特許拒絶査定不服審判
2017-018023
発熱装置
- 審判番号
- 2017-018023
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-527347
- 請求日
- 2017年12月05日
- 審決日
- 2018年09月27日
- 公報発行日
- 2019年01月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】水素技術応用開発株式会社
- 【請求人代理人】吉田 正義
- 【請求人】株式会社クリーンプラネット
- 【請求人代理人】吉田 正義
- 審判長/審判官
- 審判長 森 竜介
- 審判官 西村 直史
- 審判官 山村 浩
- 分類
- P18 .536-Z (G21B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-527347「発熱装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月22日国際公開、WO2015/008859〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、本願は、2014年(平成26年)7月18日(優先権主張 特願2013-148987号 平成25年7月18日、特願2014-53445号 平成26年3月17日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 5月18日付け:拒絶理由通知書
平成28年 7月25日 :面接
平成28年 9月23日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年12月28日 :上申書、実験成績証明書の提出
平成29年 2月22日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
平成29年 6月26日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 8月29日付け:拒絶査定(同年9月5日送達)
平成29年12月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
(上記審判請求書は、平成30年1月17日提出の手続補正書(方式)により補正されている。)
第2 平成29年12月5日提出の手続補正書による補正の適否について
1 平成29年12月5日提出の手続補正書による補正の内容
平成29年12月5日提出の手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、平成29年6月26日提出の手続補正書により補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲の請求項1ないし4のうち、請求項3及び4を削除しようとするものである。
2 補正の適否について
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項1号に掲げる、同法36条5項に規定する請求項の削除を目的とする補正である。
よって、本件補正は適法になされたものである。
第3 本願発明
本願の請求項1ないし2に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
重水素ガス又は軽水素ガスが、真空状態に保持された炉内に供給される反応炉と、
前記反応炉内に配置され、Pdからなる細線が支持部に螺旋状に巻き付けられた構成を有する一方の巻回型反応体と、
前記一方の巻回型反応体と対向するように前記反応炉内に配置され、Pdからなる細線が軸部に螺旋状に巻き付けられた構成を有する他方の巻回型反応体と、
前記細線のPdとは異種のNiからなる細線により網目状に形成されており、前記反応炉内の内壁を覆うように該内壁に沿って配置され、前記一方の巻回型反応体及び前記他方の巻回型反応体を囲う筒状の反応体と、
前記重水素ガス又は軽水素ガスを前記反応炉内に供給するガス供給管と、
前記反応炉内を加熱するヒータと、を備え、
前記一方の巻回型反応体及び前記他方の巻回型反応体は、電極として機能し、
前記一方の巻回型反応体における前記細線の表面と、前記他方の巻回型反応体における前記細線の表面と、前記反応体の表面と、は、それぞれ酸化被膜が除去された状態にあり、かつ1000[nm]以下のナノサイズからなる複数の金属ナノ粒子が設けられた構成を有しており、
真空状態が保持された前記反応炉は、前記ヒータによる加熱と、前記反応炉内への、前記重水素ガス又は軽水素ガスの供給と、が実行されることにより、加熱温度以上の過剰熱を発生させる
ことを特徴とする発熱装置。」(以下「本願発明」という。)
第4 原査定の拒絶の理由
拒絶査定の理由である、平成29年2月22日付け拒絶理由通知の理由は、概略、次のとおりのものである。
本願発明は、明細書や図面を参酌すると、中性子を発生しながら熱を生じる発熱装置あるいは発熱方法であるから、当業者からみて、依然として、いわゆる常温核融合技術に関するものである。しかしながら、現在、常温における核融合反応による過剰熱の発生、核反応による原子転換やそれに伴う中性子や過剰熱の発生について確証が得られておらず、本願明細書における発明の詳細な説明の記載によって、本願発明による過剰熱や中性子の発生を確認することができないから、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
そして、出願人は、平成28年12月28日付け上申書として、実験成績証明書とその補足書を提出しているが、当該実験成績証明書によっても、常温における核融合反応による過剰熱の発生、核反応による原子転換やそれに伴う中性子や過剰熱の発生について確証を得ることができない。
よって、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
第5 当審の判断
1 発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、次の内容が記載されている。(下線は、当審が付した。以下同様である。)
(1)発明が解決しようとする課題
「【0002】
1989年、フライッシュマン教授とポンズ教授らの共同研究チームによって、室温で核融合反応を起こすことに成功したとの発表がなされた(例えば、非特許文献1参照)。この発表によると、室温にて核融合反応を起こす常温核融合反応は、陰極としてPd電極やTi電極を用い、陽極としてPt電極を用いて重水を電気分解すると、電気分解に伴い発生する熱以上の熱が発生し、これと同時にγ線や中性子が観測され得るというものであった。このような常温核融合反応は、反応時に異常な過剰熱が発生することから、この発熱現象を制御することができれば、この発熱現象を発熱装置の熱源として利用することも可能である。
・・・(略)・・・
【0004】
しかしながら、実際、このような常温核融合反応は、そのメカニズムが解明されておらず、再現性にも乏しいことから、その発熱現象が安定して発現し得ない。そのため、このような常温核融合反応を発熱装置の熱源として利用しようとした場合には、発熱現象の発生確率が極めて低く、安定的に熱を生成し得ないという問題があった。
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、従来よりも安定的に熱を生成し得る反応体、発熱装置及び発熱方法を提供することを目的とする。」
(2)課題を解決するための手段
「【0006】
本発明の請求項1に示す発熱装置は、重水素ガス又は軽水素ガスが、真空状態に保持された炉内に供給される反応炉と、前記反応炉内に配置され、Pdからなる細線が支持部に螺旋状に巻き付けられた構成を有する一方の巻回型反応体と、前記一方の巻回型反応体と対向するように前記反応炉内に配置され、Pdからなる細線が軸部に螺旋状に巻き付けられた構成を有する他方の巻回型反応体と、前記細線のPdとは異種のNiからなる細線により網目状に形成されており、前記反応炉内の内壁を覆うように該内壁に沿って配置され、前記一方の巻回型反応体及び前記他方の巻回型反応体を囲う筒状の反応体と、前記重水素ガス又は軽水素ガスを前記反応炉内に供給するガス供給管と、前記反応炉内を加熱するヒータと、を備え、前記一方の巻回型反応体及び前記他方の巻回型反応体は、電極として機能し、前記一方の巻回型反応体における前記細線の表面と、前記他方の巻回型反応体における前記細線の表面と、前記反応体の表面と、は、それぞれ酸化被膜が除去された状態にあり、かつ1000[nm]以下のナノサイズからなる複数の金属ナノ粒子が設けられた構成を有しており、真空状態が保持された前記反応炉は、前記ヒータによる加熱と、前記反応炉内への、前記重水素ガス又は軽水素ガスの供給と、が実行されることにより、加熱温度以上の過剰熱を発生させることを特徴とする。」
(3)発明の効果
「【0008】
本発明の請求項1によれば、水素原子が反応体の金属ナノ凸部内に吸蔵され、当該金属ナノ凸部内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ凸部内での水素原子間の核間距離が縮み、トンネル核融合反応の起こる確率を上げることができ、かくして従来よりも安定的に熱を生成し得る。」
(4)発明を実施するための形態
ア 第1の実施の形態
「【0011】
(1)第1の実施の形態(1-1)
第1の実施の形態による発熱装置の全体構成 図1において、1は第1の実施の形態による発熱装置を示し、巻回型反応体25及び反応体26が電極対として反応炉2内に設けられており、当該反応炉2内で室温にて核融合反応を起こし、これにより発熱し得るようになされている。この実施の形態の場合、反応炉2には、管状の熱輸送パイプ32が反応炉2の外壁に沿って螺旋状に巻きつけられている。熱輸送パイプ32は、供給口32aから排出口32bに向けて内部に水等の流体が流れており、炉内で発生した熱により、熱輸送パイプ32内に流れる流体が加熱され、加熱された流体をそのまま排出口32bから排出し、例えば図示しない発電装置等に送って流体の熱を発電等に利用させ得る。
【0012】
ここで、反応炉2には、ガス供給手段3が設けられており、当該ガス供給手段3からガス供給管8を介して炉内に反応ガスとして重水素ガス(純度99.99%)が供給され得る。なお、ガス供給手段3は、重水素ガスボンベ5とガス溜6とを有し、重水素ガスボンベ5から排出された高圧の重水素ガスをガス溜6に蓄えた後、重水素ガスを1気圧程度に減圧して反応炉2内に供給し得る。ここで、ガス供給管8には、開閉バルブ7が設けられているとともに、分岐部16を介して圧力測定手段15が設けられている。反応炉2は、開閉バルブ7の開閉及び開閉量が調整されることにより、炉内への重水素ガスの供給量が調整され得る。なお、ガス供給管8に設けた圧力測定手段15は、ガス供給管8内の圧力を測定し得、これにより得られた圧力測定データを、反応炉2内の圧力としてロガー17に送出し得る。
【0013】
また、反応炉2には、真空排気管13を介して真空排気手段10が設けられている。反応炉2は、真空排気手段10によって炉内の気体が外部に排気され、炉内が真空雰囲気となり得、真空排気管13に設けた開閉バルブ11が閉められ、炉内が真空状態に保持され得る。この際、反応炉2は、ガス供給手段3から炉内に重水素ガスが供給されることで、真空状態に保持された炉内に重水素ガスが充満した状態となり得る。
【0014】
因みに、この反応炉2には、反応炉2の温度を測定するための熱電対18が反応炉2の外壁表面に設けられている。また、反応炉2の外部には、反応炉2から放射される中性子を測定する中性子測定手段19が配置されている。これら熱電対18及び中性子測定手段19はロガー17に接続されており、ロガー17は、熱電対18から得られた温度測定データや、中性子測定手段19から得られた中性子測定データの他、上述した圧力測定手段15から得られた圧力測定データを収集し、これらデータをコンピュータ21に送出し得る。コンピュータ21は、例えばロガー17を介して収集されたこれらデータを表示部に表示させ、当該データを基に作業者に対して反応炉2内の状態を把握させ得るようになされている。
【0015】
ここで、反応炉2は、例えばステンレス(SUS306やSUS316)等で形成された筒状部2aと、同じくステンレス(SUS306やSUS316)等で形成された壁部2b,2cとを備え、筒状部2aの両端開口部が、ガスケット(図示せず)を介して壁部2b,2cにより閉塞されており、筒状部2a及び壁部2b,2cで密閉空間を形成し得る。なお、この実施の形態の場合、筒状部2aには、側面部に開口部29が穿設されており、例えばステンレス(SUS306やSUS316)等でなる筒状の開口視認部30の中空領域と開口部29とが連通するように、当該開口視認部30の一端が側面部に接合されている。この開口視認部30は、コバールガラス等の透明部材で形成された窓部31が他端に嵌め込まれており、炉内の密封状態を維持しつつ、窓部31から中空領域、及び開口部29を介して反応炉2内の様子を作業者が直接目視確認し得るようになされている。因みに、この実施の形態の場合、反応炉2は、例えば筒状部2aが円筒状に形成されており、全長(壁部2b,2c間)が300[mm]、筒状部2aの外径が110[mm]に選定されている。
【0016】
