特許拒絶査定不服審判
2016-009332
表示制御プログラム、表示制御方法及び表示制御装置
- 審判番号
- 2016-009332
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-526607外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月23日
- 審決日
- 2017年09月21日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G06T)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-526607「表示制御プログラム、表示制御方法及び表示制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月30日国際公開、WO2014/016862、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年7月23日を国際出願日とする出願であって、平成27年3月20日付けで手続補正がされ、平成27年10月28日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年1月12日付けで手続補正がされ、平成28年4月14日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年6月23日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年5月22日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成29年7月24日付けで手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年4月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-11に係る発明は、以下の引用文献Aに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A.特開2012-59292号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1-11に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2012-59292号公報(拒絶査定時の引用文献A)
第4 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成29年7月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-11は以下のとおりの発明である。
なお、本願発明1の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(A)、構成(B)などと称する。
(本願発明1)
【請求項1】
(A)コンピュータに、
(B)撮像素子から撮像画像を取得し、
(C)前記撮像素子から取得した前記撮像画像内から基準物の像を認識した場合に、前記基準物と前記撮像素子との位置関係に応じて調整された画像モデルの表示制御を開始するとともに、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内より前記基準物が認識されている場合は前記表示制御を継続し、
(D)前記撮像素子の移動に関わる計測値を、センサから単位時間ごとに取得し、
(E)前記計測値から、単位時間前の前記撮像素子の位置に対する変化を求め、
(F)複数単位時間経過後の前記撮像素子の位置に関わる変化の累積から、前記複数単位時間の開始時点における前記撮像素子の位置と前記複数単位時間経過後における前記撮像素子の位置との間の距離である移動変化量を求め、
(G)前記基準物を認識した後、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内より前記基準物が所定時間認識されず、かつ、前記移動変化量が所定値未満である場合に、前記表示制御を継続し、
(H)前記基準物を認識した後、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内より前記基準物が前記所定時間認識されず、かつ、前記移動変化量が前記所定値以上である場合に、前記表示制御を終了する、
(A)処理を実行させることを特徴とする表示制御プログラム。
(本願発明2)
【請求項2】
前記基準物を認識した後、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内に前記基準物の像が前記所定時間認識されない場合に、前記撮像素子の移動変化量が前記所定値以上であるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示制御プログラム。
(本願発明3)
