商標取消審判
2017-300917
ユキオトコ 、 スノーマン
- 審判番号
- 2017-300917
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願1959-032876
- 登録番号
- 0567461
- 請求日
- 2017年12月19日
- 審決日
- 2020年05月26日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】ウィ・アー・コンスタントリー・シンキング・デザイニング・アンド・イーティング・エルエルシー
- 【請求人代理人】特許業務法人川口國際特許事務所
- 【被請求人】スノーマン エンタープライゼス リミテッド
- 【被請求人代理人】小泉 淑子
- 【被請求人代理人】佐藤 恒雄
- 【被請求人代理人】石井 あやか
- 【被請求人代理人】田村 祐一
- 審判長/審判官
- 審判長 木村 一弘
- 審判官 中束 としえ
- 審判官 豊田 純一
- 分類
- T132 .1 -Z (Y25)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項、商標法第50条第1項、商標法第50条、商標法第38条、商標法第50条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第567461号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
登録第567461号商標の指定商品中、第25類「被服(頭から冠る防虫網・あみ笠・すげ笠・ナイトキャップを除く。)」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
第1 本件商標
本件登録第567461号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、「雪男」の漢字を縦書きにし、その下に「SNOW MAN」の欧文字を横書きで表してなり、昭和34年11月12日に登録出願、第36類「被服、手巾、釦鈕及び装身用「ピン」の類」を指定商品として、同36年3月10日に設定登録、その後、平成15年6月4日に指定商品を第25類「被服(頭から冠る防虫網・あみ笠・すげ笠・ナイトキャップを除く。)」を含む、第9類、第14類、第16類、第21類、第24類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載の商品とする指定商品の書換登録がされ、さらに、同23年3月8日に第14類、第16類及び第25類についてのみ商標権の存続期間の更新登録がされたものであり、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判請求の登録は、平成30年1月10日にされたものであり、この登録前3年以内の期間を、以下「本件要証期間」という。
第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び平成30年6月1日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年7月27日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証(以下、証拠については、「甲1」等のように表示する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第25類「被服(頭から冠る防虫網・あみ笠・すげ笠・ナイトキャップを除く。)」(以下「本件請求に係る商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 弁駁書による請求人の主張の要旨
以下(1)及び(2)の理由により、被請求人が答弁書により提出した乙各号証によっては、本件要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件請求に係る商品について、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていることを立証していない。
(1)被請求人の主張に対する反論
被請求人(商標権者)(以下、単に「被請求人」という。)は、被請求人並びに被請求人のライセンシーである株式会社ナカタ(以下「ナカタ社」という。)及び株式会社グラニフ(以下「グラニフ社」という。)が、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「The Snowman」(以下「使用商標1」という。)及び「スノーマン」(以下、「使用商標2」といい、「使用商標1」と合わせていうときは、「使用商標」という。)を本件請求に係る商品に使用していると主張しているが、被請求人自らによる本件商標の使用の事実を証明する証拠は何ら提出していない。
