特許拒絶査定不服審判
2017-008885
分散型スペクトル分析器及びそれを応用したスペクトル分析の方法
- 審判番号
- 2017-008885
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-511900外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年06月19日
- 審決日
- 2018年08月20日
- 公報発行日
- 2018年10月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】大唐移動通信設備有限公司
- 【請求人代理人】SK特許業務法人
- 【請求人代理人】奥野 彰彦
- 【請求人代理人】伊藤 寛之
- 分類
- P18 .121-WY (G01R) / P18 .537-WY (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-511900「分散型スペクトル分析器及びそれを応用したスペクトル分析の方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月19日国際公開、WO2013/185436、平成27年 7月27日国内公表、特表2015-521285、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年11月23日(パリ条約による優先権主張 2012年6月12日(以下、「優先日」という。) 中国)を国際出願日とする出願であって、平成28年6月9日付け拒絶理由通知に対して、平成28年9月15日付けで手続補正がなされたが、平成29年2月14日付けで拒絶査定(謄本送達日 平成29年2月21日)(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対し、平成29年6月19日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成30年4月9日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年6月15日付けで手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、平成30年6月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、8は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
分散型スペクトル分析器において、
少なくともホストコンピュータと一つ以上の無線受信機を備え、
前述無線受信機は、無線周波信号を受信し、前述無線周波信号に対し周波数変換処理及びアナログ/デジタルAD変換を行い、AD変換されたデジタル信号がデジタル光モジュールにより、光ファイバーを経て前述ホストコンピュータに送信されるように配置され、
前述ホストコンピュータは、デジタル信号処理モジュールと、一つ以上のデジタル光モジュールを備えており、各前述デジタル光モジュールは光ファイバーを経て一つの前述無線受信機のデジタル光モジュールに接続され、かつ前述無線受信機から送信された前述AD変換されたデジタル信号を受信するように配置され、前述デジタル信号処理モジュールは受信した前述AD変換されたデジタル信号に対しスペクトル分析処理を行うように配置され、前述ホストコンピュータは、制御情報を前述ホストコンピュータのデジタル光モジュールから光ファイバーを経て相応する前述無線受信機のデジタル光モジュールに送信し、
前述ホストコンピュータは、さらに、
受信された操作指令に基づいて、起動する必要がある無線受信機を選択して、前述デジタル信号処理モジュールに相応する制御指令とデータ情報を送信するように配置されるマスタ制御モジュール、
タイマ信号を出力するように配置されるタイマ、
それぞれで前述各デジタル光モジュールに接続して、前述デジタル信号処理モジュールから転送された制御指令とデータ情報、及び前述タイマから出力されたタイマ信号を起動する必要がある無線受信機に対応する前述デジタル光モジュールに送信し、前述デジタル光モジュールより光ファイバーを経て前述タイマ信号、前述制御指令と前述データ情報を含むデジタル光信号を相応する前述無線受信機に送信するように配置されて、また、各前述デジタル光モジュールから転送されたAD変換後のデジタル信号を前述デジタル信号処理モジュールに送信し処理するように配置されるFPGA、
を備えていることを特徴とする分散型スペクトル分析器。」
「【請求項8】
分散型スペクトル分析器を応用したスペクトル分析の方法において、少なくとも
各要解析無線周波信号源のそれぞれの位置に相応するタイプの無線受信機を配置し、
各無線受信機をそれぞれに光ファイバーを通してホストコンピュータ上の相応するタイプのデジタル光モジュールに接続し、
前述ホストコンピュータと相応する前述無線受信機を起動させ、操作指令を入力し、前述ホストコンピュータが前述無線受信機から送信されたAD変換されたデジタル信号を受信するように配置され、スペクトル分析処理を行う、スペクトル分析の方法。」
本願発明2-7は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明9-10は、本願発明8を減縮した発明である。
第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2008-111832号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
「【請求項12】
スペクトラムアナライザにより、入力信号の周波数毎の信号成分を計測するスペクトラムアナライズ方法であって、
指定された周波数のローカル信号を発生し、
前記ローカル信号と前記入力信号とを乗算した合成信号を出力し、
前記合成信号の所定の周波数帯域の信号成分を通過させ、
通過された信号成分をサンプリングしてデジタル化したデジタル出力信号を出力し、
前記入力信号の測定周波数範囲内の信号成分を通過させ、通過させた信号成分から得られた前記デジタル出力信号に基づき第1周波数スペクトラムを生成し、
