商標無効審判
2014-890028
ブロマガ
- 審判番号
- 2014-890028
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2013-077007
- 登録番号
- 5654405
- 請求日
- 2014年04月25日
- 審決日
- 2020年04月06日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ドワンゴ
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】田中 克郎
- 【請求人代理人】宮川 美津子
- 【請求人代理人】波田野 晴朗
- 【請求人代理人】江頭 あがさ
- 【請求人代理人】右馬埜 大地
- 【被請求人】エフシーツー,インク.
- 【被請求人代理人】涌井 謙一
- 【被請求人代理人】山本 典弘
- 【被請求人代理人】鈴木 一永
- 【被請求人代理人】工藤 貴宏
- 【被請求人代理人】三井 直人
- 審判長/審判官
- 審判長 木村 一弘
- 審判官 小出 浩子
- 審判官 板谷 玲子
- 分類
- T111 .22 -ZC (W42) / T111 .26 -ZC (W42) / T111 .222-ZC (W42)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項11号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第19号、商標法第50条第1項、商標法第4条第1項第10号、商標法第54条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5654405号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第5654405号の指定役務中、第42類「インターネットウェブサイトを介してのコンピュータプログラムの提供,ウェブサイトの開発用のダウンロードできないソフトウエアのオンラインでの一時的な使用の提供,ウェブサイトを介して行うコンピュータプログラムの提供,ウェブサイト経由から接続可能なダウンロードできないソフトウェアアプリケーションの一時使用の提供,ウェブサイト用のコンピュータプログラムの提供,ウェブベースのアプリケーションの一時的な使用の提供,ウェブベースのソフトウェアの一時的な使用の提供,ウェブページのアクセス記録を表示処理するためのコンピュータプログラムの提供,ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,他人のウェブサイトへのリンクのための電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供」についての登録を無効とする。
その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5654405号商標(以下「本件商標」という。)は、「ブロマガ」の片仮名と「BloMaga」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、平成25年10月3日に登録出願、同26年2月21日に登録査定、別掲1のとおりの役務を指定役務として同年3月7日に設定登録されたものである。
なお、本件商標の商標権は、商標法第50条第1項の商標登録の取消しの審判が請求され(審判の請求の登録日は平成30年12月28日)、令和元年6月24日にその商標登録を取り消す旨の審決がされ、同年10月31日にこれが確定登録されたことにより、該商標権の登録は抹消されているところ、本件商標の商標登録に対する無効審判の請求の登録日は、平成26年5月19日とするものである。
第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する登録商標(以下、併せて「引用商標」という場合がある。)は、つぎのとおりである。
1 登録第5023859号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ブロマガ/BlogMag」の文字(スラッシュを含む。)を横書きしてなり、平成18年4月12日に登録出願、別掲2のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として同19年2月9日に設定登録されたものである。
その後、商標権の一部について、商標法第50条第1項の商標登録の取消しの審判が請求され、その指定役務中、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」(審判の請求の登録日は平成24年10月3日)については、同25年6月4日に、第9類「全指定商品」、第35類「全指定役務」、第38類「全指定役務」及び第42類「全指定役務」(いずれも審判の請求の登録日は平成25年10月7日)については、同26年11月28日にその登録を取り消す旨の審決がされ、同25年8月8日及び同27年1月30日に、これらが確定登録されたことにより、該商標権の登録は抹消されている。
2 登録第5617331号商標(以下「引用商標2」という。)は、「ブロマガ」の片仮名を標準文字で表してなり、平成24年9月27日に登録出願、別掲3のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として同25年9月20日に設定登録されたものである。
その後、商標権について、登録無効審判が請求(無効2017-890035)されたものの、平成30年4月26日商標登録を維持する旨の審決がされ、同31年4月4日に、それが確定登録されたことにより、該商標権は現に有効に存続しているものである。
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び審判事件弁駁書等において、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第145号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下、各号証の表記にあたっては、「甲○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。
1 請求の理由
(1)本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第7号及び同項第19号に該当するので、同法第46条第1項第1号により無効にされるべきである。
(2)請求人商標について
請求人商標は「ブロマガ」という標章(以下、単に「請求人商標」という場合がある。)であって、請求人自ら提供するブログ記事配信サービスの名称として、2012年8月21日から現在に至るまで使用されている。
(3)請求人商標の周知・著名性について
ア 請求人は、ネットワークを通じた娯楽サービスの先駆者として知られるインターネットにおける総合エンターテインメント企業である株式会社ドワンゴ(以下「ドワンゴ社」という。)の子会社として、多様なコンテンツの共有・配信サービスである「niconico」(以下「ニコニコ」という。)の企画・開発・運営等を行っている(甲6及び甲7)。請求人は、ニコニコのサービスの一つとして、請求人商標を使用したブログ記事配信サービス(以下「請求人ブログ記事配信サービス」という。)を提供しており、ニコニコの高い著名性と相まって、請求人ブログ記事配信サービスは、インターネット利用者の間で周知・著名となり、これに伴って請求人ブログ記事配信サービスの名称である請求人商標も、インターネット利用者の間で周知・著名となるに至った。
イ 請求人は、2006年に、動画共有サイトである「ニコニコ動画」のサービス提供を開始した。ニコニコ動画では、利用者間で、動画の特定の場面についてのコメントを共有できる(甲8)など、独自かつ画期的なコメント機能の他にも、動画の視聴者と投稿者が交流できる数多くの機能を提供しており、共有機能の充実とも相まって、爆発的にファン層を拡大し、「ニコニコ動画」は、2012年5月1日に、「niconico(ニコニコ)」が新しい総称となり、ニコニコのサービスのひとつとなった。
ニコニコのコンテンツの多くは会員登録した者が閲覧又は視聴できることからすれば、ニコニコの会員数は、そのままニコニコの利用者数といえる。
ニコニコの会員数及び一日の平均PV数は、2009年12月の一般会員数1500万人、プレミアム会員数60万人、平均PV(一日当たり)約6339万PVから増加し、2014年2月25日現在では一般会員数3894万人、プレミアム会員数223万人、平均PV(一日当たり)約1億2000万PVに達する(甲6)。
ただし、甲6については、平成29年2月10日付け審判事件弁駁書により、2012年8月21日の一般会員数2759万人、プレミアム会員数174万人、ブロマガページの月間PV数16万PVをはじめとして、2014年4月末の一般会員数3800万人、プレミアム会員数225万人、ブロマガページの月間PV数1579万PVまで訂正された。
また、請求人及びドワンゴ社(審決注:審判請求時の請求人は、「株式会社ニワンゴ」であったが、その後、合併により「株式会社ドワンゴ」となった。(平成29年1月13日付け上申書))は、「ニコニコ超会議」、「ニコニコ超会議2」、「ニコニコ町会議」などのニコニコが現実世界とコラボレートしたイベントを主催し(甲9ないし甲11)、ニコニコは政治の分野ともコラボレートしており(甲12及び甲13)、現役プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトの対局のニコニコ生中継なども行われている(甲10)。
この結果、ニコニコは、ジャンルや地域を問わず、日本国内において社会的に影響力を有するメディアとなっており、本件商標の登録出願時及び登録査定時において周知著名であったことは明らかである。
