商標異議申立
2017-900286
カリオロジー、キャリオロジー、カリオロギー、キャリオロギー
- 審判番号
- 2017-900286
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2016-096686
- 登録番号
- 商標登録第5960238号(T5960238)
- 請求日
- 2017年09月22日
- 審決日
- 2018年03月29日
- 公報発行日
- 2018年08月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】サンスター株式会社
- 【異議申立人】▲高▼橋 昌嗣
- 審判長/審判官
- 審判長 金子 尚人
- 審判官 原田 信彦
- 審判官 小松 里美
- 分類
- T1652.13 -ZC (W0305102144) / T1652.272-ZC (W0305102144)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項16号商標法43条の3第2項商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第16号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
登録第5960238号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
登録第5960238号商標の指定商品及び指定役務中、第44類「歯科診断,歯科医療情報提供,口腔衛生に関する助言,口腔衛生指導」についての商標登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品及び指定役務についての商標登録を維持する。
理由
【理 由】
第1 本件商標
本件登録第5960238号商標(以下「本件商標」という。)は、「CARIOLOGY」の欧文字を標準文字で表してなり、平成28年9月2日に登録出願、第44類「歯科診断,歯科医療情報提供,口腔衛生に関する助言,口腔衛生指導」を含む第3類、第5類、第10類、第21類、第29類、第30類、第32類及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同29年5月29日に登録査定、同年6月30日に設定登録され、当該登録にかかる商標公報が同年7月25日に発行されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成29年9月22日に、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第3類、第5類、第10類、第21類及び第44類に属する商品及び役務について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標の「CARIOLOGY」の欧文字は、「う蝕学」を意味し、広く一般に使用されるものであることから、本件商標を第3類、第5類、第10類、第21類及び第44類の指定商品及び指定役務について使用しても、これに接する需要者、取引者は、単にその商品又は役務が「う蝕学が考慮された商品又は役務、う蝕学に基づく商品又は役務」であることを認識するにすぎず、自他商品、役務識別標識として認識できないものである。
そして、本件商標は、虫歯治療、虫歯予防に欠かせない商品、役務の特性や効能を一つの学問の名称によって表すにすぎない標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、広く一般的に使用される標章であるから、商標としての自他商品、役務識別機能を果たし得ないものである。
してみれば、本件商標は、商品の品質又は役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当する。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、指定商品及び指定役務の分野において、「う蝕学」を意味する語として需要者、取引者に認識され、商品の品質又は役務の質を表示する語として広く一般に使用されているものであるから、これを「う蝕学が考慮された商品又は役務、う蝕学に基づく商品又は役務」以外の商品又は役務について使用するときは、その商品の品質又は役務の質について誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
第3 当審における取消理由
当審において、平成30年1月24日付けで、本件商標権者に対して、「本件商標は、『う蝕学』の意味合いを表すものとして、広く使用されていたことが認められから、本件商標を、第44類『歯科診断,歯科医療情報提供,口腔衛生に関する助言,口腔衛生指導』について使用するときは、『カリオロジーに基づく歯科診断,カリオロジーに基づく歯科医療情報提供,カリオロジーに基づく口腔衛生に関する助言,カリオロジーに基づく口腔衛生指導』を表したものと容易に理解、認識させるにすぎず、その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認める。また、上記役務以外の『歯科診断,歯科医療情報提供,口腔衛生に関する助言,口腔衛生指導』について使用するときは、役務の質について誤認を生ずるおそれがあるものと認める。したがって、本件商標は、その指定役務中『歯科診断,歯科医療情報提供,口腔衛生に関する助言,口腔衛生指導』について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。」旨の取消理由を通知した。
第4 本件商標権者の意見
上記第3の取消理由に対し、本件商標権者は、何ら意見を述べていない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、「CARIOLOGY」の欧文字を標準文字で表してなるところ、以下の申立人の提出に係る証拠及び職権調査によれば、該文字は、本件商標の登録査定時より前から、「う蝕学」の意味合いを表すものとして、歯科関係者においては、一般に理解、認識されているものということが認められる。(下線は、当合議体が付与。)
(1)辞典等における記載
「ステッドマン医学大辞典 第5版」(株式会社メジカルビュー社(2003年2月10日第2刷)発行)において、「cariology」の項に、「う食(蝕)学(歯のう食およびう食発生の研究).」との記載がある(甲3)。(注:「蝕」の字は旧字体。)
(2)書籍、雑誌における記載
ア 「う蝕学 -チェアサイドの予防と回復のプログラム-」(株式会社永末書店(2008年3月5日第1版第1刷)発行)において、「序文」に「う蝕学(cariology:カリオロジー)は、う蝕とその発生要因について多くの専門分野を横断して学ぶ学問領域であり、う蝕学を学ぶ目的は、う蝕という疾患の予防や治療において臨床的な成果を上げることにある。人々が、いつまでも歯を失うことなく、健康で美しい歯を保持していくためには、歯の萌出前から始まる生涯を通じての口腔健康管理が必要である。いつまでも自分の歯でと願う人々を、専門知識をもとに支援するために学ぶのがう蝕学である。」との記載がある(甲5の1)。
