特許拒絶査定不服審判
2016-002424
電気的構成素子及びその製造方法
- 審判番号
- 2016-002424
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-546366外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年02月17日
- 審決日
- 2017年03月13日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】エプコス アーゲー
- 【請求人代理人】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H01C) / P18 .537-WY (H01C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-546366「電気的構成素子及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月20日国際公開、WO2013/087243、平成27年 2月26日国内公表、特表2015-506103、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は、2012年10月2日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2011年12月16日 ドイツ(DE))を国際出願日とする特許出願であって、平成27年6月25日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年9月25日付けで手続補正がなされたが、同年10月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年2月17日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされた。
その後、当審の平成28年11月15日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成29年2月3日付けで手続補正がなされたものである。
第2.本願の特許請求の範囲について
本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成29年2月3日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
基体(2)、前記基体(2)に直接接触する金属質接点構造(3)、及び開口(4)を設けた電気絶縁性の不動態層(5)を有する電気的構成素子(1)であって、前記金属質接点構造(3)は前記開口(4)を経て外部接点(6)に接続し、また前記外部接点(6)は可撓性金属複合層(7)により掩蔽及び包被し、前記外部接点(6)は、前記開口(4)内に少なくとも部分的に配置し、前記金属質接点構造(3)と前記外部接点(6)とは異なる構成要素であり、前記可撓性金属複合層(7)は、前記不動態層(5)の部分領域に直接接触する、電気的構成素子。
【請求項2】
請求項1記載の電気的構成素子において、前記外部接点(6)は、少なくとも部分的に不動態層(5)に塗布する、電気的構成素子。
【請求項3】
請求項1~2のうちいずれか一項記載の電気的構成素子において、前記金属質接点構造(3)は前記基体(2)内に突入する、電気的構成素子。
【請求項4】
請求項3記載の電気的構成素子において、前記金属質接点構造(3)は少なくとも1個の内部電極(31)を有し、又は金属化ビア(32)として構成する、電気的構成素子。
【請求項5】
請求項1~2のうちいずれか一項記載の電気的構成素子において、前記金属質接点構造(3)を前記基体(2)の外面に塗布し、また外部接点(6)は前記金属質接点構造(3)を介して前記基体(2)に電気的に接触する、電気的構成素子。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか一項記載の電気的構成素子において、前記基体(2)は、セラミック材料及び/又は半導体材料を含む、電気的構成素子。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか一項記載の電気的構成素子において、前記不動態層(5)は、ガラス及び/又はセラミック材料を含む、電気的構成素子。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか一項記載の電気的構成素子において、前記可撓性金属複合層(7)は、合成材料、とくに、ポリマーを有する、電気的構成素子。
【請求項9】
請求項1~8のうちいずれか一項記載の電気的構成素子において、前記可撓性金属複合層(7)の前記基体(2)側とは反対側に第1保護層(8)を配置する、電気的構成素子
。
【請求項10】
請求項9記載の電気的構成素子において、前記第1保護層(8)上に第2保護層(9)を配置する、電気的構成素子。
【請求項11】
