特許拒絶査定不服審判
2017-011166
真空ポンプ
- 審判番号
- 2017-011166
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-139336
- 請求日
- 2017年07月27日
- 審決日
- 2018年07月30日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】江崎 光史
- 【請求人代理人】鍛冶澤 實
- 【請求人代理人】篠原 淳司
- 【請求人代理人】中村 真介
- 【請求人代理人】清田 栄章
- 審判長/審判官
- 審判長 藤井 昇
- 審判官 堀川 一郎
- 審判官 長馬 望
- 分類
- P18 .113-Z (H02K) / P18 .561-Z (H02K) / P18 .575-Z (H02K) / P18 .537-Z (H02K) / P18 .121-Z (H02K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第1項第3号、特許法第159条第1項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第53条第1項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第53条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-139336「真空ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月 8日出願公開、特開2016- 25845〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成27年7月13日(パリ条約による優先権主張2014年7月17日:独国)の出願であって、平成28年5月23日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年6月1日)、これに対し、平成28年11月21日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年3月21日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成29年3月29日)、これに対し、平成29年7月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、平成29年12月7日付で上申書が提出されたものである。
2.平成29年7月27日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年7月27日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
真空ポンプ、特にロータリーベーンポンプ、ストロークピストンポンプ、ルーツポンプ又はスクリューポンプであって、真空ポンプ(51)を通じて流体をポンピングするための、回転軸を中心として回転可能なポンプローター(55)と、ポンプローター(55)を駆動するための電動モーターを有し、その際、電動モーターが、回転可能なローターと、該ローターと相互作用し、基本形状がリング形状のステータ(11)を有する真空ポンプにおいて、
ステータ(11)が、ステータ(11)の周囲方向において連続する、基本形状がリングセグメント形状に形成された複数のステータ歯(13)から構成されていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
各ステータ歯(13)が、少なくとも一つのコイル(29)を担持しており、このコイルが、ステータ歯(13)の構成の前に其々のステータ歯(13)に巻き付けられることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
ステータ歯(13)によって担持されるコイル(29)が、電気的に互いに結線されていることを特徴とする請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
ステータ(11)の周囲方向でみて先行する又は後続のステータ歯(13)の方に向けられた側面に、各ステータ歯(13)が、各一つの空所部(21a,21b)を有しており、そしてステータ歯(13)に巻き付けられたコイル(29)がステータ歯(13)の空所部(21a,21b)内に収容されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
コイル(29)は、空所部(21a,21b)が少なくとも近似的に完全にコイル(29)によって満たされているようにステータ歯(13)の周りに巻きつけられることを特徴とする請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
コイル(29)の巻き付け部(27)内に含まれる伝導性の材料、特に銅が、空所部(21a,21b)内で高い占積率を達成し、特に、30パーセントを超える占積率、好ましくは35パーセントを超える、更に好ましくは40パーセントを超える、もっと更に好ましくは45パーセントを超え、もっと更に好ましくは50パーセントを超え、そしてもっとさらに好ましくは55パーセントを超える占積率を達成することを特徴とする請求項4または5に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
