審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2016-011397

高性能チャンネルを有する半導体デバイス

審判番号
2016-011397
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-556620外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年07月29日
審決日
2017年11月13日
公報発行日
2017年12月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H01L) / P18 .537-WY (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-556620「高性能チャンネルを有する半導体デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月 7日国際公開、WO2012/118566、平成26年 4月24日国内公表、特表2014-510401、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2012年(平成24年)1月6日(パリ条約による優先権主張 2011年3月3日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年7月10日付で審査請求がなされ、平成27年4月30日付で拒絶理由通知が通知され、同年8月6日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、平成28年3月25日付で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされたものである。 これに対して、平成28年7月29日付で審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされ、平成29年2月10日付で上申書が提出され、当審において同年4月13日付で補正却下の決定がなされるとともに、同日付で拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月3日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正(以下、「本手続補正」という。)がなされたものである。 第2 原査定の概要 1 原査定の理由の概要 原査定の理由の概要は、次のとおりである。 「この出願については、平成27年 4月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。 なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 備考 ●理由1(特許法第29条第2項)について ・請求項 1-17、20-24、27、28、31-46、48 ・引用文献等 1-4、7、8 出願人は、平成27年8月6日付けの意見書において、 「一方、本願発明においては、表面拡散チャネルはSiC基板に形成されている。当業者であれば理解するように、シリコンを用いたドーピング技術はSiCを用いたドーピング技術とは全く異なるものである。実際、シリコンを用いるドーピング技術は、SiCのために用いることはできない。当業者は、引用文献1の教示に基づいてシリコンを用いた場合に達成しうるレベルにまでSiCをドーピングするよう動機付けられないであろう。 従って、本願発明1は引用文献1~6に記載の事項に基づいて当業者が容易に成し得たものではないから、特許法第29条第2項に該当しないものである。」 と、主張している。 出願人の主張について検討する。 引用文献1は、チャネル領域がケイ素からなるMOSFETであるが、MOSFETのチャネル領域をを炭化ケイ素とすることは、引用文献2(段落[0051])、引用文献3(段落[0045]-段落[0071])、引用文献4(段落[0040]-段落[0058])に記載されているように周知技術であり、また、ケイ素に対する技術は、引用文献2(段落[0051])に記載されているように当業者であれば炭化ケイ素にも当然応用ができるため、引用文献1の基板を炭化ケイ素とすることは、当業者が容易になし得たことである。 また、炭化ケイ素に対して固相からドーピングすることは、引用文献7(段落[0021])、引用文献8(段落[0036])に記載されているように周知技術であり、引用文献1の基板を炭化ケイ素とすることに、当業者にとって技術的な困難性があるとも認められない。 よって、出願人の主張は採用できない。 その余の点は、前記拒絶理由通知書に記載のとおりである。 ・請求項 18、19、47 ・引用文献等 1-5、7、8 引用文献3(段落[0065]-段落[0071])には、ゲート絶縁膜に窒素やリンといった不純物を拡散させ、チャネルとの界面に存在させることで、界面準位密度を減少させる技術が開示されており、引用文献1に当該技術を用いることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、引用文献5にはアルミニウムでダングリングボンドを終端することが記載されているため、引用文献3に記載の技術を引用文献1に適用する際に、引用文献5に記載されているアルミニウムを用いることは、単なる設計的事項に過ぎないため、当業者が容易になし得たことである。 ・請求項 49、50 ・引用文献等 1-4、6-8 引用文献1は、「p型層15」を形成した後に絶縁膜や拡散源を除去し、改めてゲート絶縁膜を形成してもよいものであるから、拡散源として引用文献6(段落[0032]-段落[0034])に記載されているようなP2O5を用いることに、当業者にとって困難性を生じない。 ・請求項 51 ・引用文献等 1、3、5 上述の請求項18、19、47について記載したように、引用文献1においてアルミニウムをチャネルとの界面に存在させることは当業者が容易になし得たことであり、また、引用文献1はチャネルとの界面にボロンを拡散させ、「p型層15」を形成するものであるから、引用文献1において、基板と絶縁膜の界面にアルミニウムとボロンとを有する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 よって、請求項1-24、27、28、31-51に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献5、6に記載された技術及び引用文献2-4、7、8に記載された周知技術に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開平04-118936号公報 2.特開2002-299471号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2005-166930号公報(周知技術を示す文献) 4.特表2004-519842号公報(周知技術を示す文献) 5.特開2001-077112号公報 6.特開2004-214662号公報 7.特開2006-100357号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献) 8.特開2009-043880号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献) <拒絶の理由を発見しない請求項> 平成27年8月6日付け手続補正書による補正後の請求項25、26、29、30に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。」 2 原査定の拒絶理由通知の概要 平成27年4月30日付拒絶理由通知書の概要は、次のとおりである。 「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記   (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(進歩性)について ・請求項 1-9、20、21 ・引用文献等 1 ・備考 (請求項1、20、21について) 引用文献1(全文全図)には、「p型ソース・ドレイン拡散層16」(第1ウェル及び第2ウェルに相当)、「p型層15」(表面拡散チャネルに相当)とを有するpチャネル型MOSトランジスタが記載されている。 引用文献1はpチャネル型MOSトランジスタであり、その閾値が-0.8~-0.5Vであるから(第2頁左下欄第2行)、常時オフであるものと認められる。 引用文献1にはキャリアの移動度についての言及がないが、MOSトランジスタにおいて移動度の向上は周知の技術課題であるため、引用文献1の「p型層15」の濃度を移動度が向上するように最適化することは、当業者が容易になし得たことであり、その際に「p型層15」がない構造よりも移動度を高くすることに、当業者にとって困難性は生じない。 (請求項2について) 引用文献1は、常時オフの挙動を示すため、「ゼロ・ボルトの制御電圧が前記半導体デバイスの制御接点へ印加されたときに伝導される電流を前記半導体デバイスの定格電流の1/10000以下」とすることに、当業者にとって困難性は生じない。 (請求項3-5について) 引用文献1の「p型層15」の基板表面濃度は5×1016~1×1018cm-3であり、拡散深さは0.03~0.08μmであるため(第4頁右下欄第2行-第5行)、ドースを5×1011/cm2~5×1013/cm2の範囲とすることに、当業者にとって困難性を生じない。 (請求項6について) MOSトランジスタにおいて、ソース・ドレイン領域の濃度及び深さは、所望の特性に応じて当業者が適宜設定できる設計的事項である。 (請求項7-9について) 上述のようにキャリアの移動度を向上させることは周知の技術課題であるから、本願の請求項7-9のような移動度を有するデバイスとすることに、当業者にとって困難性は生じない。 ・請求項 10-17、45、46、48 ・引用文献等 1-4 ・備考 (請求項10について) 引用文献1をnチャネル型MOSトランジスタとすることや、引用文献2(段落[0051])、引用文献3(段落[0045]-段落[0071])、引用文献4(段落[0040]-段落[0058])に記載されているようなSiC基板とすることに、当業者にとって困難性は生じない。 (請求項11について) 引用文献4(段落[0048])に記載されているように、n型の不純物としてリンを選択することに、当業者にとって困難性は生じない。 (請求項12について) 引用文献1は「薄いシリコン酸化膜13」(制御接点絶縁体に相当)を介して「p型層15」を拡散するものであるから、nチャネル型MOSトランジスタとした場合には「薄いシリコン酸化膜13」にリン等のV族元素が含まれるものである。 (請求項13-15について) 引用文献3(段落[0065]-段落[0071])には、ゲート絶縁膜に窒素やリンといった不純物を拡散させ、チャネルとの界面に存在させることで、界面準位密度を減少させる技術が開示されており、引用文献1に当該技術を用いることは、当業者が容易になし得たことである。 (請求項16、17、45、46、48) 引用文献1は、「薄いシリコン酸化膜13」(制御接点絶縁体に相当)を介してボロンを「p型層15」へと拡散させるものである。 ・請求項 18、19、47 ・引用文献等 1-5 ・備考 上述のように引用文献1に引用文献3に記載された技術を適用する際に、引用文献5(段落[0077])に記載のAlを用いる、当業者にとって困難性は生じない。 ・請求項 22-24、27、28、34、35、39-41、44 ・引用文献等 1 ・備考 (請求項22-24、39-41、44について) 上述の各請求項についての備考も参照のこと。 引用文献1において、各構成要素の形成順は当業者が適宜選択できることであり、「第1ウェル」と「第2ウェル」を形成した後に、その間に「表面拡散チャネル」を形成することに、当業者にとって困難性は生じない。 (請求項27、28について) 引用文献1をnチャネル型MOSトランジスタとすることや、その際に不純物としてリンを選択することに、当業者にとって困難性は生じない。 (請求項34、35について) 引用文献1には、「p型層15」を形成した後に絶縁膜を除去し、改めてゲート絶縁膜を形成してもよいことが記載されている(第4頁右下欄第6行-第13行)。 また、ゲート絶縁膜を所定の形状とするためにエッチングすることに、当業者にとって困難性は生じない。 ・請求項 31-33、36-38、42、43 ・引用文献等 1、3 ・備考 (請求項31-33、36-38について) 引用文献3(段落[0065]-段落[0071])には、ゲート絶縁膜に窒素やリンといった不純物を拡散させ、チャネルとの界面に存在させることで、界面準位密度を減少させる技術が開示されており、引用文献1に当該技術を用いることは、当業者が容易になし得たことである。 また、ゲート絶縁膜を所定の形状とするためにエッチングすることに、当業者にとって困難性は生じない。 (請求項42、43について) 引用文献1に引用文献3を適用する際に、「p型層15」の形成前にゲート絶縁膜に窒素を拡散させることに、当業者にとって困難性は生じない。 ・請求項 49、51 ・引用文献等 1、6 ・備考 上述の各請求項についての備考も参照のこと。 引用文献1は、「p型層15」を形成した後に絶縁膜や拡散源を除去し、改めてゲート絶縁膜を形成してもよいものであるから、拡散源として引用文献6(段落[0032]-段落[0034])に記載されているようなP2O5を用いることに、当業者にとって困難性を生じない。 ・請求項 50 ・引用文献等 1-4、6 ・備考 引用文献1を引用文献2(段落[0051])、引用文献3(段落[0045]-段落[0071])、引用文献4(段落[0040]-段落[0058])に記載されているようなSiC基板とすることに、当業者にとって困難性は生じない。 <引用文献等一覧> 1.特開平04-118936号公報 2.特開2002-299471号公報 3.特開2005-166930号公報 4.特表2004-519842号公報 5.特開2001-077112号公報 6.特開2004-214662号公報」 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。 「平成28年7月29日付け手続補正書でした補正は、本件拒絶理由と同日付け補正の却下の決定により却下された(下記「付記」参照。)ので、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成27年8月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。 1 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項46に記載された発明は 「【請求項46】 請求項45に記載の半導体デバイスであって、前記半導体デバイスはnチャンネル半導体デバイスであり、前記基板はp型炭化ケイ素(SiC)基板でありある、半導体デバイス。」 であり、請求項46に記載された発明が引用する請求項45に記載された発明は、 「【請求項45】 半導体デバイスであって、 第1導電型の基板と、 第2導電型であり、前記基板内に設けられる第1ウェルと、 前記第2導電型であり、前記基板内に設けられる第2ウェルと、 前記基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間の表面に設けられる制御接点絶縁体であって、少なくとも2つのIII族元素の組み合わせが、前記制御接点絶縁体全体にわたって、前記制御接点絶縁体と前記基板との界面に加えられる、制御接点絶縁体と を含む半導体デバイス。」 であるから、請求項46に記載された発明は、「nチャンネル半導体デバイス」であり、且つ、「少なくとも2つのIII族元素の組み合わせが、前記制御接点絶縁体全体にわたって、前記制御接点絶縁体と前記基板との界面に加えられる」「半導体デバイス」であるが、このデバイスは、発明の詳細な説明に記載された如何なる発明に対応するのかわからない。 発明の詳細な説明には(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)、 「【0038】 [0049] ここでの説明は、表面拡散チャンネル42を含むSiC MOSFET26などのようなMOSデバイスに焦点を合わせているが、この開示はそれに限定されるものではない。ここで説明した概念は、同様の高性能チャンネルを必要とするまたは同様の高性能チャンネルが望ましい他の半導体デバイスにも適用できる。更に、別の実施形態において、SiC MOSFETなどのようなMOSデバイスは、表面拡散チャンネル42無しで製造することができるが、2以上のV族元素の組み合わせ(nチャンネルMOSデバイスに関して)または2以上のIII族元素の組み合わせ(pチャンネルMOSデバイスに関して)がゲート酸化膜34に含まれる。このように構成することにより、オン状態のときにMOSデバイスの電流を実質的に増加させ、従って、MOSデバイスのオン抵抗を実質的に低減させる。例えば、上記で概説したプロセスは、表面拡散チャンネル42を形成せずに、PおよびNを、MOSデバイスのゲート酸化膜34へ加えるために使用することができる(表面拡散チャンネルの深さを約0として、上記で概説したプロセスを行う)。」 と記載されており、「SiC MOSFETなどのようなMOSデバイスは、表面拡散チャンネル42無しで製造することができるが、2以上のV族元素の組み合わせ(nチャンネルMOSデバイスに関して)または2以上のIII族元素の組み合わせ(pチャンネルMOSデバイスに関して)がゲート酸化膜34に含まれる。」ことは記載されているが、「nチャンネル半導体デバイス」であり、且つ、「少なくとも2つのIII族元素の組み合わせが、前記制御接点絶縁体全体にわたって、前記制御接点絶縁体と前記基板との界面に加えられる」「半導体デバイス」については記載されていない。 したがって、請求項46に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは言えない。 (2)請求項49に記載された発明は、「前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間の表面に層を設けるステップ」と、「P2O5源からのリンを前記層へ拡散させるステップであって、少なくとも前記SiC基板と前記層との間の界面まで、前記層へリンを拡散させるステップ」を備えているが、これらのステップが発明の詳細な説明の如何なる記載に対応するのか不明である。 即ち、発明の詳細な説明には、 「【0006】 [0006] 高性能チャンネルを有する半導体デバイスと、その半導体デバイスを製造する方法とを開示する。好適には、半導体デバイスは金属酸化物半導体(MOS)デバイスであり、より好適には、半導体デバイスは炭化ケイ素(SiC)MOSデバイスである。1つの実施形態では、半導体デバイスは、第1導電型のSiC基板と、第2導電型の第1ウェルと、第2導電型の第2ウェルと、半導体デバイスの第1ウェルと第2ウェルとの間の表面に形成される第2導電型の表面拡散チャンネル(surface diffused channel)とを含む。表面拡散チャンネルの深さおよびドーピング濃度を制御して、半導体デバイスが、常時オフの挙動を持ちつつも、オン状態のときに、キャリアの移動度を、表面拡散チャンネルの無い同様の半導体デバイスよりも増加させるようにする。1つの実施形態では、半導体デバイスはnチャンネル・デバイスであり、表面拡散チャンネルは、リン(P)をSiC基板の表面へ拡散することにより形成される。1つの好適な実施形態では、Pは、P2O5源から、SiC基板の表面上に形成される絶縁層を通じてSiC基板の表面へ拡散される。」 「【0025】 [0036] 次に、図3Dに示すように、酸化物層44を通してPがSiC基板28の表面へ拡散され、SiC MOSFET26の表面拡散チャンネル42が形成される。なお、この実施形態ではPがSiC基板28の表面へ拡散されるが、この開示はそれに限定されないことに留意されたい。代替的に、幾つかの他のV族元素(例えば、窒素(N)やヒ素(As))を、酸化物層44を通してSiC基板28へ拡散して、表面拡散チャンネル42を形成することもできる。好適な実施形態では、図3Dの構造(即ち、SiC基板28と、SiC基板28上に形成された酸化物層44)を、Pの豊富な環境でアニールすることにより、PをSiC基板28の表面に拡散する。1つの実施形態では、Pの豊富な環境は、P2O5の環境である。別の実施形態では、Pの豊富な環境は、POCl3の環境である。アニール・プロセスのパラメータ、例えば、温度や時間は、酸化物層44の厚さ(tOX)に従って制御されて、表面拡散チャンネル42が望ましい深さ(即ち、厚さ)と望ましいドーピング濃度とを有するようにされる。なお、パラメータは上記のものに限定されない。表面拡散チャンネル42の望ましい深さおよび望ましいドーピング濃度とは、表面拡散チャンネル42が、SiC MOSFET26の常時オフの挙動を維持しつつも、キャリアの移動度を大きく増加させるものである。なお、代替の実施形態では、酸化物層44が、PをSiC基板28の表面へ拡散させる前にエッチングされることもあり、SiC基板28のエッチングされた表面を通してPの拡散が行われることもあり得ることに留意されたい。」 「【0028】 [0039] 図4は、この開示の1つの実施形態に従った、表面拡散チャンネル42を形成するためのP2O5アニール・プロセスを示す。示されているように、P2O5アニール・プロセスが行われるが、このプロセスは、図3Dの半導体ウエハ(即ち、酸化物層44が形成されたSiC基板28)を、ボート(boat)またはボートと同様の機構へ配して、酸化物層44をP2O5ディスク47に隣接させる。ボートは、示されるように、複数の半導体ウエハとP2O5ディスクとに適応するように構成される。P2O5ディスクは、典型的には、P2O5と、Si、セリウム(Ce)、ランタン(La)、Al、タンタル(Ta)などの酸化物との複合物である。これらの材料は、加熱されると、P2O5と、周囲へ拡散する他の気体状副産物とに分解される。