特許拒絶査定不服審判
2018-003255
立体造形物の製造方法
- 審判番号
- 2018-003255
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-132280外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年03月06日
- 審決日
- 2019年08月26日
- 公報発行日
- 2019年11月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】カシオ計算機株式会社
- 分類
- P18 .121-WY (B41M) / P18 .537-WY (B41M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-132280「立体造形物の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月24日出願公開、特開2016-196190、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月5日に出願された特願2012-48134号(以下、「原々出願」という。)の一部を新たな特許出願とした特願2015-82417号の一部を、更に平成28年7月4日に新たな特許出願とした出願であって、同月13日付けで手続補正がされ、平成29年4月7日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月22日付けで手続補正がされ、同年11月13日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成30年3月6日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、その後、当審において、同年11月29日付けで拒絶理由通知がされ、平成31年2月20日付けで手続補正がされ、同年4月22日付けで拒絶理由通知がされ、令和1年6月14日付け手続補正書(以下「本件補正書」という。)により手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、本件補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートにおける前記熱膨張層上に、主要部と背景を含む第1の画像を印刷する第1画像印刷ステップと、
前記熱膨張性シートの他面側に第2の画像を印刷する第2画像印刷ステップと、
前記第2画像印刷ステップで印刷された前記第2の画像に向けて前記熱膨張性シートの前記他面側から、前記熱膨張層における所定の領域を熱膨張させることが可能な熱を前記第2の画像が帯びるように光を照射する光照射ステップと、
を有し、
前記第2の画像は、濃色部と淡色部とを有し、前記第1の画像の主要部に対応する領域に所定の筆触又は筆致を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定され、かつ前記第1の画像の背景に対応する領域に所定の生地を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定されて印刷されることで、前記第1の画像の主要部に対応する領域には、前記所定の筆触又は筆致に対応するように、筆跡や隆起高さを有する凹凸模様が形成され、前記第1の画像の背景に対応する領域には、前記所定の生地に対応するように、所定の目の粗さや隆起高さを有する凹凸模様が形成されることを特徴とする立体造形物の製造方法。
【請求項2】
一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートにおける他面側に第2の画像を描画する描画ステップと、
前記描画ステップで描画された前記第2の画像に向けて前記熱膨張性シートの前記他面側から、前記熱膨張層における所定の領域を熱膨張させることが可能な熱を前記第2の画像が帯びるように、光を照射する光照射ステップと、
を有し、
前記第2の画像は、濃色部と淡色部とを有し、前記熱膨張性シートの前記一面側に描画される第1の画像は主要部と背景を含み、前記第1の画像の主要部に対応する領域に所定の筆触又は筆致を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定され、かつ当該第1の画像の背景に対応する領域に所定の生地を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定されて印刷されることで、前記第1の画像の主要部に対応する領域には、前記所定の筆触又は筆致に対応するように、筆跡や隆起高さを有する凹凸模様が形成され、前記第1の画像の背景に対応する領域には、前記所定の生地に対応するように、所定の目の粗さや隆起高さを有する凹凸模様が形成されることを特徴とする立体造形物の製造方法。
【請求項3】
前記第2の画像は、前記光照射ステップで光が照射されることにより前記熱膨張層における前記第1の画像に対応した領域を熱膨張させることが可能な熱を帯びる画像として設定されていることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の立体造形物の製造方法。
【請求項4】
前記第1の画像の背景に対応する領域は、前記第1の画像の主要部に対応する領域を避けた領域として設定されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の立体造形物の製造方法。
【請求項5】
一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートにおける前記熱膨張層上に、主要部と背景を含む彩色画像を印刷する彩色画像印刷ステップと、
