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商標異議申立

2017-900209

エルビス

審判番号
2017-900209
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2016-032001
登録番号
商標登録第5934164号(T5934164)
請求日
2017年06月26日
審決日
2017年12月14日
公報発行日
2018年02月23日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ショウ ズイゴウ
  • 【異議申立人】エービージー イーピーイー アイピー リミテッド ライアビリティ カンパニー
  • 【異議申立人代理人】特許業務法人RIN IP Partners
  • 【異議申立人代理人】宮城 和浩
審判長/審判官
  • 審判長 田中 亨子
  • 審判官 早川 文宏
  • 審判官 阿曾 裕樹
分類
T1651.22 -Y (W15)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項7号商標法43条の3第4項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第7号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

登録第5934164号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。

結論

【結 論】 登録第5934164号商標の商標登録を維持する。

理由

【理 由】 1 本件商標 本件登録第5934164号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおり「Elvis」の欧文字をやや図案化してなり,平成28年3月10日に登録出願,同29年2月17日に登録査定,第15類「楽器,楽器用ケース」を指定商品として,同年3月24日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。 (1)本件商標は,欧文字「Elvis」をやや丸みを持たせて表示した態様からなるものであり,容易に「Elvis」の文字を表したものと認識でき,「エルヴィス」と称呼できるものである。 これに対し,申立人は,米国の有名なミュージシャン兼映画俳優であった故人「Elvis Presley」(エルヴィス・プレスリー)に関する諸権利を正当に承継し管理する組織であり,本件登録異議の申立てを行うに際し,以下に詳述するとおり,故「Elvis Presley」の著名な略称として認知されている「Elvis」(エルヴィス)を引用する(以下「引用著名略称」という。)。 そして,本件商標は,引用著名略称と同一であり,しかも,本件商標の指定商品は,ミュージシャンであった故「Elivs Presley」と関連性の深い「楽器,楽器用ケース」である。 (2)「Elvis Presley」(エルヴィス・プレスリー)について(甲2) ア 経歴 エルヴィス・プレスリー(以下「エルヴィス」という場合がある。)は,1935年ミシシッピ州テューペロに生まれた。 エルヴィスの記録は多数あり,例えば,最も成功したソロアーティスト,最多ヒットシングル記録(151回),1日で最もレコードを売り上げたアーティスト(死の翌日)等がギネスによって認定されている。 イ サン・レコード時代 1953年の夏にエルヴィスは,メンフィスのサン・スタジオで最初の両面デモ・アセテート盤を録音した。サン・レコードの創業者は,その録音を聞きエルヴィスの才能を感じ,地元のミュージシャンと共にエルヴィスを売り出すこととした。 1954年7月5日に収録されたシングルは,WHBQラジオが放送した2日後に,メンフィスでのローカル・ヒットとなった。また,公演旅行はエルヴィスの評判をテネシー中に広げることとなった。サン・スタジオとの契約下でエルヴィスは1954年7月ないし1955年8月までに5枚のシングルをリリースした。 これらの多くはリズム・アンド・ブルース又はカントリー・アンド・ウェスタンのヒット曲のエネルギッシュなカバーであった。レーベルには「エルヴィス・プレスリー,スコッティー・アンド・ビル」とクレジットされた。 1955年8月にサン・スタジオとの関係は終了した。 ウ RCAとの契約 エルヴィスは,1955年11月にRCAレコードと契約した。1956年1月にTVに初出演し,黒人のR&Bを歌った。それを見た若者たちは,エルヴィスのファンになっていった。 1956年1月に第6弾シングル「Heartbreak Hotel/I Was the One」がリリースされ,1956年4月にチャートの1位に達した。 1956年12月,エルヴィスは,カール・パーキンス,ジェリー・リー・ルイスがレコーディングしているサン・レコードに立ち寄り,彼らとジャム・セッションを行った。このセッションは,伝説的な「ミリオン・ダラー・カルテット」と呼ばれるようになった。