【請求項3】
前記基準物を認識した後、前記撮像素子から連続して取得した複数の前記撮像画像内のいずれにおいても、前記基準物の像が含まれない場合に、前記基準物が前記所定時間認識されないことを判定する、
処理を実行させることを特徴とする請求項1に記載の表示制御プログラム。
(本願発明4)
【請求項4】
前記コンピュータに、
前記基準物を認識した後、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内に前記基準物の像が含まれる場合に、前記表示制御を継続する、
ことを実行させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示制御プログラム。
(本願発明5)
【請求項5】
前記画像モデルは、前記基準物を基準とする座標で定義された3次元のモデル情報であり、前記表示制御により、前記位置関係に応じて投影された画像に調整されて表示される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示制御プログラム。
(本願発明6)
【請求項6】
前記センサは、前記コンピュータに備えられた加速度センサまたは角速度センサであって、
前記計測値は、正負を含む加速度の値である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表示制御プログラム。
(本願発明7)
【請求項7】
前記所定値は、前記撮像素子の撮影範囲を基準に定められる、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の表示制御プログラム。
(本願発明8)
【請求項8】
コンピュータが、
撮像素子から撮像画像を取得し、
前記撮像素子から取得した前記撮像画像内から基準物の像を認識した場合に、前記基準物と前記撮像素子との位置関係に応じて調整された画像モデルの表示制御を開始するとともに、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内より前記基準物が認識されている場合は前記表示制御を継続し、
前記撮像素子の移動に関わる計測値を、センサから単位時間ごとに取得し、
前記計測値から、単位時間前の前記撮像素子の位置に対する変化を求め、
複数単位時間経過後の前記撮像素子の位置に関わる変化の累積から、前記複数単位時間の開始時点における前記撮像素子の位置と前記複数単位時間経過後における前記撮像素子の位置との間の距離である移動変化量を求め、
前記基準物を認識した後、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内より前記基準物が所定時間認識されず、かつ、前記移動変化量が所定値未満である場合に、前記表示制御を継続し、
前記基準物を認識した後、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内より前記基準物が前記所定時間認識されず、かつ、前記移動変化量が前記所定値以上である場合に、前記表示制御を終了する、
処理を実行することを特徴とする表示制御方法。
(本願発明9)
【請求項9】
撮像部と、
前記撮像部の移動に関わる計測値を計測するセンサ部と、
前記撮像部から撮像画像を取得するとともに、前記センサ部から前記計測値を、単位時間ごとに取得する取得部と、
前記撮像部から取得した前記撮像画像内より基準物の像を認識した場合に、前記基準物と前記撮像素子との位置関係に応じて調整された画像モデルの表示制御を開始するとともに、前記撮像部から取得した前記撮像画像内より前記基準物が認識されている場合は前記表示制御を継続し、また、前記計測値から、単位時間前の前記撮像素子の位置に対する変化を求め、複数単位時間経過後の前記撮像部の位置に関わる変化の累積から前記複数単位時間の開始時点における前記撮像素子の位置と前記複数単位時間経過後における前記撮像部の位置との間の距離である移動変化量を求め、前記基準物を認識した後、前記撮像部から取得した前記撮像画像内より前記基準物が所定時間認識されず、かつ、前記移動変化量が所定値未満である場合に、前記表示制御を継続するとともに、前記基準物を認識した後、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内より前記基準物が前記所定時間認識されず、かつ、前記移動変化量が前記所定値以上である場合に、前記表示制御を終了する制御部と、
を含むことを特徴とする表示制御装置。
(本願発明10)
【請求項10】
前記計測値である前記加速度から、前記単位時間あたりの前記撮像素子の速度を求め、
前記速度から、前記変化として、単位時間前の位置座標からの該撮像素子の変化を求め、
前記位置座標に関する前記変化を、前記複数単位時間にわたり演算し、
最新の前記位置座標に関する前記変化と、基準位置座標との差分から、前記移動変化量を求める
ことを特徴とする請求項6に記載の表示制御プログラム。
(本願発明11)
【請求項11】
前記位置座標は、3次元方向の各々について、求められ、
