商標拒絶査定不服審判
2019-000060
ミライ
- 審判番号
- 2019-000060
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2015-092058
- 請求日
- 2019年01月04日
- 審決日
- 2022年03月02日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】上田 育弘
- 審判長/審判官
- 審判長 榎本 政実
- 審判官 豊田 純一
- 審判官 小俣 克巳
- 分類
- T18 .18 -Z (W12) / T18 .271-Z (W12) / T18 .22 -Z (W12)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項商標法4条1項7号商標法4条1項15号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号、商標法第10条第1項、商標法第3条第1項、商標法第4条第1項第7号、特許法第150条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2015- 92058拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 本願商標及び本願の手続きの経緯
1 本願商標
本願商標は、「MIRAI」の文字を標準文字で表してなり、第12類に属する願書に記載されたとおりの商品を指定商品として、平成27年9月24日に登録出願、その後、本願の指定商品は、原審における同29年3月11日受付の手続補正書により、「航空機,航空機の部品及び附属品,鉄道車両,鉄道車両の部品及び附属品」に補正されたものである。
なお、本願は、平成27年7月18日に登録出願された商願2015-68401(以下「原商標登録出願」という。)に係る商標法第10条第1項の規定による分割出願として登録出願されたが、商標法施行規則第22条第2項が準用する特許法施行規則第30条の規定による必要な補正がなされておらず、本願は、商標法第10条第1項の規定による登録出願の要件を満たさないため、本願は、同条第2項が規定する出願日遡及の効果は生じない。
2 本願の手続きの経緯
本願は、平成29年2月6日付けで拒絶理由の通知がされ、同年3月11日受付の意見書が提出されたが、同30年7月31日付けで拒絶査定(同年10月4日発送)がされたものである。
これに対して、平成31年1月4日に拒絶査定を不服とする審判の請求がなされている。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、要旨以下のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。
1 商標法第3条第1項柱書について
本願商標は、出願人が現に自己の業務に係る商品に使用をしている商標にも、将来自己の業務に係る商品に使用する意思のある商標にも当たらず、本件商標登録出願は「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に関して行われたものとは認められない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。
2 商標法第4条第1項第7号について
本願商標の登録出願の経緯には、出願人の行為が社会的相当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものであることから、公序良俗に反するものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号について
本願商標は、「MIRAI」の文字を標準文字で表してなるところ、本願商標の登録出願前から「トヨタ自動車株式会社」(以下「トヨタ社」という。)がその者の取扱いに係る商品「自動車」に使用して、現に有効に存続している著名な登録商標(商標登録第5753538号)(別掲1)(以下「引用商標」という。)が存在し、かつ、別掲2のとおりの新聞記事情報も存在することから、本願商標をその指定商品に使用するときには、上記法人又はその者と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について誤認を生じさせるおそれがあるものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて、職権による証拠調べをした結果、別掲3の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、その結果を請求人(出願人)(以下「請求人」という。)に通知し(令和3年2月4日付け証拠調べ通知書)、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。
第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見
請求人は、上記第3の証拠調べ通知に対して、令和3年4月28日受付の上申書、同年5月28日受付の上申書及び同年6月3日受付の上申書において、要旨以下のとおり意見を述べた。
1 商標法第4条第1項第15号の適用に関し、原査定において、「この商標登録出願は、商願2015-068401(原商標登録出願)の分割として出願されましたが、原商標登録出願の指定商品及び指定役務についての補正が本願と同時になされていませんので、本願は商標法第10条第1項の規定による商標登録出願とは認められません。したがって、本願は出願日が遡及しない商標登録出願として処理しました。」旨記載されているが、明らかに出願分割に関する商標法第10条第1項の規定に反するものである。
