特許無効審判
2017-800004
核酸分解処理装置
- 審判番号
- 2017-800004
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2012-062880
- 登録番号
- 5463378
- 請求日
- 2017年01月17日
- 審決日
- 2022年11月15日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ウイングターフ
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】塩尻 一尋
- 【請求人代理人】浜井 英礼
- 【被請求人】株式会社 シーライブ
- 【被請求人代理人】特許業務法人白坂
- 審判長/審判官
- 審判長 上條 肇
- 審判官 宮岡 真衣
- 審判官 高堀 栄二
- 分類
- P1113.121-YAA(C12M) / P1113.536-YAA(C12M) / P1113.537-YAA(C12M) / P1113.851-YAA(C12M) / P1113.853-YAA(C12M) / P1113.857-YAA(C12M) / P1113.841-YAA(C12M) / P1113.854-YAA(C12M) / P1113.855-YAA(C12M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第1項、特許法第123条第1項第4号、特許法第134条の2第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第134条の2第6項、特許法第134条の2第3項、特許法第123条第1項第2号、特許法第29条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5463378号「核酸分解処理装置」の特許無効審判事件についてされた令和 2年 3月17日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(令和2年(行ケ)第10054号、令和3年 7月20日判決言渡)がされ、当該判決は確定したので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第5463378号の明細書及び特許請求の範囲を令和4年4月28日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第5463378号の請求項2、3に係る発明についての審判請求は、成り立たない。
特許第5463378号の請求項1、4に係る発明についての審判請求を却下する。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第5463378号(請求項の数は4。以下、「本件特許」という。)についての手続の経緯の概要は以下のとおりである。
平成24年 3月19日 特許出願
平成26年 1月24日 特許権の設定登録
平成29年 1月17日 審判請求書(請求に係る請求項の数は4)及び甲第1~11号証の提出
平成29年 3月28日 答弁書提出
平成29年 5月10日 審理事項通知書(日付は起案日)
平成29年 6月12日 口頭審理陳述要領書(請求人)及び甲第12~18号証の提出
平成29年 6月12日 口頭審理陳述要領書(被請求人)提出
平成29年 6月26日 口頭審理(口頭による職権審理結果の通知を含む)
平成29年 7月24日 訂正請求書、意見書及び上申書(以上、被請求人)の提出
平成29年 7月26日 上申書(請求人)及び甲第19号証の提出
平成29年 8月25日 弁駁書提出
平成29年 8月31日 上申書(被請求人)提出
平成29年10月26日 上申書(請求人)提出及び甲第20号証の提出
平成29年11月30日 審決の予告及び補正許否の決定(日付は起案日)
平成29年12月27日 訂正請求書(一次訂正)及び上申書(以上、被請求人)の提出
平成30年 2月 7日 弁駁書提出
平成30年 3月27日 一次審決
平成30年 5月 2日 審決取消訴訟提起(平成30年(行ケ)第10064号)
平成31年 2月28日 一次判決(審決取消判決)
平成31年 3月15日 訂正請求申立書の提出(被請求人)
平成31年 4月 2日 審理再開通知書(日付は起案日)
平成31年 4月15日 訂正請求書及び上申書(以上、被請求人)の提出
令和 1年 5月28日 訂正拒絶理由通知書及び職権審理結果通知書(日付は起案日)
令和 1年 6月21日 手続補正書の提出(被請求人)
令和 1年 6月26日 意見書の提出(請求人)
令和 1年 9月 4日 審決の予告(日付は起案日)
令和 1年11月 8日 訂正請求書(二次訂正)及び上申書(以上、被請求人)の提出
令和 1年12月19日 弁駁書及び甲第21~27号証の提出
令和 2年 3月17日 二次審決
令和 2年 4月24日 審決取消訴訟提起(令和2年(行ケ)第10054号)
令和 3年 7月20日 二次判決(審決取消判決)
令和 3年 8月 4日 訂正請求申立書の提出(被請求人)
令和 3年 9月16日 審理再開通知書(日付は起案日)
令和 3年 9月30日 訂正請求書及び上申書(以上、被請求人)の提出
令和 3年11月24日 弁駁書及び甲第28~44号証の提出
令和 4年 2月22日 審決の予告(日付は起案日)
令和 4年 4月28日 訂正請求書及び上申書(以上、被請求人)の提出
令和 4年 6月24日 弁駁書及び甲第45~49号証の提出
第2 訂正の適否
本件特許の訂正について、平成29年7月24日付け訂正請求書、平成29年12月27日付け訂正請求書、平成31年4月15日付け訂正請求書、令和1年11月8日付け訂正請求書、令和3年9月30日付け訂正請求書、及び令和4年4月28日付け訂正請求書が提出されているが、特許法第134条の2第6項には「訂正の請求がされた場合において、その審判事件において先にした訂正の請求があるときは、当該先の請求は、取り下げられたものとみなす」と規定されているから、令和4年4月28日付け訂正請求書における訂正の請求のみを審理の対象とする。
1 訂正事項
被請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第5463378号の明細書、特許請求の範囲を、令和4年4月28日付けで提出された訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することであり、訂正事項は、以下の訂正事項1~7のとおりである。(下線は、訂正の内容を理解しやすくするために当審で付した。)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2における「上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による上記暴露部の暴露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え、
上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され、上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより、上記暴露部の庫内差圧を一定にすることを特徴とする請求項1記載の核酸分解処理装置。」を、
「メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え、該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と、上記メタノールガス発生部の上方に位置して、熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり、該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており、該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに、上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と、上記筒体部の下部に設けられた異常温度センサと、上記筒体部の上部に設けられた触媒温度センサと、上記筒体部の上方に位置し、該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し、上記触媒部は、金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され、該ラジカル反応触媒を複数積層してなり、空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに由来する活性種を含み生成される複合ガス(以下「バイオガス」という)を発生するバイオガス発生部と、
上記バイオガス発生部における生成ガス量を供給空気量とメタノール量で制御する生成ガス量制御手段と、
上記バイオガス発生部により発生したバイオガスが供給される暴露部と、
上記暴露部の暴露空間内の温度を37℃に制御する温度制御手段と、
上記暴露部の暴露空間内の湿度を30%~45%に制御する湿度制御手段と、
上記暴露部に供給されたバイオガスを排気する排気処理部と、
上記排気処理部により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するバイオガスの排気量制御手段と、
上記暴露部におけるバイオガスのホルムアルデヒド成分の濃度を測定するホルムアルデヒド成分濃度測定手段と、
臭いを検出又は測定する手段を備え、
上記暴露部は内部に入れた暴露対象に前記バイオガスを暴露するための、容積が1立方メートル以内の密閉された恒温恒湿槽であり、
上記バイオガス発生部では、上記触媒温度センサにより得られる触媒温度情報に基づいて上記メタノールガスの供給の開始により上記触媒部における上記メタノールガスの自己反応を開始するとともに、上記触媒部の触媒ヒータによる加熱の停止を行い、上記異常温度センサ又は上記触媒温度センサにより温度異常が検出された場合には運転を停止し、上記自己反応の開始後は上記メタノールガス発生部から供給されるメタノール量と上記空気供給部から供給される空気量を制御することにより、上記触媒部の自己反応温度が400℃~500℃の範囲で上記バイオガスの発生を制御し、
上記ホルムアルデヒド成分濃度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が上記生成ガス量制御手段に帰還され、上記バイオガス発生部において、一定の触媒の自己反応温度と濃度のバイオガスとなるように、上記生成ガス量制御手段により上記バイオガス発生部における生成ガス量が供給空気量とメタノール量で制御されるとともに、上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより、上記暴露部の庫内ガス濃度を一定にし、
上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による上記暴露部の暴露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え、
上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され、上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより、上記暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にし、
上記暴露部内への供給空気量と上記排気処理手段による排気量のバランスを-0~-0.01MPaの範囲とすることにより、上記暴露部内で陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら上記自己反応時の上記暴露部内の結露状態の発生を防止し、上記バイオガス発生部から安定した上記自己反応による上記バイオガスの供給を行うことを特徴とする核酸分解処理装置。」と訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3における「・・・請求項1又は請求項2の何れか1項に記載の・・・」を「・・・請求項2に記載の・・・」と訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5) 訂正事項5~7
明細書の段落【0016】~【0020】について、
「【0016】 本発明は、核酸分解処理装置であって、メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え、該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と、上記メタノールガス発生部の上方に位置して、熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり、該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており、該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに、上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と、上記筒体部の上方に位置し、該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し、上記触媒部は、金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され、該ラジカル反応触媒を複数積層してなり、空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに由来する活性種を含み生成される複合ガス(以下「バイオガス」という)を発生するバイオガス発生部と、上記バイオガス発生部における生成ガス量を供給空気量とメタノール量で制御する生成ガス量制御手段と、上記バイオガス発生部により発生したバイオガスが供給される暴露部と、上記暴露部の暴露空間内の温度を制御する温度制御手段と、上記暴露部の暴露空間内の湿度を制御する湿度制御手段と、上記暴露部に供給されたバイオガスを排気する排気処理部と、上記排気処理部により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するバイオガスの排気量制御手段と、上記暴露部におけるバイオガスの濃度を測定するバイオガス濃度測定手段と、臭いを検出又は測定する手段を備え、上記バイオガス濃度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が上記生成ガス量制御手段に帰還され、上記バイオガス発生部において、一定の触媒の自己反応温度と濃度のバイオガスとなるように、上記生成ガス量制御手段により上記バイオガス発生部における生成ガス量が供給空気量とメタノール量で制御されるとともに、上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより、上記暴露部の庫内ガス濃度を一定にすることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る核酸分解処理装置は、上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による上記暴露部の暴露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え、上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され、上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより、上記暴露部の庫内差圧を一定にするものとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る核酸分解処理装置において、上記バイオガス発生部は、メタノール、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素の成分を少なくとも含有した活性酸素とフリーラジカルからなる複合ラジカルガスを発生するものとすることができる。
【0020】
さらに、本発明に係る核酸分解処理装置において、上記バイオガス発生部は、例えば、上記自己反応温度が400℃~500℃の範囲内に制御されるものとすることができる。」を、
「【0016】
【0017】
本発明は、核酸分解処理装置であって、メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え、該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と、上記メタノールガス発生部の上方に位置して、熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり、該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており、該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに、上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と、上記筒体部の下部に設けられた異常温度センサと、上記筒体部の上部に設けられた触媒温度センサと、上記筒体部の上方に位置し、該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し、上記触媒部は、金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され、該ラジカル反応触媒を複数積層してなり、空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに由来する活性種を含み生成される複合ガス(以下「バイオガス」という)を発生するバイオガス発生部と、上記バイオガス発生部における生成ガス量を供給空気量とメタノール量で制御する生成ガス量制御手段と、上記バイオガス発生部により発生したバイオガスが供給される暴露部と、上記暴露部の暴露空間内の温度を37℃に制御する温度制御手段と、上記暴露部の暴露空間内の湿度を30%~45%に制御する湿度制御手段と、上記暴露部に供給されたバイオガスを排気する排気処理部と、上記排気処理部により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するバイオガスの排気量制御手段と、上記暴露部におけるバイオガスのホルムアルデヒド成分の濃度を測定するホルムアルデヒド成分濃度測定手段と、臭いを検出又は測定する手段を備え、上記暴露部は内部に入れた暴露対象に前記バイオガスを暴露するための、容積が1立方メートル以内の密閉された恒温恒湿槽であり、上記バイオガス発生部では、上記触媒温度センサにより得られる触媒温度情報に基づいて上記メタノールガスの供給の開始により上記触媒部における上記メタノールガスの自己反応を開始するとともに、上記触媒部の触媒ヒータによる加熱の停止を行い、上記異常温度センサ又は上記触媒温度センサにより温度異常が検出された場合には運転を停止し、上記自己反応の開始後は上記メタノールガス発生部から供給されるメタノール量と上記空気供給部から供給される空気量を制御することにより、上記触媒部の自己反応温度が400℃~500℃の範囲で上記バイオガスの発生を制御し、上記ホルムアルデヒド成分濃度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が上記生成ガス量制御手段に帰還され、上記バイオガス発生部において、一定の触媒の自己反応温度と濃度のバイオガスとなるように、上記生成ガス量制御手段により上記バイオガス発生部における生成ガス量が供給空気量とメタノール量で制御されるとともに、上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより、上記暴露部の庫内ガス濃度を一定にし、上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による上記暴露部の暴露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え、上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され、上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより、上記暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にし、上記暴露部内への供給空気量と上記排気処理手段による排気量のバランスを-0~-0.01MPaの範囲とすることにより、上記暴露部内で陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら上記自己反応時の上記暴露部内の結露状態の発生を防止し、上記バイオガス発生部から安定した上記自己反応による上記バイオガスの供給を行うものとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る核酸分解処理装置において、上記バイオガス発生部は、メタノール、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素の成分を少なくとも含有した活性酸素とフリーラジカルからなる複合ラジカルガスを発生するものとすることができる。
【0020】」と訂正する。
2 一群の請求項、訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
(1) 一群の請求項について
訂正前の請求項1~4について、訂正前の請求項2~4は、それぞれ訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用し、かつ、訂正前の請求項3~4は、それぞれ訂正前の請求項2を直接又は間接的に引用している。
そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであり、訂正事項2は、訂正前の請求項2について、訂正事項1に伴い訂正前の請求項1の記載を含む形で書き下すことを含み、訂正事項2により、訂正前の請求項3~4は、連動して訂正されるから、訂正前の請求項1~4は、特許法第134条の2第3項に規定される一群の請求項である。
また、訂正事項5~7は、特許請求の範囲の請求項1~4を訂正事項1~4のように訂正したことに伴い、明細書の記載を整合させるための訂正である。
したがって、訂正事項1~7は、一群の請求項〔1-4〕に対して請求されたものであり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第4項の規定を満たすものである。
(2) 訂正事項1について
訂正事項1は訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) 訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用して記載されていたものであるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項とするとともに、核酸分解処理装置におけるバイオガス発生部について、「上記筒体部の下部に設けられた異常温度センサと、上記筒体部の上部に設けられた触媒温度センサと」を有することを追加し(以下、「訂正事項2-2」ということがある。)、核酸分解処理装置における暴露部で濃度を測定するガスについて、訂正前は「バイオガス」と特定されていたものを、「バイオガスのホルムアルデヒド成分」又は単に「ホルムアルデヒド成分」と限定し(以下、「訂正事項2-3」ということがある。)、暴露部について、「内部に入れた暴露対象に前記バイオガスを暴露するための、容積が1立方メートル以内の密閉された恒温恒湿槽」であることを特定し(以下、「訂正事項2-4」ということがある。)、バイオガス発生部について、「上記触媒温度センサにより得られる触媒温度情報に基づいて上記メタノールガスの供給の開始により上記触媒部における上記メタノールガスの自己反応を開始するとともに、上記触媒部の触媒ヒータによる加熱の停止を行い、上記異常温度センサ又は上記触媒温度センサにより温度異常が検出された場合には運転を停止し、」と特定する(以下、「訂正事項2-5」ということがある。)とともに、「上記自己反応の開始後は上記メタノールガス発生部から供給されるメタノール量と上記空気供給部から供給される空気量を制御することにより、上記触媒部の自己反応温度が400℃~500℃の範囲で上記バイオガスの発生を制御」することを特定し(以下、「訂正事項2-6」ということがある。)、核酸分解処理装置における暴露部の庫内差圧について、訂正前は「上記暴露部の庫内差圧を一定にする」と特定されていたものを、「上記暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にし、」と限定し(以下、「訂正事項2-7」ということがある。)、核酸分解処理装置について、「上記暴露部内への供給空気量と上記排気処理手段による排気量のバランスを-0~-0.01MPaの範囲とすることにより、上記暴露部内で陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら上記自己反応時の上記暴露部内の結露状態の発生を防止し、上記バイオガス発生部から安定した上記自己反応による上記バイオガスの供給を行うこと」を特定し(以下、「訂正事項2-8」ということがある。)、暴露部の温度制御手段と湿度制御手段について、訂正前は「上記暴露部の暴露空間内の温度を制御する温度制御手段と、上記暴露部の暴露空間内の湿度を制御する湿度制御手段」と特定されていたものを、「上記暴露部の暴露空間内の温度を37℃に制御する温度制御手段と、上記暴露部の暴露空間内の湿度を30%~45%に制御する湿度制御手段」と限定した(以下、「訂正発明2-9」ということがある。)ものであることから、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消、及び、同項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
