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特許拒絶査定不服審判

2016-010410

エレベータ装置、建物、及び位置決定デバイス

審判番号
2016-010410
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-145673
請求日
2016年07月08日
審決日
2017年05月22日
公報発行日
2017年11月24日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】セデス アーゲー
  • 【請求人代理人】名古屋国際特許業務法人
審判長/審判官
  • 審判長 伊藤 元人
  • 審判官 槙原 進
  • 審判官 金澤 俊郎
分類
P18 .121-Z (B66B) / P18 .575-Z (B66B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-145673「エレベータ装置、建物、及び位置決定デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月17日出願公開、特開2013- 10638〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件出願は、平成24年6月28日(パリ条約による優先権主張2011年6月28日、欧州特許庁)の外国語書面出願であって、平成24年7月25日に翻訳文提出書により明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書についての翻訳文が提出され、平成26年9月3日に手続補正書が提出され、平成27年5月21日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して平成27年9月28日に意見書が提出されたが、平成28年2月23日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年7月8日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。 第2 平成28年7月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年7月8日付けの手続補正を却下する。 [理由] 〔1〕本件補正の内容 平成28年7月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年9月3日に提出された手続補正書により補正された)下記の(A)に示す請求項1ないし9を、下記の(B)に示す請求項1ないし9と補正するものである。 (A)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし9 「 【請求項1】 特に建物などの、少なくとも2つの階層を備える3次元構造(6)における昇降シャフト(7)内で人及び/又は物体を搬送するための昇降装置(1)であって、 搬送される前記人及び/又は物体が収容され得る昇降かご(3)と、 前記昇降かごを搭載しガイドするための駆動フレーム(2)と、 前記昇降シャフト内で及び/又は前記駆動フレームに対して前記昇降かごの位置を決定するための位置決定デバイスであって、前記位置をマーキングするためのマーキングユニット、前記マーキングユニットを検出するため及び/又は読み出すための検出ユニット(4)、前記検出ユニットの前記測定された値を評価するための評価ユニットを備える、位置決定デバイスとを備え、 前記マーキングユニット(5,9,10,14)は、特に2Dコードといったバーコードのキャリアとして構成され、前記検出ユニット(4)は、特にカメラといった画像センサとして構成され、第1及び第2のマーキングユニットが設けられ、前記第2のマーキングユニット(9)は、前記第1のマーキングユニットの精度を比較するための参照マーキングとして形成され、前記評価ユニットは前記第1及び第2のマーキングユニットの間で比較を行うように構成され、前記第1のマーキングユニットと前記第2のマーキングユニットとの間の相対位置の関係に変化があるか否かを規定することが可能であり、前記第1のマーキングユニット(5)は、前記駆動フレーム、特に前記駆動フレームのガイドレール上に取付けられ、前記第2のマーキングユニットは、前記昇降シャフト上、又は前記建物の他の部分、例えば前記建物の壁に取付けられることを特徴とする昇降装置。 【請求項2】 前記マーキングユニット(5,9,10,14)は、ストリップとして形成されることを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。 【請求項3】 前記第2のマーキングユニット(9)は、前記昇降シャフト内の駆動セクション上の特定のゾーンをマーキングするように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の昇降装置。 【請求項4】 前記評価ユニットは、前記昇降かごが前記ゾーン内にあるかどうかを認識するように構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の昇降装置。 【請求項5】 前記評価デバイスによって制御され得、前記昇降かごのドア及び/又は前記昇降シャフトのシャフト開口をロック解除するためのロック解除デバイスが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の昇降装置。 【請求項6】 前記検出ユニットは、前記昇降かご、特に前記昇降かごの上部及び/又は下部に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の昇降装置。 【請求項7】 少なくとも2つの階層を有する建物(6)であって、請求項1から6のいずれか1項に記載の昇降装置が設けられることを特徴とする建物。 【請求項8】 前記第2のマーキングユニットが当該建物に取り付けられることを特徴とする請求項7に記載の建物。 【請求項9】 前記第2のマーキングユニットが、その第2のマーキングユニットによってマーキングされたゾーンが前記昇降シャフトの前記シャフト開口のうちの少なくとも1つのシャフト開口の周りのエリアを形成するように配置されることを特徴とする請求項7又は8に記載の建物。」 (B)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし9 「 【請求項1】 特に建物などの、少なくとも2つの階層を備える3次元構造(6)における昇降シャフト(7)内で人及び/又は物体を搬送するための昇降装置(1)であって、 搬送される前記人及び/又は物体が収容され得る昇降かご(3)と、 前記昇降かごを搭載しガイドするための駆動フレーム(2)と、 前記昇降シャフト内で及び/又は前記駆動フレームに対して前記昇降かごの位置を決定するための位置決定デバイスであって、前記位置をマーキングするためのマーキングユニット、前記マーキングユニットを検出するため及び/又は読み出すための検出ユニット(4)、前記検出ユニットの前記測定された値を評価するための評価ユニットを備える、位置決定デバイスとを備え、 前記マーキングユニット(5,9,10,14)は、特に2Dコードといったバーコードのキャリアとして構成され、前記検出ユニット(4)は、特にカメラといった画像センサとして構成され、第1及び第2のマーキングユニットが設けられ、前記第2のマーキングユニット(9)は、前記第1のマーキングユニットの精度を比較するための参照マーキングとして形成され、前記評価ユニットは、特定の時間間隔で自動的に、前記第1及び第2のマーキングユニットの間で比較を行うように構成され、前記第1のマーキングユニットと前記第2のマーキングユニットとの間の相対位置の関係に変化があるか否かを規定することが可能であり、前記第1のマーキングユニット(5)は、前記駆動フレーム、特に前記駆動フレームのガイドレール上に取付けられ、前記第2のマーキングユニットは、前記昇降シャフト上、又は前記建物の他の部分、例えば前記建物の壁に取付けられることを特徴とする昇降装置。 【請求項2】 前記マーキングユニット(5,9,10,14)は、ストリップとして形成されることを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。 【請求項3】 前記第2のマーキングユニット(9)は、前記昇降シャフト内の駆動セクション上の特定のゾーンをマーキングするように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の昇降装置。 【請求項4】 前記評価ユニットは、前記昇降かごが前記ゾーン内にあるかどうかを認識するように構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の昇降装置。 【請求項5】 前記評価デバイスによって制御され得、前記昇降かごのドア及び/又は前記昇降シャフトのシャフト開口をロック解除するためのロック解除デバイスが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の昇降装置。 【請求項6】 前記検出ユニットは、前記昇降かご、特に前記昇降かごの上部及び/又は下部に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の昇降装置。 【請求項7】 少なくとも2つの階層を有する建物(6)であって、請求項1から6のいずれか1項に記載の昇降装置が設けられることを特徴とする建物。 【請求項8】 前記第2のマーキングユニットが当該建物に取り付けられることを特徴とする請求項7に記載の建物。 【請求項9】 前記第2のマーキングユニットが、その第2のマーキングユニットによってマーキングされたゾーンが前記昇降シャフトの前記シャフト開口のうちの少なくとも1つのシャフト開口の周りのエリアを形成するように配置されることを特徴とする請求項7又は8に記載の建物。」 (なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付したものである。) 〔2〕本件補正の目的要件について 本件補正は、本件補正前の請求項1における「前記評価ユニットは前記第1及び第2のマーキングユニットの間で比較を行うように構成され」という記載を、「前記評価ユニットは、特定の時間間隔で自動的に、前記第1及び第2のマーキングユニットの間で比較を行うように構成され」という記載とするものであり、本件補正前の請求項1に係る発明において、「評価ユニット」が「第1及び第2のマーキングユニットの間で比較を行う」時期について限定するものといえる。 よって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 〔3〕本願補正発明の独立特許要件について 1 本願補正発明 本願補正発明は、平成28年7月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、上記〔1〕(B)の【請求項1】に示したとおりのものである。 2 引用刊行物 (1)刊行物1 ア 刊行物1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-226149号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 昇降路内部のエレベータかごの位置を検出する装置であって、前記昇降路内部の垂直移動経路に沿って一連の乗場の間を往復移動するために取り付けられているエレベータかごと、光学的に識別可能な、位置に関する印を有するとともに、前記エレベータかごの前記垂直移動経路に隣接して前記昇降路内部に固定的に取り付けられているコードレールストリップと、前記エレベータかごに取り付けられてこれとともに移動し、かつ前記コードレールストリップを走査するよう配置されていることによって前記昇降路内部の前記エレベータかごの位置を示す前記印を読み取り、前記印に関する出力信号を発生させるセンサと、前記センサから前記出力信号を受信し、これに応答して、前記エレベータかごに関連する機能を実行するエレベータかごコントローラと、を備えていることを特徴とする装置。 【請求項2】 前記印は、前記コードレールストリップに沿って離間して配置されたマーカを有し、前記マーカは、光学的に読取り可能な文字および前記コードレールストリップの長手方向に沿って離間されたこれらの文字の間の目盛により特定されていることを特徴とする請求項1記載の装置。 【請求項3】 前記センサが、水平方向の列に整列されたピクセルを有する画像装置を備えていることを特徴とする請求項2記載の装置。 【請求項4】 前記センサが、CCDもしくはCMOSからなる画像装置を備えたカメラであることを特徴とする請求項3記載の装置。 【請求項5】 前記センサは、前記画像装置に記録されたマーカに関する、光学的に認識されたデータと、前記の記録されたマーカに対する前記センサの光学軸線の位置に関するピクセルデータと、を前記エレベータかごコントローラに送信し、これによって、前記昇降路内部の前記センサの絶対位置が正確に検出されることを特徴とする請求項3記載の装置。 【請求項6】 コードレール部分が、前記コードレールストリップに隣接して各乗場および急行ゾーンに取り付けられているとともに、関連する乗場もしくは急行ゾーンに関する印を有し、前記センサが、互いに隣接する前記コードレール部分および前記コードレールストリップに設けられているデータを同時に読み取ることができるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の装置。 【請求項7】 前記コードレール部分が、各乗場のドア枠に取り付けられていることを特徴とする請求項6記載の装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項7】) (イ)「【請求項14】 昇降路内部のエレベータかごの位置を検出する方法であって、前記昇降路の長手方向に沿って延びるようにコードレールストリップを前記昇降路内部に取り付けるステップと、前記昇降路に沿って垂直方向に離間された位置を特定するための、光学的に読取り可能な印を前記コードレールストリップ上に設けるステップと、前記コードレールストリップ上に設けられた前記の位置に関する印を光学的に読み取ることが可能な位置に光学的センサを取り付けるステップと、位置に関するデータを前記光学的センサからエレベータかごコントローラへと送るステップと、を有し、前記エレベータかごコントローラは、前記の位置に関するデータに関連する、様々な、エレベータかごに関する機能を実行する処理装置を備えていることを特徴とする方法。 