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特許拒絶査定不服審判

2017-002422

細胞培養容器および細胞培養方法

審判番号
2017-002422
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-242666外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年02月20日
審決日
2017年12月11日
公報発行日
2018年02月23日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (C12M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-242666「細胞培養容器および細胞培養方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月19日出願公開、特開2014- 90691、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成24年11月2日の出願であって、平成28年5月9日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年7月13日付けで手続補正がされ、平成28年11月25日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年2月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年4月24日付けで前置報告がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年11月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-8に係る発明は、以下の引用文献1-3のいずれかに記載された発明及び引用文献4に代表される周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特表2010-531644号公報 2.特開2003-289850号公報 3.特開2006-109715号公報 4.米国特許第5891712号明細書 第3 本願発明 本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成29年2月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 上面が開口した30~60mmの開口幅を有する細胞培養容器であって、 底部に、細胞および培養液を収容するための凹部を有し、 凹部の開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなるオイル収容部を有し、 凹部の底面に、細胞の位置決めをするための窪みが形成されており、 凹部の底面の面積が5mm2以上である、 前記細胞培養容器。」 なお、本願発明2-8の概要は以下のとおりである。 本願発明2は、以下のとおりの発明である。 「【請求項2】 上面が開口した30~60mmの開口幅を有する細胞培養容器であって、 底部に、細胞および培養液を収容するための凹部を有し、 凹部の開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなるオイル収容部を有し、 凹部の底面に、細胞の位置決めをするための複数の窪みが形成されている、 前記細胞培養容器。」 本願発明3-7は、概略、本願発明1または本願発明2を減縮した発明である。 本願発明8は、本願発明1-7に記載の細胞培養容器を用いて細胞を培養する方法の発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【請求項1】 少なくとも2つの顕微鏡対象物(1a、1b)および対象物培地(5a、5b)の監視および/または培養のための機器であって、 -自身の上面(2A)に少なくとも2つの凹部(3a、3b)を備えるスライド(2)を備え、 -各凹部(3a、3b)は、各それぞれの顕微鏡対象物(1a、1b)および対象物培地(5a、5b)を保持するために該凹部よりも小さい断面を有する窪み(4a、4b)を備え、 -該スライド(3a、3b)は、該培地(5a、5b)が相互に流体連通しないように、該凹部(3a、3b)間に共通の重層(7)を提供するためのリザーバ(6a、6b)が提供され、および/または、 -各凹部(3a、3b)は、各それぞれの顕微鏡対象物(1a、1b)および対象物培地(5a、5b)を保持するために該凹部よりも小さい断面を有する窪み(4a、4b)を備え、 -少なくとも該凹部(3a、3b)および/または該窪み(4a、4b)は、該スライド(2)上に自身の輪郭に対応する底面プロファイル(20)を呈し、そのプロファイル(20)の微細構造は、スライドホルダの対応する微細構造に一致するように適合され、および/または、 -各凹部(3a、3b)は、各それぞれの顕微鏡対象物(1a、1b)および対象物培地(5a、5b)を保持するために該凹部よりも小さい断面を有する窪み(4a、4b)を備え、 -該機器の少なくとも一部分には、操作突出部(70)が設けられ、および/または、 -該スライドは、各凹部を一意的に識別するための手段を備える、 機器。 【請求項2】 前記スライド(2)は、前記培地(5a、5b)が相互に流体連通しないように、前記凹部(3a、3b)間に共通の重層(7)を提供するためのリザーバ(6)がさらに提供される、請求項1に記載の機器。」 「【0016】 凹部内に窪みを提供することによって、例えば、顕微鏡に適する平坦な底部を有する小さな窪みに収めるように、傾斜対して下方に摺動させることによって、規定のスポットに顕微鏡対象物を自動的に配置する。窪みによって、後続の操作により顕微鏡用スライド内の対象物の配置が摂動されなくなる。