特許拒絶査定不服審判
2016-001700
作業車両
- 審判番号
- 2016-001700
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-151978
- 請求日
- 2016年02月04日
- 審決日
- 2017年03月21日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】三菱マヒンドラ農機株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 島田 信一
- 審判官 小原 一郎
- 審判官 和田 雄二
- 分類
- P18 .121-WY (B60K) / P18 .536-WY (B60K) / P18 .537-WY (B60K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-151978号「作業車両」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月31日出願公開、特開2013- 18325号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月8日の出願であって、平成27年3月31日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月29日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月26日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされた。
これに対し、平成28年2月4日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正書が提出され、同年2月26日に手続補正書が提出され、その後、当審において同年11月21日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年1月30日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の特許を受けようとする発明は、平成29年1月30日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「ディーゼル式のエンジン(4)からの排気ガス中に含まれる微粒子状物質を捕捉して除去するフィルタ装置(34)を該エンジン(4)の上方側に配置し、エンジン(4)を冷却するラジエータ(28)を該エンジン(4)の前方側に設けた作業車両であって、前記フィルタ装置(34)を、左右方向を向くように横置きされた状態で、エンジン(4)後部における左右方向中央部上方側に配置し、該フィルタ装置(34)を構成する左右分割ケース(37,37)における互いの接合端部には、フランジ部(37a,37a)を一体的に形成し、該フランジ部(37a,37a)同士をボルト固定することにより、両分割ケース(37,37)を連結固定し、該フィルタ装置(34)の上方及び後方を覆うように、側面視で逆L字状に係止され、前記ラジエータ(28)側から冷却ファン(29)を介してフィルタ装置(34)側に流動してきたエアを後方且つ下方に案内する遮熱カバー(38)を前記フランジ部(37a,37a)に共締め固定して設けると共に、該遮熱カバー(33)の前端部を上方に屈曲形成し、エンジン(4)から配管された排気マニホールド(39)を側面視で前記遮熱カバー(38)の外側を迂回してフィルタ装置(34)に接続した
ことを特徴とする作業車両。」
第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
刊行物等
引用文献1: 特開2011-88607号公報
引用文献2: 実願昭59-118333号(実開昭61-32510号)
のマイクロフィルム
引用文献3: 特開2005-163758号公報
引用文献4: 特開2009-101987号公報
引用文献5: 特開2000-257429号公報
引用文献1には、DPFを内装したマフラ12(フィルタ装置)をエンジンEの上方側に配置した作業車両において、マフラ12が、エンジン後部の中央部上方側に、マフラの長手方向が車幅方向となるように配置される点、風向誘導板17により前方側からマフラ側に空気が流動する点が記載されている(図3-6)。また、エンジンFの前方側に、エンジンを冷却するラジエータを設ける点が示唆されている(図7)。
