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特許拒絶査定不服審判

2017-010263

はんだ合金、はんだボール、チップソルダ、はんだペースト及びはんだ継手

審判番号
2017-010263
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-044779外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年07月10日
審決日
2018年06月25日
公報発行日
2018年08月31日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
審判長/審判官
分類
P18 .113-WY (B23K) / P18 .121-WY (B23K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016- 44779「はんだ合金、はんだボール、チップソルダ、はんだペースト及びはんだ継手」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月14日出願公開、特開2017-159314、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成28年 3月 8日を出願日とする特許出願であって、平成28年12月 1日付けで拒絶理由が通知され、平成29年 2月 6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年 4月 4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同 7月10日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 その後、当審により、平成30年 3月20日付けで拒絶理由が通知され、同年 4月26日に意見書及び手続補正書が提出された。 第2 本願発明 本願請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明12」という)は、平成30年 4月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される発明であり、具体的には、以下のとおりである。 「 【請求項1】 Mnを0.005質量%以上0.1質量%以下、Geを0.001質量%以上0.05質量%未満、更に、Agを0質量%超4質量%以下、または、Cuを0質量%超1質量%以下で含み、残部をSnとした ことを特徴とするはんだ合金。 【請求項2】 Mnの量をGeの量以下とした ことを特徴とする請求項1に記載のはんだ合金。 【請求項3】 更に、P、Gaからなる群から選択される少なくとも1種を合計で0.002質量%以上0.1質量%以下で含む ことを特徴とする請求項1または2に記載のはんだ合金。 【請求項4】 更に、Ni、Co、Feからなる群から選択される少なくとも1種を合計で0.005質量%以上0.3質量%以下で含む ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のはんだ合金。 【請求項5】 更に、Bi、In、Sbからなる群から選択される少なくとも1種を合計で0.1質量%以上10質量%以下で含む ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のはんだ合金。 【請求項6】 請求項1~5のいずれか1項に記載のはんだ合金を使用した ことを特徴とするはんだボール。 【請求項7】 請求項1~5のいずれか1項に記載のはんだ合金を使用した ことを特徴とするチップソルダ。 【請求項8】 請求項1~5のいずれか1項に記載のはんだ合金を使用した ことを特徴とするはんだペースト。 【請求項9】 請求項1~5のいずれか1項に記載のはんだ合金を使用した ことを特徴とするはんだ継手。 【請求項10】 請求項6に記載のはんだボールを使用した ことを特徴とするはんだ継手。 【請求項11】 請求項7に記載のチップソルダを使用した ことを特徴とするはんだ継手。 