特許拒絶査定不服審判
2018-013357
温度センサの製造方法、および温度センサ
- 審判番号
- 2018-013357
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-114169外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年10月05日
- 審決日
- 2019年10月29日
- 公報発行日
- 2019年12月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】日本光電工業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 信栄特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-114169「温度センサの製造方法、および温度センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月17日出願公開、特開2015-226698、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年6月2日の出願であって、平成29年9月22日付けで拒絶理由が通知され、同年11月29日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年4月27日付けで拒絶理由が通知され、同年7月3日付けで手続補正(以下、「補正0」という。)がなされるとともに、意見書が提出され、同年7月18日付けで拒絶査定されたところ、同年10月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。その後当審において令和元年5月27日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年7月18日付けで手続補正(以下、「補正1」という。)がなされるとともに、意見書が提出され、当審において同年8月22日付けで最後の拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、同年9月10日付けで手続補正(以下、「補正2」という。)がなされるとともに、意見書が提出されたものである。
第2 当審拒絶理由1について
1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)
(1)拒絶理由の概要
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
発明の詳細な説明には、感熱素子の製造方法についての技術的事項が記載されていると認められる。
したがって、製造対象が「感熱素子」ではなく「温度センサ」である請求項1及び請求項1を引用する請求項2~4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。
また、請求項1~4に係る発明と同様に「感熱素子」ではなく「温度センサ」とする請求項5及び請求項5を引用する請求項6~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。
(2)判断
補正1により、請求項1に係る発明は「・・・感熱素子の製造方法であって、・・・」と補正され、請求項5に係る発明は「・・・感熱素子。」と補正され、請求項6~9に係る発明は削除された結果、この拒絶の理由は解消した。
2 特許法第29条第2項(進歩性)
(1)拒絶理由の概要
本願の請求項5~9に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特開昭60-210729号公報
B.特開2005-19644号公報
C.特開昭62-57564号公報
D.特開2014-64881号公報
E.特開昭59-37932号公報
F.国際公開第2014/018246号(特表2015-524296号公報)
(2)判断
請求項5~9に係る発明は、補正1又は2により削除された結果、この拒絶の理由は解消した。
第3 当審拒絶理由2について
1 特許法第36条第6項第2号(明確性)
(1)拒絶理由の概要
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項5は、「請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法により製造された感熱素子。」という物の発明であるが、「請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法により製造された」との記載は、感熱素子の物としての構造又は特性として何を特定しているのかが不明である。
さらに、上記記載は、(製造方法の発明を引用する場合)に該当するため、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。
(2)判断
請求項5に係る発明は、補正2により削除された結果、この拒絶の理由は解消した。
第4 原査定の概要
平成30年7月18日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1~9に係る発明は、以下の引用文献1~3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2005-263189号公報