年末の「ウォール・ストリート・ジャーナル」一面で,エルヴィス関連商品が2,200万ドルを売り上げ,レコード売り上げがトップであることを報じられた。また,「ビルボード」誌で100位以内にランクインした曲数が史上最高となった。音楽業界最大手の1つであるRCAでの最初の1年間,レコード売り上げの半数がエルヴィスのレコードであった。 エ 映画との関わり エルヴィスは,歌手として有名になっていくにつれて,映画配給会社数社から出演の依頼がエルヴィスのもとに届いた。初出演映画は20世紀FOX配給「Rino Brothers」を選んだ。エルヴィスが映画内で4曲も歌うことになり,タイトルも「Love Me Tender」に変更されて公開された。 陸軍入隊前までの1958年までに4作の映画が製作されたが,いずれも挿入歌ありの主演映画に終始し,おまけに映画挿入歌を収めたアルバムが好評だったため,当時のショウビジネスの世界に新たなビジネスの形態を作り出した。1956年から1969年まで計31本の映画が公開された中で,エルヴィスが望んだ(主題歌以外の)歌のない映画は,1969年公開の「Charro!(殺し屋の烙印)」のみであった。 1970年8月のラスベガス公演やリハーサル風景を収めたドキュメンタリー映画「Elvis: That’s the Way It Is」(エルヴィス・オン・ステージ)や1972年4月のコンサート・ツアーの模様を収めたドキュメンタリー映画「ELVIS On Tour」(エルヴィス・オン・ツアー)が製作され,好評だった。それ以降は,映画の公開はなかったが,エルヴイスの死後の1981年には,ほとんどを生前の映像等で構成したライフ・ストーリー的映画「This Is ELVIS」が公開された。これらを合わせると,エルヴィスが主演した映画は計34本となる。 オ 死後 エルヴィスの死去後まもなくして遺族らが膨大なエルヴィスの物的財産を管理する組織を結成,肖像権も管理しようと訴訟を起こした(当時,亡くなった人々の肖像権の取り扱いは帰属等がはっきりしていなかった)。遺族らは勝訴し,肖像権を手に入れ,以後今日までしっかりと管理されている。 肖像権が管理できるようになって,「エルヴィス・プレスリー」という名を使い現在まで様々なプロジェクトを世界に向かって発信してきた。エルヴィスのキャリアはサン・レコードからデビューした1954年から死去する1977年である。本業の歌の部門では,数多くの未発表テイクが発掘されている。 新編集された曲が2002年のFIFAワールドカップの公式テーマソングになったり,未発表映像も発掘され,1968年のTVスペシャルや1973年のアロハ・フロム・ハワイのアウトテイクを収録した完全版がリリースされ好評だった。その他,側近や友人,家族らが語るエルヴィスの人物像に焦点をあてた物や,エルヴィスのゴスペルに対する思いを映像化した物もある。 (3)日本では,各界のエルヴィスファンの呼びかけにより,多くのファンの寄付金で建てられたエルヴィス・プレスリーの銅像が立てられており,現在は,日本におけるジャズ発祥の地であり音楽を愛する街,神戸の「神戸ハーバーランド」に設置されている。 このエルヴィス像は,彼の故郷メンフィスにある銅像とハワイにある銅像とともに,エルヴィス・プレスリー財団公認の世界に3体しかないオフィシャル像の1体である。ハーバーランドにエルヴィスが来て以来,国内外から多くのエルヴィスファンが集い,特に1月のバースデー,8月の命日には各地からたくさんのお花やメッセージが寄せられ,様々なイベントがファンの手で繰り広げられている(甲12)。 このように,エルヴィスは,我が国でも数多くの人に愛されている。 以上のとおり,エルヴィスは42年という短い生涯を送ったが,世界中の人々を魅了し,その記憶に強く残っており,その死後も,世代を超えて今も語り継がれているのである。この事実は,日本でも同じである。 (4)さらに,特に外国人は,親愛の情を込めて,ファーストネームで呼び合うことが多く,故人も同様であり,「Elvis」(エルヴィス)と呼ばれていたことは周知の事実であり,しかも,我が国においてメジャーな検索エンジン「YAHOO!JAPAN」及び「GOOGLE」にて,「Elvis」又は「エルヴィス」のキーワード検索を試みると,ほぼ全てが故「Elvis Presley」(エルヴィス・プレスリー)に関連する記事がヒットするのである(甲3~甲6)。 これにより,「Elvis」(エルヴィス)といえば,今でも誰もが故「Elvis Presley」を容易に想起し,また,「Elvis」(エルヴィス)は故人の著名な略称として,今でも我が国において広く認識されている。 (5)上記のとおり,故「Elvis Presley」は,偉大な米国のミュージシャンであったが,本件商標権者は,故人と関係の深い「楽器」関連商品の分野において,故人の著名な略称である「Elvis」と同一のつづり文字からなる商標を採択した点に着目すべきである。これは,明らかに故人の知名度に便乗しようという意図がうかがえるものである。 (6)結論 上記の事実によれば,本件商標の採択が,申立人が引用する著名な略称と偶然に一致したとみることはできず,本件商標権者は,著名な略称と同一の商標と知りながら,申立人が我が国において商標登録を得ていないことを奇貨として,その知名度に便乗することを狙って同一の商標を採択して商標権を取得したものと容易に推認できることから,このような行為が国際信義に反することは明らかであり,到底許されるものではない。 