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特許拒絶査定不服審判

2016-018709

光学干渉計におけるミラー位置を決定する技法

審判番号
2016-018709
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-557200
請求日
2016年12月13日
審決日
2018年02月13日
公報発行日
2018年04月27日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】シーウェア システムズ
  • 【請求人代理人】特許業務法人北青山インターナショナル
審判長/審判官
  • 審判長 小林 紀史
  • 審判官 清水 稔
  • 審判官 須原 宏光
分類
P18 .121-WY (G01J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-557200「光学干渉計におけるミラー位置を決定する技法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月15日国際公開、WO2011/112676、平成25年 6月13日国内公表、特表2013-522600、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成23年3月9日(パリ条約に基づく優先権主張、2010年3月9日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年10月2日付けで拒絶理由が通知され、平成27年4月7日付けで手続補正がなされ、平成27年9月30日付けで拒絶理由が通知され、平成28年4月8日付けで手続補正がなされたが、平成28年8月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年12月13日付けで拒絶査定不服審判が請求される同時に手続補正(以下、「審判請求時の手続補正」という。)がなされ、当審において、平成29年8月30日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年12月27日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年8月10日付け)の概要は、次のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項19 ・引用文献等B ・請求項9、13-17、20 ・引用文献等B-C ・請求項10-12、18、21 ・引用文献等A-C <引用文献等一覧> A.特開2008-102132号公報 B.特開2005-083937号公報 C.特開2008-256837号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 請求項1-7、9-16、19-21について 引用文献 1、2 請求項8、17、18 引用文献 1-4 <引用文献等一覧> 引用文献1 特開2008-102132号公報 引用文献2 特開平09-159939号公報 引用文献3 特開2007-242607号公報 引用文献4 特開2009-171394号公報 第4 本願発明 本願の請求項1-21に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明21」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-21に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1は、次のとおりの発明である。 「【請求項1】 可動ミラーと、 前記可動ミラーの変位を生じさせるために前記可動ミラーに結合された、可変静電容量を有するマイクロメカニカルシステム(MEMS)アクチュエータと、 前記MEMSアクチュエータに結合された、当該MEMSアクチュエータの現在の静電容量を測定する容量検知回路と、 前記現在の静電容量に基づいて前記可動ミラーの位置を決定するためのディジタル信号プロセッサと、 を備え、 前記可変静電容量を提供する電極間に発生する電界は、前記MEMSアクチュエータ内で発生する変位の方向と垂直であり、 前記容量検知回路により測定された前記MEMSアクチュエータの現在の静電容量値に基づき前記可動ミラーの現在の連続的な位置が、前記検知された容量と、光干渉計において前記可動ミラーの変位により生ずる光路長差と、の予め校正された関係により特定され、 前記可動ミラーと、前記MEMSアクチュエータの作動ステージ及び検知ステージと、の全てが、同じ基板上にモノリシックに集積され、前記変位の方向が基板に対し平行であり、 前記ディジタル信号プロセッサにより前記可動ミラーの移動の結果として生成される光干渉計のインターフェログラムの測定と前記MEMSアクチュエータの現在の静電容量の測定とが同時に行われ、 前記ディジタル信号プロセッサが、前記可動ミラーのミラー位置における位相誤差を補正する、 MEMS装置。」 