特許拒絶査定不服審判
2015-014477
治療、診断、G‐テトラド形成オリゴヌクレオシド及びアプタマーといった生物学的応用のための新規修飾を取り入れたアラ‐2’‐O‐メチル‐ヌクレオシド、当該ホスホラミダイト及びオリゴヌクレオチドの合成
- 審判番号
- 2015-014477
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-551073
- 請求日
- 2015年07月31日
- 審決日
- 2016年11月21日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ケムジーンズ コーポレーション
- 【請求人代理人】岩橋 祐司
- 【請求人】スリバスタバ,スレシュ,シー.
- 【請求人代理人】岩橋 祐司
- 【請求人】パンデイ,ディヴィヤ
- 【請求人代理人】岩橋 祐司
- 【請求人】スリバスタバ,ナヴィーン,ピー.
- 【請求人代理人】岩橋 祐司
- 【請求人】スリバスタバ,アロック
- 【請求人代理人】岩橋 祐司
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 雅博
- 審判官 齊藤 真由美
- 審判官 冨永 保
- 分類
- P18 .113-Z (A61K) / P18 .121-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-551073「治療、診断、G‐テトラド形成オリゴヌクレオシド及びアプタマーといった生物学的応用のための新規修飾を取り入れたアラ‐2’‐O‐メチル‐ヌクレオシド、当該ホスホラミダイト及びオリゴヌクレオチドの合成」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月26日国際公開、WO2010/096201、平成25年6月6日国内公表、特表2013-520395〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
この出願は、2010年2月23日を国際出願日とする出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。
平成23年11月30日 物件提出
平成26年 6月10日付け 拒絶理由通知
平成26年12月17日 意見書提出・手続補正
平成27年 3月20日付け 拒絶査定
平成27年 7月31日 審判請求・手続補正
第2 平成27年7月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年7月31日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正
平成27年7月31日付けの手続補正(以下「本件補正」という)は、本件補正前の請求項2である(請求項2は請求項1を引用して特定されていることから請求項1の記載を踏まえて書き下すと)、
「2’-O-メチル-β‐D‐アラビノフラノース、
3’位に、シアノエチル基及びN,N‐ジイソプロピルアミノ基を含むホスホラミダイト基、及び
1’位に、N6、N6‐ジメチルアデニン、N6‐ベンゾイルアデニン、N2‐イソブチリルグアニン、N‐1‐メチルアデニン、7‐デアザアデニン、7‐デアザ‐8‐アザアデニン、3‐デアザアデニン、エテノアデニン、イソグアニン、N1‐メチルグアニン、7‐ヨード‐7‐デアザグアニン、7‐デアザ‐7‐ヨードアデニン、7‐デアザ‐7‐ヨード‐6‐オキソプリン、5‐ヨード‐5‐メチル‐7‐デアザグアニン、-C≡C(CH2)1-8‐フタルイミドで置換された7‐デアザグアニン、7‐デアザ‐8‐アザグアニン、8‐メチルグアニン、8‐ブロモグアニン、8‐アミノグアニン、ヒポキサンチン、6‐メトキシプリン、7‐デアザ‐6‐オキソプリン、6‐オキソプリン、2‐アミノプリン、2、6‐ジアミノプリン、8‐ブロモプリン、8‐アミノプリン、8‐アルキルアミノプリン、8‐アルキルアミノプリン、N‐3メチルチミン、5‐アクロキシメチルシトシン、5‐アザシトシン、イソシトシン、N4‐ベンゾイルシトシン、N‐4(C1 - C6)アルキルシトシン、N‐3(C1 - C6)アルキルシトシン、5‐プロピニルシトシン、5‐ヨード‐シトシン、5‐(C1 - C6)アルキルシトシン、5‐アリル(C1 - C6)アルキルシトシン、5‐トリフルオロメチルシトシン、5‐メチルシトシン、エテノシトシン、-CH=CH-C(=O)NH(C1 - C6)アルキルで置換されたシトシン及びウラシル、-C≡C-CH2‐フタルイミドで置換されたシトシン及びウラシル、NH(C1 - C6)アルキル、4‐チオウラシル、2‐チオウラシル、N3‐チオベンゾイルエチルウラシル、5‐プロピニルウラシル、5‐O‐アセトキシメチルウラシル、5‐フルオロウラシル、5‐クロロウラシル、5‐ブロモウラシル、5‐ヨードウラシル、4‐チオウラシル、N‐3‐(C1 - C6)アルキルウラシル、5‐(3‐アミノアリル)‐ウラシル、5‐(C1 - C6)アルキルウラシル、5‐アリル(C1 - C6)アルキルウラシル、5‐トリフルオロメチルウラシル、4‐トリアゾリル‐5‐メチルウラシル、2‐ピリドン、2‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、2‐オキソ‐4‐メチルチオ‐5‐メチルピリミジン、2‐チオカルボニル‐4‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、及び4‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、からなる群から選ばれる核酸塩基(ただし、前記環外アミンを有する核酸塩基はさらに該環外アミンの保護基を有する)、