【請求項15】 前記昇降路に沿った乗場を示すマーカを、前記コードレールストリップの長手方向に沿って離間させて設けるステップを有することを特徴とする請求項14記載の方法。 【請求項16】 前記光学的センサが、前記コードレールストリップに設けられた前記マーカを光学的に読み取るためのCCD画像装置を備えたカメラであり、前記CCD画像装置が、複数の、水平方向のピクセル列を有することを特徴とする請求項15記載の方法。 【請求項17】 前記コードレールストリップを走査して光学的認識により前記コードレールストリップ上の連続したマーカを特定し、前記画像装置の中心軸線と上方のマーカとの間のピクセル列および前記中心軸線と下方のマーカとの間のピクセル列の数をカウントし、ASBPOS=LOWPOS+N2・(HIGHPOS-LOWPOS)/(N1+N2)の関係式を用いて前記エレベータかごの絶対位置を求めるステップを有し、前記関係式において、ABSPOSは、エレベータかごの絶対位置、LOWPOSは下方の目盛の数値、HIGHPOSは上方の目盛の数値、N1は、前記画像装置の中心軸線と下方の目盛の数値との間のピクセル列の数、N2は、前記画像装置の中心軸線と上方の目盛の数値との間のピクセル列の数であることを特徴とする請求項16記載の方法。 【請求項18】 前記コードレールストリップに隣接してコードレール部分を各乗場に配置することによって、前記光学的センサにより各コードレール部分および前記コードレイルストリップにおける印を同時に読み取ることができるようにするステップを有することを特徴とする請求項14記載の方法。 【請求項19】 前記コードレールストリップから得られたデータを用いて前記昇降路に対する前記エレベータかごの位置に関する一次位置情報を決定し、前記コードレール部分から得られたデータを用いて乗場に対する前記エレベータかごの位置に関する二次位置情報を決定するステップを有することを特徴とする請求項18記載の方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項14】ないし【請求項19】) (ウ)「【請求項28】 昇降路を収容した建物内部におけるエレベータかごの位置を検出する方法であって、前記昇降路には一連の乗場が垂直方向に設けられており、各乗場がドア枠を有するものにおいて、前記方法は、連続したコードレールストリップを前記エレベータかごの移動経路に隣接して前記昇降路の長手方向に沿って垂直に配置するステップと、前記昇降路における前記エレベータかごの位置を示す、光学的に読取り可能な一次マーカを前記コードレールストリップに設けるステップと、不連続のコードレール部分を、前記の連続したコードレールストリップに隣接して各乗場に垂直に取り付けるステップと、各乗場に対する前記エレベータかごの位置を示す、光学的に読取り可能な二次マーカを各コードレール部分に設けるステップと、前記エレベータかごが前記昇降路に沿って移動する間に前記コードレールストリップおよび前記コードレール部分を同時に読み取ることができるように1つのセンサを前記エレベータかごに取り付けるステップと、一次位置データおよび二次位置データを前記センサからかごコントローラへと送ることにより、前記エレベータかごに関する様々な機能を制御可能とするステップと、を有することを特徴とする方法。 【請求項29】 マーカを、前記コードレールストリップおよび各コードレール部分に沿って所定位置に設けるステップを有することを特徴とする請求項28記載の方法。 【請求項30】 前記センサの読取り値を前記エレベータかごコントローラのメモリに保存するステップを有することを特徴とする請求項28記載の方法。 【請求項31】 前記メモリに保存されたデータを周期的に更新するステップを有することを特徴とする請求項30記載の方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項28】ないし【請求項31】) (エ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、主に、エレベータに関し、特に、エレベータかごが昇降路に沿って移動する際にエレベータかごの位置を決定するための方法および装置に関する。 【0002】 【従来の技術】エレベータかごをスムーズかつ安全に停止させて乗場に着床させるためには、エレベータかごの移動および着床に関する信頼性のある情報をエレベータかごコントローラに提供することによって、エレベータかごのドア開動作のみならず、エレベータかごの着床および停止の動作を開始すべき時点を知る必要がある。このような機能を正確に実行するためには、エレベータかごの厳密な位置を常時知る必要がある。多くの位置参照システムは、昇降路内部で様々な構成で取り付けることが可能な逐次式エンコーダおよびベーンを用いたものである。ある構成においては、長手方向に複数の溝部が設けられた、端部のないテープが、エレベータかごに取り付けられているとともに、昇降路の頂部および底部に配置された遊び車の周りに配置されている。一方の遊び車には、テープの溝部と噛み合う歯が設けられており、これによって、この遊び車がテープにより駆動されるようになっている。エンコーダは、この歯付き車により駆動され、1次かご位置情報をエレベータかごコントローラに送る。不連続の位置センサおよびベーンが付加的に各乗場に配置されており、これらによって、エレベータかごをスムーズかつ安全に停止させて各乗場に着床させるための2次かご位置情報が得られる。広く普及している第2の位置測定システムは、エレベータ駆動モータのシャフトにエンコーダが取り付けられたものである。かご位置データは、エンコーダ装置により測定された後、処理され、エレベータかごの速度およびそれぞれの乗場に関連する乗場情報までの距離を求めるのに利用される。このようなシステムにおいても、付加的なセンサおよびベーンを各乗場に配置し、エレベータかごが乗場におけるベーンを通過する毎に、エンコーダにより得られたかご位置を検査し、必要に応じて補正する必要がある。以上のような位置参照システムは、実際には有用であるが、このようなタイプの従来技術のシステムは、設置にかかる費用が比較的高く、調整が困難で、かつ保守維持のためのコストが高い。さらに、ロープの滑りなどを補償するために、各乗場において誤差の較正を行なう必要がある。乗場に対するエレベータかごの位置は、通常は、エンコーダによって間接的に測定され、エレベータかごの位置データは、逐次的に得られる。従って、システムが停止された場合には、このような位置データをメモリに保存する必要がある。位置データが失われた場合には、位置基準を再確立するために較正運転を行なわなければならず、さらに、エレベータを収容している建物が沈下(settle)する度に、システムを再較正する必要がある。最後に、上述したように、多くの従来技術の位置参照システムでは、エレベータかごが乗場に近づいた場合にエレベータかごを能動的に検知するための冗長型の位置センサおよびベーンを乗場に配置しなければならない。