商標取消審判
2018-670030
プロマックス
- 審判番号
- 2018-670030
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- —
- 請求日
- 2018年08月10日
- 審決日
- 2021年06月23日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】利奇機械工業股▲ふん▼有限公司
- 【請求人代理人】特許業務法人アドバンス
- 【被請求人】Dual Clutch IP LTD
- 【被請求人代理人】山口 朔生
- 【被請求人代理人】大島 信之
- 【被請求人代理人】山口 真二郎
- 審判長/審判官
- 審判長 榎本 政実
- 審判官 豊田 純一
- 審判官 小俣 克巳
- 分類
- T132 .1 -Z (W12)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第8号、商標法第2条第3項第2号、商標法第50条第1項、商標法第2条第3項、商標法第50条、商標法第50条第2項、商標法第2条、商標法第3条第2項第2号、商標法第2条第1項、商標法第3条第2項第8号、商標法第2条第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の国際登録第1173729号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
国際登録第1173729号商標の指定商品中、第12類「Land vehicles; chassis for land vehicles; parts and fittings for land vehicles; motors and drives for land vehicles; suspensions (for land vehicles); power transmission(for land vehicles); suspensions springs; suspensions arms; clutch mechanisms for land vehicles, clutch disks, clutch cylinders, clutch cables, clutch levers; gear knobs; vehicles seats; head rests and back rests; anti dazzle and anti glare devices for vehicles; mud guards and flaps; brake pads, linings, segments and shoes; shaped covers for steering wheels; non skid devices; wheel hubs, caps, rims, spokes and tyres; wheel trims, trim panels; spoilers; vehicle pedals; spare wheels; pumps for inflating vehicle tyres; luggage carriers and nets; cycle carriers, sail board carriers, ski carriers and snow chains.」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
第1 本件商標
本件国際登録第1173729号商標(以下「本件商標」という。)は、「PROMAX」の欧文字を横書きしてなり、2013年(平成25年)1月10日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年7月9日に国際商標登録出願、第12類「Land vehicles; chassis for land vehicles; parts and fittings for land vehicles; motors and drives for land vehicles; suspensions (for land vehicles); power transmission (for land vehicles); suspensions springs; suspensions arms; clutch mechanisms for land vehicles, clutch disks, clutch cylinders, clutch cables, clutch levers; gear knobs; vehicles seats; head rests and back rests; anti dazzle and anti glare devices for vehicles; mud guards and flaps; brake pads, linings, segments and shoes; hoods for vehicle engines; shaped covers for steering wheels; non skid devices; wheel hubs, caps, rims, spokes and tyres; wheel trims, trim panels; spoilers; vehicle pedals; spare wheels; shaped or fitted mats and floor coverings for motor land vehicles; pumps for inflating vehicle tyres; windscreen wipers; vehicle window blinds, roof racks, luggage carriers and nets; cycle carriers, sail board carriers, ski carriers and snow chains.」を含む第12類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおり商品を指定商品として、2015年(平成27年)2月6日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、2018年(平成30年)8月24日にされたものであり、この登録前3年以内の期間を、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書、2018年(平成30年)11月21日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する2019年(平成31年)1月29日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)にて、その理由を要旨以下のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は、第12類「Land vehicles; chassis for land vehicles; parts and fittings for land vehicles; motors and drives for land vehicles; suspensions (for land vehicles); power transmission (for land vehicles); suspensions springs; suspensions arms; clutch mechanisms for land vehicles, clutch disks, clutch cylinders, clutch cables, clutch levers; gear knobs; vehicles seats; head rests and back rests; anti dazzle and anti glare devices for vehicles; mud guards and flaps; brake pads, linings, segments and shoes; hoods for vehicle engines; shaped covers for steering wheels; non skid devices; wheel hubs, caps, rims, spokes and tyres; wheel trims, trim panels; spoilers; vehicle pedals; spare wheels; shaped or fitted mats and floor coverings for motor land vehicles; pumps for inflating vehicle tyres; windscreen wipers; vehicle window blinds, roof racks, luggage carriers and nets; cycle carriers, sail board carriers, ski carriers and snow chains.」