特許拒絶査定不服審判
2017-011135
ハンドレール検査装置、および、ハンドレール検査システム
- 審判番号
- 2017-011135
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-133231
- 請求日
- 2017年07月27日
- 審決日
- 2018年06月18日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社日立ビルシステム
- 【請求人代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 松下 聡
- 審判官 粟倉 裕二
- 審判官 鈴木 充
- 分類
- P18 .121-Z (B66B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-133231「ハンドレール検査装置、および、ハンドレール検査システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年1月19日出願公開、特開2017-13974〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年7月2日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年9月29日付け:拒絶理由通知書
平成28年11月7日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年12月5日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年5月25日付け:拒絶査定
平成29年7月27日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成28年12月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
乗客コンベアのハンドレールに内蔵されたスチールコードの劣化に関する検査データを生成するハンドレール検査装置であって、
検査対象の前記ハンドレールと対向する面に、前記ハンドレールの伸長方向に沿って一列に配置された、互いに逆向きの交流磁場を発生する第1発振コイルおよび第2発振コイルと、前記第1発振コイルと前記第2発振コイルの中間またはその近傍に位置し、前記第1発振コイルおよび前記第2発振コイルから受けた磁場に基づく磁場波形を前記検査データとして出力する受信コイルと、をそれぞれが含む複数のコイルセット
を備え、
複数の前記コイルセットそれぞれが、検査対象の前記ハンドレールの幅方向にずらして配置されている
ことを特徴とするハンドレール検査装置。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定(平成29年5月25日付け拒絶査定)の拒絶の理由は次のとおりである。
本願の請求項1、2及び10に係る発明は、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項3及び4に係る発明は、引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献一覧>
1.特開平10-111276号公報
2.特表2012-514207号公報
3.特開2000-313583号公報
4.特開2012-220239号公報
第4 引用例、引用発明、引用技術
1 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平10-111276号公報(以下「引用例1」という。)には、「探傷装置」に関して、図面(特に、図1ないし3参照。)とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付した。以下同様。)
ア 「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の探傷装置は、エスカレータのハンドレールに設けられた補強用線材の断線を検出する探傷装置であって、コアと、このコアの軸方向に並べて設けられるとともに巻き方向が同一とされた第1コイルおよび第2コイルと、上記コアに磁気的に接続され、上記補強用線材の長手方向に沿って同コアの両側に配置された磁路形成体と、上記第1、第2コイルに周期的電流を供給する電源手段と、上記第1、第2コイルの磁束の変化の差を検出する検出手段とを備えたことを特徴としている。」
イ 「【0010】
