特許拒絶査定不服審判
2019-000736
土木工事用袋体、土木工事用袋体の設置方法及び土木工事用袋体の外形形状の調整方法
- 審判番号
- 2019-000736
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-074687
- 請求日
- 2019年01月21日
- 審決日
- 2019年04月01日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ナカダ産業株式会社
- 【請求人代理人】入江 一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 小野 忠悦
- 審判官 富士 春奈
- 審判官 住田 秀弘
- 分類
- P18 .121-WY (E02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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特願2015- 74687「土木工事用袋体、土木工事用袋体の設置方法及び土木工事用袋体の外形形状の調整方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月17日出願公開、特開2016-194216、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月1日の出願であって、平成30年5月10日付け(発送日:同年5月22日)で拒絶理由通知がされ、同年7月19日付けで意見書が提出され、平成30年12月5日付け(発送日:同年12月18日)で拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成31年1月21日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成30年12月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし6に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることできたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献一覧
1.特開平11-050428号公報
2.特開2000-001828号公報
3.特開2012-131532号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
請求項1に係る審判請求時の補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「調整ロープ」が、「前記中詰材が充填された前記袋体の外周寸法を調整し、調整後、結ばれるもの」であり、「調整ロープの位置」が、「前記口絞りロープより下方であって前記中詰材が充填された部位より上に位置している」ことを限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
請求項2及び3に係る審判請求時の補正は、請求項2及び3に記載された発明を特定するために必要な事項である「載置面」が「地面」であり、「前記調整ロープにより前記袋体の外周寸法を調整」することが、「前記中詰材が充填された袋体を前記地面から離す直前の状態」であることを限定するものである。そして、当該補正後の請求項2及び3に記載された発明は、補正前の請求項2及び3に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、審判請求時の補正は、新規事項を追加するものではない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、審判請求時の補正後の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」などという。)は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願発明1ないし本願発明3は、平成31年1月21日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
網袋の内部に中詰材が充填される袋体と、
この袋体の開口部を閉じる口絞りロープと、
この口絞りロープより下方の網目に挿通し、前記袋体の外周寸法を調整する調整ロープとを備え、
前記調整ロープは、前記中詰材が充填された前記袋体の外周寸法を調整し、調整後、結ばれるものであり、
前記調整ロープの位置は、前記口絞りロープより下方であって前記中詰材が充填された部位より上に位置している
ことを特徴とする土木工事用袋体。
【請求項2】
網袋の内部に中詰材が充填される袋体と、
この袋体の開口部を閉じる口絞りロープと、
この口絞りロープより下方の網目に挿通し、前記袋体の外周寸法を調整する調整ロープとを備え、
前記調整ロープにより前記袋体の外周寸法がL1の時、前記中詰材が充填された前記袋体の載置面からの高さ寸法がH1、前記調整ロープにより前記袋体の外周寸法がL2の時、前記中詰材が充填された前記袋体の載置面からの高さ寸法がH2の時、L1>L2、H1<H2の関係であり、
前記載置面は、地面であり、
前記中詰材が充填された前記袋体を吊り上げ、前記中詰材が充填された袋体を前記地面から離す直前の状態で、前記調整ロープにより前記袋体の外周寸法を調整し、調整後、設置部位へ設置する
ことを特徴とする土木工事用袋体の設置方法。
【請求項3】
網袋の内部に中詰材が充填される袋体と、
この袋体の開口部を閉じる口絞りロープと、
この口絞りロープより下方の網目に挿通し、前記袋体の外周寸法を調整する調整ロープとを備え、
前記調整ロープにより前記袋体の外周寸法がL1の時、前記中詰材が充填された前記袋体の載置面からの高さ寸法がH1、前記調整ロープにより前記袋体の外周寸法がL2の時、前記中詰材が充填された前記袋体の載置面からの高さ寸法がH2の時、L1>L2、H1<H2の関係であり、