次に、ボートは、炉(例えば、炉配管(furnace tube))へ配置され、不活性ガス(例えばN2)の存在下で所定の温度で所定の時間だけ加熱される。好適には、所定の温度および所定の時間は、酸化物層44の厚さ(tOX)に従って選択され、P2O5アニール・プロセスの結果として生成される表面拡散チャンネル42が望ましい深さおよび望ましいドーピング濃度を有するようにされる。言い換えると、所定の温度および所定の時間が選択され、Pが、酸化物層44を通してSiC基板28の表面に対して、望ましい深さまで望ましいドーピング濃度で、拡散される。所定の温度は、例えば、摂氏950度ないし摂氏1100度の範囲およびこの範囲を含む範囲である。1つの例示的な実施形態では、酸化物層44の厚さ(tOX)は約500オングストロームであり、P2O5アニール・プロセスは摂氏950度の温度で4時間行われ、それにより、表面拡散チャンネル42は、図5に示すように、約400オングストロームの深さと、1×1018/cm3より大きいドーピング濃度を有するものとなる。」 と記載されているように、「表面拡散チャンネル42」を形成する際に、「P2O5」を使うことは記載されているが、「表面拡散チャンネル42」の形成について、それ以外の工程は記載されていない。 それに対して、請求項49に記載された発明は、「前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間の表面に層を設けるステップ」と、「P2O5源からのリンを前記層へ拡散させるステップであって、少なくとも前記SiC基板と前記層との間の界面まで、前記層へリンを拡散させるステップ」を異なるステップとしており、「P2O5源からのリンを前記層へ拡散させるステップであって、少なくとも前記SiC基板と前記層との間の界面まで、前記層へリンを拡散させるステップ」と異なる「前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間の表面に層を設けるステップ」が、発明の詳細の如何なる記載に対応するのかわからない。 したがって、請求項49に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは言えない。また、請求項49に記載された発明を引用する請求項50に記載された発明も、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは言えない。 2 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項7および8には、「望ましい制御電圧の範囲内において」と記載されているが、「望ましい制御電圧の範囲内」との記載だけでは、どのような「制御電圧」の範囲であるのかわからない。 したがって、請求項7および8に記載された発明は、明確であるとは言えない。 3 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引 用 文 献 等 一 覧 引用文献1 特開平11-261061号公報 引用文献2 国際公開第2005/083796号 引用文献3 国際公開第2003/028110号 引用文献4 特開2002-222943号公報 引用文献5 特開2005-166930号公報 引用文献6 特開平4-118936号公報 引用文献7 特開昭62-93927号公報 ・請求項1 ・引用例 1,2 ・備考 請求項1に記載された発明と引用例1図7及び図8に記載された発明(以下、「引用例1発明」という。)とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 [相違点1] 請求項1に記載された発明は、「1000オングストローム未満の深さまで延びる表面拡散チャンネル」であるのに対して、引用例1発明の対応する構成である「チャネル層102」は深さについて具体的に記載されていない点。 [相違点2] 請求項1に記載された発明は、「前記表面拡散チャンネルの深さおよびドーピング濃度は、」「前記半導体デバイスが常時オフの挙動を示すようにさせる深さおよびドーピング濃度である」のに対して、引用例1発明はこのことが明示されていない点。 以下、各相違点について検討する。 [相違点1]について 引用例2に「また、n型蓄積層16は、n-型SiC半導体エピタキシャル層12の表面から0.05~0.1nmの深さを有している。」(第6頁14乃至15行)と記載されているように、「n-型SiC半導体エピタキシャル層12」(請求項1に記載された発明の「表面拡散チャンネル」に対応する。)の深さを500~1000オングストロームにすることは公知の技術である。 引用例1発明において、MOSFETの特性を所望のものとするために該公知技術のように、「チャネル層102」の深さを1000オングストローム未満とすることは、当業者が容易に想起する事項である。 [相違点2]について 引用例2には、n型蓄積層16を有したとしても、「閾値電圧は正の値であり、パワースイッチング素子に要求されるノーマリオフ型を示している。」(第7頁19乃至20行)と記載されているように、MOSFETにおいて表面拡散チャンネルの深さおよびドーピング濃度をノーマリオフ型(請求項1に記載された発明の「常時オフの挙動を示す」ことに対応する。)とすることは適宜行われている公知技術であり、引用例1発明において、常時オフの挙動を示すようにすることは、当業者が必要に応じ適宜為し得た事項である。 ・請求項2 ・引用例 1,2 ・備考 引用例1発明において、常時オフの挙動を示すようにした際に、「ゼロ・ボルトの制御電圧が前記半導体デバイスの制御接点へ印加されたときに伝導される電流を前記半導体デバイスの定格電流の1/10000以下とすること」は、当業者が適宜為し得た事項である。 ・請求項3ないし5 ・引用例 1,2 ・備考 表面拡散チャンネルのドースの範囲や、深さ、および、ドーピング濃度をどのようにするかは、表面拡散チャネルを備えたMOSFTの特性によって決まるものであると認められる。 そして、引用例1発明において、「前記表面拡散チャンネルの深さおよびドーピング濃度は、前記半導体デバイスのキャリアの移動度を、前記表面拡散チャンネルの無い半導体デバイスよりも増加させ、かつ前記半導体デバイスが常時オフの挙動を示すように」した際に、「表面拡散チャンネル」のドースの範囲を「5×1011/cm2ないし5×1013/cm2の範囲およびこの範囲を含む範囲」とし、深さを「500オングストローム以下」とし、また、ドーピング濃度を「少なくとも5×1017/cm3」とすることは、MOSFETの特性にあわせて当業者が適宜為し得たものである。 ・請求項6 ・引用例 1,2 ・備考 MOSFETにおいて、ソース・ドレイン領域の深さ、および、ドーピング濃度をどのようにするかは、MOSFETの特性によって決まるものであるから、深さを「2000オングストロームないし3000オングストロームの範囲およびこの範囲を含む範囲」とし、ドーピング濃度を「1×1019/cm3ないし1×1021/cm3の範囲およびこの範囲を含む範囲」とすることは、MOSFETの特性にあわせて当業者が適宜為し得たものである。 ・請求項7ないし9 ・引用例 1-3 ・備考 引用例3FIG.6に示されているように、炭化珪素を用いたFETにおいてキャリアの移動度を50cm2/Vsより大きくすること、また、引用例3FIG.2に示されているように、半導体デバイスへ印可する制御電圧を2ボルトないし6ボルトとすることは、適宜行われている公知技術である。。 引用例1発明において、制御電圧を2ボルトないし6ボルトとし、また、キャリアの移動度を少なくとも50cm2/Vsとすることは、当業者が適宜為し得た事項であると認められる。 また、引用例1に「キャリア移動度を向上させることができる。」(【0056】)と記載されているように、引用例1発明はキャリア移動度を向上させるものであるから、従来のMOSFEETと比べ、キャリアの移動度を10パーセント高くすることは、当業者が適宜為し得たものであると認められる。 ・請求項10 ・引用例 1,2 ・備考 引用例1発明の基板は「本発明は、炭化珪素半導体装置及びその製造方法に関し、特に絶縁ゲート型電界効果トランジスタ、とりわけ大電力用の縦型パワーMOSFETに関するものである。」(【0001】)や「p型半導体基板101」(【0056】)と記載されているように「p型SiC基板」であると認められる。 また、引用例1に「n型不純物(例えば、N+ 等)をイオン注入して、チャネル層102を形成する。」(【0059】)と記載されているように、引用例1発明は、「nチャンネル半導体デバイス」であり、また、「前記p型SiC基板の前記領域をp型からn型へとカウンタ・ドープするようにV族元素が拡散されている」と認められる。 ・請求項11 ・引用例 1,2,4 ・備考 p型からn型へとカウンタ・ドープするためのV族元素として窒素、リン、砒素などを用いることは、引用例4(【0024】)に記載されているように公知の技術であるから、引用例1発明のN+ (窒素)に換えて、リンを用いるようにすることは、当業者が適宜為し得る事項である。 ・請求項12ないし15 ・引用例 1,2,4,5 ・備考 引用例5図4に示されているようにゲート絶縁膜(請求項12に記載された発明の「制御接点絶縁体」に相当する。)の特性を向上するために、ゲート絶縁膜にV族元素を加えること(【0065】乃至【0071】)は適宜行われている公知技術である。 引用例1発明のゲート絶縁膜の特性を向上するために、該公知技術を採用するとは当業者が適宜為し得た事項である。 その際に、導入するV族元素をリン以外の1以上のV族元素とすることや、リンを含む2以上のV族元素とすることや、窒素を含む1以上のV族元素とすることは、当業者が適宜選択する事項である。 ・請求項16ないし19 ・引用例 1,2,5 ・備考 引用例1発明は、nチャンネル半導体デバイスであるが、これをpチャンネルの半導体デバイスとすることは、当業者が適宜為し得る事項である。 その際に、基板をp型SiC基板から、n型SiC基板とし、n型からp型へカウンタ・ドープするためにIII族元素をもちいるようにすることは、当業者が容易に想起する事項である。 また、「制御接点絶縁体」にIII族元素を加えることは、引用例5の記載から、当業者が適宜為し得たものである。その際に、III族元素として、「表面拡散チャンネル」を形成するためにもちいられたIII族元素をもちいるのか、他のIII族元素をもちいるのかは、当業者が適宜選択する事項である。 ・請求項20 ・引用例 1,2 ・備考 引用例1発明はMOSFETである(【0056】)。 ・請求項21 ・引用例 1,2 ・備考 引用例1に「ゲート酸化膜105、ゲート電極106を順に形成し、」(【0062】)と記載されているように、引用例1発明も、請求項21に記載された「制御接点絶縁体」を備えていると認められる。 ・請求項22 ・引用例 1,2 ・備考 請求項22に記載された発明と引用例1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 [相違点1] 請求項1に記載された発明は、「前記SiC基板の表面内へと1000オングストローム未満の深さまで所定のドーパントを拡散するステップであって、前記所定のドーパントは前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間に前記第2導電型の表面拡散チャンネルを形成し、前記表面拡散チャンネルの深さおよびドーピング濃度は、前記半導体デバイスのキャリアの移動度を、前記表面拡散チャンネルの無い半導体デバイスよりも増加させ、かつ前記半導体デバイスが常時オフの挙動を示すようにさせる深さおよびドーピング濃度である、ステップ」を有しているのに対して、引用例1発明の「n型不純物をイオン注入して、チャネル層102を形成する」工程は、「前記SiC基板の表面内へと1000オングストローム未満の深さまで所定のドーパントを拡散」しているのか不明であるとともに、「前記表面拡散チャンネルの深さおよびドーピング濃度」が「前記半導体デバイスが常時オフの挙動を示すようにさせる深さおよびドーピング濃度である」のか不明である点。 以下、相違点について検討する。 [相違点1]について 引用例2に記載されているように、導入するドーパントの深さを500~1000オングストロームにすることは公知の技術であるから、引用例1発明において、MOSFETの特性を所望のものとするために該公知技術のように、ドーパントを1000オングストローム未満の深さまで拡散することは、当業者が容易に想起する事項である。 また、引用例2に記載されているように、MOSFETにおいてノーマリオフ型(請求項21に記載された発明の「常時オフの挙動を示す」ことに対応する。)とすることは適宜行われている公知技術であるから、MOSFETの特性として常時オフの挙動を示すように、表面拡散チャンネルの深さおよびドーピング濃度とすることは、当業者が適宜為し得る事項である。 ・請求項23 ・引用例 1,2 ・備考 引用例1発明において、常時オフの挙動を示すようにした際に、「ゼロ・ボルトの制御電圧が前記半導体デバイスの制御接点へ印加されたときに伝導される電流を前記半導体デバイスの定格電流の1/10000以下とすること」は、当業者が適宜為し得た事項である。 ・請求項24ないし30 ・引用例 1,2,4,6,7 ・備考 引用例6第1図(b)には、シリコン酸化膜13(請求項24に記載された「絶縁層」に対応する。)を通してボロン(請求項24に記載された「ドーパント」に対応する。)を拡散することが示されており、また、引用例7には、P2O5が豊富な環境下で酸化膜を介して基板にリンをドープすることが記載されている(第2頁右下欄3行乃至3頁左下欄13行)ように、絶縁膜を介して、基板内にドーパントを拡散することは、公知の技術である。 そうすると、引用例1発明において該公知技術を採用し「前記SiC基板上の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間に絶縁層を設けるステップを更に備え、前記SiC基板の表面内へと所定のドーパントを拡散する前記ステップは、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散するステップを含む、」ようにすることは、当業者が適宜為し得る事項である。 さらに、引用例6に記載されているように、基板にドーパントをドープした後に、基板を熱処理しドーパントを拡散させること(第3頁左下欄12行乃至右下欄7行)は公知の技術であるから、引用例1発明において該公知技術を採用することは、当業者が適宜為し得る事項である。また、その際、更なる基板へのドープを防ぐ等を目的とし、ドーパントが豊富な環境から取り出した後に、熱処理を行うことも、当業者が適宜為し得たことである。 加えて、ドーピングの際に、V族元素として窒素、リン、砒素などを用いることは、引用例4(【0024】)に記載されているように公知の技術であるから、引用例1発明のN+ (窒素)に換えて、リンを用いるようにすることは、当業者が適宜為し得る事項である。 ・請求項31ないし33 ・引用例 1,2,4-7 ・備考 引用例5図4に示されているようにゲート絶縁膜(請求項31に記載された発明の「制御接点絶縁体」に相当する。)の特性を向上するために、ゲート絶縁膜に窒素が豊富な環境下で温度を加え(アニール)、ゲート絶縁膜に窒素を拡散すること(【0065】乃至【0071】)は適宜行われている公知技術である。 引用例1発明のゲート絶縁膜の特性を向上するために、該公知技術を採用するとは当業者が適宜為し得た事項である。 加えて、ドーピングの際に、V族元素として窒素、リン、砒素などを用いることは、引用例4(【0024】)に記載されているように公知の技術であるから、「表面拡散チャンネル」を形成する際に、引用例1発明のN+ (窒素)に換えて、リンを用いるようにすることは、当業者が適宜為し得る事項である。 ・請求項34ないし38 ・引用例 1,2,4-7 ・備考 引用例6に酸化膜を介してドーピングを行った後に、酸化膜を除去し、再度酸化膜を形成すること(第4頁右下欄6行乃至13行)が記載されているように、絶縁層を通して基板内にドーパントを拡散した後に、絶縁層を取り除き、基板の表面に新たな絶縁層を設けることは公知の技術である。 引用例1発明において、該公知技術を採用することは、当業者が適宜為し得る事項である。 ・請求項39ないし41 ・引用例 1,2 ・備考 表面拡散チャンネルのドースの範囲や、深さ、および、ドーピング濃度をどのようにするかは、表面拡散チャネルを備えたMOSFTの特性によって決まるものであると認められる。 そして、引用例1発明において、「前記表面拡散チャンネルの深さおよびドーピング濃度は、前記半導体デバイスのキャリアの移動度を、前記表面拡散チャンネルの無い半導体デバイスよりも増加させ、かつ前記半導体デバイスが常時オフの挙動を示すように」した際に、「表面拡散チャンネル」のドースの範囲を「5×1011/cm2ないし5×1013/cm2の範囲およびこの範囲を含む範囲」とし、深さを「500オングストローム以下」とし、また、ドーピング濃度を「少なくとも5×1017/cm3」とすることは、MOSFETの特性にあわせて当業者が適宜為し得たものである。 ・請求項42ないし43 ・引用例 1,2,4-7 ・備考 引用例5図4に示されているようにゲート絶縁膜(請求項42に記載された発明の「制御接点絶縁体」に相当する。)の特性を向上するために、ゲート絶縁膜に窒素が豊富な環境下で温度を加え(アニール)、ゲート絶縁膜に窒素を拡散すること(【0065】乃至【0071】)は公知技術である。 引用例1発明のゲート絶縁膜の特性を向上するために、該公知技術を採用するとは当業者が適宜為し得た事項である。 その際に、SiC基板の表面へリンを拡散させる前に、ゲート絶縁膜に窒素を拡散することを行うことは、当業者が適宜為し得たことである。 ・請求項44 ・引用例 1,2 ・備考 引用例1発明はMOSFETである(【0056】)。 ・請求項45,47 ・引用例 1,5,6 ・備考 請求項45に記載された発明と引用例1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 [相違点1] 請求項45に記載された発明は「前記基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間の表面に設けられる制御接点絶縁体であって、少なくとも2つのIII族元素の組み合わせが、前記制御接点絶縁体全体にわたって、前記制御接点絶縁体と前記基板との界面に加えられる、制御接点絶縁体」を有しているのに対して、引用例1発明の「ゲート電極106」(請求項45に記載された発明の「制御接点絶縁体」に相当する。)は、そのようになっていない点。 以下、相違点について検討する。 [相違点1]について 引用例1発明はnチャンネルの半導体デバイスであるが、これをpチャンネルの半導体デバイスとして構成することは、当業者が適宜為し得る事項である。その際に、V族元素に換えて、ボロン等のIII族元素を加えるようにすることは、引用例6に記載されているように、当業者が容易に想起する事項である。 また、引用例5図4に示されているようにnチャンネルの半導体デバイスにおいて、ゲート絶縁膜(請求項45に記載された発明の「制御接点絶縁体」に相当する。)の特性を向上するために、ゲート絶縁膜にV族元素を加えること(【0065】乃至【0071】)は適宜行われている公知技術である。 そして、引用例1発明をpチャンネルの半導体デバイスとし、引用例5記載の公知技術を適用した際に、ゲート絶縁膜の特性を向上するために、ゲート絶縁膜III族元素を加えることは、当業者が適宜為し得た事項である。 その際に、導入するIII族元素を少なくとも2つのIII族元素とすることは、当業者が適宜選択する事項である。 ・請求項48 ・引用例 1,5 ・備考 引用例1発明はMOSFETである(【0056】)。 ・請求項49 ・引用例 1,5 ・備考 請求項49に記載された発明と引用例1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 [相違点1] 請求項49に記載された発明は「P2O5源からのリンを前記層へ拡散させるステップであって、少なくとも前記SiC基板と前記層との間の界面まで、前記層へリンを拡散させるステップ」を有しているのに対して、引用例1発明は、そのようになっていない点。 以下、相違点について検討する。 [相違点1]について 引用例7に記載(第2頁右下欄3行乃至3頁左下欄13行)されているように、P2O5源からのリンを基板に拡散させることは、公知の技術である。 そして、引用例1発明のV族元素の基板への拡散方法として、上記公知技術を採用することに各別の困難性は認められない。 ・請求項50 ・引用例 1,5 ・備考 引用例1発明はMOSFETである(【0056】)。 ・請求項51 ・引用例 1,5 ・備考 請求項51に記載された発明と引用例1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 [相違点1] 請求項51に記載された発明は、「前記基板の第1のウェルと第2のウェルとの間の表面に設けられる制御接点絶縁体であって、少なくとも2つのV属元素の組み合わせが、前記制御接点絶縁体全体にわたって、前記制御接点絶縁体」「に加えられる、制御接点絶縁体」を有しているのに対して、引用例1発明の「ゲート電極106」(請求項51に記載された発明の「制御接点絶縁体」に相当する。)は、そのようになっていない点。 以下、相違点について検討する。 [相違点1]について 引用例5図4に示されているようにゲート絶縁膜(請求項51に記載された発明の「制御接点絶縁体」に相当する。)の特性を向上するために、ゲート絶縁膜にV族元素を加えること(【0065】乃至【0071】)は適宜行われている公知技術である。 引用例1発明のゲート絶縁膜の特性を向上するために、該公知技術を採用するとは当業者が適宜為し得た事項である。 その際に、導入するV族元素を少なくとも2つのV族元素とすることは、当業者が適宜選択する事項である。」 第4 本願発明 本願請求項1-20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明20」という。)