意匠拒絶査定不服審判
2019-006598
手摺用笠木材
- 審判番号
- 2019-006598
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 意願2019-002335
- 登録番号
- 意匠登録第1641247号(D1641247)
- 請求日
- 2019年05月21日
- 審決日
- 2019年07月16日
- 公報発行日
- 2021年09月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】理研軽金属工業株式会社
- 【請求人代理人】中島 健
- 【請求人代理人】瀬川 幹夫
- 審判長/審判官
- 審判長 北代 真一
- 審判官 内藤 弘樹
- 審判官 宮田 莊平
- 分類
- D18 .113-WY (L3-5)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 意匠法3条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
意願2019- 2335「手摺用笠木材」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
平成31年 2月 6日 意匠登録出願
平成31年 2月 8日 早期審査に関する事情説明書提出
平成31年 2月25日付け 拒絶理由通知書
平成31年 3月22日 意見書提出
平成31年 4月26日付け 拒絶査定
令和 1年 5月21日 拒絶査定不服審判請求書提出
令和 1年 5月21日 早期審理に関する事情説明書提出
第2 本願の意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「手摺用笠木材」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
引用意匠
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1270111号
(意匠に係る物品、手摺用上桟)の意匠(別紙第2参照)
第4 当審の判断
1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「手摺用笠木材」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「手摺用上桟」であって、表記は異なるが、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも、手摺の上端に取り付ける横架材であるから、その用途及び機能は一致するものである。
(2)両意匠の形態
両意匠の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお、両意匠の対比にあたり、図の表示は、引用意匠の向きを本願意匠に合わせ、引用意匠の「背面図」を「正面図」とし、その他の図もこれに倣うこととする。
ア 共通点
全体の基本的な構成態様として、両意匠は、平面視において上下に連続する長尺材であって、正面視において、アーチ状に湾曲した天板(以下「天板部」という。)と、その左右端部から垂下する垂直板(以下、左側の垂直板を「左側壁部」といい、右側の垂直板を「右側壁部」という。また、左右の垂直板をあわせて「側壁部」という。)を一体状に形成して横長の略倒コの字状としている。
左側壁部の下端部内側を略縦長コの字状に突出し、左側壁部の下端部やや上(突出部の真ん中付近)を一部切り欠いて、連結用の凹陥部(以下「連結用溝部」という。)とし、右側壁部は端部を内側に曲げている。
左側壁部(連結用溝部の側壁)と右側壁部の間に水平な底板(以下「底板部」という。)を下端部やや上寄りに設け、底板部の下端部右寄りに小さな突起を形成している。
側壁部の左右端部に略Cの字状のビスホール(以下「ビスホール部」という。)を1つずつ形成している。
イ 相違点
正面視において、
(ア)縦(高さ)、横の長さの比率
本願意匠は、縦横の長さの比率が、約1:1.6であるのに対し、引用意匠は、約1:1.5で、本願意匠の方がやや横長である。
(イ)連結用溝部
切り欠き及び内部の形状について、本願意匠は、切り欠きは上下とも水平に切断し、内部は略縦長逆Cの字状に形成しているのに対し、引用意匠は、切り欠きは上下とも弧状に面取りし、内部は縦長矩形状に形成している。
内側の形状について、本願意匠は、上端部右隅を斜めに切り欠いて傾斜状とし、下端やや左寄りに小さな凹陥部を形成しているのに対し、引用意匠は、上端部がビスホール部の下顎と一体となって小さな凹凸を形成し、下端部左隅を大きな弧状に形成している。
(ウ)側壁部
左側壁部について、本願意匠は、厚みが天板部及び右側壁部の厚みの約2倍であるのに対し、引用意匠は、厚みはほぼ均等である。
右側壁部について、本願意匠は、下端部を内側に略扁平倒コの字状に折り曲げているのに対し、引用意匠は、略Jの字状に湾曲している。
(エ)底板部
本願意匠は、上端部の中央及び両端近くに扁平な略隅丸等脚台形の薄い凸部を等間隔に形成し、右端部はビスホール部の下顎と一体となって先端の丸い小突起を形成しているのに対し、引用意匠は、上端部の真ん中を扁平な細長逆等脚台形に、右端部を略矩形状に、それぞれ高さを揃えて切り欠いている。
(オ)ビスホール部
本願意匠は、ビスホール部を、左側壁部上端と右側壁部下端に後端側が側壁部に埋没するよう一体状に形成しているのに対し、引用意匠は、内壁全体を凹凸状に形成したビスホール部を、側壁部の上下中央やや上寄り(左側のビスホール部については(イ)のとおり。)にそれぞれ形成している。
2 類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、共通している。
(2)形態の共通点及び相違点の評価
両意匠は、マンション等の建築物同士を繋ぐ共用通路等に用いられるエキスパンションジョイント用手摺の上端に取り付けられる笠木材であるから、需要者は、主に外観に注目する住宅等購入者だけではなく、手摺の取り付けや施工を行う取引業者や施工業者が含まれる。
したがって、需要者が最も注意を払う部位は、施工後の外観に表れる部位のみならず、施工時に業者が注意を払う連結溝部等の部位についても評価し、かつそれ以外の形態も併せて、各部を総合して意匠全体として形態を評価することとする。
ア 共通点の評価
この種物品の分野において、全体をアーチ状の天板部、側壁部、底板部からなる長尺材とし、側壁部の片側に連結用溝部を設け、側壁部の左右端部にビスホール部を1つずつ形成した態様のものは、両意匠の他にも普通に見られる態様のものであるから(参考意匠)、この態様は、両意匠のみに共通する態様とはいえず、共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
参考意匠(別紙第3参照)
本願出願前の平成21年(2009年)2月9日に特許庁が発行した意匠公報に記載された
意匠登録第1350325号の意匠
(意匠に係る物品、手摺用笠木材)
イ 相違点の評価
相違点(ア)について、本願意匠の方が、引用意匠よりやや横長であるが、この種物品の分野においては、笠木材の端面視における縦横の比率を変更することは普通に行われているものであり、両意匠の態様もその改変の範囲内のものといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
相違点(イ)について、特に、切り欠きを上下とも水平に切断し、内部を略縦長逆Cの字状に形成した本願意匠と、切り欠きは上下とも弧状に面取りし、内部を縦長矩形状に形成した引用意匠とは、基本形態が相違しており、需要者が最も注目する連結用溝部において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいものである。
相違点(ウ)について、本願意匠は、左側壁部の上下に形成されるビスホール部と連結用溝部の間の僅かな部分のみ壁の厚みを2倍程度増しているものであるが、ビスホール部と連結用溝部との相乗効果により、左側壁部全体が分厚く、左右の側壁部における厚みの違いが一層際立っており、全体がほぼ均等の厚みの引用意匠とは、全く異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。
相違点(エ)及び相違点(オ)について、底板部は笠木の補強用で、ビスホール部はエンドキャップをビス留めする際に用いられるビス固定部であって、いずれも副次的に設けられた部位であることから、それらの取付け位置や形状に多少の相違があったとしても、格別、需要者の注意をひくものとはいえないから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
以上のとおり、相違点のうち、(ア)、(エ)、(オ)は、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものの、(イ)及び(ウ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものであるから、相違点全体が相まって両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。
3 小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は共通するが、形態においては、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、美感を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。
第5 むすび
以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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