2.特開2005-19644号公報号公報(周知技術を示す文献)(当審拒絶理由1の引用文献B)
3.特開昭60-210729号公報(当審拒絶理由1の引用文献A)
第5 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」~「本願発明4」という。)は、補正2により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1は以下のとおりである。(なお、「本願発明1」~「本願発明4」は、補正1により補正されたものと同じである。)
「 【請求項1】
被検者の呼吸気の温度変化を検出する感熱素子の製造方法であって、
それぞれが金属線を有する一対の線材の当該金属線同士を接合して当該線材の長手方向の先端部に感熱部を形成する工程と、
前記一対の線材を樹脂材料からなる筒状部材で束ねる工程と、
前記筒状部材の一部と前記感熱部を金型のキャビティ内に配置する工程と、
前記金型における前記先端部に対向する位置に配置されたゲートから前記線材の長手方向に沿って前記キャビティ内に樹脂材料を射出して前記筒状部材と前記線材との隙間に当該樹脂材料を進入させることにより、前記筒状部材の一部と前記感熱部を覆う保護部を成形する工程と、
前記保護部を前記金型から離型する工程と、
を備えている、
製造方法。」
なお、本願発明2~4は、本願発明1を減縮した発明である。
第6 引用文献の記載事項、引用発明
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、カーエアコンに使用する自動車の外気温度検出センサ部材に関する。」
イ 「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、カーエアコン用の従来の外気温度検出センサ部材においては、サーミスタ1と出力端子2a、2bとを、硬化した樹脂材7で覆って防水遮断保持するためには、混合攪拌充填機と高温槽とが必要で製造設備が複雑になり、5時間にもわたって加熱処理をする長い製造時間が必要であり、製造コスト上でも問題が生じる。
【0006】
本発明は、前述したようなこの種の外気温度検出センサ部材の製造の現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な製造設備で短時間に、製造コストを削減して製造可能な高防水遮断特性の外気温度検出センサ部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1記載の第1の発明は、外気に対して露座状態で車体に配設され、前記外気の温度を検出する温度検出素子、及び該温度検出素子からの検出温度信号を出力する出力端子を備え、前記温度検出信号をカーエアコンの制御信号として取り込む自動車の外気温度検出センサ部材であり、前記出力端子を保持し、前記検出温度信号を前記カーエアコンの温度制御回路に接続するベースコネクタと、前記温度検出素子と前記出力端子の前記温度検出素子との接続部分とを覆って、低温・低圧射出成形によって前記ベースコネクタに固設形成され、前記温度検出素子及び前記接続部分を外気から防水遮断する防水遮断部とを有することを特徴とするものである。
【0008】
第1の発明は、外気に対して露座状態で車体に配設され、外気の温度を検出する温度検出素子、及び温度検出素子からの検出温度信号を出力する出力端子を備え、検出した温度検出信号をカーエアコンの制御信号として取り込む自動車の外気温度検出センサ部材であり、温度検出素子が検出した外気の検出温度信号が、ベースコネクタで保持される出力端子を介して、このベースコネクタが接続されるカーエアコン温度制御回路に供給され、検出温度信号によるカーエアコンの温度制御が行なわれる。
この場合、第1の発明では、温度検出素子及び出力端子の温度検出素子との接続部分を覆って、温度検出素子と出力端子とを防水遮断する防水遮断部が、低温・低圧射出成形によってベースコネクタに固設形成されているので、簡単な製造設備で短時間に、製造コストを削減して製造され高防水遮断特性を有する外気温度検出センサ部材が提供される。」
ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施の形態を、図1及び図2を参照し、その製造過程に基づいて説明する。
図1は本実施の形態の構成を示す断面説明図、図2は本実施の形態の製造過程を説明する説明図である。
【0020】
本実施の形態には、図1に示すように、出力端子2a、2bがインサート成形で貫通固定される取付基板部Bを具備し、この取付基板部Bに対向する端面が解放面とされたほぼ直方体筒状のベースコネクタ3Aが設けられ、出力端子2a、2bの取付基板部Bからの突出端にはサーミスタ1が固定されている。
本実施の形態では、このようにサーミスタ1を固定した出力端子2a、2bが取り付けられた取付基板部Bを具備するほぼ直方体筒状のベースコネクタ3Aに対して、サーミスタ1と出力端子2a、2bを覆って防水遮断部10が形成されており、この防水遮断部10の端部は、取付基板部Bを越えた位置まで延長した状態でベースコネクタ3Aに固設されている。
【0021】
このような構成の本実施の形態の防水遮断部10は、ポリアミド系ホットメトル接着剤を用いた低温・低圧射出成形によって形成されるが、この防水遮断部10の製造に用いられる射出成形装置22は、図2に示すような構成を有し、ベースコネクタ3Aに、サーミスタ1と出力端子2a、2bを覆って固設配置されるほぼ直方体状の防水遮断部10のキャビティを形成する上型11aと下型11bとが、ベースコネクタ3Aを覆って配設されている。