請求項10記載の電気的構成素子において、前記第1保護層(8)はニッケルを含み、また前記第2保護層(9)は錫を含む、電気的構成素子。
【請求項12】
請求項1~11のうちいずれか一項記載の電気的構成素子を製造する方法であって、
・金属質接点構造(3)並びに電気絶縁性の不動態層(5)を設けた基体(2)を準備するステップと、
・前記外部接点(6)が前記金属質接点構造(3)に直接電気的に接触するよう、前記基体(2)上にスクリーン印刷法、スパッタ法又は浸漬プロセスによって、外部接点(6)を塗布するステップと、
・前記外部接点(6)が可撓性金属複合層(7)により掩蔽及び包被されるよう、可撓性金属複合層(7)をスクリーン印刷法又は浸漬プロセスによって塗布するステップと、
を有する、方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、前記外部接点(6)の塗布後、及び/又は前記可撓性金属複合層(7)の塗布後に、熱処理を行う、方法。
【請求項14】
基体(2)、前記基体(2)に直接接触する金属質接点構造(3)、及び開口(4)を設けた電気絶縁性の不動態層(5)を有する電気的構成素子(1)であって、前記金属質接点構造(3)は前記開口(4)を経て外部接点(6)に接続し、また前記外部接点(6)は可撓性金属複合層(7)により掩蔽及び包被し、前記外部接点(6)は、前記開口(4)内に少なくとも部分的に配置し、前記金属質接点構造(3)と前記外部接点(6)とは異なる構成要素であり、前記金属質接点構造(3)を前記基体(2)の外面に塗布し、また外部接点(6)は前記金属質接点構造(3)を介して前記基体(2)に電気的に接触する、電気的構成素子。」
第3.当審の拒絶の理由について
1.当審拒絶理由の概要
当審において平成28年11月15日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。
1-1.理由1(特許法第29条第2項)
本件出願の請求項1,2,4,5,7~14に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用例1~4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特開平9-162064号公報
2.特開平4-257211号公報
3.特開平10-284343号公報
4.特開平11-162771号公報
1-2.理由2(特許法第36条第6項第1号・第2号違反)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号・第2号に規定する要件を満たしていない。
記
(1)請求項6において、「・・前記金属質接点構造(3)を前記基体(2)の外面に塗布し、・・」とあるが、
(a)上記記載事項と、引用する請求項4の「前記金属質接点構造(3)は前記基体(2)内に突入する・・」なる記載事項との関係が不明(技術内容的に齟齬するのでは?)であり、また、双方の記載事項を備えるものは発明の詳細な説明に記載されていないといえ、
(b)同様に、上記記載事項と、引用する請求項5の「前記金属質接点構造(3)は少なくとも内部電極(31)を有し、又は金属化ビア(32)として構成する・・」なる記載事項との関係が不明(技術内容的に齟齬するのでは?)であり、また、双方の記載事項を備えるものは発明の詳細な説明に記載されていないといえる。
これらの点において、請求項6に係る発明は明確なものでないとともに、発明の詳細な説明に記載されたものとも認められない。
(もし、双方の記載事項を備えるものは発明の詳細な説明に記載され、技術的にも齟齬しないというのであれば、意見書において、その根拠となる発明の詳細な説明中の記載箇所を指摘するとともにその理由を詳細に説明されたい。)
2.当審拒絶理由についての判断
2-1.理由1(特許法第29条第2項)について
(1)本願の請求項1に係る発明について
平成29年2月3日付け手続補正により、独立形式で記載された補正後の請求項1は、補正前の請求項1に対して、「理由1」の対象とされていない補正前の請求項3に記載の特定事項が付加されたものとなった。
したがって、請求項1に係る発明は、もはや当該「理由1」には該当せず、引用例1~4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない〔具体的には、引用例1~4からは、補正前の請求項3に記載の特定事項であった「前記可撓性金属複合層(7)は、前記不動態層(5)の部分領域に直接接触する」という点を導き出すことができない。〕。
(2)本願の請求項2ないし13に係る発明について
請求項2ないし13に係る発明は、請求項1に従属する請求項であり、請求項2ないし13に係る発明は、請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含みさらに発明特定事項を追加して限定するものであるから、上記(1)と同じ理由により、引用例1~4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)本願の請求項14に係る発明について