したがって、生有機体等の顕微鏡対象物の自動的な密度主導の配置が、凹部内の中央の窪みに提供される。中央の窪みは、例えば、自動化画像分析アルゴリズムによって容易に検出可能であるリザーバを構成し、リザーバ内における対象物の放置型自動化顕微鏡検査を実行可能にする。好ましくは、リザーバに通じるウェルの側面は、さらにより大きい大きさの凹部内における小さい大きさの窪み内部の対象物を発見する可能性を改善するために、傾斜している。」 「【0022】 図1Aにおいて、本発明のある実施形態に従う機器について、窪みを含む凹部におけるスライドまたは機器の側面断面図を示し、図1Bにおいて、顕微鏡対象物、例えば、胚を保持する図1Aの窪みの詳細図を示す。凹部および機器は、具体的には、胚培養および/または顕微鏡用スライドにおける監視および/または培養のために、胚の密度ベースの配置に適している。 【0023】 上記顕微鏡対象物は、成長中の細胞培養等の顕微鏡有機体であってもよく、また、上記機器は、具体的には、成長中の胚の顕微鏡検査および/または培養に適切である。上記顕微鏡対象物は、より大きいかまたは小さい大きさの対象物の一部であってもよく、例えば、窪みの直径よりも小さいかまたは大きくてもよい。用語の「顕微鏡対象物」は、最大寸法が2mm未満、好ましくは1mm未満、好ましくは500μm未満、最も好ましくは200μm未満である対象物として定義される。」 「【0026】 スライドまたは機器の表面は、上記機器の上面に少なくとも1つの培地充填の凹部3が設けられ、上記凹部は、好ましくは、直径が約4.0mmである凹部等の円柱状であり、直径は、用途に応じて1mmから25mmまで変動し得る。凹部の直径が対象物よりもかなり大きいため、胚は、標準的なIVFピペットを使用して凹部に容易に配置され得る。高さならびに垂直方向および水平方向断面形状等の凹部の他の寸法は、顕微鏡対象物を凹部に容易に挿入できるように選択される。周囲の成長培地密度が胚の密度よりも若干低くなり、かつ上記凹部3の比較的平滑な壁を提供することを確実にして、凹部の底部に胚をゆっくりと下降させる。 【0027】 凹部の実質的に円錐状の平滑底部分または漏斗部31が設けられ、代替として、上記漏斗部は、ピラミッド状、スリット状、楔状、台形、または任意の他の適切な形状の垂直方向断面を有し、また、図1Aに示すように、垂直線に対して約5度から60度、一般的には、30度の角度を有して設けられ得る。したがって、胚は、凹部の底部、すなわち、上記漏斗部31の上または内部に到達すると、重力および/または付与された遠心分離回転により、凹部3および/または漏斗31の中央にある窪み4に転がり込む。培地の粘度が比較的高い場合、放置型装填工程には数分かかる。窪みが小さいと、操作移動にかかわらず、胚のその位置における保持が確実になる。」 「【0029】 窪み4の寸法は、凹部の直径に比べて、比較的小さくなるようにしばしば選択され、対象物の大きさに対して、対象物の直径の約1.1xから10xまでであり、好ましくは、対象物の直径の1.5xから3xであり、対象物の配置がスライド自体に対して十分規定されるようにする。したがって、上記顕微鏡に対するスライドの位置が既知である場合、 窪み全体の体積の高解像度画像および監視を容易に入手することが可能である。窪みには、好ましくは、顕微鏡またはその同等物による上記胚の監視および/または培養を容易にするために、実質的に平面の底面40が設けられる。 【0030】 窪み4の最適高さは、操作移動にかかわらず胚1の配置を維持する必要性によって判断される。壁の高い深めの窪みは、重層の成長培地のバルク移動から胚を保護する。しかしながら、胚は、観察期間終了後にレシピエント患者への移植のために除去され得る。したがって、窪みが浅いほうが、胚を除去し易くなる。合理的な実際の妥協案は、その幅に実質的に類似する深さを有する窪み、すなわち、胚の直径の0.5xから10xであると考えられる。図1Bに示すように、0.3mmの深さおよび0.2mmの直径が選択され得る。胚用窪みの壁は、大部分は垂直であるが、窪みの開口を広くし、かつ胚の除去を容易にするために、例えば、図1Bに示すように5度から20度若干傾斜してもよい。 【0031】 代替として、窪みは、円柱状、箱状、円錐状、切頂状もしくは錐体状、またはその同等物、顕微鏡対象物の保持、操作および環境影響による偶発的な変位の防止、および培地のバルク流動を誘起する任意の適切な形状であるように形成され得る。窪みの寸法が小さくなると、顕微鏡対象物の位置がより十分に規定される。しかしながら、窪みが極めて小さくなると、観察期間の終了時に、窪みからの顕微鏡対象物の除去が非常に困難になり得る。」 「【0033】 スライドの寸法は、好ましくは、25mmx76mm等の、標準的および/または特別に適応された顕微鏡システムおよび/または培養システム内に適合するような寸法である。 【0034】 凹部および/または窪みの垂直切断面は、円柱状、テーパ状、円錐状、スリット状、ピラミッド状、台形状、円形の一部、または実質的に円形を含む群のいずれかの形状を保持し得る。凹部および/または窪みの水平切断面は、円形、楕円形、長方形、ひし型、または6角形を含む群のいずれかの形状を保持し得る。」 「【0036】 図2および図3に示すように、上記スライド3a、3bには、上記凹部3a、3bとの間に共通の重層7を提供するために、リザーバ6A、6Bが設けられ、対象物培地5a、5bが上記凹部および/または窪み内部に提供されると、培地5aが培地5bと相互に流体連通しないようにする。」 「【0041】 対象物培地は、好ましくは、上記培地5a、5bの上面におけるレベルが、上記凹部から上記リザーバ6への移行レベルの上に提供されないように、凹部/窪みの各々に充填される(図2および図3参照)。上記培地は、胚成長培地、他の細胞培養培地、およびその同等物、液体、可塑性、半剛性、または剛性の培地等の任意の適切な材料であってもよい。細胞集団を培養するための異なる培地は、当技術分野において既知である。胚を培養する例は、PCT国際出願第2004/056265号に記載されている。 