また、上型11aと下型11bからなる成形型の充填材注入口12には、加熱筒13のノズル部13aが対接配設され、加熱筒13に対して加熱筒13内にラム18が突出移動自在に加圧シリンダ17が取り付けられ、加熱筒13には、加熱筒13内に防水充填材21を供給するホッパー16が取り付けられている。さらに、加熱筒13内においてノズル13aの近傍には、ノズル13aから送出される防水充填材21の流動を、最適状態に設定する流動設定体20が配設されている。そして、加圧シリンダ17のラム18によって、加熱筒13のノズル13aから充填材注入口12を介して、キャビティ内に充填される防水充填材21の温度を所定温度に設定するシリンダヒータ15が、加熱筒13に取り付けられている。
【0022】
この状態で、加圧シリンダ17のラム18が引き込まれた加熱筒13内に、ホッパ16に収容されたポリアミド系ホットメルト接着剤が防水充填材21として供給充填され、シリンダヒータ15によって所定の温度に加熱される。この加熱によって、防水充填剤21は融解されて流体状になり、このように流体状になった防水充填材21は、加圧駆動される加圧シリンダ17のラム18の突出移動によって、流動設定体20で最適に流動設定された状態で、ノズル部13aを介して、充填材注入口12からキャビティ内に高圧で押し込み充填される。
ポリアミド系ホットメルト接着剤を防水充填材21として使用した場合には、キャビティ内に充填された防水充填材21は、ほぼ2分間で成形硬化するので、2分経過後に上型11aと下型11bを開いて、外気温度検出センサ部材を取り出すことにより、図1に示すように防水遮断部10が射出成形された外気温度検出センサ部材が提供される。
【0023】
本実施の形態では、ポリアミド系ホットメルト接着剤を防水充填剤21として、低温・低圧射出成形により、防水遮断部10が形成されており、従来のように混合攪拌充填機と高温槽とが必要な複雑な製造設備が不要になり、従来の5時間にもわたる加熱処理による成形硬化が僅か2分間で済み、簡単な製造設備で短時間に、製造コストを大幅に削減して高防水遮断特性を有する外気温度検出センサ部材の製造が可能になると共に、低温特性と可撓性に優れたポリアミド系ホットメルト接着剤を使用することにより、出力端子の取出し部の引っ張り応力の緩和が可能になると共に、-40℃~130℃という広い温度範囲での使用が可能になる。
さらに、防水遮断部10の外周に形成され、延長形成の先端方向に対してベースコネクタ3Aの表面に緩やかに近付く傾斜面によって、防水遮断部10の周面に付着する水分をベースコネクタ3Aの温度検出素子1側の端面位置から離れた周面方向に流出させ、水分がベースコネクタ3Aの温度検出素子側の端面への漏入を完全に防止することが可能になる。」
エ 「
」
オ 上記エの図2の記載から、「充填材注入口12」は、「上型11aと下型11bからなる成形型」の、「サーミスタ1」の「出力端子2a、2b」とは反対側の方向に位置する面に形成されていることが見て取れる。
カ 上記エの図2の記載から、「ベースコネクタ3A」は、その一部が「上型11aと下型11bからなる成形型」に覆われていること、また、図1の記載から、「防水遮断部10」は、「ベースコネクタ3A」の一部、「出力端子2a、2b」の取付基板部Bからベースコネクタ3Aとは反対側に突出した部分及び「サーミスタ1」を覆っていることが見て取れる。
(2)上記ア~カから、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「出力端子2a、2bがインサート成形で貫通固定される取付基板部Bを具備し、この取付基板部Bに対向する端面が解放面とされたほぼ直方体筒状のベースコネクタ3Aが設けられ、出力端子2a、2bの取付基板部Bからの突出端にはサーミスタ1が固定されているものを用意し、
ベースコネクタ3Aに、サーミスタ1と出力端子2a、2bを覆って固設配置されるほぼ直方体状の防水遮断部10のキャビティを形成する上型11aと下型11bとが、ベースコネクタ3Aの一部を覆って配設され、
上型11aと下型11bからなる成形型の、サーミスタ1の出力端子2a、2bとは反対側の方向に位置する面に充填材注入口12が形成され、
充填材注入口12には、加熱筒13のノズル部13aが対接配設され、加熱筒13に対して加熱筒13内にラム18が突出移動自在に加圧シリンダ17が取り付けられ、加圧シリンダ17のラム18が引き込まれた加熱筒13内に、ホッパ16に収容されたポリアミド系ホットメルト接着剤が防水充填材21として供給充填され、シリンダヒータ15によって所定の温度に加熱され、この加熱によって、防水充填剤21は融解されて流体状になり、このように流体状になった防水充填材21は、加圧駆動される加圧シリンダ17のラム18の突出移動によって、流動設定体20で最適に流動設定された状態で、ノズル部13aを介して、充填材注入口12からキャビティ内に高圧で押し込み充填され、
キャビティ内に充填された防水充填材21は、ほぼ2分間で成形硬化するので、2分経過後に上型11aと下型11bを開いて、外気温度検出センサ部材を取り出すことにより、ベースコネクタ3Aの一部、出力端子2a、2bの取付基板部Bからベースコネクタ3Aとは反対側に突出した部分及びサーミスタ1を覆う防水遮断部10が射出成形された外気温度検出センサ部材が提供される、
カーエアコンに使用する自動車の外気温度検出センサ部材の製造方法。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【0042】