生成された前記第1周波数スペクトラムに基づき、ノイズを除去した周波数スペクトラムを生成する、
スペクトラムアナライズ方法。」
「【0001】
本発明は、スペクトラムアナライザ、スペクトラムアナライズ方法およびプログラムに関する。特に本発明は、入力信号の周波数毎の信号成分を計測するスペクトラムアナライザ、スペクトラムアナライズ方法およびプログラムに関する。」
「【0013】
図1は、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ10の構成を示す。スペクトラムアナライザ10は、ローカル信号発生部20と、乗算部22と、バンドパスフィルタ24と、AD変換部26と、スペクトラム生成部28と、除去部30と、出力部32とを備え、入力信号の周波数毎の信号成分を計測する。そして、スペクトラムアナライザ10は、計測した結果に基づき、入力信号の測定周波数範囲内の各周波数に対する信号レベルを表す周波数スペクトラムを出力する。
【0014】
ローカル信号発生部20は、指定された周波数のローカル信号を発生する。ローカル信号発生部20は、基準クロック発生部40と、同期部41とを有する。基準クロック発生部40は、基準周波数の基準クロックを発生する。同期部41は、基準クロックの基準周波数に小数点以下の精度を有する倍数を乗じたローカル周波数のローカル信号を出力する。例えば、Nを1以上の整数、Fを0以上1以下の値とした場合、同期部41は、一例として、基準周波数の(N+F)倍のローカル周波数のローカル信号を出力してよい。」
「【0021】
乗算部22は、ローカル信号と入力信号とを乗算した合成信号を出力する。これにより、乗算部22は、入力信号をローカル周波数分周波数シフトした合成信号を出力することができる。バンドパスフィルタ24は、合成信号の所定の周波数帯域の信号成分を通過させる。これにより、バンドパスフィルタ24は、入力信号におけるローカル周波数により定まる周波数の信号成分を通過させることができる。
【0022】
AD変換部26は、バンドパスフィルタ24より通過された信号成分をサンプリングしてデジタル化したデジタル出力信号を出力する。AD変換部26は、一例として、AD変換器52と、記憶部54とを有してよい。AD変換器52は、所定のサンプリング周波数でバンドパスフィルタ24により通過された信号をサンプリングしたデジタル出力信号を出力する。記憶部54は、AD変換器52から出力されたデジタル出力信号を順次に記憶する。」
「【0025】
さらに、スペクトラム生成部28は、ローカル信号の周波数を離散的に順次変化させることにより入力信号を周波数方向に掃引して、入力信号の測定周波数範囲内の各周波数の信号成分をバンドパスフィルタ24より通過させ、通過させた信号成分をAD変換部26にサンプリングさせる。そして、スペクトラム生成部28は、AD変換部26によりサンプリングされた測定周波数範囲内の各周波数の信号成分のデジタル出力信号に基づき、周波数スペクトラムを生成する。」
上記記載より、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献2の記載箇所を示す。)。
「スペクトラムアナライザにより、入力信号の周波数毎の信号成分を計測するスペクトラムアナライズ方法であって(【請求項12】、【0001】)、
スペクトラムアナライザ10は、ローカル信号発生部20と、乗算部22と、バンドパスフィルタ24と、AD変換部26と、スペクトラム生成部28と、除去部30と、出力部32とを備え(【0013】)、
ローカル信号発生部20は、指定された周波数のローカル信号を発生し(【0014】)、
乗算部22は、ローカル信号と入力信号とを乗算した合成信号を出力し、
バンドパスフィルタ24は、合成信号の所定の周波数帯域の信号成分を通過させ(【0021】)、
AD変換部26は、バンドパスフィルタ24より通過された信号成分をサンプリングしてデジタル化したデジタル出力信号を出力し(【0022】)、
スペクトラム生成部28は、AD変換部26によりサンプリングされた測定周波数範囲内の各周波数の信号成分のデジタル出力信号に基づき、周波数スペクトラムを生成することにより(【0025】)、
入力信号の周波数毎の信号成分を計測し、計測した結果に基づき、入力信号の測定周波数範囲内の各周波数に対する信号レベルを表す周波数スペクトラムを出力する(【0013】)、
スペクトラムアナライズ方法。」
2 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(米国特許出願公開第2008/0175210号明細書)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「[0020] FIG. 2 is a block diagram of a distributed spectrum analyzer system (“DSAS”) 11 according to an exemplary embodiment. A DSAS 11 uses a plurality of RF-enabled devices 13 to measure the RF environment of a building area or zone 12. The RF-enabled devices 13 are communicably connected to a controller system 14. By distributing the plurality of RF-enabled devices 13 around the building area 12, the controller system 14 may conduct RF spectrum analysis on the entirety of building area 12. 」
(当審訳:図2は、例示的な実施形態による分散スペクトル分析システム(“DSAS”)11のブロック図である。DSAS11は、複数のRF対応デバイス13を使用して、建物領域またはゾーン12のRF環境を測定する。RF対応デバイス13は、コントローラシステム14に通信可能に接続される。複数のRF対応デバイス13をビルディング領域12の周囲に分散させることによって、コントローラシステム14は、ビルディング領域12全体にRFスペクトル分析を行うことができる。)