引用文献2には、ラジエータ15をエンジンの前方側に設ける点、マフラ導風板25(遮熱カバー)を、マフラ21の上方、マフラ21の長手方向に伸びる面、及びマフラ21の後方を覆うように設ける点、マフラ導風板25によって、マフラの短手方向一方からマフラ側に流動してきたエアをマフラの短手方向他方かつ下方に案内する(図1)と共に、前方側からマフラ側に流動してきたエアを後方かつ下方に案内する点(図2)が記載されている。
引用文献1の作業車両に引用文献2の事項及び周知技術(引用文献3~5)を適用することは、当業者が容易になし得たことである。
2 原査定の理由の判断
(1) 刊行物等の記載事項
ア 引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下同様。)。
(1a) 「【請求項1】
排ガス内の粒状化物質を除去するDPFを内装したマフラー(12)をエンジンルーム(13)内に接続配置するディーゼルエンジンを搭載した作業車両において、ディーゼルエンジンのヘッドカバー(14)上部に組み付けた遮熱板(15)の上面に、冷却ファン(16)からの冷却風をマフラー(12)側へ誘導する風向誘導板(17)を設けたことを特徴とする作業車両。」
(1b) 「【0023】
農作業機に搭載したコモンレール式ディーゼルエンジンEのECU100は、図2に示す如く、回転数と出力トルクの関係において、回転数の変動で出力も変動するドループ制御と、負荷が変動しても回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御と、アイソクロナス制御が負荷限界近くになると回転数を上昇させ出力を上げる重負荷制御とによる三種類の制御モードを設定している。
…
【0029】
図3及び図4に示す如く、エンジンルーム13内に配置した前記コモンレール式ディーゼルエンジンEにおいて、排気側に連結した排気管21に、DPFを内装したマフラー12をエンジン本体上部の直近位置で且つエンジン軸心に対し直角方向に配置して接続させる。
【0030】
ヘッドカバー14の上部には、図5に示す如く、エンジン部品の特にインジェクター(図示なし)の遮熱を行う帯状で片側の端縁を折り曲げた遮熱板15を組み付けると共に、この遮熱板15の上面適宜位置に、冷却ファン16からの冷却風をマフラー12側へ誘導可能とする帯状幅で適宜角度と長さを有した風向誘導板17を取り付けて構成させる。なお、22はシリンダブロック、23はシリンダヘッド、24はオイルパン、25はギヤケース、26はフライホイールを示す。
【0031】
このような構成により、排気側から排出される排気ガスはマフラー12へ流れDPFにより排気ガス中のPM捕集が行われ、このPM捕集によりPMが堆積したときは適時再生処理を行わせるが、このDPFによる再生処理時にはマフラー12の温度が上がりエンジンルーム13内の温度が上昇しインジェクター等重要な各部品が熱害により不具合発生の要因となっていたものを、ヘッドカバー14上部に組み付けた遮熱板15の上面に設けた風向誘導板17によって、マフラー12部に冷却ファン16の冷却風が十分に当るよう誘導することができるから、風向誘導板17によるマフラー12部の冷却効果の向上が可能となり、熱害による不具合発生を抑制することができる
…」
(1c) 引用文献1の図3~図6には以下の図が記載されている。
イ 引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a) 「2. 実用新案登録請求の範囲
(1) 機体3に搭載したエンジン5を収納し、かつ該エンジンとエルボ20を介して連結しているマフラー本体21を、ボンネットカバー11に近接した上部角部に機体前後方向に延出して内装したボンネット装置6において、
マフラー本体21の上部及び一側部を覆うようにマフラー導風板25を配設し、更に該マフラー導風板を、正面視においてその一側25aがマフラー本体より大きくボンネット装置6の中央方向にかつボンネットカバー11に沿って延出すると共に、その他側25bがマフラー本体に沿って湾曲するように構成して、一側延出部25aとマフラー本体21との間に徐々に狭くなる大きな冷却風受入れ口Aを形成し、また側面視においてマフラー導風板後方部分25cをエルボ20に沿って滑らかに湾曲して、マフラー導風板25とマフラー本体21との間に略々一定幅からなる滑らかな冷却風流路Bを形成すると共に、マフラー導風板25の外側にも略々一定幅からなる冷却風流路Cを形成したマフラー内装ボンネット装置。」(明細書第1ページ第4行~第2ページ第5行)
(2b) 「3. 考案の詳細な説明
(イ) 産業上の利用分野
本考案は、トラクタ等において、マフラーを内装したボンネットの構造に係り、詳しくはマフラー本体等を冷却する導風板に関する。」(明細書第2ページ第6行~同ページ第10行)