【請求項12】 請求項8に記載のはんだペーストを使用した ことを特徴とするはんだ継手。」 第3 引用文献、引用発明等 1 原査定の拒絶の理由では、以下の各文献が引用された。 引用文献1(特開2001-129682号公報) 引用文献2(特開平9-155586号公報) 引用文献3(特開2003-1482号公報) 引用文献4(国際公開第2006/011204号) 以下、引用文献1について摘示する。 2 引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審による。「・・・」により記載の省略を示す。以下同様である。)。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】Sn-Cu基合金に、Mg、Al、Mn、Zn、La、Ta及びCeからなる群から選ばれた一種以上を含有させたことを特徴とする熱サイクル特性に優れたSn基Pbフリー半田。 【請求項2】前記Sn-Cu基合金が、Cu0.1~3.0wt%、残部Sn及び不可避の不純物よりなり、前記Mg、Al、Mn、Zn、La、Ta及びCeよりなる群から選ばれた一種以上を、0.001~0.1wt%含有させてなる請求項1に記載のPbフリー半田。 【請求項3】前記Sn-Cu基合金に、Sb1.0wt%以下(但し、0wt%を除く)含有させてなる請求項2に記載のPbフリー半田。 【請求項4】前記Sn-Cu基合金に、Ge、Ni及びCoの1種以上を0.01~1.0wt%含有させてなる請求項2又は3に記載のPbフリー半田。 【請求項5】前記熱サイクル特性の指標であるk値が、0.0150~0.0050である請求項1~5のいずれか1項に記載のPbフリー半田。」 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】従って従来公知のPbフリー半田は、低価格で原料の入手が容易であり、しかも機械的特性値に優れるという点で、未だ十分満足すべきものではない。 【0006】この発明のうち請求項1に記載の発明は、原料の入手が容易で且つ低価格という実用上の利点を有するSn-Cu基Pbフリー半田の利点を維持しつつ、その欠点である熱サイクル特性を改善したSn基Pbフリー半田を提供することを目的とする。 【0007】また請求項3に記載の発明は、上記目的に加えて、強度に優れたSn基Pbフリー半田を提供することを目的とする。」 「【0013】Mg、Al、Mn、Zn、La、Ta及びCeは、0.001wt%以上の微量の添加で熱サイクル特性を著しく改善するが、添加量が0.1wt%を越えると、半田合金の溶融時に半田の流動性を阻害する。このため、これら元素の添加範囲(複数添加する場合はその合計)を、0.001~0.1wt%とするのが良い。 【0014】また、Sbは熱サイクル特性を改善する作用をするものであるが、1.0wt%を越えると融点が上昇し、半田付け温度も上昇するため、実使用の観点から1.0wt%を上限とした。 【0015】Ge、Ni及びCoは熱サイクル特性の改善にはあまり寄与しないが、強度を改善する。含有量が0.01wt%以下では効果が少なく、また1.0wt%を越えると、融点が上昇し溶融半田の流動性が低下する。そのため、Ge、Ni、Coの添加範囲(複数添加する場合はその合計)を、0.01~1.0wt%と限定した。」 「【実施例】つぎに、実施例を挙げて、本発明を更に説明する。 【0017】次表1に示す実施例及び比較例の化学成分を含有し、残部がSn及び不可避の不純物であるはんだ合金を溶解し、溶湯温度300℃、鋳型温度50℃で鋳造し、機械加工によってJIS Z 2241の4号試験片を作成し、熱サイクル特性の指標としてk値(歪み速度感受性指数mのひずみ量依存性)を測定した。 ・・・ 【0022】 【表1】 【0023】 【表2】 」 3 引用文献1全体にわたって、元素の添加量は、「wt%」すなわち重量%で記載されていることを考慮すると、表1の数値も重量%を意味するものと認められる。 そして、実施例No.6の化学成分を含有し、残部がSn及び不可避の不純物であるはんだ合金に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 「Geを0.05重量%、Mnを0.02重量%、Cuを0.7重量%含み、残部がSn及び不可避の不純物である、はんだ合金。」 