を有するヌクレオシドにおいて、さらに5’‐4,4’‐ジメトキシトリチル保護基を有するヌクレオシド。」を、
補正後の請求項2である、
「2’-O-メチル-β‐D‐アラビノフラノース、
3’位に、シアノエチル基及びN,N‐ジイソプロピルアミノ基を含むホスホラミダイト基、及び
1’位に、N6、N6‐ジメチルアデニン、N6‐ベンゾイルアデニン、N2‐イソブチリルグアニン、N‐1‐メチルアデニン、7‐デアザアデニン、7‐デアザ‐8‐アザアデニン、3‐デアザアデニン、エテノアデニン、イソグアニン、N1‐メチルグアニン、7‐ヨード‐7‐デアザグアニン、7‐デアザ‐7‐ヨードアデニン、7‐デアザ‐7‐ヨード‐6‐オキソプリン、5‐ヨード‐5‐メチル‐7‐デアザグアニン、-C≡C(CH2)1-8‐フタルイミドで置換された7‐デアザグアニン、7‐デアザ‐8‐アザグアニン、8‐メチルグアニン、8‐ブロモグアニン、8‐アミノグアニン、ヒポキサンチン、6‐メトキシプリン、7‐デアザ‐6‐オキソプリン、6‐オキソプリン、2‐アミノプリン、2、6‐ジアミノプリン、8‐ブロモプリン、8‐アミノプリン、8‐アルキルアミノプリン、8‐アルキルアミノプリン、N‐3メチルチミン、5‐アクロキシメチルシトシン、5‐アザシトシン、イソシトシン、N4‐ベンゾイルシトシン、N‐4(C1 - C6)アルキルシトシン、N‐3(C1 - C6)アルキルシトシン、5‐プロピニルシトシン、5‐ヨード‐シトシン、5‐(C1 - C6)アルキルシトシン、5‐アリル(C1 - C6)アルキルシトシン、5‐トリフルオロメチルシトシン、5‐メチルシトシン、エテノシトシン、-CH=CH-C(=O)NH(C1 - C6)アルキルで置換されたシトシン及びウラシル、-C≡C-CH2‐フタルイミドで置換されたシトシン及びウラシル、NH(C1 - C6)アルキル、4‐チオウラシル、2‐チオウラシル、N3‐チオベンゾイルエチルウラシル、5‐プロピニルウラシル、5‐O‐アセトキシメチルウラシル、5‐フルオロウラシル、5‐クロロウラシル、5‐ブロモウラシル、5‐ヨードウラシル、4‐チオウラシル、N‐3‐(C1 - C6)アルキルウラシル、5‐(3‐アミノアリル)‐ウラシル、5‐(C1 - C6)アルキルウラシル、5‐アリル(C1 - C6)アルキルウラシル、5‐トリフルオロメチルウラシル、4‐トリアゾリル‐5‐メチルウラシル、2‐ピリドン、2‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、2‐オキソ‐4‐メチルチオ‐5‐メチルピリミジン、2‐チオカルボニル‐4‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、及び4‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、からなる群から選ばれる核酸塩基(ただし、前記環外アミンを有する核酸塩基はさらに該環外アミンの保護基を有する)、
を有するヌクレオシドにおいて、さらに5’‐4,4’‐ジメトキシトリチル保護基を有するヌクレオシド(ただし、前記1’位の核酸塩基がN6-ベンゾイルアデニン、N2-イソブチリルグアニン、N4-ベンゾイルシトシン、又は5-メチルウラシルである場合を除く)。」
(審決注:補正部分に下線を付した。)と補正するものである。
2 本件補正の適否
(1)補正の目的の適否
本件補正は、補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「ヌクレオシド」について、原査定の引用文献4の実施例66に記載されていた化合物を除外するため「ただし、前記1’位の核酸塩基がN6-ベンゾイルアデニン、N2-イソブチリルグアニン、N4-ベンゾイルシトシン、又は5-メチルウラシルである場合を除く」ものに限定する補正である。
そして、その補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、補正後の請求項2についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)独立特許要件について
そこで、本件補正後の上記請求項2に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて以下検討する。
ア 本願補正発明
本願補正発明は、前記1において補正後の請求項2に係る発明として記載したとおりである。
イ 刊行物
刊行物1:特表2002-543215号公報(原査定の引用文献4)
刊行物2:Bioorganic & Medicinal Chemistry, Vol.4, No.8,(1996), p.1217-1225(原査定の引用文献5)