1次成形の樹脂注入を終えた後、型開きをしてからエジェクトピンにより成形体を金型から取り出す。次いで、保護部28と薄板部25,26とを繋ぐ部分を切断すると共に、空間74によって形成された部分を切り落とす。これにより、図5~図7に示した1次成形体が得られる。」
3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、次の事項が記載されている。
ア 「3. 発明の詳細な説明
(1)発明の分野
この発明は,密封性にすぐれた温度センサに関するものである。
(2)従来技術
温度検出部としての先端を合成樹脂で密封する方法として従来,例えば次のようなものがある。
○1特公昭57-57974 保護管の先端部に,これと同材質の充填素材を溶着した温度検出器。(○の中に数字の1がある状態が表示できないので、○1と表示している。○2、○3も同様である。)
○2特公昭58-14965 管状合成樹脂製蓋材で露出した先端部の素線を覆い,先端封じする方法。
○3特公昭58-21213 合成樹脂被覆の先端部自体を蓋材として先端封じする熱電対の閉蓋方法。
しかしながら,このような従来の密封,絶縁被覆方法は,いずれも手作業の加工であり,加工が難しく,熟練を要するものだった。
(3)発明の目的
この発明の目的は,以上の点に鑑み,成形を利用し,加工が容易で,高信頼性の温度センサを提供することである。
(4)発明の実施例
第1図から第3図は,この発明の一実施例を示す説明図である。
第1図で示すように合成樹脂よりなる樹脂外筒1内に,樹脂被覆2で覆われた熱電対線のような複数本の導線3を収納し,樹脂外筒1の先端から突出した導線2をねじって強固にして先端を溶接し,温度検出部としての熱接点4を形成する。
次に,第2図で示すように,金型5の空間内に熱接点4,樹脂外筒1の先端部を収納し,穴部5aより金型5内に樹脂外筒1と同材質の溶融樹脂6を流し込んで固化させる射出成形により閉蓋する。
冷却して金型5から取り出すと,第3図で示すように樹脂外筒1の先端は樹脂6により完全に密封・閉蓋される。
このように成形を利用することにより,温度検出部がどんな形状であっても,熟練を要せず,短時間で容易に先端密封加工ができ,防水性,耐湿性,電気絶縁性にすぐれた温度センサとすることができる。
また,第4図のように,温度検出部として測温抵抗素子41を用いて樹脂6で上述の成形を利用して密封してもよく,また,第5図のように温度検出部としてサーミスタ42を用いてもよい。
(5)発明の要約
以上述べたように,この発明は,樹脂外筒先端の温度検出部を金型内に収納して溶融樹脂を流し込んで固化し,温度検出部を密封してなる温度センサである。
(6)発明の効果
このように成形を利用することにより,複雑な形状の温度検出部であっても溶融樹脂が十分行きわたり,熟練を要せず,短時間に容易に確実な密封加工ができ,防水性,耐湿性,絶縁性にすぐれ,高信頼性の温度センサとすることができる。」(公報第1頁左下欄第8行~第2頁右上欄第2行)
イ 「
」
ウ 上記イの第1図の記載から、「導線3」は2本であることが見て取れる。
(2)上記ア~ウから、上記引用文献3には、以下の技術事項(以下「引用文献3の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「合成樹脂よりなる樹脂外筒1内に,樹脂被覆2で覆われた熱電対線のような2本の導線3を収納し,樹脂外筒1の先端から突出した導線3をねじって強固にして先端を溶接し,温度検出部としての熱接点4を形成し,
金型5内に樹脂外筒1と同材質の溶融樹脂6を流し込んで固化させる射出成形により閉蓋し,
冷却して金型5から取り出すと,樹脂外筒1の先端は樹脂6により完全に密封・閉蓋された,
防水性,耐湿性,電気絶縁性にすぐれた温度センサ。」
第7 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明1を対比する。
ア 引用発明1の「カーエアコンに使用する自動車の外気温度検出センサ部材」と、本願発明1の「被検者の呼吸気の温度変化を検出する感熱素子」とは、「温度変化を検出する感熱素子」で共通する。
イ
(ア)引用発明1の「出力端子2a、2b」が金属のような導電性のある材料で形成されたものであることは自明であるから、引用発明1の「出力端子2a、2b」は、本願発明1の「それぞれが金属線を有する一対の線材」に相当する。
(イ)引用発明1の「サーミスタ1」が熱を検知するものであることは自明であるから、引用発明1の「サーミスタ1」は、本願発明1の「感熱部」に相当する。
(ウ)すると、引用文献1の「出力端子2a、2bがインサート成形で貫通固定される取付基板部Bを具備し、この取付基板部Bに対向する端面が解放面とされたほぼ直方体筒状のベースコネクタ3Aが設けられ、出力端子2a、2bの取付基板部Bからの突出端にはサーミスタ1が固定され」ることと、本願発明1の「それぞれが金属線を有する一対の線材の当該金属線同士を接合して当該線材の長手方向の先端部に感熱部を形成する工程」とは、「それぞれが金属線を有する一対の線材の長手方向の先端部に感熱部を形成する工程」である点で共通する。
ウ
(ア)引用発明1の「上型11aと下型11bからなる成形型」は、本願発明1の「金型」に相当する。
(イ)引用発明1の「ベースコネクタ3A」と、本願発明1の「筒状部材」とは、「感熱部」の「支持部材」である点で共通する。