かかる構成に加えて、この反応炉2の炉内には、巻回型反応体25と反応体26とからなる電極対が配置されており、電極対により発生するグロー放電によりプラズマが発生し得るようになされている。実際上、反応炉2には、一方の壁部2bに開口部28が穿設されており、当該開口部28に棒状の巻回型反応体25が挿通され、巻回型反応体25が炉内に配置され得る。実際上、壁部2bは、開口部28に設けた絶縁部材27により当該開口部28が閉塞されているとともに、巻回型反応体25が開口部28に非接触となるように絶縁部材27で当該巻回型反応体25を保持しており、反応炉2内の密閉状態を維持しつつ、巻回型反応体25と反応炉2とを電気的に絶縁させている。
【0017】
この実施の形態の場合、巻回型反応体25は、壁部2bの開口部28から反応炉2の外部に一端が露出しており、当該一端に配線22aを介して電源20が接続され、当該電源20から電圧が印加され得る。この電源20は、さらに他の配線22bを有しており、当該配線22bが反応炉2の壁部2bに接続されており、反応炉2に対しても電圧を印加し得る。なお、この電源20は、ロガー17を介してコンピュータ21に接続されており、出力電圧等がロガー17で収集され、これがコンピュータ21に送出されて、当該コンピュータ21により出力電圧等が管理されている。
【0018】
かかる構成に加えて、反応炉2は、筒状部2aの内壁表面に反応体26が接触するように配置された構成を有し、電源20からの電圧を、筒状部2aを介して反応体26に印加し得る。これにより、巻回型反応体25と反応体26は、電源20から印加される電圧によって、反応炉2内においてグロー放電を発生させ得る。
【0019】
実際上、この実施の形態の場合、反応体26は、例えばNi、Pd、Pt、Ti、或いはこれら元素のうち少なくともいずれか1種を含有した合金を含む水素吸蔵金属により筒状に形成されており、反応炉2の内壁に沿って配置され、外面が反応炉2の筒状部2aの内壁を覆うように設置され得る。反応体26は、反応炉2における筒状部2aの内壁を覆うことにより、電極対によるプラズマ発生時、筒状部2aへの電子照射により、当該筒状部2a内から元素(例えばステンレスの筒状部2aの場合、鉄や、軽元素、酸素、窒素、炭素等の元素)が炉内に放出されることを抑制し得るようになされている。
【0020】
かかる構成に加えて、この反応体26は、その表面が細線で網目状に形成されており、さらに幅が1000[nm]以下のナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子(図示せず)が細線の表面に形成され、当該表面が凹凸状に形成されている。なお、この反応体26は、重水素ガス雰囲気中で巻回型反応体25及び反応体26により炉内にグロー放電によるプラズマを発生させる際(後述する発熱反応処理時)、プラズマ処理等によって、予め水素原子(重水素原子)が当該金属ナノ粒子内に吸蔵し得るように表面の酸化被膜が除去され、表面の金属ナノ粒子が活性化した状態になっていることが望ましい。
【0021】
ここで本発明では、電極として機能する反応体26の表面に、ナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成することで、重水素ガス雰囲気中で巻回型反応体25及び反応体26によりグロー放電を発生させた際、金属ナノ粒子中に水素原子が吸蔵され、ナノサイズの金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、反応炉2内において中性子を放出しながら熱を発生させる核融合反応を起こさせることができる。
【0022】
因みに、この実施の形態においては、後述するプラズマ処理を行うことにより、反応体26を反応炉2内に設置した後に、当該反応体26の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成するが、本発明はこれに限らず、反応体26を反応炉2内に設置する前に、反応体26に対してスパッタ処理や、エッチング処理等を行い、当該反応体26の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を予め形成しておき、当該金属ナノ粒子が表面に形成されている反応体26を反応炉2内に設置するようにしてもよい。但し、この場合であっても、重水素ガス雰囲気中で巻回型反応体25及び反応体26により炉内にグロー放電によるプラズマが発生した際に、水素原子が金属ナノ粒子内に吸蔵し得るように、後述するプラズマ処理を行い、反応体26の表面の酸化被膜を除去し、表面の金属ナノ粒子を活性化した状態にする必要がある。
【0023】
実際上、反応体26の表面には、球状粒子、楕円状粒子、又は卵状粒子の一部が当該表面に埋め込まれたような形状(例えば、半球状や、半楕円状、又は半卵状)でなる湾曲表面を有した複数の金属ナノ粒子が形成されている。また、この実施の形態の場合、反応体26には、表面に金属ナノ粒子同士が接触するように形成されており、複数の金属ナノ粒子が密集するように形成されている。また、金属ナノ粒子の中には、当該金属ナノ粒子の湾曲表面に、幅(粒径)が1~10[nm]の微小な金属ナノ粒子がさらに形成された金属ナノ粒子もあり、複数の金属ナノ粒子でなる凹凸状の表面に、幅が1~10[nm]の微小な金属ナノ粒子が点在するように形成され得る。
【0024】
このような金属ナノ粒子は、幅が1000[nm]以下のナノサイズに形成され、好ましくは300[nm]以下、さらに好ましくは10[nm]以下、さらには5[nm]以下に形成されていることが望ましく、金属ナノ粒子の幅を小さくすることで、少ない重水素ガスの供給量で反応炉2内において核融合反応が起こり易くなり得る。
【0025】
ここで、このような金属ナノ粒子のサイズについて、核融合反応発生確率を示す理論計算を利用して、さらに理論的に解析すると、最も好ましくは、金属ナノ粒子の幅(粒径)が1~10[nm]で、これら微小な金属ナノ粒子の互いの距離が熱運動によって接触しない距離、好ましくは粒径の3倍以上の距離を空けて形成されていることが望ましい。この場合、反応体26の表面には、微小な金属ナノ粒子が点在するように形成されつつ、幅(粒径)が1~10[nm]の微小な金属ナノ粒子が、例えば1[cm2]あたり、4×108個形成されていることが好ましい。
【0026】
なお、この実施の形態の場合、反応体26は、厚さが1.0[mm]を超えると、表面にナノサイズの細かな金属ナノ粒子が形成され難くなることから、表面にナノサイズの金属ナノ粒子を形成するためには厚さが1.0[mm]以下であることが好ましく、より好ましくは0.3[mm]以下、さらに好ましくは0.1[mm]以下であること望ましい。また、この実施の形態の場合、反応体26は、細線により網目状に形成されていることから、直径が小さい細線を用いることで容易にその厚みを薄く形成し得、また金属ナノ粒子が形成される表面の表面積を大きくすることもできる。なお、反応体26の表面は、1つの網目の幅が10~30[mm]に選定されていることが望ましい。
【0027】
図2に示すように、反応体26と電極対を構成する巻回型反応体25は、例えばPt、Ni、Pd、Ti、或いはこれら元素のうち少なくともいずれか1種を含有した合金を含む水素吸蔵金属からなる支持部たる軸部35の周辺に、同じくPt、Ni、Pd、Ti、或いはこれら元素のうち少なくともいずれか1種を含有した合金を含む水素吸蔵金属からなる細線36が螺旋状に巻きつけられた構成を有し、筒状部2aの中心軸上に軸部35が配置されている。また、巻回型反応体25と反応体26との距離は、10~50[mm]に選定され得る。なお、この実施の形態の場合、巻回型反応体25は、直径3[mm]、長さ200[mm]の軸部35をNiで形成するとともに、直径1.0[mm]の細線36をPtで形成しており、細線36から反応体26までの距離を50[mm]に選定している。
【0028】
因みに、上述した実施の形態では、反応体26の表面に着目し、ナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が、反応体26の表面に形成されている場合について述べているが、このようなナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子は、巻回型反応体25の細線36にも形成されている。実際上、この実施の形態の場合、巻回型反応体25は、水素吸蔵金属により形成されていることから、細線36の表面に、ナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が形成されていることで、重水素ガス雰囲気中で巻回型反応体25及び反応体26によりプラズマを発生させた際、巻回反応体25の金属ナノ粒子中にも水素原子が吸蔵され、ナノサイズの金属ナノ粒子内の電子(自由電子)が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、反応炉2内において中性子を放出しながら熱を発生させる核融合反応を起こさせることがで
きる。
【0029】
(1-2)プラズマ処理
ここで本発明の発熱装置1は、上述した反応体26や巻回型反応体25の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成するとともに、当該反応体26や巻回型反応体25の表面を活性化するプラズマ処理を行え得るようになされている。実際上、発熱装置1は、例えば、表面に金属ナノ粒子が形成されていない反応体や巻回型反応体が反応炉2内に設置された場合、プラズマ処理として、先ず始めに密閉空間とした反応炉2内の気体を真空排気し、炉内の圧力を10~500[Pa](例えば100[Pa]程度)とする。
【0030】
この状態で発熱装置1は、例えば巻回型反応体25を陽極とし、反応体26を陰極として、電極対に600~1000[V](例えば1000[V]程度)の電圧を印加してグロー放電を起こさせ、反応炉2内にプラズマを発生させる。なおこの際、陰極とした反応体26の温度は例えば500~600[℃]まで上昇し得る。発熱装置1は、このような真空雰囲気中でグロー放電を600秒~100時間(好ましくは10時間以上)継続して起こさせることにより、反応体26や巻回型反応体25の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成し得るとともに、これら反応体26や巻回型反応体25の表面の酸化被膜を除去して活性化し得る。
【0031】
因みに、プラズマ処理では、上述したように巻回型反応体25を陽極とし、反応体26を陰極としてプラズマを発生させるだけでなく、その後、続けて巻回型反応体25及び反応体26の極性を逆にして、巻回型反応体25を陰極とし、反応体26を陽極としてプラズマを発生させてもよい。このように、巻回型反応体25を陰極とし、反応体26を陽極としてグロー放電を起こさせる場合も、電極対に600~1000[V](例えば1000[V]程度)の電圧を印加してグロー放電を600秒~100時間(好ましくは、10時間以上)継続して起こさせることが望ましい。これにより、陰極とした巻回型反応体25と、陽極とした反応体26の両方は、例えば500~600[℃]まで温度が上昇して表面を確実に活性化し得る。
【0032】
なお、発熱装置1は上述したプラズマ処理を行った後、巻回型反応体25及び反応体26に対して加熱処理を行うことが望ましい。この加熱処理は、例えば巻回型反応体25及び反応体26をヒータにより直接加熱し、巻回型反応体25及び反応体26から軽水素や、H2O、炭化水素系ガスを放出させ、水素原子を吸蔵し易くさせることができる。なお、このような加熱処理は、巻回型反応体25及び反応体26から軽水素や、H2O、炭化水素系ガスが放出されなくなるまで行うことが望ましく、例えば100~200[℃]で3時間以上を行うことが望ましい。
【0033】
ここで、反応体26は、金属ナノ粒子が形成される前に、室温の王水や、混酸中で数分間浸けて、表面を予め酸洗処理しておくことにより、プラズマ処理時、その表面に一段と細かな金属ナノ粒子を形成させることができる。
【0034】
(1-3)発熱反応処理
続いて、発熱装置1では、このようなナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が表面に形成された反応体26を用い、反応炉2内において核融合反応を起こさせる発熱反応処理を行え得る。この実施の形態の場合、発熱装置1では、上述したプラズマ処理に続き、発熱反応処理として、反応炉2内を真空状態に保持しつつ、ガス供給手段3によって反応炉2内に重水素ガスが供給され得る。
【0035】
次いで、発熱装置1では、重水素ガス雰囲気となった反応炉2内において、巻回型反応体25及び反応体26に、400~1500[V]、好ましくは600~1000[V]、さらに好ましくは700~800[V]の電圧を印加し、電極対にグロー放電を起こさせて反応炉2内にプラズマを発生させ得る。これにより、発熱装置1では、反応炉2内にプラズマを発生させている間、巻回型反応体25や反応体26の表面にある金属ナノ粒子に水素原子が吸蔵され、核融合反応が起こり得る。
【0036】
ここで、本発明の発熱装置1では、発熱反応処理時、反応炉2内にプラズマを発生させると、反応炉2内において核融合反応が起こるが、その際、反応体26や巻回型反応体25の表面に微細な金属ナノ粒子が新たに形成されてゆき、新たに形成された金属ナノ粒子にも水素原子が吸蔵され、核融合反応が起こり得る。
【0037】
(1-4)本発明による発熱装置における核融合反応の概要
