特許拒絶査定不服審判
2015-012231
可撓性複合材料の非破壊試験
- 審判番号
- 2015-012231
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-544558外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年06月29日
- 審決日
- 2017年03月21日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ゲイツ コーポレイション
- 【請求人代理人】松浦 孝
- 【請求人代理人】小倉 洋樹
- 分類
- P18 .121-WY (G01N) / P18 .537-WY (G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-544558「可撓性複合材料の非破壊試験」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月21日国際公開、WO2012/082477、平成26年 4月24日国内公表、特表2014-510259、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年12月7日(パリ条約による優先権主張 平成22年12月17日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年8月26日付けで拒絶理由が通知され、同年12月18日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年3月19日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)されたところ、同年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後当審において平成28年6月30日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年9月30日付けで意見書及び手続補正書が提出され、さらに当審において同年12月8日付けで最後の拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、平成29年1月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明(以下、「本願発明1」ないし[本願発明11」という。)は、平成29年1月25日に提出された手続補正書により補正(以下、「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものと認められる。
そのうち、本願発明1及び本願発明6は、分説してA)からH)の符号を付けると、以下の事項により特定される発明である。
「【請求項1】
A) 可撓性のエラストマ複合材料の物品内の内部構造物における異常や、可撓性のエラストマ複合材料からなるタイヤ、ホース、またはベルトの物品間の内部構造物における差を試験する方法であって、
B) ホルダまたは試験のための支持構造物によって固定された位置に前記可撓性のエラストマ複合材料の物品の一部を取り付け、
C) 前記物品を圧電の加速度計を有するタッパを用いてタッピングし、
D) 前記タッピングの衝撃の継続時間を電子回路により測定し、
E) 前記衝撃の継続時間と参照値との比較によってエラストマ母材材料の強化繊維構造物への浸透における差を示す
方法。」
「【請求項6】
F) 歯付き動力伝達ベルトの一部を剛体の支持構造物上に配置されることで2つのベルトの歯の間のランド領域において支持し、
G) 所定の重さのタッパを用いて支持された前記ランド領域上をタッピングし、
H) 前記タッピングの衝撃の継続時間を表す値を測定する
方法。」
第3 原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項1-15
・引用例1:特開昭63-58124号公報
・引用例2:特開平9-158989号公報
・引用例3:特開平5-338752号公報
・引用例4:特開平4-296643号公報
請求項1ないし15に係る発明は、引用例1ないし4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 当審による拒絶理由の概要
1 当審拒絶理由1の概要
(理由1)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
(1)請求項1において「前記物品を圧電の加速度計を用いてタッピングし、」とあることから、「圧電の加速度計」は加速度の測定を行いながら、物品に対して「タッピングの衝撃」を加えるものと認められ、すなわち、計測と駆動の二つの機能を有するものと認められるが、それがどのような構成によって実現されるのか不明であり、請求項1に係る発明が明確に把握できない。