【0042】 さらに、液体、可塑性、半剛性、または剛性等の可変粘度を有する適切な油等の浸漬培地の重層は、培養および/または顕微鏡検査する顕微鏡対象物を保持する各窪みまたは凹部の上部直径を少なくとも被覆するように提供され得る。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【請求項1】 底面と側壁とを有し、該底面に0.01~0.2mlの容積を有する凹部が設けられてなる精子選択採取用シャーレ。 【請求項2】 前記凹部は、シャーレの底面中央部に設けられ、底面の直径が2~10mmであり、深さが2~10mmである円柱形状を有する請求項1記載の精子選択採取用シャーレ。 【請求項3】 前記シャーレは、直径30~120mmの円形底面と高さ3~10mmの側壁とを有する、請求項1または2記載の精子選択採取用シャーレ。」 「【請求項5】 底面と側壁とを有し、該底面が段階的に深くなる形状を有し、その最深部が0.01~0.2mlである容積を有する凹部である、請求項1記載の精子選択採取用シャーレ。 【請求項6】 底面と側壁とを有し、該底面に第一凹部が設けられ、該第一凹部の底面に0.01~0.2mlの容積を有する第二凹部が設けられてなる、請求項5記載の精子選択採取用シャーレ。 【請求項7】 前記第一凹部は、シャーレの底面中央部に設けられ、底面の直径が20~80mmであり、深さが2~5mmであり、前記第二凹部は、該第一凹部の底面中央部に設けられ、底面の直径が2~10mmであり、深さが2~10mmである円柱形状を有する、請求項6記載の精子選択採取用シャーレ。 【請求項8】 前記シャーレは、直径30~120mmの円形底面と高さ3~10mmの側壁とからなる、請求項6または7記載の精子選択採取用シャーレ。」 「【0010】 本発明の一実施形態を図1を用いて説明する。図1に示すシャーレ1は、底面2と側壁3とからなり、好ましくは円形の底面2を有し、底面2の直径に対してはるかに小さい高さを有する側壁3とからなる有底筒体である。該シャーレ1は、予め精子の生存性を維持するための培養液を収容し、そこに濃縮された精子含有液(後述する精子懸濁液)を注入して、ICSIに用いられる運動精子の選択採取を行うものである。したがって、該シャーレ1は前記培養液および精子懸濁液の収納を可能とする内容積を有するものであり、その好ましい寸法は、底面2の直径が30~120mmであり、側壁3の高さが3~10mmである。該側壁3の高さが低いほど、内容積が小さくなるが、精子懸濁液の注入および運動精子の採取の動作が行いやすくなる。前記シャーレ1は、電子線滅菌が可能で、ポリスチレンやポリエチレン、ポリアミドなどの透明性の高い材料で形成されたものであることが好ましい。 【0011】 前記シャーレ1の底面2には、凹部4が設けられてなる。該凹部4は、ICSI用の運動精子の選択採取に際し、密度勾配体を用いる密度勾配遠心分離法などにより濃縮された、精子を含有する密度勾配体(精子懸濁液と呼ぶ)を収容しうる内容積を有するものである。具体的には、該凹部4の内容積は0.01~0.2mlであり、好ましくは40~80μlである。該凹部4の形状は特に限定されないが、好ましくは直径2~10mm、深さ2~10mmの有底筒体である。該凹部4は、シャーレ1の底面2に厚みをもたせて該底面2に埋没するように設けられてもよいし、図1に示すように底面2から下方へ突出するように設けられてもよい。後者の場合、シャーレ1の側壁3は、凹部4の底面よりも下方へ突出する脚部5を形成するものであれば、シャーレ1の戴置が安定して行えてより好ましい。前記凹部4は、シャーレ1の底面2のどの位置に設けられてもよいが、シャーレ1の成形上および精子濃縮液の注入操作上、底面2のほぼ中央部に設けられることが好ましい。 【0012】 本発明の他の実施形態を図2を用いて説明する。本発明のシャーレは、底面が段階的に深くなる形状を有するものであってもよく、好ましくは図2に示すような2段階で深くなる底面を有するシャーレ11である。該シャーレ11は、底面12と側壁13とからなり、好ましくは円形の底面12を有し、底面12の直径に対してはるかに小さい高さを有する側壁13とからなる有底筒体である。該シャーレ1の寸法や材料は図1に示すシャーレ1と同じものが適用される。該シャーレ11の底面2には、第一凹部141が設けられ、該第一凹部141の底面142には第二凹部143が設けられてなる。該第二凹部143は図1に示すシャーレ1における凹部4と同じ役割を果たすものであり、好ましい寸法および形状も同様に規定される。前記シャーレ11の底面12に設けられる第一凹部141は、より運動性の高い精子を選択するためのものである。該第一凹部141の容積はシャーレ11の容積よりも小さく、具体的には、底面142の直径が20~80mmであり、深さが2~5mmである。該第一凹部141は有底筒状、すなわち側壁144が底面142に対して垂直である必要はなく、むしろ側壁144が底面142に対して角度を有するすり鉢状であることが、精子の選択採取操作上好ましい。 【0013】 また、前記第一凹部141および第二凹部143は、シャーレ11の底面12に厚みを持たせて該底面12に埋没するように設けられてもよいし、図2に示すように底面12から下方へ突出するように設けられてもよい。後者の場合、シャーレ11の側壁13は、底面12よりも下方へ突出する脚部15を形成するものであればより好ましい。前記第一凹部141および第二凹部143は、シャーレ11の底面12のどの一に設けられてもよいが、シャーレ1と同様、底面12のほぼ中央部に設けられることが好ましく、底面12,第一凹部141および第二凹部143のそれぞれの底面が全て同心円であることがより好ましい。 【0014】 次に、本発明のシャーレの使用方法を、図1に示すシャーレ11を用いて説明する。まず、シャーレ1の凹部4周辺にHTF(Human Tubal Fluid Medium)やHuecm(ニプロ社製、登録商標)などの培養液を約50~100μl導入し、さらに該培養液の蒸発を防止するために、該培養液表面をミネラルオイルなどで被覆する。