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特許拒絶査定不服審判

2017-004709

半導体膜、酸化物微粒子分散液、半導体膜の製造方法、及び、薄膜トランジスタ

審判番号
2017-004709
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-205194外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年04月04日
審決日
2017年12月04日
公報発行日
2018年01月26日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H01L) / P18 .537-WY (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-205194「半導体膜,酸化物微粒子分散液,半導体膜の製造方法,及び,薄膜トランジスタ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月13日出願公開,特開2015- 70204,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。

理由

【理 由】 理 由 第1 手続の経緯 本願は,平成25年9月30日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成27年10月 8日 審査請求 平成28年 6月30日 拒絶理由通知 平成28年 9月 5日 意見書・補正書 平成28年12月22日 拒絶査定(以下,「原査定」という。) 平成29年 4月 4日 審判請求・補正書 平成29年 7月20日 上申書 平成29年 8月24日 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。) 平成29年10月26日 意見書・補正書 平成29年10月30日 意見書・補正書 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ●理由2(特許法第29条第2項)について ・請求項 1 ・引用文献等 2 出願人は意見書において, (1)「引用文献2に記載の電導層(膜)は,導電材料よりなるナノ粒子同士を焼結させて電導層(膜)形成されたものであります(同文献の段落[0045]他)。このように,ナノ粒子同士を焼結させていますので,引用文献2の伝導機構は,金属性のナノ粒子の結合による縮退伝導である」のに対し,「本願発明に係る半導体膜は,電気伝導性を高めるために,特定のナノ粒子間に,特定の配位分子が残存した状態のキャリア濃度が制御された半導体膜であり(本願明細書の段落[0041]),金属性のナノ粒子が結合した膜が記載された引用文献2の膜とは相違しており」,「また,本願発明に係る半導体膜は,酸化物微粒子が特定配位子と配位することで,粒子間を一定の間隔に保つことができ,これによって高い伝導性を発現するものであ」るから,両者は異なるという点, (2)引用文献2では,「ナノ粒子を形成する導電性材料として,金,ニッケル,インジウム等の一般的な金属材料が並列に挙げられており,インジウム等を積極的に用いることを示唆する記載」がない点, (3)「引用文献2に記載の発明とは異なり,本願発明の半導体膜は,電界効果を示すもの」であり,「引用文献2に記載の発明は,本願発明に係る半導体膜と比べて,膜の構造,キャリア濃度,キャリアの伝導機構等が全く異なって」いる点, を主張し,もって,本願の請求項1に係る発明が,引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことを主張する。 これに対し,まず上記主張(1)について検討する。 出願人が主張するとおり,引用文献2には,ナノ粒子同士を焼結させて導電層を形成することが記載されているものの,これは,引用文献2における「第2の導電層112」についての記載である(段落[0045]-[0048]参照)。 これに対し,平成28年 6月30日付け拒絶理由通知書において指摘した「メモリ層111」については,引用文献2の段落[0049]において「メモリ層111は,焼成前の層117と比較してほぼ状態変化は生じず,有機物113で被覆された導電性材料よりなるナノ粒子114から構成される。」と記載されているとおり,導電層に変化しておらず,ナノ粒子が,当該ナノ粒子に配位結合する物質である有機物113(段落[0037],[0043]参照)に被覆されている状態で存在しているものといえる。 上記の記載からすれば,引用文献2に記載された発明の「メモリ層111」においては,ナノ粒子同士が接触してはおらず,被覆された有機物113によってナノ粒子同士が一定の間隔を保っており(図1参照),本願と同様,粒子に配位結合した有機化合物を介して,キャリアの伝導が行われているものといえる。 