ウ 請求人は、ニコニコの新たなサービスとして、「ニコニコチャンネル」のチャンネル開設者が投稿した文字や写真等で構成されたブログ記事を、メールマガジン又は電子書籍として、ニコニコの会員に有料又は無料で配信することを可能とする請求人ブログ記事配信サービスを企画し、その名称に請求人商標「ブロマガ」を使用し、2012年8月21日にサービスを開始した(甲14)。
請求人ブログ記事配信サービスは、新聞や雑誌で紹介されたことに加え(甲15ないし甲17)、新聞社や雑誌出版社が提供するニュースサイト、ポータルサイトで提供されるニュースサイト、IT関連の著名ニュースサイト、また、大手映画情報配信サイトなど日本全国に所在する多くのインターネット利用者が日常的にアクセスする主要なインターネットメディアにおいて、「ニコニコが有料メルマガに参入 動画や生放送とあわせて配信」などと大々的に取り上げられた(甲18ないし甲105)。
請求人ブログ記事配信サービスの購読の登録を行った利用者(以下「購読者」という。)の総数は、該サービスの開始から1か月後の2012年9月19日には既に1万人を突破していた(甲106)。
一方、被請求人が本件商標と同一の構成からなる登録第5621414号(以下「別件被請求人商標」という。)について登録出願を行ったのは、2012年9月13日である。
こうした記事やコラム等が掲載される中で、請求人商標は、IT用語辞典等に掲載されるまでになり(甲107ないし甲128)、請求人ブログ記事配信サービスの開始から1年2か月後の2013年10月28日には、ブログ記事の購読者の総数は10万人を突破した(甲129)。これは、被請求人が本件商標を登録出願した2013年10月3日のおよそ1か月後である。
また、2014年3月23日時点における購読者の総数は、13万7000人であり、利用者数は今も増加の一途をたどっている。
上記のとおり、被請求人により本件商標が出願された2013年10月3日時点では、ニコニコの会員数は、合計3610万人、本件商標の登録査定(送達日)があった2014年2月25日には合計3894万人となっていたことからすれば、請求人ブログ記事配信サービスの利用者の数は、3894万人と推認できる。
エ 以上の事実によれば、ニコニコの高い著名性と相まって、請求人ブログ記事配信サービスは、日本全国に所在するインターネットユーザの間で周知・著名となっている。その結果、請求人商標も、本件商標の出願時である2013年10月3日において、請求人が提供しているブログ記事配信サービスの名称として広く知られるに至っており、さらには、本件商標の登録査定時(送達日)である2014年2月25日においても継続してその周知・著名性を維持していたと優に推認できる。
(4)本件審判の請求に至る経緯
ア 請求人は、請求人ブログ記事配信サービスの開始直前に、株式会社ナノプロ(以下「ナノプロ社」という。)が引用商標1に係る商標登録を有している事実を知った(甲6)ので、請求人は、引用商標2「ブロマガ」について登録出願を行うとともに、引用商標1に対し、2012年9月27日に不使用取消審判の請求を行ったところ、ナノプロ社は、2011年9月16日に破産手続廃止の決定がなされていたことが判明し(甲130)、ナノプロ社の破産管財人との間で、引用商標1をナノプロ社から譲り受けるべく交渉を開始した。
その結果、2013年6月に、破産管財人より引用商標1の譲渡に応じるとの回答を受け、譲渡について合意し、同年8月13日に、請求人は、引用商標1について移転登録を受けた(甲3)。
イ 一方、被請求人は、2009年1月20日に「ブロマガ」という名称の有料ブログ記事の配信サービスを開始したと主張しているが、これが正しければ、被請求人は、ナノプロ社の商標権を侵害しながらサービスを開始したことになる。その上、被請求人はサービス開始後も、引用商標1の存在にもかかわらず、請求人がサービス提供を開始した2012年8月21日以降まで、引用商標1に対して無効審判や取消審判の請求を行うことなく、漫然と引用商標1に係る商標権侵害を行いながら、「ブロマガ」を使用していた。
被請求人は、2012年8月21日に請求人が請求人ブログ記事配信サービスの開始を発表し、瞬く間に請求人商標が請求人ブログ記事配信サービスの名称として周知性及び著名性を獲得していくのを目の当たりにし、同サービス開始からわずか23日後の2012年9月13日に引用商標1の指定役務中第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」について不使用取消審判の請求を行うと共に、本件商標と同一の構成からなる別件被請求人商標について登録出願を行った。
その後、引用商標1の第42類の指定役務部分に係る不使用取消審判が認められた結果、当該出願について2013年9月26日に登録査定を受けた。これを受けて、被請求人は、その約1週間後の2013年10月3日に本件商標について登録出願を行い、2014年2月25日に登録査定を受けた。
ウ 請求人が、2013年8月13日に引用商標1についての移転登録を受けて3か月程度が経過した後(引用商標2について登録公報が発行されたわずか1か月後)、突如、請求人は、被請求人から2013年11月18日付けで、請求人が「ブロマガ」を使用する行為は、別件被請求人商標の商標権を侵害する旨の通知書を受領した(甲131)。
被請求人の主張に対し、請求人は、非侵害を主張し、仮に別件被請求人商標の指定役務について使用するものであるとしても商標法第4条第1項第10号違反の無効理由があると反論した。
さらに、別件被請求人商標には他にも無効理由が存在することが判明したため、別件被請求人商標に対して無効審判を請求した(無効2014-890017(以下、「別件無効審判」という。))。また、別件被請求人商標と同一の商標について、同一又は類似の指定役務を指定する本件商標の登録が確認されたため、無効審判請求を行った。
(5)本件商標と引用商標の類似性について
本件商標と引用商標とは、観念上比較できないものであるが、「ブロマガ」の称呼を共通にするものであり、また外観上近似するものであるから、互いに相紛らわしい類似の商標といわなければならない。
(6)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標と引用商標とは、前記(5)のとおり、外観、観念及び称呼のいずれの点においても相紛らわしい類似の商標というべきものである。
イ つぎに、本件商標の指定役務中の「インターネットウェブサイトを介してのコンピュータプログラムの提供,ウェブサイトの開発用のダウンロードできないソフトウェアのオンラインでの一時的な使用の提供,ウェブサイトの開発用ソフトウェアの貸与,ウェブサイトを介して行うコンピュータプログラムの提供,ウェブサイト経由から接続可能なダウンロードできないソフトウェアアプリケーションの一時使用の提供,ウェブサイト用のコンピュータプログラムの提供,ウェブベースのアプリケーションの一時的な使用の提供,ウェブベースのソフトウェアの一時的な使用の提供,ウェブページのアクセス記録を表示処理するためのコンピュータプログラムの提供,ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,他人のウェブサイトへのリンクのための電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供又はこれに関する情報の提供,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供」は、いずれも特許庁作成の「類似商品・役務審査基準」に掲載されている第42類「電子計算機用プログラムの提供」の各種態様である。
他方、引用商標の指定商品中の第9類「電子応用機械器具及びその部品」は、出願当時採用されていた国際分類第8版の「類似商品・役務審査基準」によれば、「電子計算機用プログラム」が包含されているとみて差し支えない。
近年、「電子計算機用プログラム」は、記録媒体に記録された電子計算機用プログラムとして、店頭にて、あるいはダウンロードにより流通されているのみならず、インターネット等の通信回線を通じサーバー上に保管された電子計算機用プログラムを使用させる役務(電子計算機用プログラムの提供)として提供されている実情がみられ、このような役務を提供する者は総称して「アプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)」(以下「ASP」という。)と呼ばれ、一般的なものとなっている(甲132)。
上記事実に基づけば、本件商標の指定役務中の「電子計算機用プログラムの提供」の各役務と引用商標の指定商品中の「電子計算機用プログラム」は、流通におかれるプログラムの状態が、記憶媒体に記録されたものであるとか、利用者の端末に保存が可能であるとか可能でないとかという僅かな違いがあるとしても、役務の提供者と商品の製造・販売者を共通にする。
また、上記各役務・商品の需要者となるのは、共にコンピュータやインターネットの利用者であり需要者を共通にするものであって、さらに商品の販売場所と役務の提供場所、需要者の範囲、並びに商品と役務の用途・内容が共通である場合が多いため、密接な関係がある。
よって、本件商標と引用商標を、それぞれの指定役務及び指定商品に使用したときには、これに接する取引者・需要者が同一の営業主の製造・販売又は提供に係る役務又は商品と誤認・混同されるおそれがあるとみるのが相当である。
ウ したがって、本件商標の指定役務中の「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供又はこれに関する情報の提供,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供」は、引用商標の指定商品中の「電子計算機用プログラム」に類似する。