前記変化量は、前記3次元方向の各々について、求められる
ことを特徴とする請求項10に記載の表示制御プログラム。
第5 引用文献、引用発明
1.引用文献1の記載
平成29年5月22日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、「画像表示プログラム、画像表示装置、画像表示システム、および画像表示方法」(発明の名称)として、図面とともに次の事項が記載されている(下線は強調のため当審で付与した。)。
(1)「【0001】本発明は、拡張現実感技術を用いて画像を表示する画像表示プログラム、画像表示装置、画像表示システム、および画像表示方法に関する。」
(2)「【0047】[ゲーム装置のハードウェア構成]以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る画像表示プログラムおよび画像表示装置について説明する。本発明は、表示装置に画像を表示させる任意の情報処理装置(コンピュータ)において画像表示プログラムが実行されることによって実現することができるが、本実施形態では、情報処理装置の一例として図1に示すゲーム装置1を用いる場合について説明する。
【0048】図1は、本実施形態に係るゲーム装置1の外観図である。ここでは、ゲーム装置1の一例として、携帯ゲーム装置を示す。なお、ゲーム装置1は、カメラを内蔵しており、当該カメラによって画像を撮像し、撮像した画像を画面に表示したり、撮像した画像のデータを保存したりする撮像装置としても機能する。」
(3)「【0078】[画像合成処理の概要]次に、図3から図6を参照して、上記ゲームプログラムによって実行されるゲーム処理中において行われる画像合成処理について説明する。ゲームプログラムは、カメラによって撮像された現実空間の画像(撮像画像)に仮想空間の画像(CG画像)を合成して表示する拡張現実感技術を用いてゲーム画像を表示し、プレイヤにゲームをプレイさせるものである。(略)
【0081】撮像画像に対してCG画像を合成した画像(合成画像)は、例えば次の処理によって生成することができる。まず、ゲーム装置1は、カメラによる撮像画像から、その中に含まれるマーカ52を認識する認識処理を実行する。マーカ52が認識された場合、ゲーム装置1は、認識されたマーカ52の形状および向き等から、ゲーム装置1(カメラ)とマーカ52との位置関係を算出する。位置関係とは、例えば、ゲーム装置1およびマーカ52の一方を基準としたときの他方の3次元の位置および姿勢として表される。なお、3次元位置を算出する場合には、例えば認識されたマーカ52の(撮像画像上での)大きさ等に基づいて両者の距離を決定してもよい。ゲーム装置1は、上記認識処理の処理結果として上記位置関係を算出する。さらに、ゲーム装置1は、位置関係に基づいて仮想空間における仮想カメラの位置および姿勢を算出する。仮想カメラの位置および姿勢は、仮想空間における仮想カメラと仮想オブジェクトとの位置関係が、現実空間におけるゲーム装置1とマーカ52との位置関係に一致するように算出される。仮想カメラの位置が決まると、ゲーム装置1は、仮想カメラの位置から仮想オブジェクトを見たCG画像を生成し、撮像画像に対して仮想オブジェクトのCG画像を合成する。以上の処理によって、ゲーム装置1は合成画像を生成して表示する。」
(4)「【0108】失敗カウンタデータ72は、失敗カウンタを示すデータである。失敗カウンタは、認識処理が連続して失敗する場合において、最初に失敗してからの経過時間を表す。すなわち、認識処理が失敗した場合、CPU31は失敗カウンタのカウントを開始し、その後、認識処理の失敗が連続する間、失敗カウンタのカウントを続ける。」
(5)「【0109】次に、ゲーム装置1において行われるゲーム処理の詳細を、図9~図12を用いて説明する。図9は、ゲーム装置1において実行されるゲーム処理の流れを示すメインフローチャートである。(略)
【0134】図12は、図9に示す表示処理(ステップS5)の流れを示すフローチャートである。(略)
【0136】一方、ステップS33において、CPU31は、失敗カウンタの値が所定の第1閾値N1よりも大きいか否かを判定する。ステップS33の処理は上述のステップS21の処理と同じである。ステップS33の判定結果が肯定である場合、ステップS34の処理が実行される。一方、ステップS33の判定結果が否定である場合、後述するステップS35の処理が実行される。
【0137】ステップS34において、CPU31は、警告画像を表示装置(上側LCD22)に表示させる。警告画像は、マーカ52の認識が所定期間連続して失敗していることをプレイヤに警告するための画像である。警告画像はどのような画像であってもよいが、撮像画像とは異なる、あるいは、撮像画像を含まない画像であることが好ましい。本実施形態においては、警告画像として、いわゆる砂嵐の画像(「マーカが認識されていません」等の文字を含んでもよい)が表示される。CPU31は、ゲームプログラム61において予め用意される動画あるいは静止画を警告画像として用いてもよい。ステップS34の後、CPU31は表示処理を終了する。
