特許拒絶査定不服審判
2017-012278
積層基板上の画像を見るための装置
- 審判番号
- 2017-012278
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-548156外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年08月18日
- 審決日
- 2018年09月14日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】積水化学工業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G09F) / P18 .537-WY (G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-548156「積層基板上の画像を見るための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月27日国際公開、WO2013/093351、平成27年 5月14日国内公表、特表2015-513684、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年12月20日(パリ条約による優先権主張 2011年12月22日、フランス共和国)を国際出願日とする出願であって、平成28年8月26日付けで拒絶理由が通知され、平成28年12月9日付けで誤訳訂正がなされ、平成29年5月17日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成29年5月23日)、これに対し、平成29年8月18日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、当審において、平成30年6月22日付けで拒絶理由が通知され、平成30年7月20日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、同日付で意見書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1-16に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明16」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-16に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
表示装置(1)用のグレージングパネルであって、該グレージングパネルは、少なくとも、
外側第1透明薄板(4)と内側第2透明薄板(6)であって、各薄板は外側表面と内側表面を備える、外側第1透明薄板(4)と内側第2透明薄板(6)と、
不透明材料から作製され、前記外側第1透明薄板(4)の前記内側表面と接し、外光を遮蔽するための保護層(5)と、
不透明材料から作製され、前記内側第2透明薄板(6)の前記内側表面と接し、絵文字(11)を形成する開口(8)を備えているマスキング層(7)と、
前記保護層(5)と、前記マスキング層(7)との間に設置され、熱成形可能材料から作製された中間層(2)または前記中間層(2)を組み込んでいる熱可塑性多層シートと、
前記マスキング層(7)と、前記中間層(2)または前記熱可塑性多層シートとの間に設置され、紫外または赤外領域における放射の反射を止める材料の追加機能層(9a)と、
前記紫外または赤外領域における放射を生成する光源(3a、3b)により生成される光の放射を吸収し、可視領域で光の放射を再出射するという理由で選択された発光種でドープされた材料の一様層であって、前記中間層(2)または前記中間層(2)の一部分により形成されているか、若しくはドープされていない中間層(2)上に堆積されている一様層と、の組立体を備えるグレージングパネル。」
なお、本願発明2-16の概要は以下のとおりである。
本願発明2-11は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明12は、本願発明1-11に係るグレージングパネルから構成されている装置についての発明である。
本願発明13-16は、本願発明12を減縮した発明である。
第3 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「理由2
この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由2(進歩性)について
・請求項 :1~2、4~9、13、16
・引用文献 :1、2
・請求項 :3
・引用文献 :1~3
・請求項 :10~11
・引用文献 :1~4
・請求項 :12、14
・引用文献 :1~5
・請求項 :15
・引用文献 :1~6
<引用文献等一覧>
1.特表2011-518704号公報
2.実願昭57-088351号(実開昭58-190691号)のマイクロフィルム
3.特開2001-052613号公報
4.特開2008-089945号公報
5.特開2004-169362号公報
6.特開昭62-180388号公報
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特表2011-518704号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は,風防タイプの少なくとも部分的に透明な支持体上に投影される表示システムの分野に関する。
【0002】
特に詳細に言えば,本発明は,当業においてHUD,すなわちヘッドアップ表示システムと呼ばれるシステムの分野に関する。このようなシステムは特に航空機操縦席及び列車に用いられ,最近では個人用の自動車(乗用車,トラック,等)にも用いられる。
【背景技術】
