特許拒絶査定不服審判
2017-002209
光ファイバ構造及びその製造方法
- 審判番号
- 2017-002209
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-283129外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月15日
- 審決日
- 2017年12月04日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】三菱電線工業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人前田特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-283129「光ファイバ構造及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月 7日出願公開、特開2014-126687、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月26日の出願であって、平成28年4月25日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月13日付けで意見書の提出がされると同時に手続補正がされ、同年12月13日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年2月15日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年12月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし10に係る発明は、以下の引用文献1ないし引用文献6に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1 国際公開第2011/067908号
2 特開2003-33893号公報
(技術常識を示す文献、段落[0006])
3 特開2007-29973号公報
(技術常識を示す文献、段落[0004])
4 特表2010-540986号公報
(周知技術を示す文献、段落[0022])
5 特開2007-227713号公報
(周知技術を示す文献、段落[0023])
6 米国特許第4575181号明細書
(周知技術を示す文献、第2欄第34行~第44行)
第3 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成29年2月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
コアと、石英で形成された最外層と、を有する光ファイバ構造であって、外周面に、断面形状が弓型に形成された凹溝であって、前記凹溝を構成する面が平面部分を含まないものが形成されており、前記凹溝の開口幅が0.02~1mmであり、且つ前記凹溝の深さが0.01~0.1mmであると共に、前記凹溝内の全面が前記最外層と同種材料の粒子が付いて形成された算術平均粗さ(Ra)が0.1~10μmである凹凸面に構成されている光ファイバ構造。
【請求項2】
請求項1に記載された光ファイバ構造において、
前記外周面も前記最外層と同種材料の粒子が付いて形成された凹凸面に構成されている光ファイバ構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された光ファイバ構造において、
前記凹溝が長さ方向に延びるように形成され且つ螺旋状に設けられている光ファイバ構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された光ファイバ構造において、
前記凹溝の開口幅が前記凹溝の深さの3倍以上である光ファイバ構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された光ファイバ構造の製造方法において、
コアと、石英で形成された最外層と、を有する加工前光ファイバ構造の外周面に凹溝を形成するステップと、
前記加工前光ファイバ構造の外周面に形成した凹溝を、前記加工前光ファイバ構造の最外層と同種材料の粒子のヒュームの雰囲気に配置するステップと、
を含む光ファイバ構造の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載された光ファイバ構造の製造方法において、
前記加工前光ファイバ構造の外周面にレーザ加工により凹溝を形成すると共に、前記加工前光ファイバ構造のレーザ加工部分を、前記レーザ加工により発生する前記加工前光ファイバ構造の最外層と同一材料の粒子のヒュームの雰囲気に配置する光ファイバ構造の製造方法。」
第4 引用文献の記載及び引用発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2011/067908号(以下「引用文献」という。)には、図とともに、以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。
ア 「[請求項5] コアと、該コアの外周面を覆うクラッドとを有するファイバ本体に、クラッドモードで伝送される光を該クラッド外に散乱させるクラッドモード除去部が形成された光ファイバであって、
前記クラッドモード除去部は、前記クラッドの外周面に溝状に形成されていることを特徴とする光ファイバ。
[請求項6] 請求項5において、
前記クラッドモード除去部は、前記クラッドに対してレーザが照射されながら、該クラッドに対するレーザの照射位置が該クラッドの周方向に相対的に変更されることで、該クラッドの外周面にリング溝状に形成されていることを特徴とする光ファイバ。