被請求人は、ナカタ社及びグラニフ社が被請求人のライセンシーであるとし、同人らによる使用を使用権者による本件商標の使用として乙1ないし乙17を提出しているが、被請求人とナカタ社又はグラニフ社との関係を示す証拠は何う提出されていないため、乙1ないし乙17を使用権者による本件商標の使用の証拠として採用することはできない。
また、そもそも乙1ないし乙10は、ナカタ社又はグラニフ社が出所であるのか疑わしいといわざるを得ないから、これらを証拠として採用することはできない。
(2)本件商標と使用商標との社会通念上同一性について
本件商標は、「雪男」と縦書きにしてなる漢字を上部に、「SNOW MAN」と横書きにしてなる欧文字を下段に配した二段併記の構成でなるものである。
使用商標は、本件商標との関係では、「ア 書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」、「イ 平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」、「ウ 外観において同視される図計からなる商標」のいずれにも該当するものではないから、「エ その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」に該当するかが問題となる。
本件商標は、二段併記でなる商標であるから、本件商標の「上段及び下段の各部が観念を同一にするもの」である場合に、上段及び下段の文字のいずれか一方の使用が、本件商標の使用と認められる。
そこで、本件商標の上段及び下段の各部が観念を同一にするか検討するに、上段の「雪男」の語は、「降雪の多い地方にいると言われているUMA(未確認動物)の総称」であり、「日本国内では中国山地のヒバゴン」(甲2)を意味する。また、goo辞典によれば、「ヒマラヤなど雪深い山中に住むといわれる人間に似た動物。正体は不明。」とされている(甲3)。
一方、下段の「SNOW MAN」は、「雪だるま」を意味する(甲4)。
このように、上段の「雪男」は雪山に住む正体不明の怪物という観念を想起させるのに対し、下段の「SNOW MAN」は雪を固めて作った人形を観念させるのであり、本件商標においては、上段及び下段の各部の観念は全く異なる。
そうすると、本件商標は、「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一にする」商標に該当しないから、本件商標の上段若しくは下段のいずれか一方の使用をもって、本件商標の使用とみることはできない。
以上のことから、使用商標が本件商標と社会通念上同一であるか否かは、本件商標の全体構成との対比をもって判断すべきである。
そして、使用商標は、本件商標との関係では、外観、称呼、観念のいずれにおいても異なり、社会通念上同一の商標の使用とすることができない。
ところで、被請求人は、使用商標の構成中、「The」は冠詞であって識別力を欠如するため、消費者は「Snowman」の文字部分に着目する旨主張するが、識別力の有無を判断する手法は商標の要部認定の際に用いるものであるところ、商標法第50条第1項の審判は登録商標の使用の有無を判じるものであるから、このような被請求人の主張は失当と考える。
被請求人はさらに、「Snowman」の文字部分は本件商標の欧文字部分と称呼を同一にするから、「Snowman」の文字部分と本件商標は社会通念上同一であると主張するが、かかる主張も、本来的に上下段を分離すること許されない本件商標を分離したうえでの主張、判断であるからこれも採用することはできない。
第3 被請求人の主張の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書及び平成31年4月25日付け回答書(以下「回答書」という。)において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、答弁書で乙1ないし乙18を、回答書で乙19ないし乙32(枝番を含む。)を提出した。
1 答弁書による主張の要旨
(1)被請求人による商標の使用