(訂正事項2-2について)
本件特許の設定登録時の願書に添付した明細書(以下、「訂正前本件明細書」という。)の段落【0038】には、「異常温度センサ14Aが上記内筒体12Aの下部に設けられているとともに、触媒温度センサ15が上記内筒体12Aの上部に設けられている。」と記載され、本件特許の設定登録時の願書に添付した図面(以下、「訂正前本件図面」という。)の【図2】にも、内筒体の上部に触媒温度センサ、内筒体の下部に異常温度センサがそれぞれ設けられたバイオガス発生部が記載されている。そして、本件明細書の段落【0044】には、「上記気化器10の上方に位置して、熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり、該上部には空気を供給する上記エアポンプ9が連結されており、該メタノールガス発生部11から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに、上記メタノールガスに該エアポンプ9から供給された空気を所定の割合で混合させる上記内筒体12A」と記載され、本件特許の設定登録時の願書に添付した特許請求の範囲(以下、「訂正前本件特許請求の範囲」という。)の請求項1には、「上記メタノールガス発生部の上方に位置して、熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり、該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており、該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに、上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部」と記載されているから、内筒体と筒体部は同一のものと認められる。したがって、訂正事項2-2は、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(訂正事項2-3について)
訂正前本件明細書の段落【0198】には、「この核酸分解処理装置100において、上記バイオガス発生部110は、メタノール、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素の反応成分を少なくとも含有し、ラジカル種としてはフリーラジカル成分(スーパーオキシドアニオンO2・-、ヒドロキシルラジカル・OH、水素ラジカルH・、スーパーオキシド(O2-)を少なくとも含む)複合ラジカルガスを発生する。」と記載されており、また、訂正前特許請求の範囲の請求項3にも、「上記バイオガス発生部は、メタノール、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素の成分を少なくとも含有した活性酸素とフリーラジカルからなる複合ラジカルガスを発生する」と記載されていることから、明細書に記載されたバイオガスには、ホルムアルデヒドが包含されていると認められる。そして、訂正前本件明細書の段落【0213】には、「この核酸分解処理装置100は、核酸分解の効果効能を発揮する環境温度を37℃の体温域とし、15分以内の短時間で、且つ、ホルムアルデヒド成分濃度100ppm以内において、二重螺旋のDNA核酸を有効に分解(10bp以下のバラバラ状態)する能力を有し、気相の核酸分解法により核酸分解99.99%~100%を達成することができた。」と、ホルムアルデヒド成分の濃度が特定して記載されていることから、バイオガス中のホルムアルデヒド成分の濃度を測定することが理解できる。したがって、訂正事項2-3は、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(訂正事項2-4について)
訂正前本件明細書の段落【0077】には、「暴露部120の容積が1立方メートル以内の場合の割合は、メタノール量3cc/分の場合の空気供給量は4.5L/分、容積が0.5立方メートル以下の容積の場合は5.0L/分、或いはメタノールの量を少なくして空気量を下げるなど、濃度測定により目的に応じた最適化が実現できる構造を有している。」と記載され、暴露部の容積が1立方メートル以内であることが記載されている。そして、訂正前本件明細書の段落【0097】には、「上記暴露部120は、例えば、図8に示すように、庫内ヒータ130Aと庫内冷却器130Bとにより温度と湿度の制御が可能な恒温恒湿槽からなる。」、段落【0105】には、「上記暴露部120の庫内ヒータ130A及び庫内冷却器130Bは、上記暴露部120の庫内の温度や湿度を調整するために動作構造であるが、この方式以外にも、温度調節や湿度調節手段としては、暴露部120を密閉された恒温槽で構成することや、暴露部120と排気処理部140の間に熱交換構造を配備した庫内ガスの循環構造による調整構造を有してもよく、外気導入バルブ125からの空気(外気)や、それを過熱した空気供給機能などの併用によって実現してもよい。」と記載され、暴露部が密閉された恒温恒湿槽であることも記載されている。さらに、訂正前本件明細書の段落【0021】には、「本発明に係る核酸分解処理装置では、フィードバック制御により暴露部の暴露空間内における温度、湿度、濃度の定量的制御を行うことができ、検体の種類によっての短時間で高効能を発揮する条件を定義することができる。」、段落【0201】には、「この核酸分解処理装置100の暴露部110において暴露される暴露対象は、細長い管を有するもの(内視鏡等)や複雑な形状をした物体或いは精密機器などであってもよい。」と記載され、訂正前本件図面の図8には、暴露部120の内部に暴露対象である検体や精密機器を載置することが図示されていることから、暴露部が内部に入れた暴露対象にバイオガスを暴露するものであることが理解できる。したがって、訂正事項2-4は、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(訂正事項2-5について)
触媒温度センサに関して、訂正前本件明細書の段落【0122】には、「上記制御部150は、気化器ヒータ20により加熱された気化器10の温度を検出する気化器温度センサ13により得られる気化器温度情報が110℃以上であり、触媒温度センサ15により得られる触媒温度情報に基づき触媒ヒータ15Aにより触媒温度制御を行い上記触媒温度センサ15により得られる触媒温度情報が220℃以上に達した時に、メタノールポンプ7を起動する。ただし、20分以内に条件が成立しない場合はエラー処理としてシステムの運転を停止する。」、段落【0124】には、「上記制御部150は、始動後、触媒温度センサ15により得られる触媒温度情報に基づく触媒温度制御が200℃~300℃の範囲内で、ヒータ設定温度以上の自己反応温度を検出し触媒ヒータ15Aをオフする。」、段落【0127】には、「触媒温度センサ15により検出される触媒温度情報が5分以内に400℃以上に達しない場合はシステム異常として運転を停止とする。」、段落【0128】には、「上記制御部150は、正常運転動作モードにおいて触媒温度センサ15により検出される触媒温度情報が300℃を下回った場合はシステム異常として運転を停止する。」と記載され、触媒温度センサにより得られる触媒温度情報に基づいてメタノールガスの供給が開始され、触媒部におけるメタノールガスの自己反応を開始するとともに、触媒部の触媒ヒータによる加熱の停止を行い、触媒温度センサにより温度異常が検出された場合には運転を停止することが記載されている。また、異常温度センサに関して、訂正前本件明細書の段落【0129】には、「上記制御部150は、安全運転条件として、異常温度センサ14Aにより得られる異常加熱検出情報が常に250℃以内であることを確認し運転する。」と記載され、異常温度センサにより温度異常が検出された場合は運転を停止することが記載されている。したがって、訂正事項2-5は、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(訂正事項2-6について)
訂正前本件明細書の段落【0042】には、「上記バイオガス発生部110におけるバイオガスの生成ガス量は、上記メタノールガス発生部11に供給する空気量(エアポンプ9)とメタノール量(燃料ポンプ7)で制御することができる。」、段落【0079】には、「触媒の自己反応温度は、前述の400℃~500℃の制御範囲として運用しても良い。」、段落【0080】には、「このバイオガス発生部110では、空気の供給量を変化させることによりラジカル化触媒反応の温度を制御できる。メタノールガスのラジカル化触媒反応に必要な反応温度は約400~500℃であり、このバイオガス発生部110では、約3.0ccのメタノール供給量に対して、筒体上部12aから供給される空気の供給量を約3.5~6.0L/minの範囲で変化させる。これにより、ラジカル化触媒反応の温度を約400~500℃の範囲で変化させることが可能となる。」、段落【0144】には、「上記バイオガス発生部110におけるバイオガスすなわち核酸分解ガスの発生量は、上記バイオガス発生部110のエア量とメタノール量の混合割合で決まる。エア供給量は、暴露部120の庫内の容積と発生時間の兼ね合いで定める。また、暴露部120の庫内が陰圧になる吸気と排気のバランス範囲で定める。また、メタノール量は、触媒の自己反応温度の適正範囲内で定める。」と記載され、自己反応の開始後はメタノールガス発生部から供給されるメタノール量と空気供給部から供給される空気量を制御することにより、触媒部の自己反応温度が400℃~500℃の範囲でバイオガスの発生を制御することが記載されている。したがって、訂正事項2-6は、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(訂正事項2-7について)
訂正前本件明細書の段落【0140】には、「暴露部120の庫内の圧力を監視しながら、庫内が陰圧(-0~-0.01MPa)になるように排気処理部140により排気吸引する。」との記載があり、段落【0145】には、「また、暴露部120の陰圧制御において、供給エア量と排気ブロアの吸引量のバランスは-0~-0.01MPaの範囲とする。試料のパラメータ(濃度、時間、温度、湿度)により最適な陰圧バランスに調整する。」との記載があり、段落【0146】には「暴露部120の庫内のガス濃度制御では、暴露対象のパラメータ情報にて濃度が一定になるように陰圧バランスを調整する。」との記載があり、段落【0147】には、「上記排気ブロア143の吸引量は、暴露部の120の庫内の陰圧範囲で制限する。陰圧バランス範囲内で調整できない場合は、メタノール供給量を制御する。」との記載があり、段落【0161】には、「陰圧範囲内を目標値とした庫内気圧制御を行う。」との記載がある。また、訂正前本件明細書の段落【0162】の「暴露部120の庫内差圧制御では、差圧センサ134により得られる庫内差圧情報をプロセス値PVとし、庫内差圧の閾値SPと上記プロセス値PVを用いて、図15に示すような制御系により、暴露部120の庫内差圧を一定にする制御を行う。」、及び段落【0183】の「上記制御部150は、バイオガス発生時には、上記暴露部120の庫内圧力センサ132により得られる庫内圧力情報により示される庫内圧圧力より陰圧になるよう排気ブロア143の回転を制御する。」との記載も参酌すると、訂正事項2-7は、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(訂正事項2-8について)
訂正前本件明細書の段落【0145】には、「暴露部120の陰圧制御において、供給エア量と排気ブロアの吸引量のバランスは-0~-0.01MPaの範囲とする。試料のパラメータ(濃度、時間、温度、湿度)により最適な陰圧バランスに調整する。」と記載され、暴露部内への供給空気量と排気処理手段による排気量のバランスを-0~-0.01MPaの範囲とすることが記載されている。また、訂正前本件明細書の段落【0146】には、「暴露部120の庫内のガス濃度制御では、暴露対象のパラメータ情報にて濃度が一定になるように陰圧バランスを調整する。」、段落【0196】には、「このような構成の核酸分解処理装置100では、フィードバック制御により暴露部110の暴露空間内における温度、湿度、濃度の定量的制御を行うことができ、暴露対象の種類によっての短時間で高効能を発揮する条件を定義することができる。」、段落【0059】には、「滅菌環境(核酸分解)における湿度制御は厳格でなくても良く、温度制御を中心としたバイオガス発生環境において、湿度制御は結露状態の発生のない制御で運用すれば良い。」、段落【0081】には、「このバイオガス発生部110によれば、ラジカル化触媒反応温度を維持させるための随時の加熱を必要とせず、安定した自己反応によりラジカル化反応を起こすことができることから、空気の供給量を変化させるだけで、容易にラジカル化反応温度を制御することができる。」と記載され、暴露部内での陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら自己反応時の暴露部内の結露状態を防止し、バイオガス発生部から安定した自己反応によるバイオガスの供給を行うことを理解できる。したがって、訂正事項2-8は、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(訂正事項2-9について)
訂正前本件明細書の段落【0022】には、「この核酸分解処理装置は、核酸分解の効果効能を発揮する環境温度を37℃の体温域とし、15分以内の短時間で、且つ、ホルムアルデヒド成分濃度100ppm以内において、二重螺旋のDNA核酸を有効に分解(10bp以下のバラバラ状態)する能力を有し、気相の核酸分解法として核酸分解99.99%~100%を達成することができる。」、段落【0056】には、「すなわち、後述する実証試験の結果からも明らかなように、37℃の温度環境においての湿度は、30%~45%の暴露環境であって、その効能は、dsDNAデータより、2μlで5分、20μlで15分、100μlで45分でピークが消滅している。」と記載され、暴露部が、暴露空間内の温度を37℃に制御する温度制御手段と、該暴露空間内の湿度を30%~45%に制御する湿度制御手段を備えることが理解できる。したがって、訂正事項2-9は、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
以上からすると、訂正事項2は、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
前記アで述べた理由から明らかなように、訂正事項2は、核酸分解処理装置において、バイオガス発生部に異常温度センサ及び触媒温度センサを追加することの特定、暴露部で濃度を測定するガスの特定、暴露部が1立方メートル以内の密閉された恒温恒湿槽であることの特定、バイオガス発生部の制御方式の特定、核酸分解処理装置の庫内差圧を陰圧で一定にすると共に暴露部内への供給空気量と排気処理手段による排気量のバランスを0~-0.01MPaの範囲とし、陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら暴露部内の結露状態の発生を防止することの特定、暴露空間内の温度を37℃、湿度を30%~45%に制御する手段を備えることの特定を含むものであり、これらの訂正事項2により、発明のカテゴリーや対象、目的が変更することはないから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
エ まとめ
訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1を引用して記載されていた訂正前の請求項3について、訂正前の請求項1の削除に伴い、当該請求項1を引用しないものとする訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5) 訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6) 訂正事項5~7について
訂正事項5~7は、訂正前の請求項1~4を訂正事項1~4にしたがい訂正したことに伴い、明細書の記載を整合させるための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
そして、訂正事項1~4が、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないことと同様の理由で、訂正事項5~7も、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
3 独立特許要件
訂正前の請求項1~4のうち、特許無効審判の請求がされていない請求項はないので、訂正事項1~4に関して、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
4 訂正請求に対する結論
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、また、訂正前本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び6項の規定を満たすものである。
よって、本件訂正を認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項2及び3に係る発明は、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項2及び3に記載された事項により特定されるとおりの以下のものである。なお、請求項1及び4は削除された。
「【請求項2】
メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え、該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と、上記メタノールガス発生部の上方に位置して、熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり、該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており、該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに、上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と、上記筒体部の下部に設けられた異常温度センサと、上記筒体部の上部に設けられた触媒温度センサと、上記筒体部の上方に位置し、該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し、上記触媒部は、金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され、該ラジカル反応触媒を複数積層してなり、空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに由来する活性種を含み生成される複合ガス(以下「バイオガス」という)を発生するバイオガス発生部と、
上記バイオガス発生部における生成ガス量を供給空気量とメタノール量で制御する生成ガス量制御手段と、
上記バイオガス発生部により発生したバイオガスが供給される暴露部と、
上記暴露部の暴露空間内の温度を37℃に制御する温度制御手段と、
上記暴露部の暴露空間内の湿度を30%~45%に制御する湿度制御手段と、
上記暴露部に供給されたバイオガスを排気する排気処理部と、
上記排気処理部により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するバイオガスの排気量制御手段と、
上記暴露部におけるバイオガスのホルムアルデヒド成分の濃度を測定するホルムアルデヒド成分濃度測定手段と、
臭いを検出又は測定する手段を備え、
上記暴露部は内部に入れた暴露対象に前記バイオガスを暴露するための、容積が1立方メートル以内の密閉された恒温恒湿槽であり、
上記バイオガス発生部では、上記触媒温度センサにより得られる触媒温度情報に基づいて上記メタノールガスの供給の開始により上記触媒部における上記メタノールガスの自己反応を開始するとともに、上記触媒部の触媒ヒータによる加熱の停止を行い、上記異常温度センサ又は上記触媒温度センサにより温度異常が検出された場合には運転を停止し、上記自己反応の開始後は上記メタノールガス発生部から供給されるメタノール量と上記空気供給部から供給される空気量を制御することにより、上記触媒部の自己反応温度が400℃~500℃の範囲で上記バイオガスの発生を制御し、
上記ホルムアルデヒド成分濃度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が上記生成ガス量制御手段に帰還され、上記バイオガス発生部において、一定の触媒の自己反応温度と濃度のバイオガスとなるように、上記生成ガス量制御手段により上記バイオガス発生部における生成ガス量が供給空気量とメタノール量で制御されるとともに、上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより、上記暴露部の庫内ガス濃度を一定にし、
上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による上記暴露部の暴露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え、
上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され、上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより、上記暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にし、
上記暴露部内への供給空気量と上記排気処理手段による排気量のバランスを-0~-0.01MPaの範囲とすることにより、上記暴露部内で陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら上記自己反応時の上記暴露部内の結露状態の発生を防止し、上記バイオガス発生部から安定した上記自己反応による上記バイオガスの供給を行うことを特徴とする核酸分解処理装置。
【請求項3】
上記バイオガス発生部は、メタノール、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素の成分を少なくとも含有した活性酸素とフリーラジカルからなる複合ラジカルガスを発生することを特徴とする請求項2に記載の核酸分解処理装置。」
(以下、これらの請求項に係る発明を、それぞれ「訂正発明2」及び「訂正発明3」といい、これらの発明をまとめて「訂正発明」ということがある。また、訂正後の明細書、特許請求の範囲、図面を、それぞれ「訂正明細書」、「訂正特許請求の範囲」、「訂正図面」という。)
第4 当事者の主張の概要
1 請求人の主張の概要
審判請求書並びに平成29年8月25日付け、平成30年2月7日付け、令和1年12月19日付け、令和3年11月24日付け、及び令和4年6月24日付け弁駁書によれば、請求人が主張する無効理由の概要は、次のとおりである。
(1) 無効理由1
訂正発明2及び3は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(特許法第123条第1項第2号)
(2) 無効理由2
図面(図19B及びC)より、訂正発明では、処理開始から90分経過後でも、核酸を目的とするレベルまで分解することができない場合があることから、訂正発明はその課題を解決できると認識できる範囲のものではなく、訂正発明2及び3は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。(特許法第123条第1項第4号)
(3) 無効理由3
前記(2)のとおり、訂正発明では、処理開始から90分経過後でも、核酸を目的とするレベルまで分解することができない場合があるところ、訂正発明が目的とする程度まで核酸を分解するために必要な条件を見出すことは当業者に過度な試行錯誤を強いるものであることから、訂正明細書の記載は、訂正発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。(特許法第123条第1項第4号)
(4) 無効理由4
訂正発明2における「臭いを検出又は測定する手段」と他の構成要件の関係が不明であり、また、訂正発明3における「メタノール、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素の成分を少なくとも含有した活性酸素とフリーラジカルからなる複合ラジカルガス」の意味が不明であることから、訂正特許請求の範囲の記載は明確ではなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。(特許法第123条第1項第4号)
<証拠方法>
甲第1号証:特開2010-51692号公報
甲第2号証:国際公開第01/026697号の再公表公報(平成15年5月7日発行)
甲第3号証:特開平11-226094号公報
甲第4号証:特開2011-41483号公報
甲第5号証:特開2002-355278号公報
甲第6号証:特開2005-74023号公報
甲第7号証:特開2005-89332号公報
甲第8号証:特開2001-212217号公報
甲第9号証:特開2003-319731号公報
甲第10号証:国際公開第2006/016620号の再公表公報(平成20年5月1日発行)
甲第11号証:特開2005-130993号公報
甲第12号証:特開2005-111002号公報
甲第13号証:特開2007-3189号公報
甲第14号証:特開2005-201592号公報
甲第15号証:特開2005-221217号公報
甲第16号証:ファームテクジャパン,2009,Vol.25,pp.31-34.