【0138】一方、ステップS35において、CPU31は、撮像画像とCG画像とを合成した合成画像を生成する。ここで、合成に用いられる撮像画像データは、認識済画像バッファ領域65に記憶されている撮像画像データ(認識済画像データ66)である。つまり、本実施形態においては、認識処理が成功した最新の撮像画像(前回に認識処理が成功した撮像画像)が合成画像の生成に用いられる。生成された合成画像のデータは、表示画像データ71としてメインメモリ32に記憶される。(略)
【0144】上記表示処理によれば、認識処理が成功している場合(ステップS31,S33,S36でNo)には、合成画像が表示される。また、認識処理が失敗した場合でも、第3閾値N3に相当する時間だけ連続して失敗するまでは、ステップS31,S33,およびS36の判定結果は否定となるので、合成画像が表示される。」
(6)「【0156】(警告画像を表示する条件に関する変形例)上記実施形態では、ゲーム装置1は、認識処理が所定時間連続して失敗したことを条件として、警告画像を表示するようにした。ここで、他の実施形態では、ゲーム装置1は、カメラ(ゲーム装置1)の動きを検知して、カメラが所定の基準以上動いていることが検知されたことを条件として、警告画像を表示するようにしてもよい。以下、カメラの動きを検知して警告画像を表示する変形例の詳細について説明する。
【0157】図13は、本実施形態における表示処理(ステップS5)の変形例を示すフローチャートである。なお、図13においては、図12と同じ処理については図12と同じステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0158】図13においては、ステップS33の判定結果が肯定である場合、ステップS41の処理が実行される。ステップS41において、CPU31は、カメラ(ゲーム装置1)の動きを検知する。ここで、動きを検知する方法はどのような方法でもよいが、例えば、ゲーム装置1が加速度センサあるいはジャイロセンサを備える場合には、CPU31はこれらのセンサによる検知結果を取得する。また、CPU31は、撮像画像から所定の対象(マーカとは別の物であってもよい)を認識し、撮像画像内における当該所定の対象の動きからカメラの動きを算出するようにしてもよい。ステップS41の次にステップS42の処理が実行される。
【0159】ステップS42において、CPU31は、カメラ(ゲーム装置1)の動きが所定の基準以上であるか否かを判定する。所定の基準としては、カメラの加速度(各速度)が所定値以上であることや、カメラの(単位時間当たりの)移動量が所定値以上であること等が考えられる。ステップS42判定結果が肯定である場合、ステップS34の処理が実行される。一方、ステップS42の判定結果が否定である場合、ステップS35の処理が実行される。
【0160】以上より、図13に示す変形例においては、カメラの動きが所定の基準よりも激しい場合、警告画像が表示され(ステップS34)、カメラの動きが所定の基準よりも緩やかである場合、合成画像が引き続き表示される。ここで、カメラが激しく動いた場合には、マーカ52が撮像範囲から外れて認識ができなくなっている可能性が高いと推測することができ、逆に、カメラがあまり動いていない場合には、マーカ52が撮像範囲内にあり、認識が再度成功する可能性があると推測することができる。したがって、本変形例によれば、認識が失敗した場合において、その後認識が再度成功する(認識の失敗が一時的なものである)と推測される場合には合成画像が引き続き表示され、認識が再度成功する見込みが少ない場合には警告画像が表示される。これによって、警告画像をより適切な状況で表示させることができる。」
2.引用発明
上記引用文献1に記載された発明について検討する。
(1)【0047】、【0048】には、引用文献1の画像表示プログラムが、情報処理装置であるゲーム装置にて実行されるプログラムであること、ゲーム装置はカメラを内蔵し、表示機能を備えることが記載されている。
(2)【0078】には、画像表示を含むプログラムであるゲームプログラムにより、カメラによって撮像された撮像画像にCG画像を合成して表示する画像合成処理が実行されることが記載され、【0081】には、画像合成処理が、撮像画像の中に含まれるマーカを認識する認識処理を実行し、マーカが認識された場合、認識されたマーカの形状および向き等から、カメラとマーカとの位置関係を算出し、位置関係に基づいて仮想空間における仮想カメラの位置および姿勢を算出し、仮想カメラの位置から仮想オブジェクトを見たCG画像を生成し、撮像画像に対して仮想オブジェクトのCG画像を合成して表示する処理であることが記載されている。
(3)【0108】には、連続して認識処理に失敗した場合に、最初に失敗してからの経過時間を表す失敗カウンタを用いることが記載されており、【0136】には、失敗カウンタの値が第1閾値より大きい場合、警告画面を表示することが記載されている。