[請求項7] 請求項5において、
前記クラッドモード除去部は、前記クラッドに対してレーザが照射されながら、該クラッドに対するレーザの照射位置が該クラッドの周方向及び長手方向に相対的に変更されることで、該クラッドの外周面に螺旋溝状に形成されていることを特徴とする光ファイバ。
[請求項8] 請求項6又は7において、
前記クラッドモード除去部は、前記クラッドに対してレーザが断続的に照射されることで、該クラッドの外周面に溝状に複数形成されていることを特徴とする光ファイバ。」(第15ないし16頁)
イ 「[0041] 《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る光ファイバの構成を示す側面断面図である。この光ファイバ10は、機械加工分野におけるレーザ加工機において、レーザ光の伝送用導波路として用いられるものである。
[0042] 図1に示すように、光ファイバ10は、ファイバ中心をなすコア15と、コア15の外周面を覆うクラッド20と、クラッド20の外周面を覆う樹脂層25とを有するファイバ本体11で構成されている。コア15及びクラッド20は、それぞれ全体が石英ガラスから構成されている。
[0043] 前記光ファイバ10は、入射された光がコア15とクラッド20との界面で反射を繰り返しながらコア15内を伝送するように構成されている。コア15には、ゲルマニウム(Ge)がドープされており、クラッド20より屈折率が高くなっている。樹脂層25は、光ファイバ10の両端部において除去されている。ファイバ本体11の両端部には、金属製の光コネクタ35が取り付けられており、樹脂層25が除去されて露出したクラッド20を覆っている。
[0044] 前記ファイバ本体11の両端部において露出したクラッド20の外周面には、周方向に延びるリング溝状のクラッドモード除去部21が形成されている。このクラッドモード除去部21は、クラッド20内を伝送する光をファイバ本体11外に逃がすためのものであり、ファイバ本体11の長手方向に間隔をあけて複数形成されている。」
ウ 図1の側面断面図は、以下のものである。
(2)引用文献に記載された発明
ア 上記(1)アの記載からして、引用文献には、
「コアと、該コアの外周面を覆うクラッドとを有するファイバ本体に、クラッドモードで伝送される光を該クラッド外に散乱させるクラッドモード除去部が形成された光ファイバであって、
前記クラッドモード除去部は、前記クラッドの外周面に溝状に形成されている、光ファイバ。」が記載され(請求項5を参照。)、
具体的には(請求項6ないし請求項8を参照。)、
前記「クラッドモード除去部」は、前記クラッドの外周面に対してレーザを照射して形成された「複数の溝」であってもよいものと認められる。
イ 上記(1)イの記載によれば、
上記アの「コアの外周面を覆うクラッド」は、全体が石英ガラスから構成されたものであってもよいことが理解できる。
ウ 上記(1)イの記載を踏まえて、図1の側面断面図を見ると、
上記アの「クラッドモード除去部」とは、クラッドの外周面に形成された「断面形状がU字状の複数の溝」であってもよいものと認められる。
エ 上記アないしウより、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「コアと、該コアの外周面を覆う全体が石英ガラスから構成されたクラッドとを有するファイバ本体に、クラッドモードで伝送される光を該クラッド外に散乱させるクラッドモード除去部が形成された光ファイバであって、
前記クラッドモード除去部は、前記クラッドの外周面に対してレーザを照射して形成された断面形状がU字状の複数の溝である、光ファイバ。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア(ア)引用発明の「コア」は、本願発明1の「コア」に相当する。
(イ)本願発明1の「最外層」とは、本願明細書の【0016】の「光ファイバ11は、相対的に高屈折率なコア11aとそれを被覆する相対的に低屈折率な最外層のクラッド11bとの二層構造に構成されている。」との記載からして、二層構造における「クラッド」を包含するものであるから、引用発明の「石英ガラスから構成されたクラッド」は、本願発明1の「石英で形成された最外層」に相当する。
(ウ)引用発明の「光ファイバ」は、「コアと、該コアの外周面を覆う全体が石英ガラスから構成さたクラッドとを有する」ことから、引用発明の「光ファイバ」は、「コアと、石英で形成された最外層と、を有する光ファイバ構造」を備えたものであるといえる。
(エ)引用発明の「断面形状がU字状の複数の溝」は、クラッドの外周面に対してレーザが照射されることで形成されたものであるから、
本願発明1と引用発明とは、「外周面に凹溝が形成されている」点で一致する。
イ 以上のことから、本願発明1と引用発明は、次の点で一致する。
<一致点>
「コアと、石英で形成された最外層と、を有する光ファイバ構造であって、外周面に、凹溝が形成されている、光ファイバ構造。」
ウ 一方、本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。
<相違点1>
凹溝の断面形状に関して、
本願発明1は、「弓型」であるのに対して、
引用発明は、「U字状」であり、「弓型」ではない点。
<相違点2>
凹溝の大きさに関して、
本願発明1は、「凹溝の開口幅が0.02~1mmであり、且つ前記凹溝の深さが0.01~0.1mmである」のに対して、
引用発明は、開口幅等は不明である点。
<相違点3>
凹溝を構成する面に関して、