(2c) 「(ホ) 作用
上述構成に基づき、ファン30による冷却風は、大きな冷却風受入れ口Aに導入・案内されて、更にその流路面積が徐々に狭くなることに基づき冷却風速を増しながら流路Bを通ってマフラー本体21を有効に冷却する。また、マフラー導風板25の外側に導かれた冷却風は、略々一定幅からなる流路Cを滞溜及び渦を生じることなく滑らかに通過して、導風板25、ボンネットカバー11及び仕切り板12を冷却し、更に流路Bからの冷却風と合流して排気マニホルド20を冷却し、それからボンネットカバー11に形成された排気孔11aから滑らかに排出される。」(明細書第4ページ第3行~同ページ第15行)
(2d) 引用文献2の第1図及び第2図には以下の図が記載されている。
(2) 引用文献に記載された発明及び技術事項
ア 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、
(ア) 排ガス内の粒状化物質を除去するDPFを内装したマフラー(12)をエンジンルーム(13)内に接続配置するディーゼルエンジンを搭載した作業車両において、ディーゼルエンジンのヘッドカバー(14)上部に組み付けた遮熱板(15)の上面に、冷却ファン(16)からの冷却風をマフラー(12)側へ誘導する風向誘導板(17)を設けた作業車両(摘示(1a))の具体的構成として、
(イ) エンジンルーム13内に配置したコモンレール式ディーゼルエンジンEにおいて、排気側に連結した排気管21に、DPFを内装したマフラー12を、エンジン本体上部の直近位置で且つエンジン軸心に対し直角方向に配置して接続させること(摘示(1b)【0029】)、
が記載されている。
また、引用文献1において、
(ウ) 摘示(1c)の図3及び図4より、上記「(イ)」のマフラー12の配置は、エンジン本体の後ろ寄りであり、かつ、エンジン本体の左右方向に対してほぼ中央でエンジン軸心に対し直角方向に配置されているものであること、
が明らかである。
これらのことから、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「排ガス内の粒状化物質を除去するDPFを内装したマフラー(12)をエンジンルーム(13)内に接続配置するディーゼルエンジンを搭載した作業車両において、
ディーゼルエンジンのヘッドカバー(14)上部に組み付けた遮熱板(15)の上面に、冷却ファン(16)からの冷却風をマフラー(12)側へ誘導する風向誘導板(17)を設けた作業車両であって、
ディーゼルエンジンにおいて、排気側に連結した排気管(21)に、DPFを内装したマフラー(12)を、エンジン本体の後ろ寄りであり、かつ、エンジン本体の左右方向に対してほぼ中央でエンジン軸心に対し直角方向に配置して接続させている、
作業車両。」
イ 引用文献2に記載された技術事項
引用文献2には、
(ア) トラクタ等の、マフラーを内装したボンネットの構造に関し(摘示(2b))、
(イ) 機体3に搭載したエンジン5を収納し、かつ該エンジンとエルボ20を介して連結しているマフラー本体21を、機体前後方向に延出して内装したボンネット装置6において、
a マフラー本体21の上部及び一側部を覆うようにマフラー導風板25を配設し、マフラー導風板を、正面視においてその一側25aがマフラー本体より大きくボンネット装置6の中央方向に延出すると共に、その他側25bがマフラー本体に沿って湾曲するように構成して、冷却風受入れ口Aを形成し(摘示(2a))、
b 側面視においてマフラー導風板後方部分25cをエルボ20に沿って滑らかに湾曲して、冷却風流路Bを形成する(摘示(2a))、
ものであること、
(ウ) ファン30による冷却風は、大きな冷却風受入れ口Aに導入・案内されて、流路Bを通ってマフラー本体21を有効に冷却すること(摘示(2c))、
が記載されている。
また、引用文献2において、
(エ) 摘示(2d)より、マフラー本体21エンジンの上方に位置していること、
(オ) 上記「(ウ)」より、上記「(イ)」の「冷却風」は、ファン30によるものであること、
が明らかである。
これらのことから、引用文献2には次の技術事項(以下「引用文献2の技術」という。)が記載されていると認められる。
「トラクタ等の機体3に搭載したエンジン5を収納し、かつ該エンジンとエルボ20を介して連結しているマフラー本体21を、エンジンの上方でかつ機体前後方向に延出して内装したボンネット装置6において、
