特許異議申立
2016-700421
軌陸作業車の鉄輪揺動ロック装置
- 審判番号
- 2016-700421
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-052274
- 登録番号
- 特許第5813340号(P5813340)
- 請求日
- 2016年05月13日
- 審決日
- 2017年07月06日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社タダノ
- 【権利者代理人】白川 孝治
- 【異議申立人】株式会社 アイチコーポレーション
- 【異議申立人代理人】大西 正悟
- 【異議申立人代理人】並木 敏章
- 審判長/審判官
- 審判長 島田 信一
- 審判官 和田 雄二
- 審判官 尾崎 和寛
- 分類
- P1651.121-YAA(B60F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5813340号発明「軌陸作業車の鉄輪揺動ロック装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5813340号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第5813340号の請求項4に係る特許を維持する。
特許第5813340号の請求項1~3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5813340号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成23年3月10日に特許出願され、平成27年10月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 株式会社アイチコーポレーション(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年9月23日付けで取消理由を通知して、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたところ、指定期間後である平成28年12月5日付けで訂正の意思がある旨記載された上申書(以下「上申書」という。)が提出されたので、平成29年2月22日付けで取消理由(以下「取消理由」という場合には、当該取消理由を指す。)を通知(決定の予告)し、同年4月18日に意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成29年4月18日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、それぞれ「本件明細書」、「本件特許請求の範囲」といい、図面を含めて「本件明細書等」という。)を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
なお、下線部は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
本件特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
本件特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
本件特許請求の範囲の請求項4に「請求項1において、コントローラに前記揺動ロック手段がロック状態であるときの作業車転倒防止性能を記憶したロック時のデータ記憶手段を備え、オンレール作業時において、前記ロック状態検出手段がロック状態を検出しているときには該ロック状態検出手段からのロック状態検出信号に基いて前記ロック時のデータ記憶手段で記憶している作業車転倒防止性能を用いて作業機の限界姿勢範囲を制御するように構成している、ことを特徴とする軌陸作業車の鉄輪揺動ロック装置。」と記載されているのを、「車体に道路走行用のタイヤ車輪と軌道走行用の4つの鉄輪とを備え、さらに後輪側又は前輪側のいずれか一方の左右鉄輪を車体フレームの下部に上下揺動自在に枢支した揺動フレームの左右各端部に取付けた軌陸作業車において、前記車体フレームと前記揺動フレームとの間に、該揺動フレームを前記車体フレームに対して揺動不能にロックするための揺動ロック手段を設け、前記揺動ロック手段がロック状態にあるかロック解除状態にあるのかを検出するロック状態検出手段を有しているとともに、コントローラに前記揺動ロック手段がロック状態であるときの作業車転倒防止性能を記憶したロック時のデータ記憶手段を備え、オンレール作業時において、前記ロック状態検出手段がロック状態を検出しているときには該ロック状態検出手段からのロック状態検出信号に基いて前記ロック時のデータ記憶手段で記憶している作業車転倒防止性能を用いて作業機の限界姿勢範囲を制御するように構成している、ことを特徴とする軌陸作業車の鉄輪揺動ロック装置。」に訂正する。
(5)訂正事項5
