特許拒絶査定不服審判
2018-011739
リニアアクチュエータ
- 審判番号
- 2018-011739
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-220156外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年08月31日
- 審決日
- 2019年07月30日
- 公報発行日
- 2019年09月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】KYB株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人後藤特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H02K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-220156「リニアアクチュエータ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月19日出願公開、特開2016- 86617、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成26年10月29日の出願であって、平成29年11月8日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成29年11月14日)、これに対し、平成30年1月11日付で意見書が提出されたが、平成30年6月5日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成30年6月19日)、これに対し、平成30年8月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
2.原査定の概要
原査定(平成30年6月5日付拒絶査定)の概要は以下のとおりである。
「(進歩性)この出願の請求項1-5に係る発明は、引用例1(特開2014-27739号公報)に記載された発明、引用例2(特開2008-253009号公報)に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
3.特許請求の範囲
出願当初の特許請求の範囲は以下のとおり(以下、請求項順に「本願発明1」~「本願発明5」という。)である。
「【請求項1】
リニアアクチュエータにおいて、
内側に筒状のヨークによって保持される複数のコイルが設けられる本体部と、
前記ヨーク内を軸方向に移動自在なロッドと、
前記ロッドに軸方向に並んで保持され、前記複数のコイルと対向するように配設される複数の永久磁石と、
前記本体部の外周部に同軸に設けられた一対のトラニオン軸と、を備え、
前記一対のトラニオン軸の少なくとも一方には、前記複数のコイルに接続される配線を引き出す貫通孔が設けられることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記リニアアクチュエータの動作状態を検出するセンサをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記センサが、ストロークセンサであることを特徴とする請求項2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記一対のトラニオン軸の一方に設けられた前記貫通孔から、前記複数のコイルに接続される配線が引き出され、
前記一対のトラニオン軸の他方に設けられた前記貫通孔から、前記センサに接続される配線が引き出されることを特徴とする請求項2または3に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記ヨークの外周部分には、軸線方向に溝部が設けられ、
前記溝部内に前記複数のコイルに接続される配線が収容されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のリニアアクチュエータ。」
4.引用例
引用例1には、図面と共に以下の事項が記載されている。
a「リニアアクチュエータ100は、第1チューブ10と、第1チューブ10の内側に摺動自在に挿入される第2チューブ20と、第1チューブ10の端部に固定され、永久磁石31を保持するロッド30と、第2チューブ20内に嵌合するように設けられ、永久磁石31と対向するコイル41を保持するコイルホルダ40と、を備える。リニアアクチュエータ100は、第1チューブ10に設けられた連結部1及び第2チューブ20に設けられた連結軸2を介して、相対移動する2つの部材間に配設される。
リニアアクチュエータ100では、コイル41に流れる電流に応じてロッド30を軸方向に駆動する推力(電磁力)が発生し、この推力に基づいて第1チューブ10及び第2チューブ20が相対変位する。これにより、リニアアクチュエータ100は、図1に示す最大収縮位置と図2に示す最大伸長位置との間で伸縮する。」(【0011】-【0012】)
b「第2チューブ20は、円筒状のベース部21と、ベース部21の一端側に固定されるインナーチューブ22と、ベース部21の他端側に固定されるガイドチューブ23と、を備える。
ベース部21は、両端が開口する筒状部材である。ベース部21の外周には、径方向に突出する一対の連結軸2が固定されている。これら連結軸2は、相対向する位置に設けられる。第2チューブ20は連結軸2を介して相対移動する2つの部材の一方に連結され、第1チューブ10は連結部1を介して相対移動する2つの部材の他方に連結される。」(【0014】-【0015】)
「ロッド30の中空部30Aには、複数の永久磁石31が軸方向に並んで保持される。永久磁石31は、円柱状に形成されており、軸方向にN極とS極が現れるように着磁されている。隣り合う永久磁石31は、同極同士が対向するように配置される。また、隣り合う永久磁石31の間には継鉄32が設けられる。なお、継鉄32は必ずしも設ける必要はなく、各永久磁石31を直接隣接するようにしてもよい。」(【0021】)
上記記載及び図面を参照すると、リニアアクチュエータは、保持部としての第1チューブと、第2チューブと、永久磁石を保持するロッドと、コイルホルダと、を備えているから、内側にコイルホルダによって保持され永久磁石と対向する複数のコイルが設けられる保持部が示されている。
上記記載及び図面を参照すると、コイルホルダ内を軸方向に移動自在なロッドが示されている。
上記記載事項からみて、引用例1には、
「リニアアクチュエータにおいて、
内側にコイルホルダによって保持され永久磁石と対向する複数のコイルが設けられる保持部と、