甲第17号証:ファームテクジャパン,2009,Vol.25,pp.723-730.
甲第18号証:Bio Industry,2009,Vol.26,No.6,pp.29-36.
甲第19号証:株式会社バイオメディアが作成した「MRG滅菌システム小型試験装置ST-1」のカタログ
甲第20号証:大阪大学大学院工学研究科民谷教授が作成した平成29年10月16日付けの宣誓書
甲第21号証:平成30年(行ケ)第10064号判決
甲第22号証:平成30年(行ケ)第10064号判決(要旨)
甲第23号証:特開2001-349586号公報
甲第24号証:特開2002-17830号公報
甲第25号証:特開2002-355278号公報
甲第26号証:特開2005-130993号公報
甲第27号証:特開2005-143580号公報
甲第28号証:令和2年(行ケ)第10054号判決
甲第29号証:令和2年(行ケ)第10054号判決(要旨)
甲第30号証:大木道則ほか編集/株式会社東京化学同人発行,「化学大辞典」(第1版),1989年10月20日発行,表紙,p.2259,2261,裏表紙
甲第31号証:特開平10-132346号公報
甲第32号証:特開平11-347106号公報
甲第33号証:特開平4-364846号公報
甲第34号証:kikakurui.comに掲載されたJIS T 7328:2005 ホルムアルデヒドガス消毒器(https://kikakurui.com/t7/T7328-2005-01.html)のプリントアウト
甲第35号証:株式会社アスカメディカル,「ホルムアルデヒドガス消毒器(コード:70472000)ホルステリ20RM」添付文書,2008年7月15日 第1版
甲第36号証:佐々木次雄編集/財団法人日本規格協会発行,「ヘルスケア製品の滅菌及び滅菌保証」,2011,表紙,pp.298-322,裏表紙
甲第37号証:金光敬二,ホルムアルデヒドガス滅菌の特性と実機材の概要,感染制御,2011,Vol.7,No.2,表紙,pp.119-123,裏表紙
甲第38号証:特許第2690518号公報
甲第39号証:特開2005-312792号公報
甲第40号証:特開2004-180902号公報
甲第41号証:特表2005-500236号公報
甲第42号証:特開2009-56702号公報
甲第43号証:特開2008-201650号公報
甲第44号証:特表2009-517599号公報
甲第45号証:特許庁審判部,進歩性検討会報告書,平成19年3月,はじめに,目次,pp.1-135
甲第46号証:平成17年(行ケ)第10356号判決
甲第47号証:平成15年(行ケ)第474号判決
甲第48号証:平成26年(ネ)第10045号判決
甲第49号証:赤間賢一郎,ユニアス国際特許事務所 判例研究 特許法・実用新案法 審決取消請求事件,平成30年(行ケ)第10064号 「核酸分解処理装置」事件,令和1年6月21日
以下、証拠については、単に「甲1」などと略記することがある。
なお、請求人は、平成29年8月25日付け弁駁書において、訂正の請求に起因しない記載不備の無効理由を追加する請求の理由の補正をしたが、当該補正は、平成29年11月30日付けで許可しない旨の補正許否の決定がされている。
2 被請求人の主張
被請求人は、答弁の趣旨を「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は審判請求人の負担とする、との審決を求める」とし、令和4年4月28日に「特許第5463378号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める」との訂正請求書を提出し、請求人の主張する無効理由1~4はいずれも成り立たないと主張する。
第5 証拠の記載事項
本件特許の出願日である平成24年3月19日よりも前に頒布された刊行物である以下の証拠には、それぞれ以下の事項が記載されている。
1 甲第1号証
(1) 発明の詳細な説明
ア 技術分野
「【0001】
本発明は、メタノールから触媒反応により発生するラジカル性のメタノールラジカルガス(以下、「MRガス」という。)により対象物を滅菌する滅菌処理装置に適用される、滅菌ガス発生装置及びその滅菌ガス発生装置に交換可能に設けられる触媒カートリッジ、並びに滅菌処理装置に関する。」
イ 課題を解決するための手段
「【0009】
本件発明者らは、上述した課題を解決するために、様々な観点から鋭意研究を重ねてきた結果、ハニカム構造を有する触媒を使用することにより、ラジカル化のための触媒反応温度を一定に維持することが可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る滅菌ガス発生装置は、メタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と、上記メタノールガス発生部の上方に位置し、該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに、上記メタノールガスに所定の割合で空気を混合させる筒体部と、上記筒体部の上方に位置し、該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを備え、上記触媒部は、金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成される。」
ウ 発明を実施するための最良の形態
(ア)
「【0017】
図2は、メタノールガス発生装置11を概略的に示す模式図である。この図2に示すように、メタノールガス発生装置11は、原料となるメタノールを収容するメタノールタンク(図示せず)が連結されており、少なくとも、メタノールを加熱気化させる電熱ヒータ20と、メタノールタンクから供給されたメタノールを気化するに際して温度を制御する焼結金属等の温度安定化金属からなる熱媒体21と、・・・さらにメタノールタンクから供給されるメタノールを霧状に噴射して熱媒体21の方へ移行させるノズル23とから構成されている。」
(イ)
「【0023】
また、このメタノールガス発生装置11は、メタノールタンクから・・・供給されるメタノールを、ポンプ等を利用して霧状にして熱媒体21の方へ噴射させるノズル23を備えている。メタノールタンクから供給されたメタノールをノズル23より霧状にして噴射し、霧状のメタノールを上述した電熱ヒータ20によって熱媒体21を介して加熱させることで、温度を一定に保ち、安定した状態でメタノールを気化させることができる。」
(ウ)
「【0026】
ここで、滅菌処理においては、滅菌環境を所定の湿度に保った状態とすることが必要なことが知られており、例えばウイルス等のDNAを破壊してDNAフリーの環境とする場合には、約75%程度の湿度を維持した滅菌環境で滅菌処理を行わなければならない。しかしながら、MRガス滅菌処理を行うにあたって、そのようにMRガスの暴露環境を所定の湿度条件(例えば約75%程度)に整えようとすると、ある程度の環境調整時間が必要となるとともに、所定の湿度環境を一定に管理することも必要となり、また一定の湿度環境を維持することは極めて難しい。
【0027】
そこで、上述したように、メタノールガスを発生させる段階において、メタノールタンクから供給されたメタノールに所定の水を混合させて、所定の割合で水を含有したメタノールを生成し、このメタノールからメタノールガスを発生させてMRガスを生成させる。これにより、滅菌環境の湿度を事前に調整しなくとも、効果的な滅菌処理を行うことが可能となる。このとき、上述した他の実施形態におけるメタノールガス発生装置11によれば、メタノールと水とを混合し、所定の割合で水を含有させたメタノールを霧状にして供給することができる混合ノズル23’を備えているので、所定の湿度を保持した最適なメタノールガスを効率的に生成させて触媒カートリッジ13に供給することができる。そして、このメタノールガスから触媒反応によって発生したMRガスを使用することで、効果的な滅菌処理を行うことができ、所定の湿度環境を一定に管理維持させる必要もなくなる。」
(エ)
「【0032】
具体的に、この筒体12は、パンチングプレート15を挟んで筒体上部12aと筒体下部12bの2空間に分けられている。パンチングプレート15は、・・・筒体12内を上部及び下部に隔てるために用いられている。」
(オ)
「【0033】
パンチングプレート15によって隔てられた筒体12の筒体下部12bは、メタノールガス発生装置11から供給されたメタノールガスが充満する空間となっており、無酸素状態に維持されている。一方、パンチングプレート15より上方の筒体上部12aでは、所定の割合で空気供給部(図示しない)から空気が供給され、その供給された空気とメタノールガスとが混合された空間となっている。そして、この空気を混合したメタノールガスは筒体12の上方に移行し、筒体12の上方に位置する触媒カートリッジ13を通って触媒反応によりラジカル化し、MRガスとなる。
【0034】
なお、本実施の形態において用いられるパンチングプレート15は、特に限定されるものではないが、具体的にその表面に形成されるメタノールガスが通気する孔(通気孔)は、丸型形状でも角型形状でもよく、またその他の形状を有した通気孔であってもよい。また、このパンチングプレート15の通気孔の大きさは、3mm以下であることが好ましい。孔の径を3mm以下とすることにより、後述する触媒カートリッジ13における触媒反応によって発生する反応熱の通過を防止することができ、安全性を高めることができる。
【0035】
また、ここでの説明においては、具体的にパンチングプレート15を用いた例について説明したが、筒体上部12aと筒体下部12bとを隔てるものは、パンチングプレートであることに限られず、3mm以下の径の孔を有する多孔質の金属プレート等の、熱を通過させず、引火を防止することが可能な多孔質金属材料であればよい。金属材料としては、特に限定されるものではないが、ステンレス鋼等を用いることができ、熱を反射することが可能なように表面が研磨されたものであることが、より安全性を高めるという観点から好ましい。」
(カ)
「【0040】
具体的には、ラジカル化触媒反応に必要な450℃程度の温度を自己反応により発生させる場合には、上述したように、メタノールの供給量に対して略正比例するように空気を供給する。具体的には、メタノール供給量を3ccとした場合には、空気の供給量を約3.5L/minとする割合で供給する。
【0041】
一方、ラジカル化触媒反応に必要な450℃より高めの、約500℃近い温度を自己反応により発生させる場合には、空気の供給量をメタノールの供給量に対して正比例する量よりも多く供給する。これにより、自己反応による燃焼温度が高まり、ラジカル化反応において500℃近い温度とすることができる。具体的には、上述の450℃程度の温度を発生させる場合の空気の供給量の割合(メタノール供給量を3ccとしたときに、空気の供給量を約3.5L/minとする割合)よりも多い量の空気を供給する。
【0042】
図5は、本実施の形態に係るMRガス発生装置10において、空気の供給量を変化させることによりラジカル化触媒反応の温度を制御できることを説明するためのグラフである。メタノールガスのラジカル化触媒反応に必要な反応温度は約450~500℃であり、この図5のグラフに示すように、このMRガス発生装置10では、約3.0ccのメタノール供給量に対して、筒体上部12aから供給される空気の供給量を約3.5~6.0L/minの範囲で変化させる。これにより、ラジカル化触媒反応の温度を約450~500℃の範囲で変化させることが可能となる。したがって、空気供給部からの空気の供給量を変化させることにより、容易にラジカル化触媒反応の温度を制御することができる。
【0043】
このように、本実施の形態に係るMRガス発生装置10によれば、ラジカル化触媒反応温度を維持させるための随時の加熱を必要とせず、安定した自己反応によりラジカル化反応を起こすことができることから、空気の供給量を変化させるだけで、容易にラジカル化反応温度を制御することができる。また、発生するMRガスの濃度はラジカル化触媒反応温度に依存することから、上述のように空気の供給量を変化させて反応温度を制御することで、MRガスの濃度を容易に制御することができる。これにより、滅菌対象によって容易にMRガスの濃度を変化させることができ、種々の対象に対して滅菌処理を施すことが可能となる。」
(キ)
「【0068】
本実施の形態に係るMRガス発生装置10では、上述したような、ハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒30を複数層積層させて多層構造の触媒層31を形成することが好ましい。」
(ク)
「【0077】
そしてまた、上述のように、この触媒カートリッジ13では、安定した自己反応によるラジカル化触媒反応を可能していることから、筒体12に接続された空気供給部からの空気の供給量を任意に制御することにより、自己反応によるラジカル化触媒反応温度を容易に変動制御することができ、発生させるMRガスの濃度を容易に変化させることが可能となる。これにより、メタノールガスに混合させる空気に供給量を変化させるだけで、滅菌対象によって適した濃度のMRガスを簡単に発生させることができ、種々の対象に対して効率的な滅菌処理を行うことができる。また、このように、適した濃度のMRガスを任意に発生させることができることから、メタノールの供給量を必要最小限に抑えることが可能となり、より安全に装置を使用することができるだけでなく、環境にも適した滅菌処理を実現することができる。」
(ケ)
「【0079】
図13は、本実施の形態に係るMRガス発生装置10を適用した滅菌処理装置40の一例を概略的に示した模式図である。この図13に示すように、滅菌処理装置40は、メタノールタンク41と、MRガス発生装置10’と、滅菌対象物を保持してMRガス発生装置10’から発生したMRガスによって滅菌処理を施す場となる滅菌タンク42とから構成されている。」
(コ)
「【0082】
MRガス発生装置10’から発生したMRガスは、図13中矢印に示すように、滅菌タンク42内を循環し、滅菌対象物43を滅菌する。なお、この滅菌タンク42内においては、滅菌タンク42上部に循環ファン44を設けて、効率的にMRガスを滅菌タンク42内に循環させるようにしてもよい。このようにMRガスを滅菌タンク42内で効率的に循環させることにより、MRガスの濃度を高めることができ、滅菌対象物43に対する滅菌効果をより向上させることができる。」
(サ)
「【0089】
また、本実施の形態に係るMRガス発生装置10によれば、筒体上部12aにおける空気の供給量を変化させることにより、触媒の自己反応によるラジカル化反応温度を容易に制御することができるので、発生するMRガスの濃度を容易に変化させることができる。これにより、例えばウイルス等のDNAを破壊することを目的としてMRガスを暴露させる場合には、空気の供給量を増やしてラジカル化反応温度を高め、濃度の高いMRガスを発生させるといったように、滅菌対象によって空気の供給量を変化させて、発生させるMRガスの濃度を変化させることができる。」
(2) 図13
「
[図:0001394284000001.jpg]
」
2 甲第2号証
(1) 特許請求の範囲
「【請求項1】ハウジング内に、ホルムアルデヒドガスを発生させるホルムアルデヒドガス発生器と、前記ホルムアルデヒドガスの湿度を調節する湿度調節器と、前記ホルムアルデヒドガスの温度を調節する温度調節器と、前記ホルムアルデヒドガスを被殺菌空間内へ搬送して導入するガス搬送器と、前記被殺菌空間内からの排ガスを処理する排ガス処理器と、前記排ガスを排出するガス排出器とを設け、さらに、前記ホルムアルデヒドガス発生器において前記ホルムアルデヒドガスを所定の範囲の濃度で発生させ、前記湿度調節器により前記ホルムアルデヒドガスの湿度を所定の範囲に制御し、前記温度調節器により前記ホルムアルデヒドガスの温度を所定の範囲に制御し、前記ガス搬送器によるガス搬送量を所定の範囲に制御し、前記排ガス処理器による排ガス中のホルムアルデヒドの量を所定の範囲に制御し、前記ガス排出器による排ガス排出量を制御し、また、前記被殺菌空間内に設けたホルムアルデヒドガス濃度、湿度、および温度モニタから前記被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、および温度の値に基づき、前記被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度をそれぞれ、160ppm以上、50~90相対湿度%、20~40℃に制御する制御器を有するホルムアルデヒド殺菌装置。
・・・
【請求項3】密閉された室内にホルムアルデヒドガスを供給すると共に排出するホルムアルデヒドガス供給排出装置と、
前記室内の圧力を調整する室圧調整装置とを備え、
前記ホルムアルデヒドガス供給排出装置は、前記ホルムアルデヒドガスを発生するホルムアルデヒドガス発生器と、前記ホルムアルデヒドガスの湿度を調節する湿度調節器と、前記ホルムアルデヒドガスの温度を調節する温度調節器と、前記ホルムアルデヒドガスを室内へ搬送して導入するガス搬送器と、前記室内からの排ガスを処理する排ガス処理器と、前記排ガスを排出するガス排出器と、前記室内のホルムアルデヒドガスの濃度、湿度及び温度を所定の濃度、湿度及び温度に制御する制御部とを有し、
前記室圧調整装置は、前記室内に室外の空気を給気する給気ユニットと、前記室内の空気を前記室外に排気する排気ユニットと、前記室内と前記室外との圧力差を検出する圧力差検出手段と、前記圧力差検出手段により検出された検出値に基づいて前記給気ユニット及び前記排気ユニットを制御する制御手段と、前記圧力差検出手段による前記検出値に基づいて前記室圧の制御状況を出力する制御状況出力手段とを有することを特徴とするホルムアルデヒドガス殺菌装置。」(2頁2行~3頁15行)
(2) 発明の詳細な説明
ア
「技術分野
本発明は、ホルムアルデヒドガスにより被殺菌空間の殺菌を行うホルムアルデヒドガス殺菌装置に関するものである。」(4頁2行~4行)
イ
「しかし、ホルムアルデヒドガスによる殺菌(以下、本明細書では「滅菌」をも意味する)効果は、被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度により大きく依存することから、十分保証可能な殺菌効果を得るためには、単にホルムアルデヒドガスを特定の時間被殺菌空間に充満させるということでは十分ではない。・・・また、被殺菌空間内は、密閉された空間(室)となることから室内圧力を制御する必要も生じる。」(4頁10行~21行)
ウ
「この発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置は、ハウジング内に、ホルムアルデヒドガスを発生させるホルムアルデヒドガス発生器と、前記ホルムアルデヒドガスの湿度を調節する湿度調節器と、前記ホルムアルデヒドガスの温度を調節する温度調節器と、前記ホルムアルデヒドガスを被殺菌空間内へ搬送して導入するガス搬送器と、前記被殺菌空間内からの排ガスを処理する排ガス処理器と、前記排ガスを排出するガス排出器とを設け、さらに、前記ホルムアルデヒドガス発生器において前記ホルムアルデヒドガスを所定の範囲の濃度で発生させ、前記湿度調節器により前記ホルムアルデヒドガス中の湿度を所定の範囲に制御し、前記温度調節器により前記ホルムアルデヒドガスの温度を所定の範囲に制御し、前記ガス搬送器によるガス搬送量を所定の範囲に制御し、前記排ガス処理器による排ガス中のホルムアルデヒドの量を所定の範囲に制御し、前記ガス排出器による排ガス排出量を制御し、また、前記被殺菌空間内に設けたホルムアルデヒドガス濃度、湿度、および温度モニタから前記被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、および温度の値に基づき、前記被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度をそれぞれ、160ppm以上、50~90相対湿度%、20~40℃に制御する制御器を有する。・・・この発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置によれば、搬送が容易で、排ガスをクリーンにすることができる。また、制御器により被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度をそれぞれ、160ppm以上、50~90相対湿度%、20~40℃に制御するため、十分に保証可能な殺菌効果を得ることができる。」(4頁23行~5頁16行)
エ
「この発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置によれば、制御器により被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度をそれぞれ、所定の濃度、所定の湿度、所定の温度に制御するため、十分に保証可能な殺菌効果を得ることができる。」(5頁29行~6頁3行)
オ
「また、この発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置は、前記制御部が前記室内に設けたホルムアルデヒドガス濃度モニタの出力値に基づいて前記室内のホルムアルデヒドガス濃度を160ppm以上に制御し、前記室内に設けた湿度モニタの出力値に基づいて前記室内の湿度を50~90%(相対湿度)に制御し、前記室内に設けた温度モニタの出力値に基づいて前記室内の温度を20~40℃に制御することを特徴とする。」(6頁19行~24行)
カ