平成29年2月3日付け手続補正により新たに追加された、独立形式で記載された請求項14は、補正前の請求項1に対して、「理由1」の対象とされていない補正前の請求項6(補正後の請求項5)に記載の特定事項が付加されたものである。
したがって、請求項14に係る発明は、当該「理由1」には該当せず、引用例1~4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない〔具体的には、引用例1~4からは、補正前の請求項6(補正後の請求項5)に記載の特定事項である「前記金属質接点構造(3)を前記基体(2)の外面に塗布し、また外部接点(6)は前記金属質接点構造(3)を介して前記基体(2)に電気的に接触する」という点を導き出すことができない。〕。
2-2.理由2(特許法第36条第6項第1号・第2号違反)について
平成29年2月3日付け手続補正により特許請求の範囲が補正され、具体的には、
上記「(1)(a)(b)」の指摘事項に対して、請求項5(補正前の請求項6)において、「請求項1~5のうちいずれか一項記載の電気的構成素子において・・」とあったのを、「請求項1~2のうちいずれか一項記載の電気的構成素子において・・」とする補正、すなわち、請求項3、4(補正前の請求項4、5)を引用しないものとする補正がなされ、技術的に齟齬するとみられる双方の記載事項を備えるものではなくなった。
したがって、「理由2」で指摘した不備な点は解消され、本件出願は、特許法第36条第6項第1号・第2号に規定する要件を満たしているものと認められる。
3.当審拒絶理由についてのむすび
以上のとおりであるから、当審で通知した拒絶理由(理由1、理由2)によっては、本願を拒絶することはできない。
第4.原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
(進歩性)この出願の請求項1~14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特開2010-80703号公報
2.特開平4-257211号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平10-284343号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平11-162771号公報(周知技術を示す文献)
2.原査定の理由についての判断
2-1.本願の請求項1に係る発明について
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-80703号公報(以下、「引用例」という。)には、「セラミック積層電子部品」について、図面とともに以下の各記載がある(下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
主としてセラミックスからなる素体と、
前記素体の内部に設けられ、かつ前記素体の端面から突出した内部電極と、
前記素体の表面を被覆するガラス層と、
前記素体の端面における前記ガラス層上に形成された下地電極と、を有し、
前記内部電極が、前記ガラス層を貫通して前記下地電極の内部に達しており、前記下地電極に達した前記内部電極の端部は、前記素体の内部の内部電極に比べて太い、
セラミック積層電子部品。」
イ.「【0006】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、素体の表面をガラス層により確実に保護しつつ、内部電極と下地電極との良好な電気的接続を確保することができるセラミック積層電子部品およびその製造方法を提供することにある。」
ウ.「【0008】
上記の構成では、内部電極が、ガラス層を貫通して下地電極の内部に達していることから、内部電極と下地電極との電気的導通が確実となっている。また、下地電極に達した内部電極の端部は、素体の内部の内部電極に比べて太いことから、下地電極と内部電極との接触面積が増え、両者の接触抵抗が低減する。本願発明では、ガラス層は、ガラスペーストの塗布及び焼成により形成される。ガラスペーストを焼成すると、本願発明者らの知見によれば、未だ詳細な作用機序は不明なものの、内部電極の形成部位(内部電極の露出部位)において自己整合的に開口を有するガラス層が形成される。この結果、内部電極と下地電極との電気的導通が確実となる。そして、開口部位において下地電極から内部電極へと確実に金属が供給されることにより、カーケンドール効果により、内部電極の端部が下地電極に向かって突出するだけでなく、太くなるものと考えられる。」
エ.「【0015】
<第1実施形態>
図1は、本発明によるセラミック積層電子部品の第1実施形態の概略構造を示す断面図である。
セラミック積層電子部品1は、セラミックスからなる素体2と、素体2内に形成された複数の内部電極3とを含む積層体4を有する。より具体的には、素体2の一方の側面(端面)から突出した端部を有する内部電極3と、素体2の他方の側面から突出した端部を有する内部電極3とが、素体2を介在させて交互に積層されている。素体2の表面には、素体2を被覆するガラス層6が形成されており、素体2の両側面に相当する部位におけるガラス層6上には、下地電極7が形成されている。
