特許拒絶査定不服審判
2015-012571
鉄心とその製造および使用方法
- 審判番号
- 2015-012571
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-127729
- 請求日
- 2015年07月02日
- 審決日
- 2017年05月08日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】バクームシュメルツェ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト
- 【請求人代理人】山口 巖
- 審判長/審判官
- 審判長 酒井 朋広
- 審判官 関谷 隆一
- 審判官 森川 幸俊
- 分類
- P18 .121-WY (H01F) / P18 .536-WY (H01F) / P18 .537-WY (H01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-127729「鉄心とその製造および使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 5日出願公開、特開2013-243370、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2004年4月1日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2003年4月2日 ドイツ(DE))を国際出願日とする特願2006-504956号の一部を平成25年6月18日に新たな出願としたものであって、手続きの概要は以下のとおりである。
上申書 :平成25年 6月28日
拒絶理由通知 :平成26年 3月28日(起案日)
意見書 :平成26年 7月11日
手続補正 :平成26年 7月11日
拒絶査定 :平成27年 3月 5日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成27年 7月 2日
理由補充 :平成27年 8月 7日
拒絶理由通知(当審) :平成28年 5月24日(起案日)
意見書 :平成28年 9月29日
手続補正 :平成28年 9月29日
拒絶理由通知 :平成28年11月10日(起案日)
面接 :平成29年 2月 1日
意見書 :平成29年 3月14日
手続補正 :平成29年 3月14日
第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成29年3月14日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
強磁性合金のテープを巻込んでリング状テープ鉄心の形状に加工してなり、
弱弾性の反応性接着剤及び弱塑性の非反応性のペーストの少なくとも一方を用いて絶縁性プラスチック槽内に固定される鉄心であって、
1500よりも大きく6000よりも小さい比透磁率μと、15ppmより小さい飽和磁気歪λと、1A/cm未満の保磁力Hcとを有し、
前記強磁性合金の少なくとも50%は、平均粒径が100nm以下の微細結晶粒子によって占められており(超微結晶合金)、かつ
前記強磁性合金は、式FeaCobNicCudMeSifBgXhで表され、ここに、MはV、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Cr、Mn及びHfの少なくとも1つであり、a、b、c、d、e、f、gは原子%で表され、XはP、Ge、C並びに不可避の不純物を表し、a、b、c、d、e、f、g、hが、
0≦b≦10、
5≦c≦15、
0.8≦d≦1、
2.1≦e≦3、
11≦f≦15.9、
6.6≦g≦9、
h<5原子%、そして
b≦c、
ここに、a+b+c+d+e+f+g+h=100
という条件を満たしていることを特徴とする鉄心。」
第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
請求項1ないし17に対して引用文献1ないし5
引用文献1:特表2002-530854号公報
引用文献2:特開2000-119821号公報
引用文献3:特開昭63-128705号公報
引用文献4:特表2002-524840号公報
引用文献5:特開平9-190910号公報
2.原査定の理由についての判断
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用文献1(平成14年9月17日公表)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)
ア.「【請求項1】体積の少なくとも50%が100nm或いはそれ以下の平均粒子サイズをもつ微細な結晶粒子によって占められている強磁性合金(超微結晶合金)の鋼帯(B)を巻回してなり、
12,000~300,000の透磁率を持ち、
1ppmより小さい飽和磁気歪みを持ち、
実質的に機械応力がなく、
磁心(M)の磁化がそれに沿って特に容易に方向付けされ、かつ鋼帯(B)の中心線が通る面に対して垂直である異方性軸(A)を持ち、