また、【0144】には、認識処理が成功している場合には、合成画像が表示されること、認識処理に失敗した場合でも、第3閾値に相当する時間だけ連続して失敗するまでは、合成画像が表示されることが記載されているから、引用文献1の画像合成処理は、マーカを認識している場合、表示が継続されるものであることは自明である。
(4)【0156】~【0160】には、カメラが所定の基準以上動いていることが検知されたことを、警告画像を表示する表示条件として用いることが記載されている。
具体的には、【0158】に、図13のステップS33の判定結果が肯定である場合、すなわち、失敗カウンタの値が第1閾値より大きい場合、ゲーム装置に備わるセンサにより、カメラの動きを検知することが記載されており、【0159】には、前記所定の基準が、カメラの単位時間当たりの移動量が所定値以上であることが記載されている。
してみれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(a)、構成(b)などと称する。
(a)情報処理装置であるゲーム装置に、
(b)カメラによって撮像された撮像画像から、撮像画像の中に含まれるマーカを認識した場合、認識したマーカの形状および向き等から、カメラとマーカとの位置関係を算出し、位置関係に基づいて仮想空間における仮想カメラの位置および姿勢を算出し、仮想カメラの位置から仮想オブジェクトを見たCG画像を生成し、撮像画像に対して仮想オブジェクトのCG画像を合成して表示させる画像合成処理を行うとともに、マーカを認識している場合、前記画像合成処理を継続し、
(c)認識処理が失敗した場合、最初に失敗してからの経過時間を表す失敗カウンタのカウントを開始し、失敗カウンタの値が第1閾値を超えた場合、センサによりカメラの動きを検知して、カメラの単位時間当たりの移動量を求め、
(d)前記単位時間当たりの移動量が所定値未満である場合、前記画像合成処理を行い、
(e)前記単位時間当たりの移動量が前記所定値以上である場合、前記画像合成処理を行わず、警告画面を表示する、
(a)処理を実行させる画像表示プログラム。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)本願発明1の構成(A)と、引用発明の構成(a)との対比
引用発明における「情報処理装置であるゲーム装置」、「画像表示プログラム」は、本願発明1における「コンピュータ」、「表示制御プログラム」に相当するから、引用発明の構成(a)は、本願発明1の構成(A)に相当する。
(2)本願発明1の構成(B)、(C)と、引用発明の構成(b)との対比
引用発明における「カメラ」、「マーカ」、「CG画像」は、本願発明1の「撮像素子」、「基準物」、「画像モデル」に相当し、引用発明の「カメラによって撮像された撮像画像」は、本願発明1の「撮像素子から取得した撮像画像」に、引用発明の「撮像画像の中に含まれるマーカを認識した場合」は、本願発明1の「撮像画像内から基準物の像を認識した場合」にそれぞれ相当する。
また、引用発明において生成する「認識したマーカの形状および向き等から、カメラとマーカとの位置関係を算出し、位置関係に基づいて仮想空間における仮想カメラの位置および姿勢を算出し、仮想カメラの位置から仮想オブジェクトを見たCG画像」は、本願発明1の「前記基準物と前記撮像素子との位置関係に応じて調整された画像モデル」に相当するから、引用発明の「画像合成処理」は、本願発明1の「表示制御」に相当するといえる。
よって、引用発明の構成(b)は、本願発明1の構成(B)、(C)に相当する。
(3)本願発明1の構成(D)、(E)、(F)、(G)、(H)と、引用発明の構成(c)、(d)、(e)との対比
引用発明の構成(c)における「認識処理が失敗した場合、最初に失敗してからの経過時間を表す失敗カウンタのカウントを開始し、失敗カウンタの値が第1閾値を超えた場合」は、本願発明1の構成(G)及び(H)における「前記基準物を認識した後、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内より前記基準物が所定時間認識されず」との条件に対応するといえ、引用発明の構成(e)の「画像合成処理を行わず、警告画面を表示する」ことは、本願発明1の構成(H)の「表示制御を終了する」ことに対応するといえる。
また、引用発明の構成(c)の「センサによりカメラの動きを検知して、単位時間当たりのカメラの移動量を求め」ることと、本願発明1の構成(D)~(F)の手順により「移動変化量を求め」ることとは、「センサから撮像素子の移動に関わる量を求め」る点で共通するといえ、引用発明の構成(d)及び(e)において、「単位時間当たりの移動量」が「所定値未満」か「所定値以上」かを判定することと、本願発明1の構成(G)及び(H)において、「移動変化量」が「所定値未満」か「所定値以上」かを判定することとは、「撮像素子の移動に関わる量」が「所定値未満」か「所定値以上」かを判定する点で共通するといえる。