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1) 本願発明1と引用発明との対比 ア 両発明は、「Ge」と「Mn」と「Cu」を含み、残部に「Sn」を含む「はんだ合金」である点で共通する。 化学成分の含有量の単位に関し、本願発明1では「質量%」が用いられ、引用発明では「重量%」が用いられており、表記上は異なっているが、両単位の意味する内容が同一であることは当業者の技術常識である。そして、元素の含有量に関し、引用発明が「Mnを0.02重量%」含むこと、及び「Cuを0.7重量%」含むことは、それぞれ、本願発明1が「Mnを0.005質量%以上0.1質量%以下」で含むこと、及び「Cuを0質量%超1質量%以下」で含むことに包含される。 イ そうすると、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 (一致点)「Mnを0.02質量%で含み、Geを含み、更に、Cuを0.7質量%で含み、残部にSnを含む、はんだ合金。」 (相違点1)「Ge」の含有量に関し、本願発明1は「0.001質量%以上0.05質量%未満」であるのに対し、引用発明は「0.05重量%」である点 (相違点2)「残部」に関し、本願発明1は「Sn」であるのに対し、引用発明1は「Sn及び不可避不純物」である点 (2) 相違点1が実質的なものであるかどうかについて 本願発明1の「Ge」の含有量に関する「0.05質量%未満」という発明特定事項は、0.05重量%を含まないことは明らかであるから、相違点1は実質的なものである。 (3) 当業者が、引用発明に基づき、相違点1に係る構成を容易に想到し得たかどうかについて ア 本件明細書には、以下の記載がある。 (ア) 「【背景技術】 【0002】 電子部品をプリント基板に接合するために用いられるはんだは、一般にSnを主成分とするために、使用される前の保管状況によっては、はんだ表面にSnと空気中のO2が反応してSn酸化物による酸化膜が形成される。この傾向は、高温高湿な環境下で保管されている場合には、その表面に形成される酸化膜の膜厚は厚くなる傾向にあり、表面の光沢も無くなり、黄色の変色を引き起こす場合がある。はんだ表面に酸化膜が残っているとはんだ付け時にフラックスでの除去が困難になり、濡れ性が悪くなるため、その結果融合性が悪くなり、はんだ付け不良が発生する原因になる。 ・・・ 【0013】 特許文献1に記載のように、Snを主成分としたはんだ合金にGeを添加すると、高温環境下でははんだ表面の変色を抑制することはできると考えられる。しかしながら、Ge添加によっても、高温高湿環境下でのはんだ表面の変色を抑制することはできない。また、Snを主成分としMnが添加されたはんだ合金は、濡れ性が低下するため、特許文献1においても、GeとMnを組み合わせて添加した場合のそれぞれの添加量についての記載はなく、GeとMnの同時添加を想定していない。 【0014】 また、特許文献2には、Snを主成分としたはんだ合金にMnを添加すると、酸化膜表面の光学特性が変化し、表面が同じ厚さに酸化されても、色調が変化して黄変に至らないとの記載はある。しかし、Snを主成分としMnが添加されたはんだ合金では、高温環境下及び高温高湿環境下での変色を抑制することができず、濡れ性も低下する。 【0015】 以上のように、特許文献1及び特許文献2の何れも、開示された元素の中で、変色を抑制し、かつ、濡れ性の低下を抑制するという作用効果を得る特定の元素(Ge、Mn)の組み合わせについての記載はなく、特に、高温高湿環境においては、このような作用効果を得ることはできない。 【0016】 本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、変色が抑制され、かつ、濡れ性の低下が抑制されたはんだ合金、このはんだ合金を用いたはんだボール、チップソルダ、はんだペースト及びはんだ継手を提供することを目的とする。」 (イ) 「【課題を解決するための手段】 【0017】 本発明は、特定の元素としてMnとGeを所定量複合添加することによって、濡れ性の低下の抑制及び変色の防止を可能としたものである。MnはSnと比較して酸化物を生成しやすく、Mn酸化物の生成でSn酸化物の経時変化による酸化膜の成長を抑制できること、Ge酸化物には変色防止効果があることを見出してなされたものである。 ・・・ 【発明の効果】 【0030】 本発明では、Snを主成分としたはんだ合金において、Mnを0.005質量%以上0.1質量%以下、Geを0.001質量%以上0.1質量%以下、更に、Agを0質量%超4質量%以下、または、Cuを0質量%超1質量%以下で含むことで、Sn酸化物、Mn酸化物及びGe酸化物を含む酸化膜において、Ge酸化物が酸化膜の最表面側に多く分布し、高温高湿環境でも変色防止効果が得られる。また、Mnを含むことでSn酸化物の生成が抑制されるので、酸化膜厚の増加が抑制され、融合性を向上させることができる。 【0031】 更に、はんだ合金中に含まれる所定量のCuは、はんだ合金中に所定量のMn及びGeを含むことによる変色防止効果及び融合性向上の効果を阻害せず、はんだ合金中に含まれる所定量のMn及びGeは、はんだ合金中に所定量のCuを含むことによるCu食われを抑制する効果を阻害しない。 【0032】 また、はんだ合金中に含まれる所定量のAgは、はんだ合金中に所定量のMn及びGeを含むことによる変色防止効果及び融合性向上の効果を阻害せず、はんだ合金中に含まれる所定量のMn及びGeは、はんだ合金中に所定量のAgを含むことによる温度サイクル特性を向上させる効果を阻害しない。」 (ウ) 「【0048】 以下に、酸化物の生成過程について現在想定される考察に基づいて以下に説明する。Snを主成分としたはんだ合金として、Sn-Ag系、Sn-Cu系等のSn系のはんだ合金を例に説明する。 【0049】 (1)MnとGeを含むSn系のはんだ合金について(実施例) MnとGeを含むSn系のはんだ合金では、酸化物生成の初期状態においては、空気中のO2とはんだ合金中のSn、Mn及びGeが反応して、はんだ合金の表面にSn酸化物(SnOX)とMn酸化物(MnaOy)及びGe酸化物(GeOz)による酸化膜が生成される。 【0050】 このように初期状態で酸化膜が形成されたはんだ合金が、H2OやO2が所定量以上存在する高温高湿下に置かれると、はんだ合金の最表面側に形成されているSn酸化物とMn酸化物及びGe酸化物による酸化膜の一部が、高いエネルギーを持つH2Oにより破壊されると考えられる。 【0051】 酸化膜の一部が破壊されると、Sn酸化物とMn酸化物の標準生成自由エネルギーの大きさの関係から、Sn酸化物の生成が抑制されてMn酸化物が生成され、Mn酸化物が酸化膜の厚さ方向に対してほぼ均等に分布する。 【0052】 また、Snを主成分とし、所定量のMnとGeを含むはんだ合金では、酸化膜最表面側のSn酸化物は減少し、Ge酸化物が酸化膜の最表面側に偏って分布する。 【0053】 これにより、MnとGeを含むSn系のはんだ合金では、Sn酸化物の生成が抑制され、かつ、Ge酸化物が酸化膜の最表面側に偏って分布するので、Ge酸化物の変色防止効果によって、変色が抑制できる。 【0054】 (2)MnとGeを含まないSn系のはんだ合金(比較例) MnとGeを含まないSn系のはんだ合金では、酸化物生成の初期状態においては、空気中のO2とはんだ合金中のSnが反応して、はんだ合金の表面にSn酸化物(SnOX)による酸化膜が生成される。 【0055】 このように初期状態で酸化膜が形成されたはんだ合金が、高温下あるいは高温高湿下に晒されることにより、表面に形成された酸化膜の一部が破壊されると考えられ、はんだ合金中のSnとO2が反応し、更にSn酸化物が生成されると考えられる。 【0056】 これにより、MnとGeを含まないSn系のはんだ合金では、Sn酸化物が変色の要因となる。 【0057】 (3)Mnを含みGeを含まないSn系のはんだ合金(比較例) Mnを含みGeを含まないSn系のはんだ合金では、酸化物生成の初期状態においては、空気中のO2とはんだ合金中のSn及びMnが反応して、はんだ合金の表面にSn酸化物(SnOX)とMn酸化物(MnaOy)による酸化膜が生成される。 【0058】 このように初期状態で酸化膜が形成されたはんだ合金が、高温下あるいは高温高湿下に晒されることにより、表面に形成された酸化膜の一部が破壊されると考えられる。 【0059】 Sn酸化物とMn酸化物の標準生成自由エネルギーの大きさから、Sn酸化物の生成が抑制されてMn酸化物が生成される。 