前記載置面は、地面であり、
前記中詰材が充填された前記袋体を吊り上げ、前記中詰材が充填された袋体を前記地面から離す直前の状態で、前記調整ロープにより前記袋体の外周寸法を調整する
ことを特徴とする土木工事用袋体の外形形状の調整方法。 」
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審決で付した。以下同様。)。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、根固工,洗掘防止工,護岸緑化工等の土木工事において、栗石,砕石,コンクリート塊等を袋詰めして施工箇所へ据え付ける際に使用される合成繊維糸条のネットで形成された根固工用のネット袋に関する。」
イ「【0010】
【発明の実施の形態】図1,図2および図3は請求項1の発明の実施の一例を示しており、有底袋体1は、210デニールのナイロン長繊維50本の撚糸よりなる網目25mmの網地の二重構造ネットで筒状に縫製され、底部2の互いに対向する2縁辺3,4が底部中央5でそれぞれの端縁6,7が重なるよう折り返され、一体に縫接されて多重底部8を構成している。」
ウ「【0013】図4は、請求項1の発明と請求項2の発明とを併せ適用した実施の一例を示しており、有底袋体1の基本構造は、図1,図2に示すものと同一であり、有底袋体1の胴部14に、周方向へ無端状に連続する補強帯15,16が設けられている点で図1,図2に示すものと相違している。
【0014】前記補強帯15,16は合成繊維製のベルト状帯でも、ロープ状のものでもよく、また配設数も、1本でも複数本でもよく、その配設位置,補強帯間の間隔等も、施工現場の必要に応じて種々に選定される。
【0015】砕石等の収納された有底袋体1は、静置させられた際の形状が、補強帯15,16の直径で規制される筒状を保ち、図7に示すごとき不定形となることが無く、図6に示すごとく積み重ねられる際の、個々のネット袋Cの高さ、すなわち有底袋体1内の砕石層の高さYと、積み重ね時の形状とを概ね一定に規制することができる。
【0016】図4に示すごとく所定の高さYまで砕石等を収納した有底袋体1の開口部17寄りの胴部上方部分は、太いロープ状18に絞縮,緊縛され、吊持具13の取付部18に形成される。」
エ「【0024】請求項2の発明によると、有底袋体の胴部に周方向へ無端状に連続する補強帯が形成されているので、吊持された際の有底袋体の膨隆形状が補強帯の径で規制される筒形状となり、不定形となるのを防止できるので、根固用ネット袋として積み重ねられる際の個々のネット袋の高さ、すなわちネット袋内の砕石層の高さと積み重ね時の形状とを概ね一定に規制できる効果を奏する。」
(2)引用文献1に記載された発明の認定
上記(1)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「土木工事において使用されるネット袋において、
二重構造ネットで筒状に縫製された有底袋体1と
有底袋体1の胴部14に、周方向へ無端状に連続するロープ状の補強帯15、16とが設けられており、
砕石等の収納された有底袋体1が静置させられた際の形状が、補強帯15、16の直径で規制される筒状を保つことにより、ネット袋の高さと積み重ね時の形状とを概ね一定に規制でき、
有底袋体1の開口部17寄りの胴部上方部分は、太いロープ状18に絞縮,緊縛される、ネット袋。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は堤防等の決壊、ないし決壊発生危険時に緊急にその箇所を補強修復のための大型土嚢に関する。」
イ「【0009】吊りロープは外袋の開口部近傍の網目に挿通し、ロープの端部を結合して無端状とする。外袋の上部網目より等間でロープを所定数網目より引き出して吊りロープのループを形成する。次に重機のフック等の吊り上げ具を吊りロープのループに連結して袋体が馴染む程度に吊り上げる。この段階では袋体は計量升から離れてはならない。充填土砂の形状が安定した状態になれば下ろす。吊りロープの所定数網目より引き出した吊りループを吊りリングにひばり結び等にて結縛する。次に吊りリングに重機の吊りフック等を掛けて、袋体が計量升から空中に離れない程度に仮吊り上げし、網地の外袋の開口部が巾着状態になる状態で停止し、口絞りロープを網地の外袋の巾着部の吊りロープ付近に巻き締めて開口部を縛る。仮吊り上げは袋体の開口をとじ、口絞りロープで袋体の開口部の閉鎖を容易とするために行うのである。口絞りロープは開口部の閉鎖作業の容易さから、吊りロープを挿通した網目より下方の網目に挿通することが好ましいが、吊りロープと同じ網目に挿通してもよい。口絞りロープは外袋の網目に挿通して置くことが外袋の開口部の閉鎖作業と、閉鎖の確実性から好ましいが、網目に挿通せずに袋体とは連結しないロープでもよく、独立したロープで吊りロープを挿通した網目より下方部を縛ってもよい。残った口絞りロープは袋体開口部から出た吊りループに巻き締めて縛り結縛すると、吊りループがバラバラにならず作業性が良好となる。」
(2)引用文献2に記載された技術事項
上記(1)により、引用文献2には、以下の技術事項が記載されていると認められる。
「大型土嚢において、吊りロープや口絞りロープを外袋の網目に挿通すること。」
3 引用文献3について
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア「【0010】
本発明の一実施例の袋体の開口部の結束方法を図面を参照して説明する。
図1に示すFは,合成繊維で形成された網で、内部に中詰め材1を充填して使用する袋体である。中詰め材1を充填した袋体Fは、河川、海域、防波堤等において使用される。
【0011】
図2に示す中詰め材1は、例えば、割り石、割栗石、コンクリート塊等である。2は、袋体Fの開口部FA近傍に設けられ、開口部FAを開閉する開口部開閉ロープである。開口部開閉ロープ2は、図7に示すように、例えば、袋体Fの網の目を一つ飛ばして、開口部FAを環状に形成すると共に、開口部FAの外方へと向かう構成となっている。