「ホルムアルデヒドガスによる殺菌効果は、湿度の上昇に相関していることが知られていることから、最適な湿度を保持しつつホルムアルデヒドを発生させることが好ましい。具体的には、メタノールから、(1)触媒を用いて発生させる手段、・・・等が挙げられる。本発明においては、特に(1)が好ましい。この際、同時に水が副生成するが極めて少量である。
上述の触媒を用いて発生させる手段で用いられる具体的な触媒として、白金、銅、アルミニウム、又は炭素等、又それらの混合物が挙げられる。この触媒を円筒状の容器に充填し、円筒状容器を温度調節して該触媒を所定の温度に加熱、冷却する。所定の量のメタノールをまず気化させ、触媒部分へ送り、触媒反応を開始する。」(8頁22行~9頁3行)。
キ
「本発明において、適当な濃度のホルムアルデヒドガス濃度を、適当な湿度の範囲内で長時間維持するために、この閉空間内の湿度を調節することが好ましい。この目的で設けられる湿度調節手段は特に制限はなく、通常公知の加湿、または除湿装置が使用可能である。この際空間の容積及びその形状にも依存するが、十分な加湿、または除湿容量を有する装置を用いることにより実質的に湿度のバラツキを無視できる程度に調節可能である。
ホルムアルデヒドガスによる殺菌効果が湿度に依存することが知られているが、相対湿度が有る程度以上高くなると、露結現象により結露が発生し、被殺菌空間内に凝集することによりホルムアルデヒド、又はその酸化物であるギ酸等が壁等に付着することとなる。この場合、被殺菌空間内を汚染することとなる。
従って、本発明においては、ホルムアルデヒドの殺菌効果を十分発揮させ、かつ上記結露の現象が起こらない程度の湿度を維持することが重要となる。この湿度の範囲は、温度に依存するが、温度範囲が20~40℃の範囲において、相対湿度50~90%の範囲(より好ましくは80~90%)である。この範囲より低い湿度では十分な殺菌効果がえられず、また、この範囲より高い場合(90%以上)は結露の発生により汚染が生じる可能性がある。」(10頁6行~21行)」
ク
「ここで所定時間、室内の温度、湿度、ホルムアルデヒドガスの濃度がそれぞれ温度20~40℃の範囲、湿度50~90%(相対湿度)の範囲、ホルムアルデヒドガス濃度160ppm以上を維持している間、室圧調整装置により室内の圧力を陽圧力に維持する。即ち、図3に示すフローチャートに示す処理により、室内を陽圧力(10~20Pa)に維持する。なお、このフローチャートに基づく制御は、コントロールユニット58により微小時間間隔ごとに繰り返して行われる。また陽圧力とは、(室内圧力)-(室外圧力)が正の値を示す場合をいう。」(15頁26行~16頁3行)
3 甲第3号証
(1) 特許請求の範囲
【請求項1】 閉空間内の温度を20℃~40℃の範囲内に、かつ該閉空間内の湿度を相対湿度50%~90%の範囲に維持しつつ、該閉空間内にホルムアルデヒドを少なくとも2000ppm以上の濃度に維持することを特徴とする閉空間殺菌方法。
(2) 発明の詳細な説明
ア
「【0032】ホルムアルデヒドガスによる殺菌効果が湿度に依存することが知られているが、相対湿度が有る程度以上高くなると、露結現象により結露が発生し、該空間内に凝集することによりホルムアルデヒド、又はその酸化物であるギ酸等が壁等に付着することとなる。この場合、該空間内を汚染することとなる。
【0033】従って、本発明においては、ホルムアルデヒドの殺菌効果を十分発揮させ、かつ上記結露の現象が起こらない程度の湿度を維持することが重要となる。係る湿度の範囲は、温度に依存するが、温度範囲が20℃から~50℃の範囲において、好ましくは相対湿度50%から90%の範囲(より好ましくは80%から90%)であることが好ましい。係る範囲より低い湿度では十分な殺菌効果がえられず、また、係る範囲より高い場合(90%以上)は結露の発生により汚染が生じる可能性がある。」
イ
「【0050】
【実施例】面積約250m2、容積約1000m3の立方体閉空間内に、上記発生装置(ホルムアルデヒドガス750g/時間)を5台設置した。また、殺菌効果測定用に、BI(B.Stearo 106, B.Subt 106)約150本を各所に設置した。ホルムアルデヒドガス濃度を8箇所(床面、天井面、ブース内)でモニターし、その平均値をホルムアルデヒドガス濃度とした。該空間内温度は30℃~35℃、相対湿度を70%~80%の範囲に制御した。」
4 甲第5号証
(1)
「【0027】このホルムアルデヒドガス殺菌装置において、使用済みの介護用品や医療用具等を殺菌する場合には、まずこれら介護用品や医療用具等を殺菌室2に搬入する。第1閉空間2a内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度を濃度センサ76、湿度センサ78、温度センサ80によりモニタし、これから得られた値により制御器74で演算を行い、この制御器74によってホルムアルデヒドガス発生器94、温度調節器92、湿度調節器90等を制御し、第1閉空間2a内を所望する雰囲気の状態にする。即ち、室内の温度、湿度、ホルムアルデヒドガスの濃度がそれぞれ温度20~40℃の範囲、湿度50~90%(相対湿度)の範囲、ホルムアルデヒドガス濃度160ppm以上とし、この状態を所定時間(5時間)維持している間に、使用済みの介護用品や医療用具を殺菌する。」
(2)
「【0057】従って、このホルムアルデヒドガス殺菌装置66においては、ホルムアルデヒドの殺菌効果を十分発揮させ、かつ上記結露の現象が起こらない程度の湿度を維持することが重要となる。この湿度の範囲は、温度に依存するが、温度範囲が20~40℃の範囲において、相対湿度50~90%の範囲(より好ましくは80~90%)である。この範囲より低い湿度では十分な殺菌効果がえられず、また、この範囲より高い場合(90%以上)は結露の発生により汚染が生じる可能性がある。」
5 甲第9号証
(1) 特許請求の範囲
【請求項1】
ホルムアルデヒド含有ガスにより鶏卵の外殻と、外殻と外卵殻膜との空間とを殺菌する、鶏卵の殺菌方法。
(2) 発明の詳細な説明
「【0020】ホルムアルデヒドガスによる殺菌効果が湿度に依存することが知られているが、相対湿度が有る程度以上高くなると、露結現象により結露が発生し、ハウジング内や鶏卵の表面に凝集することによりホルムアルデヒド、又はその酸化物であるギ酸等が付着することとなる。この場合は鶏卵表面を汚染することとなる。
【0021】従って、本発明においては、ホルムアルデヒド含有ガスの殺菌効果を十分発揮させ、かつ上記結露の現象が起こらない程度の湿度を維持することが重要となる。係る湿度の範囲は、温度に依存するが、温度範囲が20~50℃の範囲において、好ましくは相対湿度50~90%の範囲(より好ましくは80~90%)であることが好ましい。係る範囲より低い湿度では十分な殺菌効果がえられず、また、係る範囲より高い場合(90%以上)は結露の発生により汚染が生じる可能性がある。」
6 甲第12号証
「【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、定量対象である殺菌物質は、メタノール、エタノール及びホルムアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する活性種を含む処理ガスに含まれる活性種である。該処理ガスは、メタノール及び/又はエタノールを触媒の存在下に反応させるか、或いはホルムアルデヒド水溶液、パラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド発生源を触媒と反応させて生成する。これらの処理ガスの混合ガスを用いることもできる。
例えばメタノールと触媒との反応による活性種(ラジカル)の発生は、以下のように起こっていると推測される。エタノールについても同様の反応により各種の活性種が生成し得る。
【0007】
また、ホルムアルデヒドについても加熱下での反応により同様な活性種が発生すると予測され得る。
【0008】
【化1】
[図:0001394284000002.jpg]
【0009】
本発明の処理ガスは、・CHO、・CH2OH,HC(=O)OO・(ギ酸ペルオキシドラジカル)、ヒドロキシラジカル(・OH)、スーパーオキシドラジカル(HO2・)、水素ラジカル(H・)などの少なくとも1種の活性種を含み得、さらに、一酸化炭素、二酸化炭素、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、メタン、エタンなどを含み得る。
・・・
メタノールは、通常気化させて、ガス状態で触媒と接触させ、処理ガスとし、殺菌対象物を含む密閉空間に供給される。メタノール由来の処理ガスには、未反応のメタノールなどの非ラジカル物質が含まれているが、上記処理ガスによる殺菌ないし滅菌作用には影響しないと考えられる。」
7 甲第24号証
(1)
「【0014】次に、処理袋2内の減圧を行う(ステップS14)。即ち、ホルマリンガス殺菌装置4のポンプ16を停止させポンプ24のみを運転することにより、処理袋2内の空気を処理袋2外に排出し処理袋2内の減圧を行う。次に、処理袋2内にホルマリンガスを供給し(ステップS15)、介護用マットの滅菌処理を行う。即ち、ホルマリンガス殺菌装置4のホルマリンガス発生装置14、ポンプ16、湿度調節器18、温度調節器20を制御することにより処理袋2内に、温度及び湿度(以後相対湿度を意味する)がそれぞれ温度20~40℃、湿度50~90%であり、ホルマリンガス濃度160ppm以上のホルマリンガスを供給し介護用マットを滅菌する。」
(2)
「【0020】また、ホルムアルデヒドガスによる殺菌効果は、湿度に依存することが知られているが、相対湿度が有る程度以上高くなると、露結現象により結露が発生し、被殺菌空間内に凝集することによりホルムアルデヒド、又はその酸化物であるギ酸等が壁等に付着することとなる。この場合、被殺菌空間内を汚染することとなることから、ホルムアルデヒドの殺菌効果を十分発揮させ、かつ結露の現象が起こらない程度の湿度を維持することが重要となる。この湿度の範囲は、温度範囲が20℃~40℃の範囲において、好ましくは相対湿度50%~90%の範囲(より好ましくは80%~90%)である。」
8 甲第25号証
(1)
「【0027】このホルムアルデヒドガス殺菌装置において、使用済みの介護用品や医療用具等を殺菌する場合には、まずこれら介護用品や医療用具等を殺菌室2に搬入する。第1閉空間2a内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度を濃度センサ76、湿度センサ78、温度センサ80によりモニタし、これから得られた値により制御器74で演算を行い、この制御器74によってホルムアルデヒドガス発生器94、温度調節器92、湿度調節器90等を制御し、第1閉空間2a内を所望する雰囲気の状態にする。即ち、室内の温度、湿度、ホルムアルデヒドガスの濃度がそれぞれ温度20~40℃の範囲、湿度50~90%(相対湿度)の範囲、ホルムアルデヒドガス濃度160ppm以上とし、この状態を所定時間(5時間)維持している間に、使用済みの介護用品や医療用具を殺菌する。」
(2)
「【0056】ホルムアルデヒドガスによる殺菌効果が湿度に依存することが知られているが、相対湿度が有る程度以上高くなると、露結現象により結露が発生し、被殺菌空間内に凝集することによりホルムアルデヒド、又はその酸化物であるギ酸等が壁等に付着することとなる。この場合、被殺菌空間内を汚染することとなる。
【0057】従って、このホルムアルデヒドガス殺菌装置66においては、ホルムアルデヒドの殺菌効果を十分発揮させ、かつ上記結露の現象が起こらない程度の湿度を維持することが重要となる。この湿度の範囲は、温度に依存するが、温度範囲が20~40℃の範囲において、相対湿度50~90%の範囲(より好ましくは80~90%)である。この範囲より低い湿度では十分な殺菌効果がえられず、また、この範囲より高い場合(90%以上)は結露の発生により汚染が生じる可能性がある。」
第6 判決の拘束力
1 本件無効審判事件に関する一次判決の拘束力について
審決を取り消す旨の判決の拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたる(最三小平成4年4月28日判決、民集46巻4号245頁)。
したがって、当審の審理は、一次判決の判断、特に、以下の判示事項に拘束されるものである(なお、下線は、当審が付したものがある。当審が引用する取消判決の頁行は、知的財産高等裁判所ウェブページに掲載された判決におけるものである。以下、同様。)(なお、二次判決の判示事項については、後述する。)。
「3 本件審決の理由の要旨
(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。
その要旨は,請求人(原告)の主張する訂正発明2ないし4に係る無効理由1(本件出願前に頒布された刊行物である甲1(特開2010-51692号公報)を主引用例とする進歩性の欠如),無効理由2(サポート要件違反),無効理由3(実施可能要件違反)及び無効理由4(明確性要件違反)は,いずれも理由がないというものである。
(2) 本件審決が認定した甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。),訂正発明2と甲1発明の一致点及び相違点,無効理由1についての判断の要旨は,以下のとおりである。
ア 甲1発明
メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え,該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と,上記メタノールガス発生部の上方に位置して,熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり,該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており,上記メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに,上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と,上記筒体部の上方に位置し,該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し,上記触媒部は,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され,該ラジカル反応触媒を複数積層してなり,空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して,MRガスを発生するMRガス発生装置と,上記MRガス発生装置における生成MRガス量を供給空気量とメタノール量で制御する生成MRガス量制御手段と,上記MRガス発生装置から発生したMRガスによって滅菌処理を施す滅菌タンクを備えた滅菌処理装置であって,DNAを破壊することが可能な滅菌処理装置。
イ 訂正発明2と甲1発明の一致点及び相違点
(一致点)
「メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え,該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と,上記メタノールガス発生部の上方に位置して,熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり,該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており,上記メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに,上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と,上記筒体部の上方に位置し,該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し,上記触媒部は,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され,該ラジカル反応触媒を複数積層してなり,空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して,MRガスを発生するMRガス発生装置と,上記MRガス発生装置における生成MRガス量を供給空気量とメタノール量で制御する生成MRガス量制御手段と,上記MRガス発生装置から発生したMRガスが供給される滅菌タンクを備えたDNA破壊処理装置。」である点。
(相違点1)
訂正発明2は,滅菌タンク内の温度を制御する温度制御手段と,滅菌タンク内の湿度を制御する湿度制御手段と,滅菌タンクに供給されたMRガスを排気する排気処理部と,上記排気処理部により滅菌タンクから排気するMRガスの排気量を制御するMRガスの排気量制御手段と,滅菌タンクにおけるMRガスのホルムアルデヒド成分の濃度を測定するホルムアルデヒド成分濃度測定手段と,臭いを検出又は測定する手段を備え,上記ホルムアルデヒド成分濃度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が生成MRガス量制御手段に帰還され,MRガス発生装置において,一定の触媒の自己反応温度と濃度のMRガスとなるように,生成MRガス量制御手段によりMRガス発生装置における生成MRガス量が供給空気量とメタノール量で制御されるとともに,上記排気量制御手段により滅菌タンクから排気するMRガスの排気量を制御することにより,滅菌タンクの庫内ガス濃度を一定にするという構成を備えるのに対し,甲1発明は,かかる構成について記載されていない点。
(相違点2)
訂正発明2は,上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による滅菌タンク内のMRガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え,上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され,上記排気量制御手段により滅菌タンクから排気するMRガスの排気量を制御することにより,滅菌タンクの庫内差圧を一定にするという構成を備えるのに対し,甲1発明は,かかる構成について記載されていない点。
ウ 無効理由1についての判断の要旨
本件審決は,無効理由1について,1(当審注:判決文は〇に「1」)相違点1の容易想到性は認められるが,相違点2の容易想到性は認められないから,甲1発明に甲2(国際公開第01/026697号の再公表公報)に記載された発明及び周知技術を組み合わせることにより,当業者が訂正発明2を容易に発明をすることができたということはできない,2(当審注:判決文は〇に「2」)訂正発明2を引用する訂正発明3,訂正発明3を引用する訂正発明4についても,同様に当業者が容易に発明をすることができたということはできない旨判断した。」(一次判決4頁20行~7頁19行)
「第4 当裁判所の判断
1 取消事由1-1(甲1を主引用例とする訂正発明2の進歩性の判断の誤り)について
・・・
(4) 相違点2の容易想到性について
ア 訂正発明2の「庫内差圧検出手段」の意義等について
(ア) 訂正発明2の特許請求の範囲(請求項2)の記載によれば,訂正発明2の「庫内差圧検出手段」は,「上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による上記暴露部の暴露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出」する検出手段であり,訂正発明2においては,「上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され,上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより,上記暴露部の庫内差圧を一定にする」ことを理解できる。
また,訂正発明2の特許請求の範囲(請求項2)中の「上記排気処理部により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するバイオガスの排気量制御手段」との文言によれば,訂正発明2の「排気量制御手段」は,「上記排気処理部により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御」する制御手段であることを理解できる。
そして,訂正発明2の特許請求の範囲(請求項2)の記載によれば,訂正発明2の核酸分解処理装置は,「暴露部」の「バイオガスのホルムアルデヒド成分の濃度」の「ガス濃度情報」が「生成ガス量制御手段」に帰還され,
「上記生成ガス量制御手段」及び「上記排気量制御手段」により「バイオガス発生部」における「生成ガス量」及び「暴露部」から排気する「バイオガスの排気量」を制御することにより,「暴露部」の「庫内ガス濃度」を一定にし,かつ,「庫内差圧情報」が「排気量制御手段」に帰還され,「上記排気量制御手段」により「暴露部から排気するバイオガスの排気量」を制御することにより,「暴露部」の「庫内差圧」を一定にすること,すなわち,「暴露部」の「ガス濃度情報」及び「庫内差圧情報」を基に,「生成ガス量」及び「バイオガスの排気量」を制御し,「暴露部」の「庫内ガス濃度」及び「庫内差圧」の両者を一定にする制御を行うものであることを理解できる。
しかるところ,訂正発明2の特許請求の範囲(請求項2)には,「庫内差圧検出手段」及び「排気量制御手段」の具体的な構造や装置構成について規定した記載はなく,また,「暴露部」の「庫内差圧」をいかなる数値又は数値範囲で一定にするのかについて規定した記載もない。