【0060】 しかし、Mn酸化物には変色防止効果が無く、Mnを含みGeを含まないSn系のはんだ合金では、Mn酸化物がSn酸化物と同様に変色してしまい変色を抑制することができない。 【0061】 (4)Geを含みMnを含まないSn系のはんだ合金(比較例) Geを含みMnを含まないSn系のはんだ合金では、酸化物生成の初期状態においては、空気中のO2とはんだ合金中のSn及びGeが反応して、はんだ合金の表面にSn酸化物(SnOX)とGe酸化物(GeOz)による酸化膜が生成される。 【0062】 このように初期状態で酸化膜が形成されたはんだ合金が、高温下あるいは高温高湿下に晒されることにより、表面に形成された酸化膜の一部が破壊されると考えられる。 【0063】 これにより、Geを含みMnを含まないSn系のはんだ合金では、Sn酸化物の成長による酸化膜の変色を抑制できない。」 (エ) 「【実施例】 【0064】 <変色防止効果の評価> 以下の表1に示す組成で実施例のはんだ合金を調合し、表2に示す組成で比較例のはんだ合金を調合し、表3に示す組成で参考例のはんだ合金を調合して、変色防止効果について検証した。なお、表1、表2及び表3における組成率は質量%である。 ・・・ 【0067】 (2)検証方法 以上のように作成された実施例と比較例及び参考例の各試料を高温環境及び高温高湿環境に保管して、変色の有無を確認した。保管条件は、高温高湿環境では、温度125℃、湿度100%RHで試料を24時間置いた。高温放置では、温度150℃で試料を7日間放置した。変色の確認は、KEYENCE製DESITAL MICROSCOPE VHX-500Fを使用して行った。確認の結果、変色が全く見られなかったものを◎、若干の光沢の変化が確認されたものを○、やや変色が見られたものを△、変色したものを×と評価した。 【0068】 【表1】 【0069】 【表2】 【0070】 【表3】 ・・・ 【0087】 所定量のMnとGeを含み、更にCuまたはAgを含み、残部をSnとした実施例1~8では、融合不良発生率は0であった。特に、Cuの含有量を所定の範囲で増やした実施例3でも、融合不良発生率は0であり、Cuの含有量が1質量%以下であれば、融合性が阻害されないことが判った。また、Agの含有量を所定の範囲で増やした実施例7でも、融合不良発生率は0であり、Agの含有量が4質量%以下であれば、融合性が阻害されないことが判った。 【0088】 また、所定量のMnとGeを含み、更にCuまたはAgを含み、更にP、Ga、Ni、Co、Fe、Bi、In、Sbの何れかあるいは全てを含み、残部をSnとした実施例9~26でも、融合不良発生率は0であった。 【0089】 更に、所定量のMnとGeを含み、残部をSnとした参考例1~9、所定量のMnとGeを含み、更にCu及びAgを含み、残部をSnとした参考例10~13でも、融合不良発生率は0であった。 【0090】 また、所定量のMnとGeを含み、更にP、Ga、Ni、Co、Fe、Bi、In、Sbの何れかあるいは全てを含み、残部をSnとした参考例14~22でも、融合不良発生率は0であった。 ・・・ 【0093】 所定量のMnとGeを含み、更にCuまたはAgを含み、残部をSnとした実施例1~8では、OSP処理されたCu板に対する濡れ性、Ni/Auめっき板に対する濡れ性とも、低下は見られなかった。 【0094】 特に、Cuの含入量を所定の範囲で増やした実施例3でも、OSP処理されたCu板に対する濡れ性、Ni/Auめっき板に対する濡れ性とも、低下は見られず、Cuの含有量が1質量%以下であれば、濡れ性が阻害されないことが判った。 【0095】 また、Agの含有量を所定の範囲で増やした実施例7でも、OSP処理されたCu板に対する濡れ性、Ni/Auめっき板に対する濡れ性とも、低下は見られず、Agの含有量が4質量%以下であれば、濡れ性が阻害されないことが判った。 【0096】 更に、所定量のMnとGeを含み、更にCuまたはAgを含み、更にP、Ga、Ni、Co、Fe、Bi、In、Sbの何れかあるいは全てを含み、残部をSnとした実施例9~26でも、OSP処理されたCu板に対する濡れ性、Ni/Auめっき板に対する濡れ性とも、低下は見られなかった。 