前記合金が本質的に以下の式で表される組成を備えていることを特徴とする変流器での使用に適した磁心。
FeaCobCucSidBeMf
ただし、Mは元素V、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr及びHfの少なくとも1つであり、a~fは原子%で表して以下の条件を満たす。
0.5≦c≦2、6.5≦d≦18、5≦e≦14、1≦f≦6であってd+e>18及び0≦b≦15であり、a+b+c+d+e+f=100。」
イ.「【0001】
この発明は、変流器での使用に適した磁心とその製造方法及びかかる磁心を備えた変流器に関する。」
ウ.「【0013】
この発明の課題は、変流器に使用した際に、従来の技術に比較して測定すべき電流のより高い測定精度を、同時に経済的な構成とコンパクトな構造サイズにおいて可能とする磁心を提供することにある。さらに、このような磁心を製造する方法並びにこのような磁心を備えた変流器を提供することにある。その上、特性の温度依存性をできるだけ少なくすることにある。」
エ.「【0016】
このような磁心においては、透磁率と磁化との関係は非常に小さいことが分った。磁心のヒステリシスループは、それ故、非常に狭くかつ直線性である。このことは、残留磁束密度と飽和磁気歪みとの比が小さく、できるだけ5%以下であり、保磁力が小さく、できるだけ10mA/cm以下、好ましくは5mA/cm以下であることを前提とする。」
オ.「【0017】
透磁率が12,000以上で非常に大きく、その上、殆ど予備磁化に無関係なので、このような磁心を備えた変流器の絶対位相誤差及び絶対振幅誤差は非常に小さい。絶対振幅誤差は1‰以下、絶対位相誤差は0.1°以下にもなる。」
カ.「【0041】
この変流器は、透磁率が高いことにより、正確な電流検出が可能であるにもかかわらず、特に小さい体積を有する。」
キ.「【0057】
この熱処理の後磁心は、最後に、例えば、適当な合成樹脂材での含浸、コーティング、封止及び/又はケースへの封入により固められ、それぞれ少なくとも変流器の二次巻線を設けられる。」
上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。
a.引用文献1には、「変流器での使用に適した磁心」が記載されている(摘示事項イ.)。
b.「変流器での使用に適した磁心」は、
「体積の少なくとも50%が100nm或いはそれ以下の平均粒子サイズをもつ微細な結晶粒子によって占められている強磁性合金(超微結晶合金)の鋼帯(B)を巻回してなり、
12,000~300,000の透磁率を持ち、
1ppmより小さい飽和磁気歪みを持ち、
実質的に機械応力がなく、
磁心(M)の磁化がそれに沿って特に容易に方向付けされ、かつ鋼帯(B)の中心線が通る面に対して垂直である異方性軸(A)を持ち、
前記合金が本質的に以下の式で表される組成を備えている変流器での使用に適した磁心。
FeaCobCucSidBeMf
ただし、Mは元素V、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr及びHfの少なくとも1つであり、a~fは原子%で表して以下の条件を満たす。
0.5≦c≦2、6.5≦d≦18、5≦e≦14、1≦f≦6であってd+e>18及び0≦b≦15であり、a+b+c+d+e+f=100。」である(摘示事項ア.)。
c.磁心は、適当な合成樹脂材でのケースへの封入により固められる(摘示事項キ.)。
d.保磁力が10mA/cm以下である(摘示事項エ.)。
以上を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。
「体積の少なくとも50%が100nm或いはそれ以下の平均粒子サイズをもつ微細な結晶粒子によって占められている強磁性合金(超微結晶合金)の鋼帯(B)を巻回してなり、
適当な合成樹脂材でのケースへの封入により固められ、
12,000~300,000の透磁率を持ち、
1ppmより小さい飽和磁気歪みを持ち、
実質的に機械応力がなく、
保磁力が10mA/cm以下であり、
磁心(M)の磁化がそれに沿って特に容易に方向付けされ、かつ鋼帯(B)の中心線が通る面に対して垂直である異方性軸(A)を持ち、
前記合金が本質的に以下の式で表される組成を備えている変流器での使用に適した磁心。
FeaCobCucSidBeMf
ただし、Mは元素V、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr及びHfの少なくとも1つであり、a~fは原子%で表して以下の条件を満たす。
0.5≦c≦2、6.5≦d≦18、5≦e≦14、1≦f≦6であってd+e>18及び0≦b≦15であり、a+b+c+d+e+f=100。」
(2)対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比する。
ア.鉄心
引用発明1は、「変流器での使用に適した磁心」であるから、本願発明と引用発明1とは、「鉄心」である点で一致する。
イ.加工
