されないように構成される。こうすることは、ビューアが表示領域の中心の左側または右側にいて、遮断領域の縁の部分を見ることができる場合に望ましいことがある。」
エ 「【0032】図5は、画像を表示するシステムの一実施形態を示すブロック図である。図示の例では、パドルのパネル502は、1つまたは複数のパドルを備える構造物である。以下でより完全に説明するように、パドルのパネル502は、様々な大きさ、長さおよび幅のパドル、中間点または端点の周りを回転するパドル、同じ掃引面内または別々の掃引面内で回転するパドル、互いに位相が合ったまたは位相がずれた状態で回転するパドル、複数のアームを有するパドル、ならびに他の形状を有するパドルを含みうる、複数のパドルを含むことができる。パドルのパネル502は、すべてが同一のパドル、または様々な異なるパドルを含むことができる。パドルは、格子として、または他の任意の配置として配列することができる。いくつかの実施形態で、パネルは角度検出器506を含み、これは、1つまたは複数のパドルと関連付けられた角度を検出するために使用される。いくつかの実施形態では、パドルのパネル502上のパドルごとに角度検出器がある。例えば、あるパドルの近くに、その現在の角度を検出するための光検出器を装着することができる。
【0033】LED制御モジュール504は、角度検出器506からの現在の角度情報(例えば、角度(1つまたは複数)、または角度(1つまたは複数)と関連付けられた情報)を任意選択で受け取るように構成される。LED制御モジュール504は、その現在の角度を用いて、パドルのパネル502へ送出するLED制御データを決定する。LED制御データは、その時間(セクタ)にどのLEDを駆動すべきかを示す。いくつかの実施形態で、LED制御モジュール504は、画素マップ508を用いてLED制御データを決定する。いくつかの実施形態では、LED制御モジュール504は、入力としてある角度を取り込み、そのセクタでパドル上のどのLEDをある特定の画像に対して駆動すべきかを出力する。いくつかの実施形態では、角度は、セクタごとに(例えば、パドルがセクタに達する直前に)角度検出器506からLED制御モジュール504へ送出される。いくつかの実施形態では、LED制御信号は、セクタごとにLED制御モジュール504からパドルのパネル502へ送出される。
【0034】いくつかの実施形態で、画素マップ508は、以下で完全に説明するように、ルックアップテーブルを用いて実施される。別々の画像に対して、別々のルックアップテーブルが用いられる。画素マップ508については、以下でより完全に説明する。」
オ 「【0038】図6Aは、2つのパドルを有する複合表示装置600の一実施形態を示す図である。図示の例では、領域608および616のそれぞれの上に極座標系が示されており、原点が回転軸604および614それぞれに置かれている。いくつかの実施で、パドル602および612上の各LEDの位置は、極座標で記録される。原点からLEDまでの距離は半径rである。パドル角はθである。例えば、パドル602が3時の位置にある場合、パドル602上のそれぞれのLEDは0度のところにある。パドル602が12時の位置にある場合、パドル602上のそれぞれのLEDは90度のところにある。いくつかの実施形態で、各パドルの現在の角度を検出するための角度検出器が使用される。いくつかの実施形態で、ある時間画素はP、rおよびθで定義され、ここでPはパドル識別子、(r、θ)はLEDの極座標である。
【0039】直交座標系が、表示されるべき画像610の上に示されている。この例では、原点は画像610の中心に置かれているが、実施に応じてどこに置いてもよい。いくつかの実施形態では、画像610中の各画素を表示領域608および616内の1つまたは複数の時間画素にマップすることによって、画素マップ508が作成される。マッピングは、様々な実施形態で様々な方法で実施することができる。
【0040】図6Bは、画素マップを生成する処理の一実施形態を示す流れ図である。例えば、この処理を用いて画素マップ508を作成することができる。622で、時間画素マッピングに対する画像画素を得る。いくつかの実施形態では、領域608および616(それらの2つの時間画素(r、θ)の極格子を有する、例えば図2B参照)の上に画像610(画像の解像度に対応するその画素(x、y)の直交格子を有する)を重ね合わせることによって、マッピングが実行される。画像画素(x、y)ごとに、どの時間画素がその画像画素内にあるかが決定される。以下は、画素マップの一例である。
【0041】【表1】