(イ) 次に,本件明細書の発明の詳細な説明には,「本発明」の実施形態として,核酸分解処理装置100の制御部150が,暴露部120に設けられたガス濃度センサ129から供給された暴露空間内のガス濃度情報に基づき,バイオガス発生部110へのエア供給量及びメタノール供給量の制御及び排気処理部140の排気ブロア143の吸入量の制御により,暴露部120の庫内の濃度を一定にする制御を行うとともに,暴露部120に設けられた庫内圧力センサ132から供給された暴露空間内の圧力情報に基づき,排気処理部140の外気導入バルブ142の開閉度及び排気ブロア143の回転数の制御により,陰圧範囲内を目標値とした暴露部120の庫内差圧を一定にする制御を行うことが記載されている(【0028】,【0103】,【0111】,【0140】~【0148】,【0150】,【0161】~【0164】,【0182】,【0183】,図10)。これらの記載は,制御部150により暴露部120の庫内差圧を陰圧の数値範囲に制御することを開示するものと認められる。
他方で,本件明細書の「本発明の実施の形態について,図面を参照して詳細に説明する。なお,本発明は以下の例に限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲で,任意に変更可能であることは言うまでもない。」(【0026】)との記載に照らすと,本件明細書には,「本発明の要旨を逸脱しない範囲」であれば,「本発明」の実施形態が上記実施形態に限定されるものではないことの開示がある。
しかるところ,本件明細書には,「庫内差圧検出手段」及び「排気量制御手段」を特定の構造や装置構成のものに限定する記載はないし,また,「暴露部」の「庫内差圧を一定にする」にいう「一定」の数値範囲を定義した記載もない。
また,訂正発明2の特許請求の範囲(請求項2)の記載から,訂正発明2の核酸分解処理装置は,「暴露部」の「ガス濃度情報」及び「庫内差圧情報」を基に,「生成ガス量」及び「バイオガスの排気量」を制御し,「暴露部」の「庫内ガス濃度」及び「庫内差圧」の両者を一定にする制御を行うものであることを理解できること(前記(ア)),本件明細書の発明の詳細な説明には,「本発明」は,訂正発明2の構成を採用したことにより,フィードバック制御により暴露部の暴露空間内における温度,湿度,濃度の定量的制御を行うことができ,検体の種類に対応した短時間で高効能を発揮する条件を定義することができるという効果を奏すること(【0021】,【0196】)の開示があること(前記(1)イ(イ))を総合すると,訂正発明2は,フィードバック制御により暴露部の暴露空間内の温度,湿度,「庫内ガス濃度」及び「庫内差圧」の定量的制御を行うことにより,検体の種類に対応した短時間で高効能を発揮する条件を定義することができるようにしたことに技術的意義があることが認められる。
そして,訂正発明2の上記技術的意義に照らすと,「庫内差圧」を陰圧の数値範囲に制御する必然性は見いだし難い。また,本件明細書全体をみても,「庫内差圧」を陰圧の数値範囲に制御することによって,陽圧の数値範囲に制御することと比して有利な効果を生じるなどの技術的意義があることについての記載も示唆もない。
(ウ) 以上の訂正発明2の特許請求の範囲(請求項2)の記載及び本件明細書の記載に鑑みると,訂正発明2の「庫内差圧検出手段」の検出の対象となる「庫内差圧」は,「庫内」(暴露部の暴露空間内)の圧力と暴露空間外の圧力との差圧であれば,特定の数値範囲のものに限定されるものではなく,陰圧の数値範囲のものに限定されるものでもないと解すべきである。
したがって,訂正発明2の「庫内差圧検出手段」は,「滅菌タンク内がタンク外よりも陰圧であることを検出する庫内差圧検出手段」であって,滅菌タンク内のMRガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出するものであると限定解釈した本件審決の判断は誤りである。
イ 甲2の開示事項について
(ア) 前記(3)ア及びイ(イ)の記載事項を総合すると,甲2には,「本発明」の第2の実施の形態(図2)として,1(当審注:判決文は〇に「1」)ホルムアルデヒドガス供給排出装置4及び室圧調整装置6を備えて構成されるホルムアルデヒドガス殺菌装置であって,2(当審注:判決文は〇に「2」)ホルムアルデヒドガス供給排出装置4は,ホルムアルデヒドガス発生器36,湿度調節器32,温度調節器34,排ガス処理器46,外気を被殺菌空間内に導入するポンプ26,被殺菌空間から外気へ排気するポンプ28,ホルムアルデヒドガス濃度センサ12,湿度センサ14,温度センサ16及び制御器24を備え,制御器24は,上記各センサにより得られた被殺菌空間100内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度の値に基づいて,これらの値が所定の値となるように,ホルムアルデヒドガス発生器36,湿度調節器32,温度調節器34,ポンプ26及び28を制御し,3(当審注:判決文は〇に「3」)室圧調整装置6は,室内に室外の空気を給気する給気ユニット52,室内の空気を室外に排気する排気ユニット54,室内と室外との圧力差を検出する微差圧検出器56,コントロールユニット58を備え,コントロールユニット58は,微差圧検出器56により検出された検出値に基づいて給気ユニット52及び排気ユニット54を制御し,排気ユニット54には排気量調整電磁弁74及び送風機82が設けられ,室内から排気される空気に含まれるホルムアルデヒドガス等を処理した後に室外に排出することができ,給気ユニット52及び排気ユニット54の上記制御により,室内の圧力を「陽圧力」に維持するものであることが開示されている。
このように,甲2における「本発明」の第2の実施の形態は,ホルムアルデヒドガスの給排気状況に依存して生じる被殺菌空間の室内と室外との圧力差を検出する微差圧検出器56を備え,微差圧検出器56により検出された検出値がコントロールユニット58に帰還(フィードバック)され,コントロールユニット58により被殺菌空間内の室内から室外に排気される空気に含まれるホルムアルデヒドガス等の排気量及び室内に給気する空気の給気量を制御することにより,被殺菌空間の室内の圧力を一定にするという構成を備えるものである。
そうすると,甲2における「本発明」の第2の実施の形態の「微差圧検出器56」,「コントロールユニット58」及び「排気量調整電磁弁74及び送風機82」は,それぞれ,訂正発明2における「庫内差圧検出手段」,「上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が・・・帰還され」る「上記排気量制御手段」及び「上記排気量制御手段により制御される排気処理手段」に相当するものと認められる。
したがって,甲2には,相違点2に係る訂正発明2の構成が開示されているものと認められる。」(一次判決18頁11行~59頁17行)
2 本件無効審判事件に関する二次判決の拘束力について
審決を取り消す旨の判決の拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたる(最三小平成4年4月28日判決、民集46巻4号245頁)。
したがって、当審の審理は、二次判決の判断、特に、以下の判示事項(進歩性に関する判断)に拘束されるものである。
「4 本件審決の要旨
(1) 本件審決の要旨は,1(当審注:判決文は〇に「1」)訂正発明2は,本件出願前に頒布された刊行物である甲1に記載された発明(甲1発明)及び甲2発明及び技術常識を組み合わせることにより当業者が容易に発明することができたものとはいえず,また,訂正発明3は訂正発明2の発明特定事項を全て有する発明であり,また,訂正発明4は訂正発明3の発明特定事項を全て有する発明であり,訂正発明2について当業者が容易に発明することができたものとはいえないので,訂正発明3及び4についても当業者が容易に発明することができたものとはいえないから,訂正発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないということはできない,2(当審注:判決文は〇に「2」)本件訂正後の特許請求の範囲は,特許法36条6項1項に規定する要件(以下「サポート要件」という。)を満たしているといえる,3(当審注:判決文は〇に「3」)本件訂正後の本件明細書(以下「訂正明細書」という。)の記載は,同条4項1号に規定する要件(以下「実施可能要件」という。)を満たしている,というものである。
(2) 本件審決が認定した甲1発明,訂正発明2と甲1発明の一致点及び相違点は,以下のとおりである。
ア 甲1発明
「メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え,該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と,上記メタノールガス発生部の上方に位置して,熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり,該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており,該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに,上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と,上記筒体部の上方に位置し,該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し,上記触媒部は,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され,該ラジカル反応触媒を複数積層してなり,空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して,MRガスを発生するMRガス発生装置と,上記MRガス発生装置における生成MRガス濃度を供給空気量とメタノール量で制御する生成MRガス濃度制御手段と,上記MRガス発生装置から発生したMRガスによって滅菌処理を施す滅菌タンクを備えた滅菌処理装置であって,DNAを破壊することが可能な滅菌処理装置。」
イ 一致点及び相違点
【一致点】
「メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え,該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と,上記メタノールガス発生部の上方に位置して,熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり,該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており,該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに,上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と,上記筒体部の上方に位置し,該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し,上記触媒部は,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され,該ラジカル反応触媒を複数積層してなり,空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに由来する活性種を含み生成される複合ガス(以下「バイオガス」という。)を発生するバイオガス発生部と,上記バイオガス発生部における生成ガス量を供給空気量とメタノール量で制御する生成ガス量制御手段と,上記バイオガス発生部により発生したバイオガスが供給される暴露部を備えた核酸分解処理装置。」
【相違点1】
訂正発明2は,暴露部の暴露空間内の温度を制御する温度制御手段と,暴露部の暴露空間内の湿度を制御する湿度制御手段と,暴露部に供給されたバイオガスを排気する排気処理部と,上記排気処理部により暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するバイオガスの排気量制御手段と,暴露部におけるバイオガスのホルムアルデヒド成分の濃度を測定するホルムアルデヒド成分濃度測定手段とを備え,上記ホルムアルデヒド成分濃度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が上記生成ガス量制御手段に帰還され,上記バイオガス発生部において,一定の触媒の自己反応温度と濃度のバイオガスとなるように,上記生成ガス量制御手段により上記バイオガス発生部における生成ガス量が供給空気量とメタノール量で制御されるとともに,上記排気量制御手段により暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより,上記暴露部の庫内ガス濃度を一定にし,上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による暴露部の暴露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え,上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され,上記排気量制御手段により暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより,上記暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にすることを特徴とするのに対して,甲1発明は,かかる構成について記載されていない点。
【相違点2】
訂正発明2は,臭いを検出又は測定する手段を備えるのに対し,甲1発明は,かかる構成について記載されていない点。」(二次判決8頁16行~11頁14行)
「4 本件出願日当時の技術常識等について
(1)ア 本件出願日前に頒布された甲23,甲82ないし84には,それぞれ別紙4のような記載がある。
イ 上記アの各文献における記載を総合すると,本件出願日当時,バイオハザード施設やケミカルハザード施設等,人体に有害な物質が室内に存在する場合には,室内から室外へその物質が漏えいすることがないように,室内を室外に対して陰圧に制御することや,人体に有害なオゾンガスを用いて室内の滅菌を行う場合には,オゾンガスが室内から室外へ漏洩することがないように,室内を室外に対して陰圧に制御することは,周知の技術であったものと認められる。
(2)ア 本件出願日前に頒布された甲81,甲85,甲88,甲94及び甲95には,それぞれ別紙5のような記載がある。
イ 上記アの各文献における記載を総合すると,本件出願日当時,ホルムアルデヒドガスは,人体に有毒であることは周知であり,また,滅菌・殺菌のためにホルムアルデヒドガスを処理室内で使用するに当たり,処理室内の圧力を処理室外の圧力に対して陰圧とした状態で使用する場合があることは,本件出願日当時の技術常識であったと認められる。
5 取消事由1-1(甲1を主引用例とする訂正発明2の進歩性の判断の誤り)について
(1) 特許無効審判事件についての審決の取消訴訟において審決取消しの判決が確定したときは,審判官は特許法181条2項の規定に従い当該審判事件について更に審理を行い,審決をすることとなるが,審決取消訴訟は行政事件訴訟法の適用を受けるから,再度の審理ないし審決には,同法33条1項の規定により,上記取消判決の拘束力が及び,この拘束力は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから,取消判決の上記認定判断に抵触する認定判断をすることは許されず(最高裁第三小法廷判決平成4年4月28日判決・民集46巻4号245頁参照),その審判を不服とする審決取消訴訟においても,これを前提に判断されるべきことになる。
前記第2の3(2)のとおり,一次判決は,1(当審注:判決文は〇に「1」)甲2における「本発明」の第2の実施の形態の「微差圧検出器56」,「コントロールユニット58」及び「排気量調整電磁弁74及び送風機82」は,それぞれ,訂正前発明2における「庫内差圧手段」,「上記庫内差圧検出手段による検出結果による検出結果から得られる庫内差圧情報が・・・帰還され」る「上記排気量制御手段」及び「上記排気量制御手段により制御される排気処理手段」に相当するものと認められるから,甲2には,相違点2に係る本件訂正前の請求項2の発明の構成が開示されているといえる,2(当審注:判決文は〇に「2」)甲1及び甲2に接した当業者は,甲1発明において安定した濃度の滅菌ガスを発生させるとともに,十分に保証可能な殺菌効果を得るために甲2に記載の被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度をそれぞれ所定の値に制御し,かつ,被殺菌空間の室圧を一定に保つための構成を適用する動機づけがあると認められる,3(当審注:判決文は〇に「3」)したがって,当業者は,甲1及び甲2に基づいて,甲1発明に甲2に記載の上記構成を適用して相違点2に係る本件訂正前の請求項2に係る発明の構成を容易に想到し得たものと判断した。
そして,被告は,一次判決の確定後の審判手続において,前記第2の2のとおり,一次訂正の内容に加えて更に請求項2に「上記暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にする」(二重下線は本件訂正箇所を示す。)(当審注:判決文は「陰圧で」に二重下線が付されている。)との訂正を行い,本件審決は,前記第2の4(2)イのとおり,一次審決の相違点1(ただし,本件審決が認定した相違点2を除く。)及び2の構成を合わせて相違点1とし,本件訂正により訂正発明2に加わった構成である「暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にすることを特徴とする」点を同相違点に加えた。
以上の経緯を踏まえると,訂正発明2の進歩性の判断に関しては,甲2には,一次審決が認定した相違点2の構成が開示されていることを前提として,さらに,「暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にする」という訂正発明2の構成が容易想到といえるかについて判断されるべきことになる。
以下,これを前提として,検討する。
(2) 甲2の開示事項について
甲2の発明の詳細な説明には,1(当審注:判決文は〇に「1」)甲2発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置は,室内と室外との圧力差を検出する圧力差検出手段と,圧力差検出手段により検出された検出値に基づいて給気ユニットと排気ユニットを制御する制御手段を有しており,こうした室内調整装置を備えるため,室内温度の上昇により室内の空気が膨張したような場合においても,室内を一定に保つことができる(別紙3の2(4))との記載があり,2(当審注:判決文は〇に「2」)「発明を実施するための最良の形態」の1つである「第2の実施の形態」として,室内と室外との圧力差を検出する微差圧検出器56,微差圧検出器56により検出された検出値に基づいて給気ユニット52及び排気ユニット54を制御するコントロールユニット58を備え,コントロールユニット58は,微差圧検出器56により検出された検出値に基づいて,給気量調整電磁弁62,送風機66,排気量調整電磁弁74及び送風機82等の制御を行う構成が開示され,さらに,湿度センサ14,温度センサ16により得られた室内の温度及び湿度がそれぞれ所定の温度20~40℃,湿度の範囲50~90%(相対湿度)の範囲になるように制御器24で湿度調整器32及び温度調整器34で調整し,ホルムアルデヒドガス濃度が160ppm以上で維持するようにホルムアルデヒドガス発生器36及びポンプ26で調整して所定の時間を維持し,さらに,所定の時間,室内の温度,湿度,ホルムアルデヒドガスの濃度を上記の数値で維持している間,室圧調整装置により室内の圧力を陽圧力(10~20Pa)に維持する態様が開示され,その上で,室圧制御装置6により室内と室外の圧力差を常時10~20Paに維持することができるため,ホルムアルデヒドガスを用いて室内の殺菌を行う場合に,室内温度の上昇により室内空気の体積が増加した場合においても,ホルムアルデヒドガスがエアー処理装置76で処理された後に排出されるため,ホルムアルデヒドガスが未処理のまま室外に漏れ出すことを防止することができる(別紙3の2(7)ないし(9))旨の記載がある。
このように,甲2において開示されている,被殺菌空間である室内を室圧調整装置により陽圧に維持する構成は,あくまで第2の実施の形態についてのものであることに加え,甲2の特許請求の範囲(請求項3)には,室内の圧力を調整する室内調整装置について,室内と室外の圧力差を検出する圧力差検出手段と前記圧力差検出手段により検出された検出値に基づいて制御手段を介して室圧を調整するとの発明特定事項を有するに止まり,被殺菌空間を陽圧で制御するとは特定されていないことからすると,甲2発明の技術的意義は,前記3(1)のとおり,被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度をそれぞれ所定の値に制御し,かつ,室内温度の上昇により室内の空気が膨張した場合においても室圧を一定に保つことができ,十分に保証可能な殺菌効果が得られるという効果を奏することにあって,室圧調整装置により室内の圧力を陽圧力(10~20Pa)に維持する態様は,あくまで実施形態の1つであるにすぎないというべきである。