引用発明1は、「強磁性合金(超微結晶合金)の鋼帯(B)を巻回してな」るから、本願発明と引用発明1とは、「強磁性合金のテープを巻込んでリング状テープ鉄心の形状に加工してな」る点で一致する。
ウ.固定
引用発明1は、「適当な合成樹脂材でのケースへの封入により固められ」るから、本願発明と引用発明1とは、「槽内に固定される」点で一致する。
もっとも、本願発明は、「弱弾性の反応性接着剤及び弱塑性の非反応性のペーストの少なくとも一方を用いて絶縁性プラスチック槽内に固定される」のに対し、引用発明1は、「適当な合成樹脂材でのケースへの封入により固められ」る点で相違する。
エ.比透磁率
本願発明は、「1500よりも大きく6000よりも小さい比透磁率μ」を有するのに対し、引用発明1は、「12,000~300,000の透磁率を持」つ点で相違する。
オ.飽和磁気歪
引用発明1は、「1ppmより小さい飽和磁気歪みを持」つから、本願発明と引用発明1とは、「15ppmより小さい飽和磁気歪λ」を有する点で一致する。
カ.保磁力
引用発明1は、「保磁力が10mA/cm以下であ」るから、本願発明と引用発明1とは、「1A/cm未満の保磁力Hc」を有する点で一致する。
キ.超微結晶合金
引用発明1の「強磁性合金(超微結晶合金)」は、「体積の少なくとも50%が100nm或いはそれ以下の平均粒子サイズをもつ微細な結晶粒子によって占められている」から、本願発明と引用発明1とは、「前記強磁性合金の少なくとも50%は、平均粒径が100nm以下の微細結晶粒子によって占められて」いる(超微結晶合金)点で一致する。
ク.組成
本願発明は、
「前記強磁性合金は、式FeaCobNicCudMeSifBgXhで表され、ここに、MはV、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Cr、Mn及びHfの少なくとも1つであり、a、b、c、d、e、f、gは原子%で表され、XはP、Ge、C並びに不可避の不純物を表し、a、b、c、d、e、f、g、hが、
0≦b≦10、
5≦c≦15、
0.8≦d≦1、
2.1≦e≦3、
11≦f≦15.9、
6.6≦g≦9、
h<5原子%、そして
b≦c、
ここに、a+b+c+d+e+f+g+h=100
という条件を満たしている」のに対し、引用発明1は、
「前記合金が本質的に以下の式で表される組成を備えている
FeaCobCucSidBeMf
ただし、Mは元素V、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr及びHfの少なくとも1つであり、a~fは原子%で表して以下の条件を満たす。
0.5≦c≦2、6.5≦d≦18、5≦e≦14、1≦f≦6であってd+e>18及び0≦b≦15であり、a+b+c+d+e+f=100」点で相違する。
そうすると、本願発明と引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「強磁性合金のテープを巻込んでリング状テープ鉄心の形状に加工してなり、
槽内に固定される鉄心であって、
15ppmより小さい飽和磁気歪λと、1A/cm未満の保磁力Hcとを有し、
前記強磁性合金の少なくとも50%は、平均粒径が100nm以下の微細結晶粒子によって占められている(超微結晶合金)
鉄心。」の点。
そして、次の点で相違する。
<相違点>
ア.本願発明は、「弱弾性の反応性接着剤及び弱塑性の非反応性のペーストの少なくとも一方を用いて絶縁性プラスチック槽内に固定される」のに対し、引用発明1は、「適当な合成樹脂材でのケースへの封入により固められ」る点。
イ.本願発明は、「1500よりも大きく6000よりも小さい比透磁率μ」を有するのに対し、引用発明1は、「12,000~300,000の透磁率を持」つ点。
ウ.本願発明は、
「前記強磁性合金は、式FeaCobNicCudMeSifBgXhで表され、ここに、MはV、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Cr、Mn及びHfの少なくとも1つであり、a、b、c、d、e、f、gは原子%で表され、XはP、Ge、C並びに不可避の不純物を表し、a、b、c、d、e、f、g、hが、
0≦b≦10、
5≦c≦15、
0.8≦d≦1、
2.1≦e≦3、
11≦f≦15.9、
6.6≦g≦9、
h<5原子%、そして
b≦c、
ここに、a+b+c+d+e+f+g+h=100
という条件を満たしている」のに対し、引用発明1は、
「前記合金が本質的に以下の式で表される組成を備えている
FeaCobCucSidBeMf
ただし、Mは元素V、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr及びHfの少なくとも1つであり、a~fは原子%で表して以下の条件を満たす。
0.5≦c≦2、6.5≦d≦18、5≦e≦14、1≦f≦6であってd+e>18及び0≦b≦15であり、a+b+c+d+e+f=100」点。
(3)判断
そこで、上記相違点イ.について検討する。
引用文献2には、「平滑チョークコイル等に使用する場合のように、むしろ透磁率が低く恒透磁率性に優れている方が直流重畳特性等が改善されて好ましい場合がある」(【0003】)ことが記載されている。