本件明細書の段落【0015】に「[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(6)訂正事項6
本件明細書の段落【0021】に「本願請求項1の発明」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(7)訂正事項7
本件明細書の段落【0021】に「この請求項1」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(8)訂正事項8
本件明細書の段落【0022】に「この請求項1」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(9)訂正事項9
本件明細書の段落【0023】に「この請求項1」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(10)訂正事項10
本件明細書の段落【0025】に「この請求項1の発明」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(11)訂正事項11
本件明細書の段落【0027】に「この請求項1」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(12)訂正事項12
本件明細書の段落【0028】を削除する。
(13)訂正事項13
本件明細書の段落【0029】を削除する。
(14)訂正事項14
本件明細書の段落【0030】を削除する。
(15)訂正事項15
本件明細書の段落【0031】を削除する。
(16)訂正事項16
本件明細書の段落【0032】を削除する。
(17)訂正事項17
本件明細書の段落【0033】を削除する。
(18)訂正事項18
本件明細書の段落【0034】に「[本願請求項4の発明]
本願請求項4の発明は、上記請求項1の軌陸作業車の鉄輪揺動ロック装置において」と記載されているのを「又、本願発明は」に訂正する。
(19)訂正事項19
本件明細書の段落【0035】に「この請求項5」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(20)訂正事項20
本件明細書の段落【0036】に「この請求項4」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(21)訂正事項21
本件明細書の段落【0037】に「[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(22)訂正事項22
本件明細書の段落【0038】に「[本願請求項]」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(23)訂正事項23
本件明細書の段落【0039】に「本願請求項1の発明」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(24)訂正事項24
本件明細書の段落【0040】に「この請求項1」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(25)訂正事項25
本件明細書の段落【0041】を削除する。
(26)訂正事項26
本件明細書の段落【0042】を削除する。
(27)訂正事項27
本件明細書の段落【0043】を削除する。
(28)訂正事項28
本件明細書の段落【0044】を削除する。
(29)訂正事項29
本件明細書の段落【0045】を削除する。
(30)訂正事項30
本件明細書の段落【0046】に「[本願請求項4の発明の効果]
本願請求項4の発明は、請求項1の鉄輪揺動ロック装置において」と記載されているのを「又、本願発明は」に訂正する。
(31)訂正事項31
本件明細書の段落【0048】に「この請求項4」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
(32)訂正事項32
本件明細書の段落【0048】に「上記請求項1の効果に加えて、」と記載されているのを削除する。
(33)訂正事項33
本件明細書の段落【0069】に「尚、揺動ロック手段5として左右2つのロックシリンダ50, 50を使用したことは、本願請求項2の構成に対応するものである。」と記載されているのを削除する。
(34)訂正事項34
本件明細書の段落【0084】に「(本願請求項2の内容)」と記載されているのを削除する。
(35)訂正事項35
本件明細書の段落【0085】に「本願請求項1の後段部分に対応する構成と、本願請求項3に対応する構成と、本願請求項4に対応する構成とを、それぞれ」と記載されているのを「次の構成を」に訂正する。
(36)訂正事項36
本件明細書の段落【0086】に「本願請求項1の後段部分に対応する構成として」と記載されているのを「本願発明は」に訂正する。
(37)訂正事項37
本件明細書の段落【0091】に「本願請求項3に対応する構成として」と記載されているのを「又」に訂正する。