エ 本件商標の指定役務中の第42類「インターネットにおけるウェブサイト用のサーバの記憶領域の貸与,インターネット上の電子記憶空間(ウェブ空間)の提供又は貸与,ウェブサーバーの貸与,ウェブサイトにおけるサーバーの記憶領域の貸与,ウェブページ上の個人又は企業のスケジュール入力のための電子掲示板用サーバーの記憶領域の貸与,ウェブログ上の電子掲示板用サーバの記憶領域の貸与及びこれに関する情報の提供,インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与,ブログのためのサーバの記憶領域の貸与,インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」、「ウェブサイトのホスティングに関する助言及び情報の提供,ウェブサイトのホスティング及びこれに関する情報の提供,ウェブサイトの設計及びホスティング,ウェブポータルサイトのホスティング,ウェブポータルサイトの設計,ウェブログ(ブログ)のホスティング,カスタマイズされたウェブページのホスティング,クラウドコンピューティングの形態によって行われるコンピュータウェブサイトのホスティング,コンピューターサイトのホスティング(ウェブサイト)及びこれに関する助言,コンピュータウェブサイトのホスティング,コンピュータウェブサイトのホスティング及びこれに関する情報の提供,コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)及びこれに関する助言並びに情報の提供,図書館管理に使用するためのソフトウェアのウェブサイトのホスティング,双方向式のディスカッションの実施のためのオンラインウェブのホスティング」並びに「インターネットホームページを閲覧するための電子計算機の貸与」は、要するに第42類「サーバーの記憶領域の貸与」及び「ウェブサイトのホスティング」の各種態様と、「電子計算機の貸与」である。
オ 近年「電子計算機用プログラムの提供」は、記録媒体に記録された電子計算機用プログラムとして店頭を通じた販売あるいはダウンロードによる販売とともに広く一般的なものとなっており、このような役務を提供する者はASPと呼ばれる。ASPのサービスは、ネットワークを利用し、ソフトウェアを顧客に提供するビジネスモデルをいい、利用者はASP事業者側のサーバーで管理されるソフトウェアをネットワーク経由で利用し、ソフトウェアの利用料を支払う仕組みである(甲132)。
ASPの役務は、「サーバーの記憶領域の貸与」が不可欠となるので、これらを取り扱うASP事業者が存在する(甲138及び甲139)。
そして、「ウェブサイトのホスティング」に関する役務は、「ホスティングサービス」「ウェブホスティング」とも呼ばれ(甲140ないし甲143)、「自社施設に設置しインターネットに接続された情報発信用のコンピュータ(サーバ)の機能を、遠隔から顧客に利用させるサービス」をいい(甲140)、ソフトウェアの機能を利用させるASPとしての機能とデータ等をサーバー上に保管する「サーバーの記憶領域の貸与」(サーバーレンタル)の機能を併せ持つものである。また、ASP事業者の中には、単なるソフトウェアの提供やサーバーの(記憶領域の)貸与、ホスティングサービス(ウェブホスティング)にとどまらず、コンピュータ端末や周辺機器の貸与までを総合的に提供するASP事業者も存在する(甲144及び甲145)。
以上の事実に基づけば、本件商標の指定役務中の「サーバーの記憶領域の貸与」、「ウェブサイトのホスティング」及び「電子計算機の貸与」の各役務と「電子計算機用プログラムの提供」は極めて密接な関係を有し、「電子計算機用プログラムの提供」と類似する引用商標の指定商品中の「電子計算機用プログラム」においても、役務の提供者と商品の製造・販売者を共通にする場合が少なくない。
また、上記各役務・商品の需要者となるのは、共にコンピュータやインターネットの利用者であり需要者を共通にするものであって、さらに商品の販売場所と役務の提供場所、需要者の範囲、並びに商品と役務の用途・内容が共通である場合が多いため、密接な関係がある。
カ したがって、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品は、類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(7)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 被請求人は、引用商標1に係る商標権を侵害する態様で本件商標の使用を開始した上で、請求人商標が日本国内で広く一般に知られている商標である事実を知悉しながら、商標法制度を尊重して引用商標1に係る商標権侵害を回避するための手続及び旧商標権者との交渉を行っていた請求人の間隙を突き、請求人ブログ記事配信サービスを妨害する目的で、引用商標1の一部に取消事由があったことを奇貨として、引用商標1の一部の指定役務について取消審判請求を行い、取り消した引用商標1の役務と同一又は類似の役務について自ら別件被請求人商標及び本件商標を出願・登録し、別件被請求人商標が登録になった直後に、引用商標1の商標権者となった請求人による請求人商標の使用の妨害を試みているのであり、商標制度を利用して請求人のサービスを妨害する目的で剽窃的に別件被請求人商標及び本件商標を登録したものである。
イ したがって、本件商標(及び別件被請求人商標)の登録出願の経緯には、著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものであって、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」に該当し、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(8)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 請求人は、請求人商標を自らが提供するブログ記事配信サービスの名称として使用し、その結果、請求人商標は、本件商標の出願時である2013年10月3日において、日本国内において広く知られるに至っていたものであり、本件商標の登録査定時である2014年2月25日においても継続してその周知・著名性を維持していたと優に推認できるものである。
イ また、本件商標と請求人商標とは、観念においては比較できないものの、「ブロマガ」の称呼を共通にし、外観においても相紛らわしい類似の商標というべきものである。
ウ さらに、被請求人は、ナノプロ社が破産手続を開始する2011年9月の遥か以前である2009年1月20日から、ナノプロ社に何らの通知すら行うことなく、3年間にわたり、無断で引用商標1と類似する商標を使用し、引用商標1に係る商標権を侵害し続けていた。
ところが、被請求人は、本件商標について商標権を取得するための具体的な手続を行うことなく3年以上が経過した後、2012年8月21日に請求人が請求人商標を用いたブログ記事配信サービスであるブロマガを開始し、請求人商標がインターネット利用者の間で広く知られるようになるに至って、突然本件商標と同一の別件被請求人商標について商標登録出願したものである。
被請求人が、偶然にこの時期に別件被請求人商標の出願を行ったとは考え難く、本件商標及び別件被請求人商標の商標権者である被請求人は、請求人商標が、請求人ブログ記事配信サービスの名称に使用され、広く一般に知られている商標であることを知悉しながら、請求人商標が出願・登録されていないことを奇貨として同一又は類似の商標を先回り的に出願・登録し、登録になるや否やその使用の妨害を試みているのであり、本件商標及び別件被請求人商標は請求人に損害を与える目的、すなわち、不正競争の目的あるいは不正の目的を以って登録出願したと評価せざるを得ない。
エ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号について
被請求人は、「類似商品・役務審査基準」及び平成11年(行ケ)392号審決取消請求事件を挙げ、いわゆる「備考類似」についての基準が設けられた由来について延々と述べ、最終的に、ダウンロード不可能な電子計算機用プログラムの提供と、ダウンロード可能な電子計算機用プログラムの提供(販売)について、両者が類似しないと主張する。
しかしながら、両者が類似しない根拠としては、結局「前記役務の提供と前記商品の製造、販売とが同一の事業者によって行われていないこと、また役務の提供場所と商品の販売場所が一致しない」のがあたかも一般的であるかの如く主張するのみであり、その事実の立証、その事実を伺わせる取引の実情についての説明も一切なされておらず、被請求人の主張には具体的根拠がなく、合理性に欠くものである。
(2)商標法第4条第1項第7号について
ア 被請求人は、本件商標取得の経緯について、「ナノプロ社が『ブロマガ』に係る商標を使用している事実を確認できなかった。また、その商標登録を有している事実も認識していない。そして、今日にいたるまで、ナノプロから商標権侵害を指摘されたことは一度もなかった。」などと述べるが、これは、被請求人がナノプロ社の引用商標に係る商標権を侵害しながら漫然とサービスを開始したという事実と合致する。
また、被請求人は、自らが使用開始後3年以上もの間、引用商標について使用権を取得することもなく、本件商標について商標権を取得するための具体的な手続きを行っていなかったにもかかわらず、請求人が請求人商標「ブロマガ」を用いたブログ記事配信サービスを開始した後になって、引用商標に対する一部取消審判請求とともに本件商標について登録出願を行い、登録されるや否や、請求人に対して商標権侵害の警告を行った点について何ら合理的理由を説明していない。
イ 被請求人は、「2009年1月から3年半以上にわたって『ブロマガ』の名称でブログ記事配信サービスを展開しており、請求人が同様のサービスを開始した2012年8月時点で、インターネット上では一般に周知され、著名となっていたため、請求人の発表を受けて、自らのサービスを模倣されたものと認識した。」と説明する。
しかしながら、被請求人が、2009年1月から3年半以上にわたって「ブロマガ」の名称を用いて行ったという役務の内容が何であるかを示す証拠が何一つ提出されていないのであり、被請求人のいう「ブログ記事配信サービス」はもちろんのこと、これと「同様のサービス」が何たるかを理解することは困難である。しかも、これらのサービスが2012年8月時点で、被請求人による「ブロマガ」の名称を用いた何らかのサービスがわが国において需要者等の間で周知又は著名となっている事実は立証されていない。