は、本手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-20に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-20は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 第1導電型の炭化ケイ素(SiC)基板に半導体デバイスを作る方法であって、 第2導電型である第1ウェルを前記SiC基板内に設けるステップと、 前記第2導電型である第2ウェルを前記SiC基板内に設けるステップと、 前記SiC基板上の第1ウェルと第2ウェルとの間に、所定の厚さの絶縁層を設けるステップと、 表面拡散チャネルを形成するために、前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面内へと1000オングストローム未満の深さまで所定のドーパントを拡散するステップであって、前記所定のドーパントが前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面に拡散されるときに、前記所定のドーパントは前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間に前記第2導電型の前記表面拡散チャンネルを形成し、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散する前記ステップは、前記所定のドーパントが豊富な環境において、第1の所定の温度で、第1の所定の時間の間、前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対してアニールを行うステップを含み、 前記第1の所定の温度および前記第1の所定の時間は、前記絶縁層の所定の厚さに従って制御されて、前記所定のドーパントが前記SiC基板の表面内へ望ましい深さおよび望ましいドーピング濃度で拡散するようにされ、前記望ましい深さおよび前記望ましいドーピング濃度は、前記半導体デバイスが、常時オフの挙動を維持しつつも、前記表面拡散チャンネルの無い半導体デバイスよりもキャリアの移動度を増加させる、ステップと、 を含む、方法。 【請求項2】 請求項1に記載の方法であって、ゼロ・ボルトの制御電圧が前記半導体デバイスの制御接点へ印加されたときに伝導される電流を前記半導体デバイスの定格電流の1/10000以下とすることにより、前記半導体デバイスが常時オフの挙動を示す、方法。 【請求項3】 請求項1に記載の方法であって、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散する前記ステップは、 前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板を、前記所定のドーパントが豊富な前記環境から取り出すステップと、 前記第1の所定の温度よりも高い第2の所定の温度で、第2の所定の時間の間、前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対してアニールを行うステップと をさらに備える、方法。 【請求項4】 請求項1に記載の方法であって、前記半導体デバイスはnチャンネル半導体デバイスであり、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記SiC基板の表面内へと拡散される前記所定のドーパントはV族元素である、方法。 【請求項5】 請求項1に記載の方法であって、前記所定のドーパントはリンである、方法。 【請求項6】 請求項5に記載の方法であって、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散する前記ステップは、リンが豊富な環境で、前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対してアニールを行うステップを含む、方法。 【請求項7】 請求項6に記載の方法であって、前記リンが豊富な環境はP2O5環境である、方法。 【請求項8】 請求項4に記載の方法であって、 第2のV族元素を前記絶縁層ヘ加えるステップと、 前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間の表面に制御接点絶縁体を形成するように、前記絶縁層に対してエッチングを行うステップと を更に含む方法。 【請求項9】 請求項8に記載の方法であって、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記SiC基板の表面内へと拡散される前記所定のドーパントはリンであり、前記第2のV族元素はリン以外のV族元素である、方法。 【請求項10】 請求項9に記載の方法であって、前記第2のV族元素は窒素であり、第2のV族元素を前記絶縁層ヘ加える前記ステップは、前記SiC基板の表面に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対して、窒素の豊富な環境でアニールを行うステップを含む、方法。 【請求項11】 請求項4に記載の方法であって、 前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散した後に、前記絶縁層を取り除くステップと、 前記SiC基板の表面に新たな絶縁層を設けるステップと、 前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間の表面に制御接点絶縁体を形成するように、前記新たな絶縁層に対してエッチングを行うステップとを含む、方法。 【請求項12】 請求項11に記載の方法であって、前記所定のドーパントはリンである、方法。 【請求項13】 請求項4に記載の方法であって、 前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散した後に、前記絶縁層を取り除くステップと、 前記SiC基板の表面に新たな絶縁層を設けるステップと、 前記新たな絶縁層へ第2のV族元素を加えるステップと、 前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間の表面に制御接点絶縁体を形成するように、前記新たな絶縁層に対してエッチングを行うステップと を更に含む方法。 【請求項14】 請求項13に記載の方法であって、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記SiC基板の表面内へと拡散される前記所定のドーパントはリンであり、前記第2のV族元素はリン以外のV族元素である、方法。 【請求項15】 請求項14に記載の方法であって、前記第2のV族元素は窒素であり、前記新たな絶縁層へ第2のV族元素を加える前記ステップは、前記SiC基板の表面に形成された前記新たな絶縁層を含む前記SiC基板に対して、窒素の豊富な環境でアニールを行うステップを含む、方法。 【請求項16】 請求項1に記載の方法であって、前記表面拡散チャンネルのドースは5×1011/cm2ないし5×1013/cm2の範囲およびこの範囲を含む範囲である、方法。 【請求項17】 請求項1に記載の方法であって、前記表面拡散チャンネルのドーピング濃度は少なくとも5×1017/cm3である、方法。 【請求項18】 請求項1に記載の方法であって、前記半導体デバイスはnチャンネル半導体デバイスであり、前記SiC基板の表面内へ拡散される前記所定のドーパントはリンであり、 前記絶縁層の下の前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間に前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へ前記リンを拡散させる前に、リン以外の第2のV族元素を前記絶縁層へ加えるステップ を更に含む方法。 【請求項19】 請求項18に記載の方法であって、前記第2のV族元素は窒素である、方法。 【請求項20】 請求項1に記載の方法であって、前記半導体デバイスは金属酸化物半導体(MOS)デバイスである、方法。」 第5 引用例、引用発明等 1 引用例1(当審拒絶理由において引用例6として引用された文献)について 原査定の拒絶の理由および当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開平04-118936号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「(実施例) 以下、図面を参照して本発明の一実施例を詳細に説明する。 第1図(a)乃至(d)は、n型シリコン基板上にpチャネル型MOSトランジスタを製造する場合の工程を示している。 即ち、まず、第1図(a)に示すように、n型シリコン基板11の表面に素子間分離用のフィールド絶縁膜12を選択酸化法により形成し、素子形成予定領域上に例えば10nm以下の薄いシリコン酸化膜(ゲート酸化膜)13を形成する。これまでの工程は従来と同様である。 次に、MOSトランジスタの閾値を制御するために、第1図(b)に示すように、基板上の全面に多結晶シリコン膜14を400nm程度堆積し、この多結晶シリコン膜14に対して、p型不純物、例えばボロンのイオン注入を加速電圧40KeV、ドーズ量5×1015cm-2で行う。引き続き、10%の水素を含む窒素雰囲気中で900℃、30分の熱処理を行うことにより、上記多結晶シリコン膜14から基板表面にボロンを拡散させてp型層15を形成する。ここで雰囲気ガスに水素を添加する利点は、上記のように900℃の熱処理を行う場合、窒素のみの雰囲気と比べて水素を含む窒素雰囲気では、ボロンのシリコン酸化膜13中における拡散速度が約1000倍に増加するが、シリコン基板11中における拡散速度はそれ程大きくは変化しないということである。この性質を利用することにより、シリコン基板11中には浅いp型層15を形成することができる。すなわち、温度を上げずに、又は拡散時間を長くせずに、ボロンが添加された多結晶シリコン膜14からシリコン酸化膜13を通してシリコン基板11にボロンを効率良く輸送でき、基板表面のボロン濃度を上げることができ、結果としてシリコン基板表面に形成されるp型層15の拡散深さを浅くかつ高濃度にすることができる。また、シリコン基板11の表面に多結晶シリコン膜14からボロンを拡散させる際には、水素の代わりに水を含む窒素雰囲気中で熱処理を行っても同様の効果を得ることができる。なお、この状態では、上記多結晶シリコン膜14はボロンによりp型になっている。 引き続き、第1図(c)に示すように、n型不純物、例えばリンを含む雰囲気中で900℃、60分の熱拡散を行うことにより、上記多結晶シリコン膜14をn型に変化させてゲート電極材14′とする。なお、この場合、リンはボロンと比べて、シリコン酸化膜13中での拡散がはるかに遅いので、基板へのリン拡散は殆んど生じない。 次に、第1図(d)に示すように、上記ゲート電極材(n型の多結晶シリコン膜)14′を所定の形状にパターニングしてMOSトランジスタのゲート電極14″を形成した後、p型不純物、例えばボロンのイオン注入を加速電圧35KeV、ドーズ量1×1015cm-2で行うことにより、基板表面にMOSトランジスタのp型ソース・ドレイン拡散層16を形成する。この場合、ボロンはn型のゲート電極14″中にも注入されるが、前記したリンの拡散により多結晶シリコン膜14′中のn型不純物濃度は十分高くなっているので、上記ボロンが注入されてもゲート電極14″のn型導電性は保証される。」(第3頁左下欄6行~第4頁右上欄7行) (2)したがって、上記引用例1には次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。 「n型シリコン基板上にpチャネル型MOSトランジスタを製造する工程であって、 n型シリコン基板11の表面に素子間分離用のフィールド絶縁膜12を選択酸化法により形成し、 素子形成予定領域上に薄いシリコン酸化膜(ゲート酸化膜)13を形成し、 MOSトランジスタの閾値を制御するために、基板上の全面に多結晶シリコン膜14を400nm程度堆積し、この多結晶シリコン膜14に対して、p型不純物のイオン注入を行い、 10%の水素を含む窒素雰囲気中で900℃、30分の熱処理を行うことにより、上記多結晶シリコン膜14から基板表面にボロンを拡散させてp型層15を形成し、 n型不純物を含む雰囲気中で900℃、60分の熱拡散を行うことにより、上記多結晶シリコン膜14をn型に変化させてゲート電極材14′とし、 上記ゲート電極材(n型の多結晶シリコン膜)14′を所定の形状にパターニングしてMOSトランジスタのゲート電極14″を形成し、 p型不純物のイオン注入を行うことにより、基板表面にMOSトランジスタのp型ソース・ドレイン拡散層16を形成すること、 を含む、工程。」 2 引用例2について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-299471号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0025】 【発明の実施の形態】以下に、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。本実施例ではP型半導体基板上に相補型トランジスタを形成した場合を説明しているが、N型半導体基板上にも本発明を適用できる。 【0026】図1に示すように、P型半導体基板1表面付近にリンイオンを注入し、1000~1175℃で3~20時間アニールして、リンイオンを拡散、再分布させ、不純物濃度1E16cm-3程度のN型ウェル4を形成する。引き続き、パターンニングされた領域にB+イオンを打ち込み、いわゆるLOCOS法によって、チャネルストッパーとフィールド絶縁物3を形成する(図1(a))。その後、所望のチャネル領域へのしきい値電圧制御用の砒素イオン注入と、熱酸化法による厚さ10~30nmのゲート絶縁膜(酸化珪素)2形成を行う。 【0027】その後ゲート絶縁膜2に対して窒化処理を行う。この工程によりゲート絶縁膜界面の界面順位、トラップ、結晶の未結合手を窒素が埋め、多結晶シリコンゲート電極に含まれるボロンがゲート酸化膜のほうに拡散していくのを防ぐと共にホットエレクトロン耐性等ゲート絶縁膜の信頼性を向上させる。通常この工程は非常に高温であり、ランプアニール等によるRTA(Rapid-Thermal-Annealing)により行われ、例えばN2O雰囲気下で800~1125℃ 15~120秒の処理、あるいはNH3雰囲気下で800~1100℃5~90秒の処理に続き、O2雰囲気下で800~1125℃ 15~120秒の処理をする。この窒化処理中に、酸素の存在によりシリコン半導体基板ウェハに歪みが生じ、特に1000℃より高い温度での処理でより顕著となる。そこで本発明の製造方法では、その後、熱酸化炉により不活性ガス雰囲気下、例えば窒素雰囲気下で925~1025℃ 10~30分、もしくはアルゴン雰囲気下で925~1025℃ 10~30分のアニールを行う。この不活性ガスアニールによりシリコン半導体基板ウェハの歪を解消することになる(図1(b))。 【0028】次に減圧CVD法等による厚さ2000~5000Åの多結晶シリコン膜5を形成する(図1(c))。次に多結晶シリコン膜5にP型のイオンを導入するが、本発明ではその導入方法について3つの導入方法がある。 【0029】一つ目の導入方法は、多結晶シリコン膜5を形成した後、イオン注入によりBあるいはBF2を1×1019atoms/cm3以上の濃度で打ち込む。これにより多結晶シリコン膜5はP型になる。 【0030】2つ目の導入方法は、多結晶シリコン膜5を減圧CVD法で形成するとき、P型のイオンを含むガス中で行うことで、膜形成と同時に多結晶シリコン膜がP型になる。 【0031】3つ目の導入方法は、多結晶シリコン膜5を形成した後、ボロンのイオンを高濃度に含んだガラス層を減圧CVD法等で形成し、その後アニールを加えることで多結晶シリコン膜5中にボロンを拡散させる。その後、ガラス層を剥離することでP型の多結晶シリコン膜が形成される。 【0032】P型多結晶シリコン膜5が形成された後、P型多結晶シリコン膜5上へ、スパッタ法等により厚さ500~2500Å程度の金属シリサイド膜7を形成し、さらに金属シリサイド膜7上に減圧CVD法等によって厚さ1000~3000Å程度の酸化膜8を形成し、これらをパターニングしてP型多結晶シリコンゲート電極6を形成する。 【0033】ここでP型多結晶シリコンゲート電極6の厚さについて考えると、同じイオン注入濃度に対しては薄いほうがシート抵抗が小さくなり有利であるが、P型のイオン注入で使われるボロンは酸化膜を突き抜けやすい。そのため、P型多結晶シリコンゲート電極6にイオン注入されたボロンはゲート絶縁膜2を突き抜けてトランジスタのチャネル領域に染み出し、トランジスタの特性ばらつき要因となる。このためイオン注入濃度を減らしてボロンのチャネル領域への染み出しを防ぐ方法があるが、本発明では多結晶シリコンゲート電極の膜厚を2000Å以上にすることでイオン注入時にボロンが多結晶シリコンゲート電極6を突き抜けてトランジスタのチャネル領域に染み出すのを防ぐ。2000Å以下ではイオン注入時のエネルギーでボロンが多結晶シリコンゲート電極6を突き抜け、その後のプロセス中の熱処理でボロンがゲート絶縁膜を通してチャネル領域に染み出し、特性ばらつきを引き起こす。逆に多結晶シリコンゲート電極6の厚みが厚い場合、ボロンの突き抜けは防ぐことができるがシート抵抗の増加を引き起こす。本発明のトランジスタが使われる回路ではシート抵抗が1kΩ/□以下であるので、それを満たす多結晶ポリシリコンゲート電極6の厚みは5000Å以下となる。よってゲート電極がP型多結晶ポリシリコンゲート電極6単層の場合、その厚みは2000Å以上5000Å以下となる。 【0034】また金属シリサイド膜7の膜厚であるが、高速動作や高周波対応に必要なシート抵抗は十数Ω/□以下なのでこれを満たす金属シリサイド膜厚は500Å以上となる。また金属シリサイド膜7の膜厚を厚くすればシート抵抗が下がるが、プロセス上、多結晶シリコンゲート電極6の上に金属シリサイド膜7が形成されるため、段差が大きくなってしまう。この段差がプロセス上許容される範囲は、多結晶シリコンゲート電極厚+金属シリサイド膜厚=5000Åであるため、多結晶シリコンゲート電極6の膜厚は4500Å以下である。さらに、P型多結晶シリコンゲート電極6を形成するためのイオン注入時に懸念されるボロンの突き抜けを防止するため、多結晶シリコンゲート電極6の厚みは2000Å以上とする。以上の条件から、金属シリサイド膜7を用いたゲート電極の場合、多結晶シリコンゲート電極6の膜厚は2000Åから4500Åの範囲であり、金属シリサイド膜7の膜厚は500Åから3000Åの範囲となる。 【0035】この後、図示はしていないが、外部からのノイズ電荷からCMOSを守る保護用N型トランジスタのソースドレインとなる領域に不純物濃度1E21cm-3程度のN+型不純物領域を形成する。ここでのN型ドーパントは拡散係数の大きいリンを用いる。 【0036】そして次に、多結晶シリコンゲート電極6の部分およびソース・ドレイン領域の一部に、不純物濃度1×1016~1×1018atoms/cm3程度のN型の低濃度不純物領域9と不純物濃度1×1016~1×1018atoms/cm3程度のP型の低濃度不純物領域10を形成する。このようにして図2(a)を得る。 【0037】次に、再びイオン注入法によって、N型の高濃度不純物領域11、12とP型の高濃度不純物領域13、14を形成する。いずれの不純物領域も不純物濃度は1×1019atoms/cm3以上とする(図2(b))。この時、ゲート電極と高濃度不純物領域の間はスペースがある。そこのスペースはドレイン印可電圧7Vの場合は0.5~1.0um程度、10Vの場合は0.7~2.0um程度、36Vの場合は2.0~5.0um程度に設定する。 【0038】ここで不純物濃度の低い領域と高い領域の濃度であるが、高い領域の濃度は多結晶シリコンゲート電極2のシート抵抗は1kΩ/□以下という限定から1×1019atoms/cm3以上となる。本発明で用いられるトランジスタのドレイン印加電圧は数Vから40Vを想定しているので、不純物濃度の低い領域の濃度は1×1016~1×1018atoms/cm3の範囲となる。また、低濃度のP型不純物領域10はボロンないしはBF2を用い濃度が1×1016~1×1018atoms/cm3程度であり、低濃度のN型不純物領域9はリンないしは砒素を用い濃度が1×1016~1×1018atoms/cm3程度である。一方、高濃度のP型不純物領域13、14はボロンないしはBF2を用い濃度が1×1019atoms/cm3以上であり、高濃度のN型不純物領域11、12はリンないしは砒素を用い濃度が1×1019atoms/cm3以上である。 【0039】さらに本発明ではP型多結晶シリコンゲート電極2をマスクにN型不純物を注入する際、P型多結晶シリコンゲート電極2の濃度低下による、抵抗の増大、ゲート電極の空乏化が懸念される。この課題を解決するため、P型多結晶シリコンゲート電極6上に酸化膜8を形成したり、あるいは金属シリサイド膜7を形成しさらに金属シリサイド膜7上に酸化膜8を形成した。これにより、P型多結晶シリコンゲート電極6をマスクにN型不純物9を注入する際にP型多結晶シリコンゲート電極6にN型不純物が注入されないようにすることを可能とすることができる。 【0040】最後に、従来の集積回路の作製の場合と同様に層間絶縁物として、リンガラス層20を形成する。リンガラス層の形成には、例えば、減圧CVD法を用いればよい。材料ガスとしては、モノシランSiH4と酸素O2とホスフィンPH3を用い、450℃で反応させて得られる。その後、層間絶縁膜に電極形成用の穴を開け、アルミ電極21を形成する。こうして、図2(c)に示されるような相補型MOS装置が完成する。 【0041】以上のような製造方法で形成されたP型トランジスタにおいてゲート電極をP型多結晶シリコンゲート電極6とすることで、Nウェル4とゲート電極の仕事関数の関係からエンハンスメント型P型トランジスタのチャネルは表面チャネルとなるが、表面チャネル型P型トランジスタにおいてはしきい値電圧を例えば-0.5V以上に設定しても極端なサブスレッショルド係数の悪化に至らず低電圧動作および低消費電力がともに可能となる。 