マフラー本体21の上部及び一側部を覆うようにマフラー導風板25を配設し、マフラー導風板を、正面視においてその一側25aがマフラー本体より大きくボンネット装置6の中央方向に延出すると共に、その他側25bがマフラー本体に沿って湾曲するように構成して、冷却風受入れ口Aを形成し、
側面視においてマフラー導風板後方部分25cをエルボ20に沿って滑らかに湾曲して、冷却風流路Bを形成し、
冷却風は、ファン30によるものである、
技術。」
(3)対比・判断
ア 本願発明と引用発明を対比する。
(ア) 引用発明の「作業車両」は本願発明の「作業車両」に相当し、以下同様に、「ディーゼルエンジン」は「ディーゼル式のエンジン(4)」に、「排ガス内の粒状化物質を除去するDPFを内装したマフラー(12)」は「排気ガス中に含まれる微粒子状物質を捕捉して除去するフィルタ装置(34)」に、「冷却ファン(16)」は「冷却ファン(29)」に、「排気管(21)」は「排気マニホールド(39)」に、「フランジ部」は「フランジ部」に、それぞれ相当する。
(イ) 上記「(ア)」の相当関係より、
a 引用発明の「ディーゼルエンジンにおいて」「DPFを内装したマフラー(12)を、エンジン本体の後ろ寄りであり、かつ、エンジン本体の左右方向に対してほぼ中央でエンジン軸心に対し直角方向に配置」することは、
(a) 本願発明の「フィルタ装置(34)を該エンジン(4)の上方側に配置」することに相当し、また、
(b) 本願発明の「フィルタ装置(34)を、左右方向を向くように横置きされた状態で、エンジン(4)後部における左右方向中央部上方側に配置」することに相当する。
b 引用発明の「冷却ファン(16)からの冷却風をマフラー(12)側へ誘導する風向誘導板(17)を設け」ることは、本願発明の「該フィルタ装置(34)の上方及び後方を覆うように、側面視で逆L字状に係止され、前記ラジエータ(28)側から冷却ファン(29)を介してフィルタ装置(34)側に流動してきたエアを後方且つ下方に案内する遮熱カバー(38)を」「設ける」ことと、「冷却ファン(29)を介してフィルタ装置(34)側に流動してきたエアを案内する部材を設ける」限度で一致する。
c 引用発明の「ディーゼルエンジンにおいて、排気側に連結した排気管(21)に、DPFを内装したマフラー(12)を」「接続させた」ことは、本願発明の「エンジン(4)から配管された排気マニホールド(39)を側面視で前記遮熱カバー(38)の外側を迂回してフィルタ装置(34)に接続した」ことと、「エンジン(4)から配管された排気マニホールド(39)をフィルタ装置(34)に接続した」限度で一致する。
イ 以上によれば、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「ディーゼル式のエンジンからの排気ガス中に含まれる微粒子状物質を捕捉して除去するフィルタ装置を該エンジンの上方側に配置した作業車両であって、
前記フィルタ装置を、左右方向を向くように横置きされた状態で、エンジン後部における左右方向中央部上方側に配置し、
冷却ファンを介してフィルタ装置側に流動してきたエアを案内する部材を設けると共に、
エンジンから配管された排気マニホールドをフィルタ装置に接続した
作業車両。」
[相違点1]
本願発明では、「エンジン(4)を冷却するラジエータ(28)を該エンジン(4)の前方側に設けた」のに対し、引用発明ではそのような構成を備えているか不明である点。
[相違点2]
冷却ファンを介してフィルタ装置側に流動してきたエアを案内する部材、及び、エンジンから配管された排気マニホールドに関し、本願発明では当該エアを案内する部材は、「フィルタ装置(34)の上方及び後方を覆うように、側面視で逆L字状に係止され、前記ラジエータ(28)側から冷却ファン(29)を介してフィルタ装置(34)側に流動してきたエアを後方且つ下方に案内する」「該遮熱カバー(33)の前端部を上方に屈曲形成し」ているものであって、かつ、排気マニホールドは、「側面視で前記遮熱カバー(38)の外側を迂回して」フィルタ装置に接続されているのに対し、引用発明の風向誘導板(17)及び排気管(21)は、そのような構成を備えていない点。
[相違点3]
本願発明では、「フィルタ装置(34)を構成する左右分割ケース(37,37)における互いの接合端部には、フランジ部(37a,37a)を一体的に形成し、該フランジ部(37a,37a)同士をボルト固定することにより、両分割ケース(37,37)を連結固定」されており、かつ、前記相違点2における「遮熱カバー(38)」「を前記フランジ部(37a,37a)に共締め固定して設ける」ものであるのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。