前記熱膨張性シートの他面側にモノクロ画像を印刷するモノクロ画像印刷ステップと、
前記モノクロ画像印刷ステップで印刷された前記モノクロ画像に向けて前記熱膨張性シートの前記他面側から、前記熱膨張層における所定の領域を熱膨張させることが可能な熱を前記モノクロ画像が帯びるように光を照射する光照射ステップと、
を有し、
前記モノクロ画像は、濃色部と淡色部とを有し、前記彩色画像の主要部に対応する領域に所定の筆触又は筆致を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定され、かつ前記彩色画像の背景に対応する領域に所定の生地を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定されて印刷されることで、前記彩色画像の主要部に対応する領域には、前記所定の筆触又は筆致に対応するように、筆跡や隆起高さを有する凹凸模様が形成され、前記彩色画像の背景に対応する領域には、前記所定の生地に対応するように、所定の目の粗さや隆起高さを有する凹凸模様が形成されることを特徴とする立体造形物の製造方法。
【請求項6】
前記モノクロ画像は、前記光照射ステップで光が照射されることにより前記熱膨張層における前記彩色画像に対応した領域を熱膨張させることが可能な熱を帯びる画像として設定されていることを特徴とする請求項5に記載の立体造形物の製造方法。
【請求項7】
前記彩色画像の背景に対応する領域は、前記彩色画像の主要部に対応する領域を避けた領域として設定されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の立体造形物の製造方法。」
第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2001-150812号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発泡性シートを選択的に発泡させて造形を行う発泡造形技術に関する。」
(2) 「【0029】<造形の原理>図2は、発泡性シート9の断面図である。なお、この断面図は、説明の便宜上、厚み方向寸法を拡大して示している。この図を参照しながら、半立体画像の造形の原理を説明する。
【0030】発泡性シート9は、図2(a)のように、基材層91と、基材層91上に積層された発泡層92とを有している。
【0031】基材層91は、後述する光LTを実質的に散乱反射する表面91Sを有している。
【0032】発泡層92は、空間分布した多数のマイクロカプセル93と、これらのマイクロカプセル93を覆う被覆部94とを備えている。
【0033】マイクロカプセル93は、プロパン、ブタンその他の低沸点気化性物質を塩化ビニルデン-アクリロニトリル、メタクリル酸エステル-アクリル酸コポリマー、塩化ビニリデン-アクリル酸コポリマー、塩化ビニリデン-アクリル酸エステルコポリマー等の熱可塑性樹脂でカプセル化したものであり、大きさは粒径10~30μm程度である。このマイクロカプセル93を加熱すると、所定の温度に達した時にマイクロカプセル93内の物質が気化しはじめ、マイクロカプセル93が膨張することとなる。
【0034】被覆部94は、例えば酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性被覆剤を使用してマイクロカプセル93がほぼ一様な密度に分布するように固定するとともに、基材層91と発泡層92との接合を行う。
【0035】そして、図2(b)に示すように、基材層91の下側の表面91Sに、光吸収性パターン95を形成する。光吸収性パターン95は、光吸収性の低いパターン95aと、光吸収性の高いパターン95bとの組合せで構成されている。この光吸収性の低いパターン95aおよび高いパターン95bは、互いに異なる材料で形成してもよく、また単一の材料を用いる場合には面積階調法により濃淡を形成してもよい。これのうち、光吸収度が互いに異なる複数の材料の例としては、黒色トナーと灰色トナーとの組合せがある。灰色トナーは、たとえば黒色トナーと白色トナーとの混合物として得られる。この例のように、「光吸収度が互いに異なる複数の材料」は、特定の光吸収性材料(上記の例の場合は黒色トナー)の含有割合に応じて光吸収度が異なったものとなってる混合物の組であってもよい。そして、このように光吸収性(光吸収度)の大小は、着色の濃淡(濃度)によって実現可能であり、このように光吸収性材料の可視的な濃淡によって光吸収パターン95を形成すると、実際に発泡させる前の状態でも、基材層91上の光吸収性パターン95を視覚的に見ただけで、発泡パターン上の高さ分布を視覚的に予測して確認することができるという利点がある。
【0036】光吸収性パターン95に対して、赤外線を含む光LTを一様に照射すると、光吸収性パターン95が光LTを吸収して熱TMが発生し、その熱の空間パターンが基材層91を伝導して発泡層92に至る。そして、この熱TMにより、発泡層92内のマイクロカプセル93が膨張して、選択的に隆起する隆起部96(96a、96b)が生じる。ここで、光吸収性の低いパターン95aにおいて発生する熱量は、光吸収性の高いパターン95bで発生する熱量よりも小さいため、隆起部96aの発泡高さHaは、隆起部96bの発泡高さHbよりも低くなる。
(3) 「【0041】<造形の手順>図5は、半立体画像を造形する手順を説明する図である。ここで、図5(e)~(f)は、図5(a)のPa-Pa位置、図5(b)のPb-Pb位置、図5(c)のPc-Pc位置、および図5(d)のPd-Pd位置から見た断面図を示している。また、図6は、造形のための発泡性シート9に形成する画像を示す図である。以下では、発泡性シートを使用して半立体画像の造形を行うプロセスを説明し、このプロセスを自動的に行う発砲造形システムについては後述する。