【発明の実施の形態】
A.実施の形態の構成
次に、図1ないし図5を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は実施の形態の探傷装置Sを正面から見た断面図、図2は側断面図である。図中符号Rはエスカレータのハンドレール、WはハンドレールRの長手方向に沿って埋設されたスチールワイヤ(補強用線材)であり、スチールワイヤWは、直径0.15mm程度の鋼線を5~7本撚り合わせて製造されている。
【0011】符号1は探傷装置Sの本体を構成するケーシングであり、ケーシング1は下面が開放された矩形の箱状体とされている。ケーシング1の内部には、一対のローラ2,2が軸2aによって回転自在に指示されている。また、ケーシング1の内部の中央部には、センサ10が取り付けられている。センサ10の下面は、探傷装置SをハンドレールRに載置した状態で所定寸法離間するようになっている。なお、図中符号3は探傷装置Sを持ち上げるための取手である。
【0012】図3はセンサ10の詳細を示す図である。図中符号11はコア(磁路形成体)であり、コアはフェライトなどの磁性体により外観略E字状をなすように形成されている。コア11の中央部には、第1コイル12と第2コイル13とが巻回されている。第1コイル12と第2コイル13の巻付け方向は同じで巻数も同じとされている。この構成のもとに、第1、第2コイル12,13に交流電流などの周期的電流を供給すると、図中矢印で示す磁束が生成され、コア11の全体は磁束が通る磁路となる。」
ウ 「【0016】B.実施の形態の動作
次に、上記構成の探傷装置Sを用いてハンドレールRのスチールワイヤWの断線を検出する動作を説明する。まず、エスカレータを運転してハンドレールRを走行させ、その状態で探傷装置SをハンドレールRの一側に寄せて載置する。その際、ローラ2の軸2aをハンドレールRの走行方向と直交させ、探傷装置Sが斜行しないようにする。そして、ハンドレールRが一周以上走行したら、探傷装置Sを横にずらし、このようにして、探傷装置Sのセンサ10がハンドレールRの全域を探傷するようにする。
【0017】ハンドレールRのスチールワイヤWを構成する鋼線の一部が断線していると、その断線部分はハンドレールRの表面側へと食い込んでくる。一方、探傷装置Sの第1コイル12と第2コイル13からの出力信号は、断線のない状態で等しくなるように設定されているが、ハンドレールRの表面側へ移動した鋼線の一部の存在により、第1、第2コイル12,13のインピーダンスが互いに異なり、その結果、比較回路109から信号が出力される。この信号の値が所定の閾値を上回ると、ブザー110より警告音が発せられ、断線が発生していることを検出することができる。なお、ブザー110を省略してディスプレイ109のみによって断線の有無を検出することもできる。この場合において、第1、第2コイル12,13が同軸に配置されているので、従来の渦流探傷装置のように2つのコイルが並置されていることに起因するノイズの発生がなく、よって、断線部分が僅かに表面側へ移動しただけでも検出することができる。」
エ 「【0019】なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。たとえば、センサ10を1つだけ設けているが、ハンドレールRの幅方向に沿って複数設けることができる。また、上記実施例は本発明を携帯用の探傷装置に適用したものであるが、エレベータに組み込むことも可能である。」
オ 上記イ及び図1ないし3の記載からみて、ハンドレールRと対向する面に、第1コイル12及び第2コイル13を含むセンサ10が備えられることが分かる。
カ 上記イから、第1コイル12及び第2コイル13は、交流電流が供給され、磁束を生成するものであるから、その磁束は交流磁束であることが分かる。
上記アないしカ及び図1ないし3の記載を総合すると、引用例1には、「ハンドレールRの探傷装置S」に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)及び技術(以下「引用技術1」という。)が記載されている。
〔引用発明〕
「エスカレータのハンドレールRに埋設されたスチールワイヤWの断線に関する出力信号を生成するハンドレールRの探傷装置Sであって、
検査対象の前記ハンドレールRと対向する面に、交流磁束を生成する第1コイル12および第2コイル13を含むセンサ10
を備えた、
ハンドレールRの探傷装置S。」
〔引用技術1〕
「センサ10を、検査対象のハンドレールRの幅方向に沿って複数設ける技術。」