ウ 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
(ア) 上記相違点2に係る本願発明の構成と引用文献2の技術を対比すると、
a 引用文献2の技術の「エルボ20」は本願発明の「排気マニホールド(39)」に、以下同様に、「マフラー導風板25」は「遮熱カバー(38)」に、「ファン30」は「冷却ファン」に相当する。また、引用文献2の技術の「マフラー本体21」は本願発明の「フィルタ装置(34)」と「装置」である限度で一致する。
b 上記「a」の相当関係と、引用文献2の技術において、「冷却風は、ファン30によるものである」ことから、引用文献2の技術の「マフラー導風板を、正面視においてその一側25aがマフラー本体より大きくボンネット装置6の中央方向に延出すると共に、その他側25bがマフラー本体に沿って湾曲するように構成して、冷却風受入れ口Aを形成」することは、本願発明の「フィルタ装置(34)の上方及び後方を覆うように、側面視で逆L字状に係止され、前記ラジエータ(28)側から冷却ファン(29)を介してフィルタ装置(34)側に流動してきたエアを後方且つ下方に案内する遮熱カバー(38)」と「装置の上方を覆うように、逆L字状に係止され、冷却ファンを介して装置側に流動してきたエアを案内する遮熱カバー」である限度で一致する。
(イ) 以上より、引用文献2の技術は、上記相違点2に係る本願発明の構成と、「装置の上方を覆うように、逆L字状に係止され、冷却ファンを介して装置側に流動してきたエアを案内する遮熱カバー」である点で一致するものといえる。
(ウ) そして、引用発明と引用文献2の技術は、ともに農作業機等の作業車両において、マフラーに冷却風を誘導する導風板を設ける点で共通するから、引用発明に引用文献2の技術を適用する動機付けは十分にある。
しかしながら、引用文献2の技術は、マフラー導風板25の「前端部を上方に屈曲形成し」たものではないし、また、エルボ20が「側面視でマフラー導風板25の外側を迂回して」マフラー本体21に接続されたものでもない(摘示(2e)参照。エルボ20はマフラー導風板25の内側に配置されている。)から、仮に引用発明に引用文献2の技術を適用しても、相違点2に係る本願発明の構成に至らないことは明らかである。
(エ) そして、拒絶理由で提示された引用文献3~5に記載されているのは、いずれも本願の請求項2に係る「制御部」の配置に関する事項であって、相違点2に係る本願発明の構成を開示又は示唆するものではないし、他に引用発明において当該相違点2に係る本願発明の構成を備えることが容易であるとする根拠も見当たらない。
(オ) そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明、引用文献2の技術、及び引用文献3~5の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4) 小括
本願の請求項2に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、当業者が引用発明、引用文献2の技術、及び引用文献3~5の記載事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
[理由1] この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
[理由2] この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
記
(1) 理由1について
請求項1の「…左右に分割ケース…」との記載、及び、請求項2の「…制御部(27)を前記ファンシェラウド(31)の…」との記載は、その意味が不明確な記載である。
(2) 理由2について
請求項1に係る発明の技術上の意義が明らかでない。特に、請求項1の「エンジン(4)から配管された排気マニホールド(39)を側面視で前記遮熱カバー(38)の外側に迂回してフィルタ装置(34)に接続した」との発明特定事項に関して、「排気マニホールドを側面視で遮熱カバーの外側に迂回し」たことの技術上の意義が明らかでない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、請求項1及び2に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでない。
2 当審拒絶理由の判断
平成29年1月30日に提出された意見書及び手続補正書により、当審拒絶理由は解消した。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-001700