ウ 刊行物の記載事項
本願出願前に頒布された刊行物である刊行物1、2には、以下の事項が記載されている。
(ア)刊行物1
1a「【請求項1】複数のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドであって、該複数のヌクレオチドの第一部分は、B型立体配座幾何学形状を有し、しかも連続配列中で互いに結合していて、該第一部分の該ヌクレオチドの少なくとも二つは、リボヌクレオチドまたはアラビノヌクレオチドであり;そして該複数のヌクレオチドの追加部分は、A型立体配座幾何学形状を有するリボヌクレオチドであり、しかも少なくとも一つの連続配列中で互いに結合しているオリゴヌクレオチド。
・・・・・
【請求項15】前記第一部分のヌクレオチドが、それぞれ独立して、2’-Fアラビノヌクレオチド、2’-OHアラビノヌクレオチドまたは2’-O-CH3アラビノヌクレオチドである請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。」
1b「【0001】発明の分野
本発明は、A型およびB型両方の立体配座幾何学形状を有するオリゴヌクレオチドおよびこのようなオリゴヌクレオチドを使用する方法に関する。本発明のオリゴヌクレオチドは、治療および研究の目的に有用である。より具体的には、本発明は、親和性およびヌクレアーゼ耐性を増加させる特別な修飾を有すると同時に、標的RNA鎖に結合した場合にRNアーゼHの基質として役立つオリゴヌクレオチドに関する。
・・・・・
【0019】発明の要旨
一つの側面において、本発明は、多数の性状を有するオリゴヌクレオチドに関する。これら性状の一つは、RNAと一緒に二本鎖構造を形成し且つRNAのRNアーゼH切断を引き起こす能力である。オリゴヌクレオチドの更に別の性状には、改善された結合親和性およびヌクレアーゼ耐性を有することが含まれる。・・・
・・・・・
【0034】・・・(発明の詳細な説明)一つの態様において、本発明はRNase Hの基質として働く能力と結びつけられた、結合親和性および/またはヌクレアーゼ耐性を増加させるために寄与するある種の望ましい特性を持つ新規オリゴヌクレオチドに関している。」
1c「【0042】改良された結合親和性を持っているオリゴヌクレオチドを設計する場合、考慮すべき多数の潜在的項目が存在する。非常に高いRNA結合親和性を持つ修飾オリゴヌクレオチドを構築するための一つの有効な方法は二つまたはそれ以上の異なる種の修飾の組み合わせである、これらの各々は、結合親和性にとって重要でありうる種々な要因に好都合に寄与する。
【0043】Freier and Altmann, Nucleic Acids Research,(1997)25 : 4429-4443、は標的RNAとの二重鎖安定性に対するオリゴヌクレオチド構造修飾の影響についての研究を最近報告している。この研究において、合成された200より多い異なった修飾を含む一連のオリゴヌクレオチドが調べられ、そのハイブリダイゼーション親和性およびTmが評価されている。糖修飾研究には、糖の2’-位での置換、3’-置換、4’-酸素の置き換え、2環式糖の使用および4員環置き換えが含まれている。いくつかの核酸塩基修飾もまた研究されており、チミンの5または6位での置換、ピリミジンヘテロ環式の修飾およびプリンヘテロ環式の修飾が含まれている。リン原子を持つ主鎖、リン原子を含んでいない主鎖および中性である主鎖を含む多数の主鎖修飾もまた調べられている。
・・・・・
【0069】・・ヌクレオシドのコンホメーションに対する2’-O-および2’-S-メチル基の影響を理解するため、2’-O-および2’-S-メチルグアノシン、ならびに通常のデオキシグアノシンおよびリボグアノシンの相対エネルギーを、ab initio量子力学計算を使用し、C2’-エンドおよびC3’-エンドの両方から開始して評価した。すべての構造はHF/6-31G*レベルで完全に最適化され、電子-相関を持つ単一点エネルギーがMP2/6-31G*//HF/6-31G*レベルで得られた。表1に示したように、デオキシグアノシンのC2’-エンドコンホメーションは気相においてC3’-エンドコンホメーションより0.6kcal/モル安定であると見積もられる。・・
【0070】【表1】
【0071】表1はまたC2’-エンドおよびC3’-エンドコンホメーションの2’-O-メチルグアノシンおよび2’-S-メチルグアノシンの相対エネルギーも含んでいる。このデータはC2’-置換の電子的性質がこれらのコンホメーションの相対安定性に著しい影響を与えることを示している。2’-O-メチル基の置換はHF/6-31G*およびMP2/6-31G*//HF/6-31G*両方のレベルで約0.4kcal/モルだけC3’-エンドコンホメーションに対する優先性を増加させる(リボグアノシンと比較した場合)。」
1d「【0109】本発明はまた研究および診断目的のためのRNAの選択的結合法にも関しており、そこでは酵素的RNaseH切断を利用して鎖切断を達成するのが有用であり、結合親和性および/またはヌクレアーゼ耐性の調節が同時に達成される。そのような選択性はそのようなRNAまたはDNAと、分解性ヌクレアーゼに耐性でありおよび既知のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド類似体よりも強くおよびより高い適合度でハイブリダイズする本発明の組成物と相互作用させることにより達成される。