【0042】一方N型トランジスタにおいては、P型多結晶シリコンゲート電極6とP型半導体基板1の仕事関数の関係からエンハンスメント型N型トランジスタのチャネルは埋込みチャネルとなるが、しきい値を所望の値に設定する場合に拡散係数の小さな砒素をしきい値制御用ドナー不純物として使用できるためチャネルは極めて浅い埋込みチャネルとなる。従ってしきい値電圧を例えば0.5V以下の小さな値に設定しても、しきい値制御用アクセプター不純物として拡散係数が大きくイオン注入のプロジェクションレンジも大きいボロンを使用せざるを得ず深い埋込みチャネルとなるN型多結晶シリコンをゲート電極としたエンハンスメント型P型トランジスタの場合に比べ、サブスレッショルドの劣化やリーク電流の増大を著しく抑制できる。」 (2)「【0051】本発明は主としてシリコン系の半導体装置について述べたが、ゲルマニウムや炭化珪素、砒化ガリウム等の他の材料を使用する半導体装置にも本発明が適用できる。さらに本発明では、ゲート電極の低抵抗化が重要な役割を果たすが、本発明で主として記述したシリコンゲート以外にも、P型トランジスタを表面チャネル化できる物質等をゲート電極として用いてもよい。また、実施例ではP型半導体基板上のトランジスタの作製工程について記述したが、石英やサファイヤ等の絶縁性基板上に形成された多結晶あるいは単結晶半導体被膜を利用した薄膜トランジスタ(TFT)の作製にも本発明が適用できる。」 (3)したがって、上記引用例2には次の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されていると認められる。 「炭化珪素を使用する半導体装置にも適用できる、シリコン系のP型半導体基板上に相補型トランジスタを形成する方法であって、 P型半導体基板1表面付近にリンイオンを注入し、アニールし、リンイオンを拡散、再分布させ、N型ウェル4を形成し、 パターンニングされた領域にB+イオンを打ち込み、チャネルストッパーとフィールド絶縁物3を形成し、 砒素イオン注入と、熱酸化法によるゲート絶縁膜(酸化珪素)2を形成し、 ゲート絶縁膜2に対して窒化処理を行い、 多結晶シリコン膜5を形成し、 多結晶シリコン膜5にP型のイオンを導入し、 P型多結晶シリコン膜5上へ、金属シリサイド膜7を形成し、さらに金属シリサイド膜7上に酸化膜8を形成し、これらをパターニングしてP型多結晶シリコンゲート電極6を形成し、 多結晶シリコンゲート電極6の部分およびソース・ドレイン領域の一部に、N型の低濃度不純物領域9とP型の低濃度不純物領域10を形成し、 イオン注入法によって、N型の高濃度不純物領域11、12とP型の高濃度不純物領域13、14を形成し、 リンガラス層20を形成する、 方法。」 3 引用例3(当審拒絶理由において引用例5として引用された文献について 原査定の拒絶の理由および当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開2005-166930号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0045】 (第1の実施形態) 本実施形態では、蓄積型SiC-MISFET,特に,二重注入型SiC-MISFETに本発明を適用した例について説明する。本実施形態の二重注入型SiC-MISFETの構造は、背景技術において説明した図1(a),(b)に示すSiC-MISFETと共通の構成要素を備えている。したがって、重複を避けるために、本実施形態の二重注入型SiC-MISFETの各構成要素の説明は省略する。本実施形態のSiC-MISFETは、構成要素のうち特にMIS界面付近の物理的な構造が従来のSiC-MISFETとは異なっている。 【0046】 本実施形態においては、SiC基板1は、( 0 0 0 1)面から< 1 1-2 0>方向に8度オフした主面を有し、ドーピング濃度が1×1018cm-3以上であるn型不純物を含んでいる。第1のSiC層である高抵抗SiC層2は、ドーピング濃度が1×1015cm-3~1×1016cm-3程度のn型不純物を含んでいる。ウェル領域3は、ドーピング濃度が1×1017cm-3から1×1018cm-3の範囲内のp型不純物を含んでいる。p+コンタクト領域4は、ドーピング濃度が1×1018cm-3以上のp型不純物を含んでいる。 【0047】 チャネル層6は、低濃度のn型不純物が均一にドープされた層でもよいが、本実施形態においては、特願2000-353700号に開示されているように、アンドープ層6a(第1の半導体層)と、アンドープ層6aよりも高濃度のn型キャリア不純物を含み、アンドープ層6aよりも膜厚が薄いδドープ層6b(第2の半導体層)とを交互に積層した多重δドープ構造を有している。このような構造を採用することにより、チャネル移動度をより向上させることができる。例えば、アンドープ層6aの厚さは約40nmで、アンドープ層6aには意図的なドーピングが行われていない。δドープ層6bの厚さは約10nmで、δドープ層6bには、濃度が5×1017cm-3から1×1018cm-3の高濃度のn型不純物がドープされている。チャネル層6中の最下層はアンドープ層6aであり、その上にδドープ層6bとアンドープ層6aとが交互に例えば3層ずつ積層されている。このような構造にすると、キャリアはδドープ層6bから供給されるが、不純物の少ないアンドープ層6aを走行するので不純物散乱が少なく、高いチャネル移動度が得られる。多重δドープ構造におけるアンドープ層6aとδドープ層6bとの積層周期は1以上であればよいが、あまり周期が多いとゲート酸化膜から伸びる空乏層が十分に伸びず、ノ-マリオフにしにくい。本実施形態においては、アンドープ層の厚みを40nm、δドープ層の厚みを10nmにすると、チャネル層の厚さは190nmである。チャネル層の厚さをあまり厚くすると、ウェル領域3から伸びる空乏層と、ゲート絶縁膜から伸びる空乏層が重ならずノ-マリオフにならないので、これらが重なるようアンドープ層、ドープ層の厚み、ドーピング濃度を設計するのが好ましい。 【0048】 n+ソース領域7は、ドーピング濃度が1×1019cm-3前後であるn型不純物を含んでいる。ソース電極12は、ニッケルシリサイドからなり、p+コンタクト領域4とn+ソース領域7の一部とにオ-ミック接触している。ドレイン電極11は、ニッケルシリサイドからなり、SiC基板1の裏面とオ-ミック接触している。 【0049】 ゲート電極13は、アルミニウム形成されている。チャネル層6の表面にはゲート絶縁膜9が形成されており、ゲート絶縁膜9上にはアルミニウムからなるゲート電極13が形成されている。さらに、図示しないが、例えばシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜が表面に堆積され、その表面上に例えば厚いアルミニウム膜からなる上部配線が形成され、それぞれの単位スクェアセルのソース電極13は、単一の上部配線に共通に接続されている。 【0050】 図2(a)~(e)及び図3(a)~(e)は、第1の実施形態のSiC-MISFETの製造工程を示す断面図である。 【0051】 まず、図2(a)に示す工程で、( 0 0 0 1)面から< 1 1-2 0>方向に8°のオフ角をもつ主面を有し、n型ドーピング濃度が1×1018cm-3~5×1019cm-3程度のSiC基板1を用意し、SiC基板1の上に高抵抗SiC層2をエピタキシャル成長させる。その際、例えば、原料ガスとしてシラン(SiH4)とプロパン(C3H8)を、キャリアガスとして水素(H2)を、ド-パントガスとして窒素(N2)ガスを用いた熱CVDにより、SiC基板1よりも低ドーピング濃度の高抵抗SiC層2をエピタキシャル成長させる。例えば600V耐圧のSiC-MISFETを製造するのであれば、高抵抗SiC層2のドーピング濃度は1×1015cm-3~1×1016cm-3で、厚さは10μm以上が望ましい。 【0052】 次に、図2(b)に示す工程で、エピタキシャル成長させた高抵抗SiC層2の表面領域にアルミニウムまたはボロンの選択的なイオン注入を行なって、p型のウェル領域3を形成する。ウェル領域3の形成には、まず、CVD法などにより、高抵抗SiC層2の上に注入マスクとなる厚さ3μm程度のシリコン酸化膜を堆積し、フォトリソグラフィ-及びドライエッチングによって、ウェル領域3を形成する部分のみシリコン酸化膜に開口を設ける。そして、注入欠陥を低減するために、基板温度を500℃以上の高温に保ってアルミニウムまたはボロンのイオン注入を行ない、イオン注入が終了すると、ふっ酸によってシリコン酸化膜を全面除去する。 【0053】 ウェル領域3のドーピング濃度は、通常1×1017cm-3前後から1×1018cm-3であり、ウェル領域3の深さはピンチオフしないように1μm前後とする。また、ウェル領域3と後に形成される電極とのコンタクトをとるために、ウェル領域3の表面領域の一部にp+コンタクト領域4をアルミニウムまたはボロンをイオン注入することによって形成する。イオン注入の手順は、ウェル領域3を形成する際の手順と基本的には同じである。p+コンタクト領域4の厚みは300nm前後であり、ドーピング濃度は1×1019cm-3以上である。イオン注入の方法は、ウェル領域3の形成と同じである。 【0054】 次に、図2(c)に示す工程で、カ-ボン製のるつぼにSiC基板を配置し、アルゴンなどの不活性ガス中で1750℃前後で30分程度の活性化アニールを行う。ただし、アニール温度は赤外線放射温度計でるつぼ表面の温度を計測して得られたデータである。このとき、高抵抗SiC層2,ウェル領域3及びp+コンタクト領域4の露出している表面にはマクロステップが形成される。マクロステップの段差は50nm程度である。そして、図14に示すように、テラス領域とステップ領域では異なる結晶面が現れる。また、p型不純物の活性化率は、ほぼ100%である。活性化アニールの温度を1700℃まで低下させるとマクロステップの段差は30nm程度に小さくなるが、p型不純物の活性化率は90%に低下する。 【0055】 次に、図2(d)に示す工程で、熱CVD法により、ウェル領域3および高抵抗SiC層2の表面にチャネル層6となるn型SiC層をエピタキシャル成長させる。チャネル層6のアンドープ層6aをエピタキシャル成長させる際には、意図的なドーピングを行わず、δドープ層6bをエピタキシャル成長させる際には、in-situ ドープにより、1×1017~1×1018cm-3程度の不純物をドープする。 【0056】 次に、図2(e)に示す工程で、イオン注入により、ウェル領域3の表面領域の一部に窒素またはリンなどのn型不純物を導入してソース領域7を形成する。ソース領域7のドーピング濃度は1×1019cm-3程度であり、その深さは、例えば300nm程度である。その際、注入マスクとなる厚さ1μm程度のシリコン酸化膜を基板上に堆積し、フォトリソグラフィ-及びドライエッチングによって、シリコン酸化膜のうちソース領域7を形成する部分を開口する。その後、注入欠陥を低減するために基板温度を500℃以上の高温に保って窒素またはリンのイオン注入を行なう。イオン注入が終了した後には、注入マスクとして用いたシリコン酸化膜をふっ酸によって除去し、アルゴンなどの不活性雰囲気中で1750℃程度で30分程度の活性化アニールを施す。 【0057】 次に、図3(a)に示す工程で、CF4とO2とを用いたRIEにより、チャネル層6を貫通して、p+コンタクト領域4に到達するコンタクトホ-ル8を形成する。 【0058】 次に、図3(b)に示す工程で、熱酸化により、基板上に露出しているSiCを酸化して、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜9を形成する。SiCの熱酸化の際には、例えば石英管内に基板を保持し、乾燥した酸素を流量2.5(l/min)で石英管に導入し、基板温度を1180℃に保って3時間の間熱酸化を行なうことにより、厚さ約60nmの熱酸化膜を形成する。このとき、図14に示すように、ステップ領域では、ゲート絶縁膜9の厚みは、テラス領域における厚みの半分程度になる。 【0059】 次に、図3(c)に示す工程で、酸素と窒素との化合物からなるガスとして、例えば一酸化窒素ガスの雰囲気中で、基板温度を例えば1100℃にして、1時間の間アニールを行なう。この工程については、後に詳しく説明する。 【0060】 次に、図3(d)に示す工程で、SiC基板1の裏面上に厚さ100nm程度のニッケル膜を蒸着して、ドレイン電極11を形成する。さらに、フォトリソグラフィ-とフッ酸エッチングによって、基板の主面上のゲート絶縁膜9のうちソース電極形成領域に位置する部分を除去し、リフトオフ法を用いて、p+コンタクト領域4及びソース領域7に跨って厚さ100nmのニッケル膜からなるソース電極12を形成する。ソース電極12及びドレイン電極11とSiC層との間のオ-ミック接触特性を得るために、窒素などの不活性ガス雰囲気中で950℃程度で2分間程度の熱処理を行なう。この熱処理により、ニッケルはSiCと反応して、一部または全部がニッケルシリサイドとなる。 【0061】 次に、図3(e)に示す工程で、基板上に、厚さ150nm程度のアルミニウム膜を堆積した後、汎用のフォトリソグラフィ-と燐酸系のウェットエッチングによって、アルミニウム膜をパターニングし、ゲート電極13を形成する。 【0062】 この後、図示しないが、プラズマCVD等により、基板上に層間絶縁膜として厚さ1μm程度のシリコン酸化膜を堆積し、ドライエッチングにより、シリコン酸化膜にソース電極12およびゲート電極13に達するヴィアホ-ルを開口した後、基板上に厚さ2μm程度のアルミニウム膜を堆積して、上部配線を形成することにより、二重注入型SiC-MISFETを形成する。 【0063】 ここで、図3(c)に示す工程における処理内容について、以下に説明する。図4(a),(b)は、ゲート絶縁膜をV族元素含有ガスに暴露する工程を示す断面図である。 【0064】 まず、図4(a)に示す工程で、基板を、チャンバ内に設置して、酸化性雰囲気下で基板を加熱することにより、基板上に、酸化膜であるゲート絶縁膜9を形成する。この場合、酸化温度は1000℃以上であり、好ましくは1050℃~1300℃である。酸化性雰囲気を生じさせるためには、チャンバ内に、酸素,水蒸気のうち少なくともいずれか1つを含むガスを流せばよい。その後、不活性ガス(Ar,N2,He,Ne等)雰囲気中で、1000℃以上の温度(例えば、1000℃~1150℃)でアニールする。このアニール処理によって、ゲート絶縁膜9が前もって緻密化される。 【0065】 次に、図4(b)に示す工程で、基板を、除害装置(図示せず)、及び減圧装置である真空ポンプが付設されたチャンバ内に移動させて、チャンバ内を真空ポンプによって約300Torr(4.0×104Pa)に減圧しつつ、チャンバ内に流量500(ml/min)のNOガス(又は、リン(P)などの窒素以外のV族元素含有ガス)を流し、チャンバ内を窒素(N)(又は窒素以外のV族元素)が酸化膜中に拡散するのに十分に高い温度(約1100℃)に加熱する。このとき、減圧下で、酸化膜を窒素などのV族元素を含むガスに暴露することにより、酸化膜内に窒素などのV族元素が拡散し、比誘電率の大きい,より緻密なV族元素を含有したゲート絶縁膜9が形成される。暴露は、緻密なゲート絶縁膜9を形成するのに充分な、そして、ゲート絶縁膜9の特性が向上するのに充分な時間(例えば1時間)の間行なう。 【0066】 図5は、第1の実施形態の製造方法によって形成されたゲート絶縁膜9の厚さ方向における窒素濃度をSIMSにより実測した窒素濃度プロファイルを示すデータである。同図に示されるように、NOガスへの暴露処理によって、ゲート絶縁膜9中には窒素が拡散しており、特に、ゲート絶縁膜9のうち下地のチャネル層6(SiC層)に近い領域において窒素濃度が6×1020atoms/cm3という、鋭いピーク部が現れている。そして、ピーク部の厚さ方向の寸法は、約10nmである。そして、ゲート絶縁膜9全体の比誘電率は約3.3である。 【0067】 このように、ゲート絶縁膜9に窒素,リン(P)などのV族元素を導入することにより、高い比誘電率を実現することができる。したがって、本実施形態のSiC-MISFETでは、ゲートバイアスを下地層に効率よく作用させることができ、高い電流駆動力を実現することができる。 【0068】 図6は、第1の実施形態の方法により形成したゲート絶縁膜9を容量絶縁膜として備えたMISキャパシタのCV測定の結果を示す図である。同図の横軸は電極間の電圧を表し、同図の縦軸は容量を表している。このサンプルは、ゲート絶縁膜9の上にキャパシタの上部電極を形成する際に、950℃以上の熱処理を経ている。同図におけるQuasi-static CV曲線と、高周波(1MHz)で測定したCV曲線とを比較すると、両者の差がわずかであることから界面準位密度が減少していることがわかる。 【0069】 図7は、図6に示すデータに基づいて、High-Low法で計算した界面準位密度を示す図である。同図に示すように、キャリア(電子)のトラップとして作用する界面準位はコンダクションバンド端付近(E-Ev=3.15eV)の界面準位であるが、本実施形態においては、1×1012cm-2・eV-1以下の界面状態密度が得られている。また、ゲート絶縁膜9全体における窒素の平均濃度は、8.3×1019cm-3である。なお、ホールトラップとして機能する界面準位(バレンスバンド端付近の界面準位)の密度も同様である。 【0070】 このように、ゲート絶縁膜9とチャネル層6との間の界面付近の領域における界面準位密度を低減することができることがわかる。 【0071】 したがって、SiC-MISFETを形成した場合にも、キャリアトラップとなる界面準位密度の低減により、さらにキャリア移動度の向上を図ることができ、電流駆動力の向上を図ることができる。特に、ゲート絶縁膜9の下部における窒素濃度の最大値が、1×1020cm-3以上で、1×1022cm-3以下であることにより、比誘電率の向上作用と、界面準位密度の低減作用とが顕著に得られる。加えて、本実施形態の二重注入型SiC-MISFETにより、以下のような格別の効果が得られる。」 (2)したがって、上記引用例3には次の発明(以下、「引用例3発明」という。)が記載されていると認められる。 「SiC-MISFETの製造工程であって、 n型ドーピングされたSiC基板1を用意し、SiC基板1の上に高抵抗SiC層2をエピタキシャル成長させ、 p型のウェル領域3を形成し、 イオン注入により、ウェル領域3の表面領域の一部にp+コンタクト領域4を形成し、 アンドープ層6a(第1の半導体層)と、アンドープ層6aよりも高濃度のn型キャリア不純物を含み、アンドープ層6aよりも膜厚が薄いδドープ層6b(第2の半導体層)とを交互に積層した多重δドープ構造のチャネル層6となるn型SiC層をエピタキシャル成長させ、 イオン注入により、ウェル領域3の表面領域の一部にソース領域7を形成し、 チャネル層6を貫通して、p+コンタクト領域4に到達するコンタクトホ-ル8を形成し、 熱酸化により、基板上に露出しているSiCを酸化して、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜9を形成し、 SiC基板1の裏面上にニッケル膜を蒸着して、ドレイン電極11を形成し、 基板の主面上のゲート絶縁膜9のうちソース電極形成領域に位置する部分を除去し、p+コンタクト領域4及びソース領域7に跨ってニッケル膜からなるソース電極12を形成し、 ゲート電極13を形成する、 工程。」 4 引用例4について 原査定の拒絶の理由に引用された特表2004-519842号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0040】 図6に、本発明の実施形態によるMOSFETを例示する。図6に示すように、本発明の特定の実施形態においては、低濃度ドープされた炭化ケイ素のn-ドリフト層12が、炭化ケイ素のn+層10の上にある。n-ドリフト層12は、炭化ケイ素の基板またはエピタキシャル層であっても良く、好ましくは4Hポリタイプ炭化ケイ素である。好ましくは、n-ドリフト層12は、キャリア濃度が約1014から約1017cm-3である。また、n+層10は、注入された層もしくは領域またはエピタキシャル層であっても良い。n+層は好ましくは、キャリア濃度が約1018から1021cm-3である。 【0041】 さらに図6に示すように、離間されたp型炭化ケイ素領域によってn-ドリフト層12の中にp-ウェル20が形成されている。p-ウェル20は好ましくは、Alが注入され、少なくとも約1500℃の温度でアニールされている。p-ウェル20は、キャリア濃度が約1×1016から約2×1019cm-3であっても良く、またn-ドリフト層12内に約0.1μmから約3μmだけ延びていても良い。種々のp型ドーパントを用いても良いが、ボロンよりもAlがp-ウェル20のドーパントとしては好ましい。と言うのは、ボロンは、1500℃を超える温度でアニールしたときに数μmに渡って拡散する傾向があるからである。そのため、p-ウェル20間の正確なギャップ(JFET領域21と言われることがある領域)を制御するのが難しくなる可能性がある。このギャップが大きすぎると、デバイスがブロッキング状態(blocking state)にあるときに、ゲート酸化物中の電界が高くなりすぎる可能性がある。しかしこのギャップが狭すぎると、JFET領域21の抵抗が非常に高くなる可能性がある。したがってギャップとしては、約1μmから約10μmであることが好ましい。与えられたデバイスに対して用いる個々のギャップは、デバイスの好ましいブロッキング電圧およびオン状態の抵抗に依存し得る。 【0042】 n+炭化ケイ素領域24および、随意にp+炭化ケイ素領域22が、p-ウェル20内に配置されている。n+炭化ケイ素領域24は好ましくは、約0.5μmから約5μmだけ、JFET領域21に隣接するp-ウェル20の縁から間隔を置いて配置されている。随意のp+炭化ケイ素領域22は好ましくは、n+炭化ケイ素領域24に隣接し、かつp-ウェル20の縁の反対側である。n型炭化ケイ素の薄い層、たとえば窒素またはリンなどのn型不純物が所定のドーズだけドープされた層が、炭化ケイ素領域24から、ゲート酸化物28に隣接するn-ドリフト層12のJFET領域へ延びて、短絡チャネル26を形成している。短絡チャネル26をp-ウェル内に注入して、p-ウェルの活性化と一緒に少なくとも約1500℃の温度で活性化しても良い。