請求項1の記載を引用する請求項2ないし7に係る発明についても同様である。
よって、請求項1ないし7に係る発明は、明確でない。
(2)請求項2において「前記比較」と記載されている。そして、請求項2が引用する請求項1において、「参照値と比較する」と記載されていることから、請求項1には、動詞としての「比較」は記載されているが、名詞としての「比較」は記載されておらず、「前記比較」が何をさすのか不明確である。
同様のことは、請求項3についてもいえる。
よって、請求項2、及び、請求項3に係る発明は、明確でない。
(3)請求項5において「前記取り付け」と記載されている。そして、請求項5が引用する請求項1において、「物品の一部を取り付け、」と記載されていることから、請求項1には、動詞としての「取り付け」は記載されているが、名詞としての「取り付け」は記載されておらず、「前記取り付け」が何をさすのか不明確である。
同様のことは、請求項7についてもいえる。
よって、請求項5、及び、請求項7に係る発明は、明確でない。
(4)請求項5において、「前記物品に与圧をかける」とあるが、「与圧をかける」とは、どのような状態にすることをさすのか明確でない。また、「与圧をかける」とは、予め圧力をかけるという意味であるとも考えられるが、圧力のかけ方には様々な態様が想定され、この記載では、どのような状態にすることをさすのか不明である。
よって、請求項5に係る発明は、明確でない。
(5)請求項6において、「前記応力」とあるが、請求項6が引用する請求項1には「応力」についての記載が存在しないことから、「前記応力」が何をさすのか不明である。
よって、請求項6に係る発明は、明確でない。
(理由2)
本願の下記の請求項に係る発明は、その出願(優先日)前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項1、2、4ないし12、14について
・引用例A:特開平3-68842号公報
・引用例B:特開昭63-58124号公報(上記原査定の理由における引用例1)
要すれば、請求項1、2、4ないし12、14に係る発明は、引用例Aに記載された事項に、引用例Bに記載された事項を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 当審拒絶理由2の概要
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
・請求項6、8ないし12について
請求項6に係る発明に関して、本願の発明の詳細な説明には、「可撓性のエラストマ複合材料からなるタイヤ、ホース」「の物品の一部をプーリ上に配置」する点が記載されているとは認められず、また、ベルトの場合においても、ベルトの一部のみをプーリ上に配置して試験が行われる点が本願の発明の詳細な説明に記載されているとは認められない。
よって、請求項6及びそれに従属する請求項8~12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。
第5 当審の判断
1 進歩性について
原査定の主引用例である引用例1に記載されている発明より、当審拒絶理由1の理由2で提示した引用例Aに記載されている発明の方が、本願発明1及び本願発明6により近い技術であるといえることから、本願発明1及び本願発明6の進歩性について、当審拒絶理由1の理由2から判断することとする。
(1) 当審拒絶理由1の理由2について
ア 引用例に記載された事項
(ア) 引用例A
引用例Aには、以下の記載がある(下線は当審において付与。以下、同様。)。
(引A-ア) 第1頁左下欄第4行-第16行
「2.特許請求の範囲
(1).製品の表面に打撃具にて打撃を与え、打撃に伴う打撃具と製品との接触時間を力センサーにて検出し、該接触時間の長短から、製品の内部性状を把握することを特徴とする製品検査方法。
(2).コンベアと、該コンベアを駆動する回転駆動源と、該コンベア上に載置した製品の該コンベア上の位置を検出し、製品を所定位置に停止させるように該回転駆動源を制御する位置検出センサーと、所定位置に停止した製品の表面に打撃を与える打撃具を備える打撃装置と、該打撃具に作用する力を検出する力センサーとを備えることを特徴とする製品検査装置。」
(引A-イ) 第1頁右下欄第1行-第8行
「〔従来の技術及びその課題〕
例えばプラスチック製品、ブレーキ用のデイスクパツド、ライニング等の複合材料製品にあつては、製造条件の微妙な相違によつて、成形後にひび割れや内部ふくれ等の品質不良を生じている場合がある。このため、成形後にひび割れの有無や硬さが所定値にあるかどうかを検査する必要を生ずる。」
(引A-ウ) 第2頁左上欄第3行-第9行
「〔課題を解決するための手段]
この発明は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたものであり、その製品検査方法の構成は、製品の表面に打撃具にて打撃を与え、打撃に伴う打撃具と製品との接触時間を力センサーにて検出し、該接触時間の長短から、製品の内部性状を把握する製品検査方法である。」