(ウ)すると、引用発明1の「ベースコネクタ3Aに、サーミスタ1と出力端子2a、2bを覆って固設配置されるほぼ直方体状の防水遮断部10のキャビティを形成する上型11aと下型11bとが、ベースコネクタ3Aを覆って配設され」ることと、本願発明1の「前記筒状部材の一部と前記感熱部を金型のキャビティ内に配置する工程」とは、「前記感熱部の支持部材の一部と前記感熱部を金型のキャビティ内に配置する工程」である点で共通する。
エ
(ア)引用発明1の「上型11aと下型11bからなる成形型の、サーミスタ1の出力端子2a、2bとは反対側の方向に位置する面に」「形成され」た「充填材注入口12」は、本願発明1の「前記金型における前記先端部に対向する位置に配置されたゲート」に相当する。
(イ)引用発明1において、「充填材注入口12には、加熱筒13のノズル部13aが対接配設され、加熱筒13に対して加熱筒13内にラム18が突出移動自在に加圧シリンダ17が取り付けられ、加圧シリンダ17のラム18が引き込まれた加熱筒13内に、ホッパ16に収容されたポリアミド系ホットメルト接着剤が防水充填材21として供給充填され、シリンダヒータ15によって所定の温度に加熱され、この加熱によって、防水充填剤21は融解されて流体状になり、このように流体状になった防水充填材21は、加圧駆動される加圧シリンダ17のラム18の突出移動によって、流動設定体20で最適に流動設定された状態で、ノズル部13aを介して、充填材注入口12からキャビティ内に高圧で押し込み充填され」ることにより、「防水充填材21」が「充填材注入口12からキャビティ内に」、「ベースコネクタ3A」、「出力端子2a、2b」及び「サーミスタ1」の軸方向にそって、射出されることは明らかである。
(ウ)引用発明1の「防水遮断部10」は、本願発明1の「保護部」に相当するから、引用発明1の
「充填材注入口12には、加熱筒13のノズル部13aが対接配設され、加熱筒13に対して加熱筒13内にラム18が突出移動自在に加圧シリンダ17が取り付けられ、加圧シリンダ17のラム18が引き込まれた加熱筒13内に、ホッパ16に収容されたポリアミド系ホットメルト接着剤が防水充填材21として供給充填され、シリンダヒータ15によって所定の温度に加熱され、この加熱によって、防水充填剤21は融解されて流体状になり、このように流体状になった防水充填材21は、加圧駆動される加圧シリンダ17のラム18の突出移動によって、流動設定体20で最適に流動設定された状態で、ノズル部13aを介して、充填材注入口12からキャビティ内に高圧で押し込み充填され、
キャビティ内に充填された防水充填材21は、ほぼ2分間で成形硬化するので、2分経過後に上型11aと下型11bを開いて、外気温度検出センサ部材を取り出すことにより、ベースコネクタ3Aの一部、出力端子2a、2bの取付基板部Bからベースコネクタ3Aとは反対側に突出した部分及びサーミスタ1を覆う防水遮断部10が射出成形された外気温度検出センサ部材が提供される」ことと、
本願発明1の
「前記金型における前記先端部に対向する位置に配置されたゲートから前記線材の長手方向に沿って前記キャビティ内に樹脂材料を射出して前記筒状部材と前記線材との隙間に当該樹脂材料を進入させることにより、前記筒状部材の一部と前記感熱部を覆う保護部を成形する工程と、
前記保護部を前記金型から離型する工程」とは、
「前記金型における前記先端部に対向する位置に配置されたゲートから前記線材の長手方向に沿って前記キャビティ内に樹脂材料を射出して、前記支持部材の一部と前記感熱部を覆う保護部を成形する工程と、
前記保護部を前記金型から離型する工程」である点で共通する。
(2)よって、本願発明1と引用発明1は、
「温度変化を検出する感熱素子の製造方法であって、
それぞれが金属線を有する一対の線材の長手方向の先端部に感熱部を形成する工程と、
前記感熱部の支持部材の一部と前記感熱部を金型のキャビティ内に配置する工程と、
前記金型における前記先端部に対向する位置に配置されたゲートから前記線材の長手方向に沿って前記キャビティ内に樹脂材料を射出して、前記支持部材の一部と前記感熱部を覆う保護部を成形する工程と、
前記保護部を前記金型から離型する工程と、
を備えている、
製造方法。」
の発明である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
感熱素子が、本願発明1では、「被検者の呼吸気の温度変化を検出する」ものであるのに対して、引用発明1では、「カーエアコンに使用する自動車の外気温度」を検出するものである点。
(相違点2)
感熱部の構成が、本願発明1では、「それぞれが金属線を有する一対の線材の当該金属線同士を接合して当該線材の長手方向の先端部に」「形成」された「感熱部」であるのに対して、引用発明1では、「出力端子2a、2bの取付基板部Bからの突出端に」「固定され」た「サーミスタ1」である点。
(相違点3)
一対の線材について、本願発明1では、「前記一対の線材を樹脂材料からなる筒状部材で束ね」、「前記筒状部材の一部」「を金型のキャビティ内に配置」し、「前記筒状部材と前記線材との隙間に当該樹脂材料を進入させることにより、前記筒状部材の一部」「を覆う保護部を成形する」のに対して、引用発明1では、「出力端子2a、2bがインサート成形で貫通固定される取付基板部Bを具備し、この取付基板部Bに対向する端面が解放面とされたほぼ直方体筒状のベースコネクタ3Aが設けられ、」「上型11aと下型11bとが、ベースコネクタ3Aの一部を覆って配設され、」「ベースコネクタ3Aの一部、出力端子2a、2bの取付基板部Bからベースコネクタ3Aとは反対側に突出した部分及びサーミスタ1を覆う防水遮断部10が射出成形され」る点。