なお、本願発明2-21の概要は、以下のとおりである。 本願発明2-8は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明9は、本願発明1(「MEMS装置」)を用い、「MEMS干渉計システム」とした発明であり、本願発明10-18、21は、本願発明9を減縮した発明である。 本願発明19は、本願発明1(「MEMS装置」)を、位相誤差の補正の観点から「位相誤差を補正する、方法」とした発明であり、本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。 本願発明20は、本願発明19を減縮した発明である。 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 当審拒絶理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 ア 「【請求項8】 頂部層(310)、底部層(300)、前記頂部層(310)と前記底部層(300)の間に埋め込んだSOI酸化層(305)を含むシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェーハを使用して、マイクロ機械加工を施した干渉計を製造する方法であって、 入射ビーム(I)を受容するように光結合したファイバ溝(20)と、前記入射ビーム(I)を2つの干渉ビーム(L1、L2)に分岐するように光結合した半平面ビームスプリッタと、前記干渉ビームの一方(L1)を第1媒体を通って反射させるように光結合した可動鏡(M1)と、前記干渉ビームの他方(L2)を第2媒体を通って反射させるように光結合した固定鏡(M2)と、前記反射された干渉ビーム(L3、L4)から生成された干渉パターンを検出するように光結合した検出面(D2)と、前記可動鏡(M1)を制御するように結合したアクチュエータ(40)と、を前記SOIウェーハの前記頂部層(310)内にフォトリソグラフィ的に定めることと、 前記SOIウェーハの前記頂部層(310)と前記SOIウェーハの前記底部層(300)の間にエッチングを施し、その後前記SOIに埋め込んだ酸化物層を部分的に除去することで前記可動鏡(M1)と前記アクチュエータ(40)を解放することとによって特徴付けられる方法。」(第2頁第41行~第3頁第6行) イ 「【0001】 本発明は概して光学MEMSに関し、特にマイクロ機械加工を施した干渉計に関する。 【背景技術】 【0002】 マイクロ電子機械システム(MEMS)は、マイクロ製造技術による一般的なシリコン基板上への機械部品、センサ、アクチュエータ、電子機器の統合を意味する。例えば、マイクロ電子機器は一般に集積回路(IC)処理を用いて製造され、一方、マイクロ機械構成部品は、シリコンウェーハの各部を選択的にエッチングして除去するか、あるいは新たな構造層を追加して機械および電子機械構成部品を形成する、相性の良いマイクロ機械処理を用いて製造される。MEMS装置は、その低コスト、バッチ処理機能、標準的なマイクロ電子機器との互換性のために、分光法、形状測定、環境センシング、屈折率測定(または材料認識)、さらにこれ以外のいくつかのセンサ用途の使用にとって魅力のある候補である。これに加え、小型のMEMS装置により、MEMS装置を組み込んだ設備、例えばMEMSベースのマイケルソン干渉計をモバイルおよびハンドヘルド型装置に統合できるようになる。 【0003】 さらに、MEMS技術とその様々な作動技法は、光学調整機能や動的センシング用途といったフォトニック装置の新規機能および新規特徴の実現を可能にする。例えば、MEMS作動(静電、磁気、熱)を用いてマイケルソン干渉計の可動鏡を制御することで、干渉計光路長に小さな変位を導入することができ、その結果、干渉ビームどうしの間に位相差が生じる。この位相差を用いて、干渉計ビームのスペクトル応答(例えば、フーリエ変換分光を用いる)や移動鏡の速度(例えば、ドップラー効果を用いる)を測定し、あるいはこの位相差を単純に光学位相遅延要素として使用することができる。」 ウ 「【0010】 本発明の実施形態によれば、分光測定、形状測定、振動測定、環境センシング、通信等のような用途に用いる、マイクロ機械加工を施した干渉計において、単一のシリコン/空気界面(半平面)を使用してビーム分岐を実行する。本発明の実施形態では、干渉計は例えばマイケルソン干渉計、マッハツェンダー干渉計、トワイマングリーン干渉計であってよい。しかし簡潔にするために、本発明はマイケルソン干渉計に関連して説明される。MEMSによって作動される移動鏡を可能にするために、干渉計はSOIウェーハ上で実現される。