特許拒絶査定不服審判
2017-009163
電子レンジ用紙カップ
- 審判番号
- 2017-009163
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-040776外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年06月22日
- 審決日
- 2018年10月30日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 40776「電子レンジ用紙カップ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日出願公開、特開2014-169095〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は、平成25年 3月 1日に出願された特願2013-40776号であって、その後の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成28年11月18日付け:拒絶理由通知
平成29年 1月19日:意見書及び手続補正書の提出
平成29年 3月22日付け:拒絶査定
平成29年 6月22日:審判請求書及び手続補正書の提出
平成30年 4月25日付け:拒絶理由通知
平成30年 6月26日:意見書の提出
第2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明は、上記平成29年 6月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
円筒状の胴部材とフラットな底部材とから構成され,上記胴部材の下端が上記底部材の内面に当り,
上記底部材の周縁部が立上げられ,上記底部材の周縁部の立上げ部の内面と上記胴部材の下部外面とが互いに接合されている,
電子レンジ用紙カップ。」
第3.拒絶の理由
平成30年 4月25日付けで当審が通知した拒絶の理由は、次のとおりのものである。
本願発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2002-177139号公報
引用文献2.実願平2-75509号(実開平4-32913号)のマイク ロフィルム (周知技術を示す文献としても)
第4.引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1について
当審が通知した拒絶の理由で引用された特開2002-177139号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「【0004】・・・しかしながら、前記従来の紙カップ容器を使用した即席食品などに、水を注加して電子レンジで長時間加熱調理すると紙カップ容器の容器底部、特に糸尻部が焼き焦げ、危険かつ見栄えが悪く使用に耐えないという問題があった。」
(2)「【0007】また、本発明による電子レンジ調理用紙カップ容器は、請求項2に記載したように、胴部材と底部材を固着してなる紙カップ容器であって、容器底面が平面状になるように胴部材と底部材を固着成形したことを特徴としている。容器底面が平面状になるように胴部材と底部材を固着成形し、糸尻部がなくなるように構成すると、水を注加した際に容器底部近傍に水が行き渡りマイクロ波が前記記載の通り、注加された水に吸収され底部材自体の電界が弱くなり、また、底部材に接する水の冷却効果により、電子レンジ加熱調理しても容器底部の温度上昇が起きにくくなり、容器底部の焦げの発生を防止できる。」
(3)「【0012】また、図2乃至図5は本発明容器の他の実施例を示した断面図である。図2の紙カップ容器1は、胴部材2と底部材3とからなり、容器底面7が平面状になるように胴部材2の下端部と底部材3の周縁部を互いに折り曲げ組み合わせて固着成形する。胴部材2と底部材3を固着する際、例えば、図2のように組み合わせた構成にすると水の浸透を防ぎ、漏れを防止することができて好ましい。」
(4)「【図2】
」
(5)「【図5】
」
(5)で、矢印8が指し示す部分では、4層の部材が接合している。
底部材3は、その周縁部で折れ曲がって立ち上がっている。よって、この折れ曲がった箇所から先の部分、すなわち、4層の部材のうち右から1番目の層及び3番目の層は「底部材3の周縁部の立上げ部」であるといえる。
また、4層の部材のうち右から2番目の層及び4番目の層は、胴部材2のうち上下方向で下の方にある部分であるから、「胴部材2の下部」であるといえる。
したがって、右から3番目の層と右から2番目の層の接合は、「底部材3の周縁部の立上げ部」の内面と「胴部材2の下部」の外面とが互いに接合されたものであるといえる。
上記(1)~(5)より、引用文献1には以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「胴部材2とフラットな底部材3とから構成され,胴部材2の最下部が底部材3の内面に当り,
底部材3の周縁部が立上げられ,底部材3の周縁部の立上げ部の内面と胴部材2の下部外面とが互いに接合されている,
電子レンジ調理用紙カップ容器1。」
2.引用文献2について