【0042】前述のように、1つの画像画素を複数の時間画素に第2行で示されたようにマップすることができる。いくつかの実施形態では、rの代わりに、LEDに対応する指標が使用される。いくつかの実施形態で、時間画素マッピングに対する画像画素は、(例えば、通常使用される)様々な画像サイズおよび解像度に対し事前計算される。
【0043】624で、表示されるべき画像に基づいて画像画素ごとに強度fを読み込む。いくつかの実施形態で、fは、LEDがオン(例えば1)であるべきかオフ(例えば0)であるべきかを示す。例えば、白黒画像(グレースケールなし)では、黒の画素がf=1にマップし、白の画素がf = 0にマップする。いくつかの実施形態では、fは分数値を有しうる。いくつかの実施形態では、fは、デューティサイクル管理手法を用いて実施される。例えば、fが0の場合、LEDはそのセクタ時間の間駆動されない。fが1の場合には、LEDは全セクタ時間の間駆動される。fが0.5の場合には、LEDはセクタ時間の半分だけ駆動される。いくつかの実施形態では、fを用いてグレースケール画像を表示することができる。例えば、画像中に256のグレーレベルがある場合、グレーレベル128(半分の輝度)を有する画素はf=0.5になる。いくつかの実施形態では、デューティサイクル(すなわちパルス幅変調)を用いてfを実施するのではなく、LEDへの電流を調整(すなわちパルス高変調)することによってfが実施される。
【0044】例えば、fが読み込まれた後、表は以下のようになる。
【0045】【表2】
」
カ 「【0050】例えば、図5で、LED制御モジュール504は、画素マップからの時間画素情報(P、r、θおよびf)を使用する。LED制御モジュール504は、入力としてθを取り込み、LED制御データP、rおよびfを出力する。パドルのパネル502は、このLED制御データを使用して、そのセクタ時間の間LEDを駆動する。いくつかの実施形態では、パドルごとにLEDドライバがあり、このLEDドライバはLED制御データを使用して、オンにするLEDがあれば、どのLEDを各セクタ時間の間オンにするかを決定する。
【0051】任意の画像(映像を含む)データをLED制御モジュール504に入力することができる。様々な実施形態で、1つまたは複数の622、624および626を生またはリアルタイムで、すなわち画像を表示する直前に計算することができる。これは、スタジオの生映像などの画像の生放送で有効である。例えば、いくつかの実施形態では、622は事前計算され、624は生またはリアルタイムで計算される。いくつかの実施形態では、626は、画素マップを適切に修正することによって622の前に実行することができる。いくつかの実施形態では、622,624および626はすべて事前計算される。例えば、広告画像は、通常あらかじめ知られているので、事前計算することができる。」
キ 図4Cは、以下のとおりのものである。
(2)上記(1)に記載した事項より、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「円形のパドルと見ることができ、所与の周波数で回転するように構成され、複数のLEDがその上に取り付けられ、複数のLEDをその上のどこにでも取り付けることができる、ディスク432が、1回転の間に領域を掃引し、パドルが十分に速く回転している場合、眼は連続的な画像を知覚し、掃引される領域を見ているビューアが画像を知覚するようになり、画像を見せるための表示領域は掃引領域と同じであり、
表示されるべき画像の各画像画素(x、y)が、各時間画素(P、r、θ)及び各強度(f)に対応付けられた画素マップであって、Pはパドル識別子、(r、θ)はLEDの極座標であり、rの代わりにLEDに対応する指標が使用され、fは、表示されるべき画像に基づいて読み込まれた、LEDがオンであるべきかオフであるべきかを示すものである、画素マップが、事前計算され、
LED制御モジュール504は、ディスク432と関連付けられた角度を検出する角度検出器506から現在の角度情報を受け取るように構成され、その現在の角度を用いて、入力としてθを取り込み、画素マップを用いて、LED制御データP、rおよびfを出力し、パドルのパネルは、このLED制御データを使用して、LEDを駆動する、技術。」
3 引用文献3について
引用文献3には、次の記載がある。
「【0017】 次に、照明装置11の電気回路を図5に基づいて説明する。
【0018】 図5において、電源入力端子19,20には、AC100Vの商用電源が接続され、電源供給ラインには、回路保護用及び災害防止用のヒューズ21と、誘導雷回避用のサージアブソーバ22が設けられている。サージアブソーバ22の出力側には、交流を直流に変換する整流回路23が接続されている。整流回路23は、AC100VをDC約140Vに変換する。整流回路23の出力側には、突入電流を抑制しヒューズ21の溶断を防止するためのパワーサーミスタ24と、平滑用コンデンサ25が設けられている。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「多数のゴンドラ4」は、本願発明1の「複数のゴンドラ」に相当する。