シリコン/空気界面スペクトル応答はシリコンスペクトルウィンドウにわたって不変であるため、干渉計分岐比は従来のシリコン壁ビームスプリッタのように波長に依存することがない。」 エ 「【0013】 図2は、本発明の実施形態によるマイクロ機械加工を施した干渉計10のレイアウト線図である。マイクロ機械加工を施した干渉計10は、シリコン/空気半平面ビームスプリッタS1、入力ファイバ溝20および出力ファイバ溝30、移動鏡M1、固定鏡M2、静電アクチュエータ40を備えている。ある例示的な実施形態では、図2に示すように、静電アクチュエータ40は櫛形ドライブ42とばね44で形成されている。 【0014】 ある例示的な動作では、入射ビームIは入力ファイバ溝20を通って装置10内に入る。入射ビームIは、半平面ビームスプリッタS1に衝突すると2つのビームL1、L2に分岐する。L1は空中を伝播して鏡M1に到達し、L2はシリコン内を伝播して鏡M2へ到達する。鏡M2は、ビームL2に対して垂直な角度でシリコン媒体内に固定および埋め込まれている。しかし、上述したように、鏡M1はMEMS静電アクチュエータ40を使用して移動可能であり、ビームL1とL2の間の光路長の差を鏡変位の2倍の長さにすることができる。例えば、櫛形ドライブ42に電圧を印加するとアクチュエータ40に電位差が生じ、これによりアクチュエータ内に静電容量が誘発され、ばね42から駆動力および復元力が生じることで、鏡M1がビームL1を反射する所望の位置へ変位される。 【0015】 図2に示すように、ビームL1、L2は、鏡M1、M2でそれぞれ反射された後に同一の光路を辿り(方向は反対)、これにより、検出面D2上で検出可能な、あるいは出力ファイバ溝30を介して出力可能な干渉パターン(点線で示す)が生じる。上述したように、検出面D2は、例えば、基板内にマイクロ機械加工で組み立てた(例えば、基板の頂面をエッチング加工し、光検出器を内部に配置できる開口部を実現した)、または、ドーピング(例えば、P-I-Nダイオードを実現するためのもの)や部分金属被覆(例えば、金属-半導体-金属MSM光検出器を実現するためのもの)のいずれかによって基板内にモノリシックに実現された光検出器であってよい。」 オ 「【0019】 つぎに図3Iを参照すると、マイケルソン鏡に選択的な金属被覆を施すため、並びに接続パッドを作成するために、シャドーマスク340を使用している。図3Iに示すように、シャドーマスク340をSOI基板300乃至310上に配置して、頂部シリコン層310の所望部分上にCr/Au330を選択的にスパッタリングする。ブラッグミラーのような非金属製の鏡を使用する実施形態ではシャドーマスク工程は実行されず、金属被覆の厚さが以降の処理工程に耐え得るものである場合には、開始時にパッドの金属被覆を実行することができる。図3Jに示すように、埋め込んだSiO2層305をHFを用いてエッチングすることで、櫛形フィンガ、ばね、移動鏡といった移動構造が解放され、一方、固定構造は、その下により広いSiO2範囲があるために解放されない。」 カ また、引用文献1の段落【0019】の「図3Jに示すように、埋め込んだSiO2層305をHFを用いてエッチングすることで、櫛形フィンガ、ばね、移動鏡といった移動構造が解放され、一方、固定構造は、その下により広いSiO2範囲があるために解放されない。」との記載を踏まえると、図3Jから、「櫛形フィンガ、ばね、移動鏡といった移動構造がSOIウェーハ300から解放され、一方、固定構造は、SOIウェーハ300から解放されない。」構成を読み取ることができる。 したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「分光測定に用いる、マイクロ機械加工を施した干渉計であって(段落【0010】より。以下同様。)、マイクロ機械加工を施した干渉計10は、シリコン/空気半平面ビームスプリッタS1、入力ファイバ溝20、移動鏡M1、固定鏡M2、静電アクチュエータ40を備え、静電アクチュエータ40は櫛形ドライブ42とばね44で形成されており(【0013】)、 入射ビームIは入力ファイバ溝20を通って装置10内に入り、入射ビームIは、半平面ビームスプリッタS1に衝突すると2つのビームL1、L2に分岐し、L1は空中を伝播して鏡M1に到達し、L2はシリコン内を伝播して鏡M2へ到達し、鏡M2は、ビームL2に対して垂直な角度でシリコン媒体内に固定および埋め込まれており、鏡M1はMEMS静電アクチュエータ40を使用して移動可能であり、ビームL1とL2の間の光路長の差を鏡変位の2倍の長さにすることができ、櫛形ドライブ42に電圧を印加するとアクチュエータ40に電位差が生じ、これによりアクチュエータ内に静電容量が誘発され、ばね42から駆動力および復元力が生じることで、鏡M1がビームL1を反射する所望の位置へ変位され(【0014】)、 ビームL1、L2は、鏡M1、M2でそれぞれ反射された後に同一の光路を辿り(方向は反対)、これにより、検出面D2上で検出可能な干渉パターンが生じ、検出面D2は、基板内にモノリシックに実現された光検出器であってよく(【0015】)、 干渉計は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェーハを使用して、マイクロ機械加工を施して製造され(【請求項8】)、櫛形フィンガ、ばね、移動鏡といった移動構造がSOIウェーハ300から解放され、一方、固定構造は、SOIウェーハ300から解放されない(上記「カ」より。)