ウ 被請求人は、「2012年8月21日前から引用商標1について破産管財人と交渉していたかのような請求人の主張は、客観的事実と矛盾するものであり信用できない。」と述べている。
しかしながら、請求人が取得したナノプロ社の登記情報によれば(甲130)、ナノプロ社の破産管財人として弁護士A氏の名前が掲載されていたため、その情報をもとに、最初に同氏に連絡をとったのは2012年の10月末のことであって、交渉を開始したのは2013年6月のことであり、何ら事実と矛盾するところはない。なお、請求人がA氏と交渉を開始した際に、請求人はナノプロの破産手続について廃止決定がされていることを十分に認識しておらず、同氏もナノプロの商標権の処分権限を有するものとして請求人に対応をしていたものである。そもそも、同氏が法的に当時破産管財人としての地位を有しておらず、この点において従前の請求人の主張に不正確な点があったとしても、かかる些細な事実誤認をもって請求人の主張事実の全部が事実に反するものとなるわけではない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
ア 請求人商標の周知・著名性について
被請求人は、わずか1か月足らずの間に商標法第4条第1項第19号にいう「需要者の間に広く認識されている商標」になったことを裏付ける証拠は何一つ提出されていないと主張する。
しかしながら、請求人は2012年夏頃にブログ記事配信サービスを企画し、その名称に請求人商標「ブロマガ」を使用し、2012年8月21日にサービスを開始した事実に関する証拠(甲14)に始まり、同ブログ記事配信サービスを開始した事実が、各種メディアで取り上げられた事実に関する証拠(甲15ないし甲105)、有料登録を行った利用者の総数が、サービス開始から1か月前後の短期間で1万人から1万2000人を突破していた事実に関する証拠(甲106)、インターネット記事やコラム等が掲載された事実に関する証拠(甲107ないし甲126)、IT用語辞典等に掲載されている事実に関する証拠(甲127及び甲128)などを現に提出している。
また、別件被請求人商標に対する別件無効審判の審決が存在するが、当該無効審判事件における請求人商標「ブロマガ」の周知性の有無の判断基準時が「2012年9月13日」であったのに対し、本件事案においては、周知性の有無の判断基準時である本件商標の出願時が「2013年10月3日」であって、前回の無効審判事件における周知性の有無の判断基準時から1年以上も期間が長くなるところから、本件事案の基準時における請求人商標の周知性は優に認められるべきである。
(ア)ニコニコの周知状況について
ニコニコはインターネットを通じたコンテンツの共有・配信サービスであって、極めて多くの閲覧回数(PV)を誇るものであるところ、インターネットの世界にとどまらず、さまざまなイベントを開催して世間の注目を集めてきたものである。
2013年9月7日から同月10日にかけて、オリンピック関連番組をニコニコ生放送にて配信したところ、その全番組の総視聴者数は112万4538人に達した(甲149)。
「ニコニコ」から派生したイベントとして、2013年4月27日及び28日の二日間,幕張メッセイベントホールにおいて、「ニコニコ超パーティーII」というライブイベントを開催、約111万人もの人が参加し、2013年12月26日のMUSICMAN-NETでも紹介されるとともに、関連の記事は、同年のアーティスト関連記事のアクセスランキングにおいて第2位と第4位にランクインし、世間の注目を集めたイベントとなった(甲150)。
2013年7月から9月にかけて開催された「ニコニコ町会議」(甲10)については、同年12月17日に、イベントのレポートが電子書籍として発売されたほど、高く注目された(甲151)。
2014年1月9日には、予告イベントとして「ニコニコ超会議3発表会」が開催され、注目された(甲152)。なお、ニコニコ超会議3等は、2014年4月26日から同27日まで幕張メッセで開催され、イベントの現地会場総来場者が12万4966人、インターネットにおける視聴者数が759万5978人にのぼる極めて人気の高いイベントとなった(甲153)。
2014年1月18日、19日には、同年のセンター試験を解いてみるという企画をニコニコ生放送で配信し、46万人の視聴者を集めた(甲154)。
2014年2月1日には、「東京都知事選挙候補者ネット討論」が開催され、ニコニコ生放送でも中継、ニコニコ生放送を含む各サイトでの視聴者数合計と放送終了後のアーカイブ視聴の視聴者数を合わせて、合計20万人となった(甲155)。
2014年2月7日から同月9日にかけて、ニコニコのユーザーに対して「大学受験に関するアンケート」を実施したところ、75万278人から回答を得た(なお、「回答しない」と回答したユーザーは無回答扱いとし、数字には入れていない。)(甲156)。
以上の事情により、ニコニコは、本件商標の出願時はもちろんのこと、登録時、現在においても周知・著名性を維持・発展していると考えられる。
(イ)ブロマガの周知性について
請求人の記事コンテンツ配信サービス「ブロマガ」は、本件商標の出願日前後から本件商標の登録日前後にかけて、同サービスの配信内容や利用者数に関して様々なメディアで取り上げられた。
a いわゆる五大紙を含む主要な新聞によって取り上げられた事実
2012年9月26日の日経MJ(甲157)、同年11月27日の産経新聞(甲158)、2013年1月7日の産経新聞(甲159)、同年3月15日の日本経済新聞(甲160)、同年5月15日の日経産業新聞(甲161)、2014年4月3日の読売新聞(甲162)、同月7日の毎日新聞(甲163)。
b インターネットメディアによって取り上げられた事実
2013年10月3日に、それまで企業や著名人が提供していたニコニコチャンネルを一般ユーザーに「ユーザーチャンネル」として開放する旨を発表した際には、そのニュースがCNET Japan、朝日新聞デジタル(Asahi.com)、MdNDesing Interactive、Ameba News、livedoorニュース、エキサイトニュース、MarkeZine、gooニュース、INTERNET Watch、ねとらぼ、ニコニコニュース、マイナビニュース、mixiニュース、ASCII.jp、IT mediaニュース、リアルサウンド、ビジネスジャーナル、ネットベンチャーニュース、起業SNS、週刊アスキーなど多くのインターネットメディアにおいて紹介された(甲164ないし甲194)。
2013年10月27日に、「ブロマガ」サービスの有料登録者数が10万人を突破したことがニュースとなり、IT media、 Ameba News、mixiニュース、INNTERNET Watch、ガジェット通信、livedoorニュース、エキサイトニュース、ニコニコニュース、マイナビニュース、週刊アスキー、ASCII.jpなど多くのインターネットメディアで取り上げられた(甲195ないし甲208)。
2013年12月9日に、「ユーザーチャンネル」第一弾の17チャンネルがスタートしたというニュースが、INTERNET Watch、 RBB TODAY、livedoorニュース、フレッシュアイニュースCNET Japan、マイナビニュース、mixiニュース、ウーマンエキサイト、エキサイトニュース、MarkeZine、ITライフハック、ITmediaニュース、ねとらぼ、日刊VOCAL、ガジェット通信、Ameba News、 ニコニコニュース、BLOGOS、週刊アスキーなど多くのインターネットメディアで取り上げられ、「ブロマガ」サービスが紹介された(甲209ないし甲231)。
各新聞社、インターネットメディアが公表している販売部数やPV数が示すとおり、これらは非常に多くの人が目にするメディアであり、そのメディアに当社のニコニコや「ブロマガ」サービスを特集した記事が掲載されていることから、当該記事自体、非常に多くの人の目に触れたものと考えられる。
以上のように、請求人の「ブロマガ」サービスは、同サービス開始後も、継続的に主要な新聞、インターネットメディアで取り上げられており、世間一般によく知られるに至っているものといえる。
c 「ブロマガ」サービスの内容とサービス利用者数について
「ブロマガ」サービスとは、ニコニコのサービスのうち、企業や団体、著名人など請求人と契約した者(以下「チャンネルオーナー」という。)が、各「チャンネル」で動画等のコンテンツを配信するサービスであるニコニコチャンネルの中で請求人が提供している、(a)チャンネルオーナーが「CHブロマガ」としてメールマガジン又は電子書籍形式の記事コンテンツを配信することを可能とするサービスと(b)プレミアム会員が「ユーザーブロマガ」としてメールマガジン又は電子書籍形式の記事コンテンツを配信することを可能とするサービスを意味する。
ニコニコチャンネルの登録者数は2013年10月末では11万6000人、2014年2月末には14万8000人を超えた(甲148別紙2)。このようにCHブロマガの利用者数は、本件商標の出願日前後から本件商標の登録日前後にかけて順調に増加している。
また、ユーザーブロマガは、ニコニコの会員であれば誰でもウェブ閲覧及びメール受信できるため、「ユーザーブロマガ」の閲覧者の総数は、ニコニコ会員数と同視でき、2013年10月末においては3468万人、2014年2月末においては3671万人を超えており、請求人の「ユーザーブロマガ」は極めて大規模なユーザーを擁している。
d まとめ
したがって、請求人商標「ブロマガ」は請求人が提供する記事コンテンツ配信サービスに使用される商標としてわが国において広く知られるに至っているというべきである。
イ 被請求人商標が周知・著名であったとの指摘について
被請求人は、被請求人の「ブロマガ」という名称を用いたサービスが既に周知・著名となっていたことが明らかである旨の指摘を行っている(乙7ないし乙9)。
しかしながら、乙7ないし乙9は、インターネット上の個人のブログ等で被請求人の「ブロマガ」サービスについての言及のあることを示すものにすぎず、被請求人の「ブロマガ」という名称を用いたサービスを知るものと思しき需要者が数人程度存在すると見込まれる事実のみを以ってして、全国的な周知である著名性はもちろんのこと、周知性すら認めることは不可能である。