【0097】 また、所定量のMnとGeを含み、残部をSnとした参考例1~9、所定量のMnとGeを含み、更にCu及びAgを含み、残部をSnとした参考例10~13でも、OSP処理されたCu板に対する濡れ性、Ni/Auめっき板に対する濡れ性とも、低下は見られなかった。 【0098】 更に、所定量のMnとGeを含み、更にP、Ga、Ni、Co、Fe、Bi、In、Sbの何れかあるいは全てを含み、残部をSnとした参考例14~22でも、OSP処理されたCu板に対する濡れ性、Ni/Auめっき板に対する濡れ性とも、低下は見られなかった。 ・・・ 【0102】 以上の結果から、Snを主成分とし、Mnを0.005質量%以上0.1質量%以下、Geを0.001質量%以上0.1質量%以下、更に、Agを0質量%超4質量%以下、または、Cuを0質量%超1質量%以下で含むはんだ合金では、MnとO2が反応してSnとO2の反応が抑制され、経時変化による酸化膜の最表面側へのSn酸化物の分布が抑制され、変色防止効果を有するGe酸化物を含む酸化膜が最表面側に残存することで、高温高湿環境でも変色防止効果が得られることが判った。好ましくは、MnとGeの含有量の比率をMn≦Geとすれば、高温高湿環境でも高温放置環境でもより良好な変色防止効果が得られることが判った。 【0103】 また、Snを主成分とし、上述した所定量のMnとGe、更にCuまたはAgを含むはんだ合金では、MnとO2が反応してSnとO2の反応が抑制され、Sn酸化物の成長が抑制されるので、酸化膜厚の増加を抑制できることが判った。酸化膜厚の増加を抑制することで、はんだ付け時にフラックスで酸化物の除去が十分に行え、融合性が向上する。」 イ 本件明細書の上記各記載に照らすと、本願発明1に関し、以下のことがいえる。 (ア) 本願発明1が解決しようとする課題は、高温高湿環境下においても、変色が抑制され、かつ、濡れ性の低下が抑制されたはんだ合金を提供することである(上記ア(ア))。 (イ) 本願発明1は、Snを主成分としたはんだ合金に所定量のMnとGeとが複合添加されたことにより、Sn酸化物、Mn酸化物及びGe酸化物を含む酸化膜において、Ge酸化物が酸化膜の最表面側に多く分布し、高温高湿環境でも変色防止効果が得られる。また、Mnを含むことでSn酸化物の生成が抑制されるので、酸化膜厚の増加が抑制され、融合性を向上させることができる(上記ア(イ)及び(ウ))。 (ウ) 更に、Ag又はCuを所定量添加したとしても、はんだ合金中に所定量のMn及びGeを含むことによる変色防止効果及び融合性向上の効果を阻害しない(上記ア(イ)及び(ウ))。 (エ) そして、実施例により、高温高湿環境で保管した場合(具体的には、「温度125℃、湿度100%RHで試料を24時間置いた」)においても、また、高温放置環境で保管した場合(具体的には「温度150℃で試料を7日間放置した」)においても、本願発明1の範囲に包含されるはんだ合金が、変色防止効果を奏することが実験的に裏付けられている。また、実施例により、本願発明1の範囲に包含されるはんだ合金が、良好な融合性及び濡れ性を示すことも実験的に裏付けられている(上記ア(エ))。 ウ 一方、引用文献1の各記載(前記第3の2)に照らすと、引用発明に関し、以下のことがいえる。 (ア) 引用発明が解決しようとする課題は、低価格で入手容易なSn-Cu基合金を使用し、熱サイクル特性を改善することである(段落【0005】~【0007】)。 (イ) 引用文献1において、MnとGeとが複合添加されているはんだ合金として具体的に開示されているのは、実施例No.6の化学成分を含有し残部がSn及び不可避の不純物であるはんだ合金(すなわち、引用発明のはんだ合金)のみである(段落【0017】、【0022】)。 (ウ) そして、引用発明のはんだ合金が含むMnは、引用文献1において、「0.001wt%以上の微量の添加で熱サイクル特性を著しく改善するが、添加量が0.1wt%を超えると、半田合金の溶融時に半田の流動性を阻害する」とされている七種の元素のうちの一つであり、また、引用発明のはんだ合金が含むGeは、引用文献1において、「強度を改善する」ものであって、「含有量が0.01wt%以下では効果が少なく、また1.0wt%を超えると、融点が上昇し溶融半田の流動性が低下する」とされている三種の元素のうちの一つである(段落【0013】、【0015】)。 (エ) 引用文献1には、本願発明1が奏する効果である、高温高湿環境でも高温放置環境でも変色防止効果が得られることや、良好な融合性及び濡れ性を示すことは、何ら記載も示唆もされていない。 エ 上記のイ及びウの検討を踏まえ、当業者が、引用発明に基づき、相違点1に係る構成を想到し得たかどうかについて検討する。 (ア) (解決しようとする課題) 上記イ(ア)によれば、本願発明1の解決しようとする課題は、高温高湿環境下においても、変色が抑制され、かつ、濡れ性の低下が抑制されたはんだ合金を提供することである。一方、上記ウ(ア)によれば、引用発明が解決しようとする課題は、低価格で入手容易なSn-Cu基合金を使用し、熱サイクル特性を改善することである。 そうすると、両発明は、解決しようとする課題が異なっている。 (イ) (MnとGeが複合添加される技術的意義) 上記イ(イ)によれば、本願発明1では、MnとGeの複合添加は、Sn酸化物、Mn酸化物及びGe酸化物を含む酸化膜において、Ge酸化物を酸化膜の最表面側に多く分布させることや、Sn酸化物の生成を抑制させることを意図したものであるといえる。一方、上記ウ(イ)及び(ウ)によれば、引用発明において、MnとGeの複合添加は、特段の技術的意義を見いだすことができるものではなく、低価格で入手容易なSn-Cu基合金に対し、熱サイクル特性を改善するための七種の元素のうちから選ばれた一つ(Mn)と、強度を改善するための三種の元素のうちから選ばれた一つ(Ge)が、たまたま同時に添加されたことによって実現した結果に過ぎない。 そうすると、両発明は、Snを主成分とするはんだ合金に対しMnとGeが複合添加される技術的意義が異なっている。 (ウ) (効果の予測性) 合金は、一般的に、その構成(成分及び組成範囲等)から、どのような特性を有するか予測することは困難であり、また、ある成分の含有量を増減したり、その他の成分を更に添加したりすると、その特性が大きく変わるものとされる。そして、上記ウ(エ)に示したとおり、引用文献1には、本願発明1が奏する効果である、高温高湿環境でも高温放置環境でも変色防止効果が得られることや、良好な融合性及び濡れ性を示すことは、記載も示唆もないものであるから、本願発明1が奏する前記効果は、引用文献1の記載や技術常識からは当業者が予測し得ない効果であるということができる。 (エ) (引用発明から本願発明1を想到するための動機付け) 当業者において、引用発明のGeの含有量を変化させることに着目する必然性はないから、その結果として、当然、Geの含有量である「0.05重量%」を、より小さい値に変更して「0.05質量%未満」とする積極的な動機付けは存在しない。 (オ) (判断) 上記(ア)~(ウ)を総合すると、本願発明1と引用発明は、解決しようとする課題、MnとGeが複合添加される技術的意義、及び効果が異なっている上に、本願発明1は引用文献1及び技術常識からは当業者が予測し得ない効果を奏するものであるから、両発明は、その技術的思想において顕著に異なるものであるといえる。 そして、引用発明において添加される元素の種類がたまたま本願発明1と一致したことにより、両発明に共通点が生じたものであると認められるが、両発明は「Ge」の含有量に関する相違点1において実質的に相違するものである上に、上記(エ)に示したとおり、当業者が相違点1に係る構成を想到するための動機付けは存在しない。 そうすると、当業者は、引用発明とは技術的思想が顕著に異なる本願発明1の相違点1に係る構成を、引用発明に基づき容易に想到し得たとはいえない。 (4) 本願発明1についてのまとめ ア 上記(2)で検討したとおり、本願発明1と引用発明は少なくとも相違点1において実質的に相違するものであるから、本願発明1は引用文献1に記載された発明ではない。 イ 上記(3)で検討したとおり、当業者が、引用発明に基づき、相違点1に係る構成を容易に想到し得たということはできない。また、原査定で引用された引用文献2~4の記載を精査しても、相違点1に係る構成を容易に想到し得たといえる根拠は見いだせない。そのため、相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づき、又は引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2~12について 本願発明2~12は、いずれも、本願発明1を引用するものであるから、本願発明1と同様の理由で、引用文献1に記載された発明ではない。 