しかしながら、引用発明1は、変流器に使用した際に、従来の技術に比較して測定すべき電流のより高い測定精度を、同時に経済的な構成とコンパクトな構造サイズにおいて可能とする磁心を提供することを課題とし(摘示事項ウ.)、透磁率が12,000以上で非常に大きく、その上、殆ど予備磁化に無関係なので、このような磁心を備えた変流器の絶対位相誤差及び絶対振幅誤差は非常に小さく(摘示事項オ.)、この変流器は、透磁率が高いことにより、正確な電流検出が可能であるにもかかわらず、特に小さい体積を有する(摘示事項カ.)ものであるから、引用文献2に記載された事項を参酌したとしても、引用発明1において、その特徴を損なうことになる、比透磁率の「12,000~300,000」から「1500よりも大きく6000よりも小さい」値への変更の動機付けを得ることはできない。
引用文献3には、「鉄心4は第8図に示すように数枚積層して合成樹脂製ケース1のリング状空間3内に入れ、隙間にグリスを充填してガタがないようにし、合成樹脂製の蓋5で第9図、第10図に示すように合成樹脂製ケース1を密閉した」(2頁左上欄20行~右上欄5行)ことが記載され、引用文献4には、「プラスチックのケース内に接着或いはモールドされた磁石鉄心」(【0003】)が記載され、引用文献5には、「軟磁性鉄心を備え、電力用エレクトロニクス機器の給電線に挿入される電流補償されたノイズ抑制リアクトル」(【0001】)が記載されているが、引用文献3ないし5に記載された事項を参酌したとしても、引用発明1において、その特徴を損なうことになる、比透磁率の「12,000~300,000」から「1500よりも大きく6000よりも小さい」値への変更の動機付けを得ることはできない。
したがって、上記相違点ア.及びウ.について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明1及び引用文献2ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
請求項2、3に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、引用発明1及び引用文献2ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
請求項4、5に係る発明は、「交流用変流器」であって、本願発明と同じ「鉄心」を含むものであるので、本願発明と同様に、引用発明1及び引用文献2ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
請求項6に係る発明は、「電流補償型リアクトル」であって、本願発明の「鉄心」を含むものであるので、本願発明と同様に、引用発明1及び引用文献2ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
第4 平成28年5月24日付けで通知した当審拒絶理由について
1.平成28年5月24日付けで通知した当審拒絶理由の概要
(1)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
請求項1ないし17に対して刊行物1ないし5
刊行物1:特開2000-119821号公報(引用文献2)
刊行物2:特表2002-530854号公報(引用文献1)
刊行物3:特開昭63-128705号公報(引用文献3)
刊行物4:特表2002-524840号公報(引用文献4)
刊行物5:特開平9-190910号公報(引用文献5)
(2)本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項1、7、8、12に記載された鉄心の特性である、1000(500)以上10000(15000)以下の比透磁率μと、15(10)ppmより小さい飽和磁気歪λと、少なくとも50%は、平均粒径が100(50)nm以下の微細結晶粒子によって占められている強磁性合金(超微結晶合金)が、請求項1ないし4、12に記載された強磁性合金の組成のみで実現できるとは考えられず、かつ、具体的な実現方法が発明の詳細な説明に記載されていないから、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし17に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
2.平成28年5月24日付けで通知した当審拒絶理由についての判断
理由(1)について
ア.刊行物
平成28年5月24日付けで通知したの拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である刊行物1(平成12年4月25日公開)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)