次いで、密度勾配遠心分離法などの公知の方法により濃縮された精子懸濁液10~50μmを、注射針、ガラスキャピラールなど先の細い管状の器具を用いて該凹部4内に注入し、静置する。凹部4内に注入された精子懸濁液は、従来のシャーレを用いた場合と比較して、培養液との接触面積がはるかに小さいため、自然拡散により培養液中に移動する精子の割合も格段に低くなる。一方、精子濃縮液中の運動精子は、自身の運動性により凹部4内の濃縮液中より底面2上の培養液中へと進出し、さらに底面2上を側壁13へ向かって移動する。30~60分静置後、倒立顕微鏡または実体顕微鏡などを用い、底面2上に移動した運動精子のみを採取針などで採取する。このとき、滅菌された器具により培養液を部分的に遮断すると、培養液表面のミネラルオイルが遮断された部分に侵入して培養液を分割する。したがって、この操作により目的の運動精子の存在する培養液を部分的に分割して、より確実に該運動精子のみを採取することがかのうである。また、底面2上に凹部4の縁からの距離を示す目盛りが付けられていれば、精子の運動性の高低を明らかに認識でき、より好ましい。 【0015】 図2に示すようにすり鉢状の第一凹部141が形成されたシャーレ11を用いれば、第二凹部143に注入された精子懸濁液から培養液表面までの深さがより深くなるため、より運動性の高い運動精子のみが培養液表面へ移動することになる。したがって、より運動性の高い運動精子のみを採取することが可能となる。」 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【請求項1】 細胞を収容する複数のウェルを備えたウェルプレートであって、前記ウェルの内径が、該ウェルの底面側から開口部側に向かうに連れて、徐々に拡径して形成されていることを特徴とするウェルプレート。 【請求項2】 前記ウェルの内壁が、円錐状の斜面によって形成されていることを特徴とする請求項1記載のウェルプレート。 【請求項3】 前記円錐状の斜面の頂角が40度から140度の範囲にある請求項2記載のウェルプレート。 【請求項4】 前記ウェルの底面部に、細胞を保持するための凹部が形成されていることを特徴とする請求項1,請求項2または請求項3の何れか一項に記載のウェルプレート。 【請求項5】 請求項1,請求項2,請求項3または請求項4の何れか一項に記載のウェルプレートを細胞培養容器の底面上に一体に形成したことを特徴とする細胞培養器具。」 「【0040】 次に、細胞培養器具13の構造について具体例を挙げて説明する。図3は細胞培養器具13の構成例を示した平面図であり、この細胞培養器具13は、図3に示すように、従来型のディッシュから成る細胞培養容器18と、この細胞培養容器18の底面19上に固着されたウェルプレート14とで構成される。 【0041】 ウェルプレート14を細胞培養容器18に固着する手段としては接着剤等の使用が可能であり、また、細胞培養容器18とウェルプレート14が共にアクリル等の合成樹脂で形成されている場合には、超音波溶着等を利用することも可能である。 【0042】 ウェルプレート14の一部を拡大して図4(a)の平面図に示す。このウェルプレート14は全体として矩形の薄板状に形成され、その表裏を貫通するようにして、細胞を収容するための多数のウェル20がマトリクス状に併設されている。 また、ウェルプレート14の表側の面にはウェル20の各々を区画するようにして突条21が格子状に設けられ、突条21によって仕切られる矩形状の区画内にミネラルオイル等を貯溜して各ウェル20を相互に遮蔽することで、単一細胞毎に異なる培養環境を提供することも可能な構成となっている。 【0043】 図4(b)は図4(a)の矢視A-Aに沿ってウェルプレート14を割って示した断面図である。 各々のウェル20は、図4(b)に示されるように、その内径が、ウェル20の底面側から開口部側に向かうに連れて徐々に拡径するようにして形成されている。 図4(b)ではウェル20の内壁22を円錐状の斜面によって形成した例について示しているが、下に凸の二次曲面あるいは下に凸の球状曲面等を利用してウェル20の内壁22を形成することも可能である。」 「【0051】 次に、細胞を保持するための凹部23をウェル20の底面部に形成したウェルプレート14’の例について図4(c)の断面図を参照して説明する。ウェルプレート14’の平面形状に関しては図4(a)のものと同様である。 【0052】 このように、細胞を保持するための凹部23を円錐状の斜面等から成る内壁22の下端部に連絡し、ウェル20の開口部よりも縮径させた状態でウェル20の底面部に形成することで、ウェル20の底面上における細胞の不用意な移動を確実に防止してキャピラリー10,11による細胞の捕捉やインジェクション操作等を容易に実施できるようになる。 キャピラリー10,11が凹部23の内周壁に干渉して細胞の補足やインジェクション操作等を阻害することがないよう、凹部23の深さは、操作の対象となる細胞の厚さ以下とする。 図4(c)では円筒状の凹部23について記載しているが、凹部23は他の形状であってもよい。 【0053】 ウェルプレート14’も前述したウェルプレート14と同様の要領で細胞培養容器18と別体または一体に形成することが可能である。 【0054】 また、図5に示されるようなスライドガラス24等を細胞培養容器として利用し、このスライドガラス24にウェルプレート14,14’を固着し、或いは、一体に成形して、細胞培養器具25とすることもできる。 無論、ディッシュやスライドガラス等に限らず、他の細胞培養容器を利用して細胞培養器具を構成しても構わない。 【0055】 効果の点については全ての実施態様を通じて共通であり、ウェル20の開口部の近傍でウェル20の内径が増大しているため、テーブル面やウェルプレート14,14’の面に対して傾斜した方向で移動するキャピラリー10,11とウェル20の開口部との干渉防止が可能であり、また、その一方で、ウェル20の底部の近傍における内径は開口部に比べて十分に小さいので、ウェル20の底面上における細胞の不用意な移動を防止してキャピラリー10,11による捕捉やインジェクション操作が容易となる効果がある。 