(38)訂正事項38
本件明細書の段落【0095】に「本願請求項4に対応する構成として」と記載されているのを「又」に訂正する。
(39)訂正事項39
本件明細書の段落【0105】に「本願請求項1」と記載されているのを「本願発明」に訂正する。
2.訂正の適否の判断
(1)訂正事項1~3について
訂正事項1~3は、それぞれ訂正前の請求項1~3を削除するものであるから、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項1~3は、請求項1~3を削除するものであるため、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(2)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項1を引用しないものに改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項4は、実質的な内容の変更がないため、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(3)訂正事項5~18、20~39について
訂正事項5~18、20~39は、上記訂正事項1~4の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項5~18、20~39は、単に特許請求の範囲と明細書との整合を図るためのものであり、新規な事項が導入されるわけでないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(4)訂正事項19について
訂正事項19は、特許請求の範囲に存在しない「この請求項5」という記載を、「本願発明」とすることで、特許請求の範囲との整合を図るためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項19は、単に特許請求の範囲と明細書との整合を図るためのものであり、新規な事項が導入されるわけでないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(5)一群の請求項について
訂正事項1~4に係る訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、請求項1を引用するものであるから、請求項1~4は一群の請求項である。そして本件訂正請求は、かかる一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。
(6)明細書の訂正について
訂正事項5~39の明細書の訂正は、請求項1~4に関係するものであり、本件訂正請求は、請求項1~4の全てを対象とするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。
3.まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 特許異議の申立ての概要
訂正前の請求項1~3に係る特許に対して、各特許は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基いて、また、同請求項4に係る特許に対して、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証、又は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、当該請求項1~4に係る特許は、取り消されるべきものであるというものである。
2 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正が認められ、特許異議の申立ての対象となる請求項1~3に係る特許は削除されたため、特許異議の申立ての対象として存在するものは、訂正後の請求項4に係る特許のみとなる。
本件訂正により訂正された請求項4に係る発明(以下「本件発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項4に記載した事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項4】
車体に道路走行用のタイヤ車輪と軌道走行用の4つの鉄輪とを備え、さらに後輪側又は前輪側のいずれか一方の左右鉄輪を車体フレームの下部に上下揺動自在に枢支した揺動フレームの左右各端部に取付けた軌陸作業車において、
前記車体フレームと前記揺動フレームとの間に、該揺動フレームを前記車体フレームに対して揺動不能にロックするための揺動ロック手段を設け、
前記揺動ロック手段がロック状態にあるかロック解除状態にあるのかを検出するロック状態検出手段を有しているとともに、
コントローラに前記揺動ロック手段がロック状態であるときの作業車転倒防止性能を記憶したロック時のデータ記憶手段を備え、