(ア)「【請求項2】 一般式:(Fe1-aMa)100-x-y-cAxM’yX’c(原子%)で表され、式中、MはCo,Niから選ばれた少なくとも一種の元素、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種の元素、M’はZr,Nb,Mo,Hf,TaおよびWから選ばれた少なくとも一種の元素、X’はSiおよびBを示し、a,x,yおよびcはそれぞれa≦0.5ただしNi≦0.2、0.1≦x≦3、1.5≦y≦10、4≦c≦22、ただし、Si量が11原子%以下を満足する組成であり、組織の一部が平均粒径50nm以下の結晶粒からなり、磁気異方性が付与され、磁化困難軸方向の初透磁率が8000以下であることを特徴とする恒透磁率性に優れた高飽和磁束密度低損失磁性合金。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トランス、チョ-クコイル等の磁性部品に用いられる高飽和磁束密度で恒透磁率性に特に優れた低磁心損失を示すナノ結晶軟磁性合金およびそれを用いた低損失で高性能な磁性部品に関する。」
(ウ)「【0007】本発明合金の一部には平均粒径50nm以下の結晶粒が形成している。前記結晶粒は組織の30%以上の割合であることがより望ましく、特に好ましくは50%以上である。この場合応力等による磁気特性の劣下を特に小さくできる。特に望ましい平均結晶粒径は5nmから30nmであり、この範囲で特に低い磁心損失が得られる。」
(エ)「【0022】(実施例3)表2に示す組成の合金溶湯を大気中あるいはAr雰囲気中の単ロ-ル法により急冷し、幅10mm、厚さ12μmのアモルファス合金薄帯を作製した。Zr,Hfを含む合金は大気中では製造できず、Arガス雰囲気中で製造した。このアモルファス合金薄帯を外径19mm、内径15mmに巻回し、トロイダル磁心を作製した。この合金磁心を図3に示す熱処理パタ-ンで熱処理し磁気測定を行った。熱処理後の合金中には粒径50nm以下の極微細な結晶粒が形成していた。表2に飽和磁束密度Bs、角形比Br/Bs、比初透磁率μi、磁束密度が1Tにおける比透磁率μ1T、μ1T/μiおよび100kHz,0.2Tにおける磁心損失Pcvを示す。本発明合金は飽和磁束密度Bsが高く、角形比Br/Bs、比初透磁率μiが10000以下でμ1T/μiが1に近く恒透磁率性に優れており、かつ磁心損失Pcvが低いためノーマルモードのチョークコイルやトランス用の磁心材料に好適である。一方、本発明外のナノ結晶合金はμ1T/μiが1より小さく恒透磁率性が劣っている。また、本発明外の透磁率の低い合金は、磁心損失が大きく、ノーマルモードのチョークコイルやトランスには適さない。」
上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。
(a)刊行物1には、「トランス、チョ-クコイル等の磁性部品に用いられる高飽和磁束密度で恒透磁率性に特に優れた低磁心損失を示すナノ結晶軟磁性合金」が記載されている(摘示事項(イ))。
(b)「ナノ結晶軟磁性合金」は、「一般式:(Fe1-aMa)100-x-y-cAxM’yX’c(原子%)で表され、式中、MはCo,Niから選ばれた少なくとも一種の元素、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種の元素、M’はZr,Nb,Mo,Hf,TaおよびWから選ばれた少なくとも一種の元素、X’はSiおよびBを示し、a,x,yおよびcはそれぞれa≦0.5ただしNi≦0.2、0.1≦x≦3、1.5≦y≦10、4≦c≦22、ただし、Si量が11原子%以下を満足する組成であり、組織の一部が平均粒径50nm以下の結晶粒からなり、磁気異方性が付与され、磁化困難軸方向の初透磁率が8000以下である恒透磁率性に優れた高飽和磁束密度低損失磁性合金。」である(摘示事項(ア))。
(c)合金溶湯を急冷してアモルファス合金薄帯を作製し、このアモルファス合金薄帯を巻回してトロイダル磁心を作製した(摘示事項(エ))。
(d)合金の一部には平均粒径50nm以下の結晶粒が形成しており、前記結晶粒は組織の50%以上の割合であることが特に好ましい(摘示事項(ウ))。
以上を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。
「合金溶湯を急冷してアモルファス合金薄帯を作製し、このアモルファス合金薄帯を巻回して作製したトロイダル磁心であって、
合金は、
ナノ結晶軟磁性合金であり、
一般式:(Fe1-aMa)100-x-y-cAxM’yX’c(原子%)で表され、式中、MはCo,Niから選ばれた少なくとも一種の元素、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種の元素、M’はZr,Nb,Mo,Hf,TaおよびWから選ばれた少なくとも一種の元素、X’はSiおよびBを示し、a,x,yおよびcはそれぞれa≦0.5ただしNi≦0.2、0.1≦x≦3、1.5≦y≦10、4≦c≦22、ただし、Si量が11原子%以下を満足する組成であり、組織の50%以上が平均粒径50nm以下の結晶粒からなり、磁気異方性が付与され、磁化困難軸方向の初透磁率が8000以下である恒透磁率性に優れた高飽和磁束密度低損失磁性合金である
磁心。」
イ.対比
そこで、本願発明と引用発明2とを対比する。