(以下「本件審判請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者(以下「商標権者又は使用権者」という。)のいずれによっても使用された事実がないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁の要旨
被請求人は、答弁書において、「本件商標と社会通念上同一の商標が付された本件商標の指定商品に含まれる『clutch mechanisms for land vehicles』(以下『使用商品』という。)が我が国に輸入されており、使用商品に関する広告が電磁的方法により提供されているから本件商標が使用されていることは明らかである」旨主張するが、被請求人の主張には疑義がある。
(1)日本への輸出行為について(商標法第2条第3項第2号)
被請求人は、2016年(平成28年)3月に、本件商標を付した使用商品が、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)から本件商標権の使用を許諾された「Dodson Motor sport Limited」(以下「DML社」という。)から、「JustJap Auto Imports」(以下「JAI社」という。)を介し、日本国内に居所を有する「Autech Tsukada」(以下「オーテック社」という。)へと販売されたため、商品等に標章を付したものが我が国に輸入されており、本件商標が使用されている(商標法第2条第3条第2号)旨を主張し、その証拠として乙第5号証ないし乙第10号証を提出している。
しかし、以下のとおり、被請求人が本件商標の使用であると主張する行為は商標法上の使用行為に該当しない。
ア 使用商品の輸入について
被請求人は、JAI社がオーテック社に対し、使用商品を1個販売し、2016年(平成28年)3月17日付けで納品書兼請求書を発行した旨主張し、DML社からJAI社に対する2016年(平成28年)3月15日付の受注書(乙8)及びJAI社からオーテック社に対する2016年(平成28年)3月17日付の納品書兼請求書(乙10)を提出している。
また、被請求人は、JAI社からオーテック社に発送された使用商品は、JAI社を経由してオーテック社へと流通し、日本に輸入されたものであることから、当該輸入行為は実質的には通常使用権者であるDML社による本件商標の使用である旨を主張する。
しかし、乙第8号証は、DML社によって作成され、乙第10号証は、JAI社によって作成されたものであり、審判請求後いつでも作成することができたものであるため、これらの証拠は客観性を欠く。
そして、使用商品はオーストラリアに所在するDML社が販売し、JAI社からオーテック社に向けて発送されたものであるとすれば、JAI社による輸出申告書、オーテック社への送り状の写し、オーテック社による受領書等の写し等が存在すると思われる。
しかし、上記のような証拠が提出されていないことから、実際に使用商品が我が国に輸入されたかが不明である。
仮に、乙第8号証及び乙第10号証に記載の事項が事実であっても、オーテック社はオーストラリアに所在するJAI社から使用商品を購入し、オーストラリアの口座に代金を送金していることから、使用商品の取引は日本国外で発生している。
また、本件商標を付した使用商品は、設定登録日(2015年(平成27年)2月6日)から審判請求書の差出日(2018年(平成30年)8月10日)までの間にわずか1回、しかも1個しか輸入されていない。
さらに、オーテック社が使用商品を1個購入し、我が国に輸入した後、オーテック社が使用商品を第三者に譲渡等をした事実は見当たらない。
このような事実をかんがみると、オーテック社は使用商品を日本国内で流通させるために購入したとは考え難い。
オーテック社は、使用商品を自ら使用するために購入した需要者にすぎず、商標法第2条第1項で規定されている、「業として」使用する商標とはいえない。
オーテック社の輸入行為は、日本国内における通常使用権者等の実質的な使用行為には該当しない。
イ 取引の際に出所表示機能が発揮していない可能性について
被請求人は、オーテック社はDML社のウェブサイト等で使用商品を認識し、使用商品の購入意思を表示していることから、当該取引行為は本件商標の出所表示機能が正しく発揮されたことに起因する旨を主張するが、被請求人は、オーテック社が本件商標を認識した上で使用商品を購入した証拠を何ら提出していない。
そこで、被請求人が提出した証拠等に基づき、使用商品の取引の際、本件商標が出所表示機能を発揮するかについて検討する。
被請求人は、オーテック社が購入した使用商品の商品名「Clutch-Promax 11 Plate-R35 GTR CPMA11」のうち、「Clutch」は商品の種類を表し、「Promax」は本件商標を表し、「11 Plate」は構成プレートの枚数を表し、「R35 GTR」は車種を表し、「CPMA11」は品番表示を表す旨及び「自他商品識別機能を有する部分はPromaxである」旨を主張する。
しかし、自動車部品は使用に係る自動車との適合性が重要であり、自動車部品を購入する際、需要者は自動車の車種を考慮して商品を選択することが通常である。
ここで、商品名の一部「R35GTR」のうち、「GTR」は日産株式会社(以下「日産社」という。)が世界的に販売している乗用車のブランド名であり、「R35」は現行モデルのR35型に由来し、登録商標でもある。
よって、商品名のうち自他商品の識別標識機能を有する部分は、「Promax」及び「GTR」である。
2019年(平成31年)1月23日時点におけるDML社のウェブサイトのメニューのうち、「Product Store」の表示の下に、「GTR」と記載されており、さらにその下には「Clutch」と記載されている。
しかし、メニュー欄には「PROMAX」の文字は記載されていない。
オーテック社がR35型GTR用のクラッチプレートを購入した際、本件商標ではなく、「dodson motors」の表示、あるいは「GTR」の表示を目印とし、使用商品の選択にいたった可能性が高い。
また、被請求人は、DML社のパンフレット(乙5、乙6)及び使用商品を表示したウェブサイト(乙7)を提出している。本件商標は乙第5号証の4頁目ないし7頁目、乙第7号証の1頁目に表示されている。いずれの証拠においても、「GTR」の文字又は「GTR」が付された車体が大きく表示されている。
一方、「PROMAX」の文字は「GTR」に比較して非常に小さく表示されている。これは、使用商品の需要者が、本件商標ではなく自動車の車種名を目印にして、商品選択に至るという実態に合わせたためである。
したがって、当該取引行為は、必ずしも、本件商標の出所表示機能が正しく発揮されたことに起因するものではない。
ウ 小括
オーテック社の輸入行為は,日本国内における本件商標等の使用には該当しない。また、オーテック社の購入行為は、本件商標が出所表示機能を発揮したことに起因するものではない。
(2)ウェブサイトへの掲載等について(商標法第2条第3項第8号)
ウェブサイト等に商標を付した商品を掲載する行為は、商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為に該当する(商標法第2条3項第8号)。