被請求人は、遅くとも3年前から現在に至るまで、ティーシャツ等の被服商品において、使用商標を使用している。近年でいえば、被請求人は、平成27年10月から12月にかけて、衣料用品の製造を行うナカタ社にライセンスを行い、絵本作品である「The Snowman」のキャラクターであるスノーマンのイラスト、ロゴを用いたジャケット、トレーナー(審決注:「トレーナー」は登録商標であって商品名ではないので、「スウェットシャツ」の誤記と思われる。以下同じ。)、パンツを製造、販売した(乙1及び乙2)。このうち、特に、トレーナー商品においては、前面に大きく使用商標が使用されている。また、平成29年10月から12月に衣料用品の製造を行うグラニフ社にライセンスを行い、絵本作品である「The Snowman」のコラボレーションアイテムとして、同絵本作品のキャラクターであるスノーマンのイラスト、ロゴを用いたティーシャツ、ワンピース、トレーナーなどの商品(以下「グラニフ商品」という。)を製造、販売した(乙3ないし乙17)。このうち特にティーシャツにおいてはスノーマンのキャラクターのイラストとともに使用商標1が前面に大きくプリントされており、また、背面にも使用商標1がプリントアウトされていることが見受けられる(乙3及び乙4)。また、商品のタグ部分にも、スノーマンのキャラクターのイラストと共に使用商標1が記載されている(乙5及び乙6)。さらに、グラニフ商品の宣伝を目的とした、グラニフ社のSNSの公式アカウントでの投稿記事においても、使用商標が使用されている(乙11及び乙12)。そして、グラニフ商品を販売する通信販売サイトでも使用商標2が使用されていることが確認できる(乙13ないし乙17)
(2)商標の社会通念上同一性
使用商標1の冒頭の「The」は冠詞であり、識別力を有さないため、消費者は、「Snowman」の文字部分に着目することは明らかである。そして、「Snowman」の文字部分は、本件商標の「SNOWMAN」のアルファベット文字とその構成を同じくし、これより生ずる称呼も同一のものであるから、本件商標と使用商標1は、社会通念上同一の商標ということができる。
したがって、「雪男」と「SNOW MAN」の文字から成る本件商標は、これらが同じ観念を有するものであるから、「SNOW MAN」のみの使用であっても、本件商標と社会通念上同一の商標の使用に該当するといえる。
また、使用商標2「スノーマン」についても、「SNOWMAN」の文字から生じる称呼と同一であり、本件商標と社会通念上同一の商標である。
(3)まとめ
以上より、被請求人は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件請求に係る商品に使用しているので、請求人の主張には理由がない。
2 回答書による主張の要旨
(1)当審における審尋の要旨
審判長は、被請求人に対し、平成31年3月28日付けで、合議体の暫定的見解を示し、被請求人が答弁書で提出した乙1ないし乙18によっては、ア 被請求人がナカタ社及びグラニフ社に対し、ライセンスをした旨を証明する書面が提出されていないこと、イ 被請求人又は同人からライセンスを受けたと主張する者(ナカタ社)が、使用商標を本件請求に係る商品に使用し、本件要証期間に商取引を行ったことが証明されていないこと、ウ 乙3ないし乙10の写真が不鮮明であるため、これらの商品が被請求人又は同人からライセンスを受けたと主張する者(グラニフ社)の取扱いに係る商品であることが証明されていないこと、エその他乙13ないし乙17についての釈明等を求め、被請求人が提出した全証拠によっては、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が、本件要証期間に、商標法第2条第3項各号のいずれかの行為に該当する標章の使用を行ったことを証明していない旨、及び本件商標と使用商標は社会通念上同一の商標ではないことから、本件要証期間に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が、本件請求に係る商品について本件商標を使用していることを証明しているものとはいえない旨の審尋を送付し、期間を指定して、これに対する意見を求めた。
(2)回答書による主張の要旨
被請求人は、前記(1)の審尋に対し、回答書において要旨以下のように述べた。
ア 通常使用権者による商標の使用
被請求人は、本件要証期間である平成27年10月から12月にかけて、通常使用権者であるナカタ社を通じて、絵本作品である「The Snowman」のキャラクターであるスノーマンのイラスト、ロゴを用いたジャケット、スェットシャツ、パンツ(以下「ナカタ商品」という。)を製造、販売しており、また、本件要証期間である平成29年10月から12月にかけては、通常使用権者であるグラニフ社を通じて、グラニフ商品を販売していた。
すなわち、乙1ないし乙17のほか、株式会社パルコのウェブサイトにおいては、平成29年11月21日を発売日としてグラニフ商品の販売が宣伝されており、同ウェブサイトには、ティーシャツやワンピース等が販売されることが記載され、使用商標も掲載されている(乙19)。
また、株式会社スタイリングライフ・ホールディングス(以下「スタイリングライフ社」という。)が運営する小売店舗「PLAZA」のウェブサイトにおいても、平成29年11月21日を発売日として、グラニフ商品が販売されることが記載されており、同ウェブサイトにおいては、グラニフ商品の写真も掲載され、ロングスリーブティーシャツにおいては、使用商標1が記載されている(乙20、乙21)。