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、エレベータを改善することであり、特に、エレベータ制御のための位置検出システムを改善することである。本発明の更なる目的は、エレベータかごの、横方向もしくは前後方向の動きによって悪影響を受けることがないエレベータ用非接触型絶対位置検出システムを提供することである。本発明の更なる目的は、電力遮断後のエレベータ位置検出システムの較正運転およびの再較正を不要とすることである。本発明の他の目的は、エレベータ位置検出システムの設置および保守維持にかかるコストを削減することである。本発明の更なる目的は、付加的なエンコーダが不要な、エレベータの冗長型速度測定システムを提供することである。本発明の更なる目的は、エレベータ位置決めシステムが収容されている建物が沈下(settle)した場合にエレベータ位置検出システムを連続的に較正することである。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明の以上の目的および他の目的は、エレベータかごが往復移動するために収容されている昇降路におけるエレベータかごの位置を決定するためのシステムによって達成することができる。本発明の一形態によると、光学的に識別可能な情報を含むコードレールが、エレベータかごの移動経路に隣接して昇降路内部に垂直に取り付けられる。光学的センサが、エレベータかごに取り付けられてこれとともに移動するようになっている。この光学的センサは、コードレールに設けられた、昇降路に関連する印を光学的に読み取ることが可能な位置にあり、このような情報をエレベータかごコントローラに供給する。コードレールとして、昇降路の垂直方向の長手方向に沿って延びた連続型ストリップ、もしくは、所定の乗場にそれぞれ配置された独立型コードレール部分に印が設けられたものを用いることができる。本発明の他の形態によると、昇降路の長手方向に沿って延びたコードレールストリップを読み取って一次位置データを得ると同時に、各乗場における独立型コードレール部分を読み取って二次位置データを得るために、単一のセンサが配置されている。」(段落【0001】ないし【0004】) (オ)「【0005】 【発明の実施の形態】まず図1を参照すると、一対のガイドレール(一方のみが12として図示されている)の間でロープ11により吊り下げられているエレベータかご(全体を10とする)が示されている。当該技術分野において周知のように、エレベータかご10は、複数の階を有する建造物に収容された昇降路15内部の垂直移動経路に亘って往復移動するよう構成されている。エレベータかご10は、コントローラ30を備えており、コントローラ30は、エレベータかご10に関連する複数の制御機能を実行するようプログラムされた処理装置と、位置に関連するデータを保存するためのメモリと、を備えている。このような制御機能および他の制御機能を正確に実行するためには、正確かつ十分な情報を処理装置に提供することによって、昇降路内部におけるエレベータかご10の位置が処理装置によって常時厳密に決定されるようにしなければならない。以下でより詳細に述べるように、本発明では、昇降路内部のエレベータかご10の位置を常時求めるためのデータが1つもしくは2つの非接触型センサから得られ、この情報は、コントローラ30に送られる。コントローラ30によって、この情報が処理され、様々な関連する制御機能を実行するために利用される。以下でより詳細に説明するように、このようなセンサとしては、CCDやCMOSを備えたカメラ、もしくは、符号化されたストリップに離間して設けられた開口部を読み取るための、LEDを備えた読取り装置といった光学装置を利用することができる。赤外線センサといった他のタイプの読取り装置を、本発明を実行するために利用することも考えられる。 【0006】本発明の一実施例では、エレベータかご10が下方のカメラ19および上方のカメラ20からなる一対のカメラを備えており、これらのカメラ19,20は、隣接するコードレールストリップ22の列に焦点が合わせられているため、これらのカメラ19,20によってコードレールストリップ22上に設けられた目盛23の像を記録することが可能である。これらの2つのカメラ19,20は、離間されており、これによって、これらのカメラ19,20の中心軸線24,25が一定の垂直方向距離Dだけ離間されている。従って、エレベータかご10が垂直移動経路を移動する間、各カメラ19,20によって、コードレールストリップ22のそれぞれ異なる部分が走査される。本発明のこの実施例では、2つのカメラ19,20が用いられるが、以下に開示された実施例からわかるように、本発明の他の実施例として、本発明の教示から逸脱することなく、カメラを1つだけ用いることも可能である。 【0007】図2および図3に更に示されているように、カメラ19,20は、両方とも同じ構造を有し、かつコードレールストリップ22の走査された像を記録するための電荷結合素子(CCD)21を備えている。各カメラ19,20のカメラハウジング26の末端部には、各カメラ19,20の中心軸を囲む走査領域34の像をCCD画像装置21に集束させるためのレンズもしくはレンズシステム32が配置されている。CCD画像装置21は、カメラハウジング26内部で、CCD支持回路とともに基板28上に取り付けられている。CCD画像装置21からの像データは、信号増幅器29に送られ、続いて、コントローラ30に送られる。コントローラ30によって、この位置データが処理され、様々な関連するエレベータ制御機能に利用される。この位置データの一部をメモリに保存し、必要に応じて周期的に更新することも可能である。 【0008】図3には、コードレールストリップ22の一部が示されており、コードレールストリップ22の各印つまりマーカには、上方に行くに従って大きくなる所定の数値が付けられている。目盛つまり互いに隣接する数値間の間隔は、昇降路の長手方向に沿って等しい距離にある。この間隔は、所望の大きさにすることができるが、この実施例では、これらの数値がセンチメートルで与えられる。CCD画像装置21により記録される、走査領域34の拡大された像33が図示されており、カメラ19,20の中心軸線24,25は、垂直方向の直径と水平方向の直径とが交差する点31に示されている。この例では、カメラの中心軸線が、上方の目盛の数値(70センチメートル)と下方の目盛の数値(60センチメートル)との間の点に集束している。周知の光学文字読み取り技術を用いて、コントローラ30と関連するカメラ19,20により上方の目盛の数値および下方の目盛の数値が光学的に特定される。CCD画像装置21は、多数のピクセルを有し、これらのピクセルは、水平方向の行および垂直方向の列からなるラスタ形式で配置されている。ここで、カメラの中心軸線と上方の目盛との間のピクセル列およびカメラの中心軸線と下方の目盛との間のピクセル列(この例では、カメラの中心軸線が、上方の目盛から237ピクセルでかつ下方の目盛から198ピクセルの位置にある)をカウントすることによって、コードレールストリップ22に対するカメラの中心軸線の位置が決定される。このとき、以下の関係式を用いる。 