【0003】
このようなシステムにおいては,グレーズ(vitrage)は一般にサンドイッチ構造からなり,最も単純なものでは2枚のガラスシートを含む。このガラスシートは,しばしばポリビニルブチラル(PVB)を含む,又はPVBからなる熱成型挿入はく(箔,feuillet)によって結合されている。」
「【0008】
この文献によれば,上記の構造によって任意の像を風防,すなわちグレーズの上に直接再生することができる。この開示によれば,発光団材料は,いくつかのタイプの発光団を含む,連続層をなす積層グレーズ(PVB又はガラス)を構築するはくの一つのすべての主表面に付着させられる。発光団層の所定の範囲を選択的に励起することによって,所望の像が得られる。像の局所化(localisation)及びその形状は,外部手段によって励起光源を制御し変化させることによって得られる。」
「【0029】
図1に本発明による風防及びデバイスの概略を示す。
【0030】
風防1は二枚のガラスシート2及び9からなる。この2枚のシートの間には,PVB(ポリビニルブチラル),可塑化PVC,PU若しくはEVAのようなプラスチック,又は例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)を組み込んだ多層熱可塑性はくからなる挿入はくがある。多層熱可塑性はくの層は,例えばPVB,PET,PVBの順である。
【0031】
第1ガラスシート9の内側面に少なくとも一つの縁には,積層する前に,すなわち種々のはくが組み立てられる前に,黒色コーティング6が付着させられる。
【0032】
黒色コーティングは,現在のグレーズに既にある通常のコーティングであって,例えば装飾,又は特に光線から,加熱システムの電極(bandes collectrices)を隠すために用いられる粘着層を保護する役割をする。役割が何であるにせよ,黒色コーティングは一般に風防の周辺部すべてにある。この黒色コーティングは一般にエナメルからなる。エナメルは熱耐性及び機械強度が極めて優れていることが知られており,ガラスに対して高粘着強度を有する。その組成は通常高温でガラス化し,それによってエナメルをガラス基板にしっかりと固着させる粉末ガラスを含む。
【0033】
層10は,黒色エナメル層6の領域に付着し,外部励起光源4に応答するようにした少なくとも一つの発光団を含む。「黒色エナメル層の領域に」の記載は,本願明細書では,車両の運転者の眼5の視野に関しては,発光団層10が黒色エナメル層の上に重畳されていることを意味するものとする。さらに,発光団層は,例えば指示,情報又は切迫した危険を示す,図記号タイプの特徴的な略図を描くように付着させられる。このように先行技術と異なり,風防上に現れる標識は,風防自身に予め描かれている。このような構成は,先行実施例とは異なり,グレーズのわずかな部分だけが発光団層を有するので,もちろん最少費用で容易に生産できるという利点を有する。本発明による図記号を表す発光団層は,制限的ではないが例えば,スクリーン印刷技法,インクジェットタイプの技法,又はフレキソ(flexogravure)タイプ若しくは写真彫刻タイプのオフセット技法などの任意の既知の付着技法によって,付着させることができる。
【0034】
図2に,本発明による風防の連続層の詳細断面を示す。この連続層は,外側ガラスシート9,黒色エナメル6,プラスチック挿入物3,発光団層(印刷された図記号)10,内側ガラスシート2である。図2に示すように,図記号の形をした発光団層10は,プラスチック挿入はくの最内側面に付着している。しかし,ガラスシート2の内側面,又はより好ましくはガラスシート2の外側面に付着させても,本発明の範囲を逸脱することはない。本願明細書における「内側」及び「外側」という用語は,車両の客室20(図1参照)を基準としている。一般にプラスチック挿入はくは,入射紫外放射光をよく吸収する性質を有している。しかし,紫外線を吸収しないプラスチック挿入シートを使用したとき,又は入射赤外放射光(上方変換)を用いたときは,発光団層をPVBの外側面又は黒色背景6に直接付着させても,本発明の範囲を逸脱しない。
【0035】
選択可能な実施例によれば,発光団層10を例えば,ガラスシート2のいずれかの面上の,例えばMARABU社から市販されているMARABU GL 914(登録商標)タイプの透明保護エポキシワニス内に付着させてもよい。別の実施例によれば,風防を搭載した後から,発光団層を該層を含む透明プラスチックはくの形態で風防に付加させてもよい。
【0036】
PVB(又はほかの)熱可塑性シート状に発光団層を付着させる場合は,スクリーン印刷技法,インクジェットタイプの技法,又はフレキソタイプ若しくは写真彫刻タイプのオフセット技法を,特に熱成型はくの厚みに応じて,適用してもよい。」(当審注:段落【0036】における「PVB(又はほかの)熱可塑性シート状に発光団層を付着させる」は、「PVB(又はほかの)熱可塑性シート上に発光団層を付着させる」の誤記と認められる。)
「【0039】
例えば使用してもよい発光団は,紫外励起(下方変換)又は代替として赤外領域の励起(上方変換)に反応する任意の既知のタイプの発光団であってよい。このような材料は,例えば無機発光団の分野,例えば酸化物,ハロゲン化物,カルコゲン化物,ケイ酸塩,リン酸塩,ホウ酸塩,アルミン酸塩,から選択してもよい。これらは金属であることが多い。また蛍光を得るために,これらの材料は,希土類,例えばEu,Ce,Er,Pr,Tb,Tm,Dyの群,又は遷移金属類,例えばMn,Cr,Ti,Ag,Cu,Znの群から選択された要素を添加したマトリクスをなす。このような製品は,例えば蛍光灯分野で既によく知られている。これらの発光団は,比較的安価であるという別の利点があり,100%に迫る,又は100%の収率を示す。」
「【0044】