さらに、同ウェブサイトにおいては、「[C]Snowman Enterprises Limited 2017」(最初の[C]は丸付きである。)の著作権表示(以下、単に「著作権表示」という。)が記載され、グラニフ社が被請求人からライセンスを受けていることも明示されている。
イ 本審尋に対する補充主張
(ア)被請求人とナカタ社及びグラニフ社のライセンスについて
被請求人とナカタ社及びグラニフ社との間で、本件商標に係る書面でのライセンス契約はないが、本件商標について被請求人は、スタイリングライフ社に対しライセンスを行っており、同社からナカタ社及びグラニフ社に対しサブライセンスを行っていた。すなわち、被請求人よりライセンスを受けたスタイリングライフ社は、絵本作品である「The Snowman」のライセンス事業を日本国内で行っている(乙22)。そして、ナカタ社によるナカタ商品の製造、販売、及び、グラニフ社によるグラニフ商品の製造、販売に先立ち、スタイリングライフ社はナカタ社との間で、アウターウェア、インナーウェア等を許諾商品として、またグラニフ社との間では、ティーシャツ、ワンピース等を許諾商品として「The Snowman」に関するサブライセンス契約を締結していた(乙23ないし乙25)。また、グラニフ商品の商品タグや販売に関するウェブサイトにも著作権表示が記載されている(乙11ないし乙16、乙20、乙26、乙27)。このことからも、被請求人とナカタ社、グラニフ社との間でライセンス関係にあることは明らかである。
(イ)乙1及び乙2の書面に作成日、作成者、送付先等の記載がないことについて
「15AWイオン様冬アウター台帳」と題する文書(乙1)及び売上報告書の写し(乙2)の書面は、株式会社イオンからナカタ社に対するナカタ商品の各品番(乙1記載のJL9416、JL9238、JL9240、JL9239、JL9327)の注文数、及びナカタ社から株式会社イオンに対する請求額の確認を行うために作成されたものである。
(ウ)乙3ないし乙10は撮影日等が不明でかつ不鮮明であることについて
グラニフ商品の写真(乙3ないし乙10)を補足するため、追加でグラニフ商品の写真(乙26、乙27)を提出する。同写真は、被請求人の従業員G氏が、平成31年4月12日に、同社内で保管されている商品サンプルを撮影したものである。そして、これらの写真を見ると、ティーシャツの正面、背面、及び商品タグ、ワンピースの襟部分及び商品タグに使用商標1が大きく表示され、また、商品タグから同商品がグラニフ社の製造、販売によるものであることが明確に表示されている。
(エ)乙14ないし乙16に記載の商品販売日又は期間が本件要証期間外であることについて
乙14の「2018年5月29日」は同ウェブサイトを検索した日を示したもので、掲載されているグラニフ商品の発売日を示したものではない。また、前述アの「通常使用権者による商標の使用」において述べたとおり、グラニフ商品は、平成29年11月21日に発売されている。また、商品写真に付随して著作権表示が記載されていることからも、これらの商品が2017年中に被請求人のライセンスを受けて製造、販売されたことは明らかである(乙11ないし乙16、乙20、乙26、乙27)。
(オ)乙13及び乙17で紹介された商品の販売数量等の商品の取引書類の提出がないことについて
乙13及び乙17はグラニフ商品の販売に関するウェブサイト記事に該当するが、販売数量等の取引書類がなくとも、答弁書及び本回答書における主張、並びに提出した乙号証により、実際にグラニフ商品の販売が行われたことは明らかである。
ウ 弁駁書に対する反論
請求人は、弁駁書において、被請求人による商標の使用行為が認められない理由として、被請求人とナカタ社及びグラニフ社との関係を示す証拠が提出されていないごと、乙1ないし乙10の出所が疑わしい旨主張しているが、ナカタ社及びグラニフ社は、被請求人のライセンシーであるスタイリングライフ社より権利を受けた正当なサブライセンシーである。そして、本回答書において補充した主張及び証拠により、乙号証に示されたナカタ商品及びグラニフ商品が、それぞれ、ナカタ社、グラニフ社が製造、販売しているものであることは明らかといえる。
エ 本件商標との社会通念上の同一性
商標法上、「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」(商標法第38条、第50条)とは、条文上、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形から商標が例示されているが、これらに限られるものではなく、「社会通念上同一」かどうかは、取引の慣行、人々に与える印象等を総合的に考慮して決められるものと考えられている。そして、本件商標について、「Snowman」の和訳は「雪男」であり、「雪男」の英訳は「Snowman」が該当する(乙28ないし乙31)。さらに、「Snowman」を直訳した場合、「雪人間」又は「雪男」と訳されるところ、「雪女」が「The Snow Woman」と訳されることからすれば(乙32)、「SNOW MAN」の和訳は「雪男」と考えるのが適当である。そして、「雪男」と「SNOW MAN」との関係性を踏まえれば、本件商標に触れた者は、本件商標の「雪男」と「SNOW MAN」が、互いに日本語表記、英語表記を示したものとして、同一の観念を有するものと認識する。