【0042】まず、図5(a)に示す発泡性シート9(図2(a)に示すものと同じ)を準備する。
【0043】そして、図5(b),(f)のように、発泡性シート9の発泡層92の表面上に、2次元画像データDPに基づき、カラー画像などの可視的な平面画像97を形成する。
【0044】平面画像97は、例えば図6(a)に示すように、2次元画像データDPにおいて、魚モデルMDaおよび水草モデルMDbに対応する魚画像97aおよび水草画像97bと、立体モデルMDに無関係な方形状の枠を表す枠画像97cとで構成される。この枠画像97cは、魚画像97aと水草画像97bとの組合せに関する額縁の役割を果たしている。
【0045】次に、図5(c),(g)のように、発泡性シート9の発泡層92の裏面に相当する基材層91の表面上に、既述した方法で予め取得している距離画像データDSなどに基づき、濃淡画像の光吸収性パターン95を形成する。
【0046】光吸収性パターン95は、例えば図6(b)に示すように、魚モデルMDaに対応する魚パターン95fと、方形状の枠を表す枠パターン95gとで構成されている。
【0047】魚パターン95fは、魚モデルMDaの距離画像データDSにおいて、距離データが示す立体形状の各部の高さに応じて濃淡をつけたもので、魚パターン95fの中央に向かうほど、濃い色となっている。この濃淡表現は、数段階による高さ表現から、実質的に連続な高さ分布による表現まで種々のものを利用できる。この例の「魚」のように自然物をモデルとする場合には比較的多くの段階、たとえば8段階~32段階程度またはそれ以上の段階で高さ分布を表現することが好ましい。この実施形態でも繊細な高さ表現がきるように段階数を比較的多くとっているが、図6(b)では図示の便宜上、少数の濃淡領域だけで濃淡分布を表現している。一般に、濃淡のN段階(Nは2以上の整数、好ましくは3以上の整数)で高さ分布を表現する場合には、最も高いレベルの領域は最高濃度の「黒」であり、(N-2)個の中間レベルはそれぞれ濃さが異なる「灰色」である。また、最も低い濃度レベルの領域(つまり図1の背景面IPと同程度の高さの領域)は「白」であって、この「白」領域は実質的に着色媒体を付さないことによって表現することができる。図示例の場合には、図1の魚モデルMDaから後方にに離れた位置に背景面IPを設定しており、元の高さ分布において魚モデルMDaの範囲内にはゼロレベルの部分がないため、図6(b)の魚パターン95fには「白」の領域はない。また、この実施形態では、基礎データDOによって表現されている魚モデルMDaの高さ分布においては、その最大高さが発泡性シート9における発泡層92の制御限界高さHcを越えているが、既述した変換(より詳細な変換式は後述)によって、最大高さが実質的にする制御限界高さHcとなるようにスケーリングされている。
【0048】また、魚パターン95fは、魚画像97aの位置に整合している。この場合、距離画像データDSは、魚モデルMDaと水草モデルMDbとのデータを有しているが、このデータうちの一部つまり水草モデルMDbを除く魚モデルMDaのみを光吸収性パターン95に反映している。つまり、魚パターン95fは、距離画像データDSにおいて造形すべき選択画像データに対応するものとなっている。このように、光吸収性パターン95は、距離画像データDSの一部に対応する濃淡画像のパターンとして形成してもよく、そのかわりに距離画像データDSの全体にわたって形成してもよい。
【0049】枠パターン95gは、濃淡がなく一様の濃度で着色されている。また、枠パターン95gは、距離画像データDSとは無関係に形成された幾何学的な画像パターンである。これは、上記の選択画像データに追加される追加画像データに対応するものである。
【0050】最後に、図5(d)に示すように、濃淡画像の光吸収性パターン95が形成されている基材層91側から、光LTを照射する。これにより、図5(h)に示すように、隆起部96f、96gが生成される。隆起部96fは、画像パターン95fで中央に向かうほど濃い色となっているため、中央に向かうほど発泡高さが大きくなっている。一方、隆起部96gは、画像パターン95gが一様に着色されているため、その発泡高さも等しくなっている。」
(4) 「【0066】<発泡造形システム1の動作>図9は、発泡造形システム1の動作の概要を説明するフローチャートであり、以下に示すデータ処理および制御動作は、図7に示すデータ処理部50に内蔵されたマイクロコンピュータによってソフト的に実行される。
【0067】ステップS1では、立体モデルMDの距離画像データDSに基づき、造形データDZを生成する。この詳細については、後述する。
【0068】ステップS2では、画像印刷部20にて、発泡性シート9の発泡層92の表面上にに平面画像97を印刷する。つまり、画像印刷部20に搬送されてきた発泡性シート9につき、2次元画像データDPに応じて露光器21およびロータリー式現像器22を駆動し、電子写真と同様の静電転写により、各カラートナーを付与して現像する。そして、トナーが付与された発泡性シート9がヒートローラ26によって搬送されつつ加熱され、各トナーが定着される。このヒートローラ26による加熱では、発泡性シート9において実質的に発泡が生じる臨界温度以下の温度で加熱を行なう。このときには、発泡性シート9の先端部が表裏反転機構30の中に入り込むが、この段階では表裏反転機構30は単なるバッファ部として機能し、表裏反転動作は行わない。この時点での発泡性シート9の表面は、図5(b),(f)に示すものとなる。