【0016】
内部電極3は、ガラス層6を貫通し、下地電極7の内部に達している。さらに、内部電極3の端部3aは、素体2中の内部電極3の幅に比べて太いことがわかる。このように、内部電極3の端部3aが太くなっていることにより、内部電極3の端部3aと下地電極7との接触面積を増やすことができ、両者の接触抵抗を低減することができる。」
オ.「【0035】
また、上述したセラミック積層電子部品1の製造方法によれば、ガラスペーストの塗布および焼成により、素体2の表面にガラス層6を形成することにより、内部電極3の露出部位において自己整合的にガラス層6に開口6aが形成され、この結果、内部電極3と下地電極7との電気的導通が確実となる。そして、開口6aの部位において下地電極7から内部電極3へと確実に金属が供給されることにより、カーケンドール効果により、内部電極3の端部3aが下地電極7に向かって突出するだけでなく、太くなる。これにより、内部電極3と下地電極7との導通が確実なものとなる。」
・上記引用例に記載の「セラミック積層電子部品」は、上記「ア.」「エ.」の記載事項、及び図1によれば、主としてセラミックスからなる素体2と、素体2の内部に設けられ、かつ素体2の端面から突出した複数の内部電極3と、素体2の表面を被覆するガラス層6と、素体2の端面におけるガラス層6上に形成された下地電極7と、を有するセラミック積層電子部品に関するものである。
・上記「イ.」、「ウ.」、「オ.」の記載事項、及び図1、図3によれば、ガラス層6は、素体の表面を保護するためのものであり、複数の内部電極3の露出部位それぞれにおいて自己整合的に開口6aが形成されてなるものである。
・上記「ア.」、「ウ.」~「オ.」の記載事項、及び図1によれば、各内部電極3は、その端部が下地電極7に向かってガラス層6の開口6aを経て突出することにより、ガラス層6を貫通して下地電極7の内部に達してなるものである。
したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「主としてセラミックスからなる素体と、
前記素体の内部に設けられ、かつ前記素体の端面から突出した複数の内部電極と、
前記素体の表面を保護するために当該表面を被覆するガラス層であって、前記複数の内部電極の露出部位それぞれにおいて自己整合的に開口が形成されたガラス層と、
前記素体の端面における前記ガラス層上に形成された下地電極と、を有するセラミック積層電子部品であって、
前記複数の内部電極は、それぞれその端部が前記下地電極に向かって前記ガラス層の前記開口を経て突出することにより、前記ガラス層を貫通して前記下地電極の内部に達している、セラミック積層電子部品。」
(2)対比
そこで、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と引用発明とを対比すると、
ア.引用発明における「主としてセラミックスからなる素体と、前記素体の内部に設けられ、かつ前記素体の端面から突出した複数の内部電極と、前記素体の表面を保護するために当該表面を被覆するガラス層であって、前記複数の内部電極の露出部位それぞれにおいて自己整合的に開口が形成されたガラス層と、前記素体の端面における前記ガラス層上に形成された下地電極と、を有するセラミック積層電子部品であって、前記複数の内部電極は、それぞれその端部が前記下地電極に向かって前記ガラス層の前記開口を経て突出する・・」によれば、
(a)引用発明における「素体」は、本願発明1でいう「基体(2)」に相当し、
(b)引用発明における「内部電極」は、金属質のものであること、及び基体の内部に設けられるものであるから、基体に直接接触するものであること、は明らかであり、本願発明1でいう「金属質接点構造(3)」に相当するといえ、
(c)引用発明における「ガラス層」は、素体の表面を保護するためのものであって、複数の内部電極の露出部位に対応して開口を有し、そして、各開口それぞれを内部電極が通っており技術常識からしても、電気絶縁性のものであることは自明といえることであるところ、本願発明1でいう「不動態層(5)」にあっても、発明の詳細な説明(例えば段落【0006】)を参照するに、電気的構成素子を例えば腐食から保護するためのものであり、ガラス及び/又はセラミック材料から構成されるものである。
以上を踏まえると、引用発明における「ガラス層」は、本願発明1でいう「不動態層」に相当するものであるということができる。
(d)そして、引用発明における「セラミック積層電子部品」は、本願発明1でいう「電気的構成素子(1)」といえるものであることは明らかである。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「基体(2)、前記基体(2)に直接接触する金属質接点構造(3)、及び開口(4)を設けた電気絶縁性の不動態層(5)を有する電気的構成素子(1)」である点で一致する。