よって,主張(1)は採用されない。 次に,上記主張(2)について検討する。 出願人が主張するとおり,インジウム等を積極的に用いることを示唆する記載はないものの,引用文献2に記載された選択肢の中から,単に特定のものを選択することは,平成28年 6月30日付け拒絶理由通知書において指摘したとおり,当業者の通常の創作能力の発揮に当たるものである。 よって,主張(2)は採用されない。 次に,上記主張(3)について検討する。 主張(1)において検討したとおり,本願の請求項1に係る発明と引用文献2に記載された発明とは同じ伝導機構が形成されているものといえる。また,引用文献2には明示的な記載はないものの,引用文献2の段落[0049]の記載や,段落[0100]においてダイオード特性がみられる場合についての記載があることからすれば,引用文献2に記載された発明におけるメモリ層は半導体として機能しており,更に,電界効果を示すものと理解される。 よって,主張(3)は採用されない。 以上のとおりであるから,出願人の上記主張(1)-(3)はいずれも採用されない。 そして,平成28年 6月30日付け拒絶理由通知書に記載のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。 なお,意見書のその余の点についても考慮したが結論を左右するものではない。 ・請求項 2-12 ・引用文献等 2 本願の請求項2-12に係る発明についても同様に,引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。 ・請求項 19 ・引用文献等 2,3 本願の請求項19に係る発明についても同様に,引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。 <引用文献等一覧> 2.特開2008-270763号公報 3.特開2012-129411号公報(周知技術を示す文献) 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1【進歩性】この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2【サポート要件】本件出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記   (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・理由 1 ・請求項 1 ・引用文献等 1 ・備考 引用文献1の【0032】には,ナノ粒子として「ITO,インジウム錫酸化物,IZO」等の酸化物半導体(請求項1において「InO,InGaO,InZnO,InSnO,InGaZnOおよびInZnSnOから選択される少なくとも一種を含む酸化物微粒子の集合体」に相当),【0037】には,前記ナノ粒子に配位する分散剤の候補材料として「エタノールアミン」(請求項2において「2-アミノエタノール」に相当),及び図1には,当該酸化物微粒子を含む材料を記憶素子のメモリ層(請求項1において「半導体膜」に相当)に用いることが開示されており,ナノ粒子としての酸化物半導体と分散剤としてのエタノールアミンの組み合わせを選択することに格別な阻害事由は無く,当業者が容易に想到し得た事項と認められる。 ・理由 1 ・請求項 2,4 ・引用文献等 1 ・備考 引用文献1の【0034】には,ナノ粒の粒径として「1nm以上200nm以下」(請求項2において「酸化物微粒子の平均粒径が3nm以上30nm以下」に相当)と記載されている。 ・理由 1 ・請求項 3 ・引用文献等 1 ・備考 引用文献1の【0032】には,ナノ粒子として「ITO,インジウム錫酸化物,IZO」等の酸化物半導体(請求項1において「InO,InGaO,InZnO,InSnO,InGaZnOおよびInZnSnOから選択される少なくとも一種を含む酸化物微粒子の集合体」に相当),【0037】には,前記ナノ粒子に配位する分散剤の候補材料として「エタノールアミン」(請求項2において「2-アミノエタノール」に相当),及び【0036】には,溶媒として有機溶媒を利用することが記載されている。 ・理由 2 ・請求項 5~10 ・備考 請求項5には「In,ZnおよびSnから選択される少なくとも一種の金属を含む酸化物微粒子」と記載されており,上記の条件を満足する酸化物微粒子であれば,例えば,ZnおよびSnから選択される少なくとも一種の金属を含む酸化物微粒子についても所望の電気伝導性,ラフネス,光安定性の効果が得られることについて明示する必要があるが,本願明細書の【0156】の表1及び【0158】表3には,酸化物微粒子としては,In-Sn-O,In2O3,In-ZnOのみについて所望の電気伝導性,ラフネス,光安定性の効果が得られることが記載されているにとどまり,出願時の技術常識に照らしても,請求項に係る範囲まで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができない。 ・理由 1 ・請求項 11 ・引用文献等 1,2 ・備考 引用文献1に記載されたメモリ素子用の膜を,引用文献2の特に図1-9図に開示されたトランジスタのチャネル層を構成する半導体層として用いる事に格別な困難性は認められない。 引 用 文 献 等 一 覧 引用文献1 特開2008-270763号公報 引用文献2 特開2012-129411号公報 第4 本願発明 本願請求項1ないし5に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は,平成29年10月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1ないし本願発明5は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 InとSn及びZnの少なくとも一方とを含む酸化物微粒子又はIn2O3微粒子,前記酸化物微粒子又は前記In2O3微粒子に配位した第1の配位子,及び第1の溶媒を含有する酸化物微粒子分散液を基板上に付与して酸化物微粒子の集合体を形成する酸化物微粒子集合体形成工程と, 前記第1の配位子よりも分子鎖長が短く,且つ下記一般式(A)で表される配位子,下記一般式(B)で表される配位子,及び下記一般式(C)で表される配位子から選択される少なくとも1種の第2の配位子,並びに第2の溶媒を含有する溶液を,前記酸化物微粒子の集合体に付与して前記酸化物微粒子又は前記In2O3微粒子に配位している前記第1の配位子を前記第2の配位子に交換する配位子交換工程と, を有する半導体膜の製造方法。 〔一般式(A)中,X1及びX2は,各々独立に,-SH,-NH2,-OHまたは-COOHを表し,A1及びB1は,各々独立に,水素原子または原子数1以上10以下の置換基を表す。 一般式(B)中,X3及びX4は,各々独立に,-SH,-NH2,-OHまたは-COOHを表し,A2及びB2は,各々独立に,水素原子または原子数1以上10以下の置換基を表す。 一般式(C)中,X5は,-SH,-NH2,または-OHを表し,A3は,水素原子または原子数1以上10以下の置換基を表す。〕 【請求項2】 前記酸化物微粒子又は前記In2O3微粒子の平均粒径が3nm以上30nm以下である請求項1に記載の半導体膜の製造方法。 【請求項3】 前記A1,前記B1,前記A2,前記B2,及び前記A3が,水素原子を表す請求項1または請求項2に記載の半導体膜の製造方法。 【請求項4】 前記X2,及び前記X4が,-SHまたは-NH2を表す請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の半導体膜の製造方法。 【請求項5】 前記配位子が,エタンジチオール,エチレンジアミン,メルカプトプロピオン酸,グリコール酸,2-アミノエタンチオール,2-アミノエタノール,3-アミノ-1-プロパノール,3-メルカプト-1-プロパノール,およびチオグリコール酸,並びに上記配位子の誘導体から選択される少なくとも一種である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の半導体膜の製造方法。」 第5 引用文献,引用発明等 1 原査定の引用文献1について (1)原査定の引用文献1の記載事項 原査定で引用された特開2008-270763号公報(以下,「原査定引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線部は,当審で追加した。以下,同じ。)。なお,本文献は,当審の引用文献1と同一の文献である。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は,記憶素子及び当該記憶素子を有する半導体装置に関する。」 イ「【0013】 本発明の一は,第1の導電層を形成し,第1の導電層上に,有機物で被覆された導電性材料よりなるナノ粒子が溶媒に分散された組成物を吐出し,組成物を乾燥し,乾燥により溶媒を気化させた組成物に活性酸素を晒して前処理を施した後,焼成することで当該組成物からメモリ層と第2の導電層とを形成し,メモリ層は,当該組成物が有する有機物で被覆されたナノ粒子から構成され,第2の導電層は,当該組成物が有するナノ粒子の焼結により形成されていることを特徴とする記憶素子の作製方法である。 【0014】 本発明の一は,第1の導電層を形成し,第1の導電層上に,有機物で被覆された導電性材料よりなるナノ粒子が溶媒に分散された組成物を吐出し,乾燥により溶媒を気化させた組成物にオゾン雰囲気下で紫外線を照射した後,焼成することで当該組成物からメモリ層と第2の導電層とを形成し,メモリ層は,当該組成物が有する有機物で被覆されたナノ粒子から構成され,第2の導電層は,当該組成物が有するナノ粒子の焼結により形成されていることを特徴とする記憶素子の作製方法である。」 