さらに本発明によれば,黒色エナメル層の領域に発光団層を置くことは,像の輝度,コントラスト及び鮮鋭度を大きく改善するという利点もある。特に昼間視において,先行技術のHUDデバイスと異なって,風防が強い日照8にさらされる条件下でさえも,再発光した可視放射光は,運転者が図記号を完全に見ることができる輝度である。本発明の別の利点によれば,発光団を付着させた場所のぼやけが増加し,又は光透過度が低下する恐れなく,図記号を構成する発光団の濃度を増加できる。
【0045】
また本発明は,使用する光源が特に紫外(又は赤外)の集束された光束を発するときの危険性の課題を,単純,直接及び経済的に解決することにも注意されたい。したがって本発明によれば,黒色コーティング層6は必然的に発光団層10の後,入射放射光7の伝ぱ方向に配置される。このようにして黒色コーティング層は有利にも紫外線を吸収する層を形成し,その構造のおかげで,入射放射光が車両の客室内部又は外部にもれる危険性を防止することができる。しかし,入射放射光を吸収するほかの補助層が発光団層10の中の,入射放射光7の伝ぱ方向にあっても,本発明の範囲を逸脱することがないことは明白である。最後に,黒色コーティング層6は外部放射光8(紫外,可視)によって発光団が劣化することを防ぎ,それによって本発明によるHUDシステムの寿命が,確実に車両の寿命に一致するようにする。
【0046】
さらに,発光団層の直後に黒色背景6があることによって,表示は外からは見えない。
【0047】
本発明による別の変形によれば,特に予め描かれた図記号のコントラストを改善する目的で,発光団層10の前,例えばガラスシート2の各面の一つに,使用される励起放射光の反射を防止することが知られている材料層を付加することもできる。上述の実施例を補完することができる変形によれば,発光又はコントラストを増加させるために風防に可視光を反射する層を設けてもよい。この反射層は積層風防の発光団層と黒色背景との間,好ましくは発光団層の直後,例えばガラスシート2の内側面に配置される。」
以上より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる
(なお、引用発明における「内側」及び「外側」という用語については、段落【0034】に「「内側」及び「外側」という用語は、車両の客室20(図1参照)を基準としている。」と記載されているとおりである。)。
「風防タイプの少なくとも部分的に透明な支持体上に投影される表示システム(段落【0001】より。以下同様。)において、
風防1は二枚のガラスシート2及び9からなり、この2枚のシートの間には,プラスチック,又は多層熱可塑性はくからなる挿入はくがあり(【0030】)、
第1ガラスシート9の内側面に少なくとも一つの縁には,黒色コーティング6が付着させられ(【0031】)、この黒色コーティングは一般にエナメルからなり(【0032】)、
外部励起光源4に応答するようにした少なくとも一つの発光団を含む発光団層10は、黒色エナメル層の上に重畳され(【0033】)、
風防の連続層は,外側ガラスシート9,黒色エナメル6,プラスチック挿入物3,発光団層(印刷された図記号)10,内側ガラスシート2であり(【0034】)、
PVB(又はほかの)熱可塑性シート上に発光団層を付着させ(【0036】)、
発光団は,紫外励起(下方変換)又は代替として赤外領域の励起(上方変換)に反応する任意の既知のタイプの発光団であってよく、蛍光を得るために,これらの材料は,希土類又は遷移金属類から選択された要素を添加したマトリクスをなし(【0039】)、
黒色コーティング層6は必然的に発光団層10の後,入射放射光7の伝ぱ方向に配置され、このようにして黒色コーティング層は有利にも紫外線を吸収する層を形成し,その構造のおかげで,入射放射光が車両の客室内部又は外部にもれる危険性を防止することができ、黒色コーティング層6は外部放射光8(紫外,可視)によって発光団が劣化することを防ぎ(【0045】)、
発光団層10の前のガラスシート2の各面の一つに,使用される励起放射光の反射を防止することが知られている材料層を付加することもできる(【0047】)、
風防タイプの表示システム(【0001】)。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(実願昭57-088351号(実開昭58-190691号)のマイクロフィルム)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「(1)考案の分野
この考案は励起光をパネル面に照射することによって、所要の文字その他記号が浮き出るようにした螢光体表示パネルに関する。」(第1頁第13-16行)
イ 「これによれば、従来の単に螢光体をパネル上に印刷法あるいはその他塗装法によって形成したものに比して精密な記号パターンを得ることができる。」(第3頁第17-20行)
ウ 「(5)実施例の説明
第1図はこの考案の基本的実施例を示すもので、ガラス等からなるパネル1の表面には螢光体を分散材で分散してなる螢光体層2が塗布,形成されているとともに、この螢光体層2の表面には吸光性塗膜4の層が形成され、かつこの塗膜4の中央部には上記螢光体層2を覗かせる開口3が形成されている。
この開口3は上記螢光体層2との境界において所要の文字その他記号のパターンを形成するものである。
上記吸光性塗膜4は上記螢光体層2の紫外線の励起光あるいはこれが螢光体層2にあたって発生する螢光波長の一部ないしすべての波長範囲の光吸収特性を持つ物質を含むもので、例えばこのものはプラスチック材やゴム材の紫外線劣化防止剤として用いられるような各種の紫外線吸収剤を用いることができる。」(第4頁第9行-第5頁第6行)
エ 「従って以上のように構成された螢光体表示パネル上に紫外線等の励起光5を照射すると螢光体層2においては螢光6が放射され、これに対し塗膜4を介して螢光体層2に照射された励起光5´においては吸収され、この部分からの螢光の発光はない。
