特許拒絶査定不服審判
2017-004296
露光描画装置、移動制御方法およびプログラム
- 審判番号
- 2017-004296
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-214265外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年03月27日
- 審決日
- 2018年02月19日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社アドテックエンジニアリング
- 【請求人代理人】中島 淳
- 【請求人代理人】加藤 和詳
- 【請求人代理人】福田 浩志
- 分類
- P18 .113-WY (G03F) / P18 .121-WY (G03F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-214265「露光描画装置、移動制御方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月17日出願公開、特開2014- 66986、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月27日を出願日とする出願であって、平成28年5月16日付けで拒絶理由が通知され、同年9月21日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年12月27日付け(送達 平成29年1月10日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成29年3月27日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、平成29年3月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であるところ、本願発明1は以下のとおりである。
「【請求項1】
処理対象物を搭載するためのステージと、
前記ステージに搭載された処理対象物に対して露光描画処理を行う露光部と、
移動することによって処理対象物の前記ステージへの供給および前記ステージからの排出を行い且つ移動の際の加速および減速に伴って生じる振動が前記ステージに伝搬し得る状態で設けられた搬送部と、
前記露光部が前記露光描画処理を行っているか否かを判定する判定手段と、
前記搬送部が移動を開始する際に前記判定手段により前記露光部が前記露光描画処理を行っていないと判定された場合に、前記搬送部が移動を開始する際の加速方向の加速度の大きさを、加速方向の標準加速度の大きさとし、前記搬送部が移動を開始する際に前記判定手段により前記露光部が前記露光描画処理を行っていると判定された場合に、前記搬送部が移動を開始する際の加速方向の加速度の大きさを、前記加速方向の標準加速度の大きさよりも小さくし、前記搬送部の移動中に前記判定手段により前記露光部が前記露光描画処理を行っていないと判定された場合に、前記搬送部が移動を停止する際の減速方向の加速度の大きさを、減速方向の標準加速度の大きさとし、前記搬送部の移動中に前記判定手段により前記露光部が前記露光描画処理を行っていると判定された場合に、前記搬送部が移動を停止する際の減速方向の加速度の大きさを、前記減速方向の標準加速度の大きさよりも小さくする移動制御を行う制御手段と、
を含む露光描画装置。」
なお、本願発明2ないし7は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明8は、本願発明1ないし7を引用するプログラム発明であり、本願発明9は、物の発明である本願発明1のカテゴリーを方法の発明とした発明である。
第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平2-73616号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「[産業上の利用分野]
本発明は、原版(マスク、レクチル等)上に形成されたパターン像を露光ビームを用いて感光基板(ウエハ等)上に露光転写する露光装置に関し、特にウエハ搬送装置等の振動による整合動作や露光動作への影響を軽減するための制御方法に関するものである。」(1頁右欄13行~最下行)
イ 「[発明が解決しようとする課題]
本発明は、前述のようなアライメントまたは露光時のマスクまたはウエハに機械的外力が伝わり、アライメントエラーが生じたり、露光時の振動により不良チップが発生するという問題の解決を課題とし、更には防振を考慮した機械的設計の負担の軽減を図るものである。
[課題を解決するための手段]
本発明においては、アライメントまたは露光時には、アライメントまたは露光動作に関与しない駆動装置の動作を禁止し、または振動の発生が無視できる程度に該駆動装置のサーボ特性を変化させるように露光装置を制御する。
[作用]
アライメント中または露光中には振動が発生しないかまたは発生してもアライメントおよび露光には影響しない。」(2頁右上欄10行~左下欄6行)
ウ 「第2図は、本発明が適用される露光装置の電気回路構成を示すブロック図である。同図において、21は装置全体の制御を司る本体CPUで、マイクロコンピュータまたはミニコンピュータ等の中央演算処理装置からなる。22はウエハステージ駆動装置、23はアライメント検出系、24はマスクステージ駆動装置、25は照明系、26はシャッタ駆動装置、27はフォーカス検出系、28はz駆動装置、29はウエハやマスクの搬送系で、これらは本体CPUにより制御される。」(2頁左下欄18行~右下欄7行)
