特許拒絶査定不服審判
2017-015692
基準付鏡
- 審判番号
- 2017-015692
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-136051外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月24日
- 審決日
- 2018年09月03日
- 公報発行日
- 2018年10月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社ホワイトベース
- 【請求人代理人】森岡 正往
- 分類
- P18 .121-WY (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-136051「基準付鏡」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月 9日出願公開、特開2014- 145、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月15日の出願であって、平成28年5月31日付けで拒絶理由が通知され、同年7月26日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月9日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成29年2月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月14日付けで同年2月15日に提出した手続補正書でした手続補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされ、これに対して、同年10月24日に拒絶査定不服審判の請求がされ、それと同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成29年7月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし6に係る発明は、以下の引用文献1ないし6に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1:米国特許第5052925号明細書
2:登録実用新案第3036310号公報
3:登録実用新案第3149143号公報
4:実願平1-32164号(実開平2-123218号)のマイクロフィルム
5:国際公開第2012/024032号
6:米国特許出願公開第2006/0105288号明細書
第3 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、平成29年10月24日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1は以下のとおりである。
「 【請求項1】
口腔内の形状に沿って横方向に拡大している口腔部と、
該口腔部から縦方向に連なり該口腔部よりも細い把持部と備え、
該口腔部は、歯列に沿って該把持部側へ突出した湾曲状の基準線を複数有する鏡面からなり、
歯科矯正に用いるデンタルミラーであることを特徴とする基準付鏡。」
なお、本願発明2ないし5は、本願発明1を減縮した発明である。
第4 引用文献の記載事項、引用発明
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献3(登録実用新案第3149143号公報)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。)。
(引3-ア)「【0001】
本考案は歯科医師が歯列を視認又は撮影するために用いるデンタルミラーに関する。」
(引3-イ)「【0006】
本考案の課題は、奥歯の歯列の外側面を視認又は撮影するとともに、口腔内における上あご側の歯列の広い部分を視認又は撮影することに使用できるデンタルミラーを提供することにある。」
(引3-ウ)「【0008】
デンタルミラー1は、板状長尺部10の一端側に、長尺部10より広幅の板状膨大部20を設け、長尺部10と膨大部20の表面(表裏両面でも可)を鏡面11、21としている。本実施例において、膨大部20の表面の鏡面21は一定曲率の凸面鏡21Aをなす。」
(引3-エ)「【0012】
膨大部20は、図3に示す如く、開口した口腔内に挿入され、口腔内の上あご側の歯列(奥歯101及び前歯102)及び歯肉を広い範囲に渡って鏡面21(凸面鏡21A)に映し出し、視認したり、撮影するのに用いられる。このとき、診察台の照明の光、又はカメラのフラッシュの光が鏡面11及び鏡面21(凸面鏡21A)で反射されて口腔内に導入され、歯列及び歯肉を明瞭に視認、撮影できる。
【0013】
膨大部20は、長尺部10に直交する長さが、上の歯の左右の奥歯101、101の外幅W1より狭く、下の歯の左右の奥歯の内幅W2より広い幅Xであり、かつ、長尺部10の軸方向に沿う長さYが奥歯101~前歯102の奥行き長さ(L)より大きな長さをなす。本実施例の膨大部20は、直径D(D=X=Y)の円板をなす。膨大部20は、長尺部10の軸方向に直交する横幅Xが40~60mmであって、凸面鏡21Aの曲率半径Rは55~110mmであることが、歯列の裏全体を視認できる観点から好ましい。膨大部20の凸面鏡21Aの横幅Xと曲率半径Rとの比(X:R)が1:1.4~1:2.2であるものが歯列の裏全体を視認できる観点から好ましい。