【0009】 ABSPOS=LOWPOS+N2・(HIGHPOS-LOWPOS)/(N1+N2) (1) ここで、ABSPOSはカメラの中心軸線の位置、LOWPOSは下方の目盛の数値、HIGHPOSは間隔の上方の目盛の数値、N1はカメラの中心軸線と上方の目盛との間にあるピクセル列の数、N2はカメラの中心軸線と下方の目盛との間にあるピクセル列の数、である。 【0010】この例に対して上記関係式を解くと、 ABSPOS=60+198・(70-60)/(237+198) =64.55cm カメラの中心軸線は、コードレールストリップ22の下方基準面から64.55cmだけ垂直上方に位置する。 【0011】この実施例では、各カメラによって、所定の間隔(例えば5.0ミリ秒)毎にコードレールストリップ22の写真が撮られる。コードレールストリップ22上の、数値を有する目盛に対するカメラの位置に基づき、光学文字読み取り技術およびピクセルのカウントを利用することによって、昇降路内部のエレベータの位置がカメラの像から求められる。コードレールは、図示されたような連続したストリップ、もしくは、各乗場のドア枠や各乗場に対して不動の他の位置に直接に配置された独立型コードレール部分の列とすることが可能である。少なくとも1つのカメラによってこれらのコードレール部分のうちの少なくとも1つを常時見ることができるように、カメラが配置されている。このような配置によって、跳び(fly)が発生しても、連続的な位置検出が可能となる。」(段落【0005】ないし【0011】) (カ)「【0016】図6には、上述した、2つのカメラのシステムを用いて隣接する乗場間の距離を計算して、補正されたデータをエレベータ制御システムに提供し、これによって、移動制御に関する、エレベータかご10の様々な機能をエレベータ制御システムにより実行できるようにする方法が示されている。図6に示された実施例では、図5に示されたような、乗場5と乗場6との間の初期位置を、以下の関係式から見つけることができる。 【0017】 DIS=P1L6-P2L5+D (2) ここで、DISは、互いに隣接する乗場間の距離、P1L6は、かごプラットフォーム40の高さが乗場6の敷居に合わせられた状態でカメラ19の中心軸線24の延長上にある読取り値、P2L5は、かごプラットフォーム40の高さが乗場5の敷居に合わせられた状態でカメラ20の中心軸線25の延長上にある読取り値、Dは、カメラ間の垂直方向距離(この実施例では2.5メートル)である。 【0018】建物の沈下(building settling)が起こる前は、乗場間の距離は、図4の表のようになり、以下のように求められる。 【0019】DIS=38.00-37.25+2.50=3.25m 図5に関して上述したように建物が沈下(settle)したは、乗場5と乗場6との間の距離は、図5の表のようになり、以下のように求められる。 【0020】DIS=38.00-37.50+2.50=3.00m 以上の方法において重要なことは、P1L6およびP2L5が、両方とも、同一のコードレール部分(この場合は乗場6におけるコードレール部分)を読み取ることにより求めることができることである。上述したように、絶対値で示されたマーカを読み取ることが重要でないことは明らかである。例えば、乗場6におけるコードレール部分が93.00~95.00メートルの値を有する場合も、乗場5と乗場6との間の距離の計算値が上述した値と同じになる。 【0021】P1L6-P2L5+D=94-93.50+2.50=3.00m 従って、システムの移動制御には影響がない。この情報は、制御される処理装置に送られ、これに従って各乗場におけるマーカの位置の較正が行なわれる。」(段落【0016】ないし【0021】) (キ)「【0025】図8および図9を参照すると、本発明の他の実施例が示されている。この実施例では、エレベータかご10に取り付けられた1つのカメラによって、一次位置データおよび二次位置データを両方とも得ることができる。この実施例では、連続したコードレールストリップ50が、昇降路の長手方向に沿って垂直に延びている。コードレールストリップ50は、乗場ドア枠付近で各乗場の近傍に取り付けられている。コードレール部分(例えばコードレール部分52,53)の列が、コードレールストリップ50に隣接しかつこれと平行に取り付けられており、1つのコードレール部分が各乗場に配置されている。これによって、エレベータかご10に取り付けられているカメラによって、コードレールストリップ50およびコードレール部分の両方のマーカを同時に見ることができる。コードレールストリップ50は、一次位置データをコントローラ30に提供するために用いられ、コードレール部分は、二次位置データをコントローラ30に提供するために用いられる。一次位置データは、昇降路におけるエレベータかご10の位置に関連し、二次位置データは、関連する乗場領域のうちの1つに対するエレベータかご10の位置に関連する。コードレール部分には数値が付けられており、これによって、階およびドア敷居の位置がこれらの数値により特定されるようになっている。エレベータかご10が乗場に近づくと、カメラによって、コードレールストリップ50およびコードレール部分が読み取られ、一次位置データおよび二次位置データが同時にコントローラ30に提供される。 【0026】図9には、かごプラットフォーム40の高さが乗場8のドア敷居に合わせられた状態での、コードレールストリップ50のマーカおよびコードレール部分のマーカの相対位置が示されている。このような状態では、コードレール部分の読取り値は800であり、コードレイルストリップ50の読み取り値は4257cmである。図8には、建物が沈下(settle)した後にカメラにより写される読取り値が示されている。この場合、コードレールストリップ50の読取り値が4240cmに変化する。図示されているように、1つのカメラによってコードレールストリップ50およびコードレール部分の両方を見る場合、エレベータかご10が昇降路に沿って移動する間にデータの流れを連続的にコントローラ30に提供することができる。このことは、建物の階の間が狭くなった場合に補正データをコントローラに提供しながら、昇降路におけるエレベータかご10の絶対的位置を求めるのに利用することができる。」(段落【0025】及び【0026】) イ 上記ア及び図面の記載から分かること (ア)上記ア(ア)ないし(キ)並びに図1ないし3、8及び9の記載によれば、刊行物1には、エレベータかごが昇降路に沿って移動するエレベータが示されているところ、エレベータが、複数の階を有する建物における昇降路内で人及び/又は物体を搬送するものであることは明らかである。 そうすると、刊行物1には、複数の階を有する建物における昇降路内で人及び/又は物体を搬送するためのエレベータが記載されていることが分かる。 (イ)上記ア(ア)ないし(キ)並びに図1ないし3、8及び9の記載によれば、エレベータが、搬送される人及び/又は物体が収容され得るエレベータかご10を備えることが分かる。 (ウ)上記ア(オ)及び図1の記載によれば、エレベータが、エレベータかご10を搭載しガイドするためのガイドレール12を備えることが分かる。 (エ)上記ア(ア)ないし(キ)並びに図1ないし3、8及び9の記載によれば、エレベータが、昇降路におけるエレベータかご10の位置を決定するためのエレベータ位置検出システムを備えることが分かる。 (オ)上記ア(ア)ないし(キ)並びに図1ないし3、8及び9の記載(特に、段落【0005】ないし【0011】、【0025】及び【0026】並びに図1ないし3、8及び9の記載)によれば、エレベータ位置検出システムは、昇降路におけるエレベータかご10の位置をマーキングするためのマーカ及び前記マーカを読み取るための光学的センサを備えることが分かる。 (カ)上記ア(ア)ないし(キ)並びに図1ないし3、8及び9の記載(特に、段落【0025】及び【0026】並びに図1ないし3、8及び9の記載)によれば、エレベータ位置検出システムは、光学的センサの読取り値に基づいて建物が沈下して前記建物の階の間が狭くなった場合に、昇降路におけるエレベータかご10の絶対的位置を求めるための処理装置を備えることが分かる。 (キ)上記ア(ア)ないし(キ)並びに図1ないし3、8及び9の記載(特に、段落【0025】及び【0026】並びに図8及び9の記載)によると、前記マーカは、目盛付きのコードレールとして構成され、コードレールストリップ50及びコードレール部分52,53が設けられるものであること、並びに、コードレールストリップ50は、昇降路の長手方向に沿って垂直に伸びており、コードレール部分52,53は、建物の各乗場に配置されていることが分かる。 (ク)上記ア(ア)ないし(キ)並びに図1ないし3、8及び9の記載(特に、段落【0005】ないし【0011】、【0025】及び【0026】並びに図1ないし3、8及び9の記載)によると、光学的センサは、所定の時間間隔毎に写真を撮るカメラとして構成されることが分かる。 (ケ)上記ア(ア)ないし(キ)並びに図1ないし3、8及び9の記載(特に、段落【0025】及び【0026】並びに図1ないし3、8及び9の記載)を上記(カ)ないし(ク)とあわせてみると、光学的センサであるカメラによって、コードレールストリップ50及びコードレール部分52,53が撮られ、処理装置は、カメラの読取り値に基づいて建物が沈下して前記建物の階の間が狭くなった場合に、昇降路におけるエレベータかご10の絶対的位置を求めるところ、上記ア(エ)、(カ)及び(キ)並びに図8及び9の記載(特に、段落【0002】、【0003】、【0016】ないし【0021】、【0025】及び【0026】並びに図8及び9の記載)によれば、処理装置は、エレベータ位置検出システムの較正(各乗場におけるマーカの位置の較正)を行うものであって、コードレール部分52,53は、コードレールストリップ50の精度を比較するための参照マーキングとして形成され、前記処理装置は、前記コードレールストリップ50及びコードレール部分52,53の間で比較を行うように構成され、前記コードレールストリップ50と前記コードレール部分52,53との間の相対位置の関係に変化があるか否かを規定することが可能であることは明らかである。 ウ 引用発明 上記ア及びイを総合して、本願補正発明の表現に倣って整理すると、刊行物1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「複数の階を有する建物における昇降路内で人及び/又は物体を搬送するためのエレベータであって、 搬送される前記人及び/又は物体が収容され得るエレベータかご10と、 前記エレベータかご10を搭載しガイドするためのガイドレール12と、 前記昇降路におけるエレベータかご10の位置を検出するためのエレベータ位置検出システムであって、前記位置をマーキングするためのマーカ、前記マーカを読み取るための光学的センサ、前記光学的センサの読取り値に基づいて前記建物が沈下して前記建物の階の間が狭くなった場合に、昇降路におけるエレベータかご10の絶対的位置を求めるための処理装置を備える、エレベータ位置検出システムとを備え、 前記マーカは、目盛付きのコードレールとして構成され、前記光学的センサは、所定の時間間隔毎に写真を撮るカメラとして構成され、コードレールストリップ50及びコードレール部分52,53が設けられ、前記コードレール部分52,53は、前記コードレールストリップ50の精度を比較するための参照マーキングとして形成され、前記処理装置は、前記コードレールストリップ50及びコードレール部分52,53の間で比較を行うように構成され、前記コードレールストリップ50と前記コードレール部分52,53との間の相対位置の関係に変化があるか否かを規定することが可能であり、前記コードレールストリップ50は、昇降路の長手方向に沿って垂直に伸びており、前記コードレール部分52,53は、前記建物の各乗場に配置されているエレベータ。」 (2)刊行物2 ア 刊行物2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭59-152305号(実開昭61-68073号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア)「<考案の目的> 本考案は上記の点に鑑みなされたもので、エレベータのカゴ位置情報を直接昇降路で検出し、かつ、カゴ位置情報の伝送は耐ノイズ性の高いエレベータの位置検知装置を提供するものである。 <考案の概要> 本考案は上記目的を達成するために、直接、昇降路から位置信号を検出して伝送するように、昇降路の縦方向に配置し、最下階を基準にした絶対位置を示す位置コード板を昇降路内に設け、機械室に光源を持ち、光フアイバーケーブルで直結された光走査器を前記位置コード板に対向するようにカゴ上配置して、カゴの移動に応じて前記光走査器が発する位置情報を、前記光フアイバー・ケーブルを介して機械室のマイコンまでシリアル伝送する。」(明細書第3ページ第17行ないし第4ページ第12行) (イ)「<考案の実施例> 以下、本考案の実施例について図面を参照しながら説明する。 第1図は本考案の一実施例を示した図で、エレベータ機械室に設置した制御盤11内に投光器12を設け、この投光器12から発せられた光は、双信形光フアイバー・ケーブル13を介してカゴ3上に設置された光走査器(バーコード・センサー)15へ伝送する。一方、昇降路のカゴ3を垂直に乗降するためのガイド・レール16の一端部に、バーコード・テープ17を貼付ける。バーコード・テープ17の1例は第2図に示したように、ある特定のピツチで、2進数でコード化したグレイ・コードを、昇降路最下階を基準にした絶対位置を示す位置コード板である。バーコード・センサー15から発せられた光はバーコード・テープ17に当り、その位置のコード信号に合った光の2値信号に変換され、双信形光フアイバー・ケーブル13を介して制御盤11内の受光器18に再び伝送され、制御盤11内の図示しないデコーダにて2値の電気信号に変換される。 以上の構成・作用により、カゴ3の絶対位置を検出するので、停電時のバツクアツプ用補助電源装置が不要となるばかりでなく、カゴ内の荷重変動で生ずるロープの伸縮によるレベルずれ(以下ロープ・ストレツチと云う。)が発生しても、従来の回転系から検出する方法では検出不可能なため荷重センサー等によるレベル補正装置が必要であつたが、本考案によればカゴ位置を直接検出しているので、レベルずれも検出可能なので荷重センサーが不要となる。またアブソリユートのグレイ・コード17は光の反射検出方式を採用し、帯状のプラスチツク・フイルムテープ等にグレイ・コードを印刷し昇降路の固定物に貼付ける方式なので、安価に製作でき、施工作業も容易である。