なぜなら、出願分割に関する商標法第10条第1項では、原商標登録出願の指定商品及び指定役務についての補正が本願と同時になされていることが出願分割の要件としては規定されておらず、原商標登録出願の指定商品及び指定役務についての補正が本願と同時になされていることを出願分割の要件とすべきではないからである。
引用商標は、平成26年11月18日に出願されているのに対し、本願商標は最初の原商標登録出願の出願日である同年9月8日に登録出願されていることになり、本願のほうが先願であり、商標法第4条第1項第15号には該当し得ないものである。
この点は、周知や著名の認定判断の際も同様である。
2 商標法施行規則第22条第2項は、特許法施行規則第30条の規定を商標登録出願に準用し、分割出願をしようとする場合においては、もとの商標登録出願の願書を補正する必要があるときは、その補正は、新たな商標登録出願と同時にしなければならない旨規定されている。
したがって、商標法施行規則第22条第2項は、同法第10条第1項に規定する要件に加え、「その補正は、新たな商標登録出願と同時にしなければならない」という新たな要件を規定していることになる。
この新たな要件は、商標法第10条第1項が想定していないもので、さらに省令への委任を許容する規定は、同法第10条第1項には存在していない。
したがって、この省令は、法律の範囲外の規定となり、憲法・法律・政省令という国法秩序に反するものとなる。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項柱書について
商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標、あるいは、将来、自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(平成24年5月31日 知財高裁 平成24(行ケ)第10019号)。
そうすると、請求人が、本件商標を自己の業務に係る指定商品について現に使用をしていなくとも、将来においてその使用をする意思があれば、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するといえる。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
本願商標は、上記第1のとおり、「MIRAI」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
また、本願商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると判断するべき事情はない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 本願商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)商標法第4条第1項第15号について
商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに、当該商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品又は役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標が含まれる。そして、上記の「混同を生じるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁)。
(2)引用商標の周知著名性について
別掲2及び別掲3で提示した新聞記事情報によれば、引用商標は、トヨタ社の取り扱いに係る燃料電池車(以下「トヨタ燃料電池車」という。)の名称を表示する商標として、平成26年9月7日以前より、全国紙のみならず地方紙にも頻繁に取り上げられていることがわかる。
また、引用商標を使用したトヨタ燃料電池車の展示会等も開催されていることが確認できる。
さらに、水しか出さない究極のエコカーとして地方自治体の公用車として採用されていることも確認できる。
加えて、引用商標を使用したトヨタ燃料電池車に関する技術は、燃料電池車のみではなく、船舶や列車等に応用する計画があることもうかがえる。
そうすると、引用商標は、トヨタ燃料電池車を表示するものとして、遅くとも、平成26年9月7日以前より、現在に至り、自動車の取引者、需要者はもとより、一般の需要者の間においても広く知られていると認められる。
(3)本願商標と引用商標との類似性の程度について
ア 本願商標について
本願商標は、上記第1のとおり、「MIRAI」の文字を標準文字で表してなるものであり、当該文字に相応して「ミライ」の称呼が生じるものである。
また、上記(2)のとおり、「MIRAI」の文字は、トヨタ社の取り扱いに係る燃料電池車を表示するものとして、需要者の間でも広く認識されていると認められることから、「トヨタ社の取り扱う燃料電池車のブランド名」の観念を生じるものである。
よって、本願商標は、「ミライ」の称呼を生じるものであり、「トヨタ燃料電池車のブランド名」の観念が生じるものである。
イ 引用商標について
引用商標は、別掲1のとおりの構成よりなるところ、引用商標は、デザイン化されてはいるものの「MIRAI」の文字をモチーフとして構成されていることは十分に認識できるものであるから、引用商標は、「ミライ」の称呼を生じるものである。
また、引用商標は、トヨタ燃料電池車に使用される商標として、需要者の間においても広く知られていると認められる。
よって、引用商標は、「ミライ」の称呼を生じるものであり、「トヨタ燃料電池車のブランド名」の観念が生じるものである。
ウ 本願商標と引用商標との類似性の程度について
(ア)外観について