【0110】本発明に従ったオリゴヌクレオチドは溶液中でまたは固相反応により、例えば、本発明に従ったヌクレオシド、ホスホロアミダイトおよび誘導体化制御孔ガラス(CPG)および/または標準ヌクレオチド前駆体を利用して適したDNA合成機で組み立てることができる。・・・
・・・・・
【0115】本発明に従ったヘテロ環式塩基には天然に存在するおよび天然には存在しない核酸塩基およびヘテロ環式の両方が含まれる。代表的なリストにはアデニン、グアニン、シトシン、ウリジン、およびチミン、ならびにキサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよびその他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよびその他のアルキル誘導体、5-ハロウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、オキサ、アミノ、チオール、チオアルキル、ヒドロキシル、および他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンのような他の合成および天然の核酸塩基が含まれる。さらに別のヘテロ環式塩基には米国特許第3,687,808号に記載されているもの、Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,ページ858-859, Kroschwitz,J.I.,編.John Wiley & Sons,1990に記載されているもの、およびEnglisch,et al., Angewandte Chemie,International Edition 1991, 30, 613に記載されているものが含まれる。」
1e「【0242】実施例66
2’-O-メチル-β-D-アラビノフラノシル化合物の合成
2’-O-メチル-β-D-アラビノフラノシル-チミジン含有オリゴヌクレオチドはGotfredson等の方法(Gotfredson,C.H.等,Tetrahedron Lett.(1994)35, 6941-6944 ; Gotfredson,C.H.等,Bioorg. Med. Chem.(1996)4, 1217-1225)に従って合成した。5’-O-DMT-2’-ara-(O-メチル)-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミン)-5-メチルウリジン-ホスホロアミダイト、5’-O-DMT-2’-ara-(O-メチル)-N-6-ベンゾイルアデノシン(3’-O-2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイト、5’-O-DMT-2’-ara-(O-メチル)-N2-イソブチリルグアノシン-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイト及び5’-O-DMT-2’-ara-(O-メチル)-N-4-ベンゾイルシチジン-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイトを対応ヌクレオシドのホスフィチル化によって得る。ヌクレオシドはGotfredson,C.H.等,Tetrahedron Lett.(1994)35, 6941-6944 ; Gotfredson,C.H.等,Bioorg. Med. Chem.(1996)4, 1217-1225が述べている方法に従って合成する。ホスフィチル化はビスアミダイト方法を用いて実施する。
・・・・・
【0260】実施例84
・・4,4’-ジメトキシトリフェニルメチルクロリド(DMT-Cl・・)・・。」
(イ)刊行物2
2a「合成とα-及びβ-1-(2-O-メチル-D-アラビノフラノシル)チミンを含有するα-及びβ-オリゴデオキシヌクレオチドの合成と性質」(1217頁 標題)
2b「
スキーム1(a)1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサン、無水ピリジン、無水1,2-ジクロロメタン;・・(c)水素化ナトリウム、ヨードメタン、無水N、N-ジメチルホルムアミド;(d)テトラヒドロフラン中のフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム;(e)無水酢酸、無水ピリジン;(f)氷酢酸、無水酢酸、濃硫酸」(1218頁スキーム1)
2c「
スキーム2 シリル化チミン、無水1,2-ジクロロメタン、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル;(b)飽和メタノール溶解性アンモニウム;(c)塩化4,4’-ジメトキシトリチル、無水ピリジン;(d)塩化2-シアノエチルN、N-ジイソプロピルホスホラミド、無水1,2-ジクロロメタン、N、N-ジイソプロピルエチルアミン T=チミン-1-イル;DMT=4,4’-ジメトキシトリチル」(1219頁スキーム2)