オンレール作業時において、前記ロック状態検出手段がロック状態を検出しているときには該ロック状態検出手段からのロック状態検出信号に基いて前記ロック時のデータ記憶手段で記憶している作業車転倒防止性能を用いて作業機の限界姿勢範囲を制御するように構成している、
ことを特徴とする軌陸作業車の鉄輪揺動ロック装置。」
3 甲各号証に記載された事項及び引用発明
(1)甲第1号証に記載された事項及び引用発明
甲第1号証(特開2000-233617号公報)には、「軌道用作業車」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。下線は当審で付与。以下同様。
(1a)「【請求項1】 走行輪(2)を有した下部走行体(1)を備え、この下部走行体(1)の上部に作業機(6)を装着すると共に、前記下部走行体(1)の走行方向前後それぞれに軌条を走行するための軌条用車輪(10)を張出格納自在となるように取付けた軌道用作業車において、
下部走行体(1)の走行方向前後に取付けた軌条用車輪(10)の前後側どちらか一方を、走行方向前後に向かう軸により下部走行体(1)に対して走行方向左右において上下に揺動する揺動フレーム板(28)を介して下部走行体(1)に取付けたことを特徴とする軌道用作業車。」
(1b)「【0009】・・・下部走行体1はその走行方向前後それぞれに地面上を走行するための走行輪2を有する・・・そして、この下部走行体1の上部に上部旋回体4を旋回自在に備え、この上部旋回体4に運転室5を備えると共に作業機6を装着する。この作業機6は伸縮自在となるブーム7を起伏自在に取付け、このブーム7の先端に巻上げ巻下げ可能なフック8を取付けたクレーン装置である。」
(1c)「【0013】一方、下部走行体1の走行方向後側に取付ける軌条用車輪10は、図3、図4及び図5に示すように、下部走行体1の走行方向後端に取付けたアウトリガ装置3の後側において、下部走行体1の左右それぞれに一対の取付けブラケット22を固着し、この一対の取付けブラケット22は左右内側に位置する上方に大きく延びた内片22Aと左右外側に位置する外片22Bとからなる。そして、この左右それぞれに固着する取付けブラケット22の内片22Aと外片22Bとにわたって支持ピン23をそれぞれ架設し、この支持ピン23を介してアーム24をそれぞれ上下回動自在に取付け、この左右それぞれのアーム24は一対の三角片24Aからなると共に、このアーム24と下部走行体1とにわたって張出格納用シリンダ11を取付けている。そして、この左右のアーム24が回動フレーム板25に固着しており、この回動フレーム板25は軌条用車輪10を軌道幅に収めるのに必要な長さとなっている。そして、この回動フレーム板25の左右中央に、その走行方向前後それぞれに三角形状のセンターブラケット26を備え、この前後のセンターブラケット26にわたって走行方向前後に向かう軸であるセンターピン27を架設し、このセンターピン27を介して揺動フレーム板28を回動フレーム板25の内側に位置するように取付ける。この揺動フレーム板28も下部走行体1の左右幅と略同じ長さとなると共に、回動フレーム板25に対してセンターピン27を中心にして走行方向左右において上下に揺動するようになる。そして、この揺動フレーム板28の左右それぞれに車輪保持ブラケット29をそれぞれ固着し、この左右の車輪保持ブラケット29は左右内側に位置する内片29Aと左右外側に位置する外片29Bとからなる。そして、この左右の車輪保持ブラケット29の内片29Aと外片29Bとにわたって車軸30をそれぞれ架設して、この車軸30に軌条用車輪10を取付けている。」
(1d)以下の図1及び図3が示されている
上記摘示(1a)、(1b)及び(1d)より、軌道用作業車は、その下部走行体1に地面上を走行する走行輪2と4つの軌条用車輪10とを備えていることが明らかである。
以上によれば、甲第1号証には以下の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
<引用発明>
「下部走行体1に地面上を走行する走行輪2と4つの軌条用車輪10とを備え、軌条用車輪10の前後側どちらか一方を、走行方向前後に向かう軸により下部走行体1に対して走行方向左右において上下に揺動する揺動フレーム板28を介して下部走行体1に取付けた軌道用作業車。」
(2)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証(特開平11-165998号公報)には、「産業車両の車体揺動制御装置及び産業車両」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行輪を支持する車軸が車体に揺動可能に設けられたフォークリフト等の産業車両において、走行状態や荷役状態によって車軸の揺動規制制御を行う産業車両の車体揺動制御装置及び産業車両に関するものである。」
(2b)「【0021】左右の前輪7はデフリングギア8(図3に示す)及び変速機(図示せず)を介してエンジン9と作動連結され、エンジン9の動力によって駆動される。図3,図4に示すように、車体フレーム1aの後下部には、車軸としてのリアアクスル10が車幅方向へ延びた状態でセンタピン10aを中心に上下方向に揺動可能に支持されている。・・・」