ここで、商標法第50条の取消審判の対象となる商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者等によって使用されていない商標である(商標法第50条第1項)。
被請求人は、答弁書において、本件審判の請求登録前3年以内に、日本国内において、本件商標と社会通念上同一の商標が付された自動車用クラッチに関する広告が電磁的方法により提供されているため、使用商品について本件商標が使用されている旨を主張するとともに、証拠として乙第11号証から乙第16号証を提出している。
しかし、上記証拠は、以下の理由により、日本国内における本件商標の使用を証明するものではない。
ア 乙第11号証及び乙第12号証について
被請求人は、乙第11号証として、DML社が製造販売する自動車用クラッチを紹介するページを提示し、「乙第11号証に示す紹介ページが存在した2016年(平成28年)9月3日当時の段階で、本件ウェブサイトが日本国内の需要者をも対象としたものであることは明らかであり、本件ウェブサイトが外国のサーバーに設けられているとしても、本件ウェブサイトが日本国内の需要者をも対象としたものであることは明らかである」旨を主張する。
しかし、我が国の需要者に向けた広告宣伝を行うのであれば、日本語版のウェブサイトやパンフレットを作成することが通常であるにもかかわらず、被請求人が証拠として提出したウェブサイト等は全て英語で表示されている。乙第11号証に係るウェブサイトは海外のサーバーに設けられたものであり、かつその内容は全て英語で表示されたものであることから、乙第11号証に記載されたウェブサイトが、日本の需要者を対象としたものであると認める妥当性が見当たらない。
乙第11号証に係るウェブサイトは日本からもアクセス可能であり、日本にサーバーを設けた検索エンジンによっても検索可能である。これは、ウェブサイトである以上当然であり、同事実によっては上記ウェブサイトによる広告を日本国内による使用に該当するものということはできない。
被請求人は、乙第12号証を提出し、審判請求登録前3年以内である2016年(平成28年)9月2日時点において、オーテック社がDML社の公認ディーラーであったことから、乙第11号証に係るウェブサイトが我が国の需要者をも対象としたものである旨を主張する。
しかし、オーテック社が本件商標を付した商品を日本国内で販売又は宣伝している事実は見当たらない。オーテック社の存在のみをもって、乙第11号証に係るウェブサイトが我が国の需要者をも対象としたものである旨の主張には疑義がある。
乙第11号証及び乙第12号証は、日本国内の需要者を対象とした広告には該当しない。
したがって、乙第11号証及び乙第12号証は、審判請求登録前3年以内に、日本国内において本件商標が使用された証拠には該当しない。
イ 乙第13号証ないし乙第16号証について
被請求人は、乙第14号証及び乙第15号証として、DML社が所有及び運営する動画チャンネル及びサムネイル画面を提出し、DML社が本件商標を使用している旨(商標法第2条第3項第8号該当行為)を主張する。
さらに、乙第14号証及び乙第15号証に示す動画が、審判請求登録日から3年以内である2018年(平成30年)3月27日付で、DML社所有のチャンネルにアップロードされた動画であること(乙14)、当該動画共有サイトは、サイト運営者や載画の所有者によって動画の公開地域を設定できる機能を有していること(乙16)から、DML社の行為は日本国内における使用に該当する旨を主張する。
しかし、乙第14号証及び乙第15号証に係る動画は、英語による動画であり、サムネイル画像も英語のみで作成されていることから、日本の需要者を対象としたものとは認められない。また、乙第16号証に「動画の所有者が特定の国でのみコンテンツを利用できるように選択している(通常はライセンスや権利が原因)」と記載されていることからも明らかなとおり、一定の地域で動画が閲覧できないケースは、サイト運営者が特定の地域での動画公開を意図的に除外した場合に限られる。すなわち、DML社は、乙第14号証及び乙第15号証に係る動画の公開を我が国で単に制限していないだけであり、我が国の需要者を特定して当該動画を公開している訳ではない。
したがって、乙第13号証ないし乙第16号証は、日本国内における本件商標の使用を証明する資料とは認められない。
ウ 小括
被請求人が主張する「ウェブサイトヘの掲載等」は、日本国内の需要者を対象とした広告ではない。上記行為によっては商標法上の使用行為としての効果が発生していない。
(3)むすび
以上、本件商標は、本件審判請求に係る指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者又は使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
第3 被請求人の主張の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。との審決を求め、答弁書にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、答弁書で乙第1号証ないし乙第16号証を提出した。
1 答弁書による主張の要旨
本件商標の通常使用権者は、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標の指定商品中の使用商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用している。
(1)使用の主体
ア 本件商標権者と使用権者の関係
本件商標権者(Dual Cluch IP LTD)は、知的財産の管理を目的とした法人であり、保有する全てのブランドに関してDML社に受注、製造及び販売等の全ての実体的な活動のライセンス許諾をいている。
一方、DML社は本件商標権者が保有する全てのブランドに関する受注、製造及び販売等をおこなう唯一の法人であり、本件商標を使用した商品は各国で流通しており、日本にも輸入されている。
このような関係から、DML社は本件商標権者から恒常的に本件商標の使用を黙示に許諾されている。すなわち、DML社は本件商標の通常使用権者である。
これを明らかにするため、本件商標権者による宣誓書を提出する(乙1)。
イ 使用権者の業務内容(乙2~乙4)
DML社は、本件商標を使用した商品の受注、製造及び販売等の全ての実体的な活動をおこなっている。本件商標を使用した商品はDML社の公認ディーラーを通じて世界各国で流通している。公認ディーラーは日本国内にも複数存在する。
(2)使用の事実
ア 日本への輸入(商標法第3条第2項第2号)について
(ア)概要
2016年(平成26年)3月に、本件商標を付した商品が、DML社から、その公認ディーラーの1つであるJAI社へと販売され、その後、当該商品が、JAI社から日本の公認ディーラーであるオーテック社へと販売されて、日本国内に輸入された。
(イ)取引対象の商品(乙5~乙7)について
取引対象の商品は商品名「Clutch-Promax 11 Plate―R35 GTR-R35CPMA11[Trariff Code:8483.60.01]」である。
当該取引対象商品は、DML社が製造及び販売する自動車用クラッチであり、DML社が発行する総合カタログ、PROMAXブランドのパンフレット及びDML社のウェブサイトに掲載されている(乙5~乙7)。
総合カタログ(乙5)においてはカタログページ番号の6頁に「R35 CPMA11 PROMAX(R)(最後の(R)は○の中に「R」が記載されている。)+FORGED ALLOY PISTONS 11 PLATE CULUTCH KIT」と表示されている商品である。冒頭の品番「R35 CPMA11」が取引対象商品と同一である。
また、PROMAXブランドのパンフレット(乙6)においては、自動車用クラッチ「PROMAX」が紹介されており、「SPECIFICATIONS」欄の第1項目に構成プレートの枚数が10、11、12、13枚のものがあることが記載されている。そのうち、11枚で構成されたものが当該取引商品である。乙第5号証ないし乙第7号証に示す自動車用クラッチは、本件商標の指定商品のうち「clutch mechanisms for land vehicles」に含まれる商品である。