各ステータ歯(13)が、第一の接点部分(17a)と第二の接点部分(17b)を有すること、各ステータ歯(13)の第一の接点部分(17a)がステータ(11)内で、ステータ(11)の周囲方向(I)において先行するステータ歯(13)の第二の接点部分(17b)に接すること、各ステータ歯(13)の第二の接点部分(17b)が、周囲方向(I)で後続のステータ歯(13)の第一の接点部分(17a)に接することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
ステータ(11)内で、ステータ(11)の周囲方向で連続する二つのステータ歯(13)の第一及び第二の接点部分(21a,21b)が重なり合って形状結合的な接続を形成することを特徴とする請求項7に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
ステータ(11)の周囲方向で連続する二つのステータ歯(13)の第一及び第二の接点部分(21a,21b)の間の形状結合的な接続を形成するために、第一の接点部分(21a)が突起部(23)を有し、第二の接点部分(21b)が、該突起部(23)に補完的な凹部(25)を有することを特徴とする請求項7または8に記載の真空ポンプ。
【請求項10】
各ステータ歯(13)において、両方の接点部分(21a,21b)が、ステータ(11)の半径方向(II)に関して半径方向外側に位置することを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項11】
複数のステータ歯(13)が、ハウジング(31)内で固定されており、特に、ステータ歯(13)とハウジング(31)の間に、横断方向圧着接続、特に延伸圧着接続、または収縮圧着接続が形成されることにより固定されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項12】
電動モーターが、回転可能なローターおよび該ローターと相互作用する、基本形状がリング形状であるステータ(11)を有している、真空ポンプ、特に請求項1から11のいずれか一項に記載の真空ポンプの為の電動モーターの製造の為の方法において、ステータ(11)が、ステータ(11)の周囲方向に連続する、基本形状がリングセグメント状に形成された複数のステータ歯(13)から構成されることを特徴とする方法。
【請求項13】
ステータ歯(13)をステータ(11)に構成する前に、各ステータ歯(13)の周りに少なくとも一つのコイル(29)が巻かれること、及び/又は、ステータ歯(13)によって担持されるコイル(29)が、特に、ステータ歯(13)をステータ(11)に構成した後に互いに結線されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステータ歯(13)内に設けられる空所部(21a,21b)が、少なくとも近似的に完全にコイル(29)によって満たされるよう、各コイルが各ステータ歯(13)の周りに巻かれること、及び/又は、コイル(29)の巻き付け部(27)内に含まれる、伝導性の材料、特に銅が、空所部内(21a,21b)で高い占積率を達成する、特に30パーセントを越え、好ましくは35パーセントを越え、更に好ましくは40パーセントを越え、もっと更に好ましくは45パーセントを越え、もっと更に好ましくは50パーセントを越え、そしてもっと更に好ましくは55パーセントを越える占積率を達成することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステータ歯(13)が、ハウジング(31)内に固定されること、特にこれが、ステータ歯(13)とハウジング(31)の間の横断方向圧着接続、延伸圧着接続、または収縮圧着接続が形成されることによって固定されることを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。」
本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
真空ポンプ、特にロータリーベーンポンプ、ストロークピストンポンプ、ルーツポンプ又はスクリューポンプであって、真空ポンプ(51)を通じて流体をポンピングするための、回転軸を中心として回転可能なポンプローター(55)と、ポンプローター(55)を駆動するための電動モーターを有し、その際、電動モーターが、回転可能なローターと、該ローターと相互作用し、基本形状がリング形状のステータ(11)を有する真空ポンプにおいて、
ステータ(11)が、ステータ(11)の周囲方向において連続する、基本形状がリングセグメント形状に形成された複数のステータ歯(13)から構成されており、その際、各ステータ歯(13)が半径方向に延在する担持部分(15)を有し、担持部分(15)には、半径方向外側に位置する湾曲形状の第一及び第二の接点部分(17a,17b)と、半径方向内側に位置する湾曲形状の第一及び第二の端部部分(19a,19b)が設けられており、その際、担持部分(15)から、第一の接点部分(17a)と第一の端部部分(19a)が周囲方向と反対方向に、そして第二の接点部分(17b)と第二の端部部分(19b)が周囲方向に突き出しており、その際、第一の接点部分(17a)、第二の接点部分(17b)、第一の端部部分(19a)および第二の端部部分(19b)が、其々、これらが周囲方向において一定であるような半径方向寸法を有することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