「[0025] Referring to FIG. 3, in an exemplary embodiment, each RF-enabled device 13 includes an RF transceiver module 21, a micro-controller 22, a memory or storage portion 23, a building sensor/actuator 24. The RF transceiver module 21, the memory storage portion 23, and the building sensor/actuator are all operatively connected to micro-controller 22. In an exemplary embodiment, the RF transceiver module 21 is configured to both send and receive non-measurement building management information (e.g., relay information, information from the sensor/actuator) when operating in its usual or normal mode (i.e., when serving its primary building management function). When operating in its measuring mode, the RF transceiver module 21 is used to serve as a spectrum analyzer or measurement module. The information extracted by the RF transceiver module 21 while in measuring mode is measured radio frequency information. Measured radio frequency information is information regarding the radio frequency environment of the building zone and related to the purposes of a distributed spectrum analyzer system. Measured radio frequency information will normally not consist of radio frequency information received for the purpose of conducting regular network data communications. The measured radio frequency information extracted by the RF transceiver module 21 in measuring mode may include radio frequency signal to noise ratios, peak energy levels of channel samples, average energy over time, the nature of the measured energy (e.g., ZigBee related or not), the number of samples on each frequency, the average channel density, etc. When the RF-enabled device 13 has completed its measurement related duties, the RF transceiver module 21 may send measurement information and resume the transmission and reception of network-related commands. The measurement information sent from the transceiver 21 may include any information actually measured during the measuring mode, or information compiled or calculated by the micro-controller 22. 」
(当審訳:図3を参照すると、.例示的な実施形態において、各RF対応デバイス13は、RFトランシーバモジュール21、マイクロコントローラ22、メモリまたは記憶部23、建物センサ/アクチュエータ24を含む。RFトランシーバモジュール21、メモリ記憶部23、および建物センサ/アクチュエータは全て、マイクロコントローラ22に動作可能に接続される。例示的な実施形態では、通常モードまたは標準モードで動作する場合、RFトランシーバモジュール21は、非測定ビルディング管理情報(例えば、中継情報、センサ/アクチュエータからの情報)を送信および受信するように構成されている(すなわち、ビル管理機能を果たす場合)。測定モードで動作する場合、RFトランシーバモジュール21は、スペクトラム分析器または測定モジュールとして機能するために使用される。測定モードの間、RF送受信モジュール21により抽出された情報は、無線周波数情報を測定する。測定された無線周波数情報は、建物ゾーンの無線周波数環境に関する情報であり、分散スペクトル分析システムの目的に関連する。測定された無線周波数情報は通常、通常のネットワークデータ通信を実施するために受信された無線周波数情報から構成されない。測定モードにおいてRFトランシーバモジュール21によって抽出された測定された無線周波数情報は、無線周波数信号対ノイズ比、チャネルサンプルのピークエネルギーレベル、時間にわたる平均エネルギー、測定されたエネルギーの性質(例えば、ZigBee関連等)、各周波数毎のサンプル数、平均チャネル密度等を含むことができる。RF対応デバイス13がその測定関連任務を完了すると、RFトランシーバモジュール21は、測定情報を送信し、ネットワーク関連コマンドの送信および受信を再開することができる。トランシーバ21から送信される測定情報は、測定モード中に実際に測定された情報、またはマイクロコントローラ22によってコンパイルまたは計算された情報を含む。)
