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特許拒絶査定不服審判

2016-008245

サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法

審判番号
2016-008245
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-046531外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年06月03日
審決日
2017年04月10日
公報発行日
2017年05月26日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (G11B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012- 46531「サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月12日出願公開、特開2013-182648、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成24年3月2日の出願であって、平成27年8月7日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月1日付けで拒絶査定(謄本送達日平成28年3月8日)がなされ、これに対して平成28年6月3日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-7に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1及び6に係る発明は以下のとおりである(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)。 「【請求項1】 金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、前記配線層上に形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、 前記金属支持基板および前記絶縁層の開口部に、前記配線層の断線部が形成され、 前記開口部に、前記断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部を有する前記カバー層が形成されていることを特徴とするサスペンション用基板。」 「【請求項6】 金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、前記配線層上に形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、 前記金属支持基板および前記絶縁層の開口部に前記配線層が露出する中間部材を形成する中間部材準備工程と、 前記開口部から露出する前記配線層をエッチングすることで断線部を形成し、前記断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部を有する前記カバー層を形成する断線部形成工程と、 を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。」 第3 原査定の理由の概要 原査定の理由の概要は以下のとおりである。 この出願の請求項1-7に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 〈引用文献等一覧〉 1.特開2009-272549号公報 2.米国特許第6348661号明細書 3.特開平7-45919号公報(周知技術を例示する文献) 第4 当審の判断 1 引用例の記載事項 (1)原査定の拒絶の理由で引用された特開2009-272549号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付したものである。)。 ア 「【0028】 回路付サスペンション基板6は、製品形成領域2として区画される、長手方向に延びる、長尺な平板状に形成されている。また、回路付サスペンション基板6は、図2(a)に示すように、金属支持基板7と、ベース絶縁層8と、端子部としての端子14、配線15、およびめっきリード16を備える導体層としての導体パターン9と、カバー絶縁層10とを備えている。 【0029】 金属支持基板7には、端子14とめっきリード16とに対応して、2つの基板側開口部11が厚み方向を貫通するように形成されている。 【0030】 端子14側の基板側開口部11は、図1に示すように、平面視においてすべての端子14を含むように、幅方向に沿って延びる略矩形状に形成されている。 【0031】 めっきリード16側の基板側開口部11は、平面視において、端子14側の基板側開口部11に対して、回路付サスペンション基板6の長手方向一端部側に間隔を隔てて配置されている。めっきリード16側の基板側開口部11は、端子14側の基板側開口部11と平行して、すべてのめっきリード16を含むように、幅方向に沿って延びる略矩形状に形成されている。 【0032】 ベース絶縁層8は、平面視において、製品形成領域2と略同一形状に形成されている。 【0033】 また、ベース絶縁層8は、図2(a)に示すように、金属支持基板7の上に形成されている。ベース絶縁層8には、基板側開口部11に対応して、下側開口部12および上側開口部13が形成されている。 【0034】 下側開口部12は、平面視において、基板側開口部11と同じ大きさおよび配置で、ベース絶縁層8の厚み方向下側部分に形成されている。 【0035】 上側開口部13は、平面視において、下側開口部12より小さい相似形状で、下側開口部12と連通するように、ベース絶縁層8の厚み方向上側部分に形成されている。上側開口部13は、下方に向かって次第に幅狭となるテーパ形状に形成されている。 【0036】 導体パターン9は、ベース絶縁層8の上に形成されており、図1に示すように、複数(4つ)の端子14と、各端子14に対応するように各端子14から連続して形成される複数(4つ)の配線15と、各端子14に対応し、各配線15を介して、各端子14から連続して形成される複数(4つ)のめっきリード16とを備えている。 