各ステータ歯(13)が、少なくとも一つのコイル(29)を担持しており、このコイルが、ステータ歯(13)の構成の前に其々のステータ歯(13)に巻き付けられることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
ステータ歯(13)によって担持されるコイル(29)が、電気的に互いに結線されていることを特徴とする請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
ステータ(11)の周囲方向でみて先行する又は後続のステータ歯(13)の方に向けられた側面に、各ステータ歯(13)が、各一つの空所部(21a,21b)を有しており、そしてステータ歯(13)に巻き付けられたコイル(29)がステータ歯(13)の空所部(21a,21b)内に収容されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
コイル(29)は、空所部(21a,21b)が少なくとも近似的に完全にコイル(29)によって満たされているようにステータ歯(13)の周りに巻きつけられることを特徴とする請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
コイル(29)の巻き付け部(27)内に含まれる伝導性の材料、特に銅が、空所部(21a,21b)内で高い占積率を達成し、特に、30パーセントを超える占積率、好ましくは35パーセントを超える、更に好ましくは40パーセントを超える、もっと更に好ましくは45パーセントを超え、もっと更に好ましくは50パーセントを超え、そしてもっとさらに好ましくは55パーセントを超える占積率を達成することを特徴とする請求項4または5に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
各ステータ歯(13)の第一の接点部分(17a)がステータ(11)内で、ステータ(11)の周囲方向(I)において先行するステータ歯(13)の第二の接点部分(17b)に接すること、各ステータ歯(13)の第二の接点部分(17b)が、周囲方向(I)で後続のステータ歯(13)の第一の接点部分(17a)に接することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
ステータ(11)内で、ステータ(11)の周囲方向で連続する二つのステータ歯(13)の第一及び第二の接点部分(21a,21b)が重なり合って形状結合的な接続を形成することを特徴とする請求項7に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
ステータ(11)の周囲方向で連続する二つのステータ歯(13)の第一及び第二の接点部分(21a,21b)の間の形状結合的な接続を形成するために、第一の接点部分(21a)が突起部(23)を有し、第二の接点部分(21b)が、該突起部(23)に補完的な凹部(25)を有することを特徴とする請求項7または8に記載の真空ポンプ。
【請求項10】
各ステータ歯(13)において、両方の接点部分(21a,21b)が、ステータ(11)の半径方向(II)に関して半径方向外側に位置することを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項11】
複数のステータ歯(13)が、ハウジング(31)内で固定されており、特に、ステータ歯(13)とハウジング(31)の間に、横断方向圧着接続、特に延伸圧着接続、または収縮圧着接続が形成されることにより固定されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項12】
電動モーターが、回転可能なローターおよび該ローターと相互作用する、基本形状がリング形状であるステータ(11)を有している、真空ポンプ、特に請求項1から11のいずれか一項に記載の真空ポンプの為の電動モーターの製造の為の方法において、ステータ(11)が、ステータ(11)の周囲方向に連続する、基本形状がリングセグメント状に形成された複数のステータ歯(13)から構成され、その際、各ステータ歯(13)が半径方向に延在する担持部分(15)を有し、担持部分(15)には、半径方向外側に位置する湾曲形状の第一及び第二の接点部分(17a,17b)と、半径方向内側に位置する湾曲形状の第一及び第二の端部部分(19a,19b)が設けられており、その際、担持部分(15)から、第一の接点部分(17a)と第一の端部部分(19a)が周囲方向と反対方向に、そして第二の接点部分(17b)と第二の端部部分(19b)が周囲方向に突き出しており、その際、第一の接点部分(17a)、第二の接点部分(17b)、第一の端部部分(19a)および第二の端部部分(19b)が、其々、これらが周囲方向において一定であるような半径方向寸法を有することを特徴とする方法。