ここで、反応体26に着目し、その表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成したことにより核融合反応が起こり易くなる概要について以下簡単に説明する。一般的には金属への電子照射によって中性子等の放射や熱は発生しない。しかしながら、ナノサイズのように一定サイズ以下の金属ナノ粒子中では、電子が重フェルミオン(重電子)として作用し、水素原子同士を接近させ核融合反応を起こす。通常、核融合反応を起こさせるには重水素の場合、107K=1keV以上のエネルギーが必要である。そのような大きなエネルギーを温度で与えようとすると、例えば、重水素の場合、約107K以上、軽水素の場合、約1.5×107K以上の高温が必要であり、核融合発生確率が10-31/s/atom pairと極めて低い。
【0038】
しかしながら、本発明のように反応体26の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子(金属ナノ凸部)を形成した場合、金属ナノ粒子内において電子は、周囲の金属原子や他の電子の影響を強く受ける。すなわち、金属ナノ粒子中に水素原子が導入することによって、金属ナノ粒子中の水素濃度が上がり、当該水素濃度が上がるとさらに金属ナノ粒子中の電子の性質が変化し質量が大きな値となる。重い電子は水素原子核と原子を形成し、重い電子が核外電子になると、電子軌道半径が縮み、重電子水素原子間の核間距離も縮む。その結果、反応体26では、トンネル効果による重電子水素原子間の核融合反応発生確率が上がり、核融合反応が起こり易くなる。例えば、Pdからなる金属ナノ粒子中の場合、電子質量が2倍に増えると、トンネル効果による核融合反応発生確率は10桁増加し、核融合反応が起こり易くなり得る。
【0039】
なお、反応体26は、重電子水素原子間の核融合反応発生確率を増やすために、例えばアルカリ類や、アルカリ土類原子(例として水素原子構造を持つ、Li、Na、K、Ca等)を金属ナノ粒子の表面に添附してもよく、これにより金属ナノ粒子中での電子の受け渡し作用を大幅に増加させることができ、一段と核融合反応発生確率を上げることができる。本発明の発熱装置1では、このようにして核融合反応を安定的に起こさせ、核融合反応時に生成される大きなエネルギーによって、安定的に発熱し得る。
【0040】
(1-5)検証試験
次に、図1に示すような発熱装置1を用意し、上述したプラズマ処理及び発熱反応処理を実行し、反応炉2周辺での中性子の測定と、反応炉2の温度測定とを行った。ここでは、先ず始めに、ナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が形成されていないNi(純度99.9%)でなる反応体を用意し、これを反応炉2内に設置した。次いで、プラズマ処理を行うため、真空排気手段10によって反応炉2内を真空排気し、反応炉2内を10-6気圧程度とした。
【0041】
続いて、この状態で巻回型反応体25及び反応体26に1[kV]の電圧を印加してグロー放電を発生させ、反応炉2内に当該グロー放電を30時間発生させ続けた。その後、この時点で反応体26を反応炉2から取り出して、反応体26の表面状態をSEM写真等により確認したところ、粒径が1000[nm]以下のナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が密集するように形成され、表面が凹凸状になっていることが確認できた。
【0042】
これとは別に、発熱反応処理を行うため、反応体26を反応炉2から取り出すことなく、上述したように電極対に1[kV]を印加してグロー放電を発生させ続け、反応炉2内を10-6気圧程度とし、ガス供給手段3により反応炉2内に重水素ガスをガス圧10-2気圧で供給した。これにより発熱装置1では、1~2分後に中性子測定手段19によって中性子が測定された。
【0043】
次いで一旦、グロー放電を中止し、反応炉2内に重水素ガスを補給した後、十分に電極対を冷却し、再び電極対に1[kV]の電圧を印加してグロー放電を発生させた。これにより中性子測定手段19によって、再び中性子を測定し始め、この後、中性子を数時間継続して測定した。ここで、中性子の測定結果を図3に示す。図3に示すように、この発熱装置1では、グロー放電を起こさせるために電極対に電圧を供給した後から急激に中性子が発生していることから、反応炉2内で中性子発生を伴う核融合反応が起こっていることが推測できた。また、このような中性子の発生数は、電極対の放電電圧によって制御でき、電圧の指数関数で発生中性子数が増加することが確認できた。なお、安定的な中性子の発生は、電圧の供給により、106個が得られた。発熱反応を200秒間継続させたときの反応体26の単位面積あたりの中性子発生量を計算したところ105個であった。
【0044】
また、中性子の測定と同時に、反応炉2の温度を熱電対18で測定したところ、図4に示すような結果が得られた。図4から、中性子が発生した後、反応炉2の温度が上昇していることが確認でき、これによりこの発熱装置1は反応炉2から熱を生成できることが確認できた。なお、中性子の発生に遅れて温度上昇が測定されたのは、発熱箇所と熱電対18の設置場所がずれているためであり、温度上昇に熱伝導に要する時間分だけ遅れが生じたからである。なお、図4中、△T1~△T5は、反応炉2の筒状部2aに沿って所定間隔を空けて設けられた箇所を示している。因みに、このとき電極対間に流れた電流は30[mA]であった。すなわち、電力としては30[W]となる。これから熱発生量は1[kW]となり、入力に対する発熱量は33倍に達した。
【0045】
(1-6)作用及び効果
以上の構成において、本発明に係る発熱装置1では、1000[nm]以下のナノサイズでなり、水素吸蔵金属からなる複数の金属ナノ粒子が表面に形成された反応体26を反応炉2内に設け、重水素ガス雰囲気となった反応炉2内で巻回型反応体25及び反応体26でプラズマを発生させてエネルギーを与える発熱反応処理を行うようにした。これにより発熱装置1では、水素原子が反応体26の金属ナノ粒子内に吸蔵され、当該金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、トンネル核融合反応の起こる確率を上げることができる。
【0046】
また、この発熱装置1では、表面に金属ナノ粒子が形成されていない反応体を反応炉2内に設けた場合でも、発熱反応処理を行う前に、反応炉2内を真空雰囲気とし、巻回型反応体25及び反応体により起こるグロー放電により反応炉2内にプラズマを発生させるプラズマ処理を行うことにより、ナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を反応体26の表面に形成できる。さらに、発熱装置1では、発熱反応処理前にプラズマ処理を行うことで、反応体26の表面にある酸化被膜を除去でき、かくして、発熱反応処理時に、反応体26の表面を、水素原子が反応体26の金属ナノ粒子内に吸蔵可能な活性状態にでき、核融合反応を起こさせることができる。
【0047】
また、この実施の形態の場合、反応体26は、表面が細線により網目状に形成されていることから、細線の直径を小さくするだけで表面の厚さを容易に薄くでき、表面の厚さを、ナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が形成し易い最適な薄さにできる。さらに、反応体26では、表面を網目状に形成したことにより、表面積を増やすことができ、その分、水素原子を吸蔵させる金属ナノ粒子の形成領域を広くでき、発熱が生じる反応箇所を増やすことができる。
【0048】
また、この発熱装置1では、電源20から配線22bを介して反応炉2に電圧を印加するとともに、反応体26を反応炉2の内壁に接するようにして当該反応体26で反応炉2の内壁を覆うようにしたことにより、反応体26を電極として機能させつつ、それと同時に反応体26によって反応炉2の内壁がグロー放電による電子照射によって削られるのを防ぐことができる。
【0049】
さらに、発熱装置1では、水素吸蔵金属からなる巻回型反応体25の細線36の表面にもナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成するようにした。これにより発熱装置1では、巻回型反応体25の細線36表面の金属ナノ粒子内にも水素原子が吸蔵され、当該金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、トンネル核融合反応の起こる確率を上げることができる。
【0050】
以上の構成によれば、1000[nm]以下のナノサイズでなり水素吸蔵金属でなる複数の金属ナノ粒子(金属ナノ凸部)が表面に形成された反応体26を、重水素ガス雰囲気となる反応炉内に設置するようにしたことにより、水素原子が反応体26の金属ナノ粒子内に吸蔵され、当該金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、トンネル核融合反応の起こる確率を上げることができ、かくして従来よりも安定的に熱を生成し得る。」
イ 第2の実施の形態
「【0051】
(2)第2の実施の形態
(2-1)第2の実施の形態による発熱装置の構成
図1との対応部分に同一符号を付して示す図5において、41は第2の実施の形態に係る発熱装置を示し、反応炉42の構成と、電極対の構成とが第1の実施の形態とは相違している。また、この第2の実施の形態による発熱装置41では、発熱反応処理時、電極対によりプラズマを発生させずに、ヒータにより反応炉42内を加熱し、加熱した反応炉42内に重水素ガスを供給することで、加熱温度以上の過剰熱を発生させている点で、上述した第1の実施の形態による発熱装置とは異なっている。さらに、この発熱装置41では、過剰熱が発生した後に、電極対によりプラズマを発生させることで、発熱温度がさらに上昇し、プラズマを停止させても、重水素ガスを反応炉42内に供給し続ける限り、温度上昇した高温の熱を生成し続けることができる点でも、第1の実施の形態とは相違している。
【0052】
なお、この発熱装置41は、その他の構成については上述した第1の実施の形態と同じであることから、ガス供給手段3や真空排気手段10、電源20等の図示や、その説明は省略する。実際上、この実施の形態の場合、反応炉42は、例えばステンレス(SUS306やSUS316)等で形成された筒状部43a及び壁部43b,43cを備え、筒状部43aの両端開口部が、ガスケット(図示しない)を介して壁部43b,43cにより閉塞されており、筒状部43a及び壁部43b,43cで密閉空間を形成し得る。
【0053】
この場合、筒状部43aには、開口視認部30が設けられた開口部29と対向するように他の開口部45が側面部に穿設されており、例えばステンレス(SUS306やSUS316)等でなる筒状の配管連通部46の中空領域と開口部45とが連通するように、当該配管連通部46の一端が側面部に接合されている。配管連通部46の他端には、壁部47が設けられており、ガス供給管8、真空排気管13及び圧力測定用配管48の管内部と、反応炉42内とが連通するように、これらガス供給管8、真空排気管13及び圧力測定用配管48が壁部47に設けられている。なお、圧力測定手段15は、圧力測定用配管48に設けられており、圧力測定用配管48を介して反応炉42内の圧力を測定し得る。
【0054】
かかる構成に加えて、反応炉42には、炉内に巻回型反応体50,51からなる電極対が設けられており、さらに反応炉42の筒状部43aの内壁を覆うように反応体26が設けられている。なお、この実施の形態の場合には、筒状部43aに穿設された開口部29,45と対向するように巻回型反応体50,51が炉内に配置されており、開口部45に設けた配管連通部46からの重水素ガスが巻回型反応体50,51に直接吹き付けることができるとともに、開口部29に設けた開口視認部30の中空領域から巻回型反応体50,51の様子を作業者が直接目視確認し得るようになされている。
【0055】
ここで、この実施の形態の場合、発熱装置41では、上述した第1の実施の形態とは異なり反応体26を電極として機能させずに、これとは別に反応炉42内に設けた巻回型反応体50,51を陰極及び陽極として機能させ、プラズマ処理等を行う際、これら巻回型反応体50,51を電極対としてグロー放電を起こさせ、炉内にプラズマを発生させ得るようになされている。反応体26は、上述した第1の実施の形態と同様の構成を有しており、電極として機能しないものの、巻回型反応体50,51を電極対としたプラズマ処理(ここで、プラズマ処理とは、密閉空間とした反応炉42内の気体を真空排気し、炉内の圧力を10~500[Pa]として、電極対に600~1000[V]の電圧を印加して600秒~100時間、グロー放電を起こさせて反応体26の温度を500~600[℃]まで上昇させることを言う)によりナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が表面に形成され、これにより真空状態が保持された反応炉42内でヒータにより加熱された後、重水素ガスが供給されると、これら金属ナノ粒子内に水素原子を吸蔵し得、核融合反応が起こり得る。
【0056】
巻回型反応体50は、電極保持部54の先端に設けられており、当該電極保持部54により反応炉42内の中央に配置され得る。電極保持部54は、電極導入部57を介して図示しない電源に接続され、当該電源からの電圧を巻回型反応体50に印加し得る。なお、電極保持部54は、壁部43bに穿設された開口部55から反応炉42内に挿通され、当該開口部55に設けた絶縁部材56により保持されているとともに、開口部55において当該絶縁部材56により壁部43bと非接触となるように配置され、反応炉42と電気的に絶縁されている。巻回型反応体50は、例えばPd、Ti、Pt、Ni、或いはこれら元素のうち少なくともいずれか1種を含有した合金を含む水素吸蔵金属からなる細線53が、Al2O3(アルミナセラミックス)等の導通部材でなる支持部52に螺旋状に巻き付けられた構成を有し、プラズマ処理によって細線53の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成させることができる。これにより巻回型反応体50でも、真空状態が保持された反応炉42内でヒータにより加熱されるとともに、重水素ガスが供給されると、これら金属ナノ粒子内に水素原子が吸蔵され、核融合反応が起こり得る。