イ 引用発明の「回転輪2」は、「駆動源によって回転」するものであるところ、観覧車の回転輪2が駆動源により回転する速度が予め設定された速度であることは、観覧車の技術分野の技術常識からみて明らかであるから、本願発明1の「予め設定された速度で回転する回転輪」に相当する。
ウ 引用発明の「複数のLED灯具8」は、「回転輪2の一面全体に配設された」ものであり、「細長いケース8a内に多数のLED素子8bが並び設けられ」るものであるため、回転輪2の一面に平面の広がりをもって配置された複数の発光体といえるから、本願発明1の「前記回転輪の少なくとも一方の面に平面の広がりをもって配置された複数の発光体」に相当する。
エ 引用発明の「回転輪2と基準点との回転の差分(角度)」は、本願発明1の「回転輪の回転位置」に相当する。そして、引用発明の「回転検出器21」は、「回転輪2と基準点との回転の差分(角度)」を検出するものであるから、本願発明1の「前記回転輪の回転位置を判別する回転位置判別手段」に相当する。
オ 引用発明の「静止画像又は動画像からなる映像」は、「回転輪2の一面全体に配設されたLED灯具8」により表示されるものであることから、平面の広がりをもつ画像であるといえるため、本願発明1の「静止画像或いは動画像の少なくとも一方の平面の広がりをもつ画像」に相当する。
カ 引用発明の「映像情報」は、それが変換された信号であるDMX信号に応じて各LED灯具8が点灯することで「静止画像又は動画像からなる映像」を表示するものであるから、本願発明1の「静止画像或いは動画像の少なくとも一方の平面の広がりをもつ画像が記録された画像データ」に相当する。
キ 引用発明の「映像変換用情報処理装置20」は、スケジューラー用情報処理装置19から「映像情報」が変換された信号であるDVI信号の出力を受けるものであるから、本願発明1の「静止画像或いは動画像の少なくとも一方の平面の広がりをもつ画像が記録された画像データを取得する画像データ取得手段」に相当する。
ク 引用発明の「映像変換用情報処理装置20」は、「LED灯具8」に、「映像信号」を「LED盤10」を介して出力し、「複数のLED灯具8」を受信した映像信号に応じて「点灯」させて、「回転輪2の一面全体に配設されたLED灯具8」により「静止画像又は動画像からなる映像を表示」せしめるものであるから、「映像信号」に基づいて「複数のLED灯具8」を発光制御することにより、回転輪2における全体に複数の灯具8が配置された一面に「静止画像又は動画像からなる映像」を表示しているといえるため、本願発明1の「前記画像データに基づいて前記複数の発光体を発光制御することにより、前記回転輪の前記複数の発光体が配置された面に前記平面の広がりをもつ画像を表示する発光制御手段」に相当する。
ケ 引用発明の「映像変換用情報処理装置20」は、「回転輪2と基準点との回転の差分(角度)」を検出する「回転検出器21」が「所定の角度」を検出する毎に出力する「検出信号」を受信した場合に、「(映像信号を)DVI信号の形式からARTNET信号の形式に変換して調光制御し、各LED盤10に分配して出力する」ものであるから、(回転輪2の一面全体に配設された複数のLED灯具8により表示される静止画像又は動画像からなる)映像を表示するタイミングは、回転輪2が所定の角度回転する毎であるといえるため、本願発明1の「発光制御手段」と「前記回転輪が一定角度回転する毎に」前記回転輪の前記複数の発光体が配置された面に前記平面の広がりをもつ画像を表示するものである点においても一致する。
コ 引用発明の「映像変換用情報処理装置20」は、「回転輪2と基準点との回転の差分(角度)」を検出する「回転検出器21」が「所定の角度」を検出する毎に出力する「検出信号」を受信した場合に、「所定の角度分映像を、前記回転輪2の回転軸3を中心に逆方向に回転させて表示するように、映像情報を書き換えた上で」出力するものであるから、回転輪2が所定の角度回転する毎に表示する映像は回転輪2と基準点との回転の差分(角度)に依らず常に同じ方向を向くことになるため、本願発明1の「発光制御手段」と「現在の回転位置に対応して」前記平面の広がりをもつ画像を表示するものである点においても一致する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「外周に複数のゴンドラが配置され、予め設定された速度で回転する回転輪と、