【請求項13】
ステータ歯(13)をステータ(11)に構成する前に、各ステータ歯(13)の周りに少なくとも一つのコイル(29)が巻かれること、及び/又は、ステータ歯(13)によって担持されるコイル(29)が、特に、ステータ歯(13)をステータ(11)に構成した後に互いに結線されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステータ歯(13)内に設けられる空所部(21a,21b)が、少なくとも近似的に完全にコイル(29)によって満たされるよう、各コイルが各ステータ歯(13)の周りに巻かれること、及び/又は、コイル(29)の巻き付け部(27)内に含まれる、伝導性の材料、特に銅が、空所部内(21a,21b)で高い占積率を達成する、特に30パーセントを越え、好ましくは35パーセントを越え、更に好ましくは40パーセントを越え、もっと更に好ましくは45パーセントを越え、もっと更に好ましくは50パーセントを越え、そしてもっと更に好ましくは55パーセントを越える占積率を達成することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステータ歯(13)が、ハウジング(31)内に固定されること、特にこれが、ステータ歯(13)とハウジング(31)の間の横断方向圧着接続、延伸圧着接続、または収縮圧着接続が形成されることによって固定されることを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。」
(2)新規事項
(2-1)本件補正後の請求項1には、「第一の接点部分(17a)、第二の接点部分(17b)、第一の端部部分(19a)および第二の端部部分(19b)が、其々、これらが周囲方向において一定であるような半径方向寸法を有する」と記載されているから、第一及び第二の接点部分、第一及び第二の端部部分の周囲方向の半径方向幅が同じ(一定)となる。
そこで、当該補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
当初明細書等の請求人が補正の根拠と主張する箇所には、
「図3が示すように、各ステータ歯13は、二重のT字構造の形式で形成されている。(ステータ11の中心軸Mから見て)半径方向IIに関し、各ステータ歯13は、断面が少なくとも近似的に長方形である担持部分15を有している。担持部分15の周りには、図3に示されているように、コイル29の巻き部27が巻かれている。その際、各巻き部27は、好ましくは、基本的に半径方向IIに対し横断する方向に延在する巻き部断面を有している。担持部分15は、第一の側面15aおよび第二の側面15bを有している。図3が示すように、第一の側面15aは、周囲方向Iと反対に向けられており、これと反対に第二の側面15bは、周囲方向に向けられている。
担持部分15には、第一の接点部分17aと第二の接点部分17bが設けられている。これらは半径方向IIでみて半径方向外側に位置している。その際、両方の接点部分17aおよび17bは、複数のステータ歯17から構成されるステータ11の外半径に相応して湾曲されており、その際、第一の接点部分17aは周囲方向Iと反対に、担持部分15の第一の側面15aを越えて突き出している。図3に見て取れるように、第二の接点部分17bは、周囲方向Iに担持部分15の第二の側面15bを越えて突き出している。
その上、担持部分15には更に、第一および第二の端部部分19a,19bが設けられている。その際、第一の端部部分19aは、周囲方向Iと反対に担持部分15の第一の側面を越えて突き出している。第二の端部部分19bは、周囲方向Iでみて担持部分15の第二の側面15bを越えて突き出している。」(【0032】-【0034】)
と記載されるにすぎず、第一及び第二の接点部分、第一及び第二の端部部分について記載はあるものの、第一及び第二の接点部分、第一及び第二の端部部分の周囲方向の半径方向幅が同じ(一定)となることは記載も示唆もなく、当初明細書等の他の部分にも記載も示唆もない。
請求項12も同様である。
なお、請求人は、審判請求書で、「出願当初より明細書段落0032,0033,0034、図1乃至3などに明確に記載され、なんら新規事項を追加いたしません。」と主張するが、願書に添付した図面は発明の理解を助けるためのものであって、いわゆる設計図面のように図示された形状や寸法を正確に表したものではないから、図面から第一及び第二の接点部分、第一及び第二の端部部分の上記寸法関係を抽出することはできず、請求人の上記主張は採用できない。
したがって、本件補正後の請求項1に記載された「第一の接点部分(17a)、第二の接点部分(17b)、第一の端部部分(19a)および第二の端部部分(19b)が、其々、これらが周囲方向において一定であるような半径方向寸法を有する」は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。請求項12も同様である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
[理由II]
上記のとおり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項に記載されたものが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)特許法第36条第6項について