【0069】ステップS3では、表裏反転機構30により発泡性シート9の表裏を反転する。つまり、ステップS2で平面画像97が印刷された発泡性シート9を反転させることで、平面画像97が印刷された発泡性シート9の反対面に、光吸収性パターン95の印刷が可能となる。
【0070】ステップS4では、発泡性シート9の基材層91に光吸収性パターン(濃淡画像)95を印刷する。つまり、表裏反転機構30により表裏が反転された発泡性シート9を再び画像印刷部20に戻し、ステップS2中のひとつの色に対する動作と同様の動作を行って、発泡性シート9の反対面に光吸収性パターン95を印刷する。ここでは、K色(黒色)のトナーのみを用いた面積階調法により、濃淡画像を形成する。
【0071】図10は、面積階調法によって濃淡表現をした例の原理を示す概念的拡大図であり、最も濃度が高い領域に対応する図10(a)ではほぼ100%の面積割合で黒トナーKが付与され、中間程度に濃度が高い領域に対応する図10(b)ではほぼ50%の面積割合で黒トナーKが付与され、そして最も濃度が小さい領域に対応する図10(c)では実質的に黒トナーを付与していない。
【0072】そして、画像印刷部20においては、このような濃淡のパターンが、平面画像97に対して位置的に対応させて発泡層91上に形成され、図5(c),(g)に相当する状態がの発泡性シート9が得られる。
【0073】ステップS5では、造形部40において、発泡性シート9に光を照射する。つまり、両面印刷された発泡性シート9を基材層91側が上向きの状態で、搬送ベルト46により一定速度で搬送しつつ、ランプ43により光を照射する。これにより、光吸収性パターン95の濃淡の程度に応じて、発泡性シート9の発泡層92内のマイクロカプセル93が膨張して、発泡性シート9において下向きに発泡高さHを有する半立体画像が造形され、図5(d),(h)の状態が得られることとなる。」
(5) 上記(4)で摘記した段落[0068]の記載における、「平面画像97を印刷する」ことは、平面画像97を形成するために行うことは自明である。
(6) 上記(4)で摘記した段落[0070]の記載における、「光吸収性パターン(濃淡画像)95を印刷する」ことは、光吸収性パターン(濃淡画像)95を形成するために行うことも自明である。
(7) 上記(3)及び(4)で摘記した記載全体から、引用文献1には、「半立体画像を造形する方法」が記載されているものと認められる。
したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「発泡性シート9は、基材層91と、基材層91上に積層された発泡層92とを有し、
発泡層92は、空間分布した多数のマイクロカプセル93と、これらのマイクロカプセル93を覆う被覆部94とを備え、このマイクロカプセル93を加熱すると、所定の温度に達した時にマイクロカプセル93内の物質が気化しはじめ、マイクロカプセル93が膨張することとなり、
発泡性シート9の発泡層92の表面上に、2次元画像データDPに基づき、カラー画像などの可視的な平面画像97を印刷し、
発泡性シート9の発泡層92の裏面に相当する基材層91の表面上に、距離画像データDSなどに基づき、K色(黒色)のトナーのみを用いた面積階調法により、濃淡画像の光吸収性パターン95を印刷し、
平面画像97は、2次元画像データDPにおいて、魚モデルMDaおよび水草モデルMDbに対応する魚画像97aおよび水草画像97bと、立体モデルMDに無関係な方形状の枠を表す枠画像97cとで構成され、
濃淡画像の光吸収性パターン95は、魚モデルMDaに対応する魚パターン95fと、方形状の枠を表す枠パターン95gとで構成され、魚パターン95fは、魚モデルMDaの距離画像データDSにおいて、距離データが示す立体形状の各部の高さに応じて濃淡をつけたもので、魚パターン95fの中央に向かうほど、濃い色となっており、濃淡画像の光吸収性パターン95が形成されている基材層91側から、光LTを照射し、光吸収性パターン95が光LTを吸収して熱TMが発生し、その熱の空間パターンが基材層91を伝導して発泡層92に至り、この熱TMにより、発泡層92内のマイクロカプセル93が膨張して、選択的に隆起し、これにより、隆起部96f、96gが生成され、隆起部96fは、画像パターン95fで中央に向かうほど濃い色となっているため、中央に向かうほど発泡高さが大きくなっている、半立体画像を造形する方法。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2003-341216号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【発明の属する技術分野】本発明は、図柄が視覚的な立体感を有する印刷物及びその製造方法に関する。」
(2)「【0002】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、平坦な印刷面を提供するオフセット印刷やプロセス印刷等の安価な印刷技法をベースにし、これを特定の印刷技法と組み合わせることで、図柄に視覚的な立体感を有する印刷物及びその製造方法を提供することを課題とする。特に本発明は、実物の油絵にあるような立体的質感を忠実に反映させた印刷物及びその製造方法を提供することをも課題とする。」
(3)「【0009】
【発明の実施の形態】本発明の印刷物には、印刷業界で一般に知られる印刷材が使用される。そのような印刷材は、比較的平坦な表面を有し、一般的な印刷工程において絵画や字等の図柄を印刷できるものであればよく、典型的には、オフセット印刷、プロセス印刷、又はそれらに類した印刷に用いられる紙材である。例えば、はがき類、チラシ類、パンフレット類、チケット類、カレンダー、製本、又は雑誌等に用いられる紙材が挙げられる。また、本発明の印刷工程に供することができるものであれば、普通紙やコピー用紙の類でもよい。