【0022】図4に示すように、車体フレーム1aとリアアクスル10との間には、1個の油圧式のダンパ(油圧シリンダ)13が両者を連結する状態で配設されている。・・・
【0024】電磁切換弁14のスプールが図4に示す遮断位置に配置されると、ダンパ13の両室R1,R2間での作動油の流出・流入が不能になって、リアアクスル10がロックされる。一方、電磁切換弁14のスプールが連通位置(図4の状態からスプールが反対位置に切換えられた位置)に配置されると、ダンパ13の両室R1,R2間での作動油の流出・流入が可能になって、リアアクスル10が自由に揺動できるフリー状態になる。・・・
【0040】また、高揚高かつ高荷重(図7に示すマップM中の荷役ロック領域)と判定されたときに、原則としてリアアクスル10をロックさせる。」
(2c)「【0049】このように本実施形態によれば、高揚高かつ高荷重によってリアアクスル10がロックされたときに警告灯31に黄色が点灯し、・・・
【0068】・・・例えば電磁切換弁14のスプールの位置を検出し、リアアクスル10が正しい状態に保持されているかどうかの判定をするようにしてもよい。」
(2d)以下の図4及び図7が示されている。
(3) 甲第3号証に記載された事項
甲第3号証(特開2002-79874号公報)には、「作業車両用車輪走行装置」に関し、図面とともに以下の記載がある。
(3a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行体の前後左右の四カ所に走行用車輪を有し、走行体上に作業装置を有して構成される作業車両用車輪走行装置に関する。」
(3b)「【0024】上記のように第1枢支ピン12を中心として下部走行体2に対して揺動可能な揺動車軸装置11の揺動を規制したり、許容したりするための左右揺動規制シリンダ16,17は図示のように下部走行体2に枢結されている。これら左右揺動規制シリンダ16,17は下方に突出するピストン16a,17aを有し、これらピストン16a,17aの下端は揺動車軸装置11に当接している。このため、左右揺動規制シリンダ16,17内に作動油を封じ込めてピストン16a,17aの伸縮を規制することにより、揺動車軸装置11の揺動を規制して所定揺動位置で固定保持したり、作動油を自由に出入りできるようにしてピストン16a,17aの自由な伸縮を許容することにより揺動車軸装置11の揺動を許容したりすることができる。」
(3c)「【0038】以上のように、本発明に係る高所作業車1では、重心位置が揺動可能領域A内のときには揺動車軸装置11の揺動角の大きさに拘わらず揺動を許容するが、揺動角が所定角を越えるときには重心位置が揺動可能領域Aの外側に移動するような高所作業装置の作動を規制し、揺動角が所定角以下のときには左右揺動規制シリンダ16,17のより揺動車軸装置11の揺動を規制した上で、重心位置が揺動可能領域Aの外側に移動するような高所作業装置の作動を許容するする(合議体注:原文のまま)というシンプルな制御で、常に四つの車輪を接地状態に保つて走行させるとともに、静止状態で車体を安定支持することができる。」
(3d)以下の図1及び図3が示されている。
(4) 甲第4号証に記載された事項
甲第4号証(特開2008-39138号公報)には、「油圧駆動車両の走行制御装置」に関し,図面とともに以下の記載がある。
(4a)「【0001】
本発明は、ラムシリンダやサスペンションシリンダ等を有する油圧駆動車両の走行制御装置に関する。
(4b)「【0008】
油圧駆動車両の前輪側の要部構成を図1に示す。アクスル2の左右端部にはそれぞれタイヤ4が装着されている。アクスル2とシャーシ3の間には伸縮可能な左右一対のラムシリンダ1が介装され、アクスル2の左右中央部はピン5を介してシャーシ3の左右中央部に揺動可能に連結されている。ラムシリンダ1は、シリンダチューブ側がシャーシ3の左右側面に連結され、シリンダロッド側はピン等で連結されずにその先端がアクスル2に当接している。したがって、ラムシリンダ1をロックすることで、シャーシ3に対するアクスル2の揺動を禁止した状態でアクスル2を支持することができる。なお、図示は省略するが、後輪側にはラムシリンダは設けられず、後輪側のアクスル2は左右2箇所でシャーシ3にリジッドに支持されている。」
(4c)「【0015】
図6は、コントローラ10で実行される処理の一例を示すフローチャートである。・・・、ペダル操作検出器23からの信号により走行ペダル16が操作されたか否かを判定する。・・・
【0018】
第1の実施の形態に係る走行制御装置の主要な動作を説明する。