請求項1に、「第一の接点部分(17a)、第二の接点部分(17b)、第一の端部部分(19a)および第二の端部部分(19b)が、其々、これらが周囲方向において一定であるような半径方向寸法を有する」とあるが、
[理由I]で述べたように、第一及び第二の接点部分、第一及び第二の端部部分の周囲方向の幅が同じ(一定)となることは当初明細書等に記載されておらず、又、平成28年11月21日付手続補正、本件補正は共に特許請求の範囲のみを補正するものであって発明の詳細な説明を補正していないから、発明の詳細な説明の記載は出願当初のままのであるので、第一及び第二の接点部分、第一及び第二の端部部分の周囲方向の幅が同じ(一定)となることは、発明の詳細な説明に記載されていない。請求項12も同様である。
なお、請求人は、審判請求書で、「当該補正により、本願におけるステータ歯は、二重のT字構造の形式で形成されることが明らかとなりました。そして、その際、接点部分17a,17bと端部部分19a,19bは、それぞれ、これらが周囲方向で接しているような半径方向寸法を有することとなります。そのような周囲方向において一定(審決注:「言って」は誤記)の半径方向厚さ寸法を有する接点部分17a,17bと端部部分19a,19bは、特に図1及び2と図3から見て取ることができます。」と主張し、第一及び第二の接点部分、第一及び第二の端部部分の周囲方向の幅が同じ(一定)となることは、発明の詳細な説明ではなく図面から抽出したことを認めている。しかも、図1~3が、第一及び第二の接点部分と第一及び第二の端部部分の周囲方向の幅が同じ(一定)であることを意図したものとはいえず、図面の記載が寸法を正確に表したものではないことは[理由I]のとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。
したがって、請求項1-15の記載は発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(2)特許法第29条第2項について
(2-1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記した平成29年7月27日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2-2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2014-50215号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
a「従来から、図1に示すような真空ポンプが知られており、この真空ポンプには、ポンプ主軸20を回転駆動するための電動モータ15が設けられている。かかる真空ポンプは、例えば、半導体製造工程における真空チャンバ内のプロセスガスの排気などに広く使用されるものである。図1に示される電動モータ15の場合は、モータロータ40がポンプ主軸20に直結されている構造である。」(【0002】)
b「図4は、上述のような問題を解決するための一例を示す図である。この図に示すように、ティース部405-1、405-2等に対して巻線を密に且つ多数回巻き付けるために、円筒状のモータステータ401が円周方向に沿って複数個に分割されている。この場合、モータステータ401は、前記ティース部405-1~405-6を1個づつ有する複数のステータコア部品(例えば401-1~401-6)で構成されることとなる。そして、それぞれ別個にされたステータコア部品401-1~401-6のティース部405-1~405-6の周りに、巻線を密に且つ可能な限り多数巻き付けることが可能となる。その後に、そのような巻き付け済みのステータコア部品を円周方向に連接して、円筒状のモータステータ401が形成される。」(【0008】)
c「[全体概要]
図9を参照して、本発明の第1実施形態に係るステータコア903の全体概要について説明する。本実施形態では、キャンドモータのステータコア903を、6つのステータコア部品901,903,905,907,909、911(以下、「901等」と示す)の組み合わせによって構成している。ここで、ステータコア部品901等は、部分円筒状の部分円筒状部と、この部分円筒状部からステータコア903の中心に向かって延びるティース部901t、903t、905t、907t、909t、911t(以下「901t等」と示す)とを備えている。
[部分円筒状部]
本実施形態のステータコア903では、上述したように6つのステータコア部品901等によって、円筒状のステータコア903が構成されている。このため、各ステータコア部品901等の部分円筒状部は、60°の角度に相当する部分を占めることとなる。部分円筒状部の両端部(901-902)e、(911-901)eは、隣接する他の部分円筒状部の端部に対応する接合形状を有しており、当該接合形状はステータコア903の半径方向に沿った波形曲線形状である。この接合形状(波形曲線形状)についての詳細は後述する。
[ティース部]