好ましくは、短絡チャネル26はp-ウェル20内部に、約0.05μmから約1μmの深さまで延びている。短絡チャネル26のドーピングは、図10A~10Cを参照して後述するように、層の深さ、ゲートコンタクト32用材料の仕事関数、およびp-ウェル20のドーピングに依存し得る。しかし一般的に、短絡チャネル26は、シート電荷が約1013cm-2未満であっても良い。またp-ウェル20用のAlを注入した後に同じマスクを用いて短絡チャネル26用のn型不純物を注入することによって、マスクを再位置合わせする必要性を回避して、短絡チャネル26をp-ウェル20に対して自己整合することが好ましい。前述したように、短絡チャネル26はJFET領域内部に延びていないことが好ましい。と言うのは、このような層をJFET領域内部に延ばすと、デバイスがブロッキング状態にあるときに酸化物中の電界が増大する可能性があるからである。 【0043】 ゲート酸化物28は、少なくとも炭化ケイ素のn+領域24間を延び、好ましくは、NOまたはN2Oアニールによって熱成長させた酸化物か、酸化物/窒化物/酸化物(ONO)(最初の酸化物は熱酸化物でその後にNOまたはN2Oアニールを行う)の何れかである。ゲートコンタクト材料は、好適であればどんなコンタクト材料であっても良いが、その高い仕事関数によりp型ポリシリコンが好ましい場合がある。ゲート酸化物28の厚みは、ゲートコンタクト32の材料の仕事関数に依存し得る。しかし一般的に、厚みとしては約100Åから約5000Åが好ましい。 【0044】 また1つまたは複数のソースコンタクト30およびドレインコンタクト34が形成されている。ソースコンタクト30は好ましくは、ニッケル(Ni)で形成され、p+領域22およびn+領域24の両方に対してオーミックコンタクトを形成するように、約600℃から約1000℃、たとえば825℃でアニールしても良い。ドレインコンタクト34も、Niまたは、n型炭化ケイ素へのオーミックコンタクトの形成に対して好適な他のこのような材料であっても良い。 【0045】 図7に、再成長させたエピタキシャル層を用いる本発明のさらなる代替的な実施形態を例示する。図7に示すように、炭化ケイ素の薄い層27を、p-ウェルを注入しアニーリングした後にp-ウェル20上に再成長させており、この層27はJFET領域内のn-ドリフト層12を横断して延びている。短絡チャネル26’は、再成長させたエピタキシャル層で形成されていても良いが、または好ましくは、再成長させた炭化ケイ素層27内におよび/または層27を通して注入することによって形成しても良い。同様に、炭化ケイ素のn+領域24も、再成長させた炭化ケイ素層27を通して形成しても良い。再成長させた炭化ケイ素層27は、厚みが約0.05μmから約1μmであっても良いが、しかし厚みとしては約1000から約5000Åが好ましい場合がある。好ましくは、再成長させた炭化ケイ素層27はアンドープで、意図的なドープもされず、低濃度ドープもされていない。しかし再成長させた炭化ケイ素層27が短絡チャネル26’を形成する場合には、再成長させた炭化ケイ素層27はn型炭化ケイ素でなければならない。したがって再成長させた炭化ケイ素層27が短絡チャネルを形成する場合には、再成長させた炭化ケイ素層27は好ましくは、シート電荷が約1013cm-2未満である。たとえば、キャリア濃度が2×1016の3500Å厚みの炭化ケイ素層27が、ゼロゲートバイアスにおいてノーマリオフのデバイスを形成するのに大変良く適している可能性がある。このような再成長によって、注入活性化アニールによって生じる表面粗さを低減することができる。また再成長によって、ダメージが低減され得るエピタキシャル層上にチャネル領域が設けられるため、チャネル移動度をさらに高くすることができる。 【0046】 さらに図7に示すように、再成長させた炭化ケイ素層27があるので、炭化ケイ素層27を通してコンタクト窓を設けて、コンタクト30’を随意のp+領域22に対してまたはp+領域22がない場合にはp-ウェル20に対して形成する。コンタクト30’は、p型炭化ケイ素に対するオーミックコンタクトの形成に適していればどんな材料で形成しても良いが、ニッケルが好ましい。 【0047】 図6および7は、ディスクリートデバイスとしての本発明の実施形態を例示しているが、当業者であれば分かるように、図6および7は、複数のセルを有するデバイスのユニットセルであるとみなしても良い。したがって、たとえば、デバイスをその中心軸(図6および7では垂直軸として例示される)に沿って分割して、分割されたデバイスを、図6および7に例示したデバイスの周縁の軸(図6および7に例示したデバイスの垂直縁)の周りに回転させることによって、追加のユニットセルを図6および7に例示したデバイス内に取り入れても良い。したがって本発明の実施形態に含まれるデバイスとしては、図6および7に例示したデバイスだけでなく、図6および7に例示した短絡チャネルを取り入れたユニットセルを複数個有するデバイスも挙げられる。 【0048】 次に、本発明の実施形態によるデバイスの製造を、図8A~8Hおよび9A~9Jを参照して説明する。図8Aに示すように、マスク100をn型層12上に形成してパターニングした後、不純物をn型層12中に注入して、p-ウェル20を形成する。好ましくは、不純物はAlであって、前述した深さまでおよび活性化されたときに所望のキャリア濃度が得られるように注入する。p-ウェル20の形成後、マスク100を用いてn型注入102を行う(図8B)。n型層の注入に適した不純物には、窒素およびリンが含まれる。このような不純物を、本明細書で述べた短絡チャネル深さおよびキャリア濃度が得られるように注入する。図11に、p-ウェル20およびn型注入102の1つの好適な複合ドーピングプロファイルの例を示す。p-ウェルおよびn型層102の両方を注入した後、結果として生じる構造を少なくとも約1500℃の温度まで加熱し、その温度に約30秒から約60分の間維持して、注入不純物を活性化する。あるいはこのようなアニールを、図8Eに示すように、n+領域24、p+領域22を注入し裏面注入した後で、行っても良い。 【0049】 図8Cに示すように、マスク100を取り除いてマスク104を形成してパターニングした後、マスク104を用いてn型不純物を注入して、n+領域24を形成する。マスク104は、p-ウェル20の周縁とn+領域24との間の所望する間隔(短絡チャネル26のチャネル長を画定する)が得られるように形成する。好適なn型不純物には、窒素およびリンが含まれる。また不純物は、本明細書で述べたn+領域24の寸法およびキャリア濃度が得られるように注入しても良い。 【0050】 図8Dに、随意のp+領域の形成を例示する。マスク104も取り除いてマスク106を形成してパターニングした後、マスク106を用いてp型不純物を注入して、p+領域22を形成する。p型不純物は、本明細書で述べたp+領域22の寸法およびキャリア濃度が得られるように注入しても良い。好ましくは、p型不純物はアルミニウムであるが、他の好適なp型不純物を用いても良い。 【0051】 図8Eに、マスク106の除去とともに、n+層10の形成を例示する。n+層10は、n型不純物を基板に裏面注入して形成しても良いし、またはエピタキシャル層であっても良いし、および図8Aの前に形成しても良い。随意に、前述した構造のアニールを行って、注入したp型およびn型不純物を活性化しても良い。あるいは、ゲート酸化物を形成後にアニールしてSiC/SiO2界面を改善させる実施形態において、このような不純物の活性化をこのようなアニールによって行っても良い。 【0052】 図8Fに、ゲート酸化物28の形成とパターニングとを例示する。ゲート酸化物は好ましくは、熱成長させたものであり、また窒化酸化物である。窒化酸化物は、好適などんなゲート酸化物であっても良いが、SiO2、酸窒化物、またはONOが好ましい場合がある。好ましくは、ゲート酸化物またはONOゲート誘電体の初期酸化物を形成した後に、N2OまたはNO中でアニールして、SiC/酸化物界面における欠陥密度を減らす。特定の実施形態では、ゲート酸化物を熱成長または堆積によって形成した後に、N2O環境中で約1100℃を超える温度、および約2から約8SLMの流量(約11から約45秒間のN2Oの初期滞留時間を与えることができる)でアニールする。炭化ケイ素上への酸化物層のこのような形成およびアニーリングは、次の文献に記載されている。本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第09/834,283号、発明の名称「Method of N2O Annealing an Oxide Layer on a Silicon Carbide Layer」(代理人整理番号5308-156)、または米国仮出願第       号、発明の名称「Method of N2O Growth of an oxide layer on a Silicon Carbide Layer」(2001年5月30日出願)。これらの開示は、参照により本明細書において完全に記載されているかのごとく組み込む。また、以下の文献に記載されているように、N2O成長させた酸化物を用いても良い。J.P.Xu、P.T.Lai、C.L.Chan、B.Li、およびY.C.Cheng、「Improved Performance and Reliability of N2O-Grown Oxynitride on 6H-SiC」、IEEE Electron Device Letters、第21巻、第6号、298-300頁、2000年6月。またL.A.LipkinおよびJ.W.Palmour、「Low interface state density oxides on p-type SiC」、Materials Science Forum、第264-268巻、853-856頁、1998年に記載されている技術を用いても良い。あるいは、以下の文献に記載されているように、熱成長させた酸化物に対しては、熱成長させたSiO2層をその後にNOアニールして界面トラップ密度を減らしても良い。M.K.Das、L.A.Lipkin、J.W.Palmour、G.Y.Chung、J.R.Williams、K.McDonald、およびL.C.Feldman、「High Mobility 4H-SiC Inversion Mode MOSFETs Using Thermally Grown, NO Annealed SiO2」、IEEE Device Research Conference、Denver、CO、6月19-21日、2000年;G.Y.Chung、C.C.Tin、J.R.Williams、K.McDonald、R.A.Weller、S.T.Pantelides、L.C.Feldman、M.K.Das、およびJ.W.Palmour、「Improved Inversion Channel Mobility for 4H-SiC MOSFETs Following High Temperature Anneals in Nitric Oxide」、IEEE Electron Device Lettersに掲載予定;ならびにG.Y.Chung、C.C.Tin、J.R.Williams、K.McDonald、M.Di Ventra、S.T.Pantelides、L.C.Feldman、およびR.A.Weller、「Effect of nitric oxide annealing on the interface trap densities near the band edges in the 4H polytype of silicon carbide」、Applied Physics Letters、第76巻、第13号、1713-1715頁、2000年3月。酸窒化物を、以下の文献に記載されているように形成しても良い。米国特許出願第      号、発明の名称「High Voltage, High Temperature Capacitor Structures and Methods of Fabrication」(2001年6月11日出願)。この開示は、参照により本明細書において完全に記載されているかのごとく組み込む。 【0053】 窒化酸化物層の形成の例として、炭化ケイ素層をN2O環境中で少なくとも約1200℃の温度で酸化することによって、酸化物の層を炭化ケイ素層上に設けても良い。N2Oの所定の温度プロファイルおよび所定の流量プロファイルを、酸化の間に与える。所定の温度プロファイルおよび/または所定の流量プロファイルは、一定であっても変化しても良く、また定常状態条件へのランプ(ramps)を含んでいても良い。所定の温度プロファイルおよび所定の流量プロファイルを、SiCの伝導帯付近のエネルギーを有する酸化物/炭化ケイ素界面の界面準位を減らすように選んでも良い。所定の温度プロファイルの結果、酸化温度が約1200℃を超えても良い。好ましくは、酸化温度は約1300℃である。酸化時間は、所望する酸化物層の厚みに応じて変化する場合がある。そのため酸化は、約15分間から約3時間またはそれ以上の間、行っても良い。 【0054】 さらに所定の流量プロファイルは、約2標準リットル毎分(SLM)から約6SLMの1つまたは複数の流量を含んでいても良い。好ましくは、流量は約3.5から約4標準リットル毎分である。また結果として生じる酸化物層を形成した後に、酸化物層をArまたはN2中でアニーリングしても良い。このようなArまたはN2中でのアニーリング工程は、たとえば約1時間行っても良い。 【0055】 所定の流量プロファイルは好ましくは、約0.37cm/sから約1.11cm/sのN2Oの1つまたは複数の速度を与える。特に、所定の流量プロファイルは好ましくは、約0.65cm/sから約0.74cm/sのN2Oの1つまたは複数の速度を与える。また酸化物層のウェット再酸化を行っても良く、および/または蒸気を部分的にまたはその分圧を含む環境中でN2O酸化を行っても良い。 【0056】 また炭化ケイ素層上への酸化物層の形成を、N2O環境中において、約1200℃を超える酸化温度を含む所定の温度プロファイルおよびN2Oに対する所定の流量プロファイルで、炭化ケイ素層上に酸化物層を形成することによって行っても良い。所定の流量プロファイルは、少なくとも約11秒のN2Oの初期滞留時間が得られるように選んでも良い。好ましくは、初期滞留時間は約11秒から約33秒である。より好ましくは、初期滞留時間は約19秒から約22秒である。またN2Oの全滞留時間は、約28秒から約84秒であっても良い。好ましくは、全滞留時間は約48秒から約56秒である。 【0057】 図12に、界面準位密度対伝導帯からのエネルギー準位のグラフを例示する。線200は、アニールした酸化物を示す。線202は、NO環境中でドライアニールした後の酸化物を示す。線204は、N2O環境中でドライアニールした後の酸化物を示す。線206は、NO環境中でウェットアニールした後の酸化物を示す。 【0058】 図8Gに、ゲートコンタクト32の形成を例示する。前述したように、ゲートコンタクト32は、p型ポリシリコンであっても良いし、他の好適なコンタクト材料であっても良いし、また当業者に知られた技術を用いて形成してパターニングしても良い。あるいは、図8Fの酸化物28とゲートコンタクト32とを、一緒に形成してパターニングしても良い。最後に図8Hに、ソースおよびドレインコンタクト30および34の形成を例示する。これらは、蒸着(evaporative deposition)、スパッタリング、または当業者に知られた他のこのような技術によって形成しても良い。好ましくは、ソースおよびドレインコンタクト30および34は、ニッケルであり、形成した後に約825℃でアニールして、オーミックコンタクトの特性を向上させる。」 (2)したがって、上記引用例4には次の発明(以下、「引用例4発明」という。)が記載されていると認められる。 「MOSFETの製造方法であって、 マスク100を低濃度ドープされた炭化ケイ素のn-ドリフト層12上に形成してパターニングした後、不純物をn型層12中に注入して、p-ウェル20を形成し、 マスク100を用いてn型注入102を行い、 マスク100を取り除いてマスク104を形成してパターニングした後、マスク104を用いてn型不純物を注入して、n+領域24を形成し、 マスク104も取り除いてマスク106を形成してパターニングした後、マスク106を用いてp型不純物を注入して、p+領域22を形成し、 マスク106の除去とともに、n+層10の形成し、 ゲート酸化物28を形成し、パターニングし、 ゲートコンタクト32を形成し、 ソースおよびドレインコンタクト30および34を形成する、 方法。」 5 引用例5について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-077112号公報(以下、「引用例5」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0076】一方、Si基板1の表面がSiO2 アモルファス層や他の化学種や薄膜によって覆われている場合には、Si基板1をさらに800~900℃の範囲の温度に保持する。この時、表面を被覆していた他の化学種や薄いSiO2 アモルファス層がSi基板1の表面から脱離する。すると、図2(b)に示すように、Si基板1の表面上にダングリングボンド2が残される。そこで、図2(c)に示すように、終端用化学種11をSi基板1上のダングリングボンド2に供給する。 【0077】その結果、図2(d)に示すように、この化学種11を終端原子12として残して、ダングリングボンド2を終端させる。このときに用いる終端用化学種11としては、水素(H),Mg,硫黄(S),窒素(N),アルミニウム(Al)などのうちのいずれか1つが選ばれる。 【0078】以上のように、いずれにしても、Si基板1の表面上のダングリングボンドを終端原子12によって終端させてから、AlNのエピタキシャル成長処理を行なう。」 (2)したがって、上記引用例5には次の発明(以下、「引用例5発明」という。)が記載されていると認められる。 「ダングリングボンドを終端させる方法であって、 ダングリングボンドにアルミニウム(Al)を供給し、ダングリングボンドを終端させる方法。」 6 引用例6について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-214662号公報(以下、「引用例6」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0030】 本発明の1つ又は複数の態様による図4~15に移って、トランジスタ400を形成する方法の一例が提供される。トランジスタ400が半導体基板402の上に形成され、その間に、ゲート誘電体を形成するために用いられる高誘電率誘電体材料層の最表面の電気的活性欠陥がパッシベーション処理される。トランジスタ400は、開発の種々の段階でのトランジスタ400の断面図を参照して、図4~15に描かれている。 【0031】 最初に、高誘電率誘電体材料の層404が基板402全面に形成される(図4)。基板402は一般にシリコンを含み、一方、高誘電率誘電体材料層404は、二酸化ケイ素(SiO2)の誘電率又は約3.9よりも大きな誘電率を有する任意の多数の適切な材料を、独立に又は組み合わせて含むことができる。それらの高誘電率材料は、例えば、誘電率がそれぞれ7~9、20~26、30、及び>200である、窒化ケイ素(SiN4)、五酸化タンタル(Ta2O5)、酸化チタン(TiO2)、チタン酸ストロンチウムバリウム(BST)を含むことができ、同様に、Al2O3、ZrO2、HfO2、酸窒化ジルコニウム、酸窒化ハフニウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸ハフニウム、酸窒化ケイ素ジルコニウム、酸窒化ケイ素ハフニウム、又は他の適切な材料を含むことができる。高誘電率誘電体材料層404が、例えば、スピンオン技術、スパッタ技術(例えばマグネトロン又はイオンビームスパッタ)、化学的気相成長(CVD)などの成長及び/又は堆積技術を含む多くの任意の手法によって、基板402全面に形成できることを認識すべきである。 【0032】 高誘電率誘電体材料層404上の最表面406(仮想的に描かれている)は、そこに付帯する複数の電気的活性欠陥408(これも仮想的に描かれている)を有する。次いで、固体材料410が高誘電率誘電体材料層404上に形成される(図5)。固体材料層406は、例えば、成長、堆積及び/又はスピンオン技術など任意の適切な手法によって、高誘電率誘電体材料層404の全面に形成することができる。固体材料層406は、例えば、少なくとも1つのリン酸ケイ酸ガラス(PSG)及びリン(P)注入SiO2を含むことができ、また、少なくともいくつかの型のドーパント材料412(その中に影を付けて描かれている)を含む。また、固体材料層は、例えば、約50~1000オングストロームの厚さを有することもできる。 【0033】 次いで、少なくともいくつかのドーパント材料412は、高誘電率誘電体材料層404の最表面406に追い込まれ、高誘電率誘電体材料層404の最表面406内に位置する少なくともいくつかの電気的活性欠陥408がパッシベーション処理される(図6)。固体材料層410は、ドーパントを高誘電率誘電体材料層404に追い込むのを容易にするために、例えば、約250~1000℃の温度で約1秒~1時間加熱することができる。ドーパント412の少なくともいくつかの特性によって、ドーパントは電気的活性欠陥408に誘引され、少なくともいくつかの欠陥408を中和する。 【0034】 本発明の1つ又は複数の他の態様によれば、固体材料層410もまた、少なくとも1つの酸化ホウ素(B2O3)及びP2O5からなることができ、約50~1000オングストロームの厚さを有することができ、ドーパント412を高誘電率誘電体材料層404に追い込んで電気的活性欠陥408をパッシベーション処理するために、例えば、約250~650℃で約20~40分間加熱することができる。」 (2)したがって、上記引用例6には次の発明(以下、「引用例6発明」という。)が記載されていると認められる。 「高誘電率誘電体材料層404の最表面406内に位置する少なくともいくつかの電気的活性欠陥408をパッシベーション処理する方法であって、 高誘電率誘電体材料の層404を基板402全面に形成し、 P2O5からなる固体材料410を高誘電率誘電体材料層404上に形成し、 約250~1000℃の温度で約1秒~1時間加熱することで、ドーパントを高誘電率誘電体材料層404に追い込み、 電気的活性欠陥408を中和する、 方法。」 