したがって、本件商標は二段併記の構成からなり、上段及び下段の各部が観念を同一とする商標であり、本件商標と使用商標は社会通念上同一の商標である。
第4 当審の判断
1 被請求人の立証責任
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、(1)本件要証期間に、(2)日本国内において、(3)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、(4)本件請求に係る商品のいずれかについての、(5)本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要がある。
2 被請求人の提出した乙1ないし乙32(枝番を含む。)から、以下の事実が確認できる。
(1)「“The Snowman”使用許諾契約書」(乙23)は、2015年(平成27年)2月25日付けのスタイリングライフ社とナカタ社の契約に係るものであって、被請求人との契約を示すものではない。なお、本契約書は、そもそも、英国コピーライツ社とスタイリングライフ社との間で締結された原契約書に基づくものであるところ、被請求人は、原契約書を提出していないため、原契約の内容が明らかではない。
また、本契約書の第1条の(1)に、「コピーライツ社は、本件キャラクターの著作権者である『スノーマン・エンタープライズ社(以下[スノーマン社]という)』より、その権利の管理を委託されている。」旨記載されているが、これを立証する証拠は提出されていない。
さらに、乙23の6頁の〈別紙1〉の「1.許諾商標」の「登録番号」の欄には、本件商標の登録番号(第567461号)の記載がないことから、本契約書は、被請求人がナカタ社に本件商標の使用を許諾したことを証明したものとは認められない。
その他、被請求人の提出による証拠によっては、被請求人がナカタ社に本件商標の使用を許諾したことが証明されていない。
(2)「“THE SNOWMAN, and THE SNOWMAN AND THE SNOWDOG”使用許諾契約書」(乙24)は、2016年(平成28年)12月1日付けのスタイリングライフ社と「株式会社グラフィス」(現グラニフ社)(乙25)の契約に係るものであって、被請求人との契約を示すものではない。なお、本契約書は、そもそも、「THE COPYRIGHTS GROUP LIMITED」とスタイリングライフ社との間で締結された原契約に基づくものであるところ、被請求人は、原契約を提出していないため、原契約の内容が明らかではない。
また、本契約書の第1条の(1)、(3)、(4)及び(5)から判断すると、アニメ映画「スノーマン」に関する権利者である被請求人の本件プロパティー(本件キャラクターに関する著作物と登録商標)に関する代理人が、「THE COPYRIGHTS GROUP LIMITED」であると推測できるが、被請求人が「THE COPYRIGHTS GROUP LIMITED」に対し、アニメ映画「スノーマン」の本件プロパティー(本件キャラクターに関する著作物と登録商標)の管理を委託したことを立証する証拠は提出されていない。
さらに、乙24の7頁の〈別紙1〉の「許諾商標」に、本件商標の登録番号(第567461号)の記載がないことから、本契約書は、被請求人がグラニフ社に本件商標の使用を許諾したことを証明していない。
その他、被請求人の提出による証拠によっては、被請求人がグラニフ社に本件商標の使用を許諾したことが証明されていない。
(3)ナカタ社の使用に係る証拠とされる「15AWイオン様冬アウター台帳」と題する文書(乙1)には、「ボアトレーナー」の項に「JL9238」の記載があり、これには「THE SNOW MAN」の文字が大きく表示されたスウェットシャツの図が記載され、また、売上報告書の写し(乙2)には、2015年度の10月及び11月に得意先名を「イオン(株)情報システム部取引照合課」として、品番「JL9238」の記載があるが、これら乙号証は、いずれも資料の作成日、作成者、これらの資料の送付先等についての記載がなく、当該資料の示すところが明確にされていない。