商品名のうち、Clutch(クラッチ)は商品の種類、R35 GTRは、自動車の車名、R35CPMA11は品番表示である。すなわち、上記記載は「PROMAX」という商品名のクラッチで1枚のプレートで構成されたR35 GTR用のもの」ということを表しており、自他商品の識別機能を有する部分は「PROMAX」であることが明白である。
そして、使用商標と本件商標とは書体の違い及び大文字小文字の違いは一部あるものの、社会通念上同一と認められる。
(ウ)商品の流通過程(乙8~乙10)について
オーストラリアに所在する本件商標権者からの依頼を受けたDML社は、2016年(平成28年)3月15日付けで受注書を発行したのち、JAI社に当該取引商品1個を販売した。これを証明する証拠としてDML社が発行した受注書を提出する(乙8)。
受注書のLn欄の2が当該取引商品に関する項目である。なお、JAI社は現在も使用権者の公認ディーラーの一つである(乙3、乙9)。
次に、JAI社は日本の長野県に所在するオーテック社を納品先として当該取引商品1個を販売し、2016年(平成28年)3月17日付け納品書兼請求書を発行した(乙10)。乙第10号証において、「Delivery To」は納品先、「Invoice to」は請求先を表している。
また、乙第10号証の「Item name」に記載の商品名は、先述と異なる表示であるが、SKU欄に記載された品番は当該取引商品のものであることから、同一の商品に関する取引であることが明らかである。
さらに、「Item name」欄には使用者を表す「Dodson Motorsport」の記載があり、「PROMAX」には登録商標であることを表す「R」が付されていることから、オーテック社が当該商品をDML社の商品と認めて購入を決定し、JAI社もこれに応じて取引をしたことが明らかである。
なお、オーテック社は、現在もDML社の公認ディーラーの一つである(乙4)。
乙第8号証及び乙第10号証に記載された、商品名、数量及び日付(乙4における「OrderDate」及び乙10における「TaxDate」)より、DML社からJAI社を経由してオーテック社へと同一の商品が取引されたことが容易に認められる。
(エ)商標の使用について
本願商標が付された商品は、DML社からJAI社を経由してオーテック社へと流通し、日本に輸入されたものである。
当該輸入行為の原因は、オーテック社が、DML社のパンフレットやウェブサイトで当該取引商品をDML社が製造、販売するクラッチであると認識し、これを購入しようという意思である。
そして、JAI社はオーテック社の購入意思に対応するためにDML社から購入した商品をオーテック社へ販売した。すなわち、本件商標の出所表示機能が正しく発揮された結果として、当該取引が成立したのである。
したがって、当該輸入行為は実質的にDML社による使用と認められる。
よって、当該使用行為は、商品に本件商標を付したものを輸入する行為に該当する(商標法第2条第3項第2号)。
(オ)小括
以上より、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件商標と社会通念上同一の商標が付された自動車用クラッチが日本に輸入されたことから、本件商標が使用されていることが明らかである。
イ ウェブサイトへの掲載(商標法第3条第2項第8号)について
(ア)概要
2016年(平成28年)9月3日当時のDML社のウェブサイトに掲載されている、複数の自動車用クラッチについて、その商品名として本件商標が使用されている。
(イ)掲載商品(乙11)について
乙第11号証に、ウェブサイトの過去の履歴を遡って閲覧可能なサービスを提供するウェブサイト「Internet Archive:Wayback Machine」(以下「履歴閲覧サイト」ともいう。)による、2016年(平成28年)9月3日当時のDML社のウェブサイトにおいて、DML社が製造、販売する自動車用クラッチを紹介するページ(以下「紹介ページ」ともいう。)を示す。
乙第11号証に示した自動車用クラッチは、本件商標の指定商品のうち「clutch mechanisms for land vehicles」に含まれる商品である。
これらの商品のうち、例えば「Clutch-Promax 10」の記載のうち、Clutchは商品の種類、10はプレートの枚数を示している。
すなわち、上記記載は「PROMAXという商品名のクラッチで10枚のプレートで構成されたもの」を表している。同様の表記方法で、「Clutch-Promax 11」も掲載されている。
これらの事実から、本件商標が自他商品の識別機能を有する自動車用クラッチのシリーズ名として使用されていることが明白である。
そして、使用商標と本件商標とは書体の違い及び大文字小文字の違いは一部はあるものの、社会通念上同一と認められる。
(ウ)商標の使用について
ウェブサイトで本件商標を付した商品を掲載する行為は、商品に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供する行為に該当する(商標法第2条第3項第8号)。
(エ)日本国内での使用(乙12)について
乙第12号証に、乙第11号証に示す紹介ページの日付(2016年(平成28年)9月3日)よりも1日前の2016年(平成28年)9月2日当時の履歴閲覧サイトによるDML社のウェブサイト上の公認ディーラーの掲載ページを示す。
乙第12号証には、上記アの使用行為に関わったオーテック社が日本の公認ディーラーとして掲載されており、前記した事実1の取引後も、引き続きオーテック社が日本の公認ディーラーを努めていたことが認められる。
よって、乙第11号証に示す紹介ページが存在した2016年(平成28年)9月3日当時の段階で、本件ウェブサイトが日本国内の需要者をも対象としたものであることは明らかであり、本件ウェブサイトが外国のサーバーに設けられているとしても、本件ウェブサイトが日本国内の需要者をも対象としたものであることは明らかであるから、その使用は日本国内における使用と認められる。
(オ)小括
以上より、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において本件商標と社会通念上同一の商標が付された自動車用クラッチに関する広告が電磁的方法により提供されていることから、本件商標が使用されていることが明らかである。
ウ 動画共有サイトでの掲載(商標法第2条第3項第8号)について
(ア)概要
インターネット上の動画共有サイトにおいてDML社が運営するチャンネルにて、DML社が販売する自動車用クラッチの商品の紹介動画の中で本件商標が使用されている。
(イ)チャンネルの概要(乙13)について
動画共有サイト「YouTube」において、DML社が運営するチャンネル(以下「本件チャンネル」)の概要画面のスクリーンショットのプリントアウトを示す(乙13)。
乙第13号証の概要画面の詳細欄には、問い合わせ先のメールアドレスが示されており、このメールアドレスのドメイン名は、乙第2号証に示すDML社のウェブサイトのドメイン名と同一である。
よって、本件チャンネルの運営主体が、本件商標のDML社であることは明白である。
(ウ)掲載商品(乙14、乙15)について
乙第14号証として、本件チャンネルのホーム画面のスクリーンショットのプリントアウトを示す。
乙第14号証に示すホーム画面には、アップロードした動画のサムネイル画面が複数表示されており、この中の一つに「Dodson Motorsport-Nissan R35 GTR Clutch Promax13」をタイトルとするサムネイル画面がある。このサムネイル画面を選択して表示される動画の閲覧ページのスクリーンショットのプリントアウトを、乙第15号証に示す。
乙第15号証に示す動画は、2018年(平成30年)3月27日付けでアップロードされ、現在に至るまで日本国内で閲覧可能な動画(以下「本件動画」ともいう。)である。