ウ「【0026】 次に,本発明の記憶素子の作製方法と共に各層に用いることが可能な材料について図3を用いて説明する。 【0027】 まず,図3(A)に示すように第1の導電層110を単層または積層構造からなる導電性の高い金属,合金,化合物等を用いて形成する。 【0028】 例えば,金(Au),銀(Ag),白金(Pt),ニッケル(Ni),タングステン(W),クロム(Cr),モリブデン(Mo),鉄(Fe),コバルト(Co),銅(Cu),パラジウム(Pd),アルミニウム(Al),マンガン(Mn),チタン(Ti),タンタル(Ta)等の金属,または金属材料の窒化物(例えば,窒化チタン,窒化タングステン,窒化モリブデン)の他,周期表の1族または2族に属する金属,即ちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属,マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属,及びこれらのいずれかを含む合金(たとえば,Mg:Ag,Al:Li)等を用いることができる。また,ユーロピウム(Er),イッテルビウム(Yb)等の希土類金属及びこれらを含む合金等を用いてもよい。また,透明導電膜として用いられるインジウム錫酸化物(以下,ITOと表記する),珪素を含有したインジウム錫酸化物,2~20[wt%]の酸化亜鉛(ZnO)を含む酸化インジウム(略称:IZO)等を用いることも可能である。 【0029】 なお,第1の導電層110は,蒸着法,スパッタ法,CVD法,印刷法,電解メッキ法,無電解メッキ法,スピンコート法等を用いて形成することができる。 【0030】 次に,第1の導電層110上にメモリ層111及び第2の導電層112を同一工程にて形成する。 【0031】 まず,第1の導電層110上に液滴吐出法等の塗布法を用いて導電性材料よりなるナノ粒子が分散された組成物を吐出する。液滴吐出法とは所定の物質を含む液滴を細孔から吐出してパターンを形成する方法であり,ここでは溶媒に分散された導電性材料よりなるナノ粒子が分散された組成物を吐出(噴出)する。なお,吐出される組成物を吐出材料とも言う。 【0032】 ナノ粒子を形成する導電性材料には,金(Au),銀(Ag),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),パラジウム(Pd),タンタル(Ta),イリジウム(Ir),ロジウム(Rh),タングステン(W),アルミニウム(Al),鉄(Fe),亜鉛(Zn),錫(Sn),チタン(Ti),インジウム(In),ジルコニウム(Zr),バリウム(Ba)等から選択された金属元素又はこれらの元素を主成分とする合金材料が用いられる。また,カドミウム(Cd),亜鉛(Zn)の金属硫化物,ゲルマニウム(Ge),ケイ素(Si)や上述の金属元素などの酸化物,ハロゲン化物の一種又は複数種が混合されていてもよい。また,これらと上述の金属元素が混合されていても良い。その他,導電性材料に,透明導電膜として用いられるITO,珪素を含有したインジウム錫酸化物,IZO等を用いることも可能である。 【0033】 導電性材料に2種以上の元素もしくは化合物が用いられる場合,その混合状態については特に限定されず,例えばこれらの各々が均一に存在しても,コア部にいずれか一が偏在していても良い。 【0034】 ナノ粒子の粒径は,1nm以上200nm以下,好ましくは1nm以上100nm以下が良く,吐出材料に含まれるナノ粒子の粒径は均一であるほうが好ましい。 【0035】 また,ナノ粒子は,気相法,液相法,固相法のいずれを用いて形成されたものであっても良く,その作製方法は特に限定されない。 【0036】 溶媒には水または有機溶媒を用いることができ,有機溶媒は水溶性有機溶媒であっても,非水溶性有機溶媒であっても良い。例えば,水溶性有機溶媒にはメタノール,エタノール,プロパノール,ブチルアルコール,グリセリン,ジプロピレングリコール,エチレングレコール等のアルコール,アセトン,メチルエチルケトン等のケトン,エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル,2-ピロリドン,N-メチルピロリドン等の水溶性含窒素有機化合物や酢酸エチル等が挙げられる。また,非水溶性有機溶媒には,オクタン,ノナン,デカン等のアルカン,シクロアルカン,トルエン,キシレン,ベンゼン,ジクロロベンゼン等の芳香族等が挙げられる。もちろん,これら溶媒は必ずしも一種で使用する必要はなく,溶媒同士において相分離が生じなければ複数種を混合して用いることも可能である。 【0037】 なお,ナノ粒子は,吐出材料における溶媒中においてナノ粒子の凝集を防ぐために有機物で被覆された状態で存在している。この有機物は,粒子を安定に分散させる機能を有する分散剤に相当し,例えば導電性材料が有する金属元素と配位結合を形成することが可能な物質や界面活性剤等により構成されている。