【0057】
なお、巻回型反応体50における細線53の表面に形成される金属ナノ粒子のサイズや形状は、反応体26の表面に形成される金属ナノ粒子と同様である。すなわち、巻回型反応体50における細線53の表面には、球状粒子、楕円状粒子、又は卵状粒子の一部が当該表面に埋め込まれたような形状(例えば、半球状や、半楕円状、又は半卵状)でなる湾曲表面を有した複数の金属ナノ粒子が形成され得る。
【0058】
因みに、反応体26をNiにより形成し、巻回型反応体50における細線53をPdにより形成したところ、巻回型反応体50における細線53の表面には、Niで形成した反応体26ほどではないが、表面に金属ナノ粒子同士が接触するようにして形成され、複数の金属ナノ粒子が密集する領域も形成された(後述する図8に示す)。また、巻回型反応体50における細線53の表面に形成される金属ナノ粒子は、反応体26の表面に形成される金属ナノ粒子と同様に、幅が1000[nm]以下のナノサイズに形成され、好ましくは300[nm]以下、さらに好ましくは10[nm]以下、さらには5[nm]以下に形成されていることが望ましく、金属ナノ粒子の幅を小さくすることで、少ない重水素ガスの供給量で核融合反応が起こり易くなり得る。
【0059】
なお、この場合であっても、巻回型反応体50における細線53の表面には、反応体26の表面と同様に、金属ナノ粒子の幅(粒径)が1~10[nm]で、これら微小な金属ナノ粒子の互いの距離が熱運動によって接触しない距離、好ましくは粒径の3倍以上の距離を設けて形成されていることが望ましい。この場合、反応体の表面には、金属ナノ粒子が、例えば1[cm2]あたり、4×108個形成されていることが好ましく、さらに微小な金属ナノ粒子が点在するように形成されていることが望ましい。
【0060】
なお、反応炉42には、巻回型反応体50の支持部52に熱電対58が接触するように配置されている。これにより巻回型反応体50は、熱電対58によって温度が測定され、熱電対58に接続されたコンピュータ等により作業者が温度確認し得るようになされている。この場合、熱電対58は、アルミナ管の内部にK型の熱電対素子が挿入された構成を有し、壁部43bにおいて絶縁部材59により保持され、反応炉42と絶縁されている。
【0061】
巻回型反応体50と対をなす他方の巻回型反応体51は、電極保持部62の先端に設けられており、当該電極保持部62によって、一方の巻回型反応体50と対向するように炉内に配置されている。なお、電極保持部62は、壁部43bに設けた絶縁部材63により保持された電極導入部64に接続されている。電極導入部64は、図示しない電源に接続されており、当該電源からの電圧を、電極保持部62を介して巻回型反応体51に印加し得る。これにより巻回型反応体51は電源から電圧が印加されて陰極又は陽極として機能し得る。
【0062】
巻回型反応体51は、例えばPd、Ti、Pt、Ni、或いはこれら元素のうち少なくともいずれか1種を含有した合金を含む水素吸蔵金属で形成された軸部60に、同じくPd、Ti、Pt、Ni、或いはこれら元素のうち少なくともいずれか1種を含有した合金を含む水素吸蔵金属で形成された細線61が螺旋状に巻き付けられた構成を有し、軸部60の根本が電極保持部62の先端に取り付けられている。この巻回型反応体51も、上述した巻回型反応体50と同様に、プラズマ処理によって、軸部60や細線61の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成させることができる。かくして、巻回型反応体51でも、真空状態が保持された反応炉42内に重水素ガスが供給されると、軸部60や細線61の表面に形成された金属ナノ粒子内に水素原子が吸蔵され、核融合反応が起こり得る。なお、巻回型反応体51の軸部60や細線61の表面に形成される金属ナノ粒子は、上述した巻回型反応体50の細線53の表面に形成される金属ナノ粒子と同様の構成を有することから、ここではその説明は省略する。
【0063】
かくして、第2の実施の形態による発熱装置41は、プラズマ処理によって巻回型反応体50,51及び反応体26の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成し得、続けて、図示しないヒータにより巻回型反応体50,51や反応体26が加熱された状態で、真空状態が保持された反応炉42内に重水素ガスが供給されると、巻回型反応体50,51及び反応体26の表面にある金属ナノ粒子内に水素原子が吸蔵され、その結果、反応炉42内で核融合反応を起こさせ、発熱し得るようになされている。ここで、ヒータにより巻回型反応体50,51や反応体26を加熱する際の加熱温度は、200[℃]以上、さらに好ましくは250[℃]以上であることが望ましい。
【0064】
また、この第2の実施の形態による発熱装置41では、このような反応炉42内で発熱している際に、電極対によりグロー放電を起こさせてプラズマを発生させると、発熱温度がさらに上昇し、当該プラズマを停止させても、反応炉42内を水素ガス雰囲気に維持し続ける限り、そのまま温度上昇した状態を維持し続けることができる。
【0065】
(2-2)検証試験
次に、図5に示した発熱装置41を用い、反応炉42が発熱するか否かについて検証試験を行った。ここでは、体積15[l]、重量50[kg]の反応炉42をステンレス(SUS306)で形成した。また、この検証試験では、縦横30[mm]、厚さ2[mm]のAl2O3(アルミナセラミックス)で形成された支持部52に、直径0.1[mm]、長さ1000[mm]のPd(純度99.9%)でなる細線53を15回巻き付けた巻回型反応体50を用い、また、直径3[mm]、長さ50[mm]のPd(純度99.9%)でなる軸部60に、直径1[mm]、長さ300[mm]のPd(純度99.9%)でなる細線61を隙間なく螺旋状に巻き付けた巻回型反応体51を用いた。また、この検証試験では、直径0.1[mm]のNi(純度99.9%)でなる細線で表面が網目状に形成されている筒状の反応体26を用いた。
【0066】
次いで、これら巻回型反応体50,51及び反応体26をアルコールとアセトンで超音波洗浄を行い、油脂の汚染が起きないように洗浄状態を保って反応炉42内に設置した。なお、この反応炉42は全体が接地電位となっている。また、巻回型反応体50の温度を直接計るための熱電対58は直径1.6[mm]、長さ300[mm]のK型でステンレス被覆型のものを用い、さらにステンレス外皮の外側を直径3[mm]、長さ100[mm]のアルミナ管で絶縁し、先端部分を巻回型反応体50表面に接触させた。
【0067】
そして、先ず始めにプラズマ処理として、反応炉42内の気体を真空排気してゆき、反応炉42内を数Paの真空雰囲気とした後、巻回型反応体50を陽極とし、600[V]の直流電圧を加え、20[mA]程度で600秒程度放電させた。次に、電極電圧を変えて巻回型反応体50を陰極とし、600[V]の直流電圧を加え、20[mA]程度で1200秒程度放電させた。この過程を5回繰り返した後、反応炉42から反応体26と巻回型反応体50を取り出してその表面をSEM写真により観察した。
【0068】
ここで、図6Aは、上述したプラズマ処理を行う前の反応体26の表面を撮像したSEM写真であり、幅が1000[nm]以下のナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子がその表面には形成されておらず、平坦な表面であることが確認できた。一方、図7は、上述したプラズマ処理を行った後の反応体26の表面を撮像したSEM写真であり、幅が1000[nm]以下のナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子がその表面に形成され、表面が凹凸状になっていることが確認できた。また、これら金属ナノ粒子は、半球状、半楕円状等、湾曲表面になっていることが確認できた。
【0069】
また、図6Bは、上述したプラズマ処理を行う前の巻回型反応体50における細線53の表面を撮像したSEM写真であり、当該巻回型反応体50でも幅が1000[nm]以下のナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子がその表面には形成されておらず、平坦な表面であることが確認できた。一方、図8は、上述したプラズマ処理を行った後の巻回型反応体50における細線53の表面を撮像したSEM写真であり、幅が1000[nm]以下のナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子がその表面に形成され、表面が凹凸状になっていることが確認できた。また、この場合も金属ナノ粒子は、半球状、半楕円状等、湾曲表面になっていることが確認できた。なお、巻回型反応体50における細線53の表面には、反応体26ほどではないが、表面に金属ナノ粒子同士が接触するようにして形成され、複数の金属ナノ粒子が密集する領域も形成されることが確認できた。
【0070】
ここで、巻回型反応体50について、プラズマ処理後の細線53の表面をさらに拡大して観察したところ、図9A及び図9Bに示すようなSEM写真が得られた。この図9A及び図9Bから、幅が100[nm]以下の金属ナノ粒子が形成されており、金属ナノ粒子の表面にさらに幅が小さい微小な金属ナノ粒子が形成される等、表面が凹凸状に形成されていることが確認できた。因みに、この検証試験では、直径0.1[mm]のPdの細線53を支持部52に巻き付けた巻回型反応体50を用いたが、直径1[mm]のPdの細線を支持部52に巻き付けた巻回型反応体を用いて検証試験を行ったところ、放電を10[ks]継続し、これを10回繰り返すことにより、当該細線の表面に十分活性な金属ナノ粒子を形成できることが確認できた。
【0071】
次いで、この検証試験では、反応炉42内の真空状態を保持し、図示しないヒータによって巻回型反応体50,51及び反応体26を100~200[℃]で3時間程度、加熱活性化し、巻回型反応体50,51及び反応体26から、軽水素、H2O、さらに炭化水素系のガスを放出させて不純物を取り除いた。
【0072】
次いで、発熱反応処理として、第2の実施の形態による発熱装置41の検証試験では、図10及び図11に示すように、反応炉42内の真空状態を保持したまま段階的に巻回型反応体50を加熱してゆき、室温差140[℃]のとき、ガス供給管8から反応炉42内に重水素ガスを100[Pa]で導入した。ここで、図10は、電極対に印加した電圧を示し、図11は、ヒータにより巻回型反応体50を段階的に加熱していったときからの巻回型反応体50の温度を示す。なお、図11に示す温度は、巻回型反応体50の温度と、室温との差(室温差)である。
【0073】
この検証試験では、図11に示すように、巻回型反応体50を段階的に室温差140[℃]まで加熱した後、反応炉42内に重水素ガスを100[Pa](すなわち100[ml])で供給すると、電極対によってプラズマを発生させなくても、直ぐに室温差が220[℃]まで上昇した。その後、図10及び図11に示すように、巻回型反応体50の細線53(図10中ではPd細線と呼ぶ)の表面を活性化させるため、電極対に印加する電圧値を45[V]まで上昇させて4000秒間プラズマによる活性化処理を行ったところ、さらに30[℃]温度上昇して250℃となった。その後、電極対に印加する電圧値を32[V]まで下げてプラズマを停止させても、重水素ガスを反応炉42から排出するまで、温度上昇した状態がそのまま安定して継続した。
【0074】
また、この際、中性子測定手段によって反応炉42の周囲の中性子を測定したところ、重水素ガスを反応炉42内に導入し巻回型反応体50が発熱し始めてから、中性子測定手段において中性子が測定された。このように巻回型反応体50における発熱と、中性子の測定とから、反応炉42内では核融合反応が起こっていると推測できる。因みに、図10及び図11に示すように、250[℃]で安定して発熱している状態になった後、再び巻回型反応体50の細線53の表面を活性化させるため、電極対に電圧を印加しグロー放電を起こさせ、プラズマによる活性化処理を行ったが、さらなる温度上昇は確認できなかった。以上の検証試験により、第2の実施の形態に係る発熱装置41では、巻回型反応体50,51や反応体26の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成し、当該表面を活性化させた後、反応炉42内に重水素ガスを供給することにより核融合反応を起こさせて熱を生成できることが確認できた。
【0075】
(2-3)作用及び効果