イ.引用発明における「前記素体の端面における前記ガラス層上に形成された下地電極と、を有するセラミック積層電子部品であって、前記複数の内部電極は、それぞれその端部が前記下地電極に向かって前記ガラス層の前記開口を経て突出することにより、前記ガラス層を貫通して前記下地電極の内部に達している・・」によれば、
引用発明の「内部電極」は、ガラス層の開口を経て下地電極に接続していること、及び引用発明の「内部電極」と「下地電極」とは異なる構成要素であること、は明らかである。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記金属質接点構造(3)は前記開口(4)を経て外部接点(6)に接続し、前記金属質接点構造(3)と前記外部接点(6)とは異なる構成要素である」点で共通するといえる。
ただし、
・本願発明1では、「前記外部接点(6)は可撓性金属複合層(7)により掩蔽及び包被」し、「前記可撓性金属複合層(7)は、前記不動態層(5)の部分領域に直接接触する」旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有してない点、
・外部接点(6)について、本願発明1では、「前記開口(4)内に少なくとも部分的に配置」される旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有してない点、
で相違している。
よって、本願発明1と引用発明とは、
「基体(2)、前記基体(2)に直接接触する金属質接点構造(3)、及び開口(4)を設けた電気絶縁性の不動態層(5)を有する電気的構成素子(1)であって、前記金属質接点構造(3)は前記開口(4)を経て外部接点(6)に接続し、前記金属質接点構造(3)と前記外部接点(6)とは異なる構成要素である、電気的構成素子。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明1では、「前記外部接点(6)は可撓性金属複合層(7)により掩蔽及び包被」し、「前記可撓性金属複合層(7)は、前記不動態層(5)の部分領域に直接接触する」旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有してない点。
[相違点2]
外部接点(6)について、本願発明1では、「前記開口(4)内に少なくとも部分的に配置」される旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有してない点。
(3)判断
まず、上記[相違点2]について検討すると、
引用発明は、内部電極について、その端部を下地電極に向かってガラス層の開口を経て突出させることにより、ガラス層を貫通して下地電極の内部に達するようにしたことを前提とするものである。
したがって、引用発明にあっては、ガラス層の開口内は必ず内部電極で埋まっており、当該開口内に下地電極を部分的に配置することはできない(当該開口内に下地電極を部分的に配置する構成に変更することには阻害要因があるといえる)。
よって、本願発明1における、外部接点(6)を開口(4)内に少なくとも部分的に配置するという発明特定事項については、引用例から導き出すことはできない。
また、原査定の拒絶の理由において、周知技術(外部電極を覆うように本願発明1でいう「可撓性金属複合層」を設けること)を示す文献として引用された他の引用例(特開平4-257211号公報、特開平10-284343号公報、及び特開平11-162771号公報)のいずれからも、上記記発明特定事項を導き出すことはできない。
以上のことから、他の相違点(相違点1)について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2-2.本願の請求項2ないし13に係る発明について
請求項2ないし13に係る発明は、請求項1に従属する請求項であり、請求項2ないし13に係る発明は、本願発明1の発明特定事項をすべて含みさらに発明特定事項を追加して限定するものであるから、上記「2-1.(3)」と同じ理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2-3.本願の請求項14に係る発明について
独立形式で記載された請求項14に係る発明は、本願発明1における、外部接点(6)を開口(4)内に少なくとも部分的に配置するという発明特定事項を共通して有するものであるから、上記「2-1.(3)」と同じ理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3.原査定の理由についてのむすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1ないし14に係る発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
第5.むすび
以上のとおり、当審で通知した拒絶理由、及び原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-002424