ウ 不正の目的について
被請求人は、「請求人が述べる理由は単なる推測にすぎず、客観性のある証拠は何一つ提出されていない。」とする。
しかしながら、請求人が、被請求人が不正の目的をもって本件商標の登録出願を行ったと考える背景は、本件商標について商標登録出願した経緯そのものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
第4 被請求人の主張
1 答弁書
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を答弁書により要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 引用商標の指定商品「電子計算機用プログラム」と、本件商標の指定役務中の「インターネットウェブサイトを介してのコンピュータプログラムの提供,ウェブサイトの開発用のダウンロードできないソフトウェアのオンラインでの一時的な使用の提供,ウェブサイトの開発用ソフトウェアの貸与,ウェブサイトを介して行うコンピュータプログラムの提供,ウェブサイト経由から接続可能なダウンロードできないソフトウェアアプリケーションの一時使用の提供,ウェブサイト用のコンピュータプログラムの提供,ウェブベースのアプリケーションの一時的な使用の提供,ウェブベースのソフトウェアの一時的な使用の提供,ウェブページのアクセス記録を表示処理するためのコンピュータプログラムの提供,ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,他人のウェブサイトへのリンクのための電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供又はこれに関する情報の提供,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供」とは、非類似である。
イ 引用商標の指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」には「電子計算機」のほか「電子計算機用プログラム」が含まれている。これは、電子応用機械器具、電子計算機には電子計算機用プログラムがあらかじめ格納されて使用されることが多くなってきていることから、電子計算機のプログラムがこれらの電子応用機械器具の「部品」に相当すると考えられ、かかる経緯から「電子計算機用プログラム」が「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに追加されたものと思料される。
また、「電子計算機用プログラム」が、インターネットなどによりダウンロードしてあるいはダウンロードせずにインターネット上で「電子計算機用プログラム」を提供する場合も含めて「電子計算機用プログラムの提供」が電子応用部品の部品提供となる場合もある。この場合も、前記の「電子計算機用プログラム」が「電子応用機械器具及びその部品」に追加された経緯と同様の考え方が採用されて、「類似商品・役務審査基準」第9類の説明中「(備考)『電子計算機用プログラム』は、第42類の『電子計算機用プログラムの提供』に類似する。」と記載されたのである。
そうすると、第42類に属する「電子計算機用プログラムの提供」が第9類に属する「電子計算機用プログラム」に類似する場合は、あくまで、「電子計算機用プログラム」が電子応用機械器具の部品の一つであり、その提供は「電子応用機械器具の部品」の提供の一形態内であるとの考えに立脚しているといわざるを得ない。
そうであるならば、全ての「電子計算機用プログラムの提供」が、直ちに「電子応用機械器具の部品の提供」にはならない。
本件商標の指定役務は、「インターネットウェブサイトを介してのコンピュータプログラムの提供,ウェブサイトの開発用のダウンロードできないソフトウェアのオンラインでの一時的な使用の提供,ウェブサイトの開発用ソフトウェアの貸与,ウェブサイトを介して行うコンピュータプログラムの提供,ウェブサイト経由から接続可能なダウンロードできないソフトウェアアプリケーションの一時使用の提供,ウェブサイト用のコンピュータプログラムの提供,ウェブベースのアプリケーションの一時的な使用の提供,ウェブベースのソフトウェアの一時的な使用の提供,ウェブページのアクセス記録を表示処理するためのコンピュータプログラムの提供,ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,他人のウェブサイトへのリンクのための電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供又はこれに関する情報の提供,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供」(以下これを「被請求人のプログラムの提供に係る役務」という場合がある。)であり、これらの役務は、引用商標の指定商品「電子計算機用プログラム」とは全く別個に提供されるものである。
よって、本件商標の被請求人のプログラムの提供に係る役務と引用商標の指定商品「電子計算機用プログラム」とは、前記役務の提供と前記商品の製造、販売とが同一の事業者によって行われていないこと、また役務の提供場所と商品の販売場所が一致しないことなどから、両者は互いに類似しないと判断するのが相当である。かかる見解の判決例(平成11年(行ケ)392号)を提出する(乙1)。
ウ 引用商標の指定商品中の「電子計算機用プログラム」と、本件商標の指定役務中の「インターネットにおけるウェブサイト用のサーバの記憶領域の貸与,インターネット上の電子記憶空間(ウェブ空間)の提供又は貸与,ウェブサーバの貸与,ウェブサイトにおけるサーバの記憶領域の貸与,ウェブページ上の個人又は企業のスケジュール入力のための電子掲示板用サーバの記憶領域の賃与,ウェブログ上の電子掲示板用サーバの記憶領域の貸与及びこれに関する情報の提供,インターネットにおけるブログのためのサーバの記憶領域の貸与,ブログのためのサーバの記憶領域の貸与,インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」、「ウェブサイトのホスティングに関する助言及び情報の提供,ウェブサイトのホスティング及びこれに関する情報の提供,ウェブサイトの設計及びホスティング,ウェブポータルサイトのホスティング,ウェブポータルサイトの設計,ウェブログ(ブログ)のホスティング,カスタマイズされたウェブページのホスティング,クラウドコンピューティングの形態によって行われるコンピュータウェブサイトのホスティング,コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)及びこれに関する助言,コンピュータウェブサイトのホスティング,コンピュータウェブサイトのホスティング及びこれに関する情報の提供,コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)及びこれに関する助言並びに情報の提供,図書館管理に使用するためのソフトウェアのウェブサイトのホスティング,双方向式のディスカッションの実施のためのオンラインウェブのホスティング」及び「インターネットホームページを閲覧するための電子計算機の貸与」とは、非類似である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 本件において、請求人は、本件審判請求に至る経緯として、本件商標取得の経緯や引用商標取得の経緯等について縷々述べた上で、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くと主張するが、請求人主張の本件商標の登録出願の経緯は、いずれも自らに都合の良い事実のみを並べ、又は曲解したものであって、到底認められるものではない。
イ 被請求人は、2009年1月20日、自らが提供するブログ記事配信サービスの名称として「ブロマガ」という名称の使用を開始し、各種メディアでも取り上げられた(乙5の1ないし3)。
なお、被請求人は、2009年当時、ナノプロ社が「ブロマガ」に係る商標を使用している事実を確認できなかった。また、その商標登録を有している事実も認識していない。そして、今日に至るまで、ナノプロ社から商標権侵害を指摘されたことは一度もなかった。
その後、2012年8月21日、請求人が「ブロマガ」の名称を使用して、被請求人と同様のブログ記事配信サービスを開始することをマスメディアに発表した。被請求人としては、この当時既に、2009年1月から3年半以上にわたって「ブロマガ」の名称でブログ記事配信サービスを展開しており、請求人が同様のサービスを開始した2012年8月時点で、ブロマガの作者は4000人以上、配信した記事も10万件以上となっていた等、インターネット上では一般に周知され、著名となっていたため、請求人の発表を受けて、自らのサービスを模倣されたものと認識した。
そのため、被請求人は、自らの権利の保全を求めたところ、ナノプロ社が「ブロマガ」に係る商標登録を有している事実及びナノプロ社が当該商標を3年以上使用していない可能性が高いことが判明した。そこで、被請求人は、2012年9月13日、自らが使用する部分に限定して別件被請求人商標の登録出願をすると同時に、不使用取消審判を請求するに至ったのである。
この際、ナノプロ社においては、2011年9月16日時点で破産手続に関する費用不足による破産手続廃止の決定が確定していたため、破産管財人すら選任されていない状態であり、被請求人から清算人選任の申立てを行って、清算人を選任した上で、不使用取消審判の手続を進めるといった状況であった。
なお、請求人は、ナノプロ社の破産管財人と交渉し、引用商標1を譲り受けたと主張するが、上記のとおり、ナノプロ社には破産管財人すら存在しない状態であり、被請求人の申立てによって清算人が選任されたのは、2013年1月15日であることから(乙6)、2012年8月21日前から破産管財人と交渉していたかのように主張する請求人の主張は、客観的事実と矛盾し、信用できない。