2 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特表2012-514207号公報(以下「引用例2」という。)には、「金属線材をモニタする装置」に関して、図面(特に、図1ないし5参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0002】
タイヤは、互いに重ね合わされた数個のゴム異形要素及びこれら異形要素の幾つかのゴム中に埋め込まれた補強細線又は線材を有する。「細線」又は「線材」という用語は、本明細書においては、一般的な意味に解されるべきである。以下、例えば、モノフィラメント細線、マルチフィラメント細線、コード又はもろより糸を細線又は線材と称する。細線は、表面処理されていても良く、表面処理されなくていなくても良い。これら細線は、プライを形成し、同一プライ内に互いに実質的に平行に布設される。細線は、タイヤを補強してその強度及び頑丈さを向上させる。これら細線の何割かは、特に重車両型の車両用タイヤでは磁性材料、例えばスチールで作られる。埋め込み状態の細線は、プライを形成する。特にタイヤが摩耗した場合にタイヤの状態をモニタし又は検査するために、各補強細線を検査することが推奨される。その目的は、タイヤの健全性又は一体性を損なう場合のある欠陥を持つ補強細線が存在しないことを確かめることにある。「欠陥」という用語は、本明細書においては、細線中の不規則性を意味するものと解されるべきである。この不規則性は、特に、切れ目、撚り合わせの解け又は変形例として、細線の摩耗、腐食又は酸化の結果としての細線の断面の相当な減少の場合がある。」
イ 「【0047】
タイヤ14は、周方向と呼ばれている半径方向外側の踏み面(トレッド表面)34及び半径方向内側の表面36を更に有している。タイヤ14は、軸線Xと実質的に同軸の第1及び第2の円形ビードワイヤ38,40を更に有している。最後に、タイヤ14は、磁性材料面、例えば金属材料、この場合、スチールで作られた補強細線又は線材42a,42bを有している。トレッド28(審決注:「34」の誤記)の下に位置する補強細線42aは、クラウン補強ベルトを形成している。第1のビードワイヤ38と第2のビードワイヤ40との間に延びる補強細線42bは、カーカス補強プライを形成している。線材42a,42bは、種々のプライの中に互いに束ねられると共に同一プライ内に互いに実質的に平行に配置されている。」
ウ 「【0049】
装置18の案内手段19は、装置18を案内手段19に沿って動かしているときに装置18が半径方向内面36の輪郭を辿るよう配置されている。案内手段19は、レール66を形成する案内を含む。案内66は、全体として逆U字形のものである。
【0050】
図4及び図5を参照すると、装置18は、渦流型のものである。装置18は、第1及び第2の誘導部材68,70を支持した磁性材料を作られている支持体67を有し、第1及び第2の誘導部材68,70は、それぞれ、支持体67及び各細線42a,42b中にそれぞれ第1及び第2の磁束P1,P2を生じさせる第1及び第2の電磁界B1,B2を誘導する。さらに、装置18は、第1及び第2の磁束P1,P2を受け取るレシーバ部材74を有している。レシーバ部材74は、第1及び第2の電磁界B1,B2が各細線42a,42bの状態を表す信号をレシーバ部材74中に生じさせることができるよう第1の誘導部材68と第2の誘導部材70との間に配置されている。電磁界B1,B2は、信号をレシーバ部材74中に生じさせ、この信号の性状は、上述したようにレシーバの形式で決まる。以下において便宜上、問題の各細線の状態を表す信号は、Eで示された起電力であると考えることにする。
【0051】
レシーバ部材74は、部材68,70及び脚部82,84から等距離を置いたところに位置している。装置18は、次のようにセットアップされており、即ち、電磁界B1,B2の代数値は、細線が対称を示す場合、信号(起電力E)の値が最小値を取り、或いは、それどころかゼロであり、欠陥がないことを示すようなものである。この場合、信号(起電力E)の値が、信号の最小の大きさに見合った値に向かう傾向があるようにしようとして電磁界B1,B2の大きさ及び位相を変更することが可能である。
【0052】
変形例として、レシーバ部材74は、部材68,70の一方に他方よりも近くに位置しても良い。装置18は、信号(起電力E)を測定する手段76及び信号(起電力E)を基準値(起電力E0)と比較する手段78を更に有している。
【0053】