7 引用例7について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-100357号公報(以下、「引用例7」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0008】 《製造方法》 次に、図1に示した本発明の第1の実施の形態による炭化珪素半導体装置の製造方法を、図2(a)~図3(h)を用いて説明する。 まず、図2(a)に示すように、N+型の炭化珪素基板1の上にN-型のドレイン領域2をエピタキシャル成長させて形成したN型の炭化珪素半導体基体上に、酸化防止膜(マスク層)8として、例えば、LP-CVD法によって形成された窒化シリコン膜を堆積している。さらに、窒化シリコン膜の酸化防止膜8上に、フォトリソグラフィとエッチングにより所定の開口を有するマスク層9を形成する。 次に、図2(b)に示すように、マスク層9をマスクとして用いて、例えば反応性イオンエッチング(ドライエッチング)により、酸化防止膜8とドレイン領域2の表層部をエッチングし、ドレイン領域2は所定の深さをエッチングして溝15を形成する。なお、窒化シリコン膜の酸化防止膜8及びドレイン領域2をエッチングする方法として、異方性のあるエッチング方法であれば他のエッチング方法を用いてもよい。 次に、図2(c)に示すように、エッチングされたドレイン領域2にはドライエッチングよってエッチングダメージが生じているため、それを取り除くために、例えば1100℃のドライO2酸化にて犠牲酸化を行い、犠牲酸化膜10を形成する。このとき、本実施の形態においては、酸化防止膜8としてLPCVDによって形成された窒化シリコン膜を用いているため、炭化珪素からなるドレイン領域2と比較的酸化レートが近いことから、同程度の犠牲酸化膜10が窒化シリコン膜の酸化防止膜8上にも形成される。このため、ドレイン領域2の側壁上端部と酸化防止膜8の端部はほぼ同一面を維持できる。なお、犠牲酸化膜10の形成方法としては、ドライO2酸化での酸化を一例としてあげているが、ドレイン領域2のエッチングダメージが入った領域を酸化膜中に取り込めさえできれば、どのような方法でもかまわない。 【0009】 次に、図2(d)に示すように、犠牲酸化膜10(図2(c))を例えばフッ化アンモニウムとフッ酸との混合溶液でウエットエッチングして除去する。 次に、図3(e)に示すように、例えばSOGなどリフローが可能な材料を用いて、埋め込み領域11を形成する。本実施の形態においては、酸化防止膜8の溝も含む溝15の上端部とほぼ同一面となるように埋め込み領域11を形成した場合を示しているが、少なくともドレイン領域2と酸化防止膜8との接合界面に接するように形成されていれば、完全に埋まっていなくても、もしくは該溝からはみ出していても問題ない。また、埋め込み領域11を形成する際に、酸化防止膜8上にも埋め込み領域の材料を形成し、その後、エッチバックして埋め込み領域を形成してもよい。」 (2)「【0021】 次に、本構造の動作について説明する。基本的には図1の構造と同様であるが、このような構成にすることにより、遮断性能がさらに向上する。すなわち、ヘテロ半導体領域3及び第二のヘテロ半導体領域12とドレイン領域2とのヘテロ接合界面には、それぞれ伝導電子に対するエネルギー障壁が形成されているためである。このとき、ヘテロ半導体領域3及び第二のヘテロ半導体領域12は共にシリコン材料からなるため、炭化珪素からなるドレイン領域2とのエネルギー障壁差ΔEcはほぼ同様となる。しかし、N型であるヘテロ半導体領域3とP型である第二のヘテロ半導体領域12とでは、伝導帯からフェルミ準位までのエネルギーで示されるフェルミエネルギーに差があるため、ドレイン領域2の接合界面に伸びる空乏層の幅が異なる。つまり、第二のヘテロ半導体領域12との接合界面から伸びる空乏層幅は、ヘテロ半導体領域3との接合界面から伸びる空乏層幅よりも大きいため、より高い遮断性、すなわち漏れ電流を低減することができる。さらに、例えば第二のヘテロ半導体領域12の不純物濃度をヘテロ半導体領域3の不純物濃度よりも高く設定した場合、第二のヘテロ半導体領域12とヘテロ半導体領域3とで構成されるPNダイオードのビルトイン電界によって生じる空乏層がヘテロ半導体領域3側に伸張することから、ヘテロ半導体領域3とドレイン領域とのヘテロ接合部における漏れ電流をさらに低減することもできる。 さらに本構造において、ヘテロ半導体領域3をゲート電極5からゲート電界が及ぶ程度の幅に設計した場合、例えばゲート電極5を負電位として、例えばヘテロ半導体領域3の全域に反転領域を形成すれば、半導体装置としての遮断性をますます高めることも可能である。 〈図9の構造〉 図9の構造は、図1の構造において、ゲート絶縁膜4とドレイン領域2との間の所定部分に、ドレイン領域2より高濃度のN+型の導通領域13が形成されている。以下、製造方法の一例について説明する。 例えば、図2(d)に示した状態において、例えばPOCl3雰囲気中にてより高い温度でリンドーピングを行うと、炭化珪素表面にリンが導入され、N+型の導通領域13が形成される。なお、不純物の導入は固相拡散による不純物導入を用いても、あるいは例えばイオン注入などの不純物導入方法を用いてもよい。 このような構成にすることにより、導通状態においては、ヘテロ半導体領域3と導通領域13とのヘテロ接合のエネルギー障壁を緩和させ、ヘテロ半導体領域3から導通領域13を介してドレイン領域2へと多数キャリアが流れやすくなり、より高い導通特性を得、さらにオン抵抗を低減することができる。」 (3)したがって、上記引用例7には次の発明(以下、「引用例7発明」という。)が記載されていると認められる。 「N型の炭化珪素半導体基体上にN+型の導通領域13を形成する方法であって、 N型の炭化珪素半導体基体上に窒化シリコン膜を堆積し、 POCl3雰囲気中にてより高い温度でリンドーピングを行うことにより、炭化珪素表面にリンが導入され、N+型の導通領域13が形成される、 方法。」 8 引用例8について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-043880号公報(以下、「引用例8」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0024】 (第1の実施形態) 以下、本発明による炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する。本実施形態は、第1の実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法であり、図3(a)~(l)は、その製造工程での断面図である。 【0025】 まず、図3(a)に示すように、4H-SiCの(0001)面から8度のオフ角を持つ炭化珪素基板1を用意する。炭化珪素基板1には、n型不純物が8×1018cm-3程度ドープされている。熱CVD等により、炭化珪素基板1の主面上に炭化珪素基板1よりも低濃度のn型不純物を含む高抵抗の炭化珪素層2をエピタキシャル成長させる。このとき、例えば、原料ガスとしてシラン(SiH4)とプロパン(C3H8)を、キャリアガスとして水素(H2)を、ドーパントガスとして窒素(N2)をそれぞれ用いる。例えば1400Vの耐圧を備えたMISFETを製造する場合には、高抵抗の炭化珪素層2の不純物濃度は1×1015cm-3~1×1016cm-3であることが望ましく、その厚さは10μm以上であることが望ましい。 【0026】 次に炭化珪素層2の一部に、p型不純物(アルミニウム,ホウ素など)をイオン注入によりドープして、pウェル領域4を形成する。pウェル領域4の形成の際には、まず、注入マスクとなる厚さ3μm程度のシリコン酸化膜(図示せず)を炭化珪素層2の上面上に堆積し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチングによって、シリコン酸化膜のうちpウェル領域4を形成する部分のみに開口を設ける。その後、注入欠陥を低減するために、基板温度を500℃以上の高温に保ってアルミニウムまたはボロンのイオン注入を行ない、イオン注入の後、マスクとして用いたシリコン酸化膜をフッ酸水溶液によって除去する。pウェル領域4におけるp型不純物の濃度は、通常1×1017cm-3前後から1×1018cm-3であり、pウェル領域4の深さはピンチオフしないように1μm前後とする。 【0027】 次にpウェル領域4の表面部の一部に高濃度のn型不純物(窒素等)をイオン注入によってドープして、n型不純物領域5を形成する。その際、基板上に、注入マスク3となる厚さ1μm程度のシリコン酸化膜を堆積し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチングによって、シリコン酸化膜のうちn型不純物領域5を形成する部分のみに開口を設ける。そして、注入欠陥を低減するために、基板温度を500℃以上の高温に保って、イオン注入を行ない、イオン注入の後、マスクとして用いたシリコン酸化膜をふっ酸によって除去する。このn型不純物領域5は、MISFETのソースとして機能する。なお、n型不純物領域5における不純物濃度がp型不純物領域7の不純物濃度と同程度の場合には、n型不純物領域5形成のための注入マスクがp型不純物領域7を覆っている必要がある。また、ソース領域4の深さは、p型不純物領域7の深さよりは浅く、例えば200nm程度である。 【0028】 次に、図3(b)に示すよう、マスク6を用いて、pウェル領域4と後に形成されるオーミック電極15とのコンタクトをとるために、pウェル領域4の表面部の一部にp型不純物をイオン注入によって高濃度でドープして、p型不純物領域7を形成する。p型不純物領域7の厚みは200nm前後で、不純物の濃度は約5×1019cm-3以上であり、好ましくは、2×1020cm-3以上である。このとき、イオン注入の方法は、pウェル領域4の形成と同じである。 【0029】 次に注入された不純物を活性化するために、アルゴンなどの不活性ガスの雰囲気中で、1700℃、30分の活性化アニールを施す。このとき、炭化珪素層2、pウェル領域4、p型不純物領域7及びn型不純物領域5の露出している表面には、高さ10nm~100nm程度のマクロステップや、ヒロックが生じ、表面粗さが大きくなり、表面の平滑性が悪化する。 【0030】 次に、図3(c)に示すように、たとえば熱CVDにより、炭化珪素層2,pウェル領域4,n型不純物領域5及びp型不純物領域7の上にチャネル層8をエピタキシャル成長させる。チャネル層8の形成の際には、例えば、原料ガスとしてシラン(SiH4)とプロパン(C3H8)を、キャリアガスとして水素(H2)を、ドーパントガスとして窒素(N2)をそれぞれ用いる。その後、チャネル層8のうちn型不純物領域5,p型不純物領域7の上方に位置する部分を、例えばRIEなどによって除去して、コンタクトホールを設ける。 【0031】 次に、チャネル層8,n型不純物領域5及びp型不純物領域7の露出している表面を熱酸化して、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜9を形成する。例えば、石英管中で基板を保持し、酸素を流量2.5(l/min)で石英管中に導入し、石英管内の温度を1180℃に保って2.5時間、熱酸化することで厚み約70nmの熱酸化膜を形成できる。 【0032】 次に、減圧CVDにより、厚さ500nmのポリシリコン膜を堆積し、例えば、RIEなどにより、ゲート電極10のうちコンタクトホール内及びその周囲に位置する部分を除去することにより、ゲート絶縁膜9上にポリシリコン層10を形成する。 【0033】 次に、図3(d)に示すように、プラズマCVDにより、炭化珪素層2の表面及びゲート電極10を覆う、リンを含まないシリコン酸化膜からなる第2層間絶縁膜11を100nm前後成長させる。 【0034】 次に、図3(e)に示すように、ここで、通常のフォトリソグラフィー、RIEにより、第2層間絶縁膜11のうち、p型不純物領域7以外の部分を除去する。 【0035】 次に、図3(f)に示すように、n型不純物領域5に接触し、かつ、炭化珪素層2の表面及びゲート電極10を覆う第1層間絶縁膜12として厚さ1μm程度のリンを含むシリコン酸化膜(PSG)を堆積する。 【0036】 次に、図3(g)に示すように、平坦化のため、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で950℃前後の温度で、30分以上の熱処理を施す。炭化珪素半導体では比較的低い熱処理にも関わらず、PSGからのリン拡散により、n型不純物領域5の表面には、リン拡散不純物領域13が形成できる。この一方、p型不純物領域7上は、第2層間絶縁膜11でカバーすることにより、リン拡散を抑制できる。 【0037】 次に、図3(h)に示すように、RIE等により、第1層間絶縁膜12を貫通してリン拡散不純物領域13及びp型不純物領域7に達するコンタクトホールを形成する。 【0038】 次に、図3(i)に示すように、オーミック用金属膜14(ニッケルまたはチタン)で真空蒸着などによって、第1層間絶縁膜12上、及び第1層間絶縁膜12が除去されている領域(オーミック電極15が形成される部分)に堆積する。堆積する金属膜厚は、100nm前後、好ましくは、50nm以上200nm以下であることが望ましい。 【0039】 次に、図3(j)に示すように、第1層間絶縁膜12上のオーミック用金属膜14をオーミック電極15となる部分以外をRIEのドライエッチングまたはウェットエッチングにより除去する。ウェットエッチングによる除去の場合、オーミック用金属膜14がニッケルの場合は、燐酸系エッチング薬液を用い、チタンの場合は、過酸化水素水を含む燐酸系エッチング薬液またはフッ酸水溶液を用いる。 【0040】 次に、図3(k)に示すように、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で1分以上の熱処理を施す。この熱処理によって、第1層間絶縁膜12が除去されているリン拡散不純物領域13及びp型不純物領域7の上に、オーミック用金属膜14のニッケルまたはチタンと炭化珪素中のシリコンが選択的に反応し、シリサイド層を含むオーミック電極15が形成される。熱処理温度は、ニッケルまたはチタンと炭化珪素中のシリコンがシリサイド反応し、かつ層間膜材料として使用するSiO2等の材料の変質や変形を防止するため、850℃以上1000℃以下が望ましい。より好ましくは、900℃以上950℃以下である。 【0041】 その後、図3(l)に示すように、厚さ3μm程度のアルミニウム膜を真空蒸着等で堆積し、通常のフォトリソグラフィー,エッチングによってパタ-ニングすることにより、パッド用電極16を形成する。その後、ドレイン電極17として、Ti,Ni,Au,Ag,Pt等のいずれか1つまたは積層膜を真空蒸着等で堆積し、裏面電極を形成する。 【0042】 このようにして、二重注入型MISFETが完成する。このMISFETのチャネル移動度は30cm2/Vsec以上と高く、オフ耐圧1000Vでオン抵抗は5mΩ・cm2以下であった。」 (2)したがって、上記引用例8には次の発明(以下、「引用例8発明」という。)が記載されていると認められる。 「炭化珪素半導体装置の製造方法であって、 炭化珪素基板1を用意し、 炭化珪素基板1の主面上に炭化珪素基板1よりも低濃度のn型不純物を含む高抵抗の炭化珪素層2をエピタキシャル成長させ、 炭化珪素層2の一部に、p型不純物をイオン注入によりドープして、pウェル領域4を形成し、 pウェル領域4の表面部の一部に高濃度のn型不純物をイオン注入によってドープして、n型不純物領域5を形成し、 pウェル領域4と後に形成されるオーミック電極15とのコンタクトをとるために、pウェル領域4の表面部の一部にp型不純物をイオン注入によって高濃度でドープして、p型不純物領域7を形成し、 注入された不純物を活性化するために、アルゴンなどの不活性ガスの雰囲気中で活性化アニールを施し、 炭化珪素層2,pウェル領域4,n型不純物領域5及びp型不純物領域7の上にチャネル層8をエピタキシャル成長させ、 チャネル層8のうちn型不純物領域5,p型不純物領域7の上方に位置する部分を除去して、コンタクトホールを設け、 チャネル層8,n型不純物領域5及びp型不純物領域7の露出している表面を熱酸化して、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜9を形成し、 ゲート絶縁膜9上にゲート電極10を形成し、 炭化珪素層2の表面及びゲート電極10を覆う、リンを含まないシリコン酸化膜からなる第2層間絶縁膜11を成長させ、 第2層間絶縁膜11のうち、p型不純物領域7以外の部分を除去し、 n型不純物領域5に接触し、かつ、炭化珪素層2の表面及びゲート電極10を覆う第1層間絶縁膜12としてリンを含むシリコン酸化膜(PSG)を堆積し、 平坦化のため、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で熱処理を施すことにより、PSGからのリン拡散により、n型不純物領域5の表面には、リン拡散不純物領域13が形成し、 第1層間絶縁膜12を貫通してリン拡散不純物領域13及びp型不純物領域7に達するコンタクトホールを形成し、 オーミック用金属膜14を、第1層間絶縁膜12上、及び第1層間絶縁膜12が除去されている領域(オーミック電極15が形成される部分)に堆積し、 第1層間絶縁膜12上のオーミック用金属膜14をオーミック電極15となる部分以外を除去し、 窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で熱処理を施し、 アルミニウム膜を真空蒸着等で堆積し、パタ-ニングすることにより、パッド用電極16を形成し、 ドレイン電極17として、Ti,Ni,Au,Ag,Pt等のいずれか1つまたは積層膜を真空蒸着等で堆積し、裏面電極を形成し、 二重注入型MISFETを形成する方法。」 9 引用例9(当審拒絶理由において引用例2として引用された文献)について 当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された国際公開第2005/083796号(以下、「引用例9」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「図4は、この発明の他の実施形態に係る半導体装置の構造を図解的に示す断面図である。この半導体装置は、蓄積型MOSFETであり、半導体基板として、n+型SiC半導体基板11が用いられている。 n+型SiC半導体基板11の表面には、n+型SiC半導体基板11よりも低い不純物濃度を有するn-型SiC半導体エピタキシャル層12が形成されている。n-型SiC半導体エピタキシャル層12の表層部には、p型不純物領域13が形成されており、さらに、このp型不純物領域13内の表層部には、n+型ソース領域14およびn+型ドレイン領域15が互いに適当な間隔を空けて形成されている。また、n+型ソース領域14とn+型ドレイン領域15との間のチャネル領域には、n型蓄積層16が形成されている。 p型不純物領域13は、n-型SiC半導体エピタキシャル層12の表面から0.5~0.7μmの深さを有している。n+型ソース領域14およびn+型ドレイン領域15は、n-型SiC半導体エピタキシャル層12の表面から0.2~0.3μmの深さを有している。また、n型蓄積層16は、n-型SiC半導体エピタキシャル層12の表面から0.05~0.1μmの深さを有している。 n+型ソース領域14およびn+型ドレイン領域15上には、それぞれソース電極17およびドレイン電極18が形成されている。また、ソース電極17とドレイン電極18との間におけるn-型SiC半導体エピタキシャル層12上には、ゲート酸化膜19が形成されており、このゲート酸化膜19上には、ゲート電極20が形成されている。 図5は、p型不純物領域13が有する不純物プロファイルを示す図である。p型不純物領域13は、n+型SiC半導体基板11の表面にn-型SiC半導体エピタキシャル層12をエピタキシャル成長させて形成した後、このn-型SiC半導体エピタキシャル層12の表層部に、たとえば、p型不純物であるアルミニウム(Al)を400keV(一定)の注入エネルギーでイオン注入することによって形成される。すなわち、注入エネルギーが400keVの1段イオン注入によってp型不純物領域13が形成される。 このようにして、n-型SiC半導体エピタキシャル層12の表面からの深さ0.7μm(7000Å)程度のp型不純物領域13を形成した場合、そのp型不純物領域13は、最深部(n-型SiC半導体エピタキシャル層12との境界部)付近におけるp型不純物濃度(原子密度)が1018/cm3以上の高濃度であり、n-型SiC半導体エピタキシャル層12に導入された不純物の一部はSiC結晶に衝突して跳ね返されるため、その最深部付近をピークとして表面に近づくほどp型不純物濃度が連続的かつ緩やかに低くなり、表面付近におけるp型不純物濃度が1015/cm3程度となるような不純物プロファイルを有する。 n-型SiC半導体エピタキシャル層12のn型不純物濃度(原子密度)は、1016/cm3程度でほぼ一定であるから、p型不純物領域13の表層部(チャネル領域)では、p型不純物濃度がn型不純物濃度よりも小さくなり、その結果、p型不純物領域13の表層部にn型が現れることによってn型蓄積層16が形成される。 こうして形成されるn型蓄積層16を有する蓄積型MOSFETは、図6に示すように、注入エネルギーを4段階に変化させてイオン注入(4段イオン注入)を行うことにより、n-型SiC半導体エピタキシャル層の表層部にp型不純物領域13とほぼ同じ深さを有するp型不純物領域を形成した従来型のMOSFETよりも優れた特性を有する。 すなわち、従来型のMOSFETは、閾値電圧が8.0V程度であり、チャネル移動度が18.3cm2/Vs程度である。また、ゲート電圧が15Vのときのドレイン電流の大きさが19μA程度である。これに対し、蓄積型MOSFETは、閾値電圧を3.3V程度に低減させることができる。しかも、閾値電圧は正の値であり、パワースイッチング素子に要求されるノーマリオフ型を示している。