(ア)鉄心
引用発明2は、「磁心」であるから、本願発明と引用発明2とは、「鉄心」である点で一致する。
(イ)加工
引用発明2は、「合金溶湯を急冷してアモルファス合金薄帯を作製し、このアモルファス合金薄帯を巻回して作製したトロイダル磁心」であるから、本願発明と引用発明2とは、「強磁性合金のテープを巻込んでリング状テープ鉄心の形状に加工してな」る点で一致する。
(ウ)固定
本願発明は、「弱弾性の反応性接着剤及び弱塑性の非反応性のペーストの少なくとも一方を用いて絶縁性プラスチック槽内に固定される」のに対し、引用発明2は、そのような特定がない点で相違する。
(エ)比透磁率
本願発明は、「1500よりも大きく6000よりも小さい比透磁率μ」を有するのに対し、引用発明2は、「磁化困難軸方向の初透磁率が8000以下である」点で相違する。
(オ)飽和磁気歪
本願発明は、「15ppmより小さい飽和磁気歪λ」を有するのに対し、引用発明2は、そのような特定がない点で相違する。
(カ)保磁力
本願発明は、「1A/cm未満の保磁力Hc」を有するのに対し、引用発明2は、そのような特定がない点で相違する。
(キ)超微結晶合金
引用発明2の「合金」は、「組織の50%以上が平均粒径50nm以下の結晶粒からな」るから、本願発明と引用発明2とは、「前記強磁性合金の少なくとも50%は、平均粒径が100nm以下の微細結晶粒子によって占められて」いる(超微結晶合金)点で一致する。
(ク)組成
本願発明は、
「前記強磁性合金は、式FeaCobNicCudMeSifBgXhで表され、ここに、MはV、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Cr、Mn及びHfの少なくとも1つであり、a、b、c、d、e、f、gは原子%で表され、XはP、Ge、C並びに不可避の不純物を表し、a、b、c、d、e、f、g、hが、
0≦b≦10、
5≦c≦15、
0.8≦d≦1、
2.1≦e≦3、
11≦f≦15.9、
6.6≦g≦9、
h<5原子%、そして
b≦c、
ここに、a+b+c+d+e+f+g+h=100
という条件を満たしている」のに対し、引用発明2は、
「一般式:(Fe1-aMa)100-x-y-cAxM’yX’c(原子%)で表され、式中、MはCo,Niから選ばれた少なくとも一種の元素、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種の元素、M’はZr,Nb,Mo,Hf,TaおよびWから選ばれた少なくとも一種の元素、X’はSiおよびBを示し、a,x,yおよびcはそれぞれa≦0.5ただしNi≦0.2、0.1≦x≦3、1.5≦y≦10、4≦c≦22、ただし、Si量が11原子%以下を満足する組成であ」る点で相違する。
そうすると、本願発明と引用発明2とは、次の点で一致する。
<一致点>
「強磁性合金のテープを巻込んでリング状テープ鉄心の形状に加工してなる
鉄心であって、
前記強磁性合金の少なくとも50%は、平均粒径が100nm以下の微細結晶粒子によって占められている(超微結晶合金)鉄心。」
そして、次の点で相違する。
<相違点>
(ア)本願発明は、「弱弾性の反応性接着剤及び弱塑性の非反応性のペーストの少なくとも一方を用いて絶縁性プラスチック槽内に固定される」のに対し、引用発明2は、そのような特定がない点。
(イ)本願発明は、「1500よりも大きく6000よりも小さい比透磁率μ」を有するのに対し、引用発明2は、「磁化困難軸方向の初透磁率が8000以下である」点で相違する。
(ウ)本願発明は、「15ppmより小さい飽和磁気歪λ」を有するのに対し、引用発明2は、そのような特定がない点で相違する。
(エ)本願発明は、「1A/cm未満の保磁力Hc」を有するのに対し、引用発明2は、そのような特定がない点で相違する。
(オ)本願発明は、
「前記強磁性合金は、式FeaCobNicCudMeSifBgXhで表され、ここに、MはV、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Cr、Mn及びHfの少なくとも1つであり、a、b、c、d、e、f、gは原子%で表され、XはP、Ge、C並びに不可避の不純物を表し、a、b、c、d、e、f、g、hが、
0≦b≦10、
5≦c≦15、
0.8≦d≦1、
2.1≦e≦3、
11≦f≦15.9、
6.6≦g≦9、
h<5原子%、そして
b≦c、
ここに、a+b+c+d+e+f+g+h=100
という条件を満たしている」のに対し、引用発明2は、
「一般式:(Fe1-aMa)100-x-y-cAxM’yX’c(原子%)で表され、式中、MはCo,Niから選ばれた少なくとも一種の元素、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種の元素、M’はZr,Nb,Mo,Hf,TaおよびWから選ばれた少なくとも一種の元素、X’はSiおよびBを示し、a,x,yおよびcはそれぞれa≦0.5ただしNi≦0.2、0.1≦x≦3、1.5≦y≦10、4≦c≦22、ただし、Si量が11原子%以下を満足する組成であ」る点。
ウ.判断