各ステータコア部品901等には、磁極を構成するために、ステータコア903の中心に向かって延びるティース部901t等が設けられている。本実施形態のティース部901t等は、部分円筒状部における周方向の略中央部から延びている。ティース部901t等は、部分円筒状部側から先端部側(ステータコアの中心に近い側)の近傍まで、略一定の幅で構成されている。一方、ティース部901t等の先端部は、ステータコア903の中心に向かって末広がりの形状となっている。また、ティース部901t等の周りには、巻線901m、903m、905m、907m、909m、911m(以下「901m等」と示す)が密に巻き付けられている。」(【0027】-【0029】)
上記記載及び図面を参照すると、引用例1は真空ポンプに係るものであるから、真空ポンプを通じて流体をポンピングするための、ポンプ主軸を中心として回転可能なポンプロータを有していることは明らかである。
上記記載及び図面を参照すると、電動モータが、回転可能なモータロータと、該モータロータと相互作用し、基本形状が円筒状のステータコアを有している。
上記記載及び図面を参照すると、ステータコアが、ステータコアの円周方向において連続する、基本形状が部分円筒状に形成された複数のステータコア部品から構成されている。
上記記載及び図面を参照すると、各ステータコア部品が半径方向に延在するティース部を有し、ティース部には、半径方向外側に位置する部分円筒状の第一及び第二の部分円筒状部と、半径方向内側に位置する湾曲形状の第一及び第二の末広がり部が設けられている。
上記記載及び図面を参照すると、ティース部から、第一の部分円筒状部と第一の末広がり部が第一の円周方向に、そして第二の部分円筒状部と第二の末広がり部が第二の円周方向に突き出しており、その際、第一の部分円筒状部、第二の部分円筒状部、第一の末広がり部、第二の末広がり部が、其々、これらが円周方向において所定の半径方向寸法を有している。
上記記載事項からみて、引用例1には、
「真空ポンプであって、真空ポンプを通じて流体をポンピングするための、ポンプ主軸を中心として回転可能なポンプロータと、ポンプ主軸を回転駆動するための電動モータを有し、その際、電動モーターが、回転可能なモータロータと、該モータロータと相互作用し、基本形状が円筒状のステータコアを有する真空ポンプにおいて、
ステータコアが、ステータコアの円周方向において連続する、基本形状が部分円筒状に形成された複数のステータコア部品から構成されており、その際、各ステータコア部品が半径方向に延在するティース部を有し、ティース部には、半径方向外側に位置する部分円筒状の第一及び第二の部分円筒状部と、半径方向内側に位置する湾曲形状の第一及び第二の末広がり部が設けられており、その際、ティース部から、第一の部分円筒状部と第一の末広がり部が第一の円周方向に、そして第二の部分円筒状部と第二の末広がり部が第二の円周方向に突き出しており、その際、第一の部分円筒状部、第二の部分円筒状部、第一の末広がり部、第二の末広がり部が、其々、これらが円周方向において所定の半径方向寸法を有する真空ポンプ。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
(2-3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ポンプ主軸」、「ポンプロータ」、「回転駆動」、「電動モータ」、「モータロータ」、「円筒状」、「ステータコア」、「円周方向」、「部分円筒状」、「ステータコア部品」、「ティース部」、「部分円筒状部」、「末広がり部」、「第一の円周方向」、「第二の円周方向」は、それぞれ本願補正発明の「回転軸」、「ポンプローター」、「駆動」、「電動モーター」、「ローター」、「リング形状」、「ステータ」、「周囲方向」、「リングセグメント形状」又は「湾曲形状」、「ステータ歯」、「担持部分」、「接点部分」、「端部部分」、「周囲方向と反対方向」、「周囲方向」に相当する。
引用発明の「ポンプ主軸を回転駆動するための電動モータ」は、本願補正発明の「ポンプローターを駆動するための電動モーター」に相当する。
したがって、両者は、
「真空ポンプであって、真空ポンプを通じて流体をポンピングするための、回転軸を中心として回転可能なポンプローターと、ポンプローターを駆動するための電動モーターを有し、その際、電動モーターが、回転可能なローターと、該ローターと相互作用し、基本形状がリング形状のステータを有する真空ポンプにおいて、
ステータが、ステータの周囲方向において連続する、基本形状がリングセグメント形状に形成された複数のステータ歯から構成されており、その際、各ステータ歯が半径方向に延在する担持部分を有し、担持部分には、半径方向外側に位置する湾曲形状の第一及び第二の接点部分と、半径方向内側に位置する湾曲形状の第一及び第二の端部部分が設けられており、その際、担持部分から、第一の接点部分と第一の端部部分が周囲方向と反対方向に、そして第二の接点部分と第二の端部部分が周囲方向に突き出している真空ポンプ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
〔相違点1〕
真空ポンプに関し、本願補正発明は、特にロータリーベーンポンプ、ストロークピストンポンプ、ルーツポンプ又はスクリューポンプであるのに対し、引用発明は、この様な特定がない点。
〔相違点2〕