信号伝送の面においても、光フアイバーを介しての光信号の伝送を行うので、耐ノイズ性の向上、信号伝送の高速化に寄与できる。」(明細書第4ページ第13行ないし第6ページ第10行) 3 対比 本願補正発明(以下、「前者」ともいう。)と引用発明(以下、「後者」ともいう。)とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ・後者における「複数の階を有する建物」は、前者における「特に建物などの、少なくとも2つの階層を備える3次元構造」に相当し、以下同様に、「昇降路」は「昇降シャフト」に、「エレベータ」は「昇降装置」に、「エレベータかご10」は「昇降かご」に、「ガイドレール12」は「駆動フレーム」に、「昇降路におけるエレベータかご10の位置を検出する」は「昇降シャフト内で及び/又は前記駆動フレームに対して前記昇降かごの位置を決定する」に、「エレベータ位置検出システム」は「位置決定デバイス」に、「マーカ」は「マーキングユニット」に、「読み取るため」は「検出するため及び/又は読み出すため」に、「光学的センサ」は「検出ユニット」に、「所定の時間間隔毎に写真を撮るカメラ」は「特にカメラといった画像センサ」に、「コードレールストリップ50」は「第1のマーキングユニット」に、「コードレール部分52,53」は「第2のマーキングユニット」に、「前記建物の各乗場に配置されている」は「前記昇降シャフト上、又は前記建物の他の部分、例えば前記建物の壁に取付けられる」に、それぞれ相当する。 ・後者における「前記光学的センサの読取り値に基づいて前記建物が沈下して前記建物の階の間が狭くなった場合に、昇降路におけるエレベータかご10の絶対的位置を求めるための処理装置」は、光学的センサの読取り値について、コードレールストリップ50及びコードレール部分52,53の間で比較を行うように構成され、前記コードレールストリップ50と前記コードレール部分52,53との間の相対位置の関係に変化があるか否かを規定することが可能であることから、前者における「前記検出ユニットの前記測定された値を評価するための評価ユニット」に相当する。 ・後者における「前記マーカは、目盛付きのコードレールとして構成され」は、前者における「前記マーキングユニットは、特に2Dコードといったバーコードのキャリアとして構成され」に、「前記マーキングユニットは、コードのキャリアとして構成され」という限りにおいて一致する。 ・後者における「前記処理装置は、前記コードレールストリップ50及びコードレール部分52,53の間で比較を行うように構成され」は、前者における「前記評価ユニットは、特定の時間間隔で自動的に、前記第1及び第2のマーキングユニットの間で比較を行うように構成され」に、「前記評価ユニットは前記第1及び第2のマーキングユニットの間で比較を行うように構成され」という限りにおいて一致する。 したがって、両者は、 「特に建物などの、少なくとも2つの階層を備える3次元構造における昇降シャフト内で人及び/又は物体を搬送するための昇降装置であって、 搬送される前記人及び/又は物体が収容され得る昇降かごと、 前記昇降かごを搭載しガイドするための駆動フレームと、 前記昇降シャフト内で及び/又は前記駆動フレームに対して前記昇降かごの位置を決定するための位置決定デバイスであって、前記位置をマーキングするためのマーキングユニット、前記マーキングユニットを検出するため及び/又は読み出すための検出ユニット、前記検出ユニットの前記測定された値を評価するための評価ユニットを備える、位置決定デバイスとを備え、 前記マーキングユニットは、コードのキャリアとして構成され、前記検出ユニットは、特にカメラといった画像センサとして構成され、第1及び第2のマーキングユニットが設けられ、前記第2のマーキングユニットは、前記第1のマーキングユニットの精度を比較するための参照マーキングとして形成され、前記評価ユニットは、前記第1及び第2のマーキングユニットの間で比較を行うように構成され、前記第1のマーキングユニットと前記第2のマーキングユニットとの間の相対位置の関係に変化があるか否かを規定することが可能であり、前記第1のマーキングユニットは、前記駆動フレーム、特に前記駆動フレームのガイドレール上に取付けられ、前記第2のマーキングユニットは、前記昇降シャフト上、又は前記建物の他の部分、例えば前記建物の壁に取付けられる昇降装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。 (1)相違点1 「前記評価ユニットは、前記第1及び第2のマーキングユニットの間で比較を行うように構成され」ていることに関し、本願補正発明においては、「前記評価ユニットは、特定の時間間隔で自動的に、前記第1及び第2のマーキングユニットの間で比較を行うように構成され」ているのに対して、引用発明においては、「前記処理装置は、前記コードレールストリップ50及びコードレール部分52,53の間で比較を行うように構成され」ている点(以下、「相違点1」という。)。 (2)相違点2 「前記マーキングユニットは、コードのキャリアとして構成され」ることに関し、本願補正発明においては、「前記マーキングユニット(5,9,10,14)は、特に2Dコードといったバーコードのキャリアとして構成され」るのに対して、引用発明においては、「前記マーカは、目盛付きのコードレールとして構成され」る点(以下、「相違点2」という。)。 (3)相違点3 本願補正発明においては、「前記第1のマーキングユニットは、前記駆動フレーム、特に前記駆動フレームのガイドレール上に取付けられ」るのに対して、引用発明においては、「前記コードレールストリップ50は、昇降路の長手方向に沿って垂直に伸びて」いるものの、コードレールストリップ50の取り付け位置については明らかでない点。(以下、「相違点3」という。)。 4 判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 本願補正発明において、評価ユニットが、特定の時間間隔で自動的に、第1及び第2のマーキングユニットの間で比較を行うことに関し、本件出願の明細書の段落【0014】おける「第1に、第2のマーキングユニットが、第1のマーキングユニットの精度を調整するための参照マーキングとして使用されても良い。例えば、評価ユニットが、適切には特定の時間間隔で自動的にこうした調整を実施しても良い。これは、第1のマーキングユニットと第2のマーキングユニットとの間の相対位置に関して変化が経時的に起こっているかどうかを、エレベータ装置が確証(establish)することを可能にする。これは、メンテナンス目的で使用されても良く、原理上、建物の安全性のためにも使用されても良い。さらに、これは、より一層正確な位置決定が可能になるように、位置決定デバイスの較正が実施されることを可能にする。」との記載によれば、メンテナンス、建物の安全性及び位置決定デバイスの較正などを目的とするところ、特定の時間間隔がどのようなものであるかについては特定されておらず、上記目的を達成できる範囲であれば任意のものである。 一方、引用発明において、光学的センサであるカメラは、所定の時間間隔毎に写真を撮るのであるから、処理装置が、コードレールストリップ50及びコードレール部分52,53の間で比較を行うことも、所定の時間間隔毎に行われるものといえる。 