そこで、上記相違点(オ)について検討する。
刊行物1に記載された実施例の組成の中に、本願発明の組成を満たすものはないから、刊行物1に記載された実施例を参酌したとしても、引用発明2において、組成を本願発明の組成に変更する動機付けを得ることはできない。
刊行物2には、「熱処理の後磁心は、最後に、例えば、適当な合成樹脂材での含浸、コーティング、封止及び/又はケースへの封入により固められ」る(【0057】)ことが記載され、刊行物3には、「鉄心4は第8図に示すように数枚積層して合成樹脂製ケース1のリング状空間3内に入れ、隙間にグリスを充填してガタがないようにし、合成樹脂製の蓋5で第9図、第10図に示すように合成樹脂製ケース1を密閉した」(2頁左上欄20行~右上欄5行)ことが記載され、刊行物4には、「プラスチックのケース内に接着或いはモールドされた磁石鉄心」(【0003】)が記載され、刊行物5には、「軟磁性鉄心を備え、電力用エレクトロニクス機器の給電線に挿入される電流補償されたノイズ抑制リアクトル」(【0001】)が記載されているが、刊行物2ないし5に記載された事項を参酌したとしても、引用発明2において、組成を本願発明の組成に変更する動機付けを得ることはできない。
したがって、上記相違点(ア)ないし(エ)について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明2及び刊行物2ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
請求項2、3に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、引用発明2及び刊行物2ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
請求項4、5に係る発明は、「交流用変流器」であって、本願発明と同じ「鉄心」を含むものであるので、本願発明と同様に、引用発明2及び刊行物2ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
請求項6に係る発明は、「電流補償型リアクトル」であって、本願発明の「鉄心」を含むものであるので、本願発明と同様に、引用発明2及び刊行物2ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
理由(2)について
平成29年3月14日付け手続補正により、本願の請求項1、4は、鉄心の「加工」及び「固定」に関する特定を有し、明細書の表5において、「比透磁率」、「飽和磁気歪」及び「保磁力」に関する特定を満たしうる合金の「組成」に関する特定を有するように補正された。そして、表5には、熱処理のパラメータが示されている。このことにより、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし6に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとなった。
よって、理由(2)は解消した。
3.平成28年5月24日付けで通知した当審拒絶理由についてのむすび
そうすると、もはや、平成28年5月24日付けで通知した当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。
第5 平成28年11月10日付けで通知した当審拒絶理由について
1.平成28年11月10日付けで通知した当審拒絶理由の概要
(1)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項1、請求項6、請求項1を引用する請求項9は、それぞれ、「鉄心」、「交流用変流器」、「電流補償型リアクトル」という物の発明であるが、請求項1、請求項6の「横方向磁界中で熱処理されており、」との記載は、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、請求項1ないし11にはその物の製造方法が記載されているといえる。
ここで、物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号)。
しかしながら、本願明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとも言えない。
したがって、請求項1ないし11に係る発明は明確でない。
(2)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
ア.請求項1、請求項6の「厚さ60μm未満の」との限定事項は、発明の詳細な説明に記載されていないから、請求項1ないし11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
イ.請求項7の「最大7.5°の位相誤差を持つ」との限定事項は、発明の詳細な説明に記載されていないから、請求項7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