【0037】 各端子14は、平面視略矩形状に形成され、幅方向に沿って間隔を隔てて配置されている。また、各端子14は、図2(a)に示すように、その上下両面が露出するフライングリードとして形成されている。すなわち、端子14は、上側開口部13内に充填されるとともに、上側開口部13の周辺のベース絶縁層8の上に積層されており、中央部が周端部よりも下方へ凹んで形成されている。端子14の下面は、下側開口部12と上側開口部13との境界面と面一となるように配置され、下側開口部12および基板側開口部11から露出している。また、端子14の上面は、後述のカバー側開口部19から露出している。 【0038】 また、各端子14の露出されている中央部の上面および下面には、金属めっき層17が形成されている。 【0039】 なお、図1では、各端子14は、回路付サスペンション基板6の長手方向一端部に形成されているが、各端子14は、図示しないが、回路付サスペンション基板6の長手方向他端部にも形成されており、長手方向一端部の各端子14と長手方向他端部の各端子14とは、各配線15によって接続されている。 【0040】 各配線15は、図1に示すように、幅方向に沿って間隔を隔てて配置され、長手方向に沿って形成されている。また、各配線15は、長手方向一端部の各端子14と長手方向他端部の各端子14とを接続するように、長手方向に沿って形成されている。 【0041】 各めっきリード16は、回路付サスペンション基板6の長手方向一端部に形成されている。各めっきリード16は、図2(a)に示すように、その一端部はベース絶縁層8の上に形成され、その他端部(配線15側端部)は、めっきリード16側の上側開口部13に対応するように形成されている。すなわち、各めっきリード16の他端部は、めっきリード16側の上側開口部13の長手方向両端面を被覆するように、各めっきリード16の一端部および各配線15から連続して、下方に屈曲するように形成されている。また、各めっきリード16の他端部の長手方向中央部には、リード開口部18が形成されている。 【0042】 各リード開口部18は、図1に示すように、幅方向において、各めっきリード16と同じ幅方向長さになるように形成されている。すなわち、各リード開口部18は、各めっきリード16を切断している。 【0043】 カバー絶縁層10は、図1に示すように、各配線15を被覆し、各端子14および各めっきリード16を露出するように、ベース絶縁層8の上に形成されている。 【0044】 カバー絶縁層10は、ベース絶縁層8よりもやや小さな平面視略矩形状に形成されている。すなわち、カバー絶縁層10の長手方向端面および幅方向両端面は、ベース絶縁層8の長手方向端面および幅方向両端面よりも、長手方向および幅方向において内側に形成されている。カバー絶縁層10の長手方向一端面は、各めっきリード16が露出するように、各めっきリード16よりも長手方向他方側に配置されている。 【0045】 また、カバー絶縁層10には、各端子14を露出するカバー側開口部19が形成されている。」 イ 「【0075】 次いで、図3(f)に示すように、カバー絶縁層10をカバー側開口部19が形成される所定のパターンとして形成する。カバー絶縁層10を形成するための絶縁材料としては、ベース絶縁層8と同様の絶縁材料が用いられ、好ましくは、感光性ポリイミドが用いられる。カバー絶縁層10を形成するには、ベース絶縁層8の形成方法と同様の方法が用いられる。」 ウ 「【0096】 そして、この方法では、積層工程において、カバー側開口部19が開口されたカバー絶縁層10を形成することにより、端子14を露出し、第1エッチング工程において、金属支持基板7およびベース絶縁層8から端子14と同時にめっきリード16を露出させ、めっき工程において、露出させた端子14にめっきリード16から給電してめっきした後、第2エッチング工程において、金属支持基板7の外形加工と同時に、めっきリード16をエッチングしている。」 ここで、図1及び図2は、下記のとおりである。 したがって、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 「金属支持基板7と、ベース絶縁層8と、端子部としての端子14、配線15、およびめっきリード16を備える導体層としての導体パターン9と、カバー絶縁層10とを備える回路付サスペンション基板6であって、 金属支持基板7には、端子14とめっきリード16とに対応して、2つの基板側開口部11が厚み方向を貫通するように形成され、 めっきリード16側の基板側開口部11は、平面視において、端子14側の基板側開口部11に対して、回路付サスペンション基板6の長手方向一端部側に間隔を隔てて配置され、端子14側の基板側開口部11と平行して、すべてのめっきリード16を含むように、幅方向に沿って延びる略矩形状に形成され、 ベース絶縁層8には、基板側開口部11に対応して、下側開口部12および上側開口部13が形成され、 カバー絶縁層10は、カバー側開口部19が形成される所定のパターンとして形成され、 カバー絶縁層10は、各配線15を被覆し、各端子14および各めっきリード16を露出するように、ベース絶縁層8の上に形成され、 カバー絶縁層10は、ベース絶縁層8よりもやや小さな平面視略矩形状に形成され、カバー絶縁層10の長手方向端面および幅方向両端面は、ベース絶縁層8の長手方向端面および幅方向両端面よりも、長手方向および幅方向において内側に形成され、カバー絶縁層10の長手方向一端面は、各めっきリード16が露出するように、各めっきリード16よりも長手方向他方側に配置されており、 第2エッチング工程において、金属支持基板7の外形加工と同時に、めっきリード16をエッチングし、 各めっきリード16の他端部の長手方向中央部には、リード開口部18が形成され、 各リード開口部18は、各めっきリード16を切断している、回路付サスペンション基板6」 (2)原査定の拒絶の理由で引用された米国特許第6348661号明細書(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付したものである。)。 