従って開口3の縁部が所定の文字その他記号パターンとして視認される。」(第6頁第6-11行)
オ 「なお上記吸光性塗膜が励起光を吸収する物質を用いる場合においては、先に説明した紫外線励起光の場合以外でも可視光領域,あるいは赤外励起させる場合等にも適用できることは言うまでもない。」(第7頁第16-20行)
したがって、引用文献2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「励起光をパネル面に照射することによって、所要の文字その他記号が浮き出るようにした螢光体表示パネルであって(「ア」より)、
ガラス等からなるパネル1の表面には螢光体を分散材で分散してなる螢光体層2が塗布,形成されているとともに、この螢光体層2の表面には吸光性塗膜4の層が形成され、かつこの塗膜4の中央部には上記螢光体層2を覗かせる開口3が形成され、この開口3は上記螢光体層2との境界において所要の文字その他記号のパターンを形成するものであり、上記吸光性塗膜4は上記螢光体層2の紫外線の励起光の光吸収特性を持つ物質を含むもので、例えば紫外線吸収剤を用いることができ(「ウ」より)、
螢光体表示パネル上に紫外線等の励起光5を照射すると螢光体層2においては螢光6が放射され、これに対し塗膜4を介して螢光体層2に照射された励起光5´においては吸収され、この部分からの螢光の発光はなく、従って開口3の縁部が所定の文字その他記号パターンとして視認される(「エ」より)、
螢光体表示パネル(「ア」より)。」
3.引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3(特開2001-052613号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0007】
【問題を解決するための手段】そこで、本発明者は、上記の事情に鑑みて鋭意研究した結果、基板に、蛍光体含有感光性樹脂組成物を積層し、露光、現像を行い、パターン形成を行った後、波長300~400nmの紫外線を照射して蛍光体を発光させる方法において、カルボキシル基含有アクリル系ポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、自己開裂型光重合開始剤(C)、及び蛍光体(D)からなる蛍光体含有感光性樹脂組成物を用いる蛍光体の発光方法が長波長の紫外線照射において、優れた発光強度を有することを見出し、本発明を完成した。本発明においては、自己開裂型光重合開始剤(C)として、カルボキシル基含有アクリル系ポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)及び自己開裂型光重合開始剤(C)からなる感光性樹脂組成物を露光した際の365nmにおける紫外線透過率が80%以上となるような光重合開始剤を用いるとき、特に顕著な効果を示す。」
よって、引用文献3には、「蛍光体含有感光性樹脂組成物に紫外線を照射して蛍光体を発光させる」技術が記載されているものと認められる。
4.引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4(特開2008-089945号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0003】
・・・本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、蛍光を利用した表示装置において光源を露出させずに発光時に表示部のみを目視させることができる表示装置を提供することである。」
「【0012】
図2及び図3に示すように、サブ表示画面15を構成する蛍光層としての表示画面プレート22が第1の筐体11に形成された透孔21に嵌合されている。表示画面プレート22は本実施例1ではポリカーボネート製の透明な方形プラスチック製板体とされている。表示画面プレート22内にはRGB(赤、緑、青)蛍光材料が分散含有されており紫外光を励起光として赤、緑、青の蛍光を発生する。これらの蛍光色が混色されて白色光を生成する。
表示画面プレート22の裏面(第1の筐体11の内部側)側には第1の反射薄膜層23が成膜形成されている。第1の反射薄膜層23の特性の一例を表1に示す。尚、表1において実線は透過率を破線は反射率を示す。第1の反射薄膜層23は近紫外光の波長域である250nm~350nmの光に対しては平均98%程度の透過率(平均2%程度の反射率)に設定され、可視光域の大部分を占める450nm~780nmの光に対しては平均95%程度の反射率(平均5%程度の透過率)に設定されている。つまり、第1の反射薄膜層23は可視光に対する反射率が極めて高く、近紫外光に対しては極めて反射率が低く設定されている。
【0013】
表示画面プレート22の表面(第1の筐体11の外部側)側には第2の反射薄膜層24が成膜形成されている。第2の反射薄膜層24の特性の一例を表2に示す。尚、表2において実線は透過率を破線は反射率を示す。第2の反射薄膜層24は近紫外光の波長域である250nm~350nmの光に対しては平均98%程度の反射率(平均2%程度の透過
率)に設定され、可視光域の大部分を占める450nm~780nmの光に対しては平均95%程度の透過率(平均5%程度の反射率)に設定されている。つまり、第2の反射薄膜層24は紫外線に対する反射率が極めて高く、可視光に対しては極めて反射率が低く設定されている。
第1の筐体11内であってブラケット26上には10×10に配列された紫外線発光ダイオード素子からなるマトリックスLED25が配設されている。マトリックスLED25は図示しない制御部による制御に基づいて紫外光を第1の反射薄膜層23方向に照射する。表示画面プレート22、第1の反射薄膜層23及び第2の反射薄膜層24によってサブ表示画面15が構成され、これにマトリックスLED25を加えて蛍光表示機構27が構成されることとなる。」