(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点3について先に検討する。
引用文献3の技術事項の「合成樹脂よりなる樹脂外筒1内に,樹脂被覆2で覆われた熱電対線のような2本の導線3を収納し,樹脂外筒1の先端から突出した導線3をねじって強固にして先端を溶接し,温度検出部としての熱接点4を形成」することは、本願発明1の「それぞれが金属線を有する一対の線材の当該金属線同士を接合して当該線材の長手方向の先端部に感熱部を形成する工程と、前記一対の線材を樹脂材料からなる筒状部材で束ねる工程」に相当する。
また、引用文献3に、「また,第4図のように,温度検出部として測温抵抗素子41を用いて樹脂6で上述の成形を利用して密封してもよく,また,第5図のように温度検出部としてサーミスタ42を用いてもよい。」と記載されるように、「導線3をねじって強固にして先端を溶接し,温度検出部として」「形成」された「熱接点4」は、「測温抵抗素子41」や「サーミスタ42」と同等のものであることは技術常識である。
そして、引用発明1と引用文献3の技術事項は、樹脂を射出成形することにより、感熱素子の保護部を形成する方法で共通する。
そこで、引用発明1の「出力端子2a、2bがインサート成形で貫通固定される取付基板部Bを具備し、この取付基板部Bに対向する端面が解放面とされたほぼ直方体筒状のベースコネクタ3Aが設けられ、出力端子2a、2bの取付基板部Bからの突出端にはサーミスタ1が固定され」た「外気温度検出センサ部材」に換えて、引用文献3の技術事項の「合成樹脂よりなる樹脂外筒1内に,樹脂被覆2で覆われた熱電対線のような複数本の導線3を収納し,樹脂外筒1の先端から突出した導線3をねじって強固にして先端を溶接し,温度検出部としての熱接点4を形成し」た「温度センサ」を採用することについて、引用発明1では、「カーエアコンに使用する自動車の外気温度検出センサ部材」として、「センサ部材」を自動車に取り付ける具体的構成等と組み合わせて「コネクタ3A」を設計しているのであって、これを引用文献3の技術事項のような「樹脂外筒1」内に「樹脂被覆2」で覆われた「導線3」を収納する構成とすることに積極的な動機付けがあるとはいえない。
しかし、引用発明1の「コネクタ3A」に換えて、引用文献3の技術事項の「樹脂外筒1」等を採用することを、阻害する要因があるとまではいえないから、当業者が容易に想到し得るといえる余地がないわけではない。
さて、上記引用発明1に引用文献3の技術事項を採用した場合、「合成樹脂よりなる樹脂外筒1内に,樹脂被覆2で覆われた熱電対線のような2本の導線3を収納し,樹脂外筒1の先端から突出した導線3をねじって強固にして先端を溶接し,温度検出部としての熱接点4を形成し」た後、「防水遮断部10のキャビティを形成する上型11aと下型11bとが、」「樹脂外筒1」「の一部を覆って配設され、」
「上型11aと下型11bからなる成形型の、」「樹脂外筒1」「とは反対側の方向に位置する面」(熱接点4に対向する面)「に充填材注入口12が形成され、
充填材注入口12には、加熱筒13のノズル部13aが対接配設され、加熱筒13に対して加熱筒13内にラム18が突出移動自在に加圧シリンダ17が取り付けられ、加圧シリンダ17のラム18が引き込まれた加熱筒13内に、ホッパ16に収容されたポリアミド系ホットメルト接着剤が防水充填材21として供給充填され、シリンダヒータ15によって所定の温度に加熱され、この加熱によって、防水充填剤21は融解されて流体状になり、このように流体状になった防水充填材21は、加圧駆動される加圧シリンダ17のラム18の突出移動によって、流動設定体20で最適に流動設定された状態で、ノズル部13aを介して、充填材注入口12からキャビティ内に高圧で押し込み充填され」ることになる。
そして、この「充填材注入口12からキャビティ内に高圧で押し込み充填され」る際に、本願発明1と同様、「前記金型における前記先端部に対向する位置に配置されたゲートから前記線材の長手方向に沿って前記キャビティ内に樹脂材料を射出して前記筒状部材と前記線材との隙間に当該樹脂材料を進入させること」になる。
しかし、引用発明1及び引用文献3の技術事項に加え、引用文献1及び3の全記載事項を参照しても、本願発明1の「前記金型における前記先端部に対向する位置に配置されたゲートから前記線材の長手方向に沿って前記キャビティ内に樹脂材料を射出して前記筒状部材と前記線材との隙間に当該樹脂材料を進入させること」により、「熱電対を構成する一対の金属線の接合部が感熱部を形成する場合において、流動する樹脂が金属線を感熱素子の長手方向と直交する向きに変位させる現象を抑制できる。これにより、感熱素子を包囲する保護部の樹脂の厚みの方向依存性を抑制できる。」(本願明細書段落【0010】)、「キャビティ内に射出された樹脂が、筒状部材の先端縁における線材との隙間に進入し、固化時における保護部、線材、および筒状部材の結合を強固にできる。これにより、使用時における保護部の脱落が防止され、感熱部の保護性が向上する。特に、感熱素子の長手方向に樹脂が射出される場合、先端縁と線材との隙間に樹脂を導入しやすくできる。」(本願明細書段落【0013】)という作用効果を奏し得ることまで、当業者が容易に想到し得るとはいえない。