ア 「With reference now to the drawings, the invention is shown in FIGS.1-6. FIG.1 shows a panel 10 comprising multiple individually separable wireless flexures 12. As shown best in FIG.3, the panel and each flexure 12 therein comprises a laminate of a steel layer 14, an insulative plastic film layer 16, comprised suitably of a polyimide resin, and plural conductive traces 18, comprised suitably of copper, gold, silver or aluminum, and a plastic film cover layer 22.」 (第5欄第13行~第20行) (当審訳:「ここで図面を参照すると、本発明は、図1-6に示される。図1は、複数の個々に切り離し可能なワイヤレスフレクシャ12からなるパネル10を示す。図3に最も良く示されるように、パネル及び各フレクシャ12は、金属層14、好ましくはポリイミド樹脂からなる絶縁プラスチックフィルム層16、好ましくは銅、金、銀又はアルミニウムからなる複数の導電性配線18、及びプラスチックフィルムカバー層22の積層板からなる。」) イ 「Separating the flexures 12 from the panel 10 (singulating the flexures) involves detabbing or severing the continued extents 26 along a severing plane P normal to the longitudinal axis of the extents 26; this can result in exposing the conductive traces 18 (now plated) at the locus of severing which is coincident with the severing plane P.」(第5欄第27行~第33行) (当審訳:「フレクシャ12をパネル10から離すこと(フレクシャを単体化すること)は、タブを外す又は継続領域26を該領域26の長手方向の軸に垂直な切断面Pに沿って切り離すことを含み、これにより、切断面Pと一致する切断地点で(現在はめっきされている)導電性配線18を露出させる結果となり得る。」) ウ 「Portion 34 because of its reduced cross section will melt preferentially (differentially) when subjected to a current, see FIGS.5 and 6 where the trace terminals 36, 38 are shown after melting from current passage. In FIG.5 the plastic film layer 16 has been fused by the heat of the melting portions 34 and covered over or encased the terminals 36 that are retained by the flexure 12 while the other terminals 38 are thrown away with non flexure parts of the panel 10. The invention manufacturing process thus includes defining a plurality of flexures 12 in the laminate panel 10, each having a predetermined perimeter 24 that is spaced from the predetermined perimeters of adjacent flexures, maintaining a continued extent 26 of the conductive traces 18 across their respective flexure predetermined perimeters to electrically connect the conductive traces to a common conductor 32, and separating the conductive traces of individual flexures from the laminate panel by selectively melting the trace continued extents to sever the individual flexure conductive traces from the remainder of the flexures defined in the laminate and melt adjacent plastic film thereonto in exposed conductive trace-free relation. Suitably the current is applied at the contact pads 28 while maintaining the panel grounded, using a sufficient current from the pads to ground through the continued extent portions 34 to differentially melt the portions selectively from the remainder of the trace conductors. The invention thus provides a better solution to the problem of environmental corrosion of exposed copper conductive traces in wireless flexures and lessens or eliminate results of such corrosion