【0014】
膨大部20の長尺部10の軸方向に沿う長さYは40~60mmであるものが好ましい。
なお、デンタルミラー1は、長尺部10の自由端の外縁に丸味を設け、膨大部20の外縁を円形とし、長尺部10と膨大部20の接続部に丸味を設けることにより、口腔内への挿入のスムースを図っている。」
(引3-オ)「【0019】
(b)膨大部20の鏡面21が凸面鏡21Aをなすことにより、左右の奥歯101、101の外幅W1より狭くて口を無理に開ける必要がなく、口腔内への挿入に苦痛を与えない膨大部20を用いながら、上あご側の全歯列及び歯肉の全範囲を一気に映し出して視認又は撮影できる。また、診察台の照明の光、又はカメラのフラッシュの光を凸面鏡21Aにより口腔内の奥深くに渡る広い範囲に投射して明るくできる。」
(引3-カ)「【0022】
図6に示すデンタルミラー1Cが図1に示したデンタルミラー1と異なる点は、膨大部20の円形状外縁の先端側(長尺部10の軸方向における長尺部10と反対側)の両側部を長尺部10の軸方向に垂直な方向において広い幅にし、かつ膨大部20の円形状外縁の先端部を長尺部10の軸方向に交差する凹み状に形成し(長尺部10の方向に凹んで形成し)、広凹み状外縁部20Cとしたものである。これによれば、膨大部20の先端部を口腔内の喉奥面に当てることなく奥深くまで挿入でき、奥歯101等をより広い範囲に渡ってくまなく視認又は撮影することができる。」
(引3-キ)【図3】
「
」
(引3-ク)【図6】
「
」
2 引用文献3に記載された発明の認定
(引3-ア)ないし(引3-ク)の記載から、引用文献3には、
「 板状長尺部10の一端側に、長尺部10より広幅の板状膨大部20を設け、長尺部10と膨大部20の表面を鏡面11、21としているデンタルミラー1Cであって、
膨大部20は、長尺部10に直交する長さが、上の歯の左右の奥歯101、101の外幅W1より狭く、下の歯の左右の奥歯の内幅W2より広い幅Xであり、円形状外縁の先端側の両側部を長尺部10の軸方向に垂直な方向において広い幅にし、かつ膨大部20の円形状外縁の先端部を長尺部10の軸方向に交差する凹み状に形成し、広凹み状外縁部20Cとしたものであって、
膨大部20の先端部を口腔内の喉奥面に当てることなく奥深くまで挿入でき、奥歯101等をより広い範囲に渡ってくまなく視認又は撮影することができる、デンタルミラー1C。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
3 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(米国特許第5052925号明細書)には、第5欄23行~26行、第5欄58行~第6欄14行、及び第6欄38行~第7欄17行、並びに、FIG.3及びFIG.5の記載からみて、
「鏡面に、平行な基準線を設けた、デンタルミラー。」
という技術的事項が記載されている。
4 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献6(米国特許出願公開第2006/0105288号明細書)には、[0006]~[0011]、[0021]、及び[0023]、並びに、FIG.1の記載からみて、
「鏡面に、複数の歯形と各歯形を二等分する直線からなる指標を設けた、デンタルミラー。」
という技術的事項が記載されている。
5 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献4(実願平1-32164号(実開平2-123218号)のマイクロフィルム)には、明細書第3頁6行~第4頁1行、及び第5頁4~13行、並びに、第7図の記載からみて、
「プラスチック等の透明材により成型された計測器本体に、平均的な歯列周を示す複数の標準線が付された、歯列模型にあてがって使用する、歯列計測器。」
という技術的事項が記載されている。
6 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献5(国際公開第2012/024032号)には、[0008]~[0011]、及び、FIG.4~FIG.9の記載からみて、
「プラスチック等の透明又は半透明シートの材料に印刷された、歯列の弓形を反映した複数の弓形を有し、患者の歯列弓の画像に重ねて使用する、弓形定寸型板。」
という技術的事項が記載されている。
7 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2(登録実用新案第3036310号公報)には、【0012】~【0016】、及び、図1の記載からみて、
「口腔内部の上顎と下顎との間の空間における水平断面形状に略対応した外周形状を有してなる口腔挿入部と、該口腔挿入部の挿入後端部に連続一体化して設けられた長方形状の挿入支持部とを有する、歯科写真撮影用反射鏡。」
という技術的事項が記載されている。
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「膨大部20」は、「先端部を口腔内の喉奥面に当てることなく奥深くまで挿入でき」るものであるから、「口腔内」に「挿入」する部分であることは明らかである。