、 干渉計10(【0010】)。」 2.引用文献2について 当審拒絶理由で引用された引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 【発明の属する分野】本発明は光通信、光計測などのシステムに供する光波制御デバイスに関するものである。」 「【0007】〔作用〕マイクロマシニング技術により、ミラーと静電駆動機構とを一体形成することにより、素子自体が大幅に小形化され、フォトリソ工程で同一基板上に多数のミラーと静電駆動部が一括生産できるので、従来技術に比べ工程が著しく削減され、素子の量産性、経済性の大幅な向上が得られる。またアクチュエータの超小形化による低電力、高速駆動が得られる。また、静電駆動は原理的にヒステリシスを持たないため制御性にも優れる。」 「【0008】 【発明の実施の形態】 〔実施例〕本発明の実施例概要を図1に示す。図示のように、マイクロアクチュエータ1がマイクロマシニング技術により作製するのでそのサイズが大幅に小形化され、例えば、1cm以下のパッケージ2にモジュール化できる。パッケージ2の中のデバイス詳細図を同図に示す。 【0009】これによれば、Si(ケイ素)からなる基板10上に鏡面3となる側面を持つ可動構造体(可動部)4が梁5を介して基板10に固定されたブロックであるアンカー6につながって支持されている。この時、梁5はバネの役割を果たす。また、可動構造体4の鏡面3と反対側の例えば櫛形形状をした側面は、これと対向した固定電極7の櫛形側面とによってコンデンサ(櫛形電極対)8が形成されている。これらの構造体は基板10上に絶縁膜を介して作製する。 【0010】このように構成されるため、前記固定電極7と可動部4との間に電圧を印加することにより、可動部4の鏡面3と反対側の側面と、固定電極7の側面との間に静電引力が生じ、可動部4を支持する梁5が静電引力によりたわみ、可動部4は固定電極7側に変位すると同時に鏡面3が基板10上のV溝10aに挿入された先球ファイバ11のファイバ光軸方向に駆動し、該静電力とバネ力との釣り合う位置で止まる。 【0011】従って、先球ファイバ11への反射光路長あるいは等価的な反射率の制御が行える。尚、V溝10aからなるファイバーガイド溝に挿入された先球ファイバ11は、可動部4の鏡面3に光軸が垂直でかつビームウェストが鏡面3近傍になるように配置され、例えば紫外線硬化樹脂などにより固定されている。 【0012】前記静電駆動機構としては、例えば図2に示すようなものがある。これによれば、いずれも静電駆動機能を有するコンデンサ部が互いに対向する櫛形電極対8構造となっている。図2の(a)は、静電力発生部を前後に配したもので鏡面3の移動方向を梁5に垂直な両側に駆動できるとともに同時に駆動範囲も一方向に比べ大きくとれるタイプである。図2の(b)は、片側だけに静電駆動機構を配した例で構造が簡便になる。 【0013】図3はさらに別の実施例である。例えば梁5に対して鏡面3に近い側に駆動機構を配置し、梁5に対して鏡面3の反対側に変位検出用のコンデンサ20が形成されている。図3の(a)の場合は、変位検出用コンデンサ20が変位方向に対して垂直な平板電極構造となっており、アクチュエータ変位に反比例した容量変化を利用して変位を検出する。一方、図3の(b)の場合は、変位検出用コンデンサ20が変位に対して平行な平板電極構造となっており、変位に比例した容量変化を利用し変位を検出する。この場合、図では一対のコンデンサであるが、複数対にして櫛形電極とすることにより、容量検出感度を向上できることは言うまでもない。」 したがって、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 「同一基板上に、マイクロマシニング技術により、ミラーと静電駆動機構とを一体形成(段落【0007】より。以下同様。)した光波制御デバイス(【0001】)であって、 可動構造体4の鏡面3と反対側の例えば櫛形形状をした側面は、これと対向した固定電極7の櫛形側面とによってコンデンサ(櫛形電極対)8が形成され(【0009】)、 前記固定電極7と可動部4との間に電圧を印加することにより、可動部4の鏡面3と反対側の側面と、固定電極7の側面との間に静電引力が生じ、可動部4を支持する梁5が静電引力によりたわみ、可動部4は固定電極7側に変位(【0010】)し、 梁5に対して鏡面3に近い側に駆動機構を配置し、梁5に対して鏡面3の反対側に変位検出用のコンデンサ20が形成され、変位検出用コンデンサ20が変位に対して平行な平板電極構造となっており、変位に比例した容量変化を利用し変位を検出する(【0013】)、 光波制御デバイス(【0001】)。」 