なお、開口部FAは、例えば、図4に示す網の先端部F1を折り返して形成する(図2、図4~図6参照)。」
イ「【図7】
」
アの記載事項を合わせて図7をみると、以下のことが看取される。
「開口部開閉ロープ2が、袋体Fの網の目を挿通していること。」
(2)引用文献3に記載された技術事項
上記(1)により、引用文献3には、以下の技術事項が記載されていると認められる。
「河川、海域、防波堤等において使用される袋体Fの網の目に、開口部開閉ロープ2を挿通すること。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
ア 引用発明1の「土木工事において使用されるネット袋」は本願発明1の「土木工事用袋体」に相当する。
イ 引用発明1の「砕石等」は本願発明1の「中詰材」に相当する。
また、引用発明1の「砕石等」が「収納され」る「二重構造ネットで筒状に縫製された有底袋体1」は、引用発明1の「網袋の内部に中詰材が充填される袋体」に相当する。
ウ 引用発明1の「開口部17寄りの胴部上方部分は、太いロープ状18に絞縮,緊縛される」ことは、本願発明1の「袋体の開口部を閉じる」ことに相当する。そして、引用発明1において、「開口部17寄りの胴部上方部分」を「太いロープ状18に絞縮,緊縛」にするための部材があることは明らかであり、「絞縮,緊縛」するための部材として「ロープ」は、一般的なものであるから、実質的に「口絞りロープ」を備えているのは明らかである。
エ してみると、本願発明1と引用発明1では、下記の点で一致点と相違点を有する。
(一致点)
「網袋の内部に中詰材が充填される袋体と、
この袋体の開口部を閉じる口絞りロープと、
を備えた土木工事用袋体。」
(相違点)
本願発明1では、「この口絞りロープより下方の網目に挿通し、前記袋体の外周寸法を調整する調整ロープとを備え、前記調整ロープは、前記中詰材が充填された前記袋体の外周寸法を調整し、調整後、結ばれるものであり、前記調整ロープの位置は、前記口絞りロープより下方であって前記中詰材が充填された部位より上に位置している」構成を有しているのに対し、引用発明1は、「有底袋体1の胴部14に、周方向へ無端状に連続するロープ状の補強帯15、16とが設けられて」いるが、そのような構成が特定されていない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用発明1において、「ロープ状の補強体15、16」が「有底袋体1の胴部14」に設けられ、「有底袋体1の開口部17寄りの胴部上方」において、絞縮、緊縛されるとの特定事項から参酌すれば、引用発明1の「ロープ状の補強体15、16」が、口絞りロープより下方に設けられているのは明らかである。
よって、引用発明1の「ロープ状の補強体15、16」と本願発明1の「調整ロープ」とは、「口絞りロープより下方」に設けられている「ロープ」という点では共通する。
しかしながら、引用発明1の、「ロープ状の補強体15、16」が「周方向へ無端状に連続」しており、「有底袋体1が静置させられた際の形状が、補強帯15、16の直径で規制される筒状を保つ」、「ネット袋の高さと積み重ね時の形状とを概ね一定に規制でき」るとの特定事項を参酌すると、「ロープ状の補強体15、16」は、所望のネット袋の直径に合わせて長さが決定されており、かつ、補強に適するような特性を有するロープが使用されていると解するのが自然であって、本願発明1のように、「袋体の外周寸法を調整する」ことや、「前記中詰材が充填された前記袋体の外周寸法を調整し、調整後、結ばれる」ことが想定されているとは認められない。加えて、土木工事用袋体において、袋体の外周寸法を調整することは、引用文献2及び3には記載されておらず、また、当業者にとって自明な事項でもないから、引用発明1に「袋体の外周寸法を調整する」との課題が内在しているともいえない。
よって、引用発明1の、「ロープ状の補強体15、16」に、「ロープを袋体の網目に挿通する」との周知技術(引用文献2及び引用文献3に記載の技術事項)を適用したとしても、本願発明1のような、「袋体の外周寸法を調整する」のに適した、「調整後、結ばれ」る程度の長さ、形状、材質等の特性を有する「調整ロープ」になるとはいえない。
したがって、引用発明1において、本願発明1の相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができるものではない。
よって、本願発明1は、引用文献1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本願発明2及び本願発明3について
本願発明2及び本願発明3は、上記「1 本願発明1について」において検討した相違点の構成である「調整ロープ」が「前記袋体の外周寸法を調整する」ものであるとの構成を含むものである。
そして、上記「1 本願発明1について」に説示したとおり、引用発明1の「ロープ状の補強体15、16」に、「ロープを袋体の網目に挿通する」との周知技術(引用文献2及び引用文献3に記載の技術事項)を適用したとしても、本願発明2及び本願発明3のような、「袋体の外周寸法を調整する」のに適した特性を有する「調整ロープ」になるとはいえない。
よって、本願発明2及び本願発明3は、引用文献1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし3は、上記相違点の「調整ロープ」に係る構成を有するものとなっており、拒絶査定で引用した引用文献1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由(進歩性)を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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