以上の構成において、本発明に係る発熱装置41でも、ナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が表面に形成された水素吸蔵金属からなる反応体26を反応炉42内に設け、反応体26をヒータにより加熱してエネルギーを与え、真空状態に保持された反応炉42内に重水素ガスを供給し、反応炉42内を重水素ガス雰囲気とした。また、発熱装置41では、水素吸蔵金属からなる巻回型反応体50の細線53や巻回型反応体51の表面にもナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成するようにした。これにより発熱装置41では、ヒータの加熱によりエネルギーが与えられることにより、巻回型反応体50,51や反応体26の金属ナノ粒子内に水素原子が吸蔵され、当該金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、トンネル核融合反応の起こる確率を上げることができ、かくして加熱温度以上の熱を従来よりも安定的に生成し得る。
【0076】
また、この発熱装置41では、重水素ガス雰囲気となる反応炉内で、電極対によりプラズマを発生させると、発熱が促進して発熱温度がさらに上昇し、当該プラズマを停止させても、反応炉42内を重水素ガス雰囲気に維持し続ける限り、そのまま温度上昇した状態を維持し続けることができる。
【0077】
また、発熱装置41では、反応体26及び巻回型反応体50に加え、さらに巻回型反応体51を設け、この巻回型反応体51にも複数の金属ナノ粒子が形成されることから、当該金属ナノ粒子が形成されている領域が増え、その分、水素原子が金属ナノ粒子内に吸蔵され易くなり、核融合反応が起こる確率を高くできる。」
ウ 第3の実施の形態
「【0078】
(3)第3の実施の形態
図1との対応部分に同一符号を付して示す図12において、65は第3の実施の形態による発熱装置を示し、上述した第1の実施の形態とは、反応炉2内に設置される電極対の構成が相違している。実際上、この発熱装置65における反応炉2には、反応炉2の中心軸上に、例えば陽極として機能する巻回型反応体66と、陰極として機能する内側反応体72とが直列に配置されており、同じく陰極として機能する筒状の反応体26の中空領域内に、これら巻回型反応体66及び内側反応体72が配置されている。
・・・(略)・・・
【0085】
また、この発熱装置65では、水素吸蔵金属からなる巻回型反応体66の軸部69及び細線68,70の表面にもナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成するようにした。これにより発熱装置65では、ヒータの加熱によりエネルギーが与えられることにより、軸部69及び細線68,70の表面にある金属ナノ粒子内にも水素原子が吸蔵され、当該金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、トンネル核融合反応の起こる確率を上げることができ、かくして従来よりも安定的に熱を生成し得る。」
エ 重水素ガス及び軽水素ガスを用いた検証試験について
(ア)「【0091】
(4-1)重水ガス、軽水素ガス、及び軽水ガスの利用について
・・・(略)・・・
【0093】
また、第2の実施の形態による発熱装置41(図5)でも、ナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が表面に形成された水素吸蔵金属からなる反応体26及び巻回型反応体50,51を反応炉42内に設け、これら反応体26及び巻回型反応体50,51をヒータにより加熱してエネルギーを与え、重水ガスや、軽水素ガス、軽水ガスを、真空状態に保持された反応炉42内に供給する。これにより発熱装置41でも、巻回型反応体50,51や反応体26の金属ナノ粒子内に水素原子が吸蔵され、当該金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、トンネル核融合反応の起こる確率を上げることができ、かくして加熱温度以上の熱を従来よりも安定的に生成し得る。
【0094】
さらに、重水ガスや、軽水素ガス、軽水ガスを用いた第2の実施の形態による発熱装置41でも、上述と同様に、過剰熱発生後、重水ガス雰囲気、軽水素ガス雰囲気、又は軽水ガス雰囲気とした反応炉42内で、電極対によりプラズマを発生させると、発熱が促進して発熱温度がさらに上昇し、当該プラズマを停止させても、反応炉42内を重水ガス雰囲気、軽水素ガス雰囲気、又は軽水ガス雰囲気に維持し続ける限り、そのまま温度上昇した状態を維持し続けることができる。
・・・(略)・・・
【0096】
重水ガス雰囲気、軽水素ガス雰囲気、又は軽水ガス雰囲気の反応炉42内では、水素原子が反応体26及び内側反応体72の金属ナノ粒子内に吸蔵され、当該金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、トンネル核融合反応の起こる確率を上げることができ、かくして従来よりも安定的に熱を生成し得る。
・・・(略)・・・
【0098】
(4-2)重水素ガス、重水ガス、軽水ガス、及び軽水素ガスを用いた検証試験について
次に、図5に示した構成の発熱装置41を用いて、重水素ガス、重水ガス、軽水ガス、及び軽水素ガスを用いたときの出力総エネルギー等について調べる検証試験を行った。ここで、検証試験に用いる発熱装置41は、直径0.05[mm]のNi(純度99.9%)でなる細線により、100メッシュの網目が形成され、高さ30[cm]、幅30[cm]の反応体26を用意し、この反応体26の外周面が反応炉42内の内壁に沿って密着するように設置した。なお、この段階では、円筒状の反応体26の表面に、ナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が形成されていない。
【0099】
また、この検証試験では、縦横30[mm]、厚さ2[mm]のAl2O3(アルミナセラミックス)で形成された支持部52に、直径0.2[mm]、長さ1000[mm]のPd(純度99.9%)でなる細線53を15回巻き付けた巻回型反応体50を用いた。さらに、この検証試験では、直径3[mm]、長さ50[mm]のPd(純度99.9%)でなる軸部60に、直径1[mm]、長さ300[mm]のPd(純度99.9%)でなる細線61を隙間なく螺旋状に巻き付けた巻回型反応体51を用いた。
【0100】
次いで、これら巻回型反応体50,51及び反応体26をアルコールとアセトンで超音波洗浄を行い、油脂の汚染が起きないように洗浄状態を保って反応炉42内に設置した。なお、この反応炉42は全体が接地電位となっている。また、巻回型反応体50の温度を直接計るための熱電対58は直径1.6[mm]、長さ300[mm]のK型でステンレス被覆型のものを用い、さらにステンレス外皮の外側を直径3[mm]、長さ100[mm]のアルミナ管で絶縁し、先端部分を巻回型反応体50表面に接触させた。なお、電極対となる巻回型反応体50,51は、陽極及び陰極の極性を変えることができる。
【0101】
次いで、先ず始めにプラズマ処理として、反応炉42内の気体を真空排気してゆき、反応炉42内を数Paの真空雰囲気とした後、巻回型反応体50を陽極、他方の巻回型反応体51を陰極とし、600~800[V]の直流電圧を加え、20[mA]程度で600秒程度放電させた。次に、電極電圧を変えて巻回型反応体50を陰極、他方の巻回型反応体51を陽極とし、600~800[V]の直流電圧を加え、20~30[mA]程度で103~104秒程度放電させた。
【0102】
次いで、この検証試験では、プラズマ処理として、反応炉42内の真空状態を保持し、図示しないヒータによって巻回型反応体50,51及び反応体26を加熱して活性化させた。巻回型反応体50,51及び反応体26の加熱は、巻回型反応体50,51及び反応体26から、軽水素、H2O、さらに炭化水素系のガスが放出されなくなるまで行った。具体的には、ヒータによって巻回型反応体50,51及び反応体26を100~200[℃]で3時間程度、加熱活性化し、巻回型反応体50,51及び反応体26から、軽水素、H2O、さらに炭化水素系のガスを放出させて不純物を取り除いた。
【0103】
さらに、この検証試験では、プラズマ処理として、巻回型反応体50を陽極とし、600~800[V]の直流電圧を加え、20~30[mA]程度で10[ks]秒程度放電させた。このようにして巻回型反応体50,51及び反応体26の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成した。なお、このようなプラズマ処理後、重水素ガスを反応炉42内に供給し、反応炉42内のガス圧力を調べたところ、当該ガス圧力が170[Pa]から40[Pa]に低下することが確認できた。このことから、試料金属たる巻回型反応体50,51及び反応体26が6.5[cm3]の重水素ガスを吸収したことが確認できた。
【0104】
また、このようなナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が表面に形成された巻回型反応体50,51及び反応体26を用い、反応炉42内において核融合反応を起こさせる発熱反応処理を行った。この検証試験では、発熱反応処理として、反応炉42内を真空状態に保持しつつ、ガス供給手段3によって反応炉42内に供給されるガスの種類や、ガス供給時のガス圧力、電極対を加熱するヒータの入力加熱ワット数を変え、反応炉42の温度等の各種数値を調べた。ここでは先ず始めに、反応炉42内に供給するガスとして重水素ガスを用いたときの結果を、下記の表1に示す。」
(イ)「【0105】
【表1】
・・・(略)・・・
【0106】
表1において、1列目の「No.」は試験番号であり、2列目の「Gas Pressure Pa」は重水素ガスのガス圧力(Pa)であり、3列目の「Input Watt」はヒータの入力加熱ワット数(W)であり、4列目の「Out put/W Electrode」は電極(巻回型反応体50)の温度から計算した熱出力(W)であり、5列目の「Out put/W Reactor」は反応炉42の温度から計算した熱出力(W)である。
【0107】
また、表1において、6列目の「Time ks」は過剰熱継続時間(ks)であり、7列目の「Hout/Hin Electrode」は電極(巻回型反応体50)の温度から求めた出力/入力比値であり、8列目の「Hout/Hin Reactor」は反応炉42の外壁温度から求めた出力/入力比であり、9列目の「Temperature/C Electrode」は試験中における電極(巻回型反応体50)の定常温度(℃)であり、10列目の「Temperature/C Reactor」は試験中における反応炉42の定常温度(℃)であり、11列目の「Input Energy kJ」は入力総エネルギー(kJ)であり、12列目の「Output Electrode kJ」は電極(巻回型反応体50)の温度から計算した出力総エネルギー(kJ)であり、13列目の「Output Reactor kJ」は反応炉42の外壁温度から計算した出力総エネルギー(kJ)である。
【0108】
なお、試験番号No.6~No.13までは連続した一連の試験結果を示す。表1から、重水素ガスを用いた、いずれの場合でも、入力総エネルギー(11列目)よりも大きな出力総エネルギー(12列目及び13列目)が得られており、過剰熱発生が観察でき、発熱装置41により発熱可能であることが確認できた。
【0109】
次に、発熱装置41において、重水素ガスを用いたときの発熱前後におけるガス成分について調べた。図14Aは、原料ガスである重水素ガスの質量分析結果であり、横軸にガスM/eの質量数を示し、縦軸に反応炉42内のガス成分を分圧により示したものである。分圧値と、反応炉42の体積5[l]と、温度と、圧力とから、図14Aに示すような重水素ガスの標準状態のガス量を得た。図14Aに示すように、原料ガスである重水素ガスは、重水素が主であり、質量数4が202[Pa]であった。また、その他に質量数3のHD+が42[Pa]、質量数2のH2+が5[Pa]であった。不純物としては、H2O+あるいはOD+と推測される質量数18が含まれていた。なお、質量数17はOH+、質量数19はOHD+、質量数20はOD2+と推定される。
【0110】
次に、発熱装置41において発熱反応処理を行い、発熱反応処理後の反応炉42内におけるガス成分を調べた。ここで、発熱反応処理としては、真空排気状態で重水素ガスを反応炉42内に供給しつつ、ヒータにより電極(巻回型反応体50)を約84[ks]間加熱した。この際、初めの7[ks]はヒータへの入力を46[W]とし、それ以後は81[W]とした。なお、その間、反応炉42内のガス排気を数回行ったが、過剰熱は継続して発生していた。
【0111】
図14Bは、上述した発熱反応処理を行った後(すなわち、ヒータによる電極加熱を終了した後のことであり、以下、試験終了後とも呼ぶ)、10[ks]間の反応炉42内のガス成分を調べた結果を示す。図14Bから、試験終了後では、質量数3であるHD+が多くなり、次に、質量数2であるH2+と、質量数19であるOHD+とが多くなっていた。
【0112】
そして、さらに正確にガス成分の同定を行うために、発熱装置41において重水素ガスを用いた熱発生試験を30日間行った。図15及び図16は、このときのガス成分の増減を試験時間経過に沿って表した測定結果である。図15及び図16は、横軸が時間経過であり、縦軸がガス量を示しており、図16は、図15においてガス量15[cm3]以下の領域を拡大したグラフである。図15及び図16中、「Total exclude2」とは全ガス量を示す。なお、過剰熱は、入力80[W]に対して、最低値で15[W]となっていた。経過時間に15[W]を乗すると発熱エネルギー、すなわちジュールとなる。このことからすると経過時間2.7[Ms]で40[MJ]と計算できる。
【0113】