ウ.請求項10、請求項11の「定格電流の少なくとも10(20)%の漏れ電流が流れた時でも、150kHz~1MHzの周波数範囲内で少なくとも20dBの挿入減衰量を持つ」との限定事項は、発明の詳細な説明に記載されていないから、請求項10、11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
エ.請求項1、請求項6には、「1000以上10000以下の比透磁率μと、15ppmより小さい飽和磁気歪λとを有する」との限定事項及び合金の組成に関する限定事項が記載されているが、表1ないし5に記載された鉄心のうち、「1000以上10000以下の比透磁率μと、15ppmより小さい飽和磁気歪λとを有する」を満たすのは、表1に記載された各鉄心及び表5に記載された3c、4、8、9b、10、11、13、15、19ないし21のみであり、これらの鉄心を構成する合金以外の組成で「1000以上10000以下の比透磁率μと、15ppmより小さい飽和磁気歪λとを有する」を満たすものは、発明の詳細な説明に記載されてない。
したがって、請求項1ないし11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されていないものを含んでいる。
(3)本件出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項1、請求項6には、「1000以上10000以下の比透磁率μと、15ppmより小さい飽和磁気歪λとを有する」との限定事項及び合金の組成に関する限定事項が記載されているが、表1ないし5に記載された鉄心のうち、「1000以上10000以下の比透磁率μと、15ppmより小さい飽和磁気歪λとを有する」を満たすのは、表1に記載された各鉄心及び表5に記載された3c、4、8、9b、10、11、13、15、19ないし21のみであり、これらの鉄心を構成する合金以外の組成で「1000以上10000以下の比透磁率μと、15ppmより小さい飽和磁気歪λとを有する」を満たすものは、発明の詳細な説明に記載されてない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、請求項1ないし11に係る発明のうち、表1に記載された各鉄心及び表5に記載された3c、4、8、9b、10、11、13、15、19ないし21を構成する合金以外の組成で「1000以上10000以下の比透磁率μと、15ppmより小さい飽和磁気歪λとを有する」を満たすものについて、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
2.平成28年11月10日付けで通知した当審拒絶理由についての判断
理由(1)について
平成29年3月14日付け手続補正により、本願の請求項1、4は、「横方向磁界中で熱処理されており、」との記載を有しないように補正された。このことにより、請求項1ないし6に係る発明は明確となった。
よって、理由(1)は解消した。
理由(2)について
同手続補正により、本願の請求項1、4は、「厚さ60μm未満の」との限定事項を有しないように補正された。このことにより、請求項1ないし6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
よって、不備(ア)は解消した。
同手続補正により、「最大7.5°の位相誤差を持つ」との限定事項を有する請求項は削除された。
よって、不備(イ)は解消した。
同手続補正により、「定格電流の少なくとも10(20)%の漏れ電流が流れた時でも、150kHz~1MHzの周波数範囲内で少なくとも20dBの挿入減衰量を持つ」との限定事項を有する請求項は削除された。
よって、不備(ウ)は解消した。
同手続補正により、本願の請求項1、4は、明細書の表5において、「比透磁率」、「飽和磁気歪」及び「保磁力」に関する特定を満たしうる合金の「組成」に関する特定を有するように補正された。このことにより、請求項1ないし6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
よって、不備(エ)は解消した。
理由(3)について
平成29年3月14日付け手続補正により、本願の請求項1、4は、明細書の表5において、「比透磁率」、「飽和磁気歪」及び「保磁力」に関する特定を満たしうる合金の「組成」に関する特定を有するように補正された。そして、表5には、熱処理のパラメータが示されている。このことにより、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし6に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとなった。
よって、理由(3)は解消した。
3.平成28年11月10日付けで通知した当審拒絶理由についてのむすび
そうすると、もはや、平成28年11月10日付けで通知した当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。
第6 むすび
上記のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-012571