イ 「図説齲蝕学 須賀昭一 編」(医歯薬出版株式会社(1991年10月31日第1版第2刷)発行)において、「図説齲蝕学」のタイトルの英語訳として「Illustrated Cariology」との記載がある(甲5の2)。(注:「蝕」の字は旧字体。)
ウ 「う蝕と歯周病 -研究の進歩- 第1巻」(株式会社日本歯科評論社(昭和57年9月1日初版第1刷)発行)において、「う蝕と歯周病 -研究の進歩-」のタイトルの英語訳として「ADVANCES IN BASIC CARIOLOGY AND PERIODONTOLOGY」との記載がある(甲第5の3)。(注:「蝕」の字は旧字体。)
エ 「新・う蝕の科学」(医歯薬出版株式会社(2006年5月1日第1版第1刷)発行)において、「序」に「本書の企画の背景には、今から4分の1世紀以上も前に発刊されたE.Newbrun(著):Cariologyがあり、編者らはこれを翻訳、「齲蝕の科学」(1980年、医歯薬出版)として世に問いました。」との記載がある(甲5の4)。(注:「蝕」の字は旧字体。)
オ 「月刊『デンタルハイジーン』別冊 歯科衛生士のためのカリオロジー」(医歯薬出版株式会社(2015年11月)発行)において、「内容紹介」に「●本別冊では、齲蝕の原因や成り立ちといった基礎知識から、初期齲蝕病変の検出・評価方法、カリエスリスクの考え方、予防プランの立案の仕方まで、最新のカリオロジーの知識とカリエスマネジメントを行うために必要なポイントを体系的にまとめました。」との記載がある(甲5の5)。(注:「蝕」の字は旧字体。)
カ 「月刊『デンタルハイジーン』別冊 わかる!できる!実践カリオロジー」(医歯薬出版株式会社(1999年6月)発行)において、「内容紹介」に「カリオロジーを基にした歯科医療を実践するために、カリオロジーの基本的な考え方からチェアサイドで役立つ臨床例までをわかりやすくまとめた。患者さんの健康を願い、守り続けるためにもぜひとも手元に置いておきたい一冊。」との記載がある(甲5の6)。
キ 「普及版 クリニカルカリオロジー」(医歯薬出版株式会社(2011年1月)発行)において、「内容紹介」に「◆科学的データに基づくリスク診断によって、『何が処置すべき齲蝕で、どれが観察すべきう蝕なのか』を明確にし、カリオロジーを応用した予防と治療の実際が、一般開業歯科医院においてどのように行われているのかを豊富な臨床例とカラーグラフィックを用いて詳述。」との記載がある(甲5の7)。(注:「蝕」の字は旧字体。)
(3)論文における記載
「Cariology(カリオロジー;齲蝕学)の現状・未来」(著者 神原 正樹(2006年出版))という見出しの論文がある(甲6の1)。(注:「蝕」の字は旧字体。)
(4)インターネット情報記事としての記載
個人のブログにおいて、「歯医者さんの一服日記 2006年04月21日(金)カリオロジーとは?」の見出しの下、「カリオロジーとは英語でcariologyと書きます。cariologyのcarioとはむし歯を意味する言葉であり、logyとは学問を意味する接尾語です。ということで、cariologyとはむし歯を研究する学問ということになります。専門的にはう蝕学とでも言うべきなのでしょうが、歯科業界においてはカリオロジーと呼んでいる人がほとんどです。」との記載がある(甲8の2)。(注:「蝕」の字は旧字体。)
(5)職権調査(新聞記事情報)
ア 2007年11月16日付け「北国・富山新聞」(朝刊)に、「丈夫がいいね(403) 第9部・お口の健康学 虫歯の予防(上) 間食控え、食事の間隔あけて」の見出しの下、「これは『カリオロジー』という最先端の虫歯学の考え方である。ミクロレベルでみると、虫歯は、歯の表面についた歯垢(しこう)の中にある細菌が食物に含まれる糖を材料に酸をつくることで始まる。」との記載がある。
イ 2006年12月12日付け「毎日新聞」(地方版/兵庫)に、「歯を大切に:でん太君のアドバイス/28 初期のむし歯/兵庫」の見出しの下、「最近『カリオロジー』というむし歯予防に関する考え方が広まってきています。COの段階で、むし歯を発見するためにも、かかりつけの歯科医院での定期健診をおすすめします。」との記載がある。
ウ 2006年2月26日付け「Fuji Sankei Business」に、「【早わかりディクショナリー】2月19日→25日」の見出しの下、「【カリオロジー】う蝕学ともいう。虫歯はなぜでき、どうしたら進行を防げるかを追求する学問を指す。」との記載がある。(審決注:「蝕」の字は旧字体。)
エ 1997年2月22日付け「中日新聞」(朝刊)に、「情報ボックス 第49回東海地区歯科医学大会」の見出しの下、「【愛知県】22、23の両日、千種区吹上の中小企業振興会館(吹上ホール)で。・・・23日は技工士らの研究発表十件(午前9時30分から12時)、山形県酒田市の歯科医、熊谷崇氏による特別講演『カリオロジーに基づくう蝕の診断と処置』(午後1時から5時)などがある。」との記載がある。(注:「蝕」の字は旧字体。)
そうすると、本件商標を、本件登録異議の申立に係る指定商品及び指定役務中、第44類「歯科診断,歯科医療情報提供,口腔衛生に関する助言,口腔衛生指導」について使用するときは、「カリオロジーに基づく歯科診断,カリオロジーに基づく歯科医療情報提供,カリオロジーに基づく口腔衛生に関する助言,カリオロジーに基づく口腔衛生指導」を表したものと容易に理解、認識させるにすぎず、その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。
また、上記役務以外の「歯科診断,歯科医療情報提供,口腔衛生に関する助言,口腔衛生指導」について使用するときは、役務の質について誤認を生ずるおそれがあるものと認められる。
したがって、本件商標は、その指定商品及び指定役務中「歯科診断,歯科医療情報提供,口腔衛生に関する助言,口腔衛生指導」について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中、第44類「歯科診断,歯科医療情報提供,口腔衛生に関する助言,口腔衛生指導」については、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものといわなければならないから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
しかし、本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品及び指定役務については、取り消すべき理由がないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持するものとする。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-900286