本願補正発明は、第一の接点部分、第二の接点部分、第一の端部部分および第二の端部部分が、其々、これらが周囲方向において一定であるような半径方向寸法を有するのに対し、引用発明は、第一の部分円筒状部、第二の部分円筒状部、第一の末広がり部、第二の末広がり部が、其々、これらが周囲方向において所定の半径方向寸法を有する点。
(2-3)判断
相違点1について
「特にロータリーベーンポンプ、ストロークピストンポンプ、ルーツポンプ又はスクリューポンプ」は、任意付加的な記載であって真空ポンプとして周知のものの単なる例示にすぎないから、相違点1について本願補正発明と引用発明に差異は認められない。
相違点2について
複数のステータ歯からなるステータにおいて、第一の接点部分、第二の接点部分、第一の端部部分および第二の端部部分が、其々、これらが周囲方向において一定であるような半径方向寸法とすることは、例えば特開平8-186958号公報(図面)、特開2005-354838号公報(図面)等にみられるように周知の事項であり、当業者であればモータが必要とする特性に応じて適宜変更できるから、引用発明において、第一の接点部分、第二の接点部分、第一の端部部分および第二の端部部分が、其々、これらが周囲方向において一定であるような半径方向寸法とすることは当業者が容易に考えられるものである。
なお、請求人は、リングセグメント形状について、平成28年11月21日付意見書で、
「例えば本願明細書に添付の図3には、リングセグメント形状に形成されたステータ歯が表されています。リングセグメント形状のステータ歯においては、ステータ歯の周囲方向に位置する端部17a及び19a又は17b及び19bが、中心Mから半径方向に伸びる同一の線状に位置することとなっています。換言すると、半径方向内側に位置する端部部分19a,19bも波形方向外側に位置する端部部分17a,17bも周囲方向で見て同じ角度αを形成する構造となっています。そのようなリングセグメント形状のステータコア部品は引用文献1には記載・示唆ともにされておりません。」
と主張するが、リング形状であるステータをセグメント化(分割)したものがリングセグメント形状のステータ歯であって、請求項1に「リングセグメント形状」について上記主張に基づく特段の特定がなく、しかも、請求人の上記主張のとおりにステータを形成すれば、ステータ歯の第一及び第二の接点部分が隣接するステータ歯の第二及び第一の接点部分と互いに接し合う場合には、ステータ歯の第一及び第二の端部部分が隣接するステータ歯の第二及び第一の端部部分と互いに接し合わなければならないが、図1では、第一及び第二の接点部分は隣接のものと互いに接し合っているが、第一及び第二の端部部分は隣接するものとの間に隙間があるから、請求人の上記主張の様にステータは形成されておらず、したがって請求人の上記主張は採用できない。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。
3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、上記した平成28年11月21日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(1)拒絶の理由
平成28年5月23日付の新規性に関する拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「この出願の請求項1-2に係る発明は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-50215号公報(以下、「引用例1」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」
(2)引用例
引用例1の記載事項は、「2.[理由II](2)(2-2)」に記載したとおりである。
(3)対比・判断
本願発明は、「2.[理由II](2)」で検討した本願補正発明から、「ステータ歯」の限定事項である「各ステータ歯(13)が半径方向に延在する担持部分(15)を有し、担持部分(15)には、半径方向外側に位置する湾曲形状の第一及び第二の接点部分(17a,17b)と、半径方向内側に位置する湾曲形状の第一及び第二の端部部分(19a,19b)が設けられており、その際、担持部分(15)から、第一の接点部分(17a)と第一の端部部分(19a)が周囲方向と反対方向に、そして第二の接点部分(17b)と第二の端部部分(19b)が周囲方向に突き出しており、その際、第一の接点部分(17a)、第二の接点部分(17b)、第一の端部部分(19a)および第二の端部部分(19b)が、其々、これらが周囲方向において一定であるような半径方向寸法を有する」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、「2.[理由II](2)(2-2)」の相違点1について一応相違する。
しかし、上述のように相違点1について、本願補正発明と引用発明に差異は認められないから、本願発明は引用例1に記載された発明である。
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。
7.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。
そうすると、他の請求項について検討するまでもなく、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-011166