当審が通知した拒絶の理由で引用された実願平2-75509号(実開平4-32913号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「本考案は、麺類や汁物などの容器に関するもので、特に、そのまま電子レンジで加熱できる食器として利用される容器に関するものである。」(明細書第1ページ第12行~第14行)
(2)「図中1は複合容器で、該複合容器1は、第1図に示すように、上端部2と胴部3と底部4との三部材を結合してなるものである。そして前記上端部2は合成樹脂成形品から設けられ枠状を呈している。胴部3は表面に合成樹脂層を有した紙製品であって略筒状に形成されていて、前記上端部2の下周縁20がこの胴部3の上周縁30にウエルダー加工(超音波溶着)やヒートシール加工により結合されている。また底部4も上端部2と同様に合成樹脂成形品からなるものであって、容器として必要とされる脚などを一体に備えた形状で成形されている。そしてこの底部4の上周縁40が前記胴部3の下周縁31にウエルダー加工などにより結合されている。
上端部2と胴部3、胴部3と底部4のそれぞれの結合は、例えば第2図・・・に示すように、胴部3の上周縁30を容器外方に張り出すように加工し(プレカール加工)、これを上端部2の下周縁20に外面側から結合させ、胴部3の下周縁31ではこれを容器内方側に張り出すように加工し、底部4の上周縁に40に内面側から結合させたり(第2図)、・・・するなど、前記胴部3の上周縁30および下周縁31を対応部分の形状に合わせて加工して結合される。」(明細書第4ページ第1行~第5ページ第9行)
(3)「第1図
」
(4)「第2図
」
したがって、引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「胴部3と底部4とから構成される電子レンジ調理用容器において、胴部3の下周縁31が底部4の上周縁41の内面に当る接合構造。」
第5.対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
引用発明の「胴部材2」及び「底部材3」は、各々、本願発明の「胴部材」及び「底部材」に相当する。
引用発明の「電子レンジ調理用紙カップ容器1」は、本願発明の「電子レンジ用紙カップ」に相当する。
よって、本願発明と引用発明は、以下の構成において一致する。
「胴部材とフラットな底部材とから構成され,上記胴部材の下方の箇所が上記底部材の内面に当り,
上記底部材の周縁部が立上げられ,上記底部材の周縁部の立上げ部の内面と上記胴部材の下部外面とが互いに接合されている,
電子レンジ用紙カップ。」
そして、本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明は、胴部材が円筒状であるのに対して、引用発明は、胴部材2の断面形状が同文献の図2に記載されているとおりのものであるものの、胴部材2が円筒状であるかどうかは不明である点。
[相違点2]
本願発明は、胴部材の下端が底部材の内面に当るのに対して、引用発明は、胴部材2の最下部が底部材3の内面に当るものの、胴部材2の端部は上方に折り返されることにより最下部よりも上方に位置し、底部材3の内面には当らない点。
第6.判断
1.相違点1について
電子レンジ調理用容器の胴部を円筒状のものにすることは、本願出願前に周知である(例えば、第4.2.(3)で摘記した、引用文献2の第1図の記載などを参照。)。引用発明の胴部材2の形状は不明であるが、これを周知の円筒状とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
2.相違点2について
引用文献2には、「胴部3と底部4とから構成される電子レンジ調理用容器において、胴部3の下周縁31が底部4の上周縁41の内面に当る接合構造。」が記載されている。
引用発明と引用文献2に記載された事項は、胴部と底部とが別々の部材から構成される電子レンジ用容器である点で共通する。
また、引用発明は、第4.1.(3)で摘記したように「水の浸透を防ぎ、漏れを防止する」ということを意図した発明である。そして、引用文献2に記載された事項は、第4.2.(1)で摘記したように「麺類や汁物などの容器」を対象としているから、引用発明と同様の「水の浸透を防ぎ、漏れを防止する」ということを意図していることは明らかである。
よって、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用し、胴部材2の下端が底部材3の内面に当るようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
3.平成30年6月26日付け意見書での主張について
(1)請求人は、同意見書において、「3.本願に対する拒絶理由は引用文献1の認定を誤っている。・・・矢印8で示される部分の右から1番目の層が底部材3の周縁部から立上っているから,「立上げ部」である。右から3番目の層は「底部材の周縁部の立上げ部」ではなく,右から1番目の立上げ部からの「折り返し部」である。本願発明では「折り返し部」に相当する部分は存在しない。」と主張している。