また、チャネル移動度が24cm2/Vs程度に向上されている。さらに、ゲート電圧が15Vのときのドレイン電流の大きさは42μA程度であり、従来型のMOSFETに比べてオン抵抗値がほぼ半減している。」(第6頁1行~第7頁22行) (2)したがって、上記引用例9には次の発明(以下、「引用例9発明」という。)が記載されていると認められる。 「蓄積型MOSFETであって、 半導体基板として、n+型SiC半導体基板11を用い、 n+型SiC半導体基板11の表面に、n+型SiC半導体基板11よりも低い不純物濃度を有するn-型SiC半導体エピタキシャル層12を形成し、 n-型SiC半導体エピタキシャル層12の表層部に、p型不純物領域13が形成し、 p型不純物領域13内の表層部に、n+型ソース領域14およびn+型ドレイン領域15を互いに適当な間隔を空けて形成し、 n+型ソース領域14とn+型ドレイン領域15との間のチャネル領域に、n-型SiC半導体エピタキシャル層12の表面から0.05~0.1μmの深さを有するn型蓄積層16を形成し、 閾値電圧は正の値であり、パワースイッチング素子に要求されるノーマリオフ型を示す、 蓄積型MOSFET。」 10 引用例10(当審拒絶理由において引用例1として引用された文献)について 当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開平11-261061号公報(以下、「引用例10」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、炭化珪素半導体装置及びその製造方法に関し、特に絶縁ゲート型電界効果トランジスタ、とりわけ大電力用の縦型パワーMOSFETに関するものである。」 (2)「【0055】・・・ 前 略 ・・・ (第2実施形態)上記第1実施形態では、電流が縦方向(基板の厚み方向)に流れる縦型パワーMOSFETに本発明の一実施形態を適用した場合について説明したが、本実施形態では電流が基板の横方向(基板の表面に平行な方向)に流れるMOSFETに本発明の一実施形態を適用した場合について説明する。 【0056】図7に、本実施形態におけるMOSFETを示す。この図に示すように、p型半導体基板101の表層部には、チャネル領域を構成するチャネル層102が形成されている。このチャネル層102は中性不純物が少ないもので構成されている。そして、このチャネル層102の一端にはソースコンタクト用のn+ 型領域103が形成されており、他端にはドレインコンタクト用のn+ 型領域104が形成されている。また、チャネル層102の上には、ゲート酸化膜105を介してゲート電極層106が形成されている。 【0057】このように構成されたMOSFETは、p型半導体基板101の表層部に形成されたチャネル層102をチャネル領域として、p型半導体基板101の横方向へ電流を流すようになっている。このとき、上述したように、チャネル層102を中性不純物が少ないもので構成しているため、キャリア移動度を向上させることができる。 【0058】次に、図7に示すMOSFETの製造方法について図8(a)~(c)に基づいて説明する。 〔図8(a)に示す工程〕まず、表層部においてp型不純物の量が少なくなっているp型半導体基板101を用意する。このp型半導体基板101は、内部に均等にp型不純物が含有された半導体基板に対し、上記第1実施形態に示した外部拡散工程を行うことで製造できる。このp型半導体基板101は、図7に示すMOSFETを製造するのに適している。 【0059】〔図8(b)に示す工程〕p型半導体基板101の表面に酸化膜110を成膜し、フォトリソグラフィ工程を経て、酸化膜110の所定領域を開口させる。そして、酸化膜110をマスクとして、n型不純物(例えば、N+ 等)をイオン注入して、チャネル層102を形成する。 【0060】このとき、p型不純物の量がが少なくなったp型半導体基板101の表層部にチャネル層102を形成しているため、チャネル層102は中性不純物が少ないもので形成される。また、p型不純物を補償するために必要とされるn型不純物のイオン注入も少なくてすむため、イオン注入による結晶欠陥を少なくすることができる。 【0061】〔図8(c)に示す工程〕酸化膜110を除去したのち、再びp型半導体基板101の表面に酸化膜111を成膜し、フォトリソグラフィ工程を経て、酸化膜111の所定領域を開口させる。そして、酸化膜111をマスクとしてn型不純物(例えば、N+ 等)をイオン注入して、ソースコンタクト用のn+ 型層103及びドレインコンタクト用のn+ 型層104を形成する。 【0062】この後、酸化膜111を除去したのち、ゲート酸化膜105、ゲート電極106を順に形成し、さらに図示しないが層間絶縁膜を介してソース電極層及びドレイン電極層を形成する等して、図7に示すMOSFETが完成する。このように、電流が横方向に流れるMOSFET等に本発明の一実施形態を適用することも可能である。」 (3)図7を参照すると、「チャネル層102」は、「p型半導体基板101」の表面に形成されていることがわかる。 (4)したがって、上記引用例10には次の発明(以下、「引用例10発明」という。)が記載されていると認められる。 「炭化珪素半導体装置の製造方法であって、 表層部においてp型不純物の量が少なくなっているp型半導体基板101を用意し、 p型半導体基板101の表面に酸化膜110を成膜し、酸化膜110の所定領域を開口し、酸化膜110をマスクとして、キャリア移動度を向上させるためにn型不純物(例えば、N+ 等)をイオン注入して、p型半導体基板101の表面にチャネル層102を形成し、 酸化膜110を除去したのち、再びp型半導体基板101の表面に酸化膜111を成膜し、酸化膜111の所定領域を開口し、酸化膜111をマスクとしてn型不純物(例えば、N+ 等)をイオン注入して、ソースコンタクト用のn+ 型層103及びドレインコンタクト用のn+ 型層104を形成し、 酸化膜111を除去したのち、ゲート酸化膜105、ゲート電極106を順に形成し、さらに層間絶縁膜を介してソース電極層及びドレイン電極層を形成する、 炭化珪素半導体装置の製造方法。」 11 引用例11(当審拒絶理由において引用例3として引用された文献)について 当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された国際公開第2003/028110号(以下、「引用例11」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「技術分野 本発明は、蓄積型MISFET構造を有する半導体装置に係り、特に、パワー素子におけるノーマリオフ動作の実現対策に関するものである。 背景技術 炭化珪素(以下、「SiC」という)は、バンドギャップが大きく、他の半導体材料と比べて高い絶縁破壊特性を有するので、低損失パワーデバイスへの適用が期待されている。SiC層の上には、SiCを熱酸化することによって比較的良質の二酸化珪素(SiO2 )膜が形成されるので、電力変換用のSiCデバイスの構造として、絶縁ゲート型の構造を採用することが有力と考えられる。 しかし、SiC層の上に形成されるゲート絶縁膜用の熱酸化膜には克服しなければならない課題が数多く残されている。例えば、酸化膜中の欠陥に起因して発生するSiC層の絶縁膜との界面付近の領域に存在する高密度の界面準位トラップは、MISチャンネルにおける電子輸送機構に大きな影響を及ぼしている。例えば、SiC層の絶縁膜との界面付近の領域に存在する界面準位トラップが、絶縁ゲート型SiCデバイスのチャンネル・コンダクタンスを著しく低下させている原因となっている。ただし、熱酸化膜中の欠陥によってSiC層中の酸化膜近傍の領域に界面準位トラップが形成される機構に関しては、現在のところほとんど調べられていない。 特に、4H-SiCからなるSiC層においては、酸化膜中の欠陥に起因して、禁制帯内の伝導帯近傍のポテンシャル位置にE'1センターと呼ばれるアクセプター型トラップが生じてしまい、このアクセプター型トラップは電子輸送に大きな影響を及ぼす。4H-SiCは、6H-SiC結晶といった他のポリタイプの結晶よりもバンドギャップが広く、絶縁破壊電圧も高く、バルク移動度も高いことから、パワーデバイスへ応用するためには最適なポリタイプの結晶である。しかし、上述のアクセプタ-型トラップのために、4H-SiC結晶からなるSiC層を用いたMISFETのチャンネル移動度は極端に低く、SiCデバイスの実用化への大きな壁となっている。 上述のように、4H-SiCを用いた反転型MISFETにおいて、界面準位トラップが電子輸送機構に与える影響は深刻であることから、MISFETのチャンネル移動度を高めるためにさまざまな研究が行われてきた。特に、蓄積型MISFETの研究においては、チャンネル移動度を反転型MISFETと比べて2倍にまで高めることに成功している。その場合、蓄積型MISFETの本質的な意義は、チャンネルを流れる電流の深さ方向の電流密度分布において、チャンネル領域の表層を流れる電流に対する深部を流れる電流の割合を、反転型MISFETにおけるよりも増やす構造にしたことにある。」(第1頁3行~第2頁11行) (2)「図6は、本実施形態のd-DACFET,従来の蓄積型SiC-MISFET(ACCUFET)及ぴ従来の反転型SiC-MISFET(Inv)のチヤネルの深さ方向における電子の移動度(cm2/V・s)の分布を示す図である。同図に示すデータは、ゲートバイアス,ドレイン電位及ぴソース電位を、図4に示すデータが得られた条件と同じ条件に設定してシミュレーションした結果得られたデータである。 同図に示すように、本実施形態のd-DACFETにおいては、移動度は表面のごく近傍付近の領域(深さ0~0.02μm)と内部のδドープ層21付近の領域(深さ0.18~0.20μm)とで小さくなるが、表面のごく近傍付近の領域を除く、チャネル層のうちδドープ層よりも上方の領域(深さ0.02~0.18μm),つまり大部分の領域では、移動度が非常に大きくなつている。それに対し、従来の蓄積型SiC-MISFETにおいては、チャネル層全体で、移動度が低くなっていることがわかる。また、従来の反転型SiCMISFETにおいては、特にチャネル領域の表面付近の領域で極度に移動度が低下していることがわかる。」(第14頁25行~第15頁10行) (3)図6を参照すると、蓄積型MISFET構造を有する半導体装置(d-DACFETおよびACCUFET)において、チャネル層の大部分の領域で電子の移動度が50cm2/V・s以上であることがわかる。 (4)したがって、上記引用例11には次の発明(以下、「引用例11発明」という。)が記載されていると認められる 「チャネル層の大部分の領域で電子の移動度を50cm2/V・s以上とすように構成された、 蓄積型MISFET構造を有する半導体装置。」 12 引用例12(当審拒絶理由において引用例4として引用された文献)について 当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開2002-222943号公報(以下、「引用例12」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0022】 【発明の実施の形態】以下にこの発明の実施の形態を図を用いて詳細に説明する。先ず、実施例1として請求項1~6、あるいは9~10、に記載されている半導体装置の製造方法について、具体的な製造プロセスを図1(a)、(b)、(c)の順に示して説明する。その後、それらの請求項に記載されている効果について説明する。次いで、実施例2として請求項7、8に記載されている半導体装置の製造方法について、具体的な製造プロセスを図1(a)、(b)、(d)の順に示して説明する。その後に請求項7、8に記載されている効果について説明する。 【0023】 【実施例】[実施例1]この実施例の具体的な製造プロセスは、図1(a)、(b)、(c)の順である。図1(a)のP型炭化珪素基板1(4H-SiC、不純物濃度:5×1015cm-3)を通常のRCA洗浄をした後に、P型炭化珪素基板1にフォトリソグラフィー用のアライメントマークをRIE(Reactive ion etching)で形成した。次いで、いくつかの試料はパンチスルー耐性の向上に対する効果を調べるために、埋め込みチャネル領域の直下に相当する深さに、アルミニウムをイオン注入することにより、P型炭化珪素基板1よりも高濃度になるようにするため、1×1016cm-3~1×1019cm-3の不純物濃度をもったパンチスルー防止領域3を形成した。 【0024】次いで、埋め込みチャネル領域2を、窒素、燐、砒素などのN型不純物のイオン注入を行って形成した。例えば、燐で接合深さ(Lbc)0.3μmの埋め込みチャネル領域を形成する場合は、40~250keVで、総ドーズ量が7×1015cm-2となるように多段注入し、所望のプロファイルを形成した。本実施例では、図1(b)に示すソース5、ドレイン6の深さ(Xj)とLbcの比とチャネル移度の関係を調べるために、Lbc=0.1、0.2、0.3、0.4、0.5μmの深さの埋め込みチャネル領域2を形成した。チャネル移動度に対する埋め込みチャネル領域2の濃度依存性を調べるために、Lbc=0.3μmにおいて、5×1015cm-3~5×1017cm-3のイオン注入をした試料を作製した。 【0025】次いで、図1(b)に示すようにソース領域あるいはドレイン領域のイオン注入用マスク4を熱酸化膜やCVD(ChemicalVapor Deposition)によるSiO2膜で形成した。本実施例では、図1(b)に示すようにイオン注入マスクとして、LTO(Lowtemperature oxide)膜を用いた。LTO膜は、シランと酸素を400℃~800℃で反応させて、二酸化珪素をP型炭化珪素基板1に堆積することにより形成した。次いで、フォトリソグラフィーでソース・ドレイン領域を形成した後に、HF(フッ酸)でLTOをエッチングしてイオン注入されるソース領域あるいはドレイン領域を開口した。次いで、図1(b)に示したソース5あるいはドレイン6を形成するために500℃で、窒素、燐あるいは砒素を深さ(Xj)0.5μmになるようにイオン注入する。本実施例では、埋め込みチャネル領域2の形成と同じように多段注入により、燐を用いて不純物濃度が5×1019cm-3になるように形成した。 【0026】その後、アルゴン雰囲気中において1500℃で30分間にわたる活性化アニールを行った。次いで、図1(c)に示すように1200℃で、O2あるいは、水蒸気を含むガスで約150分間あるいは、約90分間酸化して、約50nmのゲート絶縁膜7を形成した。この時、水蒸気を含むガスを用いた酸化としては、次のような方法があることが知られている。 【0027】1)水蒸気を加熱した蒸気を酸素あるいは、不活性ガス(アルゴン、窒素、ヘリウム)で炭化珪素基板まで流す。 2)H2とO2を900℃の温度で燃焼させることにより水蒸気を発生させて炭化珪素基板まで流す。この場合にも、水蒸気を不活性ガスと一緒に流してもよい。 【0028】ここでは、2)の方法を用いた。次いで、アルゴン中で30分間アニールした後に室温までアルゴン中で冷却した。ただし、この工程は省いてもよい。また、水蒸気を含んだ雰囲気での熱処理の効果を調べるために、一部の試料は、H2とO2を800℃の温度で燃焼して発生させた水蒸気をそのまま、炭化珪素基板まで流して、950℃で3時間熱処理をした。この際、水蒸気は、不活性ガス(アルゴン、窒素、ヘリウム)と一緒に流してもよい。 【0029】その後にP型ゲート電極8を形成したが、その方法としては、次のようにいくつかの方法が知られている。 1)CVD法で多結晶ポリシリコンを形成した後に、ボロンやフッ化ボロンをイオン注入することによりP型多結晶シリコンを形成する。 2)CVD法で多結晶ポリシリコンを形成した後に、ボロンを含んだSiO2膜をCVD法やスピン塗布により形成し、800℃~1100℃で熱処理して拡散することにより、P型多結晶シリコンを形成する。 3)シランとジボランを一緒に流して600℃で熱処理することによりボロンを拡散しながら多結晶シリコンを成長させてP型多結晶シリコンを形成する。 【0030】本実施例では、2)の方法によって、900℃で拡散時間を変えることにより不純物濃度1×1015cm-3~1×1021cm-3のP型多結晶シリコンを形成して、P型ゲート電極の不純物濃度とチャネル移動度の関係を調べた。いくつかの試料は、シリサイド膜の効果を調べるためにP型多結晶シリコン上にWSi2膜、MoSi2膜及びTiSi2膜の高融点金属シリサイド膜9を形成した。次いで、P型多結晶シリコンあるいは、シリサイド膜とP型ポリシリコン膜の複合膜とゲート絶縁膜をエッチングすることによりゲート電極を形成した。引き続いて、ソース領域あるいはドレイン領域上の酸化膜をエッチングしてコンタクト孔を開口した。次いで、ニッケル、チタン、アルミニウムを含有した金属あるいはこれらの積層膜を蒸着あるいは、スパッタ法で形成した後に、RIEあるいは、ウエットエッチングにより金属配線10を形成した。本実施例では、ニッケルを蒸着した後にウエットエッチングした。次いで、良好なオーミックコンタクトを形成するために1000℃のアルゴン中で5分間の熱処理を行い、MIS電界効果型トランジスタを完成させた。」 (2)したがって、上記引用例12には次の発明(以下、「引用例12発明」という。)が記載されていると認められる 「半導体装置の製造方法であって、 P型炭化珪素基板1にパンチスルー防止領域3を形成し 窒素、燐、砒素などのN型不純物をイオン注入することにより埋め込みチャネル領域2を形成し、 窒素、燐あるいは砒素をイオン注入することによりソース5あるいはドレイン6を形成し、 ゲート絶縁膜7を形成し、 P型ゲート電極8を形成し、 ソース領域あるいはドレイン領域上の酸化膜をエッチングしてコンタクト孔を開口し、 金属配線10を形成する、 MIS電界効果型トランジスタの製造方法。」 13 引用例13(当審拒絶理由において引用例7として引用された文献)について 当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開昭62-093927号公報(以下、「引用例13」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「好適実施例 工程は固体平面拡散ドーパント源(例えば、SOHIO/カーボンランダムによって作られるPH-1025リン源)をドープされるウェーハに近接して置くことからなる。ウェーハもドーパント源も急速熱処理器のチェンバ内にある。ガスが有る状態又は真空状態のどちらかが使用できる。図面を参照すると、参照番号が様々な図面の全てに亘る部分を示すように使用され、第1図には向い合って並ぶクォーツ-ハロゲンランプ12を用いるRTP装置10が示されている。他の適切な装置の例にはバリアンIT-200恒温焼きなまし器が使用されている。これらの焼きなまし器の他の例が、米国特許第4,331,485号、同4,356,384号、同4,417,347号、同4,481,406号及び同4,486,652号に見られる。ドーパント源14はRTP装置10内に置かれ、ウェーハ16は表を下にしてドーパント源14に面するように置かれている。別の配置が第2図に示されており、ドーパント源14が2つのウェーハ16の間に置かれている。第3図に示された別の実施例ではウェーハ16が再度表を下にしてドーパント源14に面しているが、スペーサ18によって近接して間隔を空けられている。そのスペーサ18はある場合には一様性が必要とされるか又は、ウェーハの前面のデバイスが拡散源と接触することから生じる可能な物理的損傷を防ぐ必要があり得る。全ての実施例において、ウェーハと、拡散源の組合せは放射線源によって急速にさらされ、ウェーハと拡散源は所望の温度(≧1000℃)に達せられ、適切な処理時間(約2乃至200秒)の間保持される。 第1図の実施例において、ある場合には拡散源とウェーハを異なる温度に加熱するために上部と底部のヒータ配置に異なる出力を与えることが必要となることもある。これはドーパントのドーパント源からの遊離と半導体への打ち込みの独立した制御及び付加的な融通性が可能となる。ウェーハ16とドーピング源14の異なる吸収スペクトルはこの目的のために使用される異なる波長の放射を可能にできる。 本発明の短い急速加熱サイクル時間は、極端に浅い拡散接合(1000Å以下)が形成されることを可能にする。 リンがドーパント源の場合(我々はPH-1025を用いた)、ガラス状物質P2O5はドーパントでウェーハの表面上に放出されデポジットされる。この場合は、ドーピング前の基板上の手を加えていないSiO2は、基板中へのPの輸送を妨げることはない。また、ドーパントの覆いはHF水溶液中でSi基板から容易に離される。P2O5ガラスの覆いはまた、Si又はポリシリコンの下層のキャップとして働き、ドーパントの外への拡散を防いでいる。このような外への拡散はRTPにおいて、キャップのない注入された表面に見られた。 ドーパント源に面している側だけがドーパント流にさらされるので、片側ドーピングが達成される。 格子損傷はなく、例えば、注入ドーピング後に必要であるような炉又はRTPステップを必要とせずにそのドーパントは電気的に能動状態にされる。パターンの決ったSiO2のようなマスキング層の使用によって選択的ドーピングが可能であるが、それは、ドーパントのマスク中への拡散がマスクの下のSi中への拡散よりもずっと遅いからである。SiO2のうちの開いた部分はドープされる。マスク及びP2O5のドーピング層は同様のステップ(例えば、HF水溶液中のエッチ)で離される。そのマスクはまた、ドーパント源とウェーハを接触から守っており、そして、ウェーハ表面上のデバイスへの機械的損傷を防ぎ、又、粒子の発生を防ぐことが望ましい。」(第2頁右下欄3行~第3頁左下欄13行) (2)したがって、上記引用例13には次の発明(以下、「引用例13発明」という。)が記載されていると認められる 「Si基板にリンをドープする方法であって、 リンの平面拡散ドーパント源をドープされる基板に近接して設置し、 基板と平面拡散ドーパント源の組み合わせを放射線源にさらし、 平面拡散ドーパント源からガラス状物質P2O5が基板の表面に放出されデポジットされ、 SiO2を介してリンをSi基板にドープする方法。