2d「1-(3-O-(2-シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィノ)-5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2-O-メチル-β-D-アラビノフラノシル)チミン(9b)」(1224頁左欄下から8~6行)
エ 刊行物1に記載された発明
刊行物1は、「(RNAとの結合)親和性およびヌクレアーゼ耐性を増加させる特別な修飾を有すると同時に、標的RNA鎖に結合した場合にRNアーゼHの基質として役立つオリゴヌクレオチド」(1b【0001】、【0019】)である、「複数のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドであって、 該複数のヌクレオチドの第一部分は、B型立体配座幾何学形状を有し、しかも連続配列中で互いに結合していて、該第一部分の該ヌクレオチドの少なくとも二つは、リボヌクレオチドまたはアラビノヌクレオチドであり;そして該複数のヌクレオチドの追加部分は、A型立体配座幾何学形状を有するリボヌクレオチドであり、しかも少なくとも一つの連続配列中で互いに結合しているオリゴヌクレオチド」(1a請求項1)に関し記載するものであって、「前記第一部分のヌクレオチドが・・2’-O-CH3アラビノヌクレオチドである・・オリゴヌクレオチド」(1a請求項15)を固相反応によりDNA合成機で合成する際に用いるヌクレオシドの具体例として、実施例66には、4種類の2’-O-メチル-β-D-アラビノフラノシル化合物が記載されている(1e)。
そして、この実施例66には「2’-O-メチル-β-D-アラビノフラノシル-チミジン含有オリゴヌクレオチド」を「Gotfredson等の方法(・・Bioorg.Med.Chem. (1996) 4,1217-1225)に従って合成した」(1e)と記載され、続いてヌクレオシドとして「5’-O-DMT-2’-ara-(O-メチル)-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミン)-5-メチルウリジン-ホスホロアミダイト」(1e)が記載されると共に「ヌクレオシドは・・Gotfredson,C.H.等,Bioorg. Med. Chem.(1996)4, 1217-1225が述べている方法に従って合成する」(1e)と記載されている。このヌクレオシド合成方法が記載された文献は原査定における引用文献5(刊行物2)であり、前記ヌクレオシドは当該文献に記載の合成スキーム(2b、2c)に従って合成されたものであるといえる。
そうすると、刊行物1には、
「5’-O-DMT-2’-ara-(O-メチル)-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミン)-5-メチルウリジン-ホスホロアミダイト」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
オ 本願補正発明と引用発明との対比
引用発明の化合物名は必ずしも明らかではないことから、引用発明のヌクレオシドが具体的にどのような化合物であるのかを、まず検討する。
前記エで述べたように、引用発明は刊行物2に記載のヌクレオシド合成スキーム(2b、2c)に従って合成されたものである。この合成スキーム1、2(2b、2c)には、ヌクレオシドの構成糖の相違から2種類の合成経路が示されているが、引用発明のヌクレオシド構成糖は「2’-O-メチル-β-D-アラビノフラノース」(1e)であるから、引用発明は、刊行物2に記載の合成スキーム1、2(2b、2c)において、「化合物1」→「化合物2b」→「化合物3b」→「化合物4b」→「化合物5」→「化合物6b」→「化合物7b」→「化合物8b」→「化合物9b」の合成経路で合成されたヌクレオシドといえる。
そして、引用発明では「5-メチルウリジン」とされており、ウリジンを構成する核酸塩基は5-メチルウラシルすなわちチミンであり、刊行物2記載の「化合物9b」の核酸塩基も「T=チミン-1-イル」(2c(d))であるから、引用発明は以下の化学構造式で表されるものである。
[当該式中「DMT=4,4’-ジメトキシトリチル」(2c)である。]
この「化合物9b」の化合物名は「1-(3-O-(2-シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィノ)-5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2-O-メチル-β-D-アラビノフラノシル)チミン」(2d)である。
したがって、引用発明である「5’-O-DMT-2’-ara-(O-メチル)-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミン)-5-メチルウリジン-ホスホロアミダイト」は、
で示される「1-(3-O-(2-シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィノ)-5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2-O-メチル-β-D-アラビノフラノシル)チミン」であり、これに基づいて以下対比、判断する。
