特許拒絶査定不服審判
2017-015622
スルホン酸を含むインビトロの診断テスト用組成物および方法
- 審判番号
- 2017-015622
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-503410外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月20日
- 審決日
- 2018年10月09日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (C12Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-503410「スルホン酸を含むインビトロの診断テスト用組成物および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日国際公開、WO2013/142758、平成27年 7月 9日国内公表、特表2015-519038、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月22日(パリ条約による優先権主張 平成24年3月23日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年11月21日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年2月28日付けで手続補正がされ、平成29年6月13日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年10月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年8月20日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成30年9月3日付けで手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願請求項1-12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」という。)は、平成30年9月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
酵素;
X、X’、Y、Y’、R、およびR’は独立に、水素、アルキル、アルコキシ、またはこれらの組み合わせであり、ここでアルキル基またはアルコキシ基が存在する場合は、それは4以下の炭素原子を有する、式III:
のベンジジンタイプの発色反応生成物;および
Rが、メチル、エチル、またはプロピル、またはこれらの混合物である、式I:R-SO3Hの化合物であるスルホン酸を含む、比色分析用組成物。」
なお、本願発明2-12の概要は以下のとおりである。
本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明6は、工程(c)において本願発明1の比色分析用組成物に相当する組成物を生成し、工程(d)において、比色分析を行うステップを含む、比色分析の実施方法に関するものである。
本願発明7、8は、本願発明6を減縮した発明である。
本願発明9は、本願発明1の発色反応生成物を形成することができるベンジジンタイプの発色基質、及び、本願発明1のスルホン酸を含む、比色分析用キットに関するものである。
請求項10、11は、本願発明9を減縮した発明である。
請求項12は、本願発明1のスルホン酸を、本願発明1の発色反応生成物に添加するステップを含む、ベンジジンタイプの発色反応生成物を含む組成物中の反応を停止するための方法に関するものである。
第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平1-317399号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は強調のため当審で付した。)
(1-1)
「実施例2
抗体とて、特開昭62-174100号に記載されたガラクトシラーゼアイソザイムIIに対するモノクローナル抗体3872を用いた。
モノクローナル抗体3872を10μg/mlの濃度でABSビーズに固定化した後、1%牛血清アルブミン(以下BSAと称す)の燐酸緩衝食塩水(pH7.4)(以下PBSと称す)にてブロッキングした。さらに陽性サンプルである人腹水と21℃で一晩反応させPBSで洗浄後次いでペルオキシダーゼを結合したモノクローナル抗体3872と21℃2時間反応させた後、再度PSBにて洗浄した。ビーズを試験管に移し、発色反応試薬液すなわち3mg/mlの濃度のo-フェニレンジアミン2塩酸塩及び0.02%の濃度の過酸化水素を含む50mMくえん酸-100mM燐酸緩衝液(pH4.9)0.5mlを加えた。37℃にて30分間反応後、停止液2mlを加え、室温暗所に静置し492nmにおける吸光度を経時的に測定した。
本発明の停止液としては燐オキソ酸を用い、比較として硫酸を用いた。結果を表2に示す。
なお、表中での値は、1回目の測定時(3分)における測定値並びに2回目(30分)、3回目(150分)の測定時の測定値と1回目の測定値との差を示した。
本発明に係る停止剤燐オキソ酸を用いた場合酵素反応停止後の色素の生成が抑制される事がわかる。」(第4ページ右上欄第2行~左下欄第8行)
(1-2)
「実施例3
停止剤としてスルファミン酸又はスルファミン酸とピロリン酸の組合せを用いた以外は実施例2と同様に行なった。結果を表3に示す。
本発明の停止剤であるスルファミン酸を用いた場合、酵素反応停止後の色素の生成が抑制されることがわかる。」(第4ページ右下欄第1~7行)
(1-3)
「実施例4
実施例1に準じて芳香族スルホン酸化合物の停止剤としての効果を求めた。
発色試薬液中にさらに0.1W/V%のトリポリ燐酸ナトリウムを加えたものについても行なった。
芳香族スルホン酸化合物を停止剤として用いた場合は500nmにおける吸光度を測定した。結果を表4に示す。
本発明の停止剤である芳香族スルホン酸化合物を用いた場合、酵素反応停止後の色素の生成が抑制される事がわかる。さらに、縮合燐酸塩であるトリポリ燐酸ナトリウムを併用した場合、より効果的である。」(第4ページ右下欄第8行~第5ページ左下欄第3行)
上記摘記事項(1-1)より、ペルオキシダーゼが結合したモノクローナル抗体3872がABSビーズに固定化されたものに、o-フェニレンジアミン2塩酸塩及び過酸化水素を含む発色反応試薬液を加えて反応させた後、停止液を加えて吸光度測定に供したことが理解され、当該停止液を加えたものは吸光度測定用試料であるといえる。そして、(1-2)、(1-3)より、停止液としてスルファミン酸又は芳香族スルホン酸化合物である停止剤を含むものを使用して(1-1)と同様の試験を行ったことが認められる。
したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ペルオキシダーゼが固定化されたビーズを、o-フェニレンジアミン2塩酸塩及び過酸化水素を含む発色反応試薬液に加えたものを反応させた後、スルファミン酸又は芳香族スルホン酸化合物である停止剤を加えることにより得た、吸光度測定用試料。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開昭62-64955号公報)には、次の事項が記載されている。