3.引用文献3について 当審拒絶理由で引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0024】 図1Eは、以下に説明する本発明の第1実施形態から第6実施形態を実現する半導体集積回路の構成を示す図である。この半導体集積回路は、MEMS部10と回路部20から構成されている。MEMS部10と回路部20は同一半導体チップ内に形成されていてもよいし、別々のチップに分かれていてもよい。回路部20は、電荷蓄積量検出回路21、記憶回路22、バイアス回路23、コントローラ24を含む。」 「【0026】 MEMS部10は、静電型アクチュエータ11を含んでいる。」 4.引用文献4について 当審拒絶理由で引用された引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0002】 近年、Si等の基板の上に超微細加工プロセスを利用してエレクトロメカニカルな機構が形成され、機械的な機能と電気的な機能とを併せ持った極めて小型の装置であるMEMS(Micro Electro Mechanical System)が、これまでに実現されていない機能を実現可能にするということで注目を集めてきた。基板上に形成されたエレクトロメカニカルな機構とは、機械要素部品、センサー、アクチュエータ及び電子回路等を1つの基板上に集積化したものである。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明における「鏡M1」(「移動鏡M1」とも表記されている。以下同じ。)は、「MEMS静電アクチュエータ40を使用して移動可能であ」るから、本願発明1における「可動ミラー」に相当する。 イ 引用発明における「MEMS静電アクチュエータ40」は、「鏡M1」を「移動可能」とするものであって、「櫛形ドライブ42とばね44で形成されて」いる。そして、「櫛形ドライブ42」は、櫛を形成する電極間の静電容量が可変となることを利用して駆動力を発生させることを動作原理とするものであるから、引用発明における「MEMS静電アクチュエータ40」が、本願発明1における「前記可動ミラーの変位を生じさせるために前記可動ミラーに結合された、可変静電容量を有するマイクロメカニカルシステム(MEMS)アクチュエータ」に相当する。 ウ 引用発明における「MEMS静電アクチュエータ40」の「櫛形ドライブ42」は、駆動の際、櫛を形成する電極間に電界を発生させて用いるものである。 よって、引用発明における「MEMS静電アクチュエータ40」の「櫛形ドライブ42」の櫛を形成する電極間に電界が発生することと、本願発明1における「前記可変静電容量を提供する電極間に発生する電界は、前記MEMSアクチュエータ内で発生する変位の方向と垂直であ」ることとは、「前記可変静電容量を提供する電極間に電界が発生する」点で共通する。 エ 引用発明における「干渉計」は、「分光測定に用いる」ものであるから、本願発明1における「光干渉計」に相当する。 オ 引用発明における「干渉計」は、「シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェーハを使用して、マイクロ機械加工を施して製造され」、「櫛形フィンガ、ばね、移動鏡といった移動構造がSOIウェーハ300から解放され、一方、固定構造は、SOIウェーハ300から解放されない」構成を有していることから、引用発明における「移動鏡」すなわち「鏡M1」の変位の方向がSOIウェーハ300に対し平行であることは明らかである。 よって、上記「オ」を踏まえると、引用発明における「干渉計10」が、「シリコン/空気半平面ビームスプリッタS1、入力ファイバ溝20、移動鏡M1、固定鏡M2、静電アクチュエータ40を備え、静電アクチュエータ40は櫛形ドライブ42とばね44で形成され」、「干渉計は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェーハを使用して、マイクロ機械加工を施して製造され」、「櫛形フィンガ、ばね、移動鏡といった移動構造がSOIウェーハ300から解放され、一方、固定構造は、SOIウェーハ300から解放されない」構成を有していることと、本願発明1における「前記可動ミラーと、前記MEMSアクチュエータの作動ステージ及び検知ステージと、の全てが、同じ基板上にモノリシックに集積され、前記変位の方向が基板に対し平行であ」ることとは、「前記可動ミラーと、前記MEMSアクチュエータの作動ステージと、の全てが、同じ基板上にモノリシックに集積され、前記変位の方向が基板に対し平行であ」る点で共通するといえる。 