【0010】本発明にいう「印刷面」とは、任意の図柄が印刷された面のことである。通常、前記印刷面は、図柄を描写するために塗布された有色インキ層からなる。前記印刷面が「平坦」であるとは、図柄が通常の印刷工程により平面に表現されていることを意味する。したがって、その印刷面は、インキ層が視覚的な立体感を有しない程度に平滑である。そのようなインキ層は、例えば、オフセット印刷、プロセス印刷、又はそれらに類した印刷手法によるもので、通常は数μm以下の薄層として形成される。また、多色印刷ならば、例えば、イエロー、シアン、マジェンダ及びブラックを重ね合わせるプロセス印刷により多色インキ層が形成される。本発明において前記インキ層を構成し得るインキ組成物には、無機顔料又は有機顔料と、油性、水性、乾油性若しくはアルコール性の樹脂、合成若しくは天然の樹脂又はそれらのあらゆる組合せであり得る樹脂とからなるものが含まれる。また、前記印刷面は、図柄の構成によっては、部分的にインキが載らない白紙部分が存在してもよいし、白色インキ層が存在してもよい。使用される印刷インキも、その印刷工程も、前記印刷材上に視覚的に平坦な印刷面を形成できるならば、特に限定されるものではない。あらゆる図柄が、公知のオフセット印刷装置又はプロセス印刷装置を使用して印刷されるであろう。本発明にいう「図柄」とは、任意の図柄であり特に限定されるものではないが、好ましくは、実在のモチーフの立体的構図を平面で表現したものである。最も有用と思われる図柄は、油絵の複製を目的としたカラー印刷図である。
【0011】本発明にいう「透明インキ」とは、少なくとも乾燥したときに透明性を有する印刷塗料のことであり、典型的にはニスが挙げられる。透明インキ層の形成は、一種のリストール加工であり、例えば、公知のシルクスクリーン印刷を使用して形成することができる。透明インキの例には、乾油性、油性、水性若しくはアルコール性、又は合成若しくは天然のあらゆるビヒクルが含まれるが、好ましくは、リストール加工用の公知のニス類、特に紫外線で硬化する樹脂である。いずれにしても、当業者は、使用される印刷材や前記図柄を構成する有色インキとの相性、及び採用される特定の印刷技法などに適する透明塗料を選択するであろう。
【0012】本発明の印刷物は、前記透明インキ層に起因して、平面な図柄に立体的質感を有することができる。本発明による立体的質感は、透明インキ層を介した光の屈折により透明インキ面の下に存在する印刷面が浮き上がって見えたり、透明インキ層の表面で光が反射したりすることに起因する。そのような立体的質感は、印刷面上の図柄の構成、特にその立体的構成に対応して透明インキ層の厚みに部分的な変化が与えられると、より優れたものとなる。透明インキ層を特定の立体的形状に対応する厚さで形成することは、例えば、シルクスクリーン印刷に知られる塗り重ね技法により可能である。そして、その厚さが十分に制御される好ましい透明インキ層は、後述のコンピュータを用いた版作製と塗り重ね技法とを組み合わせた工程より形成される。
【0013】本発明の主たる利点は、油絵をモチーフとする平坦な図に、実物の油絵のごとき立体感が付与されることである。特に油絵独特の刷毛塗りのタッチが感じられるようになる。この場合、実在するキャンバス面上の立体的形状に相似する表面形状が、透明インキ層の厚み変化で印刷面上に再現される。その好ましい態様は、以下のとおりである。
【0014】先ず、実物の油絵に存在する凹凸(キャンバス上の絵の具の盛り上がり)が測定される。他方、印刷面には、その油絵と同じ図柄が印刷される。そして、その図柄の上に、前記測定された凹凸とほぼ相似する凹凸を有する透明インキ層が形成される。このような透明インキ層は、その底面の図柄自体は全くの平坦であるにもかかわらず、見る者の視覚に対して、まるで図柄に凹凸が存在するかのような錯覚を与えるのである。
【0015】既に言及したように、凹凸のある透明インキ層を図柄に合わせて形成する工程も、透明インキを使用する一種の印刷である。特に凹凸を正確且つ安価に再現する方法は、レーザースキャン装置による凹凸の測定工程、コンピュータでの測定値のデータ処理工程、その測定データに基づく複数の印刷版の作製工程、及びそれら印刷版を使用する透明インキ印刷工程を含む。レーザースキャン装置を用いた測定は、キャンバス面を測定面としてレーザ走査を行い、各測定ポイントの高さを数値化する。
【0016】透明インキのシルクスクリーン印刷では、一枚の印刷版で、一定の厚みのインキ層を印刷面上に形成することができる。この場合、塗布範囲の異なる複数の印刷版を用いて透明インキを塗り重ることで、部分的に厚みの異なる透明インキ層を形成できる。塗布回数の多い部位には厚い透明インキ層が形成され、塗布回数の少ない部位には薄い透明インキ層が形成される。
【0017】すなわち、絵の具の盛り上がりが高い分布範囲ほど透明インキの塗布回数が増加するように、前記凹凸の測定データを基にして複数の印刷版が設計される。それら各印刷版を、順々に印刷面上の図柄に合わせて透明インキを印刷することにより、実物の凹凸とほぼ相似する形態の透明インキ層が形成される。なお、相似形態の比率は任意に変えてもよい。また、シルクスクリーン印刷では、塗り重ねによらず、乳剤でインキ層の厚みを増すこともできる。これによれば、一回の印刷で最大約200μmの厚みを形成することができる。本発明においても、厚みの大きな部分については乳剤で厚みを作ることとし、その分についての塗り重ねを省くことができる。例えば、最大の厚み部分について、前記塗り重ね工程によらず、1回のシルクスクリーン印刷で済ませると効率的である。この場合、塗り重ね工程の印刷範囲からは、最大の厚みに関する塗布分を差し引けばよい。本発明の好ましい態様によれば、数cm四方の比較的小さな油絵の図柄に対して、透明インキ層を約5~約200μmの厚みで形成することができ、これにより驚くほどリアルな立体感を出すことができた。