前記コイルホルダ内を軸方向に移動自在なロッドと、
前記ロッドに軸方向に並んで保持される複数の前記永久磁石と、
ベース部の外周に相対向する位置に設けられた一対の連結軸と、を備える
リニアアクチュエータ。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
引用例2には、図面と共に以下の事項が記載されている。
c「まず、図1に基いて本発明が採用される制振用直動形電動アクチュエータの一例を説明する。図示する制振用直動形電動アクチュエータ1には、内部に固定子2を備えた固定側本体3が設けられており、この固定側本体3の作動方向一端には固定側に軸支される反出力側ロッドエンド4が設けられている。固定側本体3の内部に設けられた固定子2には、制振用直動形電動アクチュエータ1の作動方向Aに電源の相数の整数倍で複数の鉄心5および電機子コイル6が設けられている。この実施の形態では三相電源を用いているため、12個の電機子コイル6が設けられている。また、図示する固定側本体3の下部には、電機子コイル6への電源供給口7が設けられており、この電源供給口7から三相電源が供給されている。」(【0016】)
d「そして、前記固定子2の外周における作動方向Aに、複数の電機子コイル6の各相毎の引出線16を接続する配線基板17が設けられている。図示する配線基板17は、三相の内の一相を示しており、電機子コイル6の内の一相分の引出線16が接続されている。この配線基板17は、ガラスエポキシ樹脂等によって製作され、予め接続する電機子コイル6の数や結線方法に応じて所定のパターン回路が形成されている。引出線16と配線基板17との接続は、配線基板17に形成された接続穴(図示略)に一方から引出線16を挿入し、他方の引出線端部を配線基板17に半田付けすることによって行われる。この配線基板17は、鉄心5にボルト18で固定されている。また、電源供給部7の配線が接続部19に接続されている(図では一相分を示す。)。」(【0019】)
5.対比
そこで、本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明のコイルホルダは永久磁石と対向するから、永久磁石はコイルホルダと対向するので、引用発明の「前記ロッドに軸方向に並んで保持される複数の前記永久磁石」は、本願発明1の「前記ロッドに軸方向に並んで保持され、前記複数のコイルと対向するように配設される複数の永久磁石」に相当する。
本願明細書【0011】に「本体部」の構成として「リニアアクチュエータ100は、本体部としての第1チューブ10と、第1チューブ10の外周に摺動自在に設けられる第2チューブ20と、第2チューブ20の端部に固定され、永久磁石31を保持するロッド30と、第1チューブ10内に嵌合するように設けられ、永久磁石31と対向するコイル41を保持するヨーク40と、を備える。」とあるから、引用発明においても、第1チューブと、第2チューブと、永久磁石を保持するロッドと、コイルホルダとを備える保持部が「本体部」に相当する。
引用発明において、ベース部は第2チューブの一部であり、第2チューブは保持部の一部であるから、ベース部は保持部の一部となり、引用発明の「連結軸」は、本願発明1の「トラニオン軸」に相当するので、引用発明の「ベース部の外周に相対向する位置に設けられた一対の連結軸」は、本願発明1の「前記本体部の外周部に同軸に設けられた一対のトラニオン軸」に相当する。
引用発明の「内側に永久磁石と対向するコイルホルダによって保持される複数のコイルが設けられる本体部」と、本願発明1の「内側に筒状のヨークによって保持される複数のコイルが設けられる本体部」は、「内側に保持される複数のコイルが設けられる本体部」の点で一致する。
引用発明の「前記コイルホルダ内を軸方向に移動自在なロッド」と、本願発明1の「前記ヨーク内を軸方向に移動自在なロッド」は、「前記本体部内を軸方向に移動自在なロッド」の点で一致する。
したがって、両者は、
「リニアアクチュエータにおいて、
内側に保持される複数のコイルが設けられる本体部と、
前記本体部内を軸方向に移動自在なロッドと、
前記ロッドに軸方向に並んで保持され、前記複数のコイルと対向するように配設される複数の永久磁石と、
前記本体部の外周部に同軸に設けられた一対のトラニオン軸と、を備える
リニアアクチュエータ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
〔相違点1〕
本願発明1は、複数のコイルが筒状のヨークによって保持され、ロッドがヨーク内を軸方向に移動自在であるのに対し、引用発明は、複数のコイルがコイルホルダによって保持され、ロッドがコイルホルダ内を軸方向に移動自在である点。
〔相違点2〕
本願発明1は、一対のトラニオン軸の少なくとも一方には、複数のコイルに接続される配線を引き出す貫通孔が設けられるのに対し、引用発明は、この様な構成を有していない点。
6.判断
相違点1について
回転電機において、磁束が磁路を集中的に通過できるようにヨークを設けることは慣用手段であるから、引用発明1においても、コイルホルダにヨークを設けてコイルを保持することは当業者が必要に応じて適宜なし得ることと認められる。
相違点2について
引用発明は、本体部の外周部に同軸に設けられた一対のトラニオン軸を備えてはいるが、当該トラニオン軸を軸以外の使い方をすることは引用例1に記載も示唆も無く、コイルの配線をどの様に外部にひき出すかについても引用例1に記載も示唆も無い。
また、回転電機において、配線を外部に引き出すため本体ケースに電源供給口を設けることは慣用手段であって、引用例2には、電源供給口から配線を引き出すことは記載はあるが、引用例2には、通常配線引き出しのために用いない既存の部材を配線引き出しのために用いることは記載も示唆も無い。
そうであれば、引用発明において、一対のトラニオン軸の少なくとも一方に、軸以外の機能を持たせて、複数のコイルに接続される配線を引き出す貫通孔を設けることは、当業者が容易に考えられたとすることはできない。
7.むすび
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用例2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。本件請求項2~5は本件請求項1の従属項であるから、本願発明1が引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないので、本願発明2~5も同様に当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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