(引A-エ) 第3頁右下欄第3行-第14行
「 このような検査方法の原理は、次のとおりである。すなわち、第10図に相手部材がスチールの場合(a)とゴムの場合(b)とで示すように、二物体が衝突した際の接触時間は、硬い物程短く、また接触している間のみ力が作用し、離れてしまうと反力が無くなるため、力も生じない。つまり、
接触時間∝1/硬さ
接触時間=力の作用時間
となる。従つて、製品2の接触時間が所定よりも長い場合には、軟らかく、ひび割れ、内部ふくれ、穿孔等の発生が推定される。」
(引A-オ) 第4頁右下欄第9行-第11行
「 (3).製品の複数箇所に打撃を与えることにより、ひび割れ等の不良箇所を特定でき、不良品発生の原因を追求するための資料ともなる。」(当審注:(3)は○の中に3が記載されたもの。)
(引A-カ) 第5図-第8図
「
」
(引A-キ) 上記(引A-イ)、(引A-ウ)より、引用例Aに記載された発明が、「複合材料製品」を検査対象としていることは明らかであり、上記(引A-エ)において、「ゴムの場合」の実験が行われていることから、引用例Aに係る発明の検査対象には、ゴムを含む複合材料製品も含まれると認められる。
よって、上記(引A-ア)ないし(引A-キ)を含む引用例A全体の記載を参照し、a)ないしc)の符号を付与して整理すると、引用例Aには、
「a) ゴムを含む複合材料製品の表面に打撃具にて打撃を与え、
b) 打撃に伴う打撃具と製品との力の作用時間を力センサーにて検出し、
c) 該力の作用時間の長短から、製品の内部性状を把握する
方法。」
の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されている。
(イ) 引用例Bについて
引用例Bには、以下の記載がある。
(引B-ア) 第1頁左下欄第4行-第9行
「2.特許請求の範囲
1.力検出センサーまたは加速度検出センサーを取付けた打撃用のハンマーによる被検査物の打撃時に、力または加速度のパルス波形のパルス幅を検出するパルス幅計算回路を設けた打撃式構造変化検出装置。
(引B-イ) 第2頁右下欄第7行-第12行
「 以下、上記の構成からなる本発明の構造変化検出装置の原理を説明すると、第2図に示すごとく、打撃用のハンマー1は質量としてモデル化でき、被検査物10はバネとしてモデル化できる。ここでハンマー1の質量をmとし、バネのバネ定数をKとする。」
(引B-ウ) 第3頁左上欄第12行-右上欄第2行
「 一方、ハンマー1が被検査物10に接触している時間Tは、変位xが正に動いて再び元の位置にもどる時間であるから、(2)式のx=0より
T=π/ω。=π√m/K・・・ (5) (当審注:「m/K」は√の中にある。)となる。
ただし、πは円周率である。
したがって、接触時間Tは、ハンマー1の質量mと被検査物10のバネ定数Kのみによって決まり、打撃の強さ、即ち速度Vによっては変化しない。」
(引B-エ) 第3頁右上欄第7行-第10行
「 したがって、力検出センサー2、または加速度検出センサーの出力電気信号の波形より、接触時間Tを測定すれば、(5)式より被検査物10のバネ定数Kが測定できることになる。」
イ 本願発明1について
(ア) 対比
本願発明1と引用発明Aとを対比する。
a 本願発明1のA)の特定事項について
(a) 引用発明Aの「ゴムを含む複合材料製品」は、本願発明1の「エラストマ複合材料の物品」に相当する。
(b) 引用発明Aの「製品の内部性状」は、製品の内部の状態を指すことは当業者にとって明らかである。そして、「製品の内部性状を把握する」ことが、内部の状態の異常の有無の検出を目的としていることは、当業者にとって明らかであるから、引用発明Aの「製品の内部性状を把握する方法」は、本願発明1の「物品内の内部構造物における異常を試験する方法」に相当する。
(c) よって、引用発明Aの「ゴムを含む複合材料製品の」「内部性状を把握する方法」は、本願発明1の「エラストマ複合材料の物品内の内部構造物における異常を試験する方法」に相当する。
b 本願発明1のB)の特定事項について
引用発明Aは、本願発明1のB)の特定事項を具備していない。
c 本願発明1のC)の特定事項について
(a) 引用発明Aの「打撃具」は、本願発明1の「タッパ」に相当し、引用発明Aの「打撃を与え」ることは、本願発明1の「タッピング」することに相当する。
(b) よって、引用発明Aの「ゴムを含む複合材料製品の表面に打撃具にて打撃を与え」ることは、本願発明1の「前記物品を」「タッパを用いて」「タッピング」することに相当する。
d 本願発明1のD)の特定事項について