してみると、引用発明1及び引用文献3の技術事項に加え、引用文献1及び3の全記載事項を参照しても、上記本願発明1が奏し得る有利な効果は当業者が容易に想到し得るとはいえないのであるから、阻害要因があるとまではいえないことのみをもって、引用発明1に引用文献3の技術事項を採用して、相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を得ることが、当業者が容易になし得たことということはできない。
なお、引用文献2には、射出形成後に、不要な部分を切り落とすという周知技術が記載されるのみである。
(4)結論
以上検討のとおり、引用発明1において、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1、引用文献2の記載事項及び引用文献3の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本願発明2~4について
本願発明2~4は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明1、引用文献2の記載事項及び引用文献3の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第8 付言
当審拒絶理由1では、補正0により補正された請求項5~9に係る発明に対して、引用文献A(引用文献3)を主引用例として、特許法第29条第2項(進歩性)の拒絶理由を通知しているから、本願発明1についても、引用文献A(引用文献3)を主引用例とする特許法第29条第2項(進歩性)の要件について、参考までに、下記で検討する。
1 引用文献A(引用文献3)について
引用文献Aには、上記第6の3(1)で摘記した記載事項がある。
そして、上記記載事項イの第2図の記載から、「穴部5a」は「金型5」の側面にあり、「穴部5a」より、「導線3」の軸方向に直交する方向から「溶融樹脂6」を流し込むことが見て取れる。
すると、上記記載事項から、上記引用文献Aには、以下の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
「合成樹脂よりなる樹脂外筒1内に,樹脂被覆2で覆われた熱電対線のような複数本の導線3を収納し,樹脂外筒1の先端から突出した導線3をねじって強固にして先端を溶接し,温度検出部としての熱接点4を形成し,
金型5の空間内に熱接点4,樹脂外筒1の先端部を収納し,金型5の側面にある穴部5aより金型5内に導線3の軸方向に直交する方向から樹脂外筒1と同材質の溶融樹脂6を流し込んで固化させる射出成形により閉蓋し,
冷却して金型5から取り出す,
防水性,耐湿性,電気絶縁性にすぐれた温度センサの製造方法。」
2 対比・判断
(1)本願発明1と引用発明Aを対比する。
ア 引用発明Aの「防水性,耐湿性,電気絶縁性にすぐれた温度センサ」と、本願発明1の「被検者の呼吸気の温度変化を検出する感熱素子」とは、「温度変化を検出する感熱素子」で共通する。
イ 引用発明Aの「樹脂被覆2で覆われた熱電対線のような2本の導線3」、「導線3をねじって強固にして先端を溶接し,」「形成し」た「温度検出部としての熱接点4」及び「合成樹脂よりなる樹脂外筒1」は、それぞれ、本願発明1の「それぞれが金属線を有する一対の線材」、「当該金属線同士を接合して当該線材の長手方向の先端部に」「形成」した「感熱部」及び「樹脂材料からなる筒状部材」に相当する。
よって、引用発明Aの「合成樹脂よりなる樹脂外筒1内に,樹脂被覆2で覆われた熱電対線のような2本の導線3を収納し,樹脂外筒1の先端から突出した導線3をねじって強固にして先端を溶接し,温度検出部としての熱接点4を形成」することは、本願発明1の「それぞれが金属線を有する一対の線材の当該金属線同士を接合して当該線材の長手方向の先端部に感熱部を形成する工程と、前記一対の線材を樹脂材料からなる筒状部材で束ねる工程」に相当する。
ウ 引用発明Aの「金型5」、「穴部5a」、「空間」及び「溶融樹脂6」は、それぞれ、本願発明1の「金型」、「ゲート」、「キャビティ」及び「樹脂材料」に相当する。
よって、引用発明Aの「金型5の空間内に熱接点4,樹脂外筒1の先端部を収納し,金型5の側面にある穴部5aより金型5内に導線3の軸方向に直交する方向から樹脂外筒1と同材質の溶融樹脂6を流し込んで固化させる射出成形により閉蓋」することと、本願発明1の「前記筒状部材の一部と前記感熱部を金型のキャビティ内に配置する工程と、前記金型における前記先端部に対向する位置に配置されたゲートから前記線材の長手方向に沿って前記キャビティ内に樹脂材料を射出して前記筒状部材と前記線材との隙間に当該樹脂材料を進入させることにより、前記筒状部材の一部と前記感熱部を覆う保護部を成形する工程」とは、「前記筒状部材の一部と前記感熱部を金型のキャビティ内に配置する工程と、前記金型に配置されたゲートから前記キャビティ内に樹脂材料を射出することにより、前記筒状部材の一部と前記感熱部を覆う保護部を成形する工程」で共通する。
エ 引用発明Aの「冷却して金型5から取り出す」ことは、本願発明1の「前記保護部を前記金型から離型する工程」に相当する。
(2)よって、本願発明1と引用発明Aは、
「温度変化を検出する感熱素子の製造方法であって、
それぞれが金属線を有する一対の線材の当該金属線同士を接合して当該線材の長手方向の先端部に感熱部を形成する工程と、
前記一対の線材を樹脂材料からなる筒状部材で束ねる工程と、
前記筒状部材の一部と前記感熱部を金型のキャビティ内に配置する工程と、
前記金型に配置されたゲートから前記キャビティ内に樹脂材料を射出することにより、前記筒状部材の一部と前記感熱部を覆う保護部を成形する工程と、
前記保護部を前記金型から離型する工程と、