図15及び図16から、検証試験の開始直後、質量数4(D2+)が主である質量数4が減少し、その後減少速度は落ちるが、時間経過に伴い直線的に減っていった。これに対して、重水素原子(D+)と推測される質量数2が、質量数4(D2+)とは逆に増加していった。このような水素分子の解離エネルギーは25[℃]で436[kJ/mol]、解離度は1000[℃]で1.0×10-7程度であった。また、ニッケルでなる反応体26のヒータによる加熱を停止しても、この質量ガスは安定に存在していた。
【0114】
質量数3は、検証試験開始後、質量数2の質量減少に対し逆相関で増加していったが、その後は質量数4の挙動と対応して減っていった。また、質量数28も時間とともに増加してゆき、その量は30日で2.3[cm3]であった。それ以外の成分は殆ど変化しなかった。なお、質量数2以外の成分の総計は初めの変化以後、殆ど一定であった。そして、質量数3(HD+)と、質量数4(D2+)(当審注:質量数4(D2+)の誤記と認められる。)は、ともにガス圧力と出力総エネルギーとに依存していたが、その傾向は逆であり、質量数3はガス圧力や出力総エネルギーが増えると増加するが、質量数4はガス圧力や出力総エネルギーが増えると減少した。このことは質量数4が質量数2や質量数3の生成に寄与していることを示している。なお、検証試験によって、質量数2(H2+)は、出力総エネルギーが大きいほど発生量が増えるが、重水素ガスのガス圧力には依存せず、一方、質量数3(HD+)は、重水素ガスのガス圧力と発熱量の増大によって増えることが分かった。」
(ウ)「【0119】
ここで、発熱装置41において、電極対となる巻回型反応体50,51をPdにより形成し、反応炉42内に供給する原料ガスとして、重水素ガス、重水ガス、又は軽水ガスを用いたときの検証試験の結果を下記の表3に示す。
【0120】
【表3】
・・・(略)・・・
【0121】
なお、表3において、2列目の「Gas Component Significant」は、用いたガスの種類を示し、3列目の「Gas Pressure Pa」は、反応炉42内にガスを供給する際のガス圧力を示し、4列目の「Power in /W Heat Watt W」は、巻回型反応体50,51及び反応体26を加熱する際のヒータの入力加熱ワット数(W)を示し、5列目の「Power in /W Plasma V」は、電極となる巻回型反応体50,51によりプラズマ放電を発生させる際の入力電圧値を示し、6列目の「Power in /W Plasma W」は、電極対となる巻回型反応体50,51によりプラズマ放電を発生させる際の入力ワット数を示し、7列目の「Power in /W Total」は、ヒータによる入力加熱ワット数と、プラズマ放電時における電極対への入力ワット数とを合わせた全入力ワットを示す。
【0122】
また、表3において、8列目の「Time ks」は、過剰熱継続時間を示し、9列目の「Heat out/W Estimated by Electrode temp」は、電極(巻回型反応体50)の温度から計算した発熱量を示し、10列目の「Heatout/W Estimated by reactor temp」は、反応炉42の外壁温度から計算した発熱量を示し、11列目の「Hout/Hin Estimated by Electrode temp」は、電極(巻回型反応体50)の温度を基に計算した出力/入力比を示し、12列目の「Hout/Hin Estimated by reactor temp」は、反応炉42の外壁温度を基に計算した出力/入力比を示す。
【0123】
なお、重水素ガスを用いた試料No.33では、プラズマ放電を行わず、かつヒータによる電極対の加熱も行っておらず、この場合、11列目及び12列目の出力/入力比から過剰熱が発生しないことが確認できた。
【0124】
一方、それ以外の試料では、11列目及び12列目の出力/入力比から過剰熱が発生していることが確認できた。発熱装置41では、発熱反応処理時、重水素ガスだけでなく、重水ガスや軽水ガスを反応炉42内に供給し、反応炉42内を重水ガス雰囲気や軽水ガス雰囲気としても、巻回型反応体50,51及び反応体26をヒータにより加熱することで過剰熱が発生することが確認できた。」
(エ)「【0125】
次に、発熱装置41において、軽水素(H2)ガスを用いたときの検証試験の結果を表4に示す。この場合、巻回型反応体50,51をNiにより形成し、これら巻回型反応体50,51を電極対とし、上述した表1の結果を得たときと同じ条件にてプラズマ処理を行った。続いて、発熱装置41において発熱反応処理を行った結果、表4のような結果を得た。
【0126】
【表4】
・・・(略)・・・
【0127】
表4において、3列目の「圧力」は、反応炉42内に軽水素ガスを供給する際のガス圧力(Pa)を示し、4列目の「入力/W」は、巻回型反応体50,51及び反応体26を加熱する際のヒータの入力加熱ワット数(W)を示し、5列目の「時間/ks」は過剰熱継続時間を示し、6列目の「内部温度計算」は、反応炉42内の温度(℃)から計算した発熱量を示し、7列目の「炉温度計算」は、反応炉42自体の温度(℃)から計算した発熱量を示す。また、表4において、8列目の「内部温度計算」は、反応炉42内の温度から計算した発熱量を基に求めた出力/入力比を示し、9列目の「炉温度計算」は、反応炉42自体の温度から計算した発熱量を基に求めた出力/入力比を示す。
【0128】
表4からも、8列目の「内部温度計算」及び9列目の「炉温度計算」の出力/入力比の少なくとも一方が1以上となることから、反応炉42内を軽水素ガス雰囲気とし、この状態で反応炉42内の巻回型反応体50,51及び反応体26をヒータにより加熱することにより、過剰熱が発生することが確認できた。
【0129】
・・・(略)・・・」
オ 他の実施の形態
(ア)「【0086】
(4)他の実施の形態
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、上述した実施の形態においては、金属ナノ凸部として、球状粒子、楕円状粒子、又は卵状粒子の一部が当該表面に埋め込まれたような形状でなる湾曲表面を有した金属ナノ粒子について述べたが、本発明はこれに限らず、図13Aに示すように、幅がナノサイズでなる帯状の金属ナノ凸部83を適用してもよく、また、図13Aに示すように、板状の反応体80としてもよい。
・・・(略)・・・
【0090】
このように金属ナノ凸部は、幅が1000[nm]以下、好ましくは300[nm]以下、さらに好ましくは10[nm]以下、さらには5[nm]以下に形成されていることが望ましく、その形状は帯状や、直方体状等その他種々の形状であってもよい。
(イ)「【0130】
(4-3)他の実施の形態による反応体
図1に示した発熱装置1や、図5に示した発熱装置41、図12に示した発熱装置65では、細線により網目状に形成された反応体26,80,81の表面に、金属ナノ凸部としてナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が形成されているが、例えば金属ナノ粒子(金属ナノ凸部)よりも小さい微細な粒子状でなる、NiやPd、Pt、Tiの水素吸蔵金属(以下、水素吸蔵金属微粒子体と呼ぶ)を、反応体26,80,81の表面にある金属ナノ粒子表面に付着させ、水素吸蔵金属微粒子体により金属ナノ粒子の表面を凹凸状に形成するようにしてもよい。
・・・(略)・・・
【0133】
また、図5に示した発熱装置41では、例えば、反応体26をNiやPd、Pt等により形成し、巻回型反応体50,51の細線53,61を、NiやPd、Pt等により形成した構成とする。このような図5に示した発熱装置41では、反応炉42内にてプラズマを発生させることにより、電極対となる巻回型反応体50,51の一部が削られて水素吸蔵金属微粒子として反応炉42内に飛散し、Pdでなる微細な水素吸蔵金属微粒子体が、反応体26表面にある金属ナノ粒子表面に付着し得る。これにより発熱装置41では、Ni等でなる金属ナノ粒子の表面に、同じくNiや、異種のPd等でなる複数の水素吸蔵金属微粒子体が付着した構成となり、反応体26表面で更に一段と微細凹凸化が進み、その後の発熱反応処理の際におけるトンネル核融合反応の起こる確率を更に一段と上げることができ、かくして従来よりも安定的に熱を生成し得る。
・・・(略)・・・
【0136】
なお、金属ナノ粒子よりも微細な水素吸蔵金属微粒子体が表面に形成された金属ナノ粒子は、反応体26,80,81や、巻回型反応体25,50,51,66、内側反応体72を反応炉内に設置する前に予めCVD(chemical vapor deposition)法やスパッタ法を用いて、これら反応体26,80,81や、巻回型反応体25,50,51,66、内側反応体72の表面に形成するようにしてもよい。」
2 発明の詳細な説明の記載事項の整理
(1)本願発明が解決しようとする課題等
上記1(1)ないし(3)の記載によれば、本願の発明の詳細な説明には、室温にて核融合反応を起こす常温核融合反応について、その発熱現象が安定して発現し得ないという課題を解決することを目的として、本願発明の発熱装置を採用し、従来よりも安定的に熱を生成するとの効果を得ることが記載されている。
(2)第1の実施の形態の発熱装置
上記1(4)アの記載によれば、本願の発明の詳細な説明には、第1の実施の形態の発熱装置について、次のような事項が記載されている。
また、下記アのとおり、第1の実施の形態の発熱装置は、一方の巻回型反応体及び他方の巻回型反応体を備えたものではないので、本願発明の発熱装置に対応するものではないが、下記(3)のとおり、一部について、第2の実施の形態において参照される。
ア 第1の実施の形態の発熱装置は以下のようなものであることが記載されている。
「反応炉2と、
反応炉2内に電極対として設けられた巻回型反応体25及び反応体26と、
反応ガスとして重水素ガス(純度99.99%)を供給するガス供給手段3と、
真空排気管13を介して反応炉内の気体の排気を行う排気手段10と、
反応炉2の外壁に沿って螺旋状に巻きつけられた管状の熱輸送パイプ32と、
を備えた発熱装置であって、
巻回型反応体25は、例えばPt、Ni、Pd、Ti、或いはこれら元素のうち少なくともいずれか1種を含有した合金を含む水素吸蔵金属からなる支持部たる軸部35の周辺に、同じくPt、Ni、Pd、Ti、或いはこれら元素のうち少なくともいずれか1種を含有した合金を含む水素吸蔵金属からなる細線36が螺旋状に巻きつけたものであり、
反応体26は、表面が細線で網目状であって、例えばNi、Pd、Pt、Ti、或いはこれら元素のうち少なくともいずれか1種を含有した合金を含む水素吸蔵金属により筒状に形成され、外面が反応炉2の筒状部2aの内壁を覆うように設置されたものであって、
重水素ガス雰囲気中で巻回型反応体25及び反応体26によりグロー放電を発生させることにより反応炉内にプラズマを発生させて、巻回型反応体25及び反応体26の表面に微細な金属ナノ粒子を形成し
その後、ガス供給手段3によって反応炉2内に重水素ガスが供給しつつ、電極対にグロー放電を起こさせて反応炉2内にプラズマを発生させることにより、
金属ナノ粒子中に水素原子が吸蔵され、金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、反応炉2内において中性子を放出しながら熱を発生させる核融合反応を起こさせる、発熱装置」
イ 具体的には、以下のような手順で発熱を行うことが記載されている。
(ア)プラズマ処理
a 表面に金属ナノ粒子が形成されていない反応体や巻回型反応体が反応炉2内に設置し、密閉空間とした反応炉2内の気体を真空排気する。(炉内の圧力を10~500[Pa](例えば100[Pa]程度)とする。)
b この状態で、例えば巻回型反応体25を陽極とし、反応体26を陰極として、電極対に600~1000[V](例えば1000[V]程度)の電圧を印加してグロー放電を起こさせ、反応炉2内にプラズマを発生させる。(600秒~100時間(好ましくは10時間以上)継続する。)
これにより、反応体26や巻回型反応体25の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成し、それぞれの表面の酸化被膜を除去して活性化する。
また、反応体26は、金属ナノ粒子が形成される前に、室温の王水や、混酸中で数分間浸けて、表面を予め酸洗処理しておくことにより、プラズマ処理時、その表面に一段と細かな金属ナノ粒子を形成させることができる。
(イ)加熱処理
上記(ア)の後、必要に応じて、巻回型反応体25及び反応体26に対して加熱処理を行う。例えば巻回型反応体25及び反応体26をヒータにより直接加熱する。(例えば100~200[℃]で3時間以上を行う。)
これにより、軽水素や、H2O、炭化水素系ガスを放出させ、水素原子を吸蔵し易くさせる。
(ウ)発熱反応処理
a 上記(ア)または(イ)の後、反応炉2内を真空状態に保持しつつ、ガス供給手段3によって反応炉2内に重水素ガスが供給する。
b 巻回型反応体25及び反応体26に、400~1500[V]、好ましくは600~1000[V]、さらに好ましくは700~800[V]の電圧を印加し、電極対にグロー放電を起こさせて反応炉2内にプラズマを発生させる。
これにより、発熱装置1では、反応炉2内にプラズマを発生させている間、巻回型反応体25や反応体26の表面にある金属ナノ粒子に水素原子が吸蔵され、核融合反応が起こる。この際、新たに形成された金属ナノ粒子にも水素原子が吸蔵され、核融合反応が起こり得る。
ウ 上記第1の実施の形態の発熱装置について、下記(ア)のような手順で検証試験を行い、下記(イ)のような結果を得たことが記載されている。
(ア)検証試験の手順
a ナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が形成されていないNi(純度99.9%)でなる反応体を用意し、これを反応炉2内に設置する。次いで、プラズマ処理を行うため、真空排気手段10によって反応炉2内を真空排気し、反応炉2内を10-6気圧程度とする。
b この状態で巻回型反応体25及び反応体26に1[kV]の電圧を印加してグロー放電を発生させ、反応炉2内に当該グロー放電を30時間発生させ続ける。反応体26を反応炉2から取り出して、反応体26の表面状態をSEM写真等により確認する。
c 反応体26を反応炉2から取り出すことなく、電極対に1[kV]を印加してグロー放電を発生させ続け、反応炉2内を10-6気圧程度とし、ガス供給手段3により反応炉2内に重水素ガスをガス圧10-2気圧で供給する。
d 一旦、グロー放電を中止し、反応炉2内に重水素ガスを補給した後、十分に電極対を冷却し、再び電極対に1[kV]の電圧を印加してグロー放電を発生させる。
(イ)検証試験の結果
a 上記(ア)bの手順後、反応体26の表面状態をSEM写真等により確認したところ、粒径が1000[nm]以下のナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が密集するように形成され、表面が凹凸状になっていた。
b 上記(ア)cの手順後、1~2分後に中性子測定手段19によって中性子が測定された。
c 上記(ア)dの手順において、グロー放電を起こさせるために電極対に電圧を供給した後から急激に中性子が発生した。安定的な中性子の発生は、電圧の供給により、106個が得られ、発熱反応を200秒間継続させたときの反応体26の単位面積あたりの中性子発生量を計算したところ105個であった。
d 中性子が発生した後、反応炉2の温度が上昇していることが確認でき、このとき電極対間に流れた電流は30[mA]、電力としては30[W]であり、熱発生量は1[kW]であるため、入力に対する発熱量は33倍に達した。
なお、熱発生量がどのように測定するのかについては、具体的な記載がない。
また、上記の検証試験の手順との関係は定かではないが、以下のような結果も記載されている。
e 中性子の発生数は、電極対の放電電圧によって制御でき、電圧の指数関数で発生中性子数が増加することが確認できた。
(3)第2の実施の形態の発熱装置
上記1(4)イの記載を参酌すると、本願の発明の詳細な説明には、第2の実施の形態の発熱装置として、次のような事項が記載されている。その際、上記第1の実施の形態と同様の部分については、上記1(4)アの記載も参酌した。
なお、第2の実施の形態の発熱装置は、一方の巻回型反応体及び他方の巻回型反応体を備えているので、本願発明の発熱装置に対応するものである。
ア 第2の実施の形態の発熱装置は以下のようなものであることが記載されている。
「反応炉2と、
反応炉2内に設けられた反応体26と、
反応炉2内に、互いに対向するように炉内に配置され、電極対としてグロー放電を起こしプラズマを発生させる、巻回型反応体50及び巻回型反応体51と、
反応炉2の外壁に沿って螺旋状に巻きつけられた管状の熱輸送パイプ32と、
を備えた発熱装置であって、
巻回型反応体50は、水素吸蔵金属からなる細線53が、導通部材でなる支持部52に螺旋状に巻き付けられたものであり、
巻回型反応体51は、水素吸蔵金属で形成された軸部60に、水素吸蔵金属で形成された細線61が螺旋状に巻き付けられたものであって、
巻回型反応体50及び巻回型反応体51は、プラズマ処理により複数の金属ナノ粒子がそれぞれの表面に形成され、
重水素ガス雰囲気中で巻回型反応体50及び巻回型反応体51を電極としてグロー放電を発生させることにより、反応炉内にプラズマを発生させて、巻回型反応体50、巻回型反応体51及び反応体26の表面に微細な金属ナノ粒子を形成し、
その後、真空状態が保持された反応炉42内でヒータにより加熱された後、重水素ガスが供給することにより、
金属ナノ粒子中に水素原子が吸蔵され、金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、反応炉2内において中性子を放出しながら熱を発生させる核融合反応を起こさせる、発熱装置」
イ 具体的には、以下のような手順で発熱を行うことが記載されている。
(ア)プラズマ処理
a 密閉空間とした反応炉42内の気体を真空排気し、炉内の圧力を10~500[Pa]とする。
b 電極対に600~1000[V]の電圧を印加して600秒~100時間、グロー放電を起こさせて、反応体26の温度を500~600[℃]まで上昇させる
これよりナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が表面に形成させる。
また、詳細については、上記(2)イ(ア)の第1の実施の形態の手順と同様である。
(イ)加熱処理
上記(2)イ(イ)の第2の実施の形態の加熱処理については、特段の記載がないが、段落0071の検証試験においては、当該処理が行われているので、第1の実施の形態と同様に、当該処理を必要に応じて実施するものと理解できる。
(ウ)発熱反応処理
a 上記(ア)または(イ)の後、ヒータにより巻回型反応体50、巻回型反応体51及び反応体26が加熱された状態で、真空状態が保持された反応炉42内に重水素ガスが供給する。
b ヒータにより巻回型反応体50,51や反応体26を加熱する際の加熱温度は、200[℃]以上、さらに好ましくは250[℃]以上であることが望ましい。
これにより、巻回型反応体50、巻回型反応体51及び反応体26の表面にある金属ナノ粒子内に水素原子が吸蔵され、核融合反応を起こる。
ウ 上記第2の実施の形態の下記(ア)のような発熱装置について、下記(イ)のような手順で検証試験を行い、下記(ウ)のような結果を得たことが記載されている。
(ア)発熱装置
検証試験では、以下のように部材を備える発熱装置が用いられている。
a 体積15[l]、重量50[kg]、ステンレス(SUS306)で形成した反応炉42
b 縦横30[mm]、厚さ2[mm]のAl2O3(アルミナセラミックス)で形成された支持部52に、直径0.1[mm]、長さ1000[mm]のPd(純度99.9%)でなる細線53を15回巻き付けた巻回型反応体50
c 直径3[mm]、長さ50[mm]のPd(純度99.9%)でなる軸部60に、直径1[mm]、長さ300[mm]のPd(純度99.9%)でなる細線61を隙間なく螺旋状に巻き付けた巻回型反応体51
d 直径0.1[mm]のNi(純度99.9%)でなる細線で表面が網目状に形成されている筒状の反応体26
(イ)検証試験の手順
a 巻回型反応体50、巻回型反応体51及び反応体26をアルコールとアセトンで超音波洗浄を行い、油脂の汚染が起きないように洗浄状態を保って反応炉42内に設置する。
b プラズマ処理として、反応炉42内の気体を真空排気してゆき、反応炉42内を数Paの真空雰囲気とした後、巻回型反応体50を陽極とし、600[V]の直流電圧を加え、20[mA]程度で600秒程度放電させ、次に、電極電圧を変えて巻回型反応体50を陰極とし、600[V]の直流電圧を加え、20[mA]程度で1200秒程度放電させる。プラズマ処理を行った後の反応体26の表面をSEMで撮像する。
c 反応炉42内の真空状態を保持し、ヒータによって巻回型反応体50、巻回型反応体51及び反応体26を100~200[℃]で3時間程度、加熱活性化し、巻回型反応体50、巻回型反応体51及び反応体26から、軽水素、H2O、さらに炭化水素系のガスを放出させて不純物を取り除く。
d 反応炉42内の真空状態を保持したまま段階的に巻回型反応体50を加熱してゆき、室温差140[℃]のとき、ガス供給管8から反応炉42内に重水素ガスを100[Pa]で導入する。
e dの後、巻回型反応体50の細線53の表面を活性化させるため、電極対に印加する電圧値を45[V]まで上昇させて4000秒間プラズマによる活性化処理を行い、その後、電極対に印加する電圧値を32[V]まで下げてプラズマを停止させる。
(ウ)検証試験の結果
a 上記(イ)bの手順後、反応体26の表面には、幅が1000[nm]以下のナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子がその表面に形成され、表面が凹凸状になっていることが確認できた。また、これら金属ナノ粒子は、半球状、半楕円状等、湾曲表面になっていることが確認できた。
b 巻回型反応体50における細線53の表面には、反応体26ほどではないが、表面に金属ナノ粒子同士が接触するようにして形成され、複数の金属ナノ粒子が密集する領域も形成されることが確認できた。
c 上記(イ)dの手順において、電極対によってプラズマを発生させなくても、直ぐに室温差が220[℃]まで上昇した。
d 上記(イ)dの手順において、中性子測定手段によって反応炉42の周囲の中性子を測定したところ、重水素ガスを反応炉42内に導入し巻回型反応体50が発熱し始めてから、中性子測定手段において中性子が測定された。
e 上記(イ)eの手順において、電極対に印加する電圧値を45[V]まで上昇させて4000秒間プラズマによる活性化処理を行ったところ、さらに30[℃]温度上昇して250℃となり、その後、電極対に印加する電圧値を32[V]まで下げてプラズマを停止させても、重水素ガスを反応炉42から排出するまで、温度上昇した状態がそのまま安定して継続した。
f 上記(イ)eの手順において、250[℃]で安定して発熱している状態になった後、再び巻回型反応体50の細線53の表面を活性化させるため、電極対に電圧を印加しグロー放電を起こさせ、プラズマによる活性化処理を行ったが、さらなる温度上昇は確認できなかった。
(エ)第2の実施の形態の発熱装置の作用及び効果
a ヒータの加熱によりエネルギーが与えられることにより、巻回型反応体50、巻回型反応体51及び反応体26の金属ナノ粒子内に水素原子が吸蔵され、当該金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、トンネル核融合反応の起こる確率を上げることができ、かくして加熱温度以上の熱を従来よりも安定的に生成し得る。
b 重水素ガス雰囲気となる反応炉内で、電極対によりプラズマを発生させると、発熱が促進して発熱温度がさらに上昇し、当該プラズマを停止させても、反応炉42内を重水素ガス雰囲気に維持し続ける限り、そのまま温度上昇した状態を維持し続けることができる。
c 反応体26及び巻回型反応体50に加え、さらに巻回型反応体51を設け、この巻回型反応体51にも複数の金属ナノ粒子が形成されることから、当該金属ナノ粒子が形成されている領域が増え、その分、水素原子が金属ナノ粒子内に吸蔵され易くなり、核融合反応が起こる確率を高くできる。
(4)第3の実施の形態の発熱装置
第3の実施の形態の発熱装置は、上記1(4)ウに摘記した記載によれば、一方の巻回型反応体及び他方の巻回型反応体を備えたものではないので、本願発明の発熱装置に対応するものではなく、また、本願発明と特段、関連する記載もないので、記載事項の整理を省略する。
(5)重水素ガス及び軽水素ガスを用いた検証試験
上記1(4)エによれば、発明の詳細な説明には、重水素ガス及び軽水素ガスを用いたときの出力総エネルギー等について調べる検証試験について、下記アのような第2の実施の形態の発熱装置41を用いて、下記イのような検証を行い、下記ウの検証結果を得たことが記載されている。
ア 発熱装置
反応体26を直径0.05[mm]のNi(純度99.9%)でなる細線により、100メッシュの網目が形成され、高さ30[cm]、幅30[cm]のものとした、第2の実施の形態の発熱装置41が用いられている。
イ 検証試験の手順
(ア)プラズマ処理として、巻回型反応体50を陽極とし、600~800[V]の直流電圧を加え、20~30[mA]程度で10[ks]秒程度放電させ、巻回型反応体50、巻回型反応体51及び反応体26の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成する。このようなプラズマ処理後、重水素ガスを反応炉42内に供給し、反応炉42内のガス圧力を調べる。
(イ)(ア)の後、重水素ガスを反応炉42内に供給し、反応炉42内において核融合反応を起こさせる発熱反応処理を行う。
(ウ)反応炉42内を真空状態に保持しつつ、ガス供給手段3によって反応炉42内に供給されるガスの種類や、ガス供給時のガス圧力、電極対を加熱するヒータの入力加熱ワット数を変え、反応炉42の温度等の各種数値を調べる。
(エ)発熱反応処理後の反応炉42内におけるガス成分を調べる。発熱反応処理としては、真空排気状態で重水素ガスを反応炉42内に供給しつつ、ヒータにより電極(巻回型反応体50)を約84[ks]間加熱し、初めの7[ks]はヒータへの入力を46[W]とし、それ以後は81[W]とし、その間、反応炉42内のガス排気を数回行う。
(オ)さらに正確にガス成分の同定を行うために、発熱装置41において重水素ガスを用いた熱発生試験を30日間行う。
ウ 検証結果
(ア)上記(イ)の際、重水素ガスを反応炉42内に供給し、反応炉42内のガス圧力を調べたところ、当該ガス圧力が170[Pa]から40[Pa]に低下することが確認できた。
(イ)反応炉42内に供給するガスとして重水素ガスを用いたときの結果について、段落0105の表1に示し、表1の11列目の入力総エネルギー(kJ)である「Input Energy kJ」と、表1の12列目の電極(巻回型反応体50)の温度から計算した出力総エネルギー(kJ)である「Output Electrode kJ」または表1の13列目の反応炉42の外壁温度から計算した出力総エネルギー(kJ)である「Output Reactor kJ」を比較し、過剰熱発生が観察でき、発熱装置41により発熱可能であることが確認できた。