本件動画で紹介されている商品は、使用権者が製造・販売する自動車用クラッチであり、自動車用クラッチは、本件商標権の指定商品のうち「clutch mechanisms for land vehicles」に含まれる商品である。
本件動画のタイトルや、動画内で表示されている「Promax 13 Clutch」との記載について、Clutchは商品の種類、13はプレートの枚数を示しており、当該記載は「PROMAXという商品名のクラッチで13枚のプレートで構成されたもの」ということを表している。
よって、本件商標が自他商品の識別機能を有する自動車用クラッチのシリーズ名として使用されていることが明白である。
そして、使用商標と本件商標とは書体の違い及び大文字小文字の違いは一部にあるものの、社会通念上同一と認められる。
(エ)商標の使用について
動画共有サイトでの動画内で本件商標を表示する行為は、商品に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供する行為に該当する(商標法第2条第3項第8号)。
(オ)商標の使用(乙12、乙16)について
乙第16号証に、動画共有サイトにおいて動画再生が制限される場合の詳細を示すヘルプページを示す。
乙第16号証にも記載されるように、当該動画共有サイトは、サイト運営者や動画の所有者によって動画の公開地域を設定できる機能を有しているところ、本件動画が日本国内で閲覧を制限されている事情は見当たらない。
また、前記した事実1及び2に示すとおり、日本の公認ディーラーであるオーテック社に対し、DML社による使用行為が少なくとも2016年(平成28年)3月17日に行われており(乙10)、さらに、少なくとも同年9月2日から現在に至るまでオーテック社が日本の公認ディーラーとして認定されている(乙4、乙12)ことからも、前記のページが存在した2018年(平成30年)3月27日当時において、本件チャンネル及び本件動画が日本国内の需要者をも対象としたものであることは明らかである。
よって、動画共有サイトが外国のサーバーに設けられているとしても、本件チャンネル及び本件動画が日本国内の需要者をも対象としたものであることは明らかであるから、その使用は日本国内における使用と認められる。
(カ)小括
以上より、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標と社会通念上同一の商標が付された自動車用クラッチに関する広告が電磁的方法により提供されていることから、本件商標が使用されていることが明らかである。
エ まとめ
以上のとおり、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権の通常使用権者が指定商品「clutch mechanisms for land vehicles」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用している。
2 したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものではない。
第4 当審における審尋
1 2019年(令和元年)9月25日付け審尋について
(1)審尋の要旨
被請求人は、要証期間に本件商標と社会通念上同一の商標を、本件審判請求に係る指定商品中の「clutch mechanisms for land vehicles」について、DML社が使用している旨主張しているものと解され、その証拠として、乙第1号証ないし乙第16号証を提出しているが、提出された証拠によっては、被請求人が商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用をしている事実を証明したものとは認められない。
(2)2019年(令和元年)12月4日付け回答書(以下「回答書1」という。)による被請求人の主張
上記(1)の審尋に対し、被請求人は、回答書1において、要旨以下にように回答し、証拠方法として、乙第17号証ないし乙第30号証(枝番号を含む。)を提出した。
ア 本件商標の通常使用権者について
DML社が、本件商標の使用許諾を受けていたことについて、DML社の代表者による宣誓書を提出する(乙17)。
よって、DML社が本件商標の通常使用権者であることが、より客観的に立証された。
イ 日本への輸入(商標法第3条第2項第2号)について
(ア)DML社が製造し、オーテック社が入手した「Clutch-Promax 11 Plate-R35 GTR-R35CPMA11」(以下「使用商品1」という。)と同一製品の拡大写真を乙第18号証に示す。
当該拡大写真には、DML社の社名ロゴと、本件商標「PROMAX」が刻印されている。
よって、DML社によって本件商標が使用商品1に付されていることは明らかである。
(イ)答弁書で提出した乙第10号証に示すように、JAI社から、オーテック社への同商品についての納品書兼請求書でもって、DML社からJAI社への譲渡は客観的に立証されていることに疑いの余地はない。
(ウ)オーテック社による輸入行為が、商標法第2条第3項における「使用」行為に該当するか否かについて以下検討する。
乙第19号証では、商標法第2条第3項が同法上の標章の「使用」の定義を規定した趣旨は、商品に標章が表示される場合において、それが何人の使用と認められるものであるかについては社会通念にゆだねるとともに、同法の目的との関係を考慮し、特に商品の識別標識として機能すると認められる事実についてのみ、これを「使用」であると定義することにより、同法上の「使用」としての法的効果を認めるべき行為の範囲を限定したものであると解される。そして、商標権者等が商品に付した商標は、その商品が転々流通した後においても、当該商標に手が加えられない限り、社会通念上は、当初、商品に商標を付した者による商標の使用であると解されるから、その商品が実際に何人によって所有、占有されていることを問わず、商標法第2条第3項に該当する行為が行われる限り、その行為は、当初、商品に商標を付した者による商標の「使用」行為であるというべきである。これを本件のような我が国で商標登録を有する外国法人との関係についてみれば、商標権は、国ごとに登録出願及び登録を経て権利として認められるものであり、属地主義の原則に支配され、その効力は当該国の領域内においてのみ認められるところから、当該外国法人が商標を付した商品が我が国外において流通している限りは、我が国の商標法の効力は及ばない結果、我が国の商標法上の「使用」として認めることはできないものの、その商品がいったん日本に輸入された場合には、当該輸入行為をとらえ、当該外国法人による商標法第2条第3項第2号にいう「商品に標章を付したものを輸入する行為」に当たる「使用」行為として、同法上の「使用」としての法的効果を認めるのが相当である、としている(東京高裁平成14年(行ケ)第346号同15年7月14日判決)。
そうすると、本件においては、本件商標の通常使用権者である外国法人のDML社が本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した商品について、要証期間に、JAI社を経由して日本法人であるオーテック社がこれを輸入したとの事実を認定できるため、当該輸入行為をもって、DML社による商標法第2条第3項第2号にいう「商品に標章を付したものを輸入する行為」にあたる「使用」行為として、同法上の「使用」としての法的効果を認めるのが相当である。
ウ 動画共有サイトでの掲載(商標法第2条第3項第8号)について
乙第15号証に示す動画は、2018年(平成30年)3月27日付けでアップロードされ、現在に至るまで日本国内で閲覧可能な動画(以下「本件動画」ともいう。)である。
本件動画について、YouTube内のアナリティクス機能を用いた、要証期間のアクセス記録を提出する(乙20)。
乙第20号証の右上の欄には、アクセス記録のフィルタとして、要証期間である2018年(平成30年)3月27日から同年8月23日が設定されており、縦方向に地域毎の再生数が表示され、その中に日本国内での再生数が153回であることが表示されている。