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用例10発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用例10発明の「炭化珪素半導体装置の製造方法」は、「p型半導体基板101」を用いて製造されているから、引用例10発明の「炭化珪素半導体装置の製造方法」は、本願発明1の「第1導電型の炭化ケイ素(SiC)基板に半導体デバイスを作る方法」に相当する。 イ 本願明細書発明の詳細な説明に「第1n+ウェル30および第2n+ウェル32は、イオン注入により、図3Bに示すようにSiC基板28内に形成される。この第1n+ウェル30および第2n+ウェル32はSiC MOSFET26のソース領域およびドレイン領域を形成する。」(【0023】)と記載されているように、本願発明1の「第2導電型である第1ウェルを前記SiC基板内に設けるステップ」と「前記第2導電型である第2ウェルを前記SiC基板内に設けるステップ」は、SiC MOSFET26のソース領域およびドレイン領域を形成するステップであるから、引用例10発明の「p型半導体基板101の表面に酸化膜111を成膜し、酸化膜111の所定領域を開口し、酸化膜111をマスクとしてn型不純物(例えば、N+ 等)をイオン注入して、ソースコンタクト用のn+ 型層103及びドレインコンタクト用のn+ 型層104を形成」することと変わりない。 そうすると、引用例10発明の「p型半導体基板101の表面に酸化膜111を成膜し、酸化膜111の所定領域を開口し、酸化膜111をマスクとしてn型不純物(例えば、N+ 等)をイオン注入して、ソースコンタクト用のn+ 型層103及びドレインコンタクト用のn+ 型層104を形成」することは、本願発明1の「第2導電型である第1ウェルを前記SiC基板内に設けるステップ」および「前記第2導電型である第2ウェルを前記SiC基板内に設けるステップ」に相当する。 ウ 引用例10発明の「p型半導体基板101の表面に」形成された「チャネル層102」は、「p型半導体基板101の表面に酸化膜110を成膜し、酸化膜110の所定領域を開口し、酸化膜110をマスクとして、キャリア移動度を向上させるためにn型不純物(例えば、N+ 等)をイオン注入し」て作るものであるから、本願発明1の「前記SiC基板上の第1ウェルと第2ウェルとの間に、所定の厚さの絶縁層を設けるステップと、表面拡散チャネルを形成するために、前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面内へと1000オングストローム未満の深さまで所定のドーパントを拡散するステップであって、前記所定のドーパントが前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面に拡散されるときに、前記所定のドーパントは前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間に前記第2導電型の前記表面拡散チャンネルを形成し、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散する前記ステップは、前記所定のドーパントが豊富な環境において、第1の所定の温度で、第1の所定の時間の間、前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対してアニールを行うステップを含み、前記第1の所定の温度および前記第1の所定の時間は、前記絶縁層の所定の厚さに従って制御されて、前記所定のドーパントが前記SiC基板の表面内へ望ましい深さおよび望ましいドーピング濃度で拡散するようにされ、前記望ましい深さおよび前記望ましいドーピング濃度は、前記半導体デバイスが、常時オフの挙動を維持しつつも、前記表面拡散チャンネルの無い半導体デバイスよりもキャリアの移動度を増加させる、ステップ」と「表面拡散チャネルを形成するために、前記SiC基板の表面内へと所定のドーパントを拡散するステップであって、前記所定のドーパントが前記SiC基板の表面に拡散されるときに、前記所定のドーパントは前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間に前記第2導電型の前記表面拡散チャンネルを形成し、前記半導体デバイスが、前記表面拡散チャンネルの無い半導体デバイスよりもキャリアの移動度を増加させる、ステップ」である点で共通する。 エ したがって、本願発明1と引用例10発明とは、以下の点で一致し、また相違する。 [一致点] 「第1導電型の炭化ケイ素(SiC)基板に半導体デバイスを作る方法であって、 第2導電型である第1ウェルを前記SiC基板内に設けるステップと、 前記第2導電型である第2ウェルを前記SiC基板内に設けるステップと、 表面拡散チャネルを形成するために、前記SiC基板の表面内へと所定のドーパントを拡散するステップであって、前記所定のドーパントが前記SiC基板の表面に拡散されるときに、前記所定のドーパントは前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間に前記第2導電型の前記表面拡散チャンネルを形成し、前記半導体デバイスが、前記表面拡散チャンネルの無い半導体デバイスよりもキャリアの移動度を増加させる、ステップと、 を含む、方法。」 [相違点1] 本願発明1は、「前記SiC基板上の第1ウェルと第2ウェルとの間に、所定の厚さの絶縁層を設けるステップ」を有し、この「絶縁層」を用いて、「表面拡散チャネルを形成するために、前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面内へと1000オングストローム未満の深さまで所定のドーパントを拡散するステップであって、前記所定のドーパントが前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面に拡散されるときに、前記所定のドーパントは前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間に前記第2導電型の前記表面拡散チャンネルを形成し、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散する前記ステップは、前記所定のドーパントが豊富な環境において、第1の所定の温度で、第1の所定の時間の間、前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対してアニールを行うステップを含み、前記第1の所定の温度および前記第1の所定の時間は、前記絶縁層の所定の厚さに従って制御されて、前記所定のドーパントが前記SiC基板の表面内へ望ましい深さおよび望ましいドーピング濃度で拡散するようにされ、前記望ましい深さおよび前記望ましいドーピング濃度は、前記半導体デバイスが、常時オフの挙動を維持しつつも、前記表面拡散チャンネルの無い半導体デバイスよりもキャリアの移動度を増加させる、ステップ」を有しているのに対して、引用例10発明は対応するステップを有していない点。 (2)相違点についての判断 [相違点1]について以下に検討する。 引用例10発明の「チャネル層102」は、イオン注入により形成されており、また、絶縁膜を通してドーパントを拡散することで形成されたものではないから、引用例10発明の「チャネル層102」の形成方法に代えて、[相違点1]に係る本願発明1のステップを採用することが自明であるとは言えない。 さらに、引用例1ないし引用例9、および、引用例11ないし引用例13には、「前記SiC基板上の第1ウェルと第2ウェルとの間に、所定の厚さの絶縁層を設けるステップ」を有し、この「絶縁層」を用いて、「表面拡散チャネルを形成するために、前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面内へと1000オングストローム未満の深さまで所定のドーパントを拡散するステップであって、前記所定のドーパントが前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面に拡散されるときに、前記所定のドーパントは前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間に前記第2導電型の前記表面拡散チャンネルを形成し、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散する前記ステップは、前記所定のドーパントが豊富な環境において、第1の所定の温度で、第1の所定の時間の間、前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対してアニールを行うステップを含み、前記第1の所定の温度および前記第1の所定の時間は、前記絶縁層の所定の厚さに従って制御されて、前記所定のドーパントが前記SiC基板の表面内へ望ましい深さおよび望ましいドーピング濃度で拡散するようにされ、前記望ましい深さおよび前記望ましいドーピング濃度は、前記半導体デバイスが、常時オフの挙動を維持しつつも、前記表面拡散チャンネルの無い半導体デバイスよりもキャリアの移動度を増加させる、ステップ」を有することは、記載されていないから、引用例1発明ないし引用例9発明、および、引用例11発明ないし引用例13発明から、引用例10発明において、[相違点1]に係るステップを採用することが容易であるとも言えない。 そして、本願発明1は、[相違点1]に係るステップを有することにより、「アニール・プロセスのパラメータ、例えば、温度や時間は、酸化物層44の厚さ(tOX)に従って制御されて、表面拡散チャンネル42が望ましい深さ(即ち、厚さ)と望ましいドーピング濃度とを有するようにされる。」(【0025】)という格別の効果を有するものである。 そうすると、[相違点1]に係るステップは、引用例1ないし13に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。 したがって、本願発明1は、引用例1ないし13に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2ないし20について 本願発明2ないし20は、本願発明1を引用しているから、本願発明2ないし20は、本願発明1の発明特定事項を全て有する発明である。 してみれば、本願発明1が引用例1ないし13に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本願発明2ないし20も、引用例1ないし13に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第7 原査定についての判断 本手続補正により、本願発明1ないし20は、「前記SiC基板上の第1ウェルと第2ウェルとの間に、所定の厚さの絶縁層を設けるステップ」を有し、この「絶縁層」を用いて、「表面拡散チャネルを形成するために、前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面内へと1000オングストローム未満の深さまで所定のドーパントを拡散するステップであって、前記所定のドーパントが前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面に拡散されるときに、前記所定のドーパントは前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間に前記第2導電型の前記表面拡散チャンネルを形成し、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散する前記ステップは、前記所定のドーパントが豊富な環境において、第1の所定の温度で、第1の所定の時間の間、前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対してアニールを行うステップを含み、前記第1の所定の温度および前記第1の所定の時間は、前記絶縁層の所定の厚さに従って制御されて、前記所定のドーパントが前記SiC基板の表面内へ望ましい深さおよび望ましいドーピング濃度で拡散するようにされ、前記望ましい深さおよび前記望ましいドーピング濃度は、前記半導体デバイスが、常時オフの挙動を維持しつつも、前記表面拡散チャンネルの無い半導体デバイスよりもキャリアの移動度を増加させる、ステップ」という技術的事項を有する方法となった。 当該「前記SiC基板上の第1ウェルと第2ウェルとの間に、所定の厚さの絶縁層を設けるステップ」を有し、この「絶縁層」を用いて、「表面拡散チャネルを形成するために、前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面内へと1000オングストローム未満の深さまで所定のドーパントを拡散するステップであって、前記所定のドーパントが前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面に拡散されるときに、前記所定のドーパントは前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間に前記第2導電型の前記表面拡散チャンネルを形成し、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散する前記ステップは、前記所定のドーパントが豊富な環境において、第1の所定の温度で、第1の所定の時間の間、前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対してアニールを行うステップを含み、前記第1の所定の温度および前記第1の所定の時間は、前記絶縁層の所定の厚さに従って制御されて、前記所定のドーパントが前記SiC基板の表面内へ望ましい深さおよび望ましいドーピング濃度で拡散するようにされ、前記望ましい深さおよび前記望ましいドーピング濃度は、前記半導体デバイスが、常時オフの挙動を維持しつつも、前記表面拡散チャンネルの無い半導体デバイスよりもキャリアの移動度を増加させる、ステップ」は、前記「第6」で検討したとおり、原査定における引用例1ないし8には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし20は、当業者であっても、原査定における引用文献1および8に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由について 1 特許法第36条第6項第1号について 当審拒絶理由で拒絶の理由を示した、補正前の請求項46および49,50は、本手続補正により削除されたから、本手続補正により、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないとの、当審拒絶理由で示した理由は解消した。 2 特許法第36条第6項第2号について 当審拒絶理由で拒絶の理由を示した、補正前の請求項7および8は、本手続補正により削除されたから、本手続補正により、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないとの、当審拒絶理由で示した理由は解消した。 3 特許法29条第2項について 本手続補正により、本願発明1ないし20は、「前記SiC基板上の第1ウェルと第2ウェルとの間に、所定の厚さの絶縁層を設けるステップ」を有し、この「絶縁層」を用いて、「表面拡散チャネルを形成するために、前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面内へと1000オングストローム未満の深さまで所定のドーパントを拡散するステップであって、前記所定のドーパントが前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面に拡散されるときに、前記所定のドーパントは前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間に前記第2導電型の前記表面拡散チャンネルを形成し、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散する前記ステップは、前記所定のドーパントが豊富な環境において、第1の所定の温度で、第1の所定の時間の間、前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対してアニールを行うステップを含み、前記第1の所定の温度および前記第1の所定の時間は、前記絶縁層の所定の厚さに従って制御されて、前記所定のドーパントが前記SiC基板の表面内へ望ましい深さおよび望ましいドーピング濃度で拡散するようにされ、前記望ましい深さおよび前記望ましいドーピング濃度は、前記半導体デバイスが、常時オフの挙動を維持しつつも、前記表面拡散チャンネルの無い半導体デバイスよりもキャリアの移動度を増加させる、ステップ」という技術的事項を有する方法となった。 当該「前記SiC基板上の第1ウェルと第2ウェルとの間に、所定の厚さの絶縁層を設けるステップ」を有し、この「絶縁層」を用いて、「表面拡散チャネルを形成するために、前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面内へと1000オングストローム未満の深さまで所定のドーパントを拡散するステップであって、前記所定のドーパントが前記絶縁層を通じて前記SiC基板の表面に拡散されるときに、前記所定のドーパントは前記SiC基板の前記第1ウェルと前記第2ウェルとの間に前記第2導電型の前記表面拡散チャンネルを形成し、前記表面拡散チャンネルを形成するために前記絶縁層を通して前記SiC基板の表面内へと前記所定のドーパントを拡散する前記ステップは、前記所定のドーパントが豊富な環境において、第1の所定の温度で、第1の所定の時間の間、前記SiC基板上に形成された前記絶縁層を含む前記SiC基板に対してアニールを行うステップを含み、前記第1の所定の温度および前記第1の所定の時間は、前記絶縁層の所定の厚さに従って制御されて、前記所定のドーパントが前記SiC基板の表面内へ望ましい深さおよび望ましいドーピング濃度で拡散するようにされ、前記望ましい深さおよび前記望ましいドーピング濃度は、前記半導体デバイスが、常時オフの挙動を維持しつつも、前記表面拡散チャンネルの無い半導体デバイスよりもキャリアの移動度を増加させる、ステップ」は、前記「第6」で検討したとおり、当審拒絶理由における引用例1,3,9ないし13には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし20は、当業者であっても、当審拒絶理由における引用例1,3,9ないし13に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、本手続補正により、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとの、当審拒絶理由で示した理由は解消した。 第9 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2016-011397

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決32件(クリー インコーポレイテッド)
  • 2020-001370拒絶査定不服審判 / 2021-11-02 / 原査定取消(特許/登録すべき)高電流、低スイッチングロスのSiCパワーモジュール
    同じ当事者: クリー インコーポレイテッド
  • 2018-015530拒絶査定不服審判 / 2021-05-11 / 請求不成立電力変換電子機器
    同じ当事者: クリー インコーポレイテッド
  • 2019-010542拒絶査定不服審判 / 2021-03-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)ワイドバンドギャップ半導体材料用IGBT構造
    同じ当事者: クリー インコーポレイテッド
  • 2018-004176拒絶査定不服審判 / 2020-01-29 / 請求不成立トレンチゲートを有する電界効果デバイスのための強化されたゲート誘電体
    同じ当事者: クリー インコーポレイテッド
  • 2018-000296拒絶査定不服審判 / 2019-06-18 / 請求不成立トランジスタ構造およびその製造方法
    同じ当事者: クリー インコーポレイテッド
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)2,632件(121・H01L、537・H01L)
  • 2025-000609拒絶査定不服審判 / 2026-08-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)軽量太陽光発電パネル及びその製造方法
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
  • 2024-011725拒絶査定不服審判 / 2026-02-09 / 原査定取消(特許/登録すべき)カルコゲン含有化合物半導体の製造方法及び製造装置
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
  • 2025-000132拒絶査定不服審判 / 2025-12-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)SiCウェハおよびその製造方法
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
  • 2025-000133拒絶査定不服審判 / 2025-12-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)SiC単結晶ウェハおよびその製造方法
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
  • 2025-002269拒絶査定不服審判 / 2025-12-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)冷却床部材
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存