また,申立人の知る限り,本件商標権者による本件商標の登録出願を正当化する特段の事情も見当たらない。 なお,特許庁及び裁判所において,歴史上の人物(故人)の名称等を含む商標が商標法第4条第1項第7号に該当すると認定されている(甲7~甲11)。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。 3 当審の判断 (1)「Elvis」の周知性について ア 申立人提出の甲各号証,同人の主張及び職権調査によれば,次の事実を認めることができる。 (ア)「Elvis Presley」は,1935年にミシシッピ州テューペロで生まれ,1977年に死去した米国のロック歌手であり,ミリオンセラーは45枚にのぼり,ロックンロールの王様と呼ばれた(職権調査:世界人名辞典((株)岩波書店),広辞苑第6版((株)岩波書店),日本語大辞典((株)講談社),大辞林第3版((株)三省堂),大辞泉第2版((株)小学館))。 なお,上記職権調査に係る辞典においては,上記内容はいずれも「プレスリー」の項に記載され,「エルヴィス(エルビス)」の項には記載がない。 (イ)「Elvis Presley」のアルバムや映画のタイトル,及びインターネット情報には,同人を指称するものとして「Elvis」又は「エルヴィス」の語が用いられているものはいくつか見受けられるが(甲2~甲6),職権による調査によれば,ランダムハウス英和大辞典(小学館)には「Elvis」の項があり同人の説明が掲載されているものの,一般的な英和辞典などには「Elvis」の項があっても同人を直接紹介する記載はなく,「Presley」又は「プレスリー」の項には同人を紹介する記載がある(職権調査:上記辞典,ジーニアス英和辞典第5版((株)大修館書店),リーダーズ英和辞典((株)研究社))。 なお,甲第2号証においても同人を「プレスリー」と略称している。 イ 上記アなどから,「Elvis Presley」は,米国のロック歌手であって既に故人であることが,我が国において広く認識されていることは顕著といえる。 しかしながら,我が国においては「Elvis Presley」を略称する語としては,「Presley」又は「プレスリー」の語が用いられることが一般的で,「Elvis」「エルヴィス」の語が用いられる機会は限定的であるため,「Elvis」(エルヴィス)の語は,我が国において「Elvis Presley」の略称として広く知られているものとはいい難い。 なお,申立人は「Elvis」(エルヴィス)が「Elvis Presley」の著名な略称として,我が国において広く認識されている旨主張し,その証拠として甲第2号証ないし甲第6号証を提出しているが,それらはウェブページ又はインターネットの検索結果であって,いずれも「Elvis」「エルヴィス」が略称として用いられている証左というより,むしろ「Elvis Presley」「エルヴィス・プレスリー」についての証左というべきものと認められるから,かかる主張を認めるに足りない。 さらに,職権調査によっても,本件商標の指定商品を考慮してもなお,かかる主張を認めるに足る証左は発見できなかった。 したがって,「Elvis」(エルヴィス)の語は「Elvis Presley」の著名な略称と認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は,上記1のとおり,「Elvis」の欧文字をやや図案化してなるものであり,当該文字に相応し「エルヴィ(ビ)ス」の称呼を生じる。 そして,上記(1)のとおり「Elvis」の語は,「Elvis Presley」の著名な略称とはいえず,特定の意味を有する語として我が国で親しまれているものではないから,これより特定の観念を生じない。 そうすると,「Elvis」の文字からなる本件商標は,これに接する取引者,需要者をして「エルヴィ(ビ)ス」の称呼を生じ,特定の観念を生じない欧文字を表してなるものと認識,看取されるとしても,「Elvis Presley」を直ちに連想又は想起させるものではないから,本件商標を採択することが,「Elvis Presley」の知名度に便乗しようとする意図を当然推認させるものではないし,国際信義に反するものともいえない。 さらに,本件商標は,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるようなもの,あるいはその登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなど,公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (3)むすび 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号に違反してされたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。

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