したがって、本件動画が、要証期間に日本国内の需要者によって閲覧され、当該需要者に向けて出所表示機能や広告宣伝機能を発揮していたことは明らかである。
また、新たな使用の事実にも示すように、要証期間において、本件商標の通常使用権者によって製造された本件商標を製品名とする製品が、日本法人によって、取引対象として販売サイトに掲載され、かつ譲渡の為の展示及び日本で開催された展示会に出展されている事実が存在する以上、日本国内の需要者を対象とした営業行為が行われていたことは明らかであり、乙第15号証に示す本件動画の説明文が日本語でなく英語で記載であることをことさら重要視して、本件動画が日本国内の需要者を対象としたものでないと判断することはできない。
エ 商品販売サイトへの掲載(商標法第2条第3項第8号)について
(ア)概要
本件商標を製品名として付した、DML社が製造、販売する自動車用クラッチが、日本法人が運営するインターネット上の商品販売サイトで、注文を受け付け可能な態様で掲載されている。
(イ)ウェブサイトの内容について
日本語で記載された、自動車部品の販売サイト「モタガレ」のTOPページのプリントアウトを示す(乙21)。
「モタガレ」のTOPページの下段に表示される「運営会社」のリンクを選択して遷移するページには、「モタガレ」の運営会社として、日本法人であるMiddleField株式会社が記載されている(乙22)。
乙第21号証に示す「モタガレ」のTOPページでは、車種、カテゴリ、ブランドでの商品検索が可能であり、「d」で始まるブランドを選択すると、DML社のブランド「Dodson Motorsport」が表示されている(乙23)。
このブランドを選択すると、同ブランドの取扱商品のリストが表示され(乙24)、このリストの中に含まれる「プロマックス強化クラッチ」を選択すると、「プロマックス強化クラッチ」の注文ページに遷移する(乙25)。
(ウ)掲載商品
乙第25号証に示す注文ページで注文対象とされる自動車用クラッチは、本件商標権の指定商品のうち「clutch mechanisms for land vehicles」に含まれる商品である。
(エ)商標の同一性
乙第25号証に示す注文ページで使用されている商標「プロマックス」と本件商標とは、片仮名表記と欧文字表記とを相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生じるから、社会通念上同一と認められる。
(オ)掲載時期
「モタガレ」の運営事務局に当該紹介ページの掲載日を照会し、2017年(平成29年)1月12日から掲載を開始しているとの回答を得た(乙26)。
したがって、本件使用は、要証期間における使用に該当する。
(カ)商標の使用主体
乙第25号証に示す注文ページで紹介されている商品は、本件商標の通常使用権者であるDML社が製造、販売する自動車用クラッチとして掲載されており、当該商品の製品名として付された商標が、当該商品の出所がDML社であることを示すように出所表示機能を発揮する態様で使用されていることは、社会通念上明らかである。
よって、本件商標の通常使用権者が本件商標を付して製造した商品を、当該商品を取り扱う日本所在の小売業者が運営する日本語で記載された商品販売サイトにおいて、本件商標を付した製品の注文が可能な態様で表示する行為は、本件商標の通常使用権者であるDML社による使用行為に該当する。
(キ)使用行為の種類
本件商標の通常使用権者が本件商標を付して製造した商品を、当該商品を取り扱う日本所在の小売業者が運営する日本語で記載された商品販売サイトにおいて、本件商標を付した製品の注文が可能な態様で表示する行為は、日本国内において、商品に関する価格表を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
(ク)小括
以上より、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において本件商標が使用されていることは明らかである。
オ 展示会への出展(商標法第2条第3項第8号)について
(ア)概要
DML社が製造した本件商標を製品名とする自動車用クラッチを購入した日本法人が、当該自動車用クラッチを出展対象のカスタムカーに組み込んで日本国内の展示会に出展する旨のプレスリリース等を行っている。
(イ)出展の内容
日本法人である田中工業株式会社(以下「田中工業社」という。)のウェブサイトに、幕張メッセで開催された「東京オートサロン2018」とする展示会に対する出展案内とご来場のお礼についてのプレスリリースと、詳細ページがそれぞれ掲載されている(乙27~乙30)。
(ウ)掲載商品
乙第29号証に示す田中工業社の出展案内の詳細ページには、東京オートサロン2018で展示するカスタムカー(JUN420GTR(R35))に組み込まれたクラッチが「Dodson ProMax」であることを示した記載がある。
自動車用クラッチは、本件商標権の指定商品のうち「clutch mechanisms for land vehicles」に含まれる商品である。
(エ)商標の同一性
乙第27号証に示す田中工業社の出展案内の詳細ページで使用されている商標「ProMax」と本件商標とは、大文字と小文字の表記を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生じるから、社会通念上同一と認められる。
(オ)掲載時期
田中工業社による、東京オートサロン2018への出展案内ページの掲載日は、2017年(平成29年)12月22日である(乙28、乙29)。
東京オートサロン2018の開催日は、2018年(平成30年)1月12日から14日である(乙29、乙30)。
したがって、本件使用は、何れも要証期間における使用に該当する。
カ 商標の使用主体
乙第28号証に示す展示会についての出展案内のプレスリリースのページで紹介されている展示車両に組み込まれた部品のうち、クラッチ部分について、本件商標の通常使用権者であるDML社が製造する自動車用クラッチを使用した旨が掲載されており、当該商品の製品名として付された商標が、当該商品の出所がDML社であることを示すように出所表示機能を発揮する態様で使用されていることは、社会通念上明らかである。
よって、本件商標の通常使用権者が本件商標を付して製造した商品を、当該商品を取り扱う日本法人が、自社のウェブサイトで紹介し、また展示会で展示する行為は、本件商標の通常使用権者であるDML社による使用行為に該当する。
キ 使用行為の種類
本件商標を付した製品を購入した日本法人が、当該製品をカスタムカーに組み込んで日本国内の展示会に出展する旨を自社のウェブサイトで告知する行為は、日本国内において、商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
また、同日本法人が、当該製品をカスタムカーに組み込んで日本国内の展示会に出展する行為は、日本国内において、商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡のために展示する行為(商標法第2条第3項第2号)、または商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
ク 小括
以上より、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において本件商標が使用されていることは明らかである。
2 2020年(令和2年)11月4日付け審尋について
(1)審尋の要旨
回答書1による同人の主張及び回答書1により提出された証拠(乙17~乙30)によっては、被請求人が商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用をしている事実を証明したものとは認められない。
(2)2020年(令和2年)12月2日付け回答書(以下「回答書2」という。)による被請求人の主張
被請求人は、上記(1)の審尋に記載の合議体の暫定的な見解及び弁駁書の主張に対し、回答書2における追加の意見はない旨を述べた。
第5 当審の判断
1 被請求人の立証責任