また、被請求人としては、請求人とナノプロ社との交渉の経緯は全く認識していなかったが、請求人も、ナノプロ社の有する「ブロマガ」に係る商標について、不使用取消審判を請求しており、先願主義の下、被請求人の商標出願登録及び不使用取消審判の請求に遅れたため、なんとか挽回するためにナノプロ社から商標権を譲り受けようと考えたものと思われる。
ウ 以上のとおり、本件商標の登録出願の経緯は、被請求人が先行して提供していたサービスの名称である「ブロマガ」を自らの権利として保全するために行ったものであり、何ら社会的相当性、社会的妥当性を欠くものではない。
したがって、商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるとは到底いえず、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 請求人商標は、本件商標の登録出願時点において、日本国内における需要者に広く一般に周知され、著名であったとはいえず、また、本件商標の商標権者である被請求人は、請求人に損害を与える目的、すなわち、不正の目的をもって本件商標を使用するものではない。
イ 請求人商標の「周知・著名性」について
請求人が述べる請求人商標の「周知・著名性」は、請求人が提供する「ニコニコ」のサービスの周知・著名性であり、「ブロマガ」の周知・著名性を論じたものではない。請求人は、「ニコニコ」の周知・著名性を論じた後、「ニコニコの高い著名性と相まって」請求人商標も周知・著名となった、と論じるが、論理の飛躍も甚だしい。
請求人が「ブロマガ」の名称でサービスを開始したのは、2012年8月21日であり、本件商標(審決注:「別件被請求人商標」の誤記と認められる。)の登録出願がされたのが2012年9月13日である。わずか1か月足らずの間に商標法第4条第1項第19号にいう「需要者の間に広く認識されている商標」になったことを裏付ける証拠は何一つ提出されておらず、あまりにも客観性に乏しく、根拠のない主張であるといわざるを得ない。
したがって、本件商標の登録出願時点において、請求人商標は「周知性」を欠いている。
なお、請求人は、請求人商標の周知・著名性を主張するが、請求人が「ブロマガ」のサービス開始を発表した記者会見の際、記者から「ブロマガ」という同じ名称のサービスを既に被請求人が提供していることについて問われたこと(乙7)、請求人のプレスリリースの直後、インターネット上で、一般ユーザーが、「ブロマガ」という名称は既に被請求人が使用しているのではないか、といった指摘が複数あったこと(乙8の1及び2)、請求人がサービスを開始する以前、インターネット上で被請求人の「ブロマガ」サービスに関するQ&A等が見られること(乙9)等からすれば、請求人のサービス開始時点で、被請求人の「ブロマガ」という名称を使用したサービスが既に周知・著名となっていたことが明らかである。
ウ 不正の目的について
請求人は、本件商標が「不正の目的」で使用されていると主張するが、請求人が述べる理由は単なる推測にすぎず、客観性のある証拠は何一つ提出されていない。
請求人は、自ら「ブロマガ」という名称の使用を被請求人に遅れて開始しているが、そのことを棚に上げ、被請求人による本件商標の登録出願について、初めから被請求人が請求人を妨害しようとしている、不正の目的で商標を取得している、と決めつけ、根拠のない主張を展開しているだけである。
被請求人は、請求人が「ブロマガ」のサービスを開始する3年半以上も前から、「ブロマガ」という名称を使用して同様のサービスの提供をしており、その後、請求人が「ブロマガ」という全く同じ名称を使用し、被請求人と同様のサービスを開始することを知ったため、やむを得ず自らの権利を保全するために本件商標の登録出願を行ったものであるから、請求人に損害を与える目的、すなわち「不正の目的」は存在しない。
したがって、本件商標の使用において、「不正の目的」は存在せず、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
2 弁駁に対する答弁
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
引用商標1については、合計6回の不使用取消審判の請求の結果、その権利が全て消滅している。この内、権利の消滅が最も遅いものでも、その消滅の日は平成25年10月3日(審決注:平成25年10月7日の誤り。)となっているため、本件商標が引用商標1との関係において商標法第4条第1項第11号に該当しないことは明らかである。
次に、引用商標2については、審判請求人は、平成29年5月末までに「商標登録無効審判」を請求する。したがって、その請求が認容されることで、本件商標は、引用商標2との関係においても、商標法第4条第1項第11号には該当しないこととなる。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
被請求人が、他社の動向を知った時点から、自己の権利の保全のために、種々の対応をとること、すなわち、既存の登録商標に対する不使用取消審判を請求することや、新たに商標登録出願を行うこと等は、至極当然の対応であり、通常行う範囲の行為である。このことをもって、「本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠く」ということもできないし、「登録を認めることが商標法の予定する秩序に反する」等ということもできないことは明らかである。
なお、請求人は、「被請求人が、引用商標に係る商標権を侵害しながら漫然とサービスを開始した。」、「請求人が商標『ブロマガ』を用いたブログ記事配信サービスを開始した後になって、突然引用商標に対する一部取消審判請求とともに本件商標について登録出願を行い、登録されるや否や、請求人に対して商標権侵害の警告を行ったことについて何ら合理的理由を説明していない。」旨主張する。
しかし、他人の登録や他人のサービスの開始を知った時点で、自己の権利を保全するために、商標登録出願を行い、また、登録となった権利に基づいて、警告を行うということは、客観的にみて十分合理的な行為であるといえ、上記のような請求人の主張は失当であり、「その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠く」「登録を認めることが商標法の予定する秩序に反する」というのであれば、いかなる行為が「著しく社会相当性を欠く」等といえるのか、請求人がより詳細に立証すべきである。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第7号には該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 弁駁書における請求人の主張の要旨
請求人は、弁駁書において、別件無効審判の審決の判断基準時である、2012年9月13日から、1年程度が経過した本件商標の出願日の2013年10月3日時点において、請求人商標の周知性が認められるべきであり、本件商標の出願には「不正の目的」がある旨主張する。
イ 請求人商標の周知性について
甲149ないし甲156は、いずれも、あくまで「ニコニコ」関連のイベント等に関するニュース記事であって、いずれも「ブロマガ」の周知性とは関係がない。「ニコニコ」がいくら有名であったとしても、その名のもとにおいて提供する個々のサービスの名称までもが、周知・著名であるかという点とは直接に結びつくものではない。
次に、甲157ないし甲258は、「ブロマガ」の文字が、文中に記載されているに過ぎないものがほとんどであり、その多くは「ブロマガ」の文字が需要者・取引者において注目できる程度に、目立つ態様で使用されているものではない。また、甲164ないし甲194は、「ニコニコチャンネルが一般ユーザー向けに開放された」こと等に関するものであるが、その記事のリリースは、本件商標の出願日である2013年10月3日時点のものであるか、又はその数日後のものとなっている。さらに、甲209ないし231は、「ユーザーチャンネル第1弾のスタート」等に関するものであるが、いずれも、本件商標の出願日以降である、2013年12月頃のものとなっている。
これらの各証拠における記事の内容を見る限り、いずれも、「ブロマガ」サービス自体に焦点を当てたものでもなく、その取引者・需要者が、この記事から「ブロマガ」の語を請求人のサービスの目印として認識するとは考えられないし、各記事の日付を併せて考慮しても、このような類の証拠が、「本件商標の『出願時』に、『ブロマガ』が、請求人の提供するサービスを表示するものとして周知であった。」ことを示す証拠としては、甚だ不適切なものといわざるを得ない。
以上の点から見れば、請求人が提出したインターネット上の記述に係る多量の証拠は、請求人の商標「ブロマガ」が本件商標の出願時に、周知であることを証明するものとはいえず、これによりその周知性が認められるとは到底考えられない。
ウ 不正の目的について
「ブロマガを開始し、瞬く間に請求人商標がインターネット利用者の間で広く知られるに至った」という請求人の主張は、前述のとおり認められるものではないが、他社の動向を知った時点から、自己の権利の保全のために、種々の対応をとることは、至極当然であり、通常行う範囲の行為であるから、このことをもって、「本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠く」、「登録を認めることが商標法の予定する秩序に反する」ということはできないことは明らかである。
この点、請求人は、被請求人のこれらの行為が「偶然とは考え難く」等と述べるのみであり、その主張を立証する証拠の提出がなされていない。
以上のとおり、提出された証拠からは、請求人の「ブロマガ」が、本件商標の出願時において周知であったとは認められず、かつ、本件商標の出願について「不正の目的」を示す証拠も提出されていないため、本件商標は、商標法第4条第1項第19号には該当しない。
(4)結論
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同法第4条第1項第19号に該当しない。