ラムロックスイッチ21が自動位置に切り換えられると、車速Vと走行ペダル16の操作に応じてラムロックの作動およびポンプ最大容量が制御される。すなわち車両が停止し、かつ、走行ペダル16が非操作のとき、ラムロックが自動的に作動する(ステップS4)。これによりシャーシ3に対するアクスル2の揺動が阻止され、安定した車両姿勢で作業を行うことができる。このときポンプ最大容量はqp2である(ステップS5)。この状態で走行ペダル16を操作すると、ラムロックが解除され、ポンプ最大容量がqp1(>qp2)となる(ステップS6,ステップS7)。これによりアクスル2が揺動可能となり、走行時の乗り心地性が向上するとともに、ポンプ最大容量の増加により車両を高速で走行することができる。」
(4d)以下の図1及び図6が示されている。
(5) 甲第5号証に記載された事項
甲第5号証(特開2002-173298号公報)には、「軌道走行型高所作業車」に関し、図面とともに以下の記載がある。
(5a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軌道走行型高所作業車に関し、更に詳細には、狭軌道及び広軌道の両軌道上を走行可能な軌道走行用車輪と、車体に設けられた高所作業装置と、車体に作用する転倒モーメントと許容転倒モーメントとの大きさを比較して高所作業装置の作動規制を行なう作動規制制御装置とを有した軌道走行型高所作業車に関する。」
(5b)「【0004】このように、作業台を高所に移動させると、車体を転倒させようとする方向の転倒モーメントが増大して車体支持が不安定となり易い。そこで、従来の軌陸作業車には転倒モーメントが過度に大きくなるのを防止する作動規制制御装置が一般的に設けられている。この作動規制制御装置は、高所作業装置の作動に伴って変化する転倒モーメントが許容転倒モーメントを越えずに移動可能な作業台の移動可能範囲を予め設定しておき、作業台がこの移動可能範囲を越える高所作業装置の作動を規制するように構成されている。尚、この移動可能範囲の設定は車体が水平状態にある状態を基準にして行なわれている。」
(5c)「【0023】・・・位置判定回路79は、軌道判定回路78により図5に示す鉄輪35が狭軌道R1上を走行可能なトレッドを有した位置にあると判定されると、ブーム17の作動に伴って変化する転倒モーメントが許容転倒モーメントを越えずに移動可能な作業台23の狭軌移動可能範囲NA(図5中の左斜線で示した領域)をメモリI80から読み出し、位置算出回路76により算出された作業台23の位置が狭軌移動可能範囲NAのいずれかの位置にあるか否かを判定する。・・・
【0025】図4に示す作動規制回路84は、車両が狭軌道R1上にある場合に位置判定回路79により作業台23の位置が狭軌移動可能範囲NAを越えると判定されたときに、作動制御回路75から出力され転倒モーメントを増加させる方向の作動制御信号の作動制御弁85への伝達を遮断する機能を有する。・・・」
(5d)以下の図5が示されている。
4 対比・判断
(1) 対比
本件発明4と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「下部走行体1」は、本件発明4の「車体」ないしは「車体フレーム」に相当し、引用発明の「地面上を走行する走行輪2」及び「軌条用車輪10」は、技術常識及び図1の図示内容に照らし、本件発明4の「道路走行用のタイヤ車輪」及び「鉄輪」に相当し、引用発明の「軌道用作業車」は、本件発明4の「軌陸作業車」に相当するといえる。
イ 引用発明の「揺動フレーム板28」は、「走行方向前後に向かう軸により」、「下部走行体1に対して」、「上下に揺動する」ものであるから、下部走行体1に対して上下揺動自在に枢支されているといえる。加えて、「軌条用車輪10」は、「揺動フレーム板28を介して下部走行体1に取付け」られているから、「揺動フレーム板28」にも取付けられているということができる。
また、引用発明の「前後側どちらか一方」の「軌条用車輪10」は、本件発明4の「後輪側又は前輪側のいずれか一方」の「左右鉄輪」に相当するといえる。
さらに引用発明の「揺動フレーム板28」は、本件発明4の「揺動フレーム」の構成の限度で共通するといえる。
ウ 上記ア及びイを踏まえると、引用発明の「軌条用車輪10の前後側どちらか一方を、走行方向前後に向かう軸により下部走行体1に対して走行方向左右において上下に揺動する揺動フレーム板28を介して下部走行体1に取付けた」と本件発明4の「さらに後輪側又は前輪側のいずれか一方の左右鉄輪を車体フレームの下部に上下揺動自在に枢支した揺動フレームの左右各端部に取付けた」とは、「さらに後輪側又は前輪側のいずれか一方の左右鉄輪を車体フレームに対して上下揺動自在に枢支した揺動フレームに取付けた」という構成の限度で共通するといえる。
以上を総合すると、本件発明4と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
車体に道路走行用のタイヤ車輪と軌道走行用の4つの鉄輪とを備え、さらに後輪側又は前輪側のいずれか一方の左右鉄輪を車体フレームに対し上下揺動自在に枢支した揺動フレームに取付けた軌陸作業車。
<相違点1>