各誘導部材68,70は、誘導コイル80を有している。支持体67は、第1及び第2の磁気脚部82,84を有する全体として十字形のものであり、第1及び第2の磁気脚部82,84は、それぞれ、各細線42a,42b中に第1及び第2の磁束P1,P2を誘導する。支持体は、脚部82,84を互いに連結するクロスバー85を更に有している。各誘導コイル80は、各脚部82,84の周りに配置されている。
【0054】
第1及び第2の脚部は各々、検査中の細線中に各磁束P1,P2を誘導するための端部を備えている。これら端部は、位置合わせ方向を定める。第1及び第2の誘導部材68,70及びレシーバ部材74も又、位置合わせ方向に実質的に位置合わせされる。位置合わせ方向は、検査されるべき各細線が延びる方向に実質的に平行である。この装置は、作動中、位置合わせ方向が検査中の細線の走行方向に実質的に平行に差し向けられている場合、検査されるべき細線を通って流れる磁束だけを測定するよう構成されている。
【0055】
レシーバ部材74は、レシーバヘッド86、この場合、コアを有し磁束P1,P2を受け取るコイル88がこのコア周りに配置されている。脚部82,84、クロスバー85及びコア86は、フェライトで作られている。ヘッド86は、タイヤ14の表面34と一致して位置決めされるようになっており、このヘッドは、装置を検査のための2本の連続して並んで又は隣接して位置する細線42a,42bを隔てる間隔に等しい距離にわたりタイヤ14に対して動かすと、レシーバ部材が磁束の変化を検出することができるよう磁束P1,P2を受け取るのに適した寸法を有している。ヘッド86は、直径が実質的に1mmに等しく、長さが約33mmの実質的に円筒形の形をしている。コイル88は、コア86回りに巻かれた電線の数回のターンから成っている。電線の直径は、1mm未満であり、この特定の場合、0.6mmである。コイル88は、4つの重ね合わされた層上に分布して設けられた100回かそこらのターンを有し、具体的には、103個のターンから成っている。コイル88は、コア86の上に2mmの高さにわたって延びている。図示の例では、レシーバ部材74の共振振動数は、960kHzである。さらに、部材74は、インダクタンスが115μHの場合に100KHzで73Ωのインピーダンスを有する。この種のコイルは、上述の装置が検査のための2本の隣接して位置する細線を隔てる間隔を横切っているときに磁束の変化を検出することができる。」
エ 「【0058】
細線42に欠陥がない場合(図4)、レシーバ部材74を通過する2つの磁束P1,P2は、点線で示されている2つの閉じられた磁気回路C1,C2に対応した基準信号と呼ばれる信号(起電力E0)を生じさせる。誘導部材68,70が厳密に互いに同一である場合、磁束P1,P2を生じさせる電圧の移送が正確に調整されると、基準信号(起電力E0)の値は、0に等しい。変形例として、部材68,70は、基準信号(起電力E0)の値が0とは異なるように互いに異なる特性を有する。
【0059】
細線42に欠陥がある場合(図5)、この場合、第2の部分42a2に欠陥があると、2つの磁束P1,P2は、レシーバ部材74を通過し、起電力E′を生じさせ、この起電力E′は、図示の例では、閉じられた磁気回路C1及び図4の磁気回路C2よりも高い磁気抵抗を示す磁気回路C2に対応している。測定信号(起電力E′)の値は、基準信号(起電力E0)の値とは異なっている。」
オ 「【0065】
次に、ローラ48を用いてタイヤ14を軸線X回りに回転させ、装置18に対するタイヤ14の相対運動の関数としてレシーバ部材78中に生じた信号(起電力E)の値を測定する。コア86を内面36と接触状態に保つ。タイヤ14を1回転させる。変形例として、潜在的な欠陥の検出を確実にするために、タイヤ14を何回も回転させる。この測定中、各細線について測定された信号(起電力E)の各値を基準信号(起電力E0)の値と比較し、各細線42a,42bに欠陥があればこれを検出することができるようになっている。」
カ 上記イ及びウ(特に段落【0054】)並びに図1、3及び5の記載からみて、補強細線42a、42bの延びる方向に沿って一列に、第1の誘導部材68における誘導コイル80(以下「第1誘導コイル」という。)及び第2の誘導部材70における誘導コイル80(以下「第2誘導コイル」という。)と、前記第1誘導コイル及び前記第2誘導コイルの中間にコイル88が配置されたことが分かる。
キ 第1誘導コイル、第2誘導コイル及びコイル88をまとめてコイルセットといえる。
上記アないしキ及び図1ないし5の記載を総合すると、引用例2には、「コイルセット」に関して、次の技術(以下「引用技術2」という。)が記載されている。
〔引用技術2〕