しかし、底部材3はその周縁部で折れ曲がって立ち上がっているが、この折れ曲がった箇所から先の部分は、「底部材3の周縁部の立上げ部」といえる。よって、右から1番目の層だけでなく、右から3番目の層も、「底部材3の周縁部の立上げ部」であるといえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(2)請求人は、同意見書において、「3.本願に対する拒絶理由は引用文献1の認定を誤っている。・・・矢印8で示される部分の右から2番目の層もまた,「折り返し部」である。この右から2番目の層(「折り返し部」)のみが「胴部材2の下部」に相当するのではなく,むしろ最も左側の層が「胴部材2の下部」というのにふさわしいし,右から2番目の層に言及するのであれば,最も左側の層と右から2番目の層をまとめて「胴部材2の下部」というべきである。」と主張している。
ここで、「下部」というのは「下の方の部分」という意味であるから、「胴部材2の下部」というのは、胴部材2の下の方の部分を広く指す。
引用発明においては、右から2番目の層及び4番目の層(請求人の言う「最も左側の層」)は胴部材2の下の方の部分に該当するから、どちらも「胴部材2の下部」であるといえる。
この点、請求人自身も上記主張において、右から2番目の層が「胴部材2の下部」であることを認めており、この認識は拒絶理由における引用文献1の認定と矛盾するものではない。
(3)請求人は、同意見書において、「4.拒絶理由通知書における<相違点1>,<相違点2>の認定は正しい。相違点2について言及しておけば,引用文献1に関して,「胴部材2の端部は上方に折り返されることにより最下部よりも上方に位置し、底部材3の内面には当らない」と述べ,右から2番目の層が「折り返し部」であることを明示している。そうであるならば,右から3番目の層についても,底部材3の立上げ部から折り返されているのでこれは「底部材3の周縁部の立上げ部」ではない,と認定すべきである。拒絶理由通知書は,一致点の評価(引用文献1の記載の認定)と相違点の評価とにおいて一貫性がないのである。」と主張している。
しかし、 平成30年4月25日付け拒絶理由通知書には「<相違点2>・・・引用文献1に記載された発明は、胴部材2の最下部が底部材3の内面に当るものの、胴部材2の端部は上方に折り返されることにより最下部よりも上方に位置し、底部材3の内面には当らない点。」と記載されており、請求人が主張するような「折り返し部」という記載は存在しておらず、右から2番目の層が「折り返し部」であることは明示されていない。
そして、底部材3はその周縁部で折れ曲がって立ち上がっているが、この折れ曲がった箇所から先の部分は、「底部材3の周縁部の立上げ部」といえる。よって、右から1番目の層だけでなく、右から3番目の層も、「底部材3の周縁部の立上げ部」であるといえる。
したがって、上記請求人の主張は採用できない。
(4)請求人は、同意見書において、「5.・・・引用文献1に引用文献2を適用すること自体ができないのである。そもそも4層構造のものを2層構造の引用文献2,第1図,第2図と対応させたり,適用したりすること自体が不可能である。」と主張している。
しかし、引用発明と引用文献2に記載された事項は、胴部と底部とが別々の部材から構成される電子レンジ用容器である点で共通する。
また、引用発明は、第4.1.(3)で摘記したように「水の浸透を防ぎ、漏れを防止する」ということを意図した発明である。そして、引用文献2に記載された事項は、第4.2.(1)で摘記したように「麺類や汁物などの容器」を対象としているから、引用発明と同様の「水の浸透を防ぎ、漏れを防止する」ということを意図していることは明らかである。
よって、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用し、胴部材2の下端が底部材3の内面に当るようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、上記請求人の主張は採用できない。
(5)請求人は、同意見書において、「5.・・・さらに,引用文献2に記載の胴部3の下周縁31は,符号31で指し示された部分をみれば分るように,面であって,本願発明における「胴部材の下端」とは異なる。本願発明では,「円筒状の胴部材の下端」と規定されているものであって,引用文献2に記載の底部4の上周縁40と胴部3の下周縁31のように「ウェルダー加工などにより結合される」(引用文献2,4頁12行~14行)ことができない「端」であり,だからこそ「底部材の内面に当」っているのである。本願発明では接合(結合)は底部材の周縁部の立上げ部の内面と胴部材の下部外面との間で実現されているのである。」と主張している。
しかし、第4.2.(3)及び(4)で摘記したように、引用文献2のおける「胴部3」は「円筒状」である。そして、その「下周縁31」は、上下方向において最も下側に位置しているのであるから、「下端」であると評価できるものである。また、本願発明の「接合」がウエルダー加工による接合を排除しているわけではないから、請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基づくものでない。
したがって、上記請求人の主張は採用できない。
第7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに引用文献2に記載された技術事項及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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