を備えている、
製造方法。」
の発明である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点a)
感熱素子が、本願発明1では、「被検者の呼吸気の温度変化を検出する」ものであるのに対して、引用発明Aでは、温度検出の対象が明らかでない点。
(相違点b)
樹脂材料の射出方法が、本願発明1では、「前記金型における前記先端部に対向する位置に配置されたゲートから前記線材の長手方向に沿って前記キャビティ内に樹脂材料を射出して前記筒状部材と前記線材との隙間に当該樹脂材料を進入させる」のに対して、引用発明Aでは、「金型5の側面にある穴部5aより金型5内に導線3の軸方向に直交する方向から樹脂外筒1と同材質の溶融樹脂6を流し込」む点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点bについて先に検討する。
上記第6の1(2)に記載したとおり、引用文献1には引用発明1が記載されている。
そして、上記第7の1(1)エで検討したとおり、引用発明1と本願発明1は、「前記金型における前記先端部に対向する位置に配置されたゲートから前記線材の長手方向に沿って前記キャビティ内に樹脂材料を射出して、前記筒状部材の一部と前記感熱部を覆う保護部を成形する工程」を有する点で共通する。
また、両者は、樹脂を射出成形することにより、感熱素子の保護部を形成する方法で共通する。
そこで、引用発明Aの「金型5の側面にある穴部5aより金型5内に導線3の軸方向に直交する方向から樹脂外筒1と同材質の溶融樹脂6を流し込」む方法に換えて、引用発明1の「充填材注入口12には、加熱筒13のノズル部13aが対接配設され、加熱筒13に対して加熱筒13内にラム18が突出移動自在に加圧シリンダ17が取り付けられ加圧シリンダ17のラム18が引き込まれた加熱筒13内に、ホッパ16に収容されたポリアミド系ホットメルト接着剤が防水充填材21として供給充填され、シリンダヒータ15によって所定の温度に加熱され、この加熱によって、防水充填剤21は融解されて流体状になり、このように流体状になった防水充填材21は、加圧駆動される加圧シリンダ17のラム18の突出移動によって、流動設定体20で最適に流動設定された状態で、ノズル部13aを介して、充填材注入口12からキャビティ内に高圧で押し込み充填され」る方法を採用し、本願発明1の「前記金型における前記先端部に対向する位置に配置されたゲートから前記線材の長手方向に沿って前記キャビティ内に樹脂材料を射出して」「、前記筒状部材の一部と前記感熱部を覆う保護部を成形する工程」とすることについて、積極的な動機付けがあるとはいえないが、阻害要因があるとまではいえないから、当業者が容易に想到し得るといえる余地がないわけではない。
さて、上記引用発明Aに引用発明1の射出形成方法を採用した場合、「金型5の空間内に熱接点4,樹脂外筒1の先端部を収納し,金型5の」「熱接点4」と対向する面にある「穴部5aより金型5内に導線3の軸方向に」沿って「樹脂外筒1と同材質の溶融樹脂6を流し込んで固化させる射出成形により閉蓋」することとなり、本願発明1の「前記金型における前記先端部に対向する位置に配置されたゲートから前記線材の長手方向に沿って前記キャビティ内に樹脂材料を射出」する構成と同じ構成が得られることとなる。
しかし、引用発明A及び引用発明1に加え、引用文献A及び1の全記載事項を参照しても、本願発明1の「前記金型における前記先端部に対向する位置に配置されたゲートから前記線材の長手方向に沿って前記キャビティ内に樹脂材料を射出」することにより、「前記筒状部材と前記線材との隙間に当該樹脂材料を進入させること」となって、「熱電対を構成する一対の金属線の接合部が感熱部を形成する場合において、流動する樹脂が金属線を感熱素子の長手方向と直交する向きに変位させる現象を抑制できる。これにより、感熱素子を包囲する保護部の樹脂の厚みの方向依存性を抑制できる。」(本願明細書段落【0010】)、「キャビティ内に射出された樹脂が、筒状部材の先端縁における線材との隙間に進入し、固化時における保護部、線材、および筒状部材の結合を強固にできる。これにより、使用時における保護部の脱落が防止され、感熱部の保護性が向上する。特に、感熱素子の長手方向に樹脂が射出される場合、先端縁と線材との隙間に樹脂を導入しやすくできる。」(本願明細書段落【0013】)という作用効果を奏し得ることまで、当業者が容易に想到し得るとはいえない。
してみると、引用発明A及び引用発明1に加え、引用文献A及び1の全記載事項を参照しても、上記本願発明1が奏し得る有利な効果は当業者が容易に想到し得るとはいえないのであるから、阻害要因があるとまではいえないことのみをもって、引用発明Aに引用文献1の射出形成方法を採用して、相違点bに係る本願発明1の発明特定事項を得ることが、当業者が容易になし得たことということはできない。
なお、引用文献B(引用文献2)には、射出形成後に、不要な部分を切り落とすという周知技術が、また、引用文献C~Fには、感熱素子を呼吸気の温度測定に用いるという周知技術が、それぞれ、記載されるのみである。
第9 むすび
以上のとおり、本願発明1~4は、当業者であっても引用発明1、引用文献2の記載事項及び引用文献3の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
当審拒絶理由1及び2によっても、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-013357