ここで,金属元素と配位結合を形成する物質としては,アミノ基,チオール基(-SH),スルファンジイル基(-S-),ヒドロキシ基(-OH),オキシ基(-O-),カルボキシル基(-COOH),シアノ基(-CN)等の窒素,硫黄,酸素原子などが有する孤立電子対を有する物質が挙げられる。例えば,エタノールアミン等のヒドロキシアミン類,オレイルアミン,ポリエチレンイミンやポリビニルピロリドン等のアミン系化合物,ポリビニルアルコール等のアルコール類,アルカンチオール類,ジチオール類,エチレングリコール,ジエチレングリコールやポリエチレングリコール等のグリコール類,ポリアクリル酸やカルボキシメチルセルロース等を用いることができる。また,界面活性剤としては,例えば,ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸やドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤,ポリアルキルグリコールのアルキルエステルやアルキルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤,フッ素系界面活性剤,ポリエチレンイミンとポリエチレンオキサイドとを有する共重合体等を用いることができる。」 エ「【0043】 上記のような液滴吐出装置を用いて導電性材料よりなるナノ粒子が分散された吐出材料を所望の位置に吐出し,その後乾燥することで該溶媒を気化させる。なお,所望の位置に吐出することが可能であるため,材料の利用効率を高いものとすることができる。図3(B)は吐出材料を乾燥させた後の模式図であり,図3(B)に示すように溶媒以外の物質,即ち導電性材料よりなるナノ粒子114と前記ナノ粒子114を被覆する有機物113とが第1の導電層110上に残った状態となる。第1の導電層110上に残ったこれらの物質,即ち乾燥後の吐出材料を,吐出物115とも言う。この吐出物115を用いて,メモリ層111及び第2の導電層112が形成される。乾燥条件は用いた溶媒によって異なるが,例えば,溶媒にプロパノールを用いた場合には100度で5分間ほど行えば良い。なお,吐出時に第1の導電層110が設けられた基板を加熱して,乾燥に要する時間を短縮しても良い。また,有機物113には溶媒が残留している場合もある。さらに,上述したように吐出材料にはナノ粒子の作製時に用いられる物質(例えば,還元剤),バインダー,可塑剤,シランカップリング剤等が含まれている場合もある。そのため,吐出材料によっては,有機物113にこれらの物質が含まれる場合もある。 【0044】 ここでは吐出材料を所望の位置に液滴吐出法を用いて第1の導電層110上に吐出したが,これに限定されることはなく,例えば吐出材料を高粘度化することによりスクリーン印刷をはじめとする印刷法を用いることも可能である。 【0045】 次に,メモリ層111と第2の導電層112とを作り分ける後述の焼成工程の前処理として,吐出物115に活性酸素を晒し,有機物113を分解する。ただし,吐出物115が有する全てのナノ粒子114に対する有機物113を分解するわけではなく,活性酸素に晒された部分,即ち表面に位置するナノ粒子114を被覆している有機物113から順に分解される。このように,吐出物115に前処理を施すことにより,吐出物115から構成される層を前処理が施された吐出物を有する層116と,前処理が施されていない吐出物を有する層117とに分けることができる。よって,前処理が施された層116は有機物113が分解されているため,前処理が施されていない層117に比べて低い焼成温度でナノ粒子114同士の焼結を生じさせることが可能となる。 【0046】 これを利用して,次に前処理が施された層116を構成するナノ粒子114同士のみに焼結が生じる温度で焼成することにより,層116を低抵抗化し図3(C)に示すように第2の導電層112を形成する。一方,前処理が施されていない層117が有するナノ粒子114には焼結が生じず,この未焼結のナノ粒子を有する層117を本発明の記憶素子におけるメモリ層111として用いる。よって,吐出物115の膜厚及び前処理条件はメモリ層111及び第2の導電層112の膜厚を考慮して適宜設定すれば良い。以上のようにして,メモリ層111と第2の導電層112とを同一の吐出物115より作り分けることができる。 【0047】 このようにして,メモリ層111及び第2の導電層112を同時に作製することができるため,作製工程を簡略化することが可能となり,歩留まり良く,安価に記憶素子を作製することが可能となる。」 (2)原査定引用発明1 前記(1)の記載から,原査定引用文献1には,以下の事項(以下,「原査定引用発明1」という。)が記載されている。 