上記記載より、引用文献1には、次の技術が記載されている。
「コントローラシステム14が、RFトランシーバモジュール21を含む、複数のRF対応デバイス13を分散させることによって、RFスペクトル分析を行うことができるものにおいて、
RFトランシーバモジュール21は、無線周波数信号対ノイズ比、チャネルサンプルのピークエネルギーレベル、時間にわたる平均エネルギー、測定されたエネルギーの性質、各周波数毎のサンプル数、平均チャネル密度等の無線周波数情報を測定し、測定情報を送信する技術。」
3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平9-305430号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0010】《形態例の構成》以下、本発明を図面に示した形態例に基づいて詳細に説明する。図1は上述した基本原理を用いた本発明による通信システムの一形態例を示すブロック図である。この図に示す通信システム1は、各検知対象部分に配置される第1~第Nセンサモジュール2a~2nと、集中管理室内などに配置されるホストコンピュータ装置3と、これら第1~第Nセンサモジュール2a~2nとホストコンピュータ装置3とを接続する光ファイバケーブル4とを備えており、第1~第Nセンサモジュール2a~2nで検知対象となる事象、例えばドアの開閉、人の出入りなどを検出し、これをバウンダリスキャン素子(バウンダリスキャンテスト法をサポートしている集積回路)の入出力機能を利用して出力信号にした後、光信号に変換して、シリアル伝送方式でホストコンピュータ装置3に伝送する。」
4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(米国特許出願公開第2012/0020397号明細書)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「[0083] FIG. 6 shows the functional block diagram of the SI-based spectrum analyzer 600 configured for standard FFT-based processing. As shown in the figure, the input signal conditioning emulates the typical RF front end of high-performance spectrum analyzers. A Low Noise Amplifier (LNA) 602 can be switched into the signal path to provide a low DANL (Displayed Average Noise Level), an adjustable attenuator 604 can adjust the attenuation (0-70 dB) to accommodate large amplitude input signals, and a selectable and tunable YIG-based pre-selector filter 606 can eliminate alias signals, control bandwidth and suppress spurious signals. After signal conditioning, the input signal is down converted by the PMI RF down converter 608 and digitized by a wideband 610 or narrowband digitizer 612 depending on the desired resolution bandwidth and routed to the signal processing module 614. In the FPGA processing module 614 the sampled signal is filtered and standard FFT processing is performed, averaged and transmitted to the SIU's embedded controller for display and data processing.」
(当審訳:図6は、標準的なFFT処理のために構成されたSIベースのスペクトラム・アナライザ600の機能ブロック図を示している。同図に示すように、入力信号の調整は、高性能スペクトラムアナライザの典型的なRFフロントエンドをエミュレートする。低雑音増幅器(LNA)602は、信号経路に切り替える低DANL(表示された平均雑音レベル)を得ることができる、調整可能な減衰器604は、減衰(0-70 dB)を調整し、振幅の大きい入力信号に適応することができ、選択及び同調可能なYIGベースのプリセレクタ・フィルタ606は、エイリアス信号を除去し、帯域幅を制御し、偽信号を抑制することができる。信号調整後、入力信号はダウンPMI RFダウンコンバータ608によって変換され、所望の分解能帯域幅に応じて、広帯域610または狭帯域デジタイザ612によってデジタル化され、信号処理部614に送られる。FPGA処理モジュール614において、サンプリングされた信号がフィルタリングされ、実行され、平均化され、表示及びデータ処理のためのSIUの埋め込みコントローラに送信される標準的なFFT処理をする。)