そして,甲2における「本発明」の第2の実施の形態の「微差圧検出器56」,「コントロールユニット58」及び「排気量調整電磁弁74及び送風機82」は,それぞれ,訂正前発明2における「庫内差圧手段」,「上記庫内差圧検出手段による検出結果による検出結果から得られる庫内差圧情報が・・・帰還され」る「上記排気量制御手段」及び「上記排気量制御手段により制御される排気処理手段」に相当するとの一次判決の説示を踏まえると,甲2には,庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備えており,庫内差圧検出手段による検出結果から得られる上記庫内差圧情報が排気量制御手段に帰還され,上記排気量制御手段により被殺菌空間から排気するホルムアルデヒドガスの排気量を制御することにより,被殺菌空間(庫内)の圧力を一定に維持することが開示されているものと認められる。
(3) 相違点1の容易想到性について
前記2(2)のとおり,甲1には,ラジカル化のための触媒反応温度を一定に保ち,安定した濃度のMRガスを発生させる滅菌ガス発生装置を提供することを目的とすることについての開示があり,また,前記3(1)のとおり,甲2には,甲2発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置の構成を採用することにより,被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度をそれぞれ所定の値に制御し,かつ,室内温度の上昇により室内の空気が膨張したような場合においても室圧を一定に保つことができるので,十分に保証可能な殺菌効果が得られるという効果を奏することの開示がある。そうすると,甲1及び甲2に接した当業者は,甲1発明において安定した濃度の殺菌ガスを発生させるとともに,十分に保証可能な殺菌効果を得るために,甲2記載の被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度をそれぞれ所定の値に制御し,かつ,被殺菌空間の室圧を一定に保つための構成を適用する動機づけがある。
そうすると,本件出願日当時,バイオハザード施設やケミカルハザード施設等,人体に有害な物質が室内に存在する場合には,室内から室外へその物質が漏えいすることがないように,室内を室外に対して陰圧に制御することや,人体に有害なオゾンガスを用いて室内の滅菌を行う場合には,オゾンガスが室内から室外へ漏洩することがないように,室内を室外に対して陰圧に制御することは,周知の技術であり(前記4(1)),また,滅菌・殺菌のためにホルムアルデヒドガスを使用するに当たり,処理室内を処理室外の圧力に対して陰圧とした状態で使用する場合もあることは技術常識である(同(2))から,甲1発明に甲2に開示された事項を適用するに当たり,被殺菌空間の状況や目的を踏まえ,こうした周知技術ないし技術常識を参酌して,甲2の被殺菌空間内の圧力を陰圧で維持することも当業者であれば容易に想到し得たものということができる。そして,甲1発明と甲2に開示された事項に周知技術ないし技術常識を参酌して適用した結果,被殺菌空間内を「庫内差圧を陰圧で」維持する構成としたことによって,当業者が予測し得ない顕著な効果を奏すると認めるに足りる証拠はない。
したがって,甲1及び甲2に記載された事項と周知技術ないし技術常識を踏まえれば,相違点1のうち「暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にする」という訂正発明2の構成についても,進歩性を認めることはできない。」(二次判決28頁12行~33頁20行)
第7 当審の判断
当審は、本件訂正発明についての特許は、請求人が主張する無効理由1~4の理由によっては無効にすることはできないと判断する。その理由は、以下のとおりである。
1 訂正明細書の記載事項
訂正明細書には、以下の事項が記載されている。
(1) 発明の詳細な説明
(本ア)
「【0009】
また、液相以外の状態(非ウェット状態)で、核酸を有効に分解する方法として、ヒドロキシメチルラジカル、ヒドロペルオキシラジカル、水素ラジカル、ヒドロキシルラジカルを少なくとも含むラジカル種メタノール由来の気相物質(MRガス)を用いて、核酸が存続可能な温度条件下において、非可逆的に核酸を分解し、不活化する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献3で提案されている非ウエット型の核酸分解剤を用いて核酸を分解する従来の方法では、50℃以上の温度領域において、60分以上の暴露時間を要し、且つ、ホルムアルデヒド成分の濃度が2000ppm以上での効果効能が発揮されるものであった。
【0012】
しかし、現実的な実用としては、常温~体温領域が求められており、且つ、短時間での効果効能を発揮することが求められていた。」
(本イ)
「【課題を解決するための手段】
【0016】
【0017】
本発明は、核酸分解処理装置であって、メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え、該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と、上記メタノールガス発生部の上方に位置して、熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり、該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており、該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに、上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と、上記筒体部の下部に設けられた異常温度センサと、上記筒体部の上部に設けられた触媒温度センサと、上記筒体部の上方に位置し、該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し、上記触媒部は、金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され、該ラジカル反応触媒を複数積層してなり、空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに由来する活性種を含み生成される複合ガス(以下「バイオガス」という)を発生するバイオガス発生部と、上記バイオガス発生部における生成ガス量を供給空気量とメタノール量で制御する生成ガス量制御手段と、上記バイオガス発生部により発生したバイオガスが供給される暴露部と、上記暴露部の暴露空間内の温度を37℃に制御する温度制御手段と、上記暴露部の暴露空間内の湿度を30%~45%に制御する湿度制御手段と、上記暴露部に供給されたバイオガスを排気する排気処理部と、上記排気処理部により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するバイオガスの排気量制御手段と、上記暴露部におけるバイオガスのホルムアルデヒド成分の濃度を測定するホルムアルデヒド成分濃度測定手段と、臭いを検出又は測定する手段を備え、上記暴露部は内部に入れた暴露対象に前記バイオガスを暴露するための、容積が1立方メートル以内の密閉された恒温恒湿槽であり、上記バイオガス発生部では、上記触媒温度センサにより得られる触媒温度情報に基づいて上記メタノールガスの供給の開始により上記触媒部における上記メタノールガスの自己反応を開始するとともに、上記触媒部の触媒ヒータによる加熱の停止を行い、上記異常温度センサ又は上記触媒温度センサにより温度異常が検出された場合には運転を停止し、上記自己反応の開始後は上記メタノールガス発生部から供給されるメタノール量と上記空気供給部から供給される空気量を制御することにより、上記触媒部の自己反応温度が400℃~500℃の範囲で上記バイオガスの発生を制御し、上記ホルムアルデヒド成分濃度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が上記生成ガス量制御手段に帰還され、上記バイオガス発生部において、一定の触媒の自己反応温度と濃度のバイオガスとなるように、上記生成ガス量制御手段により上記バイオガス発生部における生成ガス量が供給空気量とメタノール量で制御されるとともに、上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより、上記暴露部の庫内ガス濃度を一定にし、上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による上記暴露部の暴露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え、上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され、上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより、上記暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にし、上記暴露部内への供給空気量と上記排気処理手段による排気量のバランスを-0~-0.01MPaの範囲とすることにより、上記暴露部内で陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら上記自己反応時の上記暴露部内の結露状態の発生を防止し、上記バイオガス発生部から安定した上記自己反応による上記バイオガスの供給を行うものとすることができる。」
(本ウ)
「【0019】
また、本発明に係る核酸分解処理装置において、上記バイオガス発生部は、メタノール、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素の成分を少なくとも含有した活性酸素とフリーラジカルからなる複合ラジカルガスを発生するものとすることができる。」
(本エ)
「【発明の効果】
【0021】
本発明に係る核酸分解処理装置では、フィードバック制御により暴露部の暴露空間内における温度、湿度、濃度の定量的制御を行うことができ、検体の種類によっての短時間で高効能を発揮する条件を定義することができる。
【0022】
この核酸分解処理装置は、核酸分解の効果効能を発揮する環境温度を37℃の体温域とし、15分以内の短時間で、且つ、ホルムアルデヒド成分濃度100ppm以内において、二重螺旋のDNA核酸を有効に分解(10bp以下のバラバラ状態)する能力を有し、気相の核酸分解法として核酸分解99.99%~100%を達成することができる。」
(本オ)
「【0029】
この核酸分解処理装置100において、バイオガス発生部110は、空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに由来する活性種を含むバイオガスを発生するものである。」
(本カ)
「【0056】
すなわち、後述する実証試験の結果からも明らかなように、37℃の温度環境においての湿度は、30%~45%の暴露環境であって、その効能は、dsDNAデータより、2μlで5分、20μlで15分、100μlで45分でピークが消滅している。」
(本キ)
「【0192】
ここで、ガス発生(暴露)の終了判断は、暴露時間、核酸の効果効能状態又は臭いセンサを使用しても良い。
【0193】
また、庫内エアレーションの終了判断に臭いセンサを使用することもできる。
【0194】
また、ガス漏れ検出用の安全装置として、バイオガス発生部110の内外、暴露部120の内外、あるいは、排気処理部140の内外などに臭いセンサを配備してもよい。
【0195】
さらに、ガス濃度センサ129として臭いセンサを使用することもできる。」
(本ク)
「【0196】
このような構成の核酸分解処理装置100では、フィードバック制御により暴露部110の暴露空間内における温度、湿度、濃度の定量的制御を行うことができ、暴露対象の種類によっての短時間で高効能を発揮する条件を定義することができる。」
(本ケ)
「【0213】
この核酸分解処理装置100は、核酸分解の効果効能を発揮する環境温度を37℃の体温域とし、15分以内の短時間で、且つ、ホルムアルデヒド成分濃度100ppm以内において、二重螺旋のDNA核酸を有効に分解(10bp以下のバラバラ状態)する能力を有し、気相の核酸分解法により核酸分解99.99%~100%を達成することができた。」
(本コ)
「【0226】
<3.結果>
<3-1.dsDNAの結果>
表1~表3に、それぞれサンプル量2μl、20μl、100μlのBioanalyzerによる結果を示す。なお、各表中の「C」は核酸が完全に分解した(complete)ことを示し、「+++」は高度な部分分解が生じたことを示し、「++」は中程度の部分分解が生じたことを示し、「+」は軽度な部分分解が生じたことを示す。また、図18に、dsDNAのBioanalyzerによる核酸分解能評価基準を示し、図19~図21に、Bioanalyzerによる核酸分解能の試験結果を表すスペクトル図を示す。
【0227】
【表1】
[図:0001394284000003.jpg]
・・・
【0229】
一方で、核酸分解処理装置100を用いたバイオガスによる核酸分解処理を行った場合、図19A,図19B,図19Cに示されるように、50℃,2μlでは、1minからdsDNAの完全分解効果を示した。また、45℃,2μlにおいても、1minからdsDNAの完全分解効果を示した。さらに、37℃,2μlにおいても、dsDNAの完全分解効果を示した。なお、1minでは軽度の部分分解効果を認めるのみであった。
【0230】
【表2】
[図:0001394284000004.jpg]
【0231】
また、図20A,図20B,図20Cに示されるように、50℃,200μlでは、5minからdsDNAの完全分解効果を示した。1minにおいても高度の部分分解効果を認めた。また、45℃,20μlでは、5minからdsDNAの完全分解効果を示した。なお、1minでは軽度の部分分解効果を認めるのみであった。さらに、37℃,20μlでは、15minからdsDNAの完全分解効果を示した。なお、5minまでは軽度の部分分解効果を認めるのみであったが、10minでは高度の部分分解効果を認めた。
【0232】
【表3】
[図:0001394284000005.jpg]
【0233】
また、図21A,図21B,図21Cに示されるように、50℃,100μlでは、10minからdsDNAの完全分解効果を示した。1minでは軽度の部分分解効果を認めるのみであったが、5minでは中等度の部分分解効果を認めた。また、45℃,100μlでは、10minからdsDNAの完全分解効果を示した。1minでは軽度の部分分解効果を認めるのみであったが、5minでは中等度の部分分解効果を認めた。また、37℃,100μlでは、30minからdsDNAの完全分解効果を示した。10minでは軽度の部分分解効果を認めるのみであったが、15minではピークの移動、すなわち短鎖の核酸集団へのシフトが見られ、高度部分分解効果を認めた。
【0234】
以上のことから、核酸分解処理装置100を用いたバイオガスによる核酸分解処理によって、常温程度の温度条件で、しかも短時間で高度に核酸を分解できることが分かった。また、このバイオガスによるdsDNA分解能効果は、温度依存性(高温で効果増強)かつ容量依存性(湿性条件)であることが示唆された。」
(2) 図面
(本サ)
「
[図:0001394284000006.jpg]
」(図18)
(本シ)
「
[図:0001394284000007.jpg]
」(図19B)
(本ス)
「
[図:0001394284000008.jpg]
」(図19C)
2 無効理由1
(1) 訂正発明2について
ア 訂正明細書の記載事項について
訂正発明2に関し、訂正明細書には、MRガスを用いて核酸分解処理を行う従来の方法には、50℃以上の温度領域において、60分以上の暴露時間を要し、且つ、ホルムアルデヒド成分の濃度が2000ppm以上での効果効能が発揮されるものがあったが、現実的な実用としては常温から体温領域が求められており、且つ、短時間での効果効能を発揮することが求められていたという課題が記載されている(1(1)(本ア))。
そして、訂正明細書には、この課題を解決するための手段として、訂正発明2の構成を有する核酸分解処理装置(1(1)(本イ))を採用したことが記載され(1(1)(本エ)、(本ク))、かかる装置を使用すると、環境温度を37℃の体温域とした場合に、15分以内の短時間で、DNA核酸を有効に分解し、気相の核酸分解法として核酸分解99.99%~100%を達成することができ(1(1)(本エ)、(本ケ))、温度37℃、湿度30%~45%の暴露環境においては、dsDNAデータより、2μlで5分、20μlで15分、100μlで45分でピークが消滅し、常温程度の温度条件でも、短時間で核酸を分解できることが記載されている(1(1)(本カ)、(本コ)、(2)(本ス))。
イ 甲第1号証に記載された発明
(ア) 甲第1号証(以下、単に「甲1」という。)には、「メタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と、上記メタノールガス発生部の上方に位置し、該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに、上記メタノールガスに所定の割合で空気を混合させる筒体部と、上記筒体部の上方に位置し、該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを備え、上記触媒部は、金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成される」滅菌ガス発生装置が記載されている(前記第5の1(1)イ)ところ、そのメタノールガス発生装置11は、メタノールタンクから供給されるメタノールを霧状に噴射するノズル23を備え(前記第5の1(1)ウ(ア)及び(イ))、筒体12は、3mm以下の径の孔を有する多孔質の金属プレート等の熱を通過させず、引火を防止することが可能な多孔質金属材料を挟んで筒体上部12aと筒体下部12bの2空間に分けられ(前記第5の1(1)ウ(エ)及び(オ))、筒体上部12aでは所定の割合で空気供給部から空気が供給され(前記第5の1(1)ウ(オ))、また、ラジカル反応触媒30を複数層積層させる(前記第5の1(1)ウ(キ))ことが、それぞれ記載されている。そして、甲1には、「本発明は、メタノールから触媒反応により発生するラジカル性のメタノールラジカルガス(以下、「MRガス」という。)により対象物を滅菌する滅菌処理装置に適用される、滅菌ガス発生装置・・・、並びに滅菌処理装置に関する。」(前記第5の1(1)ア)と記載されていることから、上記滅菌ガス発生装置により発生する「滅菌ガス」とは、メタノールラジカルガス(以下、「MRガス」ともいう。)である。そうしてみると、甲1には、「メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え、該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と、上記メタノールガス発生部の上方に位置して、熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり、該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており、該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに、上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と、上記筒体部の上方に位置し、該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し、上記触媒部は、金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され、該ラジカル反応触媒を複数積層してなり、空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して、MRガスを発生するMRガス発生装置。」が記載されているものと認められる。
(イ) 甲1に記載されたMRガス発生装置では、ラジカル化触媒反応の温度を供給メタノール量に対する供給空気量の割合を変えることにより制御できること、発生するMRガスの濃度はラジカル化触媒反応温度に依存すること、それ故、供給メタノール量に対する供給空気量の割合を変化させてラジカル化触媒反応温度を制御することで、MRガスの濃度を制御できることが示されているから(前記第5の1(1)ウ(カ)、(ク))、甲1のMRガス発生装置は、生成MRガス濃度を供給空気量と供給メタノール量で制御する生成MRガス濃度制御手段を備えているものと認められる。
(ウ) 甲1には、上記MRガス発生装置を適用した滅菌処理装置であって、滅菌対象物を保持してMRガス発生装置から発生したMRガスによって滅菌処理を施す場となる滅菌タンク42を有する滅菌処理装置が記載されており、当該MRガスは、滅菌タンク内を循環し、滅菌対象物を滅菌するものであるから(前記第5の1(1)ウ(ケ)、(コ)、(2))、甲1には、滅菌タンクの内部に滅菌対象物を保持し、MRガス発生装置から発生したMRガスによって当該滅菌対象物を滅菌する滅菌処置装置が記載されているものと認められる。