なお、上記の「Input Energy kJ」、「Output Electrode kJ」、「Output Reactor kJ」は、表1の3列目のヒータの入力加熱ワット数(W)である「Input Watt」、同4列目の電極(巻回型反応体50)の温度から計算した熱出力(W)である「Out put/W Electrode」、同5列目の反応炉42の温度から計算した熱出力(W)である「Out put/W Reactor」に、それぞれ同6列目の過剰熱継続時間(ks)「Time ks」を乗算した値と一致するものの、どのように計算されたものであるかについては、特段の記載がない。
(ウ)反応炉42内に供給するガスとして重水素ガスまたは軽水素ガスを用いたときの結果について、段落0120の表3に示し、表3の11列目の電極(巻回型反応体50)の温度を基に計算した出力/入力比である「Hout/Hin Estimated by Electrode temp」と、同12列目の反応炉42の外壁温度を基に計算した出力/入力比である「Hout/Hin Estimated by reactor temp」から、同表3のNo.33では、プラズマ放電を行わず、かつヒータによる電極対の加熱も行っていないため、過剰熱が発生しないことが確認でき、それ以外の試料では、11列目及び12列目の出力/入力比から過剰熱が発生していることが確認できた。
なお、上記「Hout/Hin Estimated by Electrode temp」及び上記「Hout/Hin Estimated by reactor temp」については、どのように計算されたものであるかについては、特段の記載がない。また、同表3のNo.33では、上記「Hout/Hin Estimated by Electrode temp」及び上記「Hout/Hin Estimated by reactor temp」の欄が空欄となっている。
(エ)反応炉42内に供給するガスとして軽水素ガスを用いたときの結果について、段落0126の表4に示し、表4の8列目の「内部温度計算」及び9列目の「炉温度計算」の出力/入力比の少なくとも一方が1以上となることから、過剰熱が発生することが確認できた。」
なお、上記「内部温度計算」及び9列目の「炉温度計算」については、どのように計算されたものであるかについては、特段の記載がない。
(オ)上記イ(エ)の手順において、原料ガスである重水素ガスは、質量数4のD2+が202[Pa]、質量数3のHD+が42[Pa]、質量数2のH2+が5[Pa]であり、不純物としては、OD2+、OHD+、H2O+、OD+、OH+と推定される質量数のものが含まれており、試験終了後に、質量数2であるH2+と、質量数19であるOHD+とが多くなっていた。
(カ)上記イ(オ)の手順において、質量数2以外の成分の総計は、初めの変化以後、殆ど一定であり、質量数3(HD+)はガス圧力や出力総エネルギーが増えると増加するが、質量数4(D2+)はガス圧力や出力総エネルギーが増えると減少したことから、質量数4が質量数2や質量数3の生成に寄与していることを示している。
なお、上記(オ)(カ)について、どのような方法により質量分析を行ったのか、具体的な記載はない。
(6)他の実施の形態
他の実施の形態については、金属ナノ粒子の形成方法等について、上記第1ないし第3の実施の形態とは異なる形態についての記載がなされている。
3 発明の詳細な説明の記載についての検討
(1)上記2で整理した事項から、本願発明は、室温にて核融合反応を起こす常温核融合反応について、その発熱現象が安定して発現し得ないという課題を解決することを目的としたものであって、本願発明は、上記2(3)イ(ア)のプラズマ処理によって、一方の巻回型反応体と、他方の巻回型反応体及び筒状の反応体の表面に1000[nm]以下のナノサイズからなる複数の金属ナノ粒子形成し、その後、上記2(3)イ(イ)の加熱処理により、一方の巻回型反応体と、他方の巻回型反応体、筒状の反応体から、軽水素や、H2O、炭化水素系ガスを放出させ、最後に、上記2(3)イ(ウ)の発熱反応処理のように、一方の巻回型反応体と、他方の巻回型反応体、筒状の反応体が加熱された状態で、真空状態が保持された反応炉内に重水素ガスまたは軽水素を供給することによって、水素原子を反応体の金属ナノ粒子内に吸蔵させると、当該金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、核融合反応の起こる確率を上げるという現象が生じ、過剰熱を生成することができるものであるとされている。
(2)そして、本願の発明の詳細な説明では、本願発明が実施できることを検証するために、2(3)ウ及び2(5)の検証試験を行っており、その結果から、以下のようなこと等が確認できたとしている。
ア 一方の巻回型反応体と、他方の巻回型反応体及び筒状の反応体の表面に、幅が1000[nm]以下のナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子が形成されたこと。
イ 重水素ガスを反応炉内に供給したところ、反応炉内のガス圧力が低下したこと。
ウ 重水素ガスまたは軽水素ガスを反応炉から排出するまで、温度上昇した状態がそのまま安定して継続したこと。
エ 一方の巻回型反応体の温度から計算した出力総エネルギーまたは反応炉の外壁温度から計算した出力総エネルギー等に基づいて、過剰熱発生が観察できたこと、
オ 重水素ガスまたは軽水素ガスを反応炉内に導入すると、中性子測定手段において中性子が測定されたこと。
カ 質量分析により、質量数4(D2+)が質量数2(H2+)及び質量数3(HD+)の生成に寄与していると言えること。
(3)上記(2)で確認できたとしている事項について検討すると、上記(2)アないしウのような現象が生じたことについては、本願の発明の詳細な説明から一応確認できるが、エについては、装置全体がどのような環境下にあるのか、核融合反応の前後の熱の総量をどのように計算しているのかについて、発明の詳細な説明には具体的な記載がないから、過剰熱が発生していると理解することができない。
また、「水素原子を反応体の金属ナノ粒子内に吸蔵させると、当該金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、トンネル核融合反応の起こる確率を上げる」という現象については、技術常識に基づいた現象とは言えず、上記(2)オ及びカについても、どのような測定・分析装置や方法を用いたのか、発明の詳細な説明には具体的な記載がないから、その結果を評価することができない。したがって、核融合反応が起こっていることやそれにより過剰熱が発生し得ることを確認することもできない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本願発明の発熱装置が核融合反応によって過剰熱が生じるものと当業者が理解できるようなものではない。
(4)ここで、一般に、核融合反応や過剰熱の発生を証明するには、中性子、陽子、陽電子、陰電子、ガンマ線、ヘリウム、カルシウム、ニッケル,ベリリウム等の核反応生成物や電気エネルギー等の投入したエネルギーと解放された化学エネルギー等のエネルギーの和よりも大きなエネルギーを発生することを検出することが必要であり、その際には、当該検出結果がバックグラウンド、放射能汚染、環境から侵入、検出器の電圧変動・温度変動などによる影響を原因とするノイズの誤認でないことの確認が必要であり、その確認のために対照実験等も必要である。
これに対し、請求人は、平成28年12月28日に上申書と共に実験成績証明書を提出しているので、これについて検討する。
ア 実験の概要
実験成績証明書によれば、当該実験は、東北大学電子光理学研究センター凝縮系核反応共同研究部門の岩村康弘特任教授により、当該研究室で行われたものであって、概ね本願の発明の詳細な説明に記載された検証試験と同様の下記(ア)ないし(オ)の手順により、重水素及び軽水素を用いた場合について実施されている。
手順
(ア)活性化処理なしの実験
比較例として、本願の明細書の段落0101ないし段落0103に記載されたプラズマ処理を行わずに、ヒータによる加熱と、反応炉内への重水素ガスの供給とを行った。
(イ)プラズマ処理
本願の明細書の段落0101ないし段落0103に記載されたプラズマ処理を行い、電極に対して所定の処理を行った。
(ウ)加熱処理
プラズマ処理の後、加熱処理を行った。また、重水素ガスを反応炉内に導入し、反応炉内で重水素ガスの圧力が減少したか否かを調べて、Pdによる重水素ガスの吸蔵がされたか否かについて確認を行った。
(エ)発熱反応処理
発熱反応処理は3回行った。発熱反応処理の1回目実験として、ヒータによる加熱と、重水素ガスの導入とを行い、温度の測定を行った。2回目実験は、1回目実験を終了した後、反応炉内を冷却させてから、再び、ヒータによる加熱と、反応炉内への重水素ガスの供給と、を実行して、加熱温度以上の過剰熱が発生するか否かについて調べた。3回目実験においても、2回目実験を終了した後、反応炉内を冷却させてから、再び、ヒータによる加熱と、反応炉内への重水素ガスの供給と、を実行して、加熱温度以上の過剰熱が発生するか否かについて調べた。
(オ)巻回反応体の表面のSEMによる観察
プラズマ処理を行った後、続けて発熱試験(活性化処理後の温度特性を計測)を行い、この発熱試験後に、反応炉42内から巻回反応体を取り出し、その表面をSEMにより観察し、金属ナノ粒子の有無や、金属ナノ粒子の大きさを調べた。
イ 実験結果
そして、上記実験により、下記(ア)ないし(ウ)のような結果が確認されている。
(ア)前記ア(ウ)において、反応炉内で重水素ガスの圧力が170[Pa]から66[Pa]に減少することが確認できた。
(イ)前記ア(ア)の活性化処理なしの実験の際の反応炉内の温度と、前記ア(エ)における1ないし3回目の反応炉内の温度との比較により、過剰熱の発生が確認できた。
(ウ)前記ア(オ)により、巻回型反応体50の表面には、複数の金属ナノ粒子が設けられ、金属ナノ粒子が1000[nm]以下のナノサイズであることが確認できた。
ウ 実験成績証明書の実験についての検討
上記実験結果について、本願の発明の詳細な説明に記載された検証試験の再現性や、上記3(3)で指摘した事項が解消しているか否かについて、検討する。
(ア)上記実験結果(ア)及び(ウ)については、本願の発明の詳細な説明に記載された上記3(2)アないしウの検証試験の結果と同様の結果を示している。
(イ)上記実験結果(イ)については、上記3(2)エの検証試験の結果が、一方の巻回型反応体の温度から計算した出力総エネルギーまたは反応炉の外壁温度から計算した出力総エネルギー等に基づいて、過剰熱発生を観察しているのに対し、上記実験結果(イ)では、前記ア(ア)の活性化処理なしの実験の際の反応炉内の温度との比較を行っている点で異なっており、検証試験の結果が再現できているのか否か判断できない。また、上記アの実験において、上記実験成績証明書の添付資料1の第5ページ「東北大での以上発熱実験:設置状況(5/5)」から発熱装置の反応炉が断熱材で覆われることは理解できるものの、その他の部分がどのような環境下にあるのか不明であるほか、核融合反応の前後の熱の総量について検討がなされていないため、過剰熱の発生を確認できない。
また、上記アの実験においては、中性子の測定や質量分析はなされておらず、上記3(2)オ及びカの検証結果について、その結果の再現性を確認することはできない。
エ 小活
したがって、上記実験成績証明書にある実験及び実験結果を参酌しても、発明の詳細な説明の記載により、本願発明の発熱装置が核融合反応によって過剰熱を生じさせるものと当業者が理解することはできないから、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
4 審判請求の理由における請求人の主張の検討
出願人は、平成30年1月17日提出の手続補正書(方式)により補正された審判請求書の請求の理由において、「本願発明の目的が、明細書の段落[0004]に記載されたように、「実際、このような常温核融合反応は、そのメカニズムが解明されておらず、再現性にも乏しいことから、その発熱現象が安定して発現し得ない。そのため、このような常温核融合反応を発熱装置の熱源として利用しようとした場合には、発熱現象の発生確率が極めて低く、安定的に熱を生成し得ないという問題があった。そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、従来よりも安定的に熱を生成し得る反応体、発熱装置及び発熱方法を提供することを目的とする。」というものであることを考えると、本願明細書に記載された、「発熱装置」の構成、「発熱装置」の作製方法、「発熱装置」の使用方法と過剰熱発生の検証実験の開示により、常温核融合のメカニズムまで完全に確証しなくても、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえると考えます。」と主張しているが、上記3エのとおり、発明の詳細な説明からは、本願発明において核融合反応による過剰熱が発生すると当業者が理解できない以上、核融合反応による過剰熱が発生する発熱装置を作成することは、当業者であってもできない。
したがって、請求人の上記主張を採用することができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-018023