【0056】 特に、細胞を保持するための凹部23をウェル20の底面部に形成した図4(c)のウェルプレート14’の例では、ウェル20の底面上における細胞の不用意な移動が確実に防止されるので、細胞の捕捉やインジェクション操作等を極めて容易に行うことができるメリットがある。」 4.引用文献4について 原査定の拒絶の理由において周知例として引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 「本発明はin vitroの配偶子と胚の培養のための新しい装置に関するものである。本発明は、既存の配偶子/胚のマイクロドロップ培養皿の改良であり、人間の補助生殖技術手順、すなわち、in vitro卵母細胞授精およびin vitro卵母細胞および胚の培養を実現するために、革新的な、費用対効果の高い、カスタマイズされた手段を設けることで特定の有用性を見出す改良である。この装置はまた、様々なヒト及び非ヒト胚に関する作業での使用のために、あるいは、細胞または組織培養媒体の少量を必要とするあらゆる状況において適切であり得る。培養皿や培養機器の分野では、既存の装置は、これらの用途用に特に設計されていない。そのため、より大きな器(または皿)の範囲の中に流体媒体の小さい液滴の完全性を保持または維持するために機能する同心的に離間された小さなウェルを備えた培養皿または培養機器に対するニーズがある。」(第1欄第5行-第22行) 「本発明は、図1及び図2に1として一般的に示されているマイクロドロップ培養皿に向けられている。マイクロドロップ培養皿1は、剛直性で、透明な材料で構成されているほぼ平坦な底面部2を有することを特徴とする内部を有する。本発明の好適な実施形態では、底面部2は、外周が45mmと55mmの間である。周方向の寸法は、一般に、本発明で意図される配偶子/胚への適用のために最適と考えられる。等間隔に配置された、水性媒体13のマイクロドロップを保持する複数のウェル4および8に加えて、意図された処置に必要である非水性流体媒体7の保持のための収容を可能にするからである。」(第3欄第28行-第41行) 「図1に示す微小液滴培養皿の実施形態では、複数の円形のウェル4のように実質的に平坦な底面部2に埋め込まれている実質的に平坦な底部表面2の凹状ウェルを構成している。埋め込まれた円形のウェル4は、この装置の意図された使用に関して重要な流体媒体13の保持が可能となる。」(第3欄第51行―第56行) 第5 対比・判断 1.本願発明1について 1.1.本願発明1と引用文献1に記載された発明との対比・判断 (1)引用文献1に記載された発明の認定 上記第4の1.によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「上面が開口した25mmx76mmのサイズを有する機器であって、 底部に、顕微鏡対象物および対象物培地を保持するための窪みを有し、 窪みの開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された漏斗部からなる凹部を有し、 窪みの底面の寸法が対象物の直径の約1.1xから10xである、 機器。」 (2)対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明1における「顕微鏡対象物」、「対象物培地」、「機器」、「窪み」、「漏斗部」は、それぞれ、本願発明1における「細胞」、「培養液」、「細胞培養容器」、「凹部」、「壁部」に相当する。 イ 引用発明1において「顕微鏡対象物および対象物培地を保持する」の「保持する」ということには当然に「収容する」ということも含まれるものと解される。 したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「上面が開口した細胞培養容器であって、 底部に、細胞および培養液を収容するための凹部を有し、 凹部の開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなる部分を有する、 前記細胞培養容器。」 (相違点) (相違点1)本願発明1は「凹部の底面に、細胞の位置決めをするための窪み」という構成を備えるのに対し、引用発明1はそのような構成を備えていない点。 (相違点2)凹部の開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなる部分が、本願発明1はオイル収容部であるのに対し、引用発明1はそのような特定がされていない点。 (相違点3)開口幅が、本願発明1は30~60mmであるのに対し、引用発明1は25mmx76mmである点。 (相違点4)凹部の底面が、本願発明1は面積が5mm2以上であるのに対し、引用発明1は寸法が細胞の直径の約1.1xから10xである点。 (3)相違点についての判断 (3-1)相違点1について 相違点1について検討する。 引用文献4は1999年の刊行物であり、本願の出願日より13年も前に刊行された文献である。そして、「第4 引用文献、引用発明等」の「4.引用文献4について」に記載のとおり、引用文献4に記載されるマイクロドロップは培地からなるものであり、マイクロドロップ状の培地中で配偶子/胚のような細胞を培養するものと認められる。また、マイクロドロップを保持する複数のウェルは培養皿の底面にマイクロドロップ中の細胞を位置決めしているといえる。 そうすると、細胞培養容器の底面に、培地を保持することで、細胞の位置決めをするウェル、すなわち窪みを設けることは、引用文献4の記載からみて一応周知の技術ということができる。 しかしながら、引用文献1に、 「少なくとも2つの顕微鏡対象物(1a、1b)および対象物培地(5a、5b)の監視および/または培養のための機器であって、 -自身の上面(2A)に少なくとも2つの凹部(3a、3b)を備えるスライド(2)を備え、 -各凹部(3a、3b)は、各それぞれの顕微鏡対象物(1a、1b)および対象物培地(5a、5b)を保持するために該凹部よりも小さい断面を有する窪み(4a、4b)を備え、」(【請求項1】) 「【0016】 凹部内に窪みを提供することによって、例えば、顕微鏡に適する平坦な底部を有する小さな窪みに収めるように、傾斜対して下方に摺動させることによって、規定のスポットに顕微鏡対象物を自動的に配置する。