(エ) 甲1に記載されたMRガス発生装置は生成MRガス濃度の制御が可能であることは前記(イ)でも述べたとおりであるが、甲1には、「本実施の形態に係るMRガス発生装置10によれば、・・・空気の供給量を変化させることにより、触媒の自己反応によるラジカル化反応温度を容易に制御することができるので、発生するMRガスの濃度を容易に変化させることができる。これにより、例えばウイルス等のDNAを破壊することを目的としてMRガスを暴露させる場合には、空気の供給量を増やしてラジカル化反応温度を高め、濃度の高いMRガスを発生させるといったように、滅菌対象によって空気の供給量を変化させて、発生させるMRガスの濃度を変化させることができる。」(前記第5の1(1)ウ(サ))と記載されていることから、濃度の高いMRガスを発生させることによりDNAを破壊できること、すなわち、甲1に記載されたMRガス発生装置において生成MRガス濃度を高くすれば、DNAを破壊できることが甲1に記載されているものと認められる。
(オ) そうしてみると、甲1には、一次判決及び二次判決が認定しているとおり、
「メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え、該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と、上記メタノールガス発生部の上方に位置して、熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり、該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており、該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに、上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と、上記筒体部の上方に位置し、該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し、上記触媒部は、金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され、該ラジカル反応触媒を複数積層してなり、空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して、MRガスを発生するMRガス発生装置と、上記MRガス発生装置における生成MRガス濃度を供給空気量とメタノール量で制御する生成MRガス濃度制御手段と、上記MRガス発生装置から発生したMRガスによって滅菌処理を施す滅菌タンクを備えた滅菌処理装置であって、DNAを破壊することが可能な滅菌処理装置。」についての発明(以下、この発明を「甲1発明」という。)が記載されているということができる。
ウ 対比
訂正発明2と甲1発明を対比する。
甲1発明のMRガスは、空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化することによって生じるガスである点で、訂正発明2のバイオガスと相違しないものと認められる。また、甲1発明の生成ガス濃度制御手段は、MRガス発生装置で発生するMRガスの濃度がラジカル化触媒反応温度に依存することに基づいて、MRガス発生装置への供給メタノール量に対する供給空気量の割合を変化させてラジカル化触媒反応温度を制御することにより行われているものであるところ(前記イ(イ))、訂正発明2の生成ガス量制御手段も「上記バイオガス発生部において、一定の触媒の自己反応温度と濃度のバイオガスとなるように」「上記バイオガス発生部における生成ガス量」を「供給空気量とメタノール量で制御」するものであるから、甲1発明の生成ガス濃度制御手段は、訂正発明2の生成ガス量制御手段に相当する。さらに、甲1発明の滅菌タンクは、内部に滅菌対象物を保持し、MRガス発生装置から発生したMRガスによって滅菌処理を施すタンクであることから(上記イ(ウ))、当然にMRガス発生装置で発生したMRガスが供給されるものであり、当該滅菌タンクは訂正発明2の「バイオガス発生部により発生したバイオガスが供給される暴露部」に相当する。そして、甲1発明の滅菌処理装置は、DNAを破壊することが可能な装置であることから、核酸分解処理装置ということができる。
そうしてみると、両者は、
「メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え、該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と、上記メタノールガス発生部の上方に位置して、熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり、該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており、該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに、上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と、上記筒体部の上方に位置し、該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し、上記触媒部は、金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され、該ラジカル反応触媒を複数積層してなり、空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに由来する活性種を含み生成される複合ガス(以下「バイオガス」という)を発生するバイオガス発生部と、
上記バイオガス発生部における生成ガス量を供給空気量とメタノール量で制御する生成ガス量制御手段と、上記バイオガス発生部により発生したバイオガスが供給される暴露部とを備えた核酸分解処理装置。」である点において一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)
訂正発明2では、
暴露部の暴露空間内の温度を37℃に制御する温度制御手段と、
暴露部の暴露空間内の湿度を30%~45%に制御する湿度制御手段と、
暴露部に供給されたバイオガスを排気する排気処理部と、
上記排気処理部により暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するバイオガスの排気量制御手段と、
上記暴露部におけるバイオガスのホルムアルデヒド成分の濃度を測定するホルムアルデヒド成分濃度測定手段を備え、
上記ホルムアルデヒド成分濃度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が上記生成ガス量制御手段に帰還され、上記バイオガス発生部において、一定の触媒の自己反応温度と濃度のバイオガスとなるように、上記生成ガス量制御手段により上記バイオガス発生部における生成ガス量が供給空気量とメタノール量で制御されるとともに、上記排気量制御手段により暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより、上記暴露部の庫内ガス濃度を一定にし、
上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による暴露部の暴露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え、
上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され、上記排気量制御手段により暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより、上記暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にし、
上記暴露部内への供給空気量と上記排気処理手段による排気量のバランスを-0~-0.01MPaの範囲とすることにより、上記暴露部内で陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら上記自己反応時の上記暴露部内の結露状態の発生を防止し、上記バイオガス発生部から安定した上記自己反応による上記バイオガスの供給を行っているのに対し、
甲1発明では、かかる構成について記載されていない点。
(相違点2)
訂正発明2では、臭いを検出又は測定する手段を備えるのに対し、
甲1発明では、かかる構成について記載されていない点。
(相違点3)
訂正発明2では、暴露部が、内部に入れた暴露対象にバイオガスを暴露するための、容積が1立方メートル以内の密閉された恒温恒湿槽であるのに対し、
甲1発明では、滅菌タンクの容積が1立方メートル以内であることや、滅菌タンクが密閉された恒温恒湿槽であることであることが記載されていない点。
(相違点4)
訂正発明2では、筒体部の下部に設けられた異常温度センサと、該筒体部の上部に設けられた触媒温度センサを備え、バイオガス発生部では、上記触媒温度センサにより得られる触媒温度情報に基づいてメタノールガスの供給の開始により触媒部におけるメタノールガスの自己反応を開始するとともに、触媒部の触媒ヒータによる加熱の停止を行い、上記異常温度センサ又は上記触媒温度センサにより温度異常が検出された場合には運転を停止し、自己反応の開始後はメタノールガス発生部から供給されるメタノール量と空気供給部から供給される空気量を制御することにより、触媒部の自己反応温度が400℃~500℃の範囲でバイオガスの発生を制御するのに対し、
甲1発明では、かかる構成について記載されていない点。
エ 判断
(ア) 相違点1について
a 判決の拘束力について
二次判決の3頁9~10行の記載「一次訂正後本件訂正前の請求項2に係る発明を「一次訂正発明2」という。」との記載に倣い、以下、平成29年12月27日付け訂正請求に係る訂正(以下、「一次訂正」という。)直後の請求項2に係る発明を「一次訂正発明2」といい、令和1年11月8日付け訂正請求に係る訂正(以下、「二次訂正」という。)直後の請求項2に係る発明を「二次訂正発明2」ということがある。
当審の審理は、上記第6に記載したとおり、一次判決及び二次判決に拘束され、この拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたる(最三小平成4年4月28日判決、民集46巻4号245頁)。
一次判決は、上記第6の1に記載のとおり、甲2に一次審決が認定した相違点2の構成が開示されており、当業者は、甲1及び甲2に基づいて、甲1発明に甲2記載の構成を適用して相違点2に係る一次訂正発明2の構成を容易に想到することができたと判断し、二次判決は、上記第6の2に記載のとおり、二次審決が認定した相違点1の容易想到性が認められ、甲1発明と甲2に開示された事項と本件出願当時の周知技術ないし技術常識を踏まえれば、相違点1に係る二次訂正発明2の構成を当業者が容易に想到することができたと判断した。
これに対して被請求人は、二次判決の確定後の審判手続きにおいて前記第2の1(2)のとおり、二次審決の相違点1に係る二次訂正発明2の暴露部の暴露空間内の温度、湿度、庫内バイオガス濃度、及び庫内差圧の制御に関する構成について、さらに「上記暴露部の暴露空間内の温度を37℃に制御する温度制御手段と、上記暴露部の暴露空間内の湿度を30%~45%に制御する湿度制御手段」及び「上記暴露部内への供給空気量と上記排気処理手段による排気量のバランスを-0~-0.01MPaの範囲とすることにより、上記暴露部内で陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら上記自己反応時の上記暴露部内の結露状態の発生を防止し、上記バイオガス発生部から安定した上記自己反応による上記バイオガスの供給を行う」(下線は、二次判決後の訂正において追加された構成を示す。)との訂正を行い、温度制御手段及び湿度制御手段が暴露部の暴露空間内の温度及び湿度を「37℃」及び「30%~45%」に制御し、「暴露部内への供給空気量と上記排気処理手段による排気量のバランスを-0~-0.01MPaの範囲とすることにより、上記暴露部内で陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら上記自己反応時の上記暴露部内の結露状態の発生を防止し、上記バイオガス発生部から安定した上記自己反応による上記バイオガスの供給を行う」点を相違点1に加えた。
ここで、当審の審理が、一次判決、二次判決の判断に拘束されることからすると、訂正発明2の相違点1に係る進歩性の判断に関しては、甲1発明と甲2に開示された事項と本件出願当時の技術常識に基づいて、二次審決で認定した相違点1に係る構成を当業者が容易に想到することができたことを前提に、この相違点1に、暴露部の暴露空間内の温度を「37℃に」制御し、暴露部の暴露空間内の湿度を「30%~45%に」制御するという構成(以下、「追加構成1-1」ということがある。)、及び、「暴露部内への供給空気量と上記排気処理手段による排気量のバランスを-0~-0.01MPaの範囲とすることにより、上記暴露部内で陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら上記自己反応時の上記暴露部内の結露状態の発生を防止し、上記バイオガス発生部から安定した上記自己反応による上記バイオガスの供給を行う」という構成(以下、「追加構成1-2」ということがある。)が加わっても、相違点1に係る構成を当業者が容易に想到することができたことを判断する必要がある。
以下、これを前提として、検討する。
b 追加構成1-1の容易想到性について
甲1発明の滅菌タンクは、訂正発明2の暴露部に相当するから(上記ウ)、訂正発明2に係る暴露部の暴露空間内の温度及び湿度を特定の数値範囲に限定する追加構成1-1の容易想到性を判断する場合には、甲1発明に係る滅菌タンクについて、甲2に記載された技術事項を前提に、暴露部の暴露空間内の温度を37℃に制御し、湿度を30%~45%に制御することが当業者に容易想到といえるかどうかを検討する必要がある。
(a) 甲1の記載事項について
甲1には、甲1発明の滅菌処理装置を用いて滅菌処理を行う際の湿度について、「ここで、滅菌処理においては、滅菌環境を所定の湿度に保った状態とすることが必要なことが知られており、例えばウイルス等のDNAを破壊してDNAフリーの環境とする場合には、約75%程度の湿度を維持した滅菌環境で滅菌処理を行わなければならない。しかしながら、MRガス滅菌処理を行うにあたって、そのようにMRガスの暴露環境を所定の湿度条件(例えば約75%程度)に整えようとすると、ある程度の環境調整時間が必要となるとともに、所定の湿度環境を一定に管理することも必要となり、また一定の湿度環境を維持することは極めて難しい。・・・そこで、上述したように、メタノールガスを発生させる段階において、メタノールタンクから供給されたメタノールに所定の水を混合させて、所定の割合で水を含有したメタノールを生成し、このメタノールからメタノールガスを発生させてMRガスを生成させる。これにより、滅菌環境の湿度を事前に調整しなくとも、効果的な滅菌処理を行うことが可能となる。」(第5の1(1)ウ(ウ))と記載されており、DNAを破壊してDNAフリーの環境にまで滅菌を行う場合には湿度を75%程度に維持する必要があること、MRガスで滅菌処理を行う際に所定の湿度環境を維持することは困難であるため、所定の割合で水を含有したメタノールからMRガスを生成させることによって効果的な滅菌処理を行うことができることが記載されている。
(b) 甲2の記載事項について
甲2には、ホルムアルデヒドガスによって被殺菌空間の殺菌を行うホルムアルデヒドガス殺菌装置において、ホルムアルデヒドガスによる殺菌効果は、被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度に大きく依存し、十分保証可能な殺菌効果を得るためには、単にホルムアルデヒドガスを被殺菌空間に充満させるだけでは十分ではないことが記載され(第5の2(2)ア、イ)、被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度をそれぞれ、160ppm以上、50~90相対湿度%、20~40℃に制御する制御器を備えたホルムアルデヒドガス殺菌装置とすることが記載されるとともに(第5の2(1)、(2)ウ、オ、ク)、このホルムアルデヒドガス殺菌装置によれば、制御器により被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度をそれぞれ、所定の濃度、所定の湿度、所定の温度に制御するため、十分に保証可能な殺菌効果を得ることができることが記載されている(第5の2(2)ウ、エ)。
また、ホルムアルデヒドガスによる殺菌効果は、湿度の上昇に相関していることが知られており、最適な湿度を保持しつつホルムアルデヒドを発生させるための好ましい手段として、所定の量のメタノールを気化させ、触媒部分へ送り、触媒反応によってホルムアルデヒドガスを発生させる手段が記載されている(第5の2(2)カ)。
さらに、適当なホルムアルデヒドガス濃度及び湿度を維持するために、被殺菌空間内の湿度を調節することが好ましいこと、ホルムアルデヒドガスによる殺菌効果は湿度に依存することが知られているが、相対湿度が有る程度以上高くなると、露結現象により結露が発生し、被殺菌空間内が汚染されることとなるから、ホルムアルデヒドの殺菌効果を十分発揮させ、かつ上記結露の現象が起こらない程度の湿度を維持することが重要であり、この湿度の範囲は、温度範囲が20~40℃の範囲において、相対湿度50%~90%の範囲であることが記載され、この範囲より低い湿度では十分な殺菌効果が得られないことが記載されている(第5の2(2)キ)。
(c) 本件出願当時の技術常識等について
本件出願日前に頒布された甲3、甲5、甲9、甲24ないし甲25には、それぞれ上記第5の3ないし5、7、8の事項が記載されており、これらの記載から、本件出願当時、ホルムアルデヒドガスによる殺菌効果が湿度に依存することは技術常識であり、相対湿度が高くなると露結現象により結露が発生して汚染の原因となることから、ホルムアルデヒドの殺菌効果を十分発揮させ、かつ上記結露の現象が起こらない程度の湿度を維持することが重要であり、温度範囲が20℃~40℃ないしは20℃~50℃の範囲においては、相対湿度50%から90%の範囲とするのが好ましいこと、上記の範囲より低い湿度では十分な殺菌効果が得られず、同範囲より高い湿度では結露の発生により汚染が生じる可能性があることが、本件出願当時の技術常識であったと認められる。
(d) 追加構成1-1の容易想到性の判断
上記第6の2に記載のとおり、二次判決は、「甲2には,甲2発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置の構成を採用することにより,被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度をそれぞれ所定の値に制御し,かつ,室内温度の上昇により室内の空気が膨張したような場合においても室圧を一定に保つことができるので,十分に保証可能な殺菌効果が得られるという効果を奏することの開示がある。そうすると,甲1及び甲2に接した当業者は,甲1発明において安定した濃度の殺菌ガスを発生させるとともに,十分に保証可能な殺菌効果を得るために,甲2記載の被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度をそれぞれ所定の値に制御し,かつ,被殺菌空間の室圧を一定に保つための構成を適用する動機づけがある。」と判示している。
しかし、甲2には、上記(b)に記載のとおり、20~40℃の温度範囲において、ホルムアルデヒドガスによって、十分保証可能な殺菌効果を得るためには、被殺菌空間内の湿度を50~90相対湿度%に制御すべきことが記載されており、この範囲より低い湿度では十分な殺菌効果が得られないことが記載されている。
そうすると、甲2において、ホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度をそれぞれ所定の値に制御することが記載され、当該制御が当業者に動機付けられるとしても、甲2に記載された技術事項を前提に、甲1発明に係る滅菌タンクについて、暴露部の暴露空間内の温度を20~40℃の範囲の内で、特に37℃を選択し、更に、甲2において、50~90相対湿度%の範囲を下回ることより十分な殺菌効果が得られないとされている、30%~45%の範囲を選択することが当業者に動機付けられるとはいえない。
また、上記(c)に記載のとおり、本件出願当時、ホルムアルデヒドガスによる殺菌効果は湿度に依存することが技術常識であり、相対湿度が高くなると露結現象により結露が発生して汚染の原因となることから、ホルムアルデヒドの殺菌効果を十分発揮させ、かつ上記結露の現象が起こらない程度の湿度を維持することが重要とされ、温度範囲が20℃~40℃ないしは20℃~50℃の範囲においては、相対湿度50%から90%の範囲とするのが好ましいこと、相対湿度50%から90%より低い湿度では十分な殺菌効果が得られず、同範囲より高い湿度では結露の発生により汚染が生じる可能性があることは技術常識であったので、甲2に記載された技術事項を前提に、更に、本件出願時の技術常識等を重畳的に適用しても、追加構成1-1である、暴露部の暴露空間内の温度を「37℃に」制御し、暴露部の暴露空間内の湿度を「30%~45%に」制御するという構成を導くことが当業者に動機付けられるとはいえない。