【0018】また、透明インキ層の他の利用法としては、その印刷物にキャンバス地様の質感を与えることである。この場合、透明インキ層を用いて、繊維質のキャンバス地の模様をまねた網目状の凹凸を形成するとよい。以上のように、印刷面上に再現される透明インキ層の厚みは、絵の具の盛り上がりであったり、キャンバス地に似た網目模様であったりすることができる。しかし、本発明は、それらに限らず、あらゆる立体的構図に対応して形成することができる。以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。」
したがって、上記引用文献2には、実物の油絵に存在する凹凸(キャンバス上の絵の具の盛り上がり)が測定され、他方、印刷面には、その油絵と同じ図柄が印刷され、そして、その図柄の上に、前記測定された凹凸とほぼ相似する凹凸を有する透明インキ層が形成され、透明インキ層を介した光の屈折により透明インキ面の下に存在する印刷面が浮き上がって見えたり、透明インキ層の表面で光が反射したりすることに起因する立体的質感を有することができ、印刷面上に再現される透明インキ層の厚みは、絵の具の盛り上がりであったり、キャンバス地に似た網目模様であったりすることができるという技術的事項が記載されていると認められる。
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「発泡層92」は、「空間分布した多数のマイクロカプセル93と、これらのマイクロカプセル93を覆う被覆部94とを備え、このマイクロカプセル93を加熱すると、所定の温度に達した時にマイクロカプセル93内の物質が気化しはじめ、マイクロカプセル93が膨張する」ものであるから、引用発明の「発泡層92」は、本願発明1の「熱膨張層」に相当する。
イ 引用発明の「発泡性シート9」は、「基材層91と、基材層91上に積層された発泡層92とを有」するものであるから、引用発明の「発泡性シート9」は、本願発明1の「一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シート」に相当する。
ウ 引用発明の「平面画像97」は、「発泡性シート9の発泡層92の表面上に」「印刷」されるものであるから、本願発明1の「第1の画像」と引用発明の「平面画像97」とは、「一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートにおける前記熱膨張層上に」「印刷」される「画像」である点で共通する。
エ 上記ア~ウから、引用発明の「発泡性シート9の発泡層92の表面上に、2次元画像データDPに基づき、カラー画像などの可視的な平面画像97を印刷」することは、本願発明1の「一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートにおける前記熱膨張層上に、」「画像を印刷する第1画像印刷ステップ」に相当する。
オ 引用発明の「発泡性シート9の発泡層92の裏面に相当する基材層91の表面上」は、本願発明1の「熱膨張シートの他面側」に相当する。
カ 引用発明の「濃淡画像の光吸収性パターン95」は、発泡性シート9の発泡層92の裏面に相当する基材層91の表面上に印刷されるものである。
また、引用発明では、濃淡画像の光吸収性パターン95が形成されている基材層91側から、光LTを照射すると、光吸収性パターン95が光LTを吸収して熱TMが発生し、その熱の空間パターンが基材層91を伝導して発泡層92に至り、この熱TMにより、発泡層92内のマイクロカプセル93が膨張して、選択的に隆起し、これにより、隆起部96f、96gが生成される。
それに対して、本願発明1の「第2の画像」は、「熱膨張シートの他面側に」「印刷」されるものである。
また、本願発明1の「第2の画像」は、「第2の画像に向けて前記熱膨張シートの前記他面側から」「光を照射する」と、「前記熱膨張層における所定の領域を熱膨張させることが可能な熱を」「帯びる」ものである。
したがって、本願発明の「第2の画像」と、引用発明の「濃淡画像画像の光吸収性パターン95」とは、「熱膨張シートの他面側に」「印刷」される他の画像である点で共通し、かつ、「前記熱膨張シートの前記他面側から」「光を照射する」と、「前記熱膨張層における所定の領域を熱膨張させることが可能な熱を」「帯びる」ものである点でも共通する。
さらに、本願発明1の「熱膨張性シートの他面側に第2の画像を印刷する第2画像印刷ステップ」と、引用発明の「発泡性シート9の発泡層92の裏面に相当する基材層91の表面上に、」「濃淡画像の光吸収性パターン95を印刷」することは、「熱膨張性シートの他面側に」他の「画像を印刷する第2画像印刷ステップ」である点で共通する。
キ 引用発明の「濃淡画像の光吸収性パターン95」は、「魚モデルMDaに対応する魚パターン95fと、方形状の枠を表す枠パターン95gとで構成され、魚パターン95fは、魚モデルMDaの距離画像データDSにおいて、距離データが示す立体形状の各部の高さに応じて濃淡をつけたもので、魚パターン95fの中央に向かうほど、濃い色となって」いることから、引用発明の「濃淡画像の光吸収性パターン95」は、濃色部と淡色部を有するものと認められる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「熱膨張性シートの他面側」に「印刷」された他の「画像」が、「濃色部と淡色部とを有」する点で共通する。