本願発明1は、「平面部分を含まないもの」であり、「凹溝内の全面が最外層と同種材料の粒子が付いて形成された算術平均粗さ(Ra)が0.1~10μmである凹凸面に構成されている」ものであるのに対して、
引用発明は、「溝」が、平面部分を含むか否か不明であり、かつ、凹凸面に構成されているか否かも不明である点。
(2)相違点についての判断
ア まず、上記<相違点3>について検討する。
(ア)上記<相違点3>に係る本願発明1の「凹溝内の全面が最外層と同種材料の粒子が付いて形成された算術平均粗さ(Ra)が0.1~10μmである凹凸面に構成されている」という発明特定事項の技術的意義について検討する。
a 本願明細書には、以下の記載がある。
(a)「【0005】
【特許文献1】WO2011/067908
【特許文献2】米国特許第4575181号明細書
【特許文献3】特開2010-540986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、特許文献1に開示されているように外周面に溝を形成した光ファイバの場合、クラッドモード光の除去は効率的に行えるものの、光ファイバの外部に放出されるレーザ光が指向性を有することがあり、そのため、光ファイバの外部に放出されたレーザ光が光コネクタ内の特定の部分に集中的に照射され、それによって光コネクタが高温に加熱されて損傷したり、或いは、レーザ光が光コネクタ内を反射伝搬して再び光ファイバに入射及び伝搬して被覆層を焼損したりする虞がある。」
(b)「【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外周面に凹部が形成されていると共に、凹部内の全面が最外層と同種材料の粒子が融着して形成された凹凸面に構成されているので、これらの凹部及び凹凸面により、光ファイバ構造の最外層を伝搬する光を、指向性を有することなく光ファイバ構造の外部に放出させて効率的に除去することができる。」
(c)「【0021】
……また、光ファイバ11の外部に放出されるレーザ光は、凹溝14内の全面が凹凸面に構成されているので、直線的に反射や屈折を起こさず、分散するように広がることとなる。従って、外部に放出されたレーザ光が指向性を有して光コネクタ内の特定の部分に集中的に照射され、それによって光コネクタが高温に加熱されて損傷したり、また、レーザ光が光コネクタ内を反射伝搬して再び光ファイバ11に入射及び伝搬して被覆層12を焼損したりするといった不具合の発生を抑制することができる。」
(d)「【0027】
このとき、光ファイバ11の露出した一端部13には、レーザ加工により長さ方向に螺旋状に延びる凹溝14が形成される。また、レーザ加工により発生するヒュームHの排出を行わなければ、レーザ加工部分は、クラッド11bと同一材料の粒子のヒュームHの雰囲気に配置されることとなり、その結果、光ファイバ11の一端部13における凹溝14内の全面及び外周面に、クラッド11bと同一材料の粒子が融着して形成された凹凸面が構成される。ヒュームHによる粒子を融着させて凹凸面を効率的に構成する観点からは、凹溝14を浅底に形成することが好ましく、具体的には、凹溝14の開口幅を凹溝14の深さの3倍以上に形成することが好ましい。また、融着した粒子の再溶融を回避する観点からは、光ファイバ11の一端部13のレーザ加工は、基端側から先端側に向かって行うことが好ましい。」
b 上記aの記載からして、
上記発明特定事項の技術的意義は、
クラッドを伝搬する光を外部に放出させる際に、放出されたレーザ光が指向性を有することがないようにするためであると解される。
そして、凹凸面は、レーザー加工を行う際に、加工時に発生するヒュームによる粒子を「凹溝内の全面」に融着させることで形成できることが理解できる。
(イ)一方、引用発明の「断面形状がU字状の複数の溝」は、クラッドの外周面に対してレーザを照射して形成されたものであるところ、引用文献には、レーザ加工を行う際に、加工時に発生するヒュームを排出することは明記されていない。
しかし、レーザー加工時に発生するヒューム等の飛散物は、加工対象物等に付着しないように、何らかの手段により排出されるのが一般的であることから(例えば、特開2004-268080号公報の【要約】及び【0030】を参照。)、引用発明の「断面形状がU字状の複数の溝」は、ヒューム等の飛散物を排出した雰囲気で形成されていると解するのが自然である。
(ウ)また、引用文献2ないし引用文献6の記載を見ても、引用発明において、「断面形状がU字状の複数の溝」にヒューム等の飛散物を融着させようとする動機を見出すことができない。
したがって、引用発明において、溝を凹凸面が構成されているものとすることは、当業者が容易に想到することができない。
(エ)よって、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たことであるということはできない。
イ 以上のことから、上記相違点1及び相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし引用文献6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2ないし本願発明6について
本願発明2ないし本願発明6も、本願発明1と同一の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし引用文献6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし本願発明6は、当業者であっても、引用文献1ないし引用文献6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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