前記回転輪の少なくとも一方の面に平面の広がりをもって配置された複数の発光体と、
前記回転輪の回転位置を判別する回転位置判別手段と、
静止画像或いは動画像の少なくとも一方の平面の広がりをもつ画像が記録された画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データに基づいて前記複数の発光体を発光制御することにより、前記回転輪の前記複数の発光体が配置された面に前記平面の広がりをもつ画像を表示する発光制御手段と、
を備え、
前記発光制御手段は、前記回転輪が一定角度回転する毎に、前記回転輪の前記複数の発光体が配置された面に現在の回転位置に対応して前記平面の広がりをもつ画像を表示する、
観覧車。」
<相違点>
本願発明1は、「前記平面の広がりをもつ画像を構成する画素の位置情報を、前記回転輪の複数の異なる回転位置毎に、前記平面の広がりをもって配置された複数の発光体それぞれに割り当てたマッピング情報」を、「一定の回転角度毎の、少なくとも前記回転輪1回転分」、「各マッピング情報が対応する回転位置に関連付けて複数記憶」しておいて、「回転輪が一定角度回転する毎に、前記発光制御に使用するマッピング情報を現在の回転位置に関連付けられたマッピング情報に切り換えることで」「現在の回転位置に対応して」「平面の広がりのある画像」を表示するのに対し、引用発明は、「マッピング情報」に相当する情報を記憶しておくことなく、回転輪2が所定の角度回転する毎に、所定の角度分映像を逆方向に回転させて表示するように映像情報を書き換えて、現在の回転位置に対応した「静止画像又は動画像からなる映像」を表示する点。
(2)相違点についての判断
ア(ア)引用文献2に記載された技術的事項における「画素マップ」は、「表示されるべき画像の各画像画素(x、y)が、各時間画素(P、r、θ)及び各強度(f)に対応付けられた」ものであって、「Pはパドル識別子、(r、θ)はLEDの極座標であり、rの代わりにLEDに対応する指標が使用され、fは、表示されるべき画像に基づいて読み込まれた、LEDがオンであるべきかオフであるべきかを示すもの」であるから、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項の「前記平面の広がりをもつ画像を構成する画素の位置情報を、前記回転輪の複数の異なる回転位置毎に、前記平面の広がりをもって配置された複数の発光体それぞれに割り当てたマッピング情報」に相当する。
(イ)また、引用文献2に記載された技術的事項における「画素マップ」は「事前計算」されるものであるところ、事前計算された「画素マップ」が何らかの記憶手段に記憶されることは明らかであるため、引用文献2に記載された技術的事項は、上記相違点に係る本願発明1の「各マッピング情報が対応する回転位置に関連付けて複数記憶する記憶手段」に相当する構成を有するものと認められる。
(ウ)さらに、引用文献2に記載された技術的事項は、「(角度検出器506から受け取った)現在の角度を用いて、入力としてθを取り込み、画素マップを用いて、LED制御データP、rおよびfを出力し、パドルのパネルは、このLED制御データを使用して、LEDを駆動する」ことから、上記相違点に係る本願発明1の「一定角度回転する毎に、前記発光制御に使用するマッピング情報を現在の回転位置に関連付けられたマッピング情報に切り換えることで」「平面の広がりのある画像」を表示するとの事項に相当する構成を有するともいえる。
イ しかしながら、本願発明1における「現在の回転位置に対応して前記平面の広がりをもつ画像を表示する」こととは、観覧車の回転輪に設けられた複数の発光体により平面の広がりのある画像を表示するにあたって、平面の広がりをもつ画像が回転輪の回転に伴って回転することのないようにすることであるのに対し、引用文献2に記載された技術的事項は、複数のLEDが設けられたディスク432を高速で回転させることで残像により画像を表示するもので、画像が回転輪の回転に伴って回転することのないようにするものでないため、「現在の回転位置に対応して前記平面の広がりをもつ画像を表示する」ものとはいえない。してみれば、回転輪の「現在の回転位置に対応して平面の広がりのある画像を表示」するものであるとの前提を欠く引用文献2に記載の技術的事項を、当該前提を有する引用発明に適用することには、動機付けがないといわざるをえない。