「【0016】
このような構成のカメラ搭載携帯電話機10ではサブ表示画面15に関して次のような作用がなされることとなる。尚、以下の説明で図4はサブ表示画面15付近の構成及び作用を分かりやすく説明するために作成したため、各層の厚み等は実際の比率とは無関係に図示されている。
図4に示すようにマトリックスLED25が所定の紫外線発光ダイオード素子から励起光としての紫外光を放射すると、紫外光は第1の反射薄膜層23を透過し表示画面プレート22内に進入する。そしてRGB蛍光材料と遭遇するとこれを励起させて蛍光を発生させる(軌跡A)。これによってサブ表示画面15としての表示画面プレート22に所定の文字や数字等が蛍光として表示される。蛍光は前後方向に厚みのある表示画面プレート22内において細長い卵型のような蛍光によって生ずるぼんやりとした光の塊である光輝帯として第2の反射薄膜層24を透過し看者に目視されることとなる。一方、第1の反射薄膜層23によって可視光がほとんど遮断されているため看者にとって第1の反射薄膜層23は鏡面として認識されることとなる。
ここに、すべての紫外光が表示画面プレート22内においてRGB蛍光材料と遭遇してこれを励起させるわけではなく、一部はそのまま表示画面プレート22を素通りしてしまうことがある。その場合には紫外光は第2の反射薄膜層24に反射されて(つまり遮蔽されて)表示画面プレート22方向に戻ることとなる(軌跡B)。この反射された紫外線は一部は励起に寄与し一部は表示画面プレート22内で減衰していく。」
よって、引用文献4には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「蛍光層としての表示画面プレート22の裏面(第1の筐体11の内部側)側には第1の反射薄膜層23が成膜形成され、第1の反射薄膜層23は可視光に対する反射率が極めて高く、近紫外光に対しては極めて反射率が低く設定されており(【0012】)、
表示画面プレート22の表面(第1の筐体11の外部側)側には第2の反射薄膜層24が成膜形成され、第2の反射薄膜層24は紫外線に対する反射率が極めて高く、可視光に対しては極めて反射率が低く設定されており(【0013】)、
表示画面プレート22、第1の反射薄膜層23及び第2の反射薄膜層24によってサブ表示画面15が構成され、これにマトリックスLED25を加えて蛍光表示機構27が構成され(【0013】)、
マトリックスLED25が所定の紫外線発光ダイオード素子から励起光としての紫外光を放射すると、紫外光は第1の反射薄膜層23を透過し表示画面プレート22内に進入し、そしてRGB蛍光材料と遭遇するとこれを励起させて蛍光を発生させ、これによってサブ表示画面15としての表示画面プレート22に所定の文字や数字等が蛍光として表示され、第2の反射薄膜層24を透過し看者に目視されることとなるが、一方、第1の反射薄膜層23によって可視光がほとんど遮断されているため看者にとって第1の反射薄膜層23は鏡面として認識されることとなる(【0016】)、
表示画面プレート22(【0012】)。」
5.引用文献5
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献5(特開2004-169362号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0016】
次に、図3に示すように標識基材7の上端面に紫外線LED6(商品名「TGパープルE1S09-0P0AP-02」、豊田合成(株)製)を8個連結したものを直接取り付け、一方他の側端面を白色塩化ビニル樹脂フィルムで覆い、標識装置を製造した。
標識装置の残光輝度の測定試験は、紫外線LED(LEDより1.0cm離れた位置の紫外線強度は0.1mW/cm2)により2分間照射し、照射を止めた後の各経過時間毎に、標識装置表面の輝度を測定した。標識装置の残光輝度を表1に示す。
製造した標識装置について、紫外線LEDを2分間点灯し、蓄光層に紫外線を照射し、次いで紫外線LEDを10分間消灯し、この点灯、消灯を24時間繰り返した。この間の標識装置の輝度は、0.153cd/m2以上であり、標識を明瞭に視認できた。
また、紫外線LEDに、太陽電池及びバッテリー等から成る発電装置を接続し、1週間屋外に設置したところ、昼間は太陽光で、夜間は紫外線LEDが点灯と消灯を繰り返すことにより標識装置が発光し、標識を1日中明瞭に視認できた。」
よって、引用文献5には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「標識基材7の上端面に、蓄光層に紫外線を照射する紫外線LED6を取り付けた標識装置。」
6.引用文献6
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献6(特開昭62-180388号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「本発明は光励起蛍光体を利用した静止画用面発光ディスプレイに関する。」(第1頁右下欄第15-16行)
イ 「〔発明の実施例〕
第1図(a)には、本発明の面発光ディスプレイの実施例を示す。この面発光ディスプレイは、発光面板10,光励起源20より成る。
発光面板10は、平面形状をなす。この平面状の発光面体10は、面状基板層11,面状光導波層12,面状蛍光体層13,面状保護層14の積層体である。発光面板10の断面を第1図(b)に示す。蛍光体層13は、表示すべき図形の形状をなす。第1図(a)では、文字「A」の形状とした。第2図(a),(b)では人間の動体像の形状とした。
光導波層12は、後述する光励起源20よりの入力光を内部に伝播させる導波体の役割,側面にある蛍光体13に光を照射する役割りとを持つ。
蛍光体層12は、光導波層12よりの面状透過光を受けて蛍光を発する。第2図(a),(b)の例でみれば、蛍光体層13の部分のみを示す蛍光が発生する。