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、ア 要証期間に、イ 日本国内において、ウ 商標権者又は使用権者のいずれかが、エ 本件審判請求に係る指定商品のいずれかについての、オ 本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要がある。
2 被請求人が提出した乙各号証から、以下のとおり認定できる。
(1)乙第1号証及び乙第17号証について
乙第1号証は、2018年(平成30年)11月9日に本件商標権者が作成した宣誓書及びその訳文であり、訳文には「当社デュアル クラッチ アイピー リミテッドは、遅くとも2016年から現在に至るまで、下記商標権の指定商品の全てに関する日本国内での下記商標の通常使用権をドッドソン モータースポート リミテッドに許諾していることに相違ありません。」の記載、「国際登録番号:1173729」の記載、「商標:PROMAX」の記載、通常使用権者の項目に「住所:ニュージーランド、0627 オークランド、グレンフィールド、ポーランド ロード 20-22」の記載、「名称:ドッドソン モータースポート リミテッド」の記載、商標権者の項目に「住所:ニュージーランド、1024 オークランド、マウント エデン、エドウィン ストリート 23、ゾーン 23 ユニット ジー09」の記載、「名称:デュアル クラッチ アイピー リミテッド」の記載、及び「日付:2018年11月9日」の記載がある。
乙第17号証は、2019年(令和元年)10月18日にDML社が作成した宣誓書及びその訳文であり、訳文には、「当社ドッドソン モータースポート リミテッドは、遅くとも2016年から現在に至るまで、下記商標権の指定商品の全てに関する日本国内での下記商標の通常使用権をデュアル クラッチ アイピー リミテッドから許諾されていることに相違ありません。」の記載、「国際登録番号:1173729」の記載、「商標:PROMAX」の記載、商標権者の項目に、「住所:ニュージーランド、1024 オークランド、マウント エデン、エドウィン ストリート 23、ゾーン 23 ユニット ジー09」の記載、「名称:デュアル クラッチ アイピー リミテッド」の記載、通常使用権者の項目に、「住所:ニュージーランド、0627 オークランド、グレンフィールド、ポーランド ロード 20-22」の記載、「名称:ドッドソン モータースポート リミテッド」の記載、「日付:2019年10月18日」の記載がある。
乙第1号証及び乙第17号証の作成日は、いずれも要証期間外であるものの、2016年(平成28年)以降、本件商標権者は、本件商標の通常使用権をDML社に許諾をしたことは推認できる。
(2)乙第2号証、乙第4号証、乙第7号証、乙第9号証及び乙第11号証ないし乙第16号証について
乙第2号証は、DML社のウェブサイトのフロントページを印刷したと思しきものであり、本号証の1葉目に「aftermarket dual clutch transmission」の記載、本号証の2葉目の下部の右から2番目の商品の写真の下に「Clutch-Promax 13 Plate R35 GTR-R35CPMA13」の記載がある。
乙第4号証は、DML社のウェブサイトのディラーに関するページを印刷したものと思しきものであり、本号証には、日本のディラーの名称として「Autech Tsukada」の記載がある。
乙第7号証は、DML社のウェブサイトの「R35 GTR」に関するページを印刷したものであり、本号証の1葉目に「Cluch-Promax 11 Plate-R35」の記載がある。
乙第9号証は、DML社のウェブサイトのディラーに関するページを印刷したと思しきものであるが、本号証には、日本のディラーの名称として「Autech Tsukada」の記載はない。
乙第11号証は、2016年(平成28年)9月3日のDML社のウェブサイトの商品の紹介ページであり、「Clutch GR6」の記載がある。
乙第12号証は、2016年(平成28年)9月2日のDML社のウェブサイトのディラーに関するページを印刷したと思しきものであり、本号証には、「Autech Tsukada」の記載がある。
乙第13号証ないし乙第15号証は、動画共有サイトの本件チャンネル及び本件動画のプリントアウト記事であり、DML社の商品が紹介されている。
乙第16号証は、動画共有サイト(Youtube)のヘルプページであり、本号証に、「居住している地域で動画を再生できない」の記載及び「一部のYouTube動画は、次の理由によりお客様の居住国ではご利用できない場合があります。」の記載がある。
乙第20号証は、被請求人が、日本国内から乙第15号証の動画へのアクセスがあったことを証明するものと主張するものであるが、本号証の作成日が不明であり、印刷日(2019年10月31日)は、要証期間外である。
なお、乙第2号証、乙第4号証、乙第7号証、乙第9号証、乙第13号証ないし乙第15号証に記載された情報の掲載日は不明であり、我が国の需要者、取引者に対して、これらの情報が提供されたことは確認することができない。
また、乙第11号証及び乙第12号証の情報掲載日は確認できるものの、これらに記載された情報が、我が国の需要者、取引者に対して、提供されたことは確認することができない。
加えて、これらの情報に掲載された商品に、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)が付されたことは確認することができない。
(3)乙第5号証及び乙第6号証について
乙第5号証は、「DUAL CLUTCH TRANSMISSION PERFORMANCE CATALOGUE 2018」をタイトルとするDML社が製造したと思しき商品カタログであり、本号証の4葉目に「NISSAN R35 GT-R」のタイトルの下、「R35 PROMAX 13 CLUTCH KIT」の記載、6葉目に「R35 GTR PARTS」のタイトルの下、「Clutches」の項目の右側に「R35 CPMA11」の記載、「PROMAX(R)」(最後の(R)は○の中に「R」の文字が記載されている。)の記載がある。
乙第6号証は、「PROMAX(構成各文字はデザイン化されている。) CLUTCH」のタイトルのDML社が製造したと思しき商品カタログであり、2葉目の「SPECIFICATION」の項目に「High performance 10,11,12,13plate clutch build」の記載がある。
なお、乙第5号証及び乙第6号証の商品カタログの発行部数や頒布先は不明であり、また、これらの商品カタログが、我が国の需要者、取引者に対する商品の宣伝広告として発行されたものであることは確認することができない。
また、これらの情報に掲載された商品「自動車用クラッチ」に、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)が付されたことは確認することができない。
(4)乙第8号証及び乙第10号証について
乙第8号証は、DML社が、2016年(平成28年)3月15日に作成した「ORDER」(受注書)であり、本号証には、「Deliver To:Justjap Auto Imports」の記載、「Due Date:11/05/2016」の記載、「Order Date:15/03/2016」の記載、表中の「Ln」の下の数字「2」の下に「Clutch-Promax 11 Plate-R35 GTR-R35CPMA11[Tariff Code:8483.60.01]」の記載がある。
乙第10号証は、JAI社が、2016年(平成28年)3月17日に作成した納品書兼請求書と思しき書類であり、本号証の「Deliver to:」の記載及び「Invoice to:」の記載の下に、「TSUKADA SAN」の記載、その下に「AUTECH TSUKADA “ATTKD”」の記載、その下に「6120-1 MAMEJIMA NAGANO PREFECTURE NAGANO JAPAN 381-0022」の記載、その下に「Japan」の記載、「Tax date:」の記載及び「Date due」の記載の右に「17 Mar 2016」の記載、「Company:」の記載の右に「AUTECH TSUKADA “ATTKD”」の記載、「Qty」の記載の下に「1」の記載、「Item name」の下に「Dodson Motorsport R35 GTR PROMAXR(最後の「R」は、○付き) + FORGED PISTONS 11 PLATE CLUTCH」の記載、「SKU」の記載の下に「R35 CPMA11」の記載、本号証の左下に「JustJap Auto imports」の記載がある。