including contaminating aerosols and shunting of conductors with an improved wireless flexure manufacturing process in which the continued extents of the trace conductors at the locus of severing are electrical heat-severed to free each flexure from the panel of flexures and to encased the trace terminals in insulating plastic film. The invention provides in the course of a laminate flexure manufacturing operation a part that has its copper continually encased with plastic film, and in a preferred embodiment, totally free of exposed copper, such that particles or conductive paste associated with the copper conductors are isolated from the environment and blocked from creating harm.」(第5欄第44行~第6欄第19行) (当審訳:「部分34は、削減された横断面のために、電流が流れると選択的に(特異的に)融解する。図5及び6は、電流の通過によって融解した後の配線の端部36、38を示している。図5において、プラスチックフィルム層16は、融解部分34の熱によって溶けてフレクシャ12に保持される終端36を完全に覆い、包み込み、同時に他の終端38はパネル10のフレクシャ以外の部品と一緒に捨てられる。 本発明に係る製造プロセスは、このように、積層パネル10に複数のフレクシャ12を配置すること、各々が予め定められた外周24を有し、該外周24は隣接するフレクシャの予め定められた外周から距離を空けて配置されていること、導電性配線を共通導体32に電気的に接続するために、各フレクシャの予め定められた外周と交わるように導電性配線18の継続領域26を維持すること、及び、個々のフレキシャの導電性配線を、積層板に配置されたフレクシャの残りの部分から個々のフレキシャの導電性配線を切断し、導電性配線が露出しないように隣接したプラスチックフィルムを融解するべく、配線継続領域を選択的に溶かすことによって積層パネルから外すこと、を含む。 好ましくは、パネルを接地した状態で、配線導体の残りの部分から継続領域部分34を選択的に融解するために、該部分34を通じてパッドからグラウンドに十分な電流を使用して、接続パッド28に電流が流される。 本発明は、このように、ワイヤレスフレクシャにおいて露出した銅製の導電性配線の環境腐食の問題に対するより良い解決策を提供するものであり、改良されたワイヤレスフレクシャ製造プロセスにより、汚染エアロゾル及び導体の短絡を含むそのような腐食を減少させ除外するものであり、本発明では、各フレクシャをフレクシャのパネルから外し、絶縁プラスチックフィルムで配線終端を包み込むために、配線導体の継続領域は、切断地点において電気的に熱切断される。本発明は、積層フレクシャ製造工程において、継続的に銅をプラスチックフィルムで包む部分を提供し、好ましい実施例では、露出する銅が皆無であり、これにより、粒子又は銅導体と関係のある導体ペーストが環境から隔離され、害から阻止される。」) ここで、図5及び図6は、下記のとおりである。 図5 図6 したがって、引用例2には、汚染エアロゾル及び導体の短絡を含む、露出した銅製の導電性配線の環境腐食の問題を解決するための、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 「金属層14、好ましくはポリイミド樹脂からなる絶縁プラスチックフィルム層16、好ましくは銅、金、銀又はアルミニウムからなる複数の導電性配線18、及びプラスチックフィルムカバー層22の積層板からなるフレクシャ12であって、 フレクシャ12をパネル10から離すこと(フレクシャを単体化すること)は、継続領域26を該領域26の長手方向の軸に垂直な切断面Pに沿って切り離すことを含み、 各フレクシャをフレクシャのパネルから外し、絶縁プラスチックフィルムで配線終端を包み込むために、配線導体の継続領域は、切断地点において電気的に熱切断され、 部分34は、削減された横断面のために、電流が流れると選択的に(特異的に)融解し、 プラスチックフィルム層16は、融解部分34の熱によって溶けてフレクシャ12に保持される配線の終端36を完全に覆い、包み込む、フレクシャ12」 (3)原査定において周知技術を例示する文献として引用された特開平7-45919号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付したものである。)。 ア 「【0003】 このようなフィルムキャリアやプリント回路基板においては、耐熱性,機械的強度,寸法安定性等に優れたポリイミド系樹脂フィルムからなるベース層に、導体回路パターンを積層した回路基板構造が一般的に用いられる。そして、その用途や導通形式によって、回路面上に絶縁樹脂を積層して絶縁保護したり、または、これらベース層や絶縁保護層を局部的に除去し、回路端子を接続用として露出させる必要がある。さらに、接続に際して容易に位置合わせを行なうため、視覚確認が可能な形状に加工する場合や、ガイド孔,ガイド溝を上記ベース層や絶縁保護層に設ける場合も多い。」 イ 「【0007】 【作用】エッチング液に対して溶解速度の異なるポリイミド系樹脂層を用いて回路パターンを挟む回路基板構造によって、両面がポリイミド系樹脂層でありながら、同一エッチング液中において、片方の層だけが選択的に除去される。」 ウ 「 【0009】 回路パターン2を挟むポリイミド系樹脂層1と3は、同一エッチング液に対して溶解速度が相異なる以外は、形状や機械的性質等において同様のものであってもよいが、通常は溶解速度の遅い方の層をベース層、溶解速度の速い方の層を保護層とする場合が多い。」 