また、同法第4条第1項第11号についても、引用商標に対して行う商標登録無効審判の請求の内容が認められることで、該当しないこととなる。
第5 当審の判断
1 請求人適格について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、被請求人はこれについて争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
以下、本案に入って審理する。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)引用商標1について
引用商標1の商標権は、前記第2、1のとおり、第9類「全指定商品」、第35類「全指定役務」、第38類「全指定役務」及び第42類「全指定役務」について、商標法第50条第1項の審判が請求され、その商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したものであるから、商標法第54条第2項の規定により、該取消審判の請求の登録の日である平成25年10月7日に、消滅したものとみなされる。
そうすると、本件商標の登録査定時である平成26年2月21日には、引用商標1の商標権は、すでに消滅していたとみなされるものであるから、本件商標は、引用商標1との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)本件商標と引用商標2との類否について
本件商標は、「ブロマガ」の片仮名と「BloMaga」の欧文字とを上下2段に表した構成からなるところ、その構成各文字から、「ブロマガ」の称呼を生じ、また、該「ブロマガ」の片仮名及び「BloMaga」の欧文字は、特定の意味を有しない一種の造語と認識されるものであるから、特定の観念を生じないものである。
他方、引用商標2は、「ブロマガ」の文字からなるものであるから、「ブロマガ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
そうすると、本件商標と引用商標2とは、観念において比較することができず、その構成全体の外観においては相違するものの、「ブロマガ」の片仮名において近似した印象を与えるものであり、「ブロマガ」の称呼を同じくするものである。
したがって、本件商標と引用商標2は、外観、称呼及び観念を総合すれば、互いに相紛らわしい類似の商標である。
なお、被請求人は、本件商標が引用商標2と類似する商標であることについて、争っていない。
(3)本件商標の指定役務と引用商標2の指定商品との類否について
商品と役務の類否は、それら商品及び役務に同一又は類似の商標が使用された場合、同一の営業主により提供又は製造・販売されるものと誤認されるおそれがある関係にあるか否かにより判断し、その際には、例えば、(a)商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるかどうか、(b)商品と役務の用途が一致するかどうか、(c)商品の販売場所と役務の提供場所が一致するかどうか、(d)商品と役務の需要者の範囲が一致するかどうかを総合的に考慮して個別具体的に判断するのが相当である。
ア 本件商標の指定役務中の「インターネットウェブサイトを介してのコンピュータプログラムの提供,ウェブサイトの開発用のダウンロードできないソフトウエアのオンラインでの一時的な使用の提供,ウェブサイトを介して行うコンピュータプログラムの提供,ウェブサイト経由から接続可能なダウンロードできないソフトウェアアプリケーションの一時使用の提供,ウェブサイト用のコンピュータプログラムの提供,ウェブベースのアプリケーションの一時的な使用の提供,ウェブベースのソフトウェアの一時的な使用の提供,ウェブページのアクセス記録を表示処理するためのコンピュータプログラムの提供,ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,他人のウェブサイトへのリンクのための電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供」(以下「本件役務」という場合がある。)は、提供に係る各プログラムの用途、内容等において若干相違するとしても、それぞれの内容表示に照らし、いずれも商標法施行規則別表第42類に属する役務として例示された「電子計算機用プログラムの提供」の範疇といえる。
イ 他方、引用商標2の指定商品中、第9類「画像処理用コンピュータのプログラム,インターネットを利用してダウンロード可能なコンピュータプログラム,その他のコンピュータプログラム,コンピュータプログラムを記憶させた記録媒体」は「電子計算機用プログラム」の一形態であり、また、「電子応用機械器具及びその部品」には、「電子計算機用プログラム」が含まれることは、引用商標2の登録査定時において有効な商標法施行規則別表に、第9類に属する商品中「十五 電子応用機械器具及びその部品」の下位概念として「(五)電子計算機用プログラム」が例示されていることからも明らかである。
ウ そこで、「電子計算機用プログラムの提供」と「電子計算機用プログラム」との関係についてみる。
(ア)本件役務の提供と商品「電子計算機用プログラム」の製造・販売に係る事業者について
「電子計算機用プログラム」は、記録媒体に記録された形態やコンピュータによりダウンロードする方法により流通しているほか、請求人の提出に係る甲132によれば、インターネット等の通信回線を通じてサーバ上に保管された「電子計算機用プログラム」を使用させる役務(電子計算機用プログラムの提供)として提供されていた実情があり、かかる役務を提供する者は「アプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)」と呼ばれ、一般的になっていることが認められる。
そして、本件商標の指定役務中、本件役務で提供される内容は、いずれも「電子計算機用プログラム」であるから、商品「電子計算機用プログラム」の製造・販売事業者が、かかる役務の提供を行うことは、一般的であるといえる。
(イ)本件役務と商品「電子計算機用プログラム」の用途について
本件役務と商品「電子計算機用プログラム」の用途は、いずれも、電子計算機用プログラムの提供を受けるか購入することにより、電子計算機用プログラムを使用して、コンピュータ処理をするものであるから、その用途は共通するものといえる。
(ウ)本件役務の提供場所と商品の販売場所について
本件役務と商品「電子計算機用プログラム」とは、役務と商品という関係にあるものの、その対象となるものは、ほぼ共通の「電子計算機用プログラム」であって、その役務としての提供と商品としての販売は、一般的に同一事業者によって行われることが多いことからすれば、役務の提供場所と商品の販売場所とを同一にする場合が多いといえる。
(エ)本件役務と商品「電子計算機用プログラム」の需要者の範囲について
本件役務と商品「電子計算機用プログラム」の需要者は、いずれもコンピュータを用いて電子計算機用プログラムを使用する者であるから、需要者の範囲は共通する。
エ そうすると、本件役務と商品「電子計算機用プログラム」に、同一又は類似の商標を使用する場合は、同一営業主の製造若しくは販売又は提供にかかる役務又は商品と誤認されるおそれがあると認められる関係があるといえる。
したがって、本件商標の指定役務中の本件役務は、引用商標2の指定商品中、第9類「画像処理用コンピュータのプログラム,インターネットを利用してダウンロード可能なコンピュータプログラム,その他のコンピュータプログラム,コンピュータプログラムを記憶させた記録媒体」及び「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる「電子計算機用プログラム」(以下、これらをまとめて「引用商品」という場合がある。)と類似すると認められる。
しかしながら、本件商標の指定役務中の本件役務以外の役務と引用商標2の引用商品以外の指定商品及び指定役務とは、請求人提出の証拠によっては、類似するものというに足りない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、その商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の引用商標2と類似する商標であって、引用商標2の指定商品中の「引用商品」と同一又は類似の本件役務に使用をするものである。
したがって、本件商標は、その指定役務中の「インターネットウェブサイトを介してのコンピュータプログラムの提供,ウェブサイトの開発用のダウンロードできないソフトウエアのオンラインでの一時的な使用の提供,ウェブサイトを介して行うコンピュータプログラムの提供,ウェブサイト経由から接続可能なダウンロードできないソフトウェアアプリケーションの一時使用の提供,ウェブサイト用のコンピュータプログラムの提供,ウェブベースのアプリケーションの一時的な使用の提供,ウェブベースのソフトウェアの一時的な使用の提供,ウェブページのアクセス記録を表示処理するためのコンピュータプログラムの提供,ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,他人のウェブサイトへのリンクのための電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供」について、商標法第4条第1項第11号に該当する。
なお、引用商標2について、被請求人は、平成29年5月末までに「商標登録無効審判」を請求するため、その請求が認容されることで、本件商標は、引用商標2との関係においても、商標法第4条第1項第11号には該当しないこととなる旨、主張するが、上記第2 2のとおり、当該商標権は現に有効に存続しているものである。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」には、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、他の法律によって当該商標の使用等が禁止されている場合、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合などが含まれるというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号、平成18年9月20日判決参照)。