「スチールで作られた補強細線42a、42bの欠陥を検出するためのコイルセットが、スチールで作られた補強細線42a、42bの延びる方向に沿って一列に配置された、磁束P1、P2を発生する第1誘導コイルおよび第2誘導コイルと、前記第1誘導コイルと前記第2誘導コイルの中間に位置し、前記第1誘導コイルおよび前記第2誘導コイルから受けた磁束P1、P2に基づく信号を欠陥を検出するための信号として出力するコイル88と、を含むものである技術。」
3 引用例3
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2000-313583号公報(以下「引用例3」という。)には、「ハンドレール用スチールコードの診断方法および磁束変化検査装置」に関して、図面(特に、図10及び11参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0093】また、本実施形態では、範囲Cの上方にのみ励磁部6および検出部3を配置する構成を例に挙げたが、本発明は、これに限ることなく、例えば、図10,11に示すように、励磁部6および検出部3を範囲Cの上方と、範囲Dの上方とのそれぞれに配置し、これら範囲C、Dの上方のそれぞれの位置で磁束変化を検出するようにしてもよい。なお、図11に示す励磁部6がハンドレール2の走行方向にずらして配置してあるのは、互いに磁束の影響を受けないようにするためであり、このような配置に限らず、励磁部6を並列させて間にシールドを設けるようにしてもよい。」
イ 「【0099】また、請求項5に係る発明では、励磁部および検出部が、平坦部分の横幅全範囲を分割した複数の範囲のそれぞれの上方に配置される。これにより、複数の範囲のそれぞれに位置するスチールコードを一度に励磁するとともに、複数の範囲のそれぞれに位置するスチールコードによって生じる磁束変化のそれぞれを検出できる。したがって、短時間で簡単にハンドレールに埋め込まれるスチールコード全体を診断することができる。」
ウ 図10の記載からみて、範囲C及び範囲Dそれぞれが、ハンドレール2の幅方向にずらした位置に設定されていることが分かる。
上記アないしウ並びに図10及び11の記載を総合すると、引用例3には、次の技術(以下「引用技術3」という。)が記載されている。
〔引用技術3〕
「ハンドレール用スチールコードの検査装置において、短時間で簡単にハンドレールに埋め込まれるスチールコード全体を診断するために、複数の励磁部6および検出部3を、それぞれ検査対象のハンドレール2の幅方向にずらして配置する技術。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「エスカレータ」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「乗客コンベア」に相当し、以下同様に、「ハンドレールR」は「ハンドレール」に、「埋設」は「内蔵」に、「スチールワイヤW」は「スチールコード」に、「断線」は「劣化」に、「出力信号」は「検査データ」に、「ハンドレールRの探傷装置S」は「ハンドレール検査装置」にそれぞれ相当する。
後者の「センサ10」は、第1コイル12及び第2コイル13を含むものであるから、前者の「コイルセット」に相当する。
したがって、両者は、
「乗客コンベアのハンドレールに内蔵されたスチールコードの劣化に関する検査データを生成するハンドレール検査装置であって、
検査対象の前記ハンドレールと対向する面に、コイルセット
を備えた、
ハンドレール検査装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
〔相違点〕
本願発明は、「コイルセット」に関して、「前記ハンドレールの伸長方向に沿って一列に配置された、互いに逆向きの交流磁場を発生する第1発振コイルおよび第2発振コイルと、前記第1発振コイルと前記第2発振コイルの中間またはその近傍に位置し、前記第1発振コイルおよび前記第2発振コイルから受けた磁場に基づく磁場波形を前記検査データとして出力する受信コイルと、をそれぞれが含む複数の」ものであり、「複数の前記コイルセットそれぞれが、検査対象の前記ハンドレールの幅方向にずらして配置されている」のに対して、
引用発明は、「センサ10」は、「交流磁束を発生する第1コイル12および第2コイル13を含む」ものであるが、「センサ10」が複数のものであるか不明であり、また、「センサ10」のハンドレールRに対する配列が不明である点。
第6 判断
そこで、上記相違点を検討する。