カ 引用発明における「分光測定」は、引用文献1の段落【0003】に例示された「フーリエ変換分光」を含むものであるから、本願発明1における「光干渉計のインターフェログラムの測定」に相当する。 キ 引用発明における「MEMS静電アクチュエータ40」を含む「マイクロ機械加工を施した干渉計」が、本願発明1における「MEMS装置」に想到する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「可動ミラーと、前記可動ミラーの変位を生じさせるために前記可動ミラーに結合された、可変静電容量を有するマイクロメカニカルシステム(MEMS)アクチュエータと、前記可変静電容量を提供する電極間に電界が発生し、前記可動ミラーと、前記MEMSアクチュエータの作動ステージと、の全てが、同じ基板上にモノリシックに集積され、前記変位の方向が基板に対し平行であり、光干渉計のインターフェログラムの測定が行われる、MEMS装置。」 (相違点) (相違点1) 本願発明1では、「前記可変静電容量を提供する電極間に発生する電界は、前記MEMSアクチュエータ内で発生する変位の方向と垂直であ」るのに対し、引用発明における「MEMS静電アクチュエータ40」の「櫛形ドライブ42」は、櫛を形成する電極間に電界が発生することは明らかであるものの、電界の方向が明らかでない点。 (相違点2) 本願発明1では、「前記MEMSアクチュエータに結合された、当該MEMSアクチュエータの現在の静電容量を測定する容量検知回路と、前記現在の静電容量に基づいて前記可動ミラーの位置を決定するためのディジタル信号プロセッサと」を備え、「前記容量検知回路により測定された前記MEMSアクチュエータの現在の静電容量値に基づき前記可動ミラーの現在の連続的な位置が、前記検知された容量と、光干渉計において前記可動ミラーの変位により生ずる光路長差と、の予め校正された関係により特定され」、「前記MEMSアクチュエータ」の「検知ステージ」が、(前記可動ミラー、及び、前記MEMSアクチュエータの作動ステージと)「同じ基板上にモノリシックに集積され」、「前記ディジタル信号プロセッサにより前記可動ミラーの移動の結果として生成される光干渉計のインターフェログラムの測定と前記MEMSアクチュエータの現在の静電容量の測定とが同時に行われ、前記ディジタル信号プロセッサが、前記可動ミラーのミラー位置における位相誤差を補正する」構成を備えているのに対し、 引用発明には、「分光測定」として引用文献1に例示された「光干渉計のインターフェログラムの測定」を行う際に、移動鏡M1の位置を決定するための手段を、SOIウェーハ300上にさらに備えることは明示されておらず、また「移動鏡M1」の位置を、校正された関係により特定することも、「移動鏡M1」の位置における位相誤差の補正についても、示されていない点。 (2)相違点についての判断 そこで、上記相違点について判断すると、 (相違点1)について 引用文献2には、「同一基板上に、マイクロマシニング技術により、ミラーと静電駆動機構とを一体形成した光波制御デバイス」において、「静電駆動機構」を「可動構造体4の鏡面3と反対側の櫛形形状をした側面は、これと対向した固定電極7の櫛形側面とによってコンデンサ(櫛形電極対)8が形成され、前記固定電極7と可動部4との間に電圧を印加することにより、可動部4の鏡面3と反対側の側面と、固定電極7の側面との間に静電引力が生じ」、「可動部4は固定電極7側に変位」することが示されている。 そして、上記「静電駆動機構」の構成によれば、「前記固定電極7と可動部4との間に電圧を印加する」ことにより、「コンデンサ(櫛形電極対)8」を構成する「可動構造体4の鏡面3と反対側の櫛形形状をした側面」と「固定電極7の櫛形側面」との間に発生する電界は、「可動部4」の「変位」方向と垂直になることは明らかである。 そして、引用発明と引用文献2に記載された技術とは、マイクロマシニング技術により、ミラーと静電駆動機構とを一体形成した光デバイスの点で共通するから、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用し、引用発明1において、「MEMS静電アクチュエータ40」の「櫛形ドライブ42」は、櫛を形成する電極間に発生する電界の方向が変位の方向と垂直であるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 (相違点2)について ア 引用文献2には「同一基板上に、マイクロマシニング技術により、ミラーと静電駆動機構とを一体形成した光波制御デバイス」において、「鏡面3の反対側に変位検出用のコンデンサ20が形成され、変位検出用コンデンサ20が変位に対して平行な平板電極構造となっており、変位に比例した容量変化を利用し変位を検出」ことが示されている。 