ク 引用発明において、「濃淡画像の光吸収性パターン95が形成されている基材層91側から、光LTを照射」すると、「光吸収性パターン95が光LTを吸収して熱TMが発生し、その熱の空間パターンが基材層91を伝導して発泡層92に至り、この熱TMにより、発泡層92内のマイクロカプセル93が膨張して、選択的に隆起し、これにより、隆起部96f、96gが生成され」ることから、本願発明1の「第2画像印刷ステップで印刷された前記第2の画像に向けて前記熱膨張性シートの前記他面側から、前記熱膨張層における所定の領域を熱膨張させることが可能な熱を前記第2の画像が帯びるように光を照射する光照射ステップ」と、引用発明の「濃淡画像の光吸収性パターン95が形成されている基材層91側から、光LTを照射」することとは、「第2画像印刷ステップで印刷された」前記他の「画像に向けて前記熱膨張性シートの前記他面側から、前記熱膨張層における所定の領域を熱膨張させることが可能な熱を」前記他の「画像が帯びるように光を照射する光照射ステップ」である点で共通する。
ケ 引用発明の「半立体画像を造形する方法」は、本願発明1の「立体造形物の製造方法」に相当する。
コ 上記ア~ケより、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートにおける前記熱膨張層上に、画像を印刷する第1画像印刷ステップと、
前記熱膨張性シートの他面側に他の画像を印刷する第2画像印刷ステップと、
前記第2画像印刷ステップで印刷された前記他の画像に向けて前記熱膨張性シートの前記他面側から、前記熱膨張層における所定の領域を熱膨張させることが可能な熱を前記他の画像が帯びるように光を照射する光照射ステップと、
を有し、
前記他の画像は、濃色部と淡色部とを有する、立体造形物の製造方法」
[相違点]
本願発明1においては、第1画像印刷ステップで印刷される「画像」は、「主要部と背景を含む第1の画像」であり、「第2の画像」の「濃色部」と「淡色部」が、「前記第1の画像の主要部に対応する領域に所定の筆触又は筆致を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定され、かつ前記第1の画像の背景に対応する領域に所定の生地を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定されて印刷されることで、前記第1の画像の主要部に対応する領域には、前記所定の筆触又は筆致に対応するように、筆跡や隆起高さを有する凹凸模様が形成され、前記第1の画像の背景に対応する領域には、前記所定の生地に対応するように、所定の目の粗さや隆起高さを有する凹凸模様が形成される」のに対して、引用発明においては、平面画像97が、「主要部と背景を含む」画像であることは特定されておらず、濃淡画像の光吸収性パターン95の濃淡が、「主要部」及び「背景」との関係でどのように設定されるかも特定されていない点
(2)相違点についての判断
引用文献2には、「実物の油絵に存在する凹凸」と「ほぼ相似する凹凸」を有する透明インク層を形成することは記載されているものの、実物の油絵の凹凸とは関係なく、印刷面の画像の主要部であるか背景であるかによって表現される凹凸を異ならせることは記載されていない。
したがって、引用発明に対して、引用文献2に記載された技術的事項を適用しても、直ちに、上記相違点に係る、本願発明1の発明特定事項を導き出すことはできない。
また、印刷面の画像の主要部であるか背景であるかによって表現される凹凸を異ならせることが、本願の原々出願の出願時の周知技術であることを示す証拠もない。
したがって、上記相違点に係る、本願発明1の発明特定事項を導き出すことは、当業者が適宜なし得た設計変更ということもできない。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2について
本願発明2も、本願発明1と同様に、「第1の画像は主要部と背景を含み」、「第2の画像」の「濃色部」と「淡色部」が、「前記第1の画像の主要部に対応する領域に所定の筆触又は筆致を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定され、かつ前記第1の画像の背景に対応する領域に所定の生地を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定されて印刷されることで、前記第1の画像の主要部に対応する領域には、前記所定の筆触又は筆致に対応するように、筆跡や隆起高さを有する凹凸模様が形成され、前記第1の画像の背景に対応する領域には、前記所定の生地に対応するように、所定の目の粗さや隆起高さを有する凹凸模様が形成される」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3 本願発明3及び4について
本願発明3及び4は、本願発明1又は2を、さらに限定するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
4 本願発明5について
本願発明5は、本願発明1に対して、「第1の画像」が、「彩色画像」に、「第2の画像」が、「モノクロ画像」に、それぞれ限定されたものである。
しかし、引用発明の「平面画像97」は、「カラー画像などの可視的な」ものであるから、本願発明5の「彩色画像」と引用発明の「平面画像97」とは、「彩色」を施された画像である点でも共通し、引用発明の「濃淡画像の光吸収性パターン95」は、K色(黒色)のトナーのみを用いた面積階調法により印刷されることから、本願発明5の「モノクロ画像」と引用発明の「濃淡画像の光吸収性パターン95」とは、「モノクロ」の画像である点でも共通する。
したがって、本願発明5と引用発明の相違点は、上記第4の1(1)コで検討した相違点の「第1の画像」を「彩色画像」に、「第2の画像」を「モノクロ画像」に読み替えたものにすぎないので、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