また、本願発明2~12は、引用文献1に記載された発明に基づき、又は引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 1 原査定は、請求項1、2、6~12に係る発明は、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから特許を受けることができないか、又は、引用文献1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 また、請求項4~12に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、請求項3~12に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載された周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 2 しかしながら、上記第4の1及び2で述べたとおり、本願発明1~12は、引用文献1に記載された発明でないし、引用文献1に記載された発明に基づき、又は引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審による拒絶理由通知(特許法第36条第6項第2号)について 1 平成30年3月20日付けの当審による拒絶理由通知は、概略、以下の(1)及び(2)のとおりである。なお、以下において「補正前の請求項」及び「補正後の請求項」は、それぞれ、平成30年 4月26日にされた手続補正による補正前及び補正後の請求項を意味する。 (1) 補正前の請求項3の記載は、「更に、P、Gaからなる群から選択される少なくとも1種を・・・とした・・・請求項1または2に記載のはんだ合金。」というものである。したがって、補正前の請求項3の記載によれば、請求項3に係る発明は、「請求項1または2に記載のはんだ合金」の「P」や「Ga」の含有量を更に限定するものであると解される。 しかしながら、補正前の請求項1や請求項2の記載によれば、「請求項1または2に記載のはんだ合金」は、「P」及び「Ga」を含まないものである。 そうすると、補正前の請求項3は、引用元の請求項に記載の「はんだ合金」が含まないはずの元素である「P」や「Ga」の含有量を更に限定する記載となっているから、補正前の請求項3に係る発明は、具体的に何を限定しようとするものであるのかが不明である。 よって、補正前の請求項3に係る発明は明確でない。 (2) 補正前の請求項4の記載は、「更に、Ni、Co、Feからなる群から選択される少なくとも1種を・・・とした・・・請求項1~3のいずれか1項に記載のはんだ合金。」というものであり、補正前の請求項5の記載は「更に、Bi、In、Sbからなる群から選択される少なくとも1種を・・・とした・・・請求項1~4のいずれか1項に記載のはんだ合金。」というものである。 前記(1)での検討と同様に、補正前の請求項4及び5についても、引用元の請求項に記載の「はんだ合金」が含まないはずの元素の含有量を更に限定する記載となっているから、請求項4及び5に係る発明は、具体的に何を限定しようとするものであるのかが不明である。 よって、補正前の請求項4、5に係る発明は明確でない。 2 これに対し、特許請求の範囲は、前記第2のとおり補正された。これにより、補正後の請求項3~5に係る発明は、引用元の請求項に係る発明の「はんだ合金」が含まない元素を、更に所定の量だけ含むことを限定するものであることが明確になった。 よって、前記1の拒絶理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1~5は、引用文献1に記載された発明ではないし、引用文献1に記載された発明に基づき、又は引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載された周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-010263

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