第1の導電層上に液滴吐出法等の塗布法を用いて,ITO,珪素を含有したインジウム錫酸化物,IZO等のナノ粒子からなる導電性材料が分散された組成物を吐出し,その後乾燥することで該溶媒を気化させ,乾燥後の吐出材料である吐出物に活性酸素を晒し,有機物を分解し,当該吐出物から構成される層を前処理が施された当該吐出物を有する層と,前処理が施されていない吐出物を有する層とに分け,前処理が施された層を構成するナノ粒子同士のみに焼結が生じる温度で焼成することにより,層を低抵抗化し第2の導電層を形成すると同時に,処理が施されていない層が有するナノ粒子には焼結が生じず,この未焼結のナノ粒子を有するメモリ層とするメモリ層の製造方法。 2 原査定の引用文献2について (1)原査定の引用文献2に記載された事項 原査定で引用された特開2012-129411号公報(以下,「原査定引用文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。なお,本文献は,当審の引用文献2と同一の文献である。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は,電荷を材料中に長時間に閉じ込められる材料(以降,帯電体)に関するものであり,さらに,その応用である閾値電圧が制御可能な電界効果型トランジスタ(以下「FET」)およびメモリ素子に関する。より詳細に述べると,本発明の帯電体は,絶縁特性に優劣のある2種の材料を積層した構造からなり,該帯電体の2種絶縁材料それぞれに接するように2枚の電極ではさみ高電界を印荷することにより,絶縁特性に劣る材料側から電荷を2種絶縁材料の界面に注入・蓄積し,電界除去後も該帯電体内に保持し周囲にクーロン力を及ぼすことができる。また,該帯電体をゲート絶縁膜に用いてFETを構成することにより,前記のようにして帯電体中に蓄積された電荷により閾値電圧を制御できる 。さらに,該FETにおいて帯電体中に電荷が長時間保持される。すなわち制御された閾値電圧が保持されることを利用したメモリ素子に関する。」 イ「【0031】 本発明に係るFETおよびメモリ素子において,半導体層として用いられる半導体は,有機半導体や無機半導体として用いられる公知の全ての材料を用いて製造できる。好ましい半導体層は,シリコン,窒化珪素,ペンタセン,テトラセン,TIPS-ペンタセン(6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン),ポリチオフェン,チエニルチオフェン誘導体,銅フタロシアニン,ポリアニリン,ポリピロール,ポリフェニレンビニレン,ポルフルオレン,カーボンナノチューブ,SnO粒子,ZnO粒子,シリコン,SnO前駆体溶液,ZnO前駆体溶液またはこれらの誘導体から製造できるが,これに制限されない。」 (2)原査定引用発明2 したがって,前記原査定引用文献2には次の発明(以下,「原査定引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「FETおよびメモリ素子において,半導体層として用いられる半導体は,有機半導体や無機半導体として用いられる公知の全ての材料を用いて製造できること。」 3 当審の拒絶理由で引用された引用文献1について (1)当審で引用された引用文献1に記載されていた事項 当審で引用された特開2008-270763号公報(以下,「当審引用文献1」という。)は,原査定引用文献1と同一文献であるから,記載事項については,前記1(1)に記載されたとおりである。 (2)当審引用発明1 当審引用文献1には,前記1(2)と同様に,次の発明(以下,「当審引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「第1の導電層上に液滴吐出法等の塗布法を用いて,ITO,珪素を含有したインジウム錫酸化物,IZO等のナノ粒子からなる導電性材料が分散された組成物を吐出し,その後乾燥することで該溶媒を気化させ,乾燥後の吐出材料である吐出物に活性酸素を晒し,有機物を分解し,当該吐出物から構成される層を前処理が施された当該吐出物を有する層と,前処理が施されていない吐出物を有する層とに分け,前処理が施された層を構成するナノ粒子同士のみに焼結が生じる温度で焼成することにより,層を低抵抗化し第2の導電層を形成すると同時に,処理が施されていない層が有するナノ粒子には焼結が生じず,この未焼結のナノ粒子を有するメモリ層とするメモリ層の製造方法。」 4 当審の拒絶理由で引用された引用文献2について (1)当審で引用された引用文献2に記載されていた事項 当審で引用された特開2012-129411号公報(以下,「当審引用文献2」という。)は,原査定引用文献2と同一文献であるから,記載事項については,前記2(1)に記載されたとおりである。 (2)当審引用発明2 当審引用文献2には,次の発明(以下,「当審引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「FETおよびメモリ素子において,半導体層として用いられる半導体は,有機半導体や無機半導体として用いられる公知の全ての材料を用いて製造できること。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)本願発明1と当審引用発明1の対比 ア 当審引用発明1の「メモリ層」は,ナノ粒子を含む層であるから本願発明1の「半導体膜」に相当する。 