イ そして、引用発明における「分光測定」として引用文献1に例示された「光干渉計のインターフェログラムの測定」を行う際に、「移動鏡M1」の位置と、「光検出器」の「検出面D2上で検出可能な干渉パターン」との同時測定を行う必要があることは、明らかであるから、引用発明に、引用文献2の技術的事項を適用し、引用発明において、「移動鏡M1」の反対側の「SOIウェーハ300」上に変位検出用のコンデンサ20が形成され、変位検出用コンデンサ20が変位に対して平行な平板電極構造となっており、変位に比例した容量変化を利用し変位を検出するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ しかし、引用文献2には、変位に比例した容量変化を利用し変位を検出する際に、上記相違点2に係る本願発明1の構成のうち、「現在の静電容量に基づいて前記可動ミラーの位置を決定するためのディジタル信号プロセッサと」を備え、「前記容量検知回路により測定された前記MEMSアクチュエータの現在の静電容量値に基づき前記可動ミラーの現在の連続的な位置が、前記検知された容量と、光干渉計において前記可動ミラーの変位により生ずる光路長差と、の予め校正された関係により特定され」、「前記ディジタル信号プロセッサにより前記可動ミラーの移動の結果として生成される光干渉計のインターフェログラムの測定と前記MEMSアクチュエータの現在の静電容量の測定とが同時に行われ、前記ディジタル信号プロセッサが、前記可動ミラーのミラー位置における位相誤差を補正する」構成(以下、「相違点2に係る構成2’」という。)は記載も示唆もされていない。 エ また、本願発明1の上記相違点2に係る構成2’は、引用発明における「分光測定」として引用文献1に例示された「光干渉計のインターフェログラムの測定」を行う際に、移動鏡M1の変位の検出を、変位検出用のコンデンサ20の容量変化を利用して行う構成を採用したことによって、初めて認識される課題を解決するための構成であるから、引用発明に引用文献2の技術的事項(移動鏡M1の変位の検出を、変位検出用のコンデンサ20の容量変化を利用して行う構成)を適用することに伴って、必然的に採用される構成であるともいえない。 オ さらに、引用文献3,引用文献4にも、上記相違点2に係る構成2’は記載されおらず、また、上記相違点2に係る構成2’が、本願優先日前において周知であるともいえない。 カ したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-8について 本願発明2-8は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1における、前記相違点2に係る構成2’を備えるものである。 よって、本願発明2-8は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 3.本願発明9-18、21について 本願発明9は、本願発明1(「MEMS装置」)を用い、「MEMS干渉計システム」とした発明であって、本願発明1における、前記相違点2に係る構成2’を備えるものである。 よって、本願発明9は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 また、本願発明10-18、21は、本願発明9を減縮した発明であるから、本願発明9と同様の理由により、引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 4.本願発明19-20について 本願発明19は、本願発明1(「MEMS装置」)を、位相誤差の補正の観点から「位相誤差を補正する、方法」とした発明であり、本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。 よって、本願発明19は、本願発明1における、前記相違点2に係る構成2’と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 また、本願発明20は、本願発明19を減縮した発明であるから、本願発明19と同様の理由により、引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 原査定についての判断 審判請求時の手続補正により、原査定の拒絶の対象とされた請求項9-21は、原査定の拒絶の対象とされなかった請求項1に係る発明と同様の構成を備えるものとなった。 そして、本件補正により、請求項9-21には発明特定事項が付加され、請求項9-21に係る発明はさらに減縮されているのであるから、本件補正後の請求項9-21(本願発明9-21)は、当業者であっても、原査定における引用文献A~C(なお、引用文献Aは、当審拒絶理由における引用文献1)に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 よって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-018709

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