「実施例1
(基質液)
0.2M リン酸緩衝液 (pH6.5) 50ml
2,7-ジアミノフルオレン (10mg/ml) 0.3ml
3% 過酸化水素 50μl
(試験方法)
市販のマイクロプレート穴に、基質液250μlを分注し、それぞれに、表1に記載した各発色安定化物質30μlを終濃度で0.01w/v%,0.1w/v%,1.0w/v%(以下、単に%と略記する)となるように加え、続いて精製水を10μl加えて試験液とした。
次に、それぞれに、ペルオキシダーゼ量として5ngのペルオキシダーゼ標識抗人絨毛性ゴナドトロピン(以下、hCGと略記する)抗体またはペルオキシダーゼを加え、発色を惹起し、現れた青色発色の茶褐色への変色を観察し、下記判定基準に従い判定した。
(結果)
その結果を表1の判定の欄に示したが、これは、0.01%,0.1%,1%の、3点で検討したうち、最も効果の大きかった1点についてのみ、記載した。
なお、ペルオキシダーゼ標識抗hCG抗体とペルオキシダーゼとでは、全く同じ結果を示した。
この結果より、本発明における発色安定化物質が溶液系において、2,7-ジアミノフルオレンの青色発色から茶褐色への変色防止に有効なことは明らかである。
判定基準
-:青色から茶褐色への変色が、20分以内に完了したもの。
±:青色から茶褐色への変色が、2時間以内に完了したもの。
+:青色から茶褐色への変色が、2時間以上、24時間以内に完了したもの。
++:24時間後においても青色を呈していたもの。
+++:24時間後において、最初と全く変わらない鮮やかな青色を保持していたもの。
※;終濃度で0.1%
」(第5ページ左上欄第7行~第6ページ左上欄 表1は抜粋して示す)
したがって、上記引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「2,7-ジアミノフルオレン及び過酸化水素を含む基質液にCH3-(CH2)10-SO3Naである発色安定化物質を加えた試験液に、ペルオキシダーゼ標識抗人絨毛性ゴナドトロピン抗体またはペルオキシダーゼを加えて、発色を惹起した溶液において、2,7-ジアミノフルオレンの青色発色から茶褐色への変色が防止されること。」
第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「ペルオキシダーゼ」は、本願発明1における「酵素」に相当する。
引用発明における「ペルオキシダーゼが固定化されたビーズを、o-フェニレンジアミン2塩酸塩及び過酸化水素を含む発色反応試薬液に加えたものを反応させた」とは、o-フェニレンジアミン2塩酸塩を含む発色反応試薬液をペルオキシダーゼによって発色反応させたことに他ならず、当該反応後の液はo-フェニレンジアミン2塩酸塩に由来する発色反応生成物を含有するものと認められる。そして、当該「o-フェニレンジアミン2塩酸塩に由来する発色反応生成物」は、本願発明1における「発色反応生成物」に対応する。
また、本願明細書【0005】に「概して、本発明は、比色分析によって検出できる発色基質と、発色反応生成物を含む反応組成物を停止させ安定化するための停止試薬とを使用する、サンプル中のアナライトの決定のための組成物、キット、および方法を提供する。停止試薬はスルホン酸である。」(下線は強調のために当審で付記)と記載されていることから、本願発明1における「Rが、メチル、エチル、またはプロピル、またはこれらの混合物である、式I:R-SO3Hの化合物であるスルホン酸」は停止試薬であり、これは引用発明における「スルファミン酸又は芳香族スルホン酸化合物である停止剤」に対応する。
引用発明における「吸光度測定用試料」は、本願発明1における「比色分析用組成物」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「酵素、発色反応生成物および停止試薬を含む、比色分析用組成物。」
(相違点)
・本願発明1における発色反応生成物が式IIIのベンジジンタイプの発色反応生成物であるのに対し、引用発明ではo-フェニレンジアミン2塩酸塩に由来する発色反応生成物である点。(相違点1)
・本願発明1における停止試薬が「Rが、メチル、エチル、またはプロピル、またはこれらの混合物である、式I:R-SO3Hの化合物であるスルホン酸」であるのに対し、引用発明では「スルファミン酸又は芳香族スルホン酸化合物」である点(相違点2)
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず上記相違点2について検討する。
引用文献2には、CH3-(CH2)10-SO3Naである発色安定化物質が記載されているが、当該化合物は本願発明のスルホン酸のRに相当する基がCH3-(CH2)10-基である点で、本願発明のスルホン酸と相違する。
また、当該化合物は発色反応の前に添加される発色安定化物質であり、反応の停止試薬ではない。
すなわち、引用文献2には「Rが、メチル、エチル、またはプロピル、またはこれらの混合物である、式I:R-SO3Hの化合物であるスルホン酸」である停止試薬は記載されていない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明6、9、12について
本願発明6、9、12も、本願発明1と同じく「Rが、メチル、エチル、またはプロピル、またはこれらの混合物である、式I:R-SO3Hの化合物であるスルホン酸」を発明特定事項に含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3.本願発明2-5、7、8、10、11について
本願発明2-5、7、8、10、11は、本願発明1、6、9または12を減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-14に係る発明について、上記引用文献1、2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、上記のとおり、引用文献2には「Rが、メチル、エチル、またはプロピル、またはこれらの混合物である、式I:R-SO3Hの化合物であるスルホン酸」である停止試薬は記載されていないから、平成30年9月3日付けの手続補正により補正された本願発明1-12は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
当審では、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、この出願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない旨の理由を通知しているが、平成30年9月3日付けの補正において、請求項8が「ステップ(c)により請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物が形成される、請求項6に記載の方法。」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-12は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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