本件発明4では、左右鉄輪が「揺動フレームの左右各端部に」取り付けられており、「揺動フレーム」が「車体フレームの下部」に枢支されているのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。
<相違点2>
本件発明4は、「前記車体フレームと前記揺動フレームとの間に、該揺動フレームを前記車体フレームに対して揺動不能にロックするための揺動ロック手段を設け」ているとともに、「前記揺動ロック手段がロック状態にあるかロック解除状態にあるのかを検出するロック状態検出手段を有している」のに対して、引用発明はそのような手段を有していない点。
<相違点3>
本件発明4では、「コントローラに前記揺動ロック手段がロック状態であるときの作業車転倒防止性能を記憶したロック時のデータ記憶手段を備え、 オンレール作業時において、前記ロック状態検出手段がロック状態を検出しているときには該ロック状態検出手段からのロック状態検出信号に基いて前記ロック時のデータ記憶手段で記憶している作業車転倒防止性能を用いて作業機の限界姿勢範囲を制御するように構成している」のに対して、引用発明はそのように構成していない点
(2)判断
事案に鑑み、上記相違点3について検討する。
ア まず、申立人は、本件発明4は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張するので、これについて検討する。
a 甲第2号証には、車体フレーム1aの後下部には、車軸としてのリアアクスル10が車幅方向へ延びた状態でセンタピン10aを中心に上下方向に揺動可能に支持されていること(上記摘示(2b)段落【0021】及び上記摘示(2d)【図4】参照)、車体フレーム1aとリアアクスル10との間に、ダンパ13が配設されていること(上記摘示(2b)段落【0022】及び上記摘示(2d)【図4】参照)、電磁切換弁14のスプールが図4に示す遮断位置に配置されると、ダンパ13の両室R1,R2間での作動油の流出・流入が不能になって、リアアクスル10がロックされ、電磁切換弁14のスプールが連通位置(図4の状態からスプールが反対位置に切換えられた位置)に配置されると、ダンパ13の両室R1、R2間での作動油の流出・流入が可能になって、リアアクスル10が自由に揺動できるフリー状態になること(上記摘示(2b)段落【0024】及び上記摘示(2d)【図4】参照)、高揚高かつ高荷重(図7に示すマップM中の荷役ロック領域)と判定されたときに、原則としてリアアクスル10をロックさせること(上記摘示(2b)段落【0040】及び上記摘示(2d)【図7】参照)が記載されている。
すなわち、甲第2号証には、車体フレーム1a(本件発明4の「車体フレーム」に対応。以下同様に、相違点3の判断において、甲第2号証の用語の後の括弧内の記載は、対応する本件発明4の特定事項を示す。)とリアアクスル10(揺動フレーム)との間に、リアアクスル10(揺動フレーム)を車体フレーム1a(車体フレーム)に対して揺動不能にロックするためのダンパ13(揺動ロック手段)を設ける構成が開示されているといえる(以下「甲第2号証に記載の技術事項1)という。)。
加えて、甲第2号証には、高揚高かつ高荷重によってリアアクスル10(揺動フレーム)がロックされたときに警告灯31に黄色が点灯すること(上記摘示(2c)段落【0049】参照)、電磁切換弁14のスプールの位置を検出し、リアアクスル10(揺動フレーム)が正しい状態に保持されているかどうかの判定をするようにしてもよいこと(上記摘示(2d)段落【0068】参照)が記載されている。
ここで、電磁切換弁14のスプールの位置は遮断位置と連通位置に2位置に切り換えられるものであるところ(上記摘示(2b)段落【0024】参照)、その位置を検出することは、ダンパ13(揺動ロック手段)の両室R1,R2間での作動油の流出・流入が不能になって、リアアクスル10(揺動フレーム)がロック状態にあるか、作動油の流出・流入が可能になって、リアアクスル10(揺動フレーム)がフリー状態(ロック解除状態)にあるかを検出することに他ならないといえる。すなわち、ダンパ13(揺動ロック手段)がロック状態にあるかフリー状態(ロック解除状態)にあるかを検出することに他ならないといえる。
そうすると、甲第2号証には、ダンパ13(揺動ロック手段)がロック状態にあるかフリー状態(ロック解除状態)にあるかを検出するスプールの位置を検出する構成(ロック状態検出手段)が開示されているといえる(以下「甲第2号証に記載の技術事項2」という。)。
しかしながら、甲第2号証には、上記甲第2号証に記載の技術事項1及び2が記載されているといえるが、上記相違点3に係る本件発明4の構成は記載も示唆もされていない。