エ 「次に、本発明の別の実施例について第8図および第9図を用いて説明する。
第8図は、第3図のステップS8(第5図)に対応するもので、ステップ・アンド・リピート露光のフローである。第9図は、搬送系29の一つの駆動装置の加減速特性を示す速度線図で、横軸は時間、縦軸は速度である。
第8図に示すステップS8′では、まずウエハステージ5を第1ショット位置へ移動させる(ステップS8-1)。そして、搬送系29の各駆動装置についてパルスコントローラ40(第4図)のステータスをチェックして(ステップS8-3)、各駆動装置が駆動終了状態になるのを待つ(ステップS8-4)。この判定をYesで抜けると、各パルスコントローラの動作パラメータの設定を変更する(ステップS8-11)。この変更は、例えば第9図に示すように最高速度をv1からv2に下げ、加減速レートを小さくすることによって、搬送系の駆動装置が動作する際の振動の発生を低減させるためのものである。なお、この変更は搬送系の全ての駆動装置の駆動終了を待って同時に行なう必要はなく、駆動終了のステータスを確認した駆動装置のパルスコントローラから順次行なっていけばよい。次のS8-5~S8-8のステップについては第5図と同じなので説明を省略する。さて、全ショットの露光が終了すると、次に搬送系29の各駆動装置について再びパルスコントローラのステータスをチェックして(ステップS8-3′)、駆動終了かどうかの判定を行なう(ステップS8-4′)。駆動が終了していれば、この判定をYesで抜け、各パルスコントローラの動作パラメータの設定を変更する(ステップS8-12)。この変更は、ステップS8-11で行なったものを元に戻す(すなわち、最高速度をv2からv1に上げ、加減速レートを大きくする)もので、駆動終了を確認したパルスコントローラから順に行なっていけばよい。最後に、ウエハステージ5をホーム位置へ移動させる(ステップS8-10)。
以上のように、アライメントおよび露光時は搬送系29の駆動装置の駆動パラメータを変更して振動の発生を抑えるようにしたので、アライメントエラーや不良露光の発生を低減させることができる。なお、この場合は第6図のステップS7および第7図のステップS9における動作禁止フラグのチェックは必要なくなる。」(5頁左上欄8行~左下欄13行)
オ 第2、8、9図は次のものである。
(2)上記(1)によれば、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ウエハステージ駆動装置、アライメント検出系、マスクステージ駆動装置、照明系、シャッタ駆動装置、フォーカス検出系、z駆動装置及びウエハやマスクの搬送系からなり、これらは本体CPUにより制御される電気回路構成からなる露光装置であって、
ウエハステージを第1ショット位置へ移動させ(ステップS8-1)、
そして、搬送系の各駆動装置についてパルスコントローラのステータスをチェックして(ステップS8-3)、
各駆動装置が駆動終了状態になるのを待ち(ステップS8-4)、
この判定をYesで抜けると、各パルスコントローラの動作パラメータの設定について、最高速度をv1からv2に下げ、加減速レートを小さくすることによって、搬送系の駆動装置が動作する際の振動の発生を低減させる変更をし(ステップS8-11)、
全ショットの露光が終了すると、次に搬送系の各駆動装置について再びパルスコントローラのステータスをチェックして(ステップS8-3′)、
駆動終了かどうかの判定を行ない(ステップS8-4′)
駆動が終了していれば、この判定をYesで抜け、各パルスコントローラの動作パラメータの設定について、最高速度をv2からv1に上げ、加減速レートを大きくする変更をし(ステップS8-12)、
最後に、ウエハステージ5をホーム位置へ移動させる、
原版上に形成されたパターン像を露光ビームを用いて感光基板上に露光転写する露光装置。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平8-316131号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術であるステージ可変速連続移動による描画においては、一列(ストライプ)内の描画パターンの粗密が極端な場合、ステージ移動での移動速度の変化が大きく、加減速によって発生する外乱力が、電子線描画装置の電子光学系鏡体等を振動させる要因となり、描画精度に悪影響を及ぼすおそれがある。」
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「本体CPU」、「ウエハ」、「ウエハステージ」、「第1ショット位置」、「搬送系」及び「露光装置」は、本願発明1の「制御手段」、「処理対象物」、「ステージ」、「露光部」、「搬送部」及び「露光描画装置」にそれぞれ相当するから、両者は、
「処理対象物を搭載するためのステージと、
前記ステージに搭載された処理対象物に対して露光描画処理を行う露光部と、
移動することによって処理対象物の前記ステージへの供給および前記ステージからの排出を行い且つ移動の際の加速および減速に伴って生じる振動が前記ステージに伝搬し得る状態で設けられた搬送部と、
制御手段とを含む露光描画装置。」の点で一致し、下記各点で相違する。
(ア)本願発明1は、「判定手段」が、「前記搬送部が移動を開始する際に前記判定手段により前記露光部が前記露光描画処理を行っていないと判定」し、また、「前記搬送部の移動中に前記判定手段により前記露光部が前記露光描画処理を行っていないと判定」するのに対して、引用発明はこのようなを判定を行う判定手段を備えていると特定されない点(以下「相違点1」という。)