本願商標は、上記第1のとおり、「MIRAI」の文字を標準文字で表してなるものであり、引用商標は、別掲1のとおりの構成よりなるものであるから、これらの外観は相違するものの、引用商標は、「MIRAI」の文字をモチーフにして、デザイン化されていることが看取できることからすると、外観上、相紛れるおそれのある商標と判断できるものである。
(イ)称呼について
本件商標と引用商標とは、互いに「ミライ」の称呼を共通にするものである。
(ウ)観念について
本願商標と引用商標とは、「トヨタ社の取り扱う燃料電池車のブランド名」の観念を共通にするものである。
(エ)小括
以上からすると、本願商標と引用商標とは、外観は、相紛れるおそれがあり、かつ、「ミライ」の称呼及び「トヨタ社の取り扱う燃料電池車のブランド名」の観念を共通にすることから、本願商標と引用商標とは、互いに類似する商標と判断するのが相当であり、類似性の程度は高いものである。
(4)本願商標の指定商品と引用商標が使用されるトヨタ燃料電池車の商品の関連性並びに取引者及び需要者の共通性について
「トヨタ燃料電池車」に関連する技術が、船舶用燃料電池等に応用されていることがうかがえることから、本願商標の指定商品と引用商標が使用される「トヨタ燃料電池車」とは、密接な関連性を有しているといえる。
また、本願商標の指定商品「航空機,航空機の部品及び附属品,鉄道車両,鉄道車両の部品及び附属品」と引用商標が使用される「トヨタ燃料電池車」は、いずれも輸送を目的とする商品であり、これらは商品の用途や取引者及び需要者を共通にするものである。
(5)出所混同のおそれについて
上記(2)のとおり、引用商標は、トヨタ燃料電池車を表示するものとして、遅くとも、平成26年9月7日以前より、現在に至り、自動車の取引者、需要者はもとより、一般の需要者の間においても広く知られていると認められるものであり、上記(3)のとおり、本願商標と引用商標とは、互いに類似する商標と判断するのが相当であり、類似性の程度は高いものであり、上記(4)のとおり、本願商標の指定商品と引用商標が使用される「トヨタ燃料電池車」とは、密接な関連性を有していること及び商品の用途や取引者及び需要者を共通にするものであるといえることからすると、本願商標は、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起すると判断するのが相当である。
してみれば、本願商標は、請求人がこれをその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、引用商標を連想又は想起させ、その商品がトヨタ自動車株式会社あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(6)まとめ
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、「出願分割に関する商標法第10条第1項では、原商標登録出願の指定商品及び指定役務についての補正が本願と同時になされていることが出願分割の要件としては規定されておらず、原商標登録出願の指定商品及び指定役務についての補正が本願と同時になされていることを出願分割の要件とすべきではない。」旨を主張する。
しかしながら、請求人が原商標登録出願とする商願2014-75417号は、当該案件が特許庁に係属している間に、その指定商品及び指定役務について何らの補正がなされていないことからすると、上記第1に記載のとおり、本願は、商標法第10条第1項の規定による登録出願の要件を満たさないため、本願は、同条第2項が規定する出願日遡及の効果は生じないと判断すべきものである。
(2)請求人は、「引用商標は、平成26年11月18日に出願されているのに対し、本願商標は最初の原出願日である同年9月8日に出願されていることになり、本願のほうが先願であり、商標法第4条第1項第15号には該当しえないものである。」旨を主張する。
しかしながら、上記第1のとおり、本願の登録出願日は、平成27年9月24日であって、別掲1(3)のとおり、引用商標の登録出願日は平成26年11月18日であるから、本願の登録出願より後で登録出願されたものである。
そして、本願の登録出願日において、引用商標を使用した「トヨタ燃料電池車」について、新聞記事等により、一般の需要者等に広く告知されていたことが確認できる。
また、上記3(5)のとおり、本願商標は、請求人がこれをその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、引用商標を連想又は想起させ、その商品がトヨタ自動車株式会社あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきであり、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当すると判断するのが相当である。
(3)請求人は、「商標法第10条第1項が想定していないもので、さらに省令への委任を許容する規定は、同法第10条第1項には存在していない。したがって、この省令は、法律の範囲外の規定となり、憲法・法律・政省令という国法秩序に反するものとなる。」旨を主張する。
しかしながら、上記の請求人の主張は、分割出願に関する規定に関するものであるから、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当することについての反論とは認められない。
(4)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
5 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえず、同法第4条第1項第7号に該当しないとしても、同項第15号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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