そうすると、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。 仮に、本願補正発明における特定の時間間隔が、引用発明における所定の時間間隔と異なるものであるとしても、刊行物1の段落【0007】における「CCD画像装置21からの像データは、信号増幅器29に送られ、続いて、コントローラ30に送られる。コントローラ30によって、この位置データが処理され、様々な関連するエレベータ制御機能に利用される。この位置データの一部をメモリに保存し、必要に応じて周期的に更新することも可能である。」との記載によれば、エレベータの制御機能に利用する位置データを周期的に更新することが開示されており、また、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭56-132276号公報(特に、第2ページ右下欄第7行ないし第3ページ左上欄第3行並びに図3及び4)には、昇降かご(エレベーター乗りかご1が相当。以下、括弧内は同様。)の位置を決定するための第1及び第2の位置決定デバイス(パルス発電機5及び光学式測距計13)を備え、評価ユニット(エレベータ制御装置部12)が一定時間間隔で自動的に、第1の位置決定デバイスの出力値(積算カウンター7の内容)を第2の位置決定デバイスの出力により補正することが開示されており、エレベータ位置検出システムの較正を特定の時間間隔で行うことは、本件出願の優先日前に周知の技術(以下、「周知技術」という。)といえるから、引用発明において、エレベータ位置検出システムの較正を図るために、周知技術を考慮して、処理装置が、特定の時間間隔で自動的に、コードレールストリップ50及びコードレール部分52,53の間で比較を行うように構成し、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 (2)相違点2について 刊行物2には、上記2(2)ア(1)及び(2)並びに図1及び2の記載によれば、「昇降路内に設けるマーキングユニット(位置コード板)をバーコード(特定のピッチで、2進数でコード化したグレイ・コード)とする技術。」(括弧内に刊行物2において対応する用語を示す。以下、この技術を「刊行物2記載の技術1」という。)が記載されている。 そして、引用発明におけるマーカもエレベータかご10の位置をマーキングするために昇降路内に設けられるものであり、また、バーコードをカメラで撮影し、バーコードの情報を読み取ることは、本件出願の優先日前にごく普通に行われていることであるから、引用発明において、刊行物2記載の技術1を適用し、マーカ(マーキングユニット)をバーコードのキャリアとして構成されるようにすること、すなわち、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 (3)相違点3について 刊行物2には、上記2(2)ア(1)及び(2)並びに図1及び2の記載によれば、「昇降路最下階を基準とするマーキングユニット(位置コード板であるバーコード・テープ17)を昇降かごを搭載しガイドする(昇降路のカゴ3を垂直に昇降させる)ための駆動フレームのガイドレール(ガイド・レール15)上に取付ける技術。」(括弧内に刊行物2において対応する用語を示す。以下、この技術を「刊行物2記載の技術2」という。)が記載されている。 一方、引用発明におけるコードレールストリップ50も、昇降路の長手方向に沿って垂直に伸びるものであって、昇降路最下階を基準とするマーキングユニットということができ、しかも、処理装置がコードレールストリップ50及びコードレール部分52,53の間で比較を行い、建物が沈下して建物の階の間が狭くなったことを判断するためには、各乗場に配置されて建物の沈下の影響を受けるコードレール部分52,53に対して、コードレールストリップ50を、昇降路内で建物の沈下の影響を受けないように配置する必要があることは当然のことであり、エレベータかご10を搭載しガイドするためのガイドレール12が建物の沈下の影響を受けにくいことは当業者であれば容易に認識し得ることから、引用発明において、刊行物2記載の技術2を適用し、コードレールストリップ50(第1のマーキングユニット)をガイドレール12(駆動フレーム、特に前記駆動フレームのガイドレール)上に取付けるようにすること、すなわち、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 そして、本願補正発明は、全体としてみても、引用発明、刊行物2記載の技術1及び刊行物2記載の技術2から、又は、引用発明、刊行物2記載の技術1、刊行物2記載の技術2及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2記載の技術1及び刊行物2記載の技術2に基づいて、又は、引用発明、刊行物2記載の技術1、刊行物2記載の技術2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 〔4〕むすび 上記〔3〕のとおり、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、本件出願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、前記第2[理由]〔1〕(A)の【請求項1】に示したとおりのものである。 2 刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及びその記載事項、並びに、引用発明は、前記第2[理由]〔3〕2(1)に記載したとおりであり、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2及びその記載事項、並びに、刊行物2記載の技術1及び刊行物2記載の技術2は、前記第2[理由]〔3〕4に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、前記第2[理由]〔3〕で検討した本願補正発明における「前記評価ユニットは、特定の時間間隔で自動的に、前記第1及び第2のマーキングユニットの間で比較を行うように構成され」という発明特定事項について、「特定の時間間隔で自動的に」という事項を省いたものであるから、本願補正発明から「特定の時間間隔で自動的に」という発明特定事項を削除したものに相当する。 そして、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記第2[理由]〔3〕に記載したとおり、引用発明、刊行物2記載の技術1及び刊行物2記載の技術2に基づいて、又は、引用発明、刊行物2記載の技術1、刊行物2記載の技術2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は上記第2[理由]〔3〕3の対比で示した相違点2及び3の点でのみ相違するのであるから、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の技術1及び刊行物2記載の技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-010410

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