窪みによって、後続の操作により顕微鏡用スライド内の対象物の配置が摂動されなくなる。したがって、生有機体等の顕微鏡対象物の自動的な密度主導の配置が、凹部内の中央の窪みに提供される。中央の窪みは、例えば、自動化画像分析アルゴリズムによって容易に検出可能であるリザーバを構成し、リザーバ内における対象物の放置型自動化顕微鏡検査を実行可能にする。好ましくは、リザーバに通じるウェルの側面は、さらにより大きい大きさの凹部内における小さい大きさの窪み内部の対象物を発見する可能性を改善するために、傾斜している。」と記載されているように、引用発明1は本願発明1でいうところの凹部に細胞を位置決めする機能を持たせている。 とすれば、たとえ培養皿の底面に窪みを設けることが周知技術である(たとえば、引用文献4)としても、引用発明1において、既に位置決め機能を有する凹部に更に位置決めのための窪みを設けることには阻害要因がある。 したがって、当業者といえども、引用発明1及び周知技術から、相違点1に係る本願発明1の「凹部の底面に、細胞の位置決めをするための窪み」という構成を容易に想到することはできない。 (3-2)相違点2について 本願発明では、「凹部」は、細胞および培養液を収容するためのものであり、その開口端から上に「オイル収容部」が位置している。 引用発明1の凹部は、引用文献1の 「【0041】 対象物培地は、好ましくは、上記培地5a、5bの上面におけるレベルが、上記凹部から上記リザーバ6への移行レベルの上に提供されないように、凹部/窪みの各々に充填される(図2および図3参照)。上記培地は、胚成長培地、他の細胞培養培地、およびその同等物、液体、可塑性、半剛性、または剛性の培地等の任意の適切な材料であってもよい。細胞集団を培養するための異なる培地は、当技術分野において既知である。胚を培養する例は、PCT国際出願第2004/056265号に記載されている。 【0042】 さらに、液体、可塑性、半剛性、または剛性等の可変粘度を有する適切な油等の浸漬培地の重層は、培養および/または顕微鏡検査する顕微鏡対象物を保持する各窪みまたは凹部の上部直径を少なくとも被覆するように提供され得る。」との記載からみて、主に培地が充填される部分であり、油については、凹部の開口部全体を少なくとも覆う程度に用いることが記載されているに過ぎない。さらに、引用文献1には、本願発明1の課題である「マイクロドロップ法による細胞培養において、ミネラルオイルの使用量を低減できる細胞培養容器および細胞培養法を提供する」(【0007】)という課題について明示的な記載もない。 したがって、当業者といえども、引用発明1に記載された技術的事項から、相違点2に係る本願発明1の「オイル収容部」という構成を容易に想到することはできない。 (4)小括 したがって、相違点3,4について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 1.2.本願発明1と引用文献2に記載された発明との対比・判断 (1)引用文献2に記載された発明の認定 上記第4の2.によれば、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「上面が開口した30~120mmの直径を有する精子選択採取用シャーレであって、 底部に、精子含有液および培養液を収納するための第二凹部を有し、 第二凹部の開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された側壁を含む第一凹部を有し、 第二凹部の底面の直径が2~10mmである、 前記精子選択採取用シャーレ。」 (2)対比 本願発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明における「精子」、「収納」、「シャーレ」、「第二凹部」、「側壁」は、それぞれ、本願発明1における「細胞」、「収容」、「細胞培養容器」、「凹部」、「壁部」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「上面が開口した細胞培養容器であって、 底部に、細胞および培養液を収容するための凹部を有し、 凹部の開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなる部分を有する、 前記細胞培養容器。」 (相違点) (相違点1’)本願発明1は「凹部の底面に、細胞の位置決めをするための窪み」という構成を備えるのに対し、引用発明2はそのような構成を備えていない点。 (相違点2’)凹部の開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなる部分が、本願発明1はオイル収容部であるのに対し、引用発明2はより運動性の高い精子を選択するために設けられている点。 (相違点3’)開口幅が、本願発明1は30~60mmであるのに対し、引用発明2は30~120mmの直径である点。 (相違点4’)凹部の底面が、本願発明1は面積が5mm2以上であるのに対し、引用発明2は直径が2~10mmである点。 (3)判断 (3-1)相違点1’について 引用発明2においては、引用文献2の【0014】に記載のとおり精子が運動して移動することが前提となっている。したがって、引用発明2において第二凹部に細胞を位置決めする必要性がない。 とすれば、たとえ培養皿の底面に窪みを設けることが周知技術である(たとえば、引用文献4)としても、引用発明2において第二凹部に細胞の位置決めのための窪みを設けることには阻害要因がある。 (4)小括 したがって、相違点2’~相違点4’について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明2及び周知技術(例えば、引用文献4)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 1.3.本願発明1と引用文献3に記載された発明との対比・判断 (1)引用文献3に記載された発明の認定 上記第4の3.によれば、引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 「上面が開口した、ウェルプレートと一体化した細胞培養容器であって、 底部に、ウェルを有し、 ウェルの内径が該ウェルの底面側から開口部側に向かうにつれて、徐々に拡径して形成される内壁からなるウェルを有し、 ウェルの底面に、細胞の不用意な移動を防止するための凹部が設けられている、 前記細胞培養容器。」 (2)対比 本願発明1と引用発明3とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明3における「内壁」、「凹部」は、それぞれ、本願発明1における「壁部」、「窪み」に相当する。 イ 引用発明3において「ウェルの内径が該ウェルの底面側から開口部側に向かうにつれて、徐々に拡径して形成される」という形状は、本願発明1における「凹部の開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された」という形状に対応する。 ウ 引用発明3における「細胞の不用意な移動を防止するため」という目的は、本願発明1における「細胞の位置決めをするため」という目的と同一である。 したがって、本願発明1と引用発明3との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「上面が開口した細胞培養容器であって、 開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなる部分を有し、 底面に、細胞の位置決めをするための窪みを有する、 前記細胞培養容器。」 (相違点) (相違点2’’)開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなる部分が、本願発明1はオイル収容部であるのに対し、引用発明3は細胞を収容するウェルである点。 (相違点3’’)開口幅が、本願発明1は30~60mmであるのに対し、引用発明3は特定されていない点。 (相違点4’’)凹部の底面の面積が、本願発明1は5mm2以上であるのに対し、引用発明3は特定されていない点。 (3)判断 (3-1)相違点2’’について 引用文献3に、 「ウェルプレート14の一部を拡大して図4(a)の平面図に示す。このウェルプレート14は全体として矩形の薄板状に形成され、その表裏を貫通するようにして、細胞を収容するための多数のウェル20がマトリクス状に併設されている。 また、ウェルプレート14の表側の面にはウェル20の各々を区画するようにして突条21が格子状に設けられ、突条21によって仕切られる矩形状の区画内にミネラルオイル等を貯溜して各ウェル20を相互に遮蔽することで、単一細胞毎に異なる培養環境を提供することも可能な構成となっている。」(【0042】)と記載されているように、引用発明3においてミネラルオイルが収容されるのは突条21によって仕切られる矩形状の区画内であり、ウェル内にミネラルオイルを収容することは引用文献3には記載がない。さらに、引用文献3には、本願発明1の課題である「マイクロドロップ法による細胞培養において、ミネラルオイルの使用量を低減できる細胞培養容器および細胞培養法を提供する」(【0007】)という課題について明示的な記載もない。 したがって、当業者といえども、引用発明3から、相違点2’’に係る本願発明1の「開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなるオイル収容部」という構成を容易に想到することはできない。 (4)小括 したがって、相違点3’’及び相違点4’’について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.本願発明2について 2.1.本願発明2と引用発明1との対比・判断 (1)対比 本願発明2と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明1における「顕微鏡対象物」、「対象物培地」、「機器」、「窪み」、「漏斗部」は、それぞれ、本願発明1における「細胞」、「培養液」、「細胞培養容器」、「凹部」、「壁部」に相当する。 イ 引用発明1において「顕微鏡対象物および対象物培地を保持する」の「保持する」ということには当然に「収容する」ということも含まれるものと解される。 したがって、本願発明2と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「上面が開口した細胞培養容器であって、 底部に、細胞および培養液を収容するための凹部を有し、 凹部の開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなる部分を有する、 前記細胞培養容器。」 (相違点) (相違点1-2)本願発明2は「凹部の底面に細胞の位置決めをするための複数の窪み」という構成を備えるのに対し、引用発明1はそのような構成を備えていない点。 (相違点2)凹部の開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなる部分が、本願発明2はオイル収容部であるのに対し、引用発明1はそのような特定がされていない点。 (相違点3)開口幅が、本願発明2は30~60mmであるのに対し、引用発明1は25mmx76mmである点。 (2)相違点についての判断 相違点1-2については、相違点1にさらに窪みが複数存在する点が相違する点として加わったものであるから、1.本願発明1についてで指摘した理由と同様の理由により、当業者が容易に想到することはできない。 相違点2については、1.本願発明1についてで指摘したとおりである。 (3)小括 したがって、相違点2,3について判断するまでもなく、本願発明2は、引用発明1及び周知技術(例えば、引用文献4)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.2.本願発明2と引用発明2との対比・判断 (1)対比 本願発明2と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明2における「精子」、「収納」、「シャーレ」、「第二凹部」、「側壁」は、それぞれ、本願発明2における「細胞」、「収容」、「細胞培養容器」、「凹部」、「壁部」に相当する。 したがって、本願発明2と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「上面が開口した細胞培養容器であって、 底部に、細胞および培養液を収容するための凹部を有し、 凹部の開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなる部分を有する、 前記細胞培養容器。」 (相違点) (相違点1’-2)本願発明2は「凹部の底面に、細胞の位置決めをするための複数の窪み」という構成を備えるのに対し、引用発明2はそのような構成を備えていない点。 (相違点2’)凹部の開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなる部分が、本願発明2はオイル収容部であるのに対し、引用発明2はより運動性の高い精子を選択するために設けられている点。 (相違点3’)開口幅が、本願発明2は30~60mmであるのに対し、引用発明2は30~120mmの直径である点。 (2)判断 相違点1’-2については、相違点1にさらに窪みが複数存在する点が相違する点として加わったものであるから、1.本願発明1についてで指摘した理由と同様の理由により、当業者が容易に想到することはできない。 (3)小括 したがって、相違点2’、3’について判断するまでもなく、本願発明2は、引用発明2及び周知技術(例えば、引用文献4)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.3.本願発明2と引用発明3との対比・判断 (1)対比 本願発明2と引用発明3とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明3における「内壁」、「凹部」は、それぞれ、本願発明2における「壁部」、「窪み」に相当する。 イ 引用発明3において「ウェルの内径が該ウェルの底面側から開口部側に向かうにつれて、徐々に拡径して形成される」という形状は、本願発明2における「凹部の開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された」という形状に対応する。 ウ 引用発明3における「細胞の不用意な移動を防止するため」という目的は、本願発明2における「細胞の位置決めをするため」という目的と同一である。 したがって、本願発明2と引用発明3との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「上面が開口した細胞培養容器であって、 開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなる部分を有し、 底面に、細胞の位置決めをするための窪みを有する、 前記細胞培養容器。」 (相違点) (相違点1’’-2)本願発明2は「凹部の底面に、細胞の位置決めをするための複数の窪み」という構成を備えるのに対し、引用発明3は複数の窪みという構成を備えていない点。 (相違点2’’)開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなる部分が、本願発明2はオイル収容部であるのに対し、引用発明3は細胞を収容するウェルである点。 (相違点3’’)開口幅が、本願発明2は30~60mmであるのに対し、引用発明3は特定されていない点。 (2)判断 相違点2’’については、1.本願発明1についてで指摘したとおりである。 (3)小括 したがって、相違点1’’-2及び相違点3’’について判断するまでもなく、本願発明2は、引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3.本願発明3-7について 本願発明3-7も、本願発明1の「凹部の底面に細胞の位置決めをするための窪み」、「開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなるオイル収容部」または本願発明2の「凹部の底面に細胞の位置決めをするための複数の窪み」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1または本願発明2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1ないし3及び周知技術(例えば、引用文献4)に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明8について 本願発明8は、本願発明1-7の細胞培養容器を用いる方法の発明であり、本願発明1の「凹部の底面に細胞の位置決めをするための窪み」、「開口端から外縁に進むに従って高くなるように形成された壁部からなるオイル収容部」または本願発明2の「凹部の底面に細胞の位置決めをするための複数の窪み」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1または本願発明2と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1ないし3及び周知技術(例えば、引用文献4)に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-002422

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