(ア)引用発明の「2-O-メチル-β-D-アラビノフラノシル」は、本願補正発明の「2’-O-メチル-β-D-アラビノフラノース」に相当する。
(イ)本願補正発明の「3’位に、シアノエチル基及びN,N‐ジイソプロピルアミノ基を含むホスホラミダイト基」について、本願明細書には「【0037】アラ‐(2’)‐O‐メチル‐β‐D‐ヌクレオシドホスホラミダイト・・【0038】【化5】
【0043】アラ‐2’‐O‐メチル‐β‐D‐ヌクレオシドホスホラミダイト・・:前記ホスホラミダイトは式1A・・によって表され、Zは通常DMT(ジメトキシトリフェニル)基で、R3はリン酸切断基、一般には2‐シアノエチル基である」、「【0049】【化8】
【0050】・・R1は、置換又は非置換(C1-C12)アルキル基・・。R2は、置換又は非置換(C1-C12)アルキル基・・。R3は、リン酸保護基である。【0051】・・Bnは・・任意で置換した核酸塩基・・。」と記載されている。
前記「【0043】アラ‐2’‐O‐メチル‐β‐D‐ヌクレオシドホスホラミダイト」が表されている「式1A」における「2’-O-メチル-β-D-アラビノフラノース」の3’位-OHの置換基は、前記「式1A」(【0038】【化5】)より、前記【0049】【化8】の化学構造式で示される基といえ、本願補正発明の「3’位に、シアノエチル基及びN,N‐ジイソプロピルアミノ基を含むホスホラミダイト基」とは、前記3’位-OHの置換基である前記【0049】【化8】の化学構造式において、アミノ基のR1、R2としてそれぞれ非置換C3アルキル基に相当するイソプロピル基を選択し、R3として2‐シアノエチル基を選択したものといえる。
そうすると、本願明細書の当該記載を参酌すれば、本願補正発明の「3’位に、シアノエチル基及びN,N‐ジイソプロピルアミノ基を含むホスホラミダイト基」とは、「2’-O-メチル-β-D-アラビノフラノース」の3’位-OHの置換基である前記【0049】【化8】の化学構造式において、アミノ基のR1、R2としてそれぞれイソプロピル基を選択し、R3として2‐シアノエチル基を選択したものに他ならないと解釈するのが相当である。
そうすると、引用発明の「3-O-(2-シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィノ)」は、引用発明の前記化学構造式より明らかなように「2-O-メチル-β-D-アラビノフラノシル」の3位-OHの置換基として、本願明細書の前記【0049】【化8】の化学構造式において、アミノ基のR1、R2がそれぞれイソプロピル基、R3が2‐シアノエチル基であるものといえるから、本願補正発明の「3’位に、シアノエチル基及びN,N‐ジイソプロピルアミノ基を含むホスホラミダイト基」に相当するといえる。
(ウ)引用発明の「1-」「チミン」は、引用発明の前記化学構造式より明らかなように、「2-O-メチル-β-D-アラビノフラノシル」の1位に、その1位で結合した核酸塩基(「T=チミン-1-イル」(2c(d)))であって、チミンは5-メチルウラシルすなわち5-C1アルキルウラシルである。
そうすると、引用発明の「1-」「チミン」は、本願補正発明の「1’位に」「5-(C1 - C6)アルキルウラシル」に相当する。
(エ)前記(ウ)で述べたように、引用発明は「2-O-メチル-β-D-アラビノフラノシル」という糖の1位に、核酸塩基(「T=チミン-1-イル」(2c(d)))がその1位で結合しているものであるから、ヌクレオシドといえる。
そうすると,引用発明の「1-」「2-O-メチル-β-D-アラビノフラノシル)チミン」は,本願補正発明の「ヌクレオシド」に相当する。
(オ)引用発明の「5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)」は、本願補正発明の「5’‐4,4’‐ジメトキシトリチル保護基」に相当する。
そうすると、両者は、
「2’-O-メチル-β‐D‐アラビノフラノース、
3’位に、シアノエチル基及びN,N‐ジイソプロピルアミ ノ基を含むホスホラミダイト基、及び
1’位に、N6、N6‐ジメチルアデニン、N6‐ベンゾイルアデニン、N2‐イソブチリルグアニン、N‐1‐メチルアデニン、7‐デアザアデニン、7‐デアザ‐8‐アザアデニン、3‐デアザアデニン、エテノアデニン、イソグアニン、N1‐メチルグアニン、7‐ヨード‐7‐デアザグアニン、7‐デアザ‐7‐ヨードアデニン、7‐デアザ‐7‐ヨード‐6‐オキソプリン、5‐ヨード‐5‐メチル‐7‐デアザグアニン、-C≡C(CH2)1-8‐フタルイミドで置換された7‐デアザグアニン、7‐デアザ‐8‐アザグアニン、8‐メチルグアニン、8‐ブロモグアニン、8‐アミノグアニン、ヒポキサンチン、6‐メトキシプリン、7‐デアザ‐6‐オキソプリン、6‐オキソプリン、2‐アミノプリン、2、6‐ジアミノプリン、8‐ブロモプリン、8‐アミノプリン、8‐アルキルアミノプリン、8‐アルキルアミノプリン、N‐3メチルチミン、5‐アクロキシメチルシトシン、5‐アザシトシン、イソシトシン、N4‐ベンゾイルシトシン、N‐4(C1 - C6)アルキルシトシン、N‐3(C1 - C6)アルキルシトシン、5‐プロピニルシトシン、5‐ヨード‐シトシン、5‐(C1 - C6)アルキルシトシン、5‐アリル(C1 - C6)アルキルシトシン、5‐トリフルオロメチルシトシン、5‐メチルシトシン、エテノシトシン、-CH=CH-C(=O)NH(C1 - C6)アルキルで置換されたシトシン及びウラシル、-C≡C-CH2‐フタルイミドで置換されたシトシン及びウラシル、NH(C1 - C6)アルキル、4‐チオウラシル、2‐チオウラシル、N3‐チオベンゾイルエチルウラシル、5‐プロピニルウラシル、5‐O‐アセトキシメチルウラシル、5‐フルオロウラシル、5‐クロロウラシル、5‐ブロモウラシル、5‐ヨードウラシル、4‐チオウラシル、N‐3‐(C1 - C6)アルキルウラシル、5‐(3‐アミノアリル)‐ウラシル、5‐(C1 - C6)アルキルウラシル、5‐アリル(C1 - C6)アルキルウラシル、5‐トリフルオロメチルウラシル、4‐トリアゾリル‐5‐メチルウラシル、2‐ピリドン、2‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、2‐オキソ‐4‐メチルチオ‐5‐メチルピリミジン、2‐チオカルボニル‐4‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、及び4‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、からなる群から選ばれる核酸塩基(ただし、前記環外アミンを有する核酸塩基はさらに該環外アミンの保護基を有する)、
を有するヌクレオシドにおいて、さらに5’‐4,4’‐ジメトキシトリチル保護基を有するヌクレオシド」である点で一致し、以下の点で相違するといえる。
相違点:前記5’‐4,4’‐ジメトキシトリチル保護基を有するヌクレオシドにおいて、本願補正発明では、前記1’位の核酸塩基がN6-ベンゾイルアデニン、N2-イソブチリルグアニン、N4-ベンゾイルシトシン又は5-メチルウラシルである場合を除くとされているのに対し、引用発明では、前記1’位の核酸塩基が5-メチルウラシルである点
カ 判断
(ア)相違点について
a 動機付けについて
引用発明は、「(RNAとの結合)親和性およびヌクレアーゼ耐性を増加させる特別な修飾を有すると同時に、標的RNA鎖に結合した場合にRNアーゼHの基質として役立つオリゴヌクレオチド」(1b【0001】、【0019】)である、請求項15に記載の「・・第一部分のヌクレオチドが・・2’-O-CH3アラビノヌクレオチドである・・オリゴヌクレオチド」(1a請求項15)を、固相反応により合成する際に用いるヌクレオシドの具体例であり、前記改善されたRNA結合親和性及びヌクレアーゼ耐性を有するオリゴヌクレオチドを構成するヌクレオシドとして提供されるものである。
そして、刊行物1には、改善されたRNA結合親和性を持つオリゴヌクレオチドを設計する場合、考慮すべき多数の潜在的項目が存在し、非常に高いRNA結合親和性を持つ修飾オリゴヌクレオチドを構築する有効な方法は二以上の異なる修飾を組み合わせることであること(1c【0042】)、及び、標的RNAとの二重鎖安定性に対するオリゴヌクレオチド構造修飾につき、糖修飾として糖の2’位の置換を含めた修飾、核酸塩基修飾としてチミンの5位での置換を含めたピリミジンヘテロ環式の修飾が含まれていること(1c【0043】)が記載されている。
引用発明は、改善されたRNA結合親和性及びヌクレアーゼ耐性を有するオリゴヌクレオチドを構成するヌクレオシドとして、「2-O-メチル-β-D-アラビノフラノシル」すなわちアラビノフラノースの2’位-OHをメチル化した糖修飾がなされているものであり、核酸塩基は「チミン」であり、天然型すなわち非修飾の核酸塩基といえる。
そうすると、引用発明は、高いRNA結合親和性を持つ修飾オリゴヌクレオチドとして糖修飾はなされているが核酸塩基は非修飾のものといえるから、より高いRNA結合親和性を持つよう、二以上の異なる修飾を組み合わせるべく、核酸塩基もチミン(すなわち5-メチルウラシル)の5位での置換を含む修飾をしようという十分な動機付けがあったと認められる。
b 構成の容易想到性について
前記aで述べたように、刊行物1には、標的RNAとの二重鎖安定性に対するオリゴヌクレオチド構造修飾につき、核酸塩基の修飾として、チミンの5位での置換を含めたピリミジンヘテロ環式核酸塩基の修飾が含まれていること(1c【0043】)が記載されている。
さらに、刊行物1には、引用発明のヌクレオシドが構成するオリゴヌクレオチドのヘテロ環式塩基には、天然に存在する核酸塩基のみならず天然には存在しない核酸塩基も含まれること、その代表例として、天然に存在しない核酸塩基としては、5-ハロウラシル、5-トリフルオロメチル及び5-置換ウラシル等が挙げられることが記載されている(1d【0115】)。