請求人は、本件商標の登録出願の経緯には、著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものである旨主張するので、以下、この点について検討する。
(2)当事者提出の証拠及びその主張によれば、次の事実を認めることができる。
ア 引用商標1の当初(平成19年2月9日に設定登録)の商標権者「ナノプロ社」は、平成19年6月5日に「グルーヴプロモーション株式会社」に商号を変更し(同月29日登記)、その後、平成23年6月22日に破産手続開始(同月27日登記、破産管財人も同日登記)、平成23年9月16日破産手続廃止の決定確定(同年11月11日登記、同日登記簿閉鎖)がなされた(甲130)。
そして、引用商標1に係る商標登録原簿によれば、その登録名義人は、平成25年7月12日受付の届出により「グルーヴプロモーション株式会社」に、同年8月13日受付の届出により「株式会社ニワンゴ」(請求人)に移転された(甲2)。
イ 被請求人は、2009年1月20日、自身が提供するブログ記事配信サービスに「ブロマガ」の名称を付してサービスを開始した(乙5)。
そして、平成24年9月13日に、別件被請求人商標「ブロマガ/BlogMaga」の登録出願(商願2012-74287)をするとともに、ナノプロ社が権利を有する引用商標1に対し、その指定役務中の一部の役務について商標登録の取消しの審判(取消2012-300731)を請求した。
当該取消しの審判は、被請求人が特許庁からの通知に基づき清算人選任の申立てをし、清算人が選任され、同25年7月16日に取消審決が確定(同年8月8日登録)した。当該審判の確定登録がされたことにより、別件被請求人商標は同25年9月25日に登録査定され、同年10月11日に設定登録された(甲2、甲4及び乙6。)
被請求人は、請求人に対し、平成25年11月18日付けで「ブロマガ」という名称を使用した有料ウェブサービスについて、登録第5621414号商標(商願2012-74287)の商標権を侵害する旨の通知を送付した(甲131)。
ウ 請求人は、2006年に動画共有サイトである「ニコニコ動画」のサービスの提供を開始し(請求人の主張及び甲6)、ニコニコの新たなサービスとして2012年8月21日に「ブロマガ」というブログ記事配信サービスを開始した(甲14)。
(3)判断
前記(2)の事実からすると、被請求人は2009年1月にブログ記事配信サービスの提供を開始したのに対し、請求人が同様のサービスの提供を開始したのは、2012年8月であるから、被請求人は、請求人がブログ記事配信サービス「ブロマガ」の提供を開始する3年以上前から、略同様のブログ記事配信サービスを提供し、「ブロマガ」の商標を使用していたといえる。
そして、自己の使用にかかる商標を権利として保全するために、別件被請求人商標及び本件商標の登録出願をしたとみるのが自然であるから、かかる行為をもって、請求人商標「ブロマガ」に化体された名声、信用等にただ乗り(フリーライド)し、剽窃的に別件被請求人商標及び本件商標の登録出願をして登録を受けたものということができない。
(4)小括
前記のとおり、被請求人の本件商標の登録出願の経緯は、これに著しく社会的相当性を欠くものがあるということはできないし、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものであるとはいうこともできず、また、本件商標は、その構成態様が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字よりなるものでもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)請求人商標「ブロマガ」の周知性について
請求人の提出に係る陳述書によれば、請求人は、2006年に動画共有サイトである「ニコニコ動画」のサービスの提供を開始し、ニコニコ動画はサービス開始以降爆発的にファンが増加し、「ニコニコ静画」、「ニコニコ生放送」、「ニコニコチャンネル」等のサービスが追加され、2012年5月に「niconico(ニコニコ)」が新たな総称となった(甲6)。
そして、ニコニコでは現実世界とも共同してネット党首討論会、衆議院選挙特番、将棋対局の中継、ニコニコ超会議、ニコニコ町議会全国ツアー等を行い、注目を集めた(甲8ないし甲13)。
また、請求人はニコニコの新たなサービスとして2012年8月21日に「ブロマガ」というブログ記事配信サービスを開始し、そのことが新聞、雑誌、インターネットメディア等において広く紹介され(甲14ないし甲105)、IT用語辞典等にも掲載され(甲107ないし甲128)、該サービス開始から1年2か月後の2013年10月27日には同サービスによるブログ記事の購読者が10万人を超えた(甲129)ことなどが認められる。
これらを総合すると、請求人の業務に係るブログ記事配信サービスである「ブロマガ」は、そのサービス開始から急速に購読者、利用者が増加したものと認められる。
しかし、我が国のインターネットの利用状況からみて、本件商標の登録出願時(平成25年10月3日)における「ブロマガ」というブログ記事配信サービスによるブログ記事の購読数である10万人は、決して多いものということができない。
そして、ブログ記事配信サービス「ブロマガ」の開始に関する情報が、平成24年8月21日、22日、23日及び27日に、プレスリリース、新聞記事、インターネット等に掲載された(甲14ないし甲105)こと、「ブロマガ」の開始から1カ月後に、有料登録者が1万人を超えたこと等を内容とする情報が、同年9月12日、19日、21日及び28日にインターネットに掲載された(甲106、甲108、甲110ないし甲126)ことが認められるものの、これらの情報は、同年8月と9月の極限られた日にちの情報であって、かかる情報をもって、「ブロマガ」標章が、広く一般に広告宣伝されたものということができない。
そうすると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「ブロマガ」の標章が、請求人の業務に係る役務を表示する商標として、我が国のインターネットを利用する需要者の間に一定程度知られていたとしても、広く認識されていたものとまではいうことができない。
(2)被請求人による「ブロマガ」商標の使用及び不正の目的について
請求人は、「被請求人は、請求人商標が、請求人ブログ記事配信サービスの名称に使用され、広く一般に知られている商標であることを知悉しながら、請求人商標が出願・登録されていないことを奇貨として同一又は類似の商標を先回り的に出願・登録し、登録になるや否やその使用の妨害を試みているのであり、本件商標及び別件被請求人商標は請求人に損害を与える目的、すなわち、不正競争の目的あるいは不正の目的を以って登録出願した」旨主張する。
しかしながら、前述のとおり、被請求人は、請求人によるブログ記事配信サービス「ブロマガ」が開始される3年以上前から略同様のブログ記事配信サービスを提供し、「ブロマガ」の商標を使用しており、先行する自己の権利を保全するために別件被請求人商標及び本件商標の登録出願をしたというべきである。
そして、請求人が提出した証拠を勘案しても、被請求人が、本件商標の登録出願時点において、請求人商標が出願・登録されていないことを奇貨として同一又は類似の商標を先回り的に出願・登録し、請求人に損害を与えるなどの不正の目的をもって本件商標を登録出願したものと認めるに足る具体的事実を見いだすこともできない。
そうすると、本件商標は、請求人が主張する不正の目的をもって登録出願したものとは認められない。
(3)小括
本件商標と請求人商標とが類似するとしても、前記のとおり、「ブロマガ」の標章が、請求人の業務に係る役務を表示する商標として、我が国のインターネットを利用する需要者の間に広く認識されていたとはいえず、本件商標は、不正の目的をもって登録出願したものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法4条第1項第19号に該当しない
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定役務中の第42類「インターネットウェブサイトを介してのコンピュータプログラムの提供,ウェブサイトの開発用のダウンロードできないソフトウエアのオンラインでの一時的な使用の提供,ウェブサイトを介して行うコンピュータプログラムの提供,ウェブサイト経由から接続可能なダウンロードできないソフトウェアアプリケーションの一時使用の提供,ウェブサイト用のコンピュータプログラムの提供,ウェブベースのアプリケーションの一時的な使用の提供,ウェブベースのソフトウェアの一時的な使用の提供,ウェブページのアクセス記録を表示処理するためのコンピュータプログラムの提供,ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,他人のウェブサイトへのリンクのための電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供」については、商標法第4条第1項第7号及び同第19号に該当しないものの、同法第4条第1項第11号に該当し、その登録は、同項の規定に違反してされたものというべきであるから、同法第46条第1項の規定に基づき無効にすべきものである。
しかしながら、本件商標は、その指定役務中の上記以外の指定役務については、商標法第4条第1項第7号、同第11号及び同第19号のいずれにも該当するものではなく、同項の規定に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべき限りではない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2014-890028