5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2000-286902号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0016】次に動作について説明する。図5(a)で示された信号を入力とするBPF23の中心周波数は、信号の周波数に等しい。 従って、BPF23は信号と同じ周波数のクロック成分を抽出し、その出力波形は図5(b)のようになる。但し、 BPF23のQ値は、BPF23の出力信号に含まれるジッタ成分が後述するPLL25の出力信号に含まれるジッタ成分より多くなるように設定されている。」
6 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2000-131356号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0008】更に、一定間隔でスペクトル解析した結果は3次元グラフに表示されるのが一般的であるが、このような表示方法では前面のスペクトル表示で微弱な振幅がマスクされてしまい、時間的な変化を把握することが困難となるという別の問題がある。また、従来のスペクトル解析の結果をカラ-マップで表示しても、短時間で変化する状態が把握でき、しかも微弱な周波数の振幅も正しいということでなければ有用なものとはならない。」
第4 対比・判断
1 本願発明8について
(1)対比
本願発明8と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「スペクトラムアナライズ方法」は、本願発明8の「スペクトル分析の方法」に相当する。
イ 引用発明の「スペクトラムアナライザ10」と、本願発明8の「分散型スペクトル分析器」とは、「スペクトル分析器」である点で共通するので、
引用発明の「スペクトラムアナライザにより、入力信号の周波数毎の信号成分を計測するスペクトラムアナライズ方法」と、本願発明8の「分散型スペクトル分析器を応用したスペクトル分析の方法」とは、「スペクトル分析器を応用したスペクトル分析の方法」である点で共通する。
ウ 引用発明は、「スペクトラムアナライザにより、入力信号の周波数毎の信号成分を計測する」ものであって、「乗算部22は、ローカル信号と入力信号とを乗算した合成信号を出力し」ているのであるから、引用発明の「スペクトラムアナライザ10」は、要解析信号源からの信号を受信し、乗算部22に「入力信号」を出力する受信部を備えているといえる。
したがって、引用発明の「スペクトラムアナライザにより、入力信号の周波数毎の信号成分を計測する」ことと、本願発明8の「各要解析無線周波信号源のそれぞれの位置に相応するタイプの無線受信機を配置し」とは、「要解析信号源の位置に受信部を配置し」の点で共通する。
エ 引用発明の「スペクトラム生成部28」が、「AD変換部26」の「デジタル出力信号に基づき、周波数スペクトラムを生成することにより」「入力信号の測定周波数範囲内の各周波数に対する信号レベルを表す周波数スペクトラムを出力する」ことは、本願発明8の「スペクトル分析処理を行う」ことに相当する。
したがって、上記「ウ」を踏まえると、引用発明の「ローカル信号発生部20は、指定された周波数のローカル信号を発生し、乗算部22は、ローカル信号と入力信号とを乗算した合成信号を出力し、バンドパスフィルタ24は、合成信号の所定の周波数帯域の信号成分を通過させ、AD変換部26は、バンドパスフィルタ24より通過された信号成分をサンプリングしてデジタル化したデジタル出力信号を出力し、スペクトラム生成部28は、AD変換部26によりサンプリングされた測定周波数範囲内の各周波数の信号成分のデジタル出力信号に基づき、周波数スペクトラムを生成することにより、入力信号の周波数毎の信号成分を計測し、計測した結果に基づき、入力信号の測定周波数範囲内の各周波数に対する信号レベルを表す周波数スペクトラムを出力する」ことと、本願発明8の「前述ホストコンピュータと相応する前述無線受信機を起動させ、操作指令を入力し、前述ホストコンピュータが前述無線受信機から送信されたAD変換されたデジタル信号を受信するように配置され、スペクトル分析処理を行う」こととは、「前述受信部から送信された信号のスペクトル分析処理を行う」ことである点で共通する。
すると、本願発明8と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「スペクトル分析器を応用したスペクトル分析の方法において、
要解析信号源の位置に受信部を配置し、
前述受信部から送信された信号のスペクトル分析処理を行う、スペクトル分析の方法。」
(相違点1)
スペクトル分析器が、本願発明8は、「分散型スペクトル分析器」であるのに対して、引用発明は、「スペクトラムアナライザ10」である点。
(相違点2)
要解析信号源の位置に受信部を配置し、受信部から送信された信号のスペクトル分析処理を行うことが、本願発明8は、「各要解析無線周波信号源のそれぞれの位置に相応するタイプの無線受信機を配置し、各無線受信機をそれぞれに光ファイバーを通してホストコンピュータ上の相応するタイプのデジタル光モジュールに接続し、」「前述ホストコンピュータが前述無線受信機から送信されたAD変換されたデジタル信号を受信するように配置され、スペクトル分析処理を行う」のに対して、引用発明は、そのような特定がなく、「スペクトラムアナライザにより、入力信号」を計測するものであって、「スペクトラムアナライザ10」の「スペクトラム生成部28」が、「AD変換部26」の「デジタル出力信号に基づき、周波数スペクトラムを生成することにより」「入力信号の測定周波数範囲内の各周波数に対する信号レベルを表す周波数スペクトラムを出力する」にとどまる点。
(相違点3)
本願発明8は、「前述ホストコンピュータと相応する前述無線受信機を起動させ、操作指令を入力し」、スペクトル分析処理を行うのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(2)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用文献1には、コントローラシステム14が、RFトランシーバモジュール21を含む、複数のRF対応デバイス13を分散させることによって、RFスペクトル分析を行うことができるものにおいて、
RFトランシーバモジュール21は、無線周波数信号対ノイズ比、チャネルサンプルのピークエネルギーレベル、時間にわたる平均エネルギー、測定されたエネルギーの性質、各周波数毎のサンプル数、平均チャネル密度等の無線周波数情報を測定し、測定情報を送信する技術が記載されているが(上記「第3 2」)、