図2 したがって、引用例3には、ベース層や絶縁保護層を局部的に除去して回路端子を接続用として露出させる場合、接続に際して容易に位置合わせを行なうために視覚確認が可能な形状に加工する場合、ガイド孔,ガイド溝を上記ベース層や絶縁保護層に設ける場合に用い得る、以下の技術事項が記載されている。 「同一エッチング液に対して溶解速度の遅い方の層をベース層、溶解速度の速い方の層を保護層として回路パターンを挟んだ回路基板構造により、同一エッチング液で保護層を選択的に除去すること」 2 引用発明1を主引例とした場合の対比、判断 (1) 本願発明と引用発明1との対比 ア 引用発明1の「回路付サスペンション基板6」は、「金属支持基板7と、ベース絶縁層8と、端子部としての端子14、配線15、およびめっきリード16を備える導体層としての導体パターン9と、カバー絶縁層10と」を備えるから、本願発明にいう「サスペンション用基板」に対応するものといえ、引用発明1の「金属支持基板7」、「ベース絶縁層8」、「配線15、およびめっきリード16を備える導体層としての導体パターン9」及び「カバー絶縁層10」は、それぞれ本願発明の「金属支持基板」、「絶縁層」、「配線層」及び「カバー層」に相当する。 イ 引用発明1の「金属支持基板7」には、「めっきリード16側の基板側開口部11」が形成され、該「めっきリード16側の基板側開口部11」は、平面視において、端子14側の基板側開口部11に対して、回路付サスペンション基板6の長手方向一端部側に間隔を隔てて配置される。 また、引用発明1の「ベース絶縁層8」には、基板側開口部11に対応して「下側開口部12および上側開口部13」が形成される。 そして、引用発明1の「カバー絶縁層10」は、カバー側開口部19が形成される所定のパターンとして形成されるものであり、各配線15を被覆し、各端子14および各めっきリード16を露出するように、ベース絶縁層8の上に形成され、該「カバー絶縁層10」の長手方向一端面は、各めっきリード16が露出するように、各めっきリード16よりも長手方向他方側に配置される。 ここで、図1及び図2も参照すれば、「めっきリード16側の基板側開口部11」及びこれと対応して形成された「下側開口部12および上側開口部13」の位置には、「カバー絶縁層10」が存在しないことが認められる。 そうすると、「開口部」に「カバー層」が形成されているかどうかは別として、引用発明1の「めっきリード16側の基板側開口部11」及び「下側開口部12および上側開口部13」は、本願発明にいう「前記金属支持基板および前記絶縁層の開口部」に対応するものといえる。 ウ 引用発明1の「リード開口部18」は、各めっきリード16の他端部の長手方向中央部に形成され、「めっきリード16側の基板側開口部11」及び「下側開口部12および上側開口部13」の位置で各めっきリード16を切断しているから、本願発明と同様に、「前記金属支持基板および前記絶縁層の開口部に、前記配線層の断線部が形成されている」ことが認められる。 したがって、本願発明と引用発明1の一致点・相違点は、次のとおりである。 [一致点] 金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、前記配線層上に形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、 前記金属支持基板および前記絶縁層の開口部に、前記配線層の断線部が形成されていることを特徴とするサスペンション用基板。」 [相違点] 本願発明では、「前記開口部に、前記断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部を有する前記カバー層が形成されている」のに対し、引用発明1では、開口部には、カバー層が存在しない点。 (2)判断 引用発明2(上記1(2)参照)は、汚染エアロゾル及び導体の短絡を含む、露出した銅製の導電性配線の環境腐食の問題を解決するために、配線導体の切断地点を電気的に熱切断し、融解部分34の熱によって溶けたプラスチックフィルム層16によって、切断された配線の終端36を完全に覆い、包み込むものである。 そうすると、引用発明2の「切断地点」及び「プラスチックフィルム層16」は、それぞれ本願発明にいう「断線部」及び「カバー層」に対応するといえるものの、引用発明2の「切断地点」には、本願発明にいう「開口部」は存在せず、引用発明2の「プラスチックフィルム層16」には、本願発明にいう「断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部」もない。 してみれば、断線部を形成する開口部にカバー層が存在しない引用発明1に、「開口部」が存在しない引用発明2を適用することはできないし、仮に適用できたとしても、「前記開口部に、前記断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部を有する前記カバー層」が形成されることはないから、上記相違点に係る構成に至らないことは明らかである。 また、引用例3に記載された技術事項は、エッチングにより保護層を選択的に除去して回路パターンを露出させるものであって、「前記断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部を有する前記カバー層」を示唆するものではないから、仮に当該技術事項が周知であったとしても、引用発明1において、引用例2に記載の上記「汚染エアロゾル及び導体の短絡を含む、露出した銅製の導電性配線の環境腐食の問題」に対して、上記相違点に係る構成を想到することが容易であるともいえない。 したがって、本願発明は、当業者が引用文献1-3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 (3)請求項2-7に係る発明について 請求項6に係る発明は、「前記開口部から露出する前記配線層をエッチングすることで断線部を形成し、前記断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部を有する前記カバー層を形成する断線部形成工程」を有する「サスペンション用基板の製造方法」であって、露出する配線層のエッチングにより「開口部」に「前記断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部を有する前記カバー層を形成」する点を含む発明である。 