保護層13は、蛍光体層12の発生光を透過させる。
基体層11は、発光面板10の基体をなす。但し、保護層12と同じ材質を使用すれば、2つの面の双方から蛍光体層13からの蛍光が透過し、両側表示が可能となる。
光励起源20は、発光面板10の両側面部にそれぞれ設けた。光励起源20は、光を発生し、この光を光導波層12に入射させ、蛍光体層12の励起光にさせる。
この光励起源20は蛍光灯19,ソケット25,電源トランス23,スイッチ24より成る。蛍光灯19は、外部ケース兼用の筒形反射体22,その内部に設けた直管状蛍光(紫外線)ランプ26,端部に設けた蛍光ランプ用ソケット21より成る。ソケット25,21を挿入し、且つスイッチ24をONとすることによって、蛍光ランプ26は蛍光励起光、例えば紫外光線を発生する。筒形反射体22は、発光面板10に接着させた。この反射体22によって端部からの励起光の逃げはなくなる。
光励起源20と発光面板10との結合部には集光レンズ27を設けた。集光レンズ27は、蛍光灯19の長手方向に沿った長手形状をなし、蛍光ランプ26からの発生光を集光し、導波層12に導びく働きをする。この様子を第1図(c)に示す。従って、集光レンズ27の焦点は光導波層12内に設定しておく。
保護層14は、いわゆるクラッド層をなし、光導波層12の屈折率n12と、保護層14の屈折率n14と基体層11の屈折率n11は、n12>n11,n12>n14の関係を持たせた。更に蛍光体層13の屈折率n13は、該層に選択的に励起光から洩れるように、通常n12とほぼ等しいか、これより大きいことが望ましい。」(第2頁左下欄第17行-第3頁右上欄第5行)
よって、上記「イ」より、引用文献5には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「面発光ディスプレイは、発光面板10,光励起源20より成り、発光面体10は、面状基板層11,面状光導波層12,面状蛍光体層13,面状保護層14の積層体であり、蛍光体層13は、表示すべき図形の形状をなし、光導波層12は、後述する光励起源20よりの入力光を内部に伝播させる導波体の役割,側面にある蛍光体13に光を照射する役割りとを持ち、蛍光体層12は、光導波層12よりの面状透過光を受けて蛍光を発し、保護層13は、蛍光体層12の発生光を透過させ、基体層11は、発光面板10の基体をなし、光励起源20は、発光面板10の両側面部にそれぞれ設けた。光励起源20は、光を発生し、この光を光導波層12に入射させ、蛍光体層12の励起光にさせ、保護層14は、いわゆるクラッド層をなし、光導波層12の屈折率n12と、保護層14の屈折率n14と基体層11の屈折率n11は、n12>n11,n12>n14の関係を持たせた。更に蛍光体層13の屈折率n13は、該層に選択的に励起光から洩れるように、通常n12とほぼ等しいか、これより大きいことが望ましい、面発光ディスプレイ。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「風防1」は、「風防タイプの少なくとも部分的に透明な支持体上に投影される表示システム」に用いられ、「風防1は二枚のガラスシート2及び9からな」るものである。そして、引用文献1の段落【0003】に「グレーズ(vitrage)は一般にサンドイッチ構造からなり,最も単純なものでは2枚のガラスシートを含む。」と記載され、また、段落【0008】に「風防,すなわちグレーズ」と記載されていることから、引用発明の「表示システム」に用いられる「風防1」は、本願発明1における「表示装置(1)用のグレージングパネル」に相当するといえる。
イ ガラスシートが、外側表面と内側表面を備えていることは明らかであるから、引用発明における「二枚のガラスシート2及び9」が、本願発明1における「外側第1透明薄板(4)と内側第2透明薄板(6)であって、各薄板は外側表面と内側表面を備える、外側第1透明薄板(4)と内側第2透明薄板(6)」に相当する。
ウ 引用発明における「黒色コーティング層6」は、「エナメルからなり」、「第1ガラスシート9の内側面に少なくとも一つの縁」に「付着させられ」、「外部放射光8(紫外,可視)によって発光団が劣化することを防」いでいるから、本願発明1における「不透明材料から作製され、前記外側第1透明薄板(4)の前記内側表面と接し、外光を遮蔽するための保護層(5)」に相当する。
エ 引用発明における「風防の連続層」は、「外側ガラスシート9,黒色エナメル6,プラスチック挿入物3,発光団層(印刷された図記号)10,内側ガラスシート2」であるから、引用発明における「プラスチック挿入物3」(つまり、「プラスチック,又は多層熱可塑性はく」)は、「黒色エナメル6」の内側に設置されていることは明らかである。
よって、引用発明における「プラスチック挿入物3」(つまり、「プラスチック,又は多層熱可塑性はく」)と、本願発明1における「前記保護層(5)と、前記マスキング層(7)との間に設置され、熱成形可能材料から作製された中間層(2)または前記中間層(2)を組み込んでいる熱可塑性多層シート」とは、「前記保護層(5)の内側に設置され、熱成形可能材料から作製された中間層(2)または前記中間層(2)を組み込んでいる熱可塑性多層シート」の点で共通する。
オ 上記「エ」のとおり、引用発明における 「風防の連続層」は,「外側ガラスシート9,黒色エナメル6,プラスチック挿入物3,発光団層(印刷された図記号)10,内側ガラスシート2」である。そして、
(ア)「発光団層(印刷された図記号)10」は、「プラスチック挿入物3」(つまり、「プラスチック,又は多層熱可塑性はく」)である「PVB(又はほかの)熱可塑性シート上」に「付着させ」られ、「外部励起光源4に応答する」層であって、