(a) 本願発明1の「タッピングの衝撃の継続時間」は、明細書の段落【0018】における「好ましい試験方法では、可撓性複合材料が圧電の加速度計をタッピングの重さとして用いてタップされ、そして電子回路がその重さとサンプルの接触時間を計測する。その接触時間、τ(通常は数百マイクロ秒である)が部分的なバネ剛性k(メガニュートン/メータで表される)に変換され、可撓性複合材料の機械的状態の計測用に使用され得る。単純なバネモデルはτ=π√mT/k、ここでmTはタッパの質量である、という関係を生じさせる。」の記載を参照すると、タッパとサンプルの接触時間を指すと認められ、引用発明Aの「打撃に伴う打撃具と製品との力の作用時間」と同義のものといえる。
したがって、引用発明Aの「打撃に伴う打撃具と製品との力の作用時間」は、本願発明1の「タッピングの衝撃の継続時間」に相当する。
(b) 引用発明Aにおける「検出」することは、本願発明1における「測定」することに相当する。
(c) 以上のことから、引用発明Aの「打撃に伴う打撃具と製品との力の作用時間を」「検出」することは、本願発明1の「タッピングの衝撃の継続時間を」「測定」することに相当する。
e 本願発明1のE)の特定事項について
(a) 引用発明Aは、「力の作用時間の長短」に基づいて把握を行うものであるが、「長短」に基づいて把握を行うのであれば、何らかの長短の判断の基準となる値、すなわち、参照値との比較が行われ、その比較の結果、把握が行われることは当業者にとって明らかである。
(b) また、引用発明Aは、「把握」が行われる過程において、上記の比較の結果が何らかの形で示されることも明らかであるから、引用発明Aの「把握する」は、本願発明1の「示す」に相当する。
よって、引用発明Aの「力の作用時間の長短から」「把握する」ことは、本願発明1の「衝撃の継続時間と参照値との比較によって」「示す」ことに相当する。
(c) 引用発明Aの「製品の内部性状」は、製品の内部の状態といえ、また、本願発明1の「エラストマ母材材料の強化繊維構造物への浸透における差」も、「エラストマ複合材料の物品内の内部構造物」の状態といえるから、引用発明Aの「力の作用時間の長短から、製品の内部性状を把握する」ことと、本願発明1の「衝撃の継続時間と参照値との比較によってエラストマ母材材料の強化繊維構造物への浸透における差を示す」ことは、「衝撃の継続時間と参照値との比較によってエラストマ複合材料の物品内の内部構造物の状態を示す」点で共通する。
よって、本願発明1と引用発明Aは、以下の点で一致する。
<一致点>
エラストマ複合材料の物品内の内部構造物における異常を試験する方法であって、
前記物品をタッパを用いてタッピングし、
前記タッピングの衝撃の継続時間を測定し、
前記タッピングの衝撃の継続時間と参照値との比較によってエラストマ複合材料の物品内の内部構造物の状態を示す
方法。
そして、以下の点で、両者は相違する。
<相違点1>
エラストマ複合材料の物品をタッピングするにあたって、本願発明1は、エラストマ複合材料の物品が可撓性であり、ホルダまたは試験のための支持構造物によって固定された位置に前記可撓性のエラストマ複合材料の物品の一部を取り付けるのに対して、引用発明Aは、そのような構成を有さない点。
<相違点2>
タッパに関して、本願発明1は、圧電の加速度計を有するタッパを用いるのに対して、引用発明Aは、その点が不明である点。
<相違点3>
タッピングの衝撃の継続時間の測定に関して、本願発明1は、電子回路により測定するのに対して、引用発明Aは、その点が不明である点。
<相違点4>
タッピングの衝撃の継続時間により示される内部構造物の状態が、本願発明1は、エラストマ母材材料の強化繊維構造物への浸透における差であるのに対して、引用発明Aでは、その点が不明である点。
(イ) 判断
上記した各相違点のうち、まず、相違点4について、以下に検討する。
引用例Bには、上記「ア 引用例に記載された事項」「(イ) 引用例Bについて」に示した事項が記載されている。
しかしながら、引用例Bには、本願発明1の上記相違点4に係る構成について、記載も示唆もされておらず、また、上記相違点4に係る構成が、本願出願(優先日)前周知であることを示す根拠もない。
してみると、引用例A及び引用例Bに接した当業者といえども、上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項を想起することができない。
(ウ) 小括
よって、本願発明1の、その余の相違点に係る構成について検討するまでもなく、本願発明1は、引用例A及び引用例Bに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5は、本願発明1の発明特定事項をすべて含み、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、引用例A及び引用例Bに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 本願発明6について
(ア) 対比
本願発明6と引用発明Aとを対比する。
a 本願発明6のF)及びG)の特定事項について
(a) 本願発明6の歯付き動力伝達ベルトは、ゴムを含む複合材料製品といえるから、引用発明Aの「ゴムを含む複合材料製品」と、本願発明6の「歯付き動力伝達ベルト」は、「ゴムを含む複合材料製品」という点で共通する。