ウ そして、上記イで説示した点を差し措いて、画像を表示する手法にかかる前提は違えども、引用発明と引用文献2に記載の技術的事項が、いずれも、見る人にとって画像を一定の向きで表示しようというものであるとして、引用発明における、画像を一定の向きで表示する手段である、「所定の角度分映像を、前記回転輪2の回転軸3を中心に逆方向に回転させて表示するように、映像情報を書き換え」ることを、引用文献2に記載の技術的事項に基づいて、各LEDのオンオフを、回転輪の現在の角度を入力として、画像画素と角度が対応付けられた事前計算された画素マップを用いて決めることに替えようとすることには、(ア)引用発明が、回転輪が回転すると、回転輪に取り付けた複数の発光体により表示される画像が回転してしまい、見る人にとって見にくいという課題を、画像を回転輪の回転方向と逆方向に回転することで既に解決したものであることや、(イ)引用文献2に記載された技術事項においては、ディスク432を眼が連続的な画像を近くする程度の所与の周波数(【0010】の記載によれば60Hz程度)で回転するものであるところ、当業者であれば、そのような高速回転のために、演算量の抑制のために事前計算される画素マップが必要とされることを理解でき、低速で回転する観覧車の回転輪において引用文献2に記載の技術的事項において必要とされるような演算量の削減が必要とは考えないことに照らせば、引用文献2に記載された技術的事項が備える、上記相違点に係る本願発明1の「一定角度回転する毎に、前記発光制御に使用するマッピング情報を現在の回転位置に関連付けられたマッピング情報に切り換えることで」「平面の広がりのある画像」を表示することに相当する構成を、引用発明に適用することには、動機付けが存在しないというべきである。
エ したがって、引用発明と、引用文献2に記載の技術事項に基づいて、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項に相当する構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことということはできない。
オ また、引用文献3には、照明装置11の電気回路の電源供給ラインに、誘導雷回避用のサージアブソーバを設けることが記載されるにすぎず、上記相違点に係る判断に影響を与えるものではない。
カ したがって、本願発明1は、引用発明、引用文献2に記載の技術的事項、引用文献3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1にさらに発明特定事項を追加した発明であるから、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項に相当する構成を有するものといえるため、本願発明1と同じ理由により、引用発明1、引用文献2に記載の技術的事項、引用文献3に基づいて、当業者が容易に発明をできたものとはいえない。
3 本願発明4、5について
本願発明4、5も、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項に相当する構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1、引用文献2に記載の技術的事項、引用文献3に基づいて、当業者が容易に発明をできたものとはいえない。
第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項1、4及び5の「前記平面の広がりをもつ画像を構成する画素の位置情報を、前記回転輪の複数の異なる回転位置毎に、前記平面の広がりをもって配置された複数の発光体それぞれに割り当てた複数のマッピング情報を、各マッピング情報が対応する回転位置に関連付けて記憶する記憶手段」との記載からは、マッピング情報が、回転位置毎に複数あるのか、あるいは、各回転位置に対応するマッピング情報が、回転位置が複数あることに対応して複数あるのかが、不明であるとの拒絶の理由を通知したが、令和2年6月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、4、5においては、「前記平面の広がりをもつ画像を構成する画素の位置情報を、前記回転輪の複数の異なる回転位置毎に、前記平面の広がりをもって配置された複数の発光体それぞれに割り当てたマッピング情報を、各マッピング情報が対応する回転位置に関連付けて複数記憶する記憶手段」と補正され、各回転位置に対応するマッピング情報が、回転位置が複数あることに対応して複数あることが明らかとなったため、この拒絶の理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし5は、当業者が引用発明、引用文献2に記載された技術的事項、引用文献3に基づいて、容易に発明をすることができたものでない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-007444