5 本願発明6及び7について
本願発明6及び7は、本願発明5を、さらに限定するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1ないし7について、上記引用文献1及び2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかし、上記第4の1(2)で検討したとおり、本願発明1ないし7は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由通知について
1 平成30年11月29日付け拒絶理由通知書について
(1) 当審では、平成30年11月29日付け拒絶理由通知書において、
ア 請求項1及び2の「第1の画像」が「背景」を含むのか否かが明確でない旨、
イ 上記アの結果、請求項4の記載が技術的に矛盾する場合がある旨、
ウ 請求項5の「彩色画像」が「背景」を含むのか否かが明確でない旨、
エ 上記ウの結果、請求項7の記載が技術的に矛盾する場合がある旨
の拒絶理由を通知している。
(2) 当該拒絶理由に対し、平成31年2月20日付け手続補正書による補正において、
ア 請求項1について、「主要部と背景を含む第1の画像」と補正され、
イ 請求項2について、「第1の画像は主要部と背景を含み」と補正され、
ウ 請求項4について、「前記第1の画像の主要部」と補正され、
エ 請求項5について、「主要部と背景を含む彩色画像」と補正され、
オ 請求項7について、「前記彩色画像の主要部」と補正され、
その結果、上記(1)ア~エの拒絶理由は解消した。
2 平成31年4月22日付け拒絶理由通知書について
(1) 当審では、平成31年4月22日付け拒絶理由通知書において、
ア 請求項1及び2の「第2の画像」がどのような画像であるのか明確でない旨、
イ 請求項1及び2の記載では、「第2の画像」の「濃色部」と「淡色部」と、「第1の画像」の「主要部」と「背景」との関係が明確でない旨、
ウ 請求項5の「彩色画像」がどのような画像であるのか明確でない旨、
エ 請求項5の記載では、「モノクロ画像」の「濃色部」と「淡色部」と、「彩色画像」の「主要部」と「背景」との関係が明確でない旨
の拒絶理由を通知している。
(2) 当該拒絶理由に対し、本件補正書による補正において、
ア 請求項1について、「前記第2の画像は、濃色部と淡色部とを有し、前記第1の画像の主要部に対応する領域に所定の筆触又は筆致を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定され、かつ前記第1の画像の背景に対応する領域に所定の生地を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定されて印刷されることで、前記第1の画像の主要部に対応する領域には、前記所定の筆触又は筆致に対応するように、筆跡や隆起高さを有する凹凸模様が形成され、前記第1の画像の背景に対応する領域には、前記所定の生地に対応するように、所定の目の粗さや隆起高さを有する凹凸模様が形成される」と補正され、
イ 請求項2について、「前記第2の画像は、濃色部と淡色部とを有し、前記熱膨張性シートの前記一面側に描画される第1の画像は主要部と背景を含み、前記第1の画像の主要部に対応する領域に所定の筆触又は筆致を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定され、かつ当該第1の画像の背景に対応する領域に所定の生地を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定されて印刷されることで、前記第1の画像の主要部に対応する領域には、前記所定の筆触又は筆致に対応するように、筆跡や隆起高さを有する凹凸模様が形成され、前記第1の画像の背景に対応する領域には、前記所定の生地に対応するように、所定の目の粗さや隆起高さを有する凹凸模様が形成される」と補正され、
ウ 請求項4について、「前記第1の画像の背景に対応する領域は、前記第1の画像の主要部に対応する領域を避けた領域として設定されている」と補正され、
エ 請求項5について、「前記モノクロ画像は、濃色部と淡色部とを有し、前記彩色画像の主要部に対応する領域に所定の筆触又は筆致を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定され、かつ前記彩色画像の背景に対応する領域に所定の生地を表現又は再現するように、前記濃色部と前記淡色部の配置や濃度が設定されて印刷されることで、前記彩色画像の主要部に対応する領域には、前記所定の筆触又は筆致に対応するように、筆跡や隆起高さを有する凹凸模様が形成され、前記彩色画像の背景に対応する領域には、前記所定の生地に対応するように、所定の目の粗さや隆起高さを有する凹凸模様が形成される」と補正され、
オ 請求項7について、「前記彩色画像の背景に対応する領域は、前記彩色画像の主要部に対応する領域を避けた領域として設定されている」と補正され、
その結果、上記(1)ア~エの拒絶理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし7は、当業者が引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明することができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願は拒絶することはできない。
また、ほかに本願を拒絶すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-003255