そうすると、引用発明の核酸塩基は「チミン」であり、天然型の非修飾核酸塩基といえることから、前記aで述べた、より高いRNA結合親和性を持つヌクレオシドを提供しようと、二以上の異なる修飾を組み合わせるべく、前述のとおり既に糖修飾としてアラビノフラノースの2’位-OHをメチル化した糖修飾がなされている引用発明において、核酸塩基も修飾しようという動機付けの下、引用発明の核酸塩基の「チミン」(すなわち5-メチルウラシル)に代えて、引用発明が構成するヌクレオチドの核酸塩基として含まれる天然非存在の核酸塩基の代表例として例示されている、5-ハロウラシル等ウラシルの5位がメチル基からハロゲンに置換された核酸塩基を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ)本願補正発明の効果について
a 本願補正発明の効果は、本願明細書の【発明の概要】(【0015】~【0025】)における「【0017】アラ‐2’‐O‐メチル(当該ヌクレオシドの塩基に対してシス)を導入した概念は新規で、インビボでの分解に対してより優れた安定性を有するRNA配列の創出が予想される。さらに、これらの分子は標的RNA配列に対して一段と優れた結合能を有することが期待される」との記載及び【背景技術】の記載(【0003】~【0012】)から総合的に判断すると、従来のヌクレオシドと比較して、酵素分解に対する優れた安定性(すなわち酵素耐性)及び優れたRNA結合能を有するヌクレオシドを提供できることであると認められる。
b 引用発明は、請求項15に記載の「・・第一部分のヌクレオチドが・・2’-O-CH3アラビノヌクレオチドである・・オリゴヌクレオチド」(1a請求項15)を固相反応により合成する際に用いるヌクレオシドの具体例であり、当該オリゴヌクレオチドの性状として、刊行物1には「【0019】発明の要旨・・本発明は、多数の性状を有するオリゴヌクレオチドに関する。これら性状・・には、改善された結合親和性およびヌクレアーゼ耐性を有することが含まれる」(1b)と記載されており、これらの性状は、刊行物1の段落【0069】~【0071】の試験結果に基づく「【0071】表1は・・2’-O-メチルグアノシン・・の相対エネルギーも含んでいる。このデータはC2’-置換の電子的性質がこれらのコンホメーションの相対安定性に著しい影響を与えることを示している」(1d)という記載、並びに、刊行物1の「【0109】本発明は・・結合親和性および/またはヌクレアーゼ耐性の調節が同時に達成される。そのような選択性は・・分解性ヌクレアーゼに耐性でありおよび既知のオリゴヌクレオチド・・よりも強くおよびより高い適合度でハイブリダイズする本発明・・と相互作用させることにより達成される」(1d)という記載からも理解されることから、当該オリゴヌクレオチドを構成する引用発明のヌクレオシドは、改善されたRNA結合親和性及びヌクレアーゼ耐性を有するものといえる。
そうすると、引用発明の効果は、従来のヌクレオシドと比較して、改善されたRNA結合親和性及びヌクレアーゼ耐性を有するヌクレオシドを提供できることであると認められる。
したがって、本願補正発明の効果は、刊行物1の記載事項から予測される範囲内のものであり、格別顕著なものとは認められない。
キ 独立特許要件のまとめ
したがって、本願補正発明は、その出願前に頒布された刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、請求項2についての補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものである。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、請求項2についての補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年7月31日付けの手続補正は、上記第2に記載されたとおり却下されたので、この出願の発明は、平成26年12月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2 1に本件補正前の請求項2に係る発明として記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明についての原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献4[特表2002-543215号公報(引き続き「刊行物1」という。)]に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
3 刊行物
刊行物1:特表2002-543215号公報(第2 2(2)イに示した刊行物1と同じ。)
4 刊行物の記載事項
前記第2 2(2)ウに記載したとおりである。
5 刊行物1に記載された発明
前記第2 2(2)エに記載したとおりである。
6 対比・判断
本願発明は、上記第2 2(2)オ、カで検討した本願補正発明における「ヌクレオシド」について、「(ただし、前記1’位の核酸塩基がN6-ベンゾイルアデニン、N2-イソブチリルグアニン、N4-ベンゾイルシトシン、又は5-メチルウラシルである場合を除く)」との発明特定事項がない発明である。
そうすると、本願補正発明と引用発明との唯一の相違点である上記発明特定事項が、本願発明には存在しないから、本願発明と引用発明とに相違点は存在せず、したがって、本願発明は、この出願前に頒布された刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-014477