引用技術2は、「スチールで作られた補強細線42a、42bの欠陥を検出するためのコイルセットが、スチールで作られた補強細線42a、42bの延びる方向に沿って一列に配置された、磁束P1、P2を発生する第1誘導コイルおよび第2誘導コイルと、前記第1誘導コイルと前記第2誘導コイルの中間に位置し、前記第1誘導コイルおよび前記第2誘導コイルから受けた磁束P1、P2に基づく信号を欠陥を検出するための信号として出力するコイル88と、を含むものである技術」である。
そして、引用技術2における「スチールで作られた補強細線42a、42b」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「スチールコード」に相当し、以下同様に、「欠陥」は「劣化」に、「延びる方向」は「伸長方向」に、「第1誘導コイル」は「第1発振コイル」に、「第2誘導コイル」は「第2発振コイル」に、「欠陥を検出するための信号」は「検査データ」に、「コイル88」は「受信コイル」に、「コイルセット」は「コイルセット」に相当する。
引用例2には、「細線42に欠陥がない場合」について「レシーバ部材74を通過する2つの磁束P1,P2は、点線で示されている2つの閉じられた磁気回路C1,C2に対応した基準信号と呼ばれる信号(起電力E0)を生じさせる。誘導部材68,70が厳密に互いに同一である場合、磁束P1,P2を生じさせる電圧の移送が正確に調整されると、基準信号(起電力E0)の値は、0に等しい。」(引用例2、段落【0058】)と記載されており、レシーバ部材74を通過する2つの磁束P1及び磁束P2が相殺し合い0となることが分かる。そして、引用技術2のコイルセットが渦流型の検査装置のものである(引用例2、段落【0050】)ことを踏まえると、引用技術2の第1誘導コイル及び第2誘導コイルが発生させる「磁束P1、P2」は本願発明の「互いに逆向きの交流磁場」又は単に「磁場」に相当する。
引用技術2の「中間」と本願発明の「中間またはその近傍」は、「中間」という限りで共通する。
引用技術2の「磁束P1、P2に基づく信号を欠陥を検出するための信号として」は、コイル88が受ける磁束P1、P2に基づくものであるから、本願発明の「磁場に基づく磁場波形を前記検査データとして」に相当する。
そうすると、引用技術2は、本願発明の用語で表すと、「スチールコードの劣化を検出するためのコイルセットが、スチールコードの伸長方向に沿って一列に配置された、互いに逆向きの交流磁場を発生する第1発振コイルおよび第2発振コイルと、前記第1発振コイルと前記第2発振コイルの中間に位置し、前記第1発振コイルおよび前記第2発振コイルから受けた磁場に基づく磁場波形を検査データとして出力する受信コイルと、を含むものである技術」といえる。
引用技術2のコイルセットは、コイルを用いて交流磁場を発生させることで、スチールコードの切れ目等の劣化(引用例2、段落【0002】)を検出するものであり、引用発明におけるセンサ10と機能が共通するものであるから、引用発明のセンサ10に引用技術2のコイルセットの構成を適用することは、当業者にとって、格別困難なことではない。
そして、引用技術2のコイルセットは、補強細線42a、42bの延びる方向に沿って一列に配置することで機能するものであるから、引用発明に適用する際には、スチールワイヤWの伸長方向とハンドレールの伸長方向とが同じである(引用例1、段落【0010】)ことからみて、スチールワイヤWの伸長方向に沿ってコイルセットを配置すると、ハンドレールの伸長方向に沿って配置するようになることは明らかである。
また、作業の効率化という一般的課題のもとで、短時間でハンドレールに埋設されたスチールワイヤ全体を検査するために、引用技術3の「ハンドレール用スチールコードの検査装置において、短時間で簡単にハンドレールに埋め込まれるスチールコード全体を診断するために、複数の励磁部6および検出部3を、それぞれ検査対象のハンドレール2の幅方向にずらして配置する技術」や、引用技術1の「センサ10を、検査対象のハンドレールRの幅方向に沿って複数設ける技術」を適用して、コイルセットを複数設け、それぞれを検査対象のハンドレールの幅方向にずらして配置することも、当業者にとって、格別困難なことではない。
そうしてみると、引用発明に引用技術1ないし3を適用して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明は、引用発明及び引用技術1ないし3から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用技術1ないし3に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-011135