(b) 引用発明Aの「打撃具」は、本願発明6の「タッパ」に相当し、引用発明Aの「打撃を与え」ることは、本願発明6の「タッピング」することに相当する。
(c) よって、引用発明Aの「打撃具にて打撃を与え」ることは、本願発明6の「タッパを用いて」「タッピング」することに相当する。
(d) 引用発明Aの「ゴムを含む複合材料製品」の「表面」と、本願発明6の「歯付き動力伝達ベルトの」「支持された」「ランド領域上」は、タッピングを行うための「ゴムを含む複合材料製品」の「対象部位」である点で共通する。
(e) よって、本願発明6と引用発明Aは、「タッパを用いてゴムを含む複合材料製品の対象部位をタッピング」する点で共通する。
b 本願発明6のH)の特定事項について
(a) 本願発明6の「タッピングの衝撃の継続時間」は、上記「イ 本願発明1について」「(ア) 対比」「d 本願発明1のD)の特定事項について」「(a)」において検討したように、引用発明Aの「打撃に伴う打撃具と製品との力の作用時間」と同義のものといえる。
よって、引用発明Aの「打撃に伴う打撃具と製品との力の作用時間」は、本願発明6の「タッピングの衝撃の継続時間」に相当する。
(b) 引用発明Aの「時間を」「検出」することは、本願発明6の「時間を表す値を測定する」ことに相当する。
(c) 以上のことから、引用発明Aの「打撃に伴う打撃具と製品との力の作用時間を」「検出」することは、本願発明6の「タッピングの衝撃の継続時間を表す値を測定する」ことに相当する。
よって、本願発明6と引用発明Aは、以下の点で一致する。
<一致点>
タッパを用いてゴムを含む複合材料製品の対象部位をタッピングし、
タッピングの衝撃の継続時間を表す値を測定する
方法。
そして、以下の点で、両者は相違する。
<相違点5>
ゴムを含む複合材料製品のタッピングを行うにあたって、本願発明6は、ゴムを含む複合材料製品が歯付き動力伝達ベルトであり、該ベルトの一部を剛体の支持構造物上に配置されることで2つのベルトの歯の間のランド領域において支持し、支持された前記ランド領域上をタッピングするのに対して、引用発明Aは、そのような構成とはなっていない点。
<相違点6>
タッパに関して、本願発明6は、所定の重さのタッパを用いているのに対して、引用発明Aは、その点が不明である点。
(イ) 判断
上記した各相違点のうち、まず、相違点5について、以下に検討する。
引用例Bには、上記「ア 引用例に記載された事項」「(イ) 引用例Bについて」に示した事項が記載されている。
しかしながら、引用例Bには、本願発明6の上記相違点5に係る構成について、記載も示唆もされておらず、また、上記相違点5に係る構成が、本願出願(優先日)前周知であることを示す根拠もない。
してみると、引用例A及び引用例Bに接した当業者といえども、上記相違点5に係る本願発明6の発明特定事項を想起することができない。
(ウ) 小括
よって、本願発明6の、その余の相違点に係る構成について検討するまでもなく、本願発明6は、引用例A及び引用例Bに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本願発明7ないし11について
本願発明7ないし11は、本願発明6の発明特定事項をすべて含み、本願発明6をさらに限定したものであるので、本願発明6と同様に、引用例A及び引用例Bに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
カ まとめ
以上のことから、本願発明1ないし11は、引用例A及び引用例Bに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことから、当審拒絶理由1の理由2によっては、本願を拒絶することができない。
(2) 原査定の理由について
ア 各引用例の記載事項
各引用例の記載事項は以下のとおりである。
(ア) 引用例1
引用例1は、当審拒絶理由2で引用した引用例Bに相当し、上記「(1) 当審拒絶理由1の理由2について」「ア 引用例に記載された事項」「(イ) 引用例Bについて」において指摘した事項が記載されている。
(イ) 引用例2
引用例2には、動力伝動用ベルトの心線のホツレ性と耐屈曲疲労性を評価するにあたって、空隙面積の比率を指標として評価する点が記載されている(【0014】、【0028】-【0030】参照。)。
(ウ) 引用例3
引用例3には、コンベヤベルトにおいて、スチールコード内部へのゴム等の浸透性を向上させる技術思想が記載されている(【0001】参照)。
(エ) 引用例4
引用例4には、画像処理を用いたベルトの外面欠陥の検査に関する事項が記載されている(【0001】、【0002】、【0015】、【0016】参照)。
イ 本願発明1について
(ア) 対比
本願発明1と引用例1に記載された発明とは、少なくとも、以下の点において相違する。
<相違点4>