更に、訂正発明2は核酸分解処置装置に係る発明であり、メタノールに由来する活性種を含むバイオガスにより核酸分解処理を行うものであるところ(前記1(1)(本ウ)、(本オ))、甲1には、ウイルス等のDNAを破壊してDNAフリーの環境とする場合には、約75%程度の湿度を維持した滅菌環境で滅菌処理を行われなければならないことが記載されているので、甲1の記載からも、甲1発明の滅菌処理装置の暴露部の暴露空間内の湿度を、75%の湿度よりも著しく低い30%~45%の範囲に制御することが、当業者に動機付けられるとはいえない。
一方、上記アに記載のとおり、訂正明細書には、環境温度を37℃の体温域とした場合に、15分以内の短時間で、DNA核酸を有効に分解し、気相の核酸分解法として核酸分解99.99%~100%を達成することができ(1(1)(本エ)、(本ケ))、温度37℃、湿度30%~45%の暴露環境において、dsDNAデータより、2μlで5分、20μlで15分、100μlで45分でピークが消滅し、常温程度の温度条件でも、短時間で核酸を分解できることが記載されており(1(1)(本カ)、(本コ)、(2)(本ス))、暴露部の暴露空間内の温度を37℃とし、湿度を30%~45%に設定することで、短時間に核酸を分解できることが記載されている。
そうすると、追加構成1-1の条件で、短時間で核酸を分解できるという効果が、甲2や本件出願時の技術常識より、当業者が予測し得るとは認められない。
したがって、甲1発明及び甲1、2の記載ならびに本願出願時の技術常識を参酌しても、追加構成1-1に係る暴露部の暴露空間内の温度を37℃に制御し、暴露部の暴露空間内の湿度を30%~45%に制御するという構成を当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(e) 追加構成1-1の容易想到性に関する請求人の主張について
請求人は、令和4年6月24日付け弁駁書において、上記追加構成1-1のうち暴露部の暴露空間内の温度を「37℃に」制御する点について、MRガスを20~40℃の範囲で使用することは周知(例えば、甲5【0057】、甲6【0033】(「20~40℃(好ましくは35℃)」と記載されている)、甲7【0033】(「20~40℃(好ましくは35℃)」と記載されている)、甲9【0011】、甲10【0049】(36.0~40.09℃でMRガスが使用されている)、甲11【0023】(「35℃+5℃」でMRガスが使用されている。当該記載は「35℃±5℃」の誤記と思われる。)、甲17の103頁の図4(35℃付近でMRガスが使用されている))であって、MRガスを核酸分解に使用する場合も同様の温度で使用可能であり(例えば、甲27【0046】(「30℃~40℃」でMRガスが使用可能である旨が記載されている))、甲2においても、20~40℃の温度範囲で使用すると十分な効果が得られる旨記載されているから(例えば、甲2の10頁16~21行)、甲1発明に甲2記載の内容を適用するにあたり、MRガスの使用温度を、20℃~40℃の範囲内で、例えば37℃に設定することは当業者が適宜なし得ることにすぎず、本件特許明細書の【実施例】等をみても、MRガスの使用温度を37℃に設定することにより、他の温度に設定することに比べて当業者が予測できない顕著な効果を発揮するとは認められない旨、主張している。
更に、上記追加構成1-1のうち暴露部の暴露空間内の湿度を「30%~45%に」制御する点について、引用発明の適用が積極的に排除され、否定され、回避すべき、あるいは適用があり得ないという程度のものでない場合は、阻害要因が存在するとはいえず(甲45の132~133頁)、更に、先行技術文献に開示された実施形態のうち、当該先行技術文献において「好ましい」等として推奨されている形態以外の態様を採用することに阻害要因があるとはいえない(例えば、甲46の4頁下から17~15行(上記弁駁書の15頁5~6行において「甲964頁下から17~15行」とあるのは、「甲464頁下から17~15行」の誤記と認められる。)、甲47の8頁22~24行、最下行~9頁4行、甲48の43頁下から12~6行)ところ、甲2は、MRガスを50~90%の湿度条件で使用すれば十分な効果を得ることが可能であるが、湿度50%未満では十分な効果を得ることができないことを意味するにすぎず、MRガスを50%未満の湿度で使用することに阻害要因は存在しない旨、主張している。
しかし、上記(d)に記載のとおり、甲2に接した当業者が、甲1発明において安定した濃度の滅菌ガスを発生させるとともに、十分に保証可能な殺菌効果を得るために、甲2記載の被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度をそれぞれ所定の値に制御し、かつ、被殺菌空間の室圧を一定に保つための構成を適用する動機づけを持ち得たとしても、甲2において、ホルムアルデヒドガスによる十分な殺菌効果が得られないとされる、30%~45%の湿度範囲を選択することを当業者が動機付けられるとはいえない。
加えて、上記(c)に記載のとおり、ホルムアルデヒドガスによる殺菌効果が湿度に依存することや、温度範囲が20℃~40℃ないしは20℃~50℃の範囲においては、湿度50%未満では十分な殺菌効果が得られないことが本願出願時の技術常識であったから、甲1発明の滅菌処理装置において、十分な殺菌効果が得られないことが当業者に自明であった、温度37℃、湿度30%~45%に制御することを当業者が動機付けられるとはいえない。
なお、請求人は、先行技術文献に開示された実施形態のうち、当該先行技術文献において「好ましい」等として推奨されている形態以外の態様を採用することに阻害要因があるとはいえないと主張し、当該主張の根拠として、甲46~48を挙げている。
しかし、甲46~48は、甲1、2に記載された発明に属する技術分野に関する技術内容を示すものではないし、甲2等で、50~90相対湿度%より低い湿度では十分な殺菌効果が得られないことが明記されている以上、甲46~48の記載を踏まえたとしても、甲1発明において、50相対湿度%未満を採用することは一般的に排除又は阻害されていると解すべきである。
したがって、甲1発明及び甲2に開示された事項と本願出願時の技術常識に基づいて、当業者が、上記相違点1に係る追加構成1-1の構成を容易に想到することができたとはいえない。
c 追加構成1-2の容易想到性について
(a) 追加構成1-2の容易想到性の判断
追加構成1-2は、「暴露部内への供給空気量と上記排気処理手段による排気量のバランスを-0~-0.01MPaの範囲とすることにより、上記暴露部内で陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら上記自己反応時の上記暴露部内の結露状態の発生を防止し、上記バイオガス発生部から安定した上記自己反応による上記バイオガスの供給を行う」というものであり、「温度、湿度」の「定量的制御」は、温度が37℃、湿度が30%~45%となるように定量的制御を行うものと認められるから、追加構成1-2は、追加構成1-1が当業者において容易想到であることを前提として判断されるべきものである。
しかし、上記b(d)で述べたように、追加構成1-1は、甲1発明及び甲2に開示された事項と本願出願時の技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではないし、甲1、甲2や他の証拠を参照しても、「暴露部内への供給空気量と上記排気処理手段による排気量のバランスを-0~-0.01MPaの範囲とすること」は記載も示唆もされておらず、ましてや、温度を37℃に制御し、湿度を30%~45%の範囲に制御した上で、さらに、暴露部内の圧力を-0~-0.01MPaに設定することを、当業者が技術常識として知悉していた事実も認められないので、甲1及び甲2に記載された事項と本願出願時の技術常識に基づき当業者が相違点1の追加構成1-2を容易に想到することができたとは認められない。
(b) 追加構成1-2の容易想到性に関する請求人の主張について
請求人は、追加構成1-2のうち「暴露部内で陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら暴露部内の結露状態の発生を防止し、バイオガス発生部から安定した自己反応によるバイオガスの供給を行う」点について、令和3年11月24日付け弁駁書において、甲1発明でもメタノールガスの触媒上での自己反応によりMRガス(=バイオガス)を供給しており、被殺菌空間(暴露部に相当)の温度、湿度及び(MRガス)濃度の定量的制御を行うことは甲2に記載されており、また、湿度の制御により結露現象が防止されることも甲2に記載されていることなどを述べて、甲1発明及び甲2の記載から当業者が容易に想到することができる旨を主張し、追加構成1-2のうち「暴露部内への供給空気量と排気処理手段による排気量のバランスを-0~-0.01MPaの範囲とする」点について、令和4年6月24日付け弁駁書において、一次判決が判示するとおり、本件特許明細書を見ても、庫内差圧を所定の圧力値の範囲内で陰圧とすることに技術的意義は何ら存在しないから、訂正発明2において、陰圧をより具体的に「-0~-0.01MPaの範囲」に数値限定することは当業者が容易になし得る事項に過ぎず、本件特許明細書では、温度条件及び湿度条件を揃えた上で、暴露部の気圧が-0~-0.01MPaの場合とそうでない場合とで比較実験が行われているわけではなく、暴露部の気圧を-0~-0.01MPaの気圧範囲で使用することにより顕著な効果が発揮されるとは認められない旨、主張している。
しかしながら、被殺菌空間の温度、湿度及び(MRガス)濃度の定量的制御を行うこと、及び、湿度の制御により結露現象が防止されることが、甲2に記載されていたとしても、「-0~-0.01MPaの範囲」の陰圧を採用すること自体は、甲2に記載されてないし、ましてや、「-0~-0.01MPaの範囲」の陰圧と「37℃」の温度制御及び「30%~45%」の湿度制御を同時に採用することは甲2や他の証拠に何ら記載されていない。
したがって、被請求人において、温度条件及び湿度条件を揃えた上で、暴露部の気圧が-0~-0.01MPaの場合とそうでない場合で比較実験を行う必要があるとはいえないし、暴露部の気圧が-0~-0.01MPaの範囲である場合に顕著な効果を奏しないとしても、甲1及び甲2に記載された事項と本願出願時の技術常識に基づき相違点1の追加構成1-2を当業者が容易に想到することができたとは認められない。
(イ) 相違点2~4について
上記(ア)に記載のとおり、甲1発明に甲2に記載の構成を適用しかつ本願出願時の技術常識を考慮しても、相違点1の構成を想到することはできない。
一方、訂正発明2が甲1発明及び甲2の記載及び本願出願時の技術常識に基づき当業者に容易想到であったというためには、相違点2及び相違点3に加えて、「筒体部の下部に異常温度センサを設け、該筒体部の上部に触媒温度センサを設け、バイオガス発生部では、上記触媒温度センサにより得られる触媒温度情報に基づいてメタノールガスの供給の開始により触媒部におけるメタノールガスの自己反応を開始するとともに、触媒部の触媒ヒータによる加熱の停止を行い、上記異常温度センサ又は上記触媒温度センサにより温度異常が検出された場合には運転を停止し、自己反応の開始後はメタノールガス発生部から供給されるメタノール量と空気供給部から供給される空気量を制御することにより、触媒部の自己反応温度が400℃~500℃の範囲でバイオガスの発生を制御する構成」(相違点4)を甲1発明で採用することも当業者において容易想到と判断する必要がある。
もっとも、相違点4の構成における、バイオガスの発生の制御は、相違点1の構成における、暴露部内で陰圧下での温度、湿度、濃度の定量的制御を行いながら、暴露部内の結露状態の発生を防止し、バイオガス発生部から安定した自己反応によるバイオガスを供給する構成と密接に関係し、相違点1の構成によっても影響を受けるものと認められるので、相違点1の構成の容易想到性の判断と切り離して相違点4の構成の容易想到性を判断することはできないといえる。
しかも、甲1、甲2及び他の証拠には、異常温度センサ、触媒温度センサを用いて、バイオガスの発生を制御することが記載も示唆もされていない。
そうすると、相違点1の構成を当業者が容易に想到することができたとは認められないことと同様に、相違点4の構成についても、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(ウ) 小括
したがって、訂正発明2は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証の記載及び本願出願時の技術常識を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2) 訂正発明3について
訂正発明3は訂正発明2の発明特定事項を全て含む発明であるところ、上記(1)のとおり、訂正発明2について当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、訂正発明3についても、訂正発明2と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3) まとめ
したがって、訂正発明2及び訂正発明3が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということはできない。
3 無効理由2
請求人は、図18に示された評価基準によれば、図19B(45℃、2μl)及び図19C(37℃、2μl)における「90min」のスペクトル図は、核酸の分解が目的とするレベルまで行われていない状態に相当するので、このような場合は、訂正発明の課題である短時間で効率的な核酸分解処理が実現できず、訂正明細書の記載に基づいて訂正発明がその課題を解決できるとは認められない旨を主張する。
しかし、図19Bの「1min」、「5min」、「10min」、「15min」、「30min」及び「45min」のスペクトル図は、図18に示された評価基準で「完全分解」に相当するものであることから、暴露温度が45℃でサンプル量が2μlの場合、暴露時間が1ないし45分では、核酸は完全に分解されると理解できる(前記1(2)(本サ)、(本シ))。また、図19Cの「5min」、「10min」、「15min」及び「30min」のスペクトル図は、上記評価基準で「完全分解」に相当するものであることから、暴露温度が37℃でサンプル量が2μlの場合、暴露時間が5ないし30分では、核酸は完全に分解されると理解できる(前記1(2)(本ス))。そして、このことは、訂正明細書の発明の詳細な説明における、「核酸分解処理装置100を用いたバイオガスによる核酸分解処理を行った場合、・・・、図19B,図19Cに示されるように、・・・。また、45℃、2μlにおいても、1minからdsDNAの完全分解効果を示した。さらに、37℃、2μlにおいても、dsDNAの完全分解効果を示した。なお、1minでは軽度の部分分解効果を認めるのみであった。」(前記1(1)(本コ)の段落【0229】)との記載とも一致する。
そうしてみると、図19B及び図19Cにおける「90min」のスペクトル図が、図18に示された評価基準のいずれのスペクトルにも該当せず、請求人の指摘するスペクトル図からは、これらのサンプル量において暴露時間が90分の場合に、核酸を完全に分解することができたかどうかが不明であるとしても、図19B及び図19Cに示された他のスペクトル図からは、いずれのサンプル量の場合も、90分よりも短い時間で核酸を完全に分解できると理解できることから、訂正発明はその課題を解決し得ると認められる。
したがって、訂正特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
そして、この点について、請求人は、令和4年2月22日付け審決の予告後に提出された令和4年6月24日付け弁駁書において争っていない。
よって、訂正発明2、3についての特許は、同法第123条第1項第4号に該当しないから、無効理由2により無効とすべきものではない。
4 無効理由3
請求人の主張は、訂正発明では、処理開始から90分経過後でも、核酸を完全に分解することができない場合があることを前提とするものであるが、かかる前提が誤りであることは前記3のとおりである。
したがって、訂正明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
また、この点について、請求人は、令和4年2月22日付け審決の予告後に提出された令和4年6月24日付け弁駁書において争っていない。
よって、訂正発明2、3についての特許は、同法第123条第1項第4号に該当しないから、無効理由3により無効とすべきものではない。
5 無効理由4
(1) 訂正発明2における「臭いを検出又は測定する手段」について
請求人は、訂正発明2における「臭いを検出又は測定する手段」と他の構成要件との関係が不明であり、訂正発明2は明確でないと主張する。
しかし、「臭いを検出又は測定する手段」の記載から、当該手段が、臭いを検出又は測定するために核酸分解処理装置に備えられていることは明らかであるし、かつ、訂正明細書には、「臭いセンサ」を、ガス発生(暴露)の終了判断、庫内エアレーションの終了判断、ガス漏れ検出用の安全装置、または、ガス濃度センサ129として使用することが記載されており(前記1(1)(本キ))、前記の使用目的に応じて「臭いを検出又は測定する手段」を核酸分解処理装置の適切な箇所に設けることは当業者が適宜なし得ると認められる。
そうすると、訂正発明2における「臭いを検出又は測定する手段」と他の構成要件との関係を当業者は理解できるから、訂正発明2は明確である。
そして、この点について、請求人は、令和4年2月22日付け審決の予告後に提出された令和4年6月24日付け弁駁書において争っていない。
(2) 訂正発明3における複合ラジカルガスについて
請求人は、訂正発明3における「メタノール、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素の成分を少なくとも含有した活性酸素とフリーラジカルからなる複合ラジカルガス」の記載の意味が不明であり、訂正発明3は明確でないと主張する。
しかし、訂正発明3は「上記バイオガス発生部は、メタノール、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素の成分を少なくとも含有した活性酸素とフリーラジカルからなる複合ラジカルガスを発生することを特徴とする請求項2に記載の核酸分解処理装置。」と、訂正発明2の「バイオガス発生部」をさらに特定する発明であるから、訂正発明3で特定する「バイオガス発生部」が明確であれば、訂正発明3は明確であるといえる。
一方、訂正明細書には、「この核酸分解処理装置100において、バイオガス発生部110は、空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに由来する活性種を含むバイオガスを発生するものである。」(前記1(1)(本オ))、「また、本発明に係る核酸分解処理装置において、上記バイオガス発生部は、メタノール、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素の成分を少なくとも含有した活性酸素とフリーラジカルからなる複合ラジカルガスを発生するものとすることができる。」(前記1(1)(本ウ))と記載されており、これらの記載を参酌すると、訂正発明3における複合ラジカルガスは、空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して生成される、いわゆるMRガスの一態様であると認められ、このことは、メタノールと触媒との反応による活性種(ラジカル)の発生により生じる処理ガスとしてのMRガス(メタノールラジカルガス)は、ギ酸ペルオキシドラジカル、ヒドロキシラジカル、スーパーオキシドラジカル、水素ラジカルなどの少なくとも1種の活性種を含み得、さらに、一酸化炭素、二酸化炭素、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、メタン、エタンなどを含み得る旨の甲第12号証の記載事項(前記第5の6)とも齟齬しない。
そうすると、訂正発明3の前記の記載は、訂正発明2のバイオガス発生部が発生するMRガスについてその一態様を記載するものに過ぎず、訂正発明3で特定するバイオガス発生部がどのようなものであるかを当業者は理解できるから、訂正発明3は明確である。
そして、この点について、請求人は、令和4年2月22日付け審決の予告後に提出された令和4年6月24日付け弁駁書において争っていない。
(3) まとめ
以上のとおりであるから、訂正特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
よって、訂正発明2、3についての特許は、同法第123条第1項第4号に該当しないから、無効理由4により無効とすべきものではない。
第8 むすび
以上のとおり、本件訂正請求に係る訂正は適法であり、本件の請求項2~3に係る特許は、請求人が主張するいずれの理由及び証拠方法によっても無効とすることはできない。
本件特許の請求項1、4は、訂正により削除されたため、その請求項に対して請求人がした審判の請求は、不適法な請求であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第135条の規定により、これを却下する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-800004