(イ)その「発光団」は,「紫外励起(下方変換)又は代替として赤外領域の励起(上方変換)に反応する任意の既知のタイプの発光団」であって、「蛍光を得るために,これらの材料は,希土類又は遷移金属類から選択された要素を添加したマトリクス」をなしているから、引用発明における「発光団層(印刷された図記号)10」は、本願発明1における「前記紫外または赤外領域における放射を生成する光源(3a、3b)により生成される光の放射を吸収し、可視領域で光の放射を再出射するという理由で選択された発光種でドープされた材料の層であって、ドープされていない中間層(2)上に堆積されている層」に相当する。
カ 上記オを踏まえると、引用発明における「発光団層10の前のガラスシート2の各面の一つ」に「付加」された「励起放射光の反射を防止することが知られている材料層」と、本願発明1における「前記マスキング層(7)と、前記中間層(2)または前記熱可塑性多層シートとの間に設置され、紫外または赤外領域における放射の反射を止める材料の追加機能層(9a)」とは、「前記中間層(2)または前記熱可塑性多層シート間より内側(車両の客室側)に設置され、紫外または赤外領域における放射の反射を止める材料の追加機能層(9a)」の点で共通する。
キ 上記「エ」のとおり、引用発明における「風防」は,「外側ガラスシート9,黒色エナメル6,プラスチック挿入物3,発光団層(印刷された図記号)10,内側ガラスシート2」の「連続層」からなっているから、本願発明1における「組立体を備えるグレージングパネル」に相当する。
以上より、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「表示装置(1)用のグレージングパネルであって、該グレージングパネルは、少なくとも、
外側第1透明薄板(4)と内側第2透明薄板(6)であって、各薄板は外側表面と内側表面を備える、外側第1透明薄板(4)と内側第2透明薄板(6)と、
不透明材料から作製され、前記外側第1透明薄板(4)の前記内側表面と接し、外光を遮蔽するための保護層(5)と、
前記保護層(5)の内側に設置され、熱成形可能材料から作製された中間層(2)または前記中間層(2)を組み込んでいる熱可塑性多層シートと、 前記中間層(2)または前記熱可塑性多層シート間より内側(車両の客室側)に設置され、紫外または赤外領域における放射の反射を止める材料の追加機能層(9a)と、
前記紫外または赤外領域における放射を生成する光源(3a、3b)により生成される光の放射を吸収し、可視領域で光の放射を再出射するという理由で選択された発光種でドープされた材料の層であって、ドープされていない中間層(2)上に堆積されている層と、の組立体を備えるグレージングパネル。」
(相違点1)
本願発明1では、「不透明材料から作製され、前記内側第2透明薄板(6)の前記内側表面と接し、絵文字(11)を形成する開口(8)を備えているマスキング層(7)」と、「前記マスキング層(7)と、前記中間層(2)または前記熱可塑性多層シートとの間に設置され、紫外または赤外領域における放射の反射を止める材料の追加機能層(9a)」とを備えているのに対し、
引用発明では、「発光団層10の前のガラスシート2の各面の一つ」に「付加」された「励起放射光の反射を防止することが知られている材料層」(本願発明1でいう、「追加機能層(9a)」に相当する。以下、同様)と、「プラスチック挿入物3」(つまり、「プラスチック,又は多層熱可塑性はく」)(「中間層(2)」または「熱可塑性多層シート」)とを備えているものの、発光団層10は「(印刷された図記号)」であって、発光団層10をマスクする「マスキング層」は設置されておらず、したがって、「励起放射光の反射を防止することが知られている材料層」は、マスキング層と、前記「プラスチック挿入物3」(つまり、「プラスチック,又は多層熱可塑性はく」との間に設置されたものではない点。」
(相違点2)
本願発明1では、「中間層(2)または前記中間層(2)を組み込んでいる熱可塑性多層シート」が、「前記保護層(5)と、前記マスキング層(7)との間に設置され」ているのに対し、引用発明では、「プラスチック挿入物3」(つまり、「プラスチック,又は多層熱可塑性はく」)は、「黒色エナメル6」の内側と、「内側ガラスシート2」との間に配置されているものの、上記相違点1のとおり、引用発明には、発光団層10をマスクする「マスキング層」が設置されていないため、「プラスチック挿入物3」(つまり、「プラスチック,又は多層熱可塑性はく」)を、「黒色エナメル6」の内側と「マスキング層」との間に配置することは示されていない点。
(相違点3)
本願発明1では、「発光種でドープされた材料」の層が、「一様」層であるのに対し、引用発明における「発光団層(印刷された図記号)10」は、その「発光団層」の「発光団」が、「希土類又は遷移金属類から選択された要素を添加したマトリクス」をなしているものの、「発光団層」が「一様」層であることは示されていない点。
(2)判断
ア 上記相違点1について検討すると、引用文献2には、「螢光体表示パネル」において、「螢光体層2の表面には吸光性塗膜4の層が形成され、かつこの塗膜4の中央部には上記螢光体層2を覗かせる開口3が形成され」るようにすることで、「螢光体表示パネル上に紫外線等の励起光5を照射すると」「開口3の縁部が所定の文字その他記号パターンとして視認される」技術事項が記載されている。
イ ここで、引用文献2に記載された技術事項における、「螢光体層2の表面」の「吸光性塗膜4」が、本願発明1における「マスキング層(7)」に相当する。