RFトランシーバモジュール21をそれぞれに光ファイバーを通してホストコンピュータ上の相応するタイプのデジタル光モジュールに接続し、ホストコンピュータがRFトランシーバモジュール21から送信されたAD変換されたデジタル信号を受信し、スペクトル分析処理を行うことは、記載されていない。
また、引用文献3-6には、各要解析無線周波信号源のそれぞれの位置に相応するタイプの無線受信機を配置し、各無線受信機をそれぞれに光ファイバーを通してホストコンピュータ上の相応するタイプのデジタル光モジュールに接続し、前述ホストコンピュータが前述無線受信機から送信されたAD変換されたデジタル信号を受信するように配置され、スペクトル分析処理を行うことは記載されていない。
したがって、上記相違点2に係る本願発明8の構成は、引用発明、引用文献1、3-6に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到し得えたことであるとはいえない。
よって、本願発明8は、上記相違点1、3について検討するまでもなく、引用発明、引用文献1、3-6に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明9、10について
本願発明8を引用する本願発明9、10は、本願発明8をさらに限定した発明であるから、本願発明8と同じ理由によって、引用発明、引用文献1、3-6に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3 本願発明1について
本願発明1は、本願発明8に対応する物の発明であり、上記相違点2に係る本願発明8の「各要解析無線周波信号源のそれぞれの位置に相応するタイプの無線受信機を配置し、各無線受信機をそれぞれに光ファイバーを通してホストコンピュータ上の相応するタイプのデジタル光モジュールに接続し、」「前述ホストコンピュータが前述無線受信機から送信されたAD変換されたデジタル信号を受信するように配置され、スペクトル分析処理を行う」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明8と同様な理由により、引用発明、引用文献1、3-6に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
4 本願発明2-7について
本願発明1を直接又は間接的に引用する本願発明2-7は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、本願発明8と同じ理由によって、引用発明、引用文献1、3-6に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第5 原査定の拒絶の理由について
1 原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1~2、9、11
・引用文献1~3
・請求項3~4、7
・引用文献1~4
・請求項5~6、8、10
・引用文献1~3、5~6
<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2008/0175210号明細書
2.特開2008-111832号公報
3.特開平9-305430号公報
4.米国特許出願公開第2012/0020397号明細書
5.特開2000-286902号公報
6.特開2000-131356号公報
2 原査定の拒絶の理由についての判断
平成30年6月15日付け手続補正により補正された請求項1、8は、「各要解析無線周波信号源のそれぞれの位置に相応するタイプの無線受信機を配置し、各無線受信機をそれぞれに光ファイバーを通してホストコンピュータ上の相応するタイプのデジタル光モジュールに接続し、」「前述ホストコンピュータが前述無線受信機から送信されたAD変換されたデジタル信号を受信するように配置され、スペクトル分析処理を行う」という事項、又は、それに対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-10は、引用発明、引用文献1、3-6に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第1号について
当審では、請求項1-7の「前述ホストコンピュータは、デジタル信号処理モジュールと、一つ以上のデジタル光モジュールを備えており、・・・前述デジタル信号処理モジュールは受信した前述AD変換されたデジタル信号に対し処理を行うように配置され」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年6月15日付けの補正において、「前述ホストコンピュータは、デジタル信号処理モジュールと、一つ以上のデジタル光モジュールを備えており、・・・前述デジタル信号処理モジュールは受信した前述AD変換されたデジタル信号に対しスペクトル分析処理を行うように配置され」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。
2 特許法第36条第6項第2号について
(1)当審では、請求項1の「受信さらた操作指令に基づいて」という記載が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年6月15日付けの補正において、「受信された操作指令に基づいて」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。
(2)当審では、請求項8の「相応するタイプののデジタル光モジュールに接続し」という記載が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年6月15日付けの補正において、「相応するタイプのデジタル光モジュールに接続し」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-10は、引用発明、引用文献1、3-6に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-008885