(4)商品の写真(乙3)には、被服の前面胸部と思われる部分の中央に「雪だるまのキャラクター」の絵が描かれ、その下に使用商標1「The Snowman」の文字が記載されている。また、商品の写真(乙4)には、被服の前面胸部と思われる部分の中央に角丸の長方形2段に絵が描かれ、上段の絵には、少年と「雪だるまのキャラクター」が手をつないで歩く姿が、下段の絵には、少年と「雪だるまのキャラクター」が手をつないで走る姿が描かれ、下段の絵の下に、「The」と「Snowman」の文字を二段に書した使用商標1が記載されている。
なお、商品の写真(乙5ないし乙10)には、使用商標の記載は確認できない。
(5)乙26の1ないし乙26の7は、商品「ティーシャツ」及びその商品タグの写真であるところ、乙26の1には、商品「ティーシャツ」の前側及びその襟元に付けられた商品タグに使用商標1「The Snowman」が記載されている。
乙26の2は、当該商品の前側を拡大した写真、乙26の3は、当該商品の襟元に付けられた商品タグを拡大した写真である。
商品タグの写真(乙26の4及び乙26の5)には、右側の商品タグの下部に「株式会社グラニフ」の記載がある。
当該商品の背中側の写真(乙26の6)には、その上部分に二段に書された使用商標1及び著作権表示の記載があり、乙26の7は、当該商品の背中側に記載された使用商標1及び著作権表示を拡大したものである。
なお、被請求人は、当該写真について、「乙26は、被請求人の従業員であるG氏が、被請求人の会社内で保管されている商品サンプルを平成31年4月12日に撮影した。」旨述べているが、平成31年4月12日は、本件要証期間外である。
(6)乙27の1ないし乙27の4は、商品「ワンピース」の写真及びその商品タグであるところ、当該商品の背面内側に、「Design」、「Tshirts」、「Store」及び「granigh」の文字が4段に記載され、その下に、「The」と「Snowman」を二段に書した使用商標1が記載されている。
なお、被請求人は、当該写真について、「乙27は、被請求人の従業員であるG氏が、被請求人の会社内で保管されている商品サンプルを平成31年4月12日に撮影した。」旨述べているところ、平成31年4月12日は、本件要証期間外である。
(7)2017年(平成29年)11月21日付けの「PLAZA」のウェブサイト記事(乙20)における、商品「ロングスリーブTシャツ」には、使用商標1「The Snowman」の記載があり、また、『The Snowman(スノーマン)』と、Tシャツを専門に扱うショップ『graniph(グラニフ)』のコラボレーションアイテムが登場しました。」及び「発売日:2017年11月21日(火)グラニフ、グラニフキッズ、グラニフオンラインストアで発売」の記載がある。さらに、「発売日:11月21日(火)」の記載がある「イオンモール新潟南」のウェブサイト記事(乙17)及び「発売日2017年(平成29年)11月21日(火)」の記載がある「静岡PARCOのウェブサイト」記事(乙19)には、「スノーマン×グラニフコラボレーションアイテム登場!」の記載及びアイテム情報に「ロングスリーブTシャツ」などの記載があることから、使用商標が付されたグラニフ社製造の「ロングスリーブTシャツ」が、本件要証期間である平成29年(2017年)11月21日に発売されていたことが推認できる。
なお、「グラニフさんのツイート画面の写し」(乙11)及び「グラニフ社のInstagram画面の写し」(乙12)の記事中には、使用商標の記載はあるが、具体的な商品に関する記載がないため、使用商標が使用された商品の特定はできない。
また、「ZOZOTOWN」のウェブサイト記事(乙14)、「楽天市場」のウェブサイト記事(乙15)、「マルイのネット通販」のウェブサイト記事(乙16)には、使用商標2「スノーマン」の記載は確認できるものの、これらは、いずれも、印刷日又は商品の販売開始日が本件要証期間後である。
3 上記2によれば、当審の判断は、以下のとおりである。
(1)本件商標の使用者について
ア 商標権者による本件商標の使用について
被請求人は、本件商標の商標権者が、本件要証期間に日本国内で、本件商標を本件商品に使用していたことを証明していない。
イ 本件商標の通常使用権者について
(ア)ナカタ社について
被請求人は、本件商標の商標権者がナカタ社に本件商標に係る商標権の使用許諾を行ったことを証明していない。
(イ)グラニフ社について
被請求人は、本件商標の商標権者がグラニフ社に本件商標に係る商標権の使用許諾を行ったことを証明していない。
(2)使用商標及び使用商品について
グラニフ社は、使用商標がその前面に表示された商品「ロングスリーブTシャツ」を、本件要証期間である平成29年11月21日に発売した。使用商標が表示された商品「ロングスリーブTシャツ」は、本件請求に係る商品である「被服(頭から冠る防虫網・あみ笠・すげ笠・ナイトキャップを除く。)」の範ちゅうに含まれる商品である。
(3)本件商標と使用商標の社会通念上の同一性について