ウ しかし、引用文献2に記載された技術事項では、「吸光性塗膜4」は「蛍光体層2の表面」に形成された「塗膜」であるから、仮に、上記引用文献2に記載された技術事項を引用発明に適用し、引用発明における「発光団層(印刷された図記号)10」に代えて、「発光団層10」の表面に、「図記号」の「開口」が形成された「吸光性塗膜4の塗膜」(マスキング層)を形成するようにしても、その結果、「励起放射光の反射を防止することが知られている材料層」(「追加機能層(9a)」)は、「吸光性塗膜4の塗膜」(マスキング層)と、「内側のガラスシート2」との間(または「内側のガラスシート2」の内側)に「付加」されるだけで、(上記相違点1に係る本願発明1の構成のように)「吸光性塗膜4の塗膜」(マスキング層)と「プラスチック挿入物3」(つまり、「プラスチック,又は多層熱可塑性はく」)(「中間層(2)」または「熱可塑性多層シート」)との間に設置される構成とはならない。
エ また、上記引用文献3-6にも、本願発明1でいう「マスキング層(7)」と、「前記マスキング層(7)と、前記中間層(2)または前記熱可塑性多層シート」との間に「紫外または赤外領域における放射の反射を止める材料の追加機能層(9a)」を設置する技術事項は示されていない。
(3)小括
したがって、本願発明1は、上記相違点2、3について判断するまでもなく、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2.本願発明2-11について
本願発明2-11も、本願発明1の「不透明材料から作製され、前記内側第2透明薄板(6)の前記内側表面と接し、絵文字(11)を形成する開口(8)を備えているマスキング層(7)」と、「前記マスキング層(7)と、前記中間層(2)または前記熱可塑性多層シートとの間に設置され、紫外または赤外領域における放射の反射を止める材料の追加機能層(9a)」とを備え、「中間層(2)」または「熱可塑性多層シート」は、「前記保護層(5)と、前記マスキング層(7)との間に設置され」ている構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
3.本願発明12について
本願発明12は、本願発明1-11に係るグレージングパネルから構成されている装置についての発明であるから、本願発明1-11について述べたのと同様の理由によって、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
4.本願発明13-16について
本願発明13-16は、本願発明12を減縮した発明であるから、本願発明12について述べたのと同様の理由によって、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 原査定について
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には、「不透明材料から作製され、前記内側第2透明薄板(6)の前記内側表面と接し、絵文字(11)を形成する開口(8)を備えているマスキング層(7)」と、「前記マスキング層(7)と、前記中間層(2)または前記熱可塑性多層シートとの間に設置され、紫外または赤外領域における放射の反射を止める材料の追加機能層(9a)」とを備え、「中間層(2)」または「熱可塑性多層シート」は、「前記保護層(5)と、前記マスキング層(7)との間に設置され」ている構成を有するものとなっている。
そして、上記「第5」「1.」-「4.」で述べたとおり、本願発明1-16は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第7 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第6項第2号について
(1)当審で通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
1.請求項1について
(1)「中間層(2)」とは、どのような層であるのか、また、「中間層を組み込んでいる多層シート」が、請求項1に記載されたどのような「層」のシートを意味しているのか、明確でなく、また、「中間層」と「一様層」との関係も明確でない。
(2)追加機能層(9a)の材料が反射を止める「励起放射」とは、「紫外または赤外領域における放射」のことか、「再出射」された「可視領域で」の「光の放射」のことか、明確でない。
(3) 「追加機能層(9a)」と「一様層」との配置関係が特定できないため、「グレージングパネル」の「組立体」の構成が明確でない。
(4)「保護層(5)」とは、何を何から保護する層であるのか不明である
2.請求項12-14について
(1)請求項13に係る発明と請求項14に係る発明とでは、光源の配置が異なるから、請求項14が、「請求項1から13のいずれか一項に記載の・・・」と、請求項13を引用して記載されているのは不自然である。
(2)請求項1における「追加機能層(9a)」の配置は、請求項13に記載されたように「光源(3a)」が「組立体を直接照明」する場合を想定してなされたものと考えられるから、請求項14のように「光源(3b)」が「端面を介して照明」するよう配置したのでは、上記「追加機能層(9a)」が機能せず、不合理である。
(3)請求項16の記載によれば、「光源」は「グレージングパネル」の構成要素ではなく、「積層グレージングパネル上に表示を生成するための装置」の構成要素であるから、請求項12、13及び14の記載は、「グレージングパネル」のどのような構成を特定しているのか、明確でない。
よって、請求項1、12-14、及び請求項1を引用する請求項2-11、15、16に係る発明は明確でない。
(2)判断
本件補正により、特許請求の範囲が補正され、また、請求項14に対しては、平成30年7月20日付けの意見書のとおり、「光源(3b)」が「端面を介して照明」するよう配置した場合であっても、「励起光の反射を防止」する必要性が認められることから、当審で通知した上記拒絶理由は解消した。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明1-16は、当業者が引用発明及び引用文献2-6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-012278