よって、上記(2)で判断したのと同様の理由により、当業者が引用文献1-3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 また、請求項2-5に係る発明は、請求項1に係る発明をさらに限定したものであり、請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明をさらに限定したものであるから、同様に、当業者が引用文献1-3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 3 引用発明2を主引例とした場合の対比、判断 (1)本願発明と引用発明2との対比 ア 引用発明2の「フレクシャ12」は、「金属層14、好ましくはポリイミド樹脂からなる絶縁プラスチックフィルム層16、好ましくは銅、金、銀又はアルミニウムからなる複数の導電性配線18、及びプラスチックフィルムカバー層22の積層板からなるフレクシャ12」であるから、本願発明にいう「サスペンション用基板」に対応するものといえ、引用発明2の「金属層14」、「絶縁プラスチックフィルム層16」、「導電性配線18」及び「プラスチックフィルムカバー層22」は、それぞれ本願発明の「金属支持基板」、「絶縁層」、「配線層」及び「カバー層」に相当する。 イ 引用発明2の「導電性配線」は、切断地点において電気的に熱切断され、継続領域26の長手方向の軸に垂直な切断面Pに沿って切り離され、切断された導電性配線の終端は、融解部分34の熱によって溶けたプラスチックフィルム層16により、完全に覆われ、包み込まれるから、本願発明のように、「金属支持基板および絶縁層の開口部」に「前記断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部を有する前記カバー層が形成され」るかどうかは別として、本願発明と引用発明2とは、「前記配線層の断線部が形成され」る点で共通する。 したがって、本願発明と引用発明2の一致点・相違点は、次のとおりである。 [一致点] 金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、前記配線層上に形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、 前記配線層の断線部が形成されることを特徴とするサスペンション用基板。 [相違点] 本願発明では、「前記金属支持基板および前記絶縁層の開口部」に断線部が形成され、「前記開口部に、前記断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部を有する前記カバー層が形成されている」のに対し、引用発明2では、開口部は存在せず、切断地点において、融解部分34の熱によって溶けたプラスチックフィルム層が、切断された導電性配線の終端を完全に覆い、包み込む点。 (2)判断 引用発明1は、第2エッチング工程において、金属支持基板7の外形加工と同時に、めっきリード16をエッチングするものであり、図1及び図2(a)からも明らかなように、リード開口部18において、カバー絶縁層は存在せず、めっきリード16の切断面が露出することを許容するものといえる。 一方、引用発明2は、汚染エアロゾル及び導体の短絡を含む、露出した銅製の導電性配線の環境腐食の問題を解決するべく、絶縁プラスチックフィルムで配線終端を包み込むために導電性配線を電気的に熱切断する方法を採用するものであるから、該熱切断する方法に代えて、敢えて、上記引用発明1のエッチングによる切断方法を採用する動機があるとはいえない。 また、仮に採用することができたとしても、リード開口部18にはカバー絶縁層が存在しないのであるから、「前記開口部に、前記断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部を有する前記カバー層が形成」されるとする上記相違点に係る構成に至らないことは明らかである。 さらに、上記2(2)で述べたとおり、引用例3に記載された技術事項は、「前記断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部を有する前記カバー層」を示唆するものではないから、仮に当該技術事項が周知であったとしても、 引用発明2に引用発明1を適用するにあたり、露出した銅製の導電性配線の環境腐食という引用発明2の課題に鑑みて、さらに引用発明1のリード開口部18にカバー層を設けて相違点2に係る構成とすることを、当業者が容易に想到し得るとすることはできない。 したがって、本願発明は、当業者が引用文献1-3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 (3)請求項2-7に係る発明について 請求項6に係る発明は、「前記開口部から露出する前記配線層をエッチングすることで断線部を形成し、前記断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部を有する前記カバー層を形成する断線部形成工程」を有する「サスペンション用基板の製造方法」であって、「開口部」に断線部を形成し、これによって「前記断線部に存在していた前記配線層の形状が転写された転写部を有する前記カバー層を形成」する点を含む発明である。 よって、上記(2)で判断したのと同様の理由により、当業者が引用文献1-3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 また、請求項2-5に係る発明は、請求項1に係る発明をさらに限定したものであり、請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明をさらに限定した ものであるから、同様に、当業者が引用文献1-3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1-7に係る発明は、いずれも、当業者が引用文献1-3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-008245

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