本件商標は、別掲のとおり、「雪男」の漢字を縦書きにし、その下に「SNOW MAN」の欧文字を横書きで表してなるところ、その構成中の「雪男」の文字は、「ヒマラヤ山中にすむと伝えられる正体不明の動物」(株式会社岩波書店広辞苑第六版)を意味する語である。
また、本件商標の構成中の「SNOW MAN」の文字は、「雪だるま」を意味する英語であり、このことは、goo辞書の「snowman」の検索結果の写し(甲4)や株式会社研究社発行の研究社新英和大辞典(第4版第62刷)(乙28)からも確認できる。
さらに、「雪男」の英訳は、必ずしも「Snowman」ではなく、「yeti」と英訳されるものであることは、株式会社研究社発行の新英和中辞典、株式会社研究社発行の研究社新英和大辞典(第4版第62刷)(乙28)、株式会社研究社発行の研究社新和英大辞典(第4版第2刷)(乙29)、コトバンクのウェブサイト(乙31)からも確認できる。
そうすると、本件商標の構成中の「雪男」の漢字と「SNOW MAN」の英語が、必ずしも観念を同一にするものとは認められないことから、「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用」に該当するものではなく、本件商標は、「雪男」又は「SNOW MAN」のいずれか一方の使用によっては、本件商標と社会通念上同一の商標の使用と認めることができないものである。
他方、使用商標1は、「The Snowman」の欧文字を書してなるものであり、使用商標2は、「スノーマン」の文字からなるものである。そうすると、「雪男」及び「SNOW MAN」の文字からなり、これらのいずれかのみの使用によっては、社会通念上同一の商標の使用とは認められない本件商標と「The Snowman」の欧文字からなる使用商標1、「スノーマン」の片仮名からなる使用商標2とは、いずれも、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができないものであり、また、使用商標1及び使用商標2を合わせた使用商標も本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができない。
なお、この点について被請求人は、答弁書及び回答書にて「本件商標の構成中の『Snowman』の英訳は『雪男』であり、『雪男』の英訳は『Snowman』であることから、『雪男』と『SNOW MAN』は同じ観念を有するものであり、『SNOW MAN』のみの使用であっても、本件商標の使用といえる。使用商標1は、冒頭の『The』が冠詞で識別力を有さないことため、消費者は、『The Snowman』中の『Snowman』に着目する。そうすると、本件商標の構成中『SNOW MAN』と『The Snowman』中の『Snowman』とは、その構成を同じくし、これらより生ずる『スノーマン』の称呼も同一であるから、本件商標と使用商標1は、社会通念上同一の商標である。」旨及び「使用商標2『スノーマン』についても、『SNOWMAN』の文字から生じる称呼と同一であり、本件商標と社会通念上同一の商標である。」旨主張する。
しかしながら、本件商標を構成する「雪男」と「SNOW MAN」とは、必ずしも観念を同一にするとはいえないものであり、これらのいずれか一方のみの使用によっては、本件商標と社会通念上同一の商標の使用と認められないことは、上記のとおりであるから、被請求人の上記主張は、認めることができない。
(6)小括
上記(1)ないし(5)によれば、使用商標が記載されたグラニフ社が製造した商品「ロングスリーブティーシャツ」が、本件要証期間である平成29年11月21日に発売されたこと、使用商標が記載された「ロングスリーブティーシャツ」は、本件請求に係る商品の範ちゅうに含まれることは認められる。
しかしながら、被請求人は、本件商標の商標権者が、ナカタ社及びグラニフ社に対し、本件商標権に係る使用許諾をしたことを証明していない。
また、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標とは認められないものである。
その他、本件商標が本件要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって、本件請求に係る商品のいずれかについて使用されているものと認めるに足る証拠はない。。
4 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を、本件要証期間に、商標法第2条第3項各号に規定する使用行為を行ったことを証明していない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品中、第25類「被服(頭から冠る防虫網・あみ笠・すげ笠・ナイトキャップを除く。)」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-300917