よって、引用発明の「膨大部20」は、本願発明1の「口腔部」に相当する。
イ 引用発明の「膨大部20」は、「長尺部10に直交する長さが、上の歯の左右の奥歯101、101の外幅W1より狭く、下の歯の左右の奥歯の内幅W2より広い幅Xであり、円形状外縁の先端側の両側部を長尺部10の軸方向に垂直な方向において広い幅にし、かつ膨大部20の円形状外縁の先端部を長尺部10の軸方向に交差する凹み状に形成し、広凹み状外縁部20Cとしたものであ」るから、その形状は奥歯の歯列に合わせて幅を広くしたものといえる。
そして、奥歯の歯列は、口腔内の形状とほぼ一致することは自明であるから、引用発明の「長尺部10に直交する長さが、上の歯の左右の奥歯101、101の外幅W1より狭く、下の歯の左右の奥歯の内幅W2より広い幅Xであり、円形状外縁の先端側の両側部を長尺部10の軸方向に垂直な方向において広い幅にし、かつ膨大部20の円形状外縁の先端部を長尺部10の軸方向に交差する凹み状に形成し、広凹み状外縁部20Cとしたものであ」る「膨大部20」は、本願発明1の「口腔内の形状に沿って横方向に拡大している口腔部」に相当する。
ウ 引用発明を使用して「膨大部20」を「口腔内」に「挿入」する際、使用者が「長尺部10」を持つことは明らかである。
よって、引用発明の「長尺部10」は、本願発明1の「把持部」に相当する。
エ 上記イ及びウの対比から、引用発明の「一端側に」「より広幅の」「膨大部20を設け」られた「長尺部10」は、本願発明1の「該口腔部から縦方向に連なり該口腔部よりも細い把持部」に相当する。
オ 引用発明の「膨大部20の表面を鏡面」「21としている」ことと、本願発明1の「該口腔部は、歯列に沿って該把持部側へ突出した湾曲状の基準線を複数有する鏡面からな」ることとは、「該口腔部は、鏡面からな」ることで共通する。
カ 引用発明の「デンタルミラー1C」が「鏡」であることは明らかであるから、引用発明の「デンタルミラー1C」と、本願発明1の「歯科矯正に用いるデンタルミラーであることを特徴とする基準付鏡」とは、「デンタルミラーである鏡」の点で共通する。
(2)よって、本願発明1と引用発明とは、
「 口腔内の形状に沿って横方向に拡大している口腔部と、
該口腔部から縦方向に連なり該口腔部よりも細い把持部と備え、
該口腔部は、鏡面からなり、
デンタルミラーである鏡。」
の発明である点で一致し、次の2点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は、鏡面が「歯列に沿って該把持部側へ突出した湾曲状の基準線を複数有する」「基準付」鏡であるのに対し、引用発明は、そのような基準線を有さない点。
(相違点2)
デンタルミラーが、本願発明1においては、「歯科矯正に用いる」ものであることが特定されているのに対し、引用発明においては、歯科矯正に用いるかは不明である点。
(3)相違点についての判断
ア 上記相違点1について検討する。
引用文献1及び6には、デンタルミラーの鏡面に基準となる線等を設けることが記載されているが、歯列に沿って把持部側へ突出した湾曲状の基準線を開示又は示唆するものではない。
一方、引用文献4には、「平均的な歯列周を示す複数の標準線が付された歯列計測器」が、引用文献5には、「歯列の弓形を反映した複数の弓形を有する弓形定寸型板」が記載されているが、いずれも歯列模型又は画像に対して用いる透明な材料で構成されるものである。
そして、引用文献3には、「歯列の裏全体を視認できる観点から好ましい」(段落【0013】)、「上あご側の全歯列及び歯肉の全範囲を一気に映し出して視認又は撮影できる」(段落【0019】)との記載があるが、歯列の形状を観察又は判定することは記載されておらず、それらを示唆する記載もない。
また、引用文献1、2、4ないし6全体の記載を見ても、鏡面に写った歯列の像、又は鏡面を介して撮影した歯列の像により、 歯列の形状を観察又は判定することは記載されておらず、それらを示唆する記載もない。
そうすると、引用発明に歯列に沿って長尺部10側へ突出した湾曲状の基準線を複数設けることの、動機付けがあるとはいえない。
したがって、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は、当業者が容易になし得たものではない。
イ よって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献1ないし6に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5も、本願発明1の鏡面が「歯列に沿って該把持部側へ突出した湾曲状の基準線を複数有する」「基準付」鏡との構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献1ないし6に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし5は、鏡面が「歯列に沿って該把持部側へ突出した湾曲状の基準線を複数有する」「基準付」鏡という事項を有するものとなっており、上記のとおり、当業者といえども、拒絶査定において引用された上記引用文献1ないし6に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-015692