してみれば、引用発明の構成(c)~(e)と、本願発明1の構成(D)~(H)とは、「センサから撮像素子の移動に関わる量を求め、基準物を認識した後、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内より前記基準物が所定時間認識されず、かつ、前記撮像素子の移動に関わる量が所定値未満である場合に、表示制御を継続し、前記基準物を認識した後、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内より前記基準物が前記所定時間認識されず、かつ、前記撮像素子の移動に関わる量が前記所定値以上である場合に、前記表示制御を終了する」処理である点で共通する。
ただし、「撮像素子の移動に関わる量」が、本願発明1は、「撮像素子の移動に関わる計測値を、センサから単位時間ごとに取得し、前記計測値から、単位時間前の前記撮像素子の位置に対する変化を求め、複数単位時間経過後の前記撮像素子の位置に関わる変化の累積」から求められる「複数単位時間の開始時点における撮像素子の位置と前記複数単位時間経過後における前記撮像素子の位置との間の距離である移動変化量」であるのに対し、引用発明は、「センサによりカメラの動きを検知して」求められる「カメラの単位時間当たりの移動量」である点で相違する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
コンピュータに、
撮像素子から撮像画像を取得し、
前記撮像素子から取得した前記撮像画像内から基準物の像を認識した場合に、前記基準物と前記撮像素子との位置関係に応じて調整された画像モデルの表示制御を開始するとともに、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内より前記基準物が認識されている場合は前記表示制御を継続し、
センサから撮像素子の移動に関わる量を求め、
前記基準物を認識した後、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内より前記基準物が所定時間認識されず、かつ、前記撮像素子の移動に関わる量が所定値未満である場合に、前記表示制御を継続し、
前記基準物を認識した後、前記撮像素子から取得した前記撮像画像内より前記基準物が前記所定時間認識されず、かつ、前記撮像素子の移動に関わる量が前記所定値以上である場合に、前記表示制御を終了する、
処理を実行させることを特徴とする表示制御プログラム。
(相違点)
「撮像素子の移動に関わる量」が、本願発明1は、「撮像素子の移動に関わる計測値を、センサから単位時間ごとに取得し、前記計測値から、単位時間前の前記撮像素子の位置に対する変化を求め、複数単位時間経過後の前記撮像素子の位置に関わる変化の累積」から求められる「前記複数単位時間の開始時点における前記撮像素子の位置と前記複数単位時間経過後における前記撮像素子の位置との間の距離である移動変化量」であるのに対し、引用発明は、「センサによりカメラの動きを検知して」求められる「カメラの単位時間当たりの移動量」である点
(2)相違点についての判断
基準物が所定時間認識されない場合に画像モデルの表示制御を終了させる条件として、引用発明の「カメラの単位時間当たりの移動量」に代えて、上記相違点に係る「前記複数単位時間の開始時点における前記撮像素子の位置と前記複数単位時間経過後における前記撮像素子の位置との間の距離である移動変化量」を採用しようとする動機付けとなる記載は、引用文献1には見当たらない。また、本願出願前において当業者の周知技術であるともいえない。
したがって、上記相違点に係る構成は、引用文献1の記載から、当業者が容易に導出し得る事項とはいえず、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2-11について
本願発明2-7、10、11は、直接又は間接的に請求項1を引用しており、本願発明1の上記相違点に係る構成を備えているから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明8、9は、それぞれ本願発明1の表示制御プログラムに対応する表示制御方法、表示制御装置の発明であり、上記相違点に係る構成を備えているから、本願発明1と同様に、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
平成29年7月24日付けの補正により、補正後の請求項1-11は、「複数単位時間の開始時点における撮像素子の位置と前記複数単位時間経過後における前記撮像素子の位置との間の距離である移動変化量」を、基準物が所定時間認識されない場合に画像モデルの表示制御を終了させる条件として用いる、という技術的事項を有するものとなった。
上記第6において検討したとおり、当該事項は、原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献1)には記載されておらず、本願出願前における周知技術であるともいえないので、本願発明1-11は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-009332