b 甲第5号証に記載されている「軌道走行型高所作業車」は、「高所作業装置の作動に伴って変化する転倒モーメントが許容転倒モーメントを越えずに移動可能な作業台の移動可能範囲を予め設定しておき、作業台がこの移動可能範囲を越える高所作業装置の作動を規制する」機能を有しており(上記摘示(5b)参照)、具体的には、「ブーム17の作動に伴って変化する転倒モーメントが許容転倒モーメントを越えずに移動可能な作業台23の狭軌移動可能範囲NA(図5中の左斜線で示した領域)をメモリI80から読み出し、位置算出回路76により算出された作業台23の位置が狭軌移動可能範囲NAのいずれかの位置にあるか否かを判定」し(上記摘示(5c)段落【0023】参照)、「作業台23の位置が狭軌移動可能範囲NAを越えると判定されたときに、作動制御回路75から出力され転倒モーメントを増加させる方向の作動制御信号の作動制御弁85への伝達を遮断する機能を有する」ものである(上記摘示(5c)段落【0025】参照)。すなわち、メモリ(本件発明4の「データ記憶手段」に対応。)に作業台の移動可能範囲(本件発明4の「作業車転倒防止性能」に対応。)を記憶しておいて、作業台の位置が前記移動可能範囲を越えないように制御(本件発明4の「作業機の限界姿勢範囲を制御」に対応。)する技術が記載されているといえる。
しかしながら、甲第5号証には、上記相違点3に係る本件発明4の「コントローラに前記揺動ロック手段がロック状態であるときの作業車転倒防止性能を記憶したロック時のデータ記憶手段を備え」、「前記ロック状態検出手段がロック状態を検出しているときには該ロック状態検出手段からのロック状態検出信号に基いて前記ロック時のデータ記憶手段で記憶している作業車転倒防止性能を用いて作業機の限界姿勢範囲を制御する」構成は記載も示唆もされていない。
以上によれば、引用発明に上記甲第2号証に記載の技術事項1及び2並びに甲第5号証に記載の上記技術を適用しても、相違点3に係る本件発明4の構成に至らない。
また、本件発明4は、「揺動ロック手段がロック状態であるときの作業車転倒防止性能」を用いることにより、ロック状態でないときよりも限界姿勢範囲を拡大することを解決しようとするものといえるところ(本件明細書の段落【0013】【0034】~【0036】参照)、引用発明は、そもそも「揺動ロック手段」を備えていないのであるから、引用発明から、ロック状態でないときよりも限界姿勢範囲を拡大することを解決しようとする動機付けは生じ得ないともいえる。
したがって、本件発明4は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 次に、申立人は、本件発明4は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと主張するので、これについて検討する。
甲第2号証には、上記甲第2号証に記載の技術事項1及び2が記載されているといえるが、上記相違点3に係る本件発明4の構成は記載も示唆もされていない。
甲第3号証には、「重心位置が揺動可能領域A内のときには揺動車軸装置11の揺動角の大きさに拘わらず揺動を許容するが、揺動角が所定角を越えるときには重心位置が揺動可能領域Aの外側に移動するような高所作業装置の作動を規制し、揺動角が所定角以下のときには左右揺動規制シリンダ16,17のより揺動車軸装置11の揺動を規制した上で、重心位置が揺動可能領域Aの外側に移動するような高所作業装置の作動を許容する」と記載されている(上記摘示(3c)参照)。
この記載によれば、重心位置に関し揺動可能範囲Aなるものが設定されているところ、かかる揺動可能範囲Aは、左右揺動規制シリンダ(本件発明4の「揺動ロック手段」に対応。)が揺動車軸装置(本件発明4の「揺動フレーム」に対応。)の揺動を規制する時(本件発明4の「ロック状態であるとき」に対応。)の揺動可能範囲として規定されるものではないから、甲第3号証には、上記相違点3に係る本件発明4の「コントローラに前記揺動ロック手段がロック状態であるときの作業車転倒防止性能を記憶したロック時のデータ記憶手段を備え、オンレール作業時において、前記ロック状態検出手段がロック状態を検出しているときには該ロック状態検出手段からのロック状態検出信号に基いて前記ロック時のデータ記憶手段で記憶している作業車転倒防止性能を用いて作業機の限界姿勢範囲を制御する」構成は記載されていない。
以上によれば、引用発明に上記甲第2号証に記載の技術事項1及び2並びに甲第3号証に記載された事項を適用しても、相違点3に係る本件発明4の構成に至らない。また、引用発明から、ロック状態でないときよりも限界姿勢範囲を拡大することを解決しようとする動機付けは生じ得ないことは上記アにおいて説示したとおりである。
したがって、本件発明4は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、特許異議の申立ての理由によって請求項4に係る特許を取り消すことはできない。
第4 むすび
以上のとおり、請求項4に係る特許については、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項1~3に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項1~3に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700421