(イ)本願発明1は、「制御手段」が「前記搬送部が移動を開始する際の加速方向の加速度の大きさを、加速方向の標準加速度の大きさとし」、「前記搬送部が移動を開始する際の加速方向の加速度の大きさを、前記加速方向の標準加速度の大きさよりも小さくし」、「前記搬送部が移動を停止する際の減速方向の加速度の大きさを、減速方向の標準加速度の大きさとし」及び「前記搬送部が移動を停止する際の減速方向の加速度の大きさを、前記減速方向の標準加速度の大きさよりも小さくする」「移動制御を行う」のに対して、引用発明は、「本体CPU」が、「各パルスコントローラの動作パラメータの設定について、最高速度をv1からv2に下げ、加減速レートを小さくすることによって、搬送系の駆動装置が動作する際の振動の発生を低減させる変更をし(ステップS8-11)」、「各パルスコントローラの動作パラメータの設定について、最高速度をv2からv1に上げ、加減速レートを大きくする変更を(ステップS8-12)」する制御を行うものである点(以下「相違点2」という。)。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点2について検討すると、引用発明は、「最高速度をv1からv2に下げ、加減速レートを小さくする」あるいは、「最高速度をv2からv1に上げ、加減速レートを大きくする」制御を行うものであって、最高速度を設定し変更することで結果として加減速レートが変化する制御を行うから、「最高速度をv1からv2に下げ、加減速レートを小さくする」場合の加速度レートと、「最高速度をv2からv1に上げ、加減速レートを大きくする」場合の加減速レートとを異なった加速度レートとすることは困難であるし、また、このような制御となす動機も見当たらない。
そして、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、上記引用文献2にも記載されていない。
したがって、本願発明1は、相違点1について検討するまでもなく、引用発明ではなく、また、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2ないし9について
本願発明2ないし8も、本願発明1の上記相違点2に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明ではなく、また、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
本願発明9も、本願発明1の上記相違点2に係る「前記搬送部が移動を開始する際に前記露光部が前記露光描画処理を行っていない場合に、前記搬送部が移動を開始する際の加速方向の加速度の大きさを、加速方向の標準加速度の大きさとし、前記搬送部が移動を開始する際に前記露光部が前記露光描画処理を行っている場合に、前記搬送部が移動を開始する際の加速方向の加速度の大きさを、前記加速方向の標準加速度の大きさよりも小さくし、前記搬送部の移動中に前記露光部が前記露光描画処理を行っていない場合に、前記搬送部が移動を停止する際の減速方向の加速度の大きさを、減速方向の標準加速度の大きさとし、前記搬送部の移動中に前記露光部が前記露光描画処理を行っている場合に、前記搬送部が移動を停止する際の減速方向の加速度の大きさを、前記減速方向の標準加速度の大きさよりも小さくする」構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明ではなく、また、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1ないし5及び8、9に係る発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、請求項6、7に係る発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成29年3月27日付け手続補正により補正された請求項1ないし9は、それぞれ「前記搬送部が移動を開始する際に前記判定手段により前記露光部が前記露光描画処理を行っていないと判定された場合に、前記搬送部が移動を開始する際の加速方向の加速度の大きさを、加速方向の標準加速度の大きさとし、前記搬送部が移動を開始する際に前記判定手段により前記露光部が前記露光描画処理を行っていると判定された場合に、前記搬送部が移動を開始する際の加速方向の加速度の大きさを、前記加速方向の標準加速度の大きさよりも小さくし、前記搬送部の移動中に前記判定手段により前記露光部が前記露光描画処理を行っていないと判定された場合に、前記搬送部が移動を停止する際の減速方向の加速度の大きさを、減速方向の標準加速度の大きさとし、前記搬送部の移動中に前記判定手段により前記露光部が前記露光描画処理を行っていると判定された場合に、前記搬送部が移動を停止する際の減速方向の加速度の大きさを、前記減速方向の標準加速度の大きさよりも小さくする移動制御を行う制御手段」という事項、あるいは当該事項に対応する構成を有するものとなっており、上記第4で検討したとおり、本願発明1ないし5及び8、9は、引用発明ではなく、また、本願発明6、7は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし5及び8、9は引用発明ではなく、また、本願発明1ないし9は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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