イ 当審引用発明1の「珪素を含有したインジウム錫酸化物,IZO等のナノ粒子からなる導電性材料」は,Inを含む酸化物微粒子であるから,本願発明1の「InとSn及びZnの少なくとも一方とを含む酸化物微粒子」に相当する。 ウ 当審引用発明1の「溶媒」は,ナノ粒子を分散させている溶媒であるから,本願発明1の「第1の溶媒」に相当する。 エ 当審引用発明1の「液滴吐出法」は,導電性材料よりなるナノ粒子が分散された組成物を吐出(噴出)することから,本願発明1の「酸化物微粒子分散液を基板上に付与」することに相当する。 そうすると,本願発明1と当審引用発明1は以下のオの点で一致し,以下のカの点で相違する。 オ 一致点 InとSn及びZnの少なくとも一方とを含む酸化物微粒子及び第1の溶媒を含有する酸化物微粒子分散液を基板上に付与して酸化物微粒子の集合体を形成する酸化物微粒子集合体形成工程を有する半導体膜の製造方法。 カ 相違点 (相違点1) 本願発明1では,酸化膜微粒子集合体形成工程において,酸化物微粒子分散液には,酸化物微粒子に配位した第1の配位子を含むのに対して,当審引用発明1では,酸化物微粒子分散液に第1の配位子について記載されていない点。 (相違点2) 本願発明1では,第1の配位子よりも分子鎖長が短く,且つ下記一般式(A)で表される配位子,下記一般式(B)で表される配位子,及び下記一般式(C)で表される配位子から選択される少なくとも1種の第2の配位子,並びに第2の溶媒を含有する溶液を,前記酸化物微粒子の集合体に付与して前記酸化物微粒子又は前記In2O3微粒子に配位している前記第1の配位子を前記第2の配位子に交換する配位子交換工程を有するのに対して,当審引用発明1では,第1の配位子を第2の配位子に交換する配位子交換工程を有しない点。 (2)相違点についての判断 以下,相違点(1),(2)についてまとめて検討する。 酸化物微粒子を含む半導体膜の製造方法において,酸化膜微粒子集合体形成工程において,酸化物微粒子分散液には,酸化物微粒子に配位した第1の配位子を含む点(相違点1),及び配位子交換工程において,第1の配位子よりも分子鎖長が短く,且つ下記一般式(A)で表される配位子,下記一般式(B)で表される配位子,及び下記一般式(C)で表される配位子から選択される少なくとも1種の第2の配位子,並びに第2の溶媒を含有する溶液を,前記酸化物微粒子の集合体に付与して前記酸化物微粒子又は前記In2O3微粒子に配位している前記第1の配位子を前記第2の配位子に交換する配位子交換工程を有する点(相違点2)について,当審引用文献1,2には記載されておらず,示唆もされていない。 また,本願発明1は,当該構成を有することにより,大気中でも製造可能で且つ高い電気伝導性が得られる半導体膜の製造方法を提供する,という格別な効果を奏する(本願明細書段落【0035】参照) したがって,本願発明1は,当業者が当審引用文献1,2に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 2 本願発明2ないし5について 本願発明2ないし5は,本願発明1の発明特定事項を全て含む従属請求項であるから,本願発明1が当審引用文献1,2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本願発明2ないし5も当審引用文献1,2に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとは認められない。 第7 原査定についての判断 本願発明1は,平成29年10月30日付けの補正により「InとSn及びZnの少なくとも一方とを含む酸化物微粒子又はIn2O3微粒子,前記酸化物微粒子又は前記In2O3微粒子に配位した第1の配位子」という技術的事項を有するものとなった。 当該技術的事項は,原査定引用文献1,2には記載されておらず,また示唆もされていない。さらに,本願出願日前における周知技術でもない。 以上から,本願発明1は,当業者が,原査定引用文献1,2に記載された事項に基づいて容易に発明できたものではない。 また,本願発明2ないし5は,本願発明1の発明特定事項を全て含む従属請求項であるから,本願発明1が原査定引用文献1,2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本願発明2ないし5も,当業者が,原査定引用文献1,2に記載された事項に基づいて容易に発明できたものではない。 したがって,原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。

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2017-004709

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