なお、DML社の受注書(乙8)及びJAI社の納品書兼請求書(乙10)に記載された商品が同一の商品であることは確認できない。
また、この商品に本件商標が使用されていることは確認することができない。
(5)乙第18号証について
乙第18号証は、2019年(令和2年)10月18日に撮影した商品の写真であるが、この写真には、商品の一部のみが撮影されており、商品全体を把握することができない。
また、当該写真は、不鮮明で、当該商品に本件商標が使用されていることは確認できない。
加えて、当該写真は、要証期間の経過後に撮影されたものである。
(6)乙第21号証ないし乙第26号証について
乙第21号証ないし乙第25号証は、車のパーツの販売を行う「モタガレ」のウェブサイトの記載内容を2019年(令和2年)10月17日にプリントアウトしたものであり、乙第24号証及び乙第25号証に「プロマックス強化クラッチ」の記載がある。
乙第26号証は、「モタガレ」の担当者と被請求人の代理人との電子メールでの内容をプリントアウトしたものであり、本号証の1葉目に、「お問い合わせをいただいております、『dodsonプロマックス強化クラッチ』の商品紹介ページにつきまして、回答させていただきます。掲載開始日、並びに販売実績はこちらとなります。掲載日:2017年01月12日22:19:52~ 販売実績:なし」の記載がある。
なお、「モタガレ」で販売されている商品が、オーテック社を通じて、日本に輸入された商品であることは確認できない。
また、本件商標権者又はDML社と「モタガレ」との関係が明らかではなく、本件商標権者又はDML社が、「モタガレ」に、商品の販売の依頼をした事実はこれらの証拠からは確認することができない。
(7)乙第27号証ないし乙第30号証について
乙第27号証ないし乙第30号証は、田中工業社のウェブサイトによる「東京オートサロン2018」に関する記事であり、乙第29号証の2葉目の「Supecification of JUN 420GTR」の題目の表中「Clutch」の記載の右に「Dodson Promax」の記載がある。
なお、乙第29号証の2葉目に記載された「Clutch」に本件商標が使用されていることは確認できない。
3 上記2によれば、当審の判断は、以下のとおりである。
(1)本件商標の使用者及び使用商標について
本件商標権者は、DML社に本件商標の通常使用権を許諾したことは推認できる。
ただし、通常使用権者であるDML社が製造、販売する商品「自動車用クラッチ」又は当該商品の包装に本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていたことは確認することができない。
また、DML社が作成したと思しき商品カタログ(乙5、乙6)において、本件商標と社会通念上同一と認められる「PROMAX」の文字が記載されていることは確認できるが、商品自体に本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていたことは確認することができない。
加えて、DML社が作成したと思しき商品カタログが、我が国の需要者に向けて、頒布されたこと、又は、商品の販売を目的としてした宣伝広告として提供されたことは確認することができない。
(2)使用商品について
DML社が製造、販売する商品「自動車用クラッチ」は、本件審判請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品である。
(3)商品「自動車用クラッチ」の輸入について
被請求人は、DML社が製造、販売した商品「自動車用クラッチ」がDML社からJAI社を経由して日本法人であるオーテック社に輸入された旨を主張するが、上記(1)のとおり、DML社の製造、販売する商品「自動車用クラッチ」に本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていたことが確認できない。
また、JAI社からオーテック社に商品「自動車用クラッチ」が輸入されたことを証明する輸入証明書やオーテック社が発行した商品受領書等は提出されていないため、DML社が、JAI社を通じて、日本に、商品又は商品の包装に本件商標を付した商品を輸入したことは認められない。
(4)動画共有サイトへの掲載について
被請求人は、インターネット上の動画共有サイトにおける本件チャンネルにて、DML社が販売する自動車用クラッチの商品の紹介動画の中で本件商標が使用されている旨を主張するが、我が国の需要者、取引者に対して、これらの情報が提供されたことは確認することができない。
また、動画で紹介された商品に、本件商標が使用されていたことは確認することができない。
(5)商品販売サイトへの掲載について
被請求人は、本件商標を製品名として付した、DML社が製造、販売する自動車用クラッチが、日本法人が運営するインターネット上の商品販売サイトで、注文を受け付け可能な態様で掲載されている旨を主張するが、車のパーツの販売を行う「モタガレ」のウェブサイトで紹介された自動車用クラッチが、JAI社を経由して日本法人であるオーテック社に輸入された商品であることは確認することができず、当該商品に本件商標が使用されていることも確認することができない。
(6)展示会への出展について
被請求人は、DML社が製造した本件商標を製品名とする自動車用クラッチを購入した日本法人が、当該自動車用クラッチを出展対象のカスタムカーに組み込んで日本国内の展示会に出展する旨のプレスリリース等を行っている旨を主張するが、当該カスタムカーに組み込まれた自動車用クラッチが、JAI社を経由して日本法人であるオーテック社に輸入された商品であることは確認することができず、当該商品に本件商標が使用されていることも確認することができない。
(7)小括
以上から、DML社は、本件商標の通常使用権者であり、同社が製造、販売する自動車用クラッチは、本件審判請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品であることは認められる。
しかしながら、同社が製造、販売する自動車用クラッチに本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていることは確認することができず、また、当該商品が、JAI社を経由して日本法人であるオーテック社に輸入されたことも確認することができない。
また、DML社が作成した商品カタログや、同社のウェブサイトにおける商品の紹介が、我が国の需要者に向けて提供された事実も確認することができず、日本国内おける商品の販売ウェブサイトや展示会において、紹介されたDML社が製造した商品が、JAI社を経由して日本法人であるオーテック社に輸入された商品であることやこれらの商品に本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標が使用されたことも確認することができない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人が提出した全証拠によっては、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者又は使用権者のいずれかが、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を、本件審判請求に係る指定商品のいずれかについて、商標法第2条第3号各号に規定する使用行為を行ったことを証明していない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は。商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-670030