タッピングの衝撃の継続時間により示される内部構造物の状態が、本願発明1は、エラストマ母材材料の強化繊維構造物への浸透における差であるのに対して、引用例1に記載された発明は、そのような構成となっていない点。
(イ) 判断
上記相違点4について検討する。
上記引用例2ないし4のいずれにも、本願発明1の上記相違点4に係る構成について、記載も示唆もされておらず、また、上記相違点6に係る構成が、本願出願(優先日)前周知であることを示す根拠もない。
してみると、引用例1ないし4に接した当業者といえども、上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項を想起することができない。
(ウ) 小括
よって、本願発明1の、その余の相違点に係る構成について検討するまでもなく、本願発明1は、引用例1ないし4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本願発明2ないし5について
本願発明2いし5は、本願発明1の発明特定事項をすべて含み、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、引用例1ないし4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 本願発明6について
(ア) 対比
本願発明6と引用例1に記載された発明とは、少なくとも、以下の点において相違する。
<相違点5>
ゴムを含む複合材料製品のタッピングを行うにあたって、本願発明6は、ゴムを含む複合材料製品が歯付き動力伝達ベルトであり、該ベルトの一部を剛体の支持構造物上に配置されることで2つのベルトの歯の間のランド領域において支持し、支持された前記ランド領域上をタッピングするのに対して、引用例1に記載された発明は、そのような構成とはなっていない点。
(イ) 判断
上記相違点5について検討する。
上記引用例2ないし4のいずれにも、本願発明6の上記相違点1に係る構成について、記載も示唆もされておらず、また、上記相違点1に係る構成が、本願出願(優先日)前周知であることを示す根拠もない。
してみると、引用例1ないし4に接した当業者といえども、上記相違点5に係る本願発明6の発明特定事項を想起することができない。
(ウ) 小括
よって、本願発明6の、その余の相違点に係る構成について検討するまでもなく、本願発明6は、引用例1ないし4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
オ 本願発明7ないし11について
本願発明7ないし11は、本願発明6の発明特定事項をすべて含み、本願発明6をさらに限定したものであるので、本願発明6と同様に、引用例1ないし4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
カ まとめ
以上のことから、本願発明1ないし11は、引用例1ないし4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
2 記載不備について
(1) 当審拒絶理由1の理由1について
理由1(1)について
本件補正後の請求項1においては、「圧電の加速度計を用いてタッピングし」の記載は「圧電の加速度計を有するタッパを用いてタッピングし」に補正されており、記載が明確になったことから、当審拒絶理由1の理由1(1)は解消した。
理由1(2)について
本件補正後の請求項1においては、動詞の「比較する」が名詞の「比較」に補正されており、前記請求項1の記載を引用する本件補正後の請求項2における「前記比較」の記載が何を指すのかが明確になったことから、当審拒絶理由1の理由1(2)は解消した。
理由1(3)について
本件補正後の請求項4及び5においては、名詞の「取り付け」が「取り付けること」に補正されており、それらの「取り付けること」が、該請求項4及び5が引用する、本件補正後の請求項1における動詞の「取り付け」を指すものであることが明確になったことから、当審拒絶理由1の理由1(3)は解消した。
理由1(4)について
本件補正後においては、理由1(4)の指摘を行った請求項は削除されたことにより、当審拒絶理由1の理由1(4)は解消した。
理由1(5)について
本件補正後においては、理由1(5)の指摘を行った請求項は削除され、補正後の請求項4において「前記取り付けることが前記物品を屈曲させること」との限定がなされた。
その結果、明確でない記載が残る請求項はなくなり、当審拒絶理由1の理由1(5)は解消した。
以上のことから、当審拒絶理由1の理由1(1)ないし(5)は解消した。
(2) 当審拒絶理由2について
本件補正により、補正前の請求